説明

モバイルルータ管理システム

【課題】 モバイルルータの設定情報に障害が発生した場合でも、設定復旧作業を簡易に行えるシステムを提供する。
【解決手段】 保守端末は、モバイルルータと直接通信可能となった際に、モバイルルータが保存しているモバイルルータの識別子及びバックアップサーバへのアクセス情報をモバイルルータより取得し、モバイルルータの設定情報の障害を監視し、モバイルルータの設定情報の障害を検出した場合には、インターネットにアクセスする手段を用いて、設定情報の送信要求を、モバイルルータの識別子と共にバックアップサーバに送信し、バックアップサーバから、設定情報を受信した場合は、モバイルルータと直接通信する手段を用いて、前記受信した設定情報をモバイルルータに送信して設定情報の障害を復旧させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モバイルルータの管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線による通信技術の発達及びインターネットの普及に伴い、移動中に接続点又は接続ネットワークを切替えながら、通信を継続させるモバイルIPに関する技術の重要性が高まってきている。
【0003】
モバイルIPに関して、例えば、非特許文献1には、移動する通信端末のホームネットワークにホームエージェントと呼ばれるホストを設置し、通信端末がホームネットワーク以外からネットワークに接続している場合、ホームエージェントが通信端末宛てのパケットを捕捉し、カプセル化して転送する技術が記載されている。非特許文献1に記載の技術では、通信端末が、その接続するネットワークの変更を認識し、変更した場合はホームエージェントへの登録等の必要な処理を行っている。
【0004】
また、非特許文献2には、移動に伴う処理を行うために必要となる通信端末の能力の増加等を抑えるため、通信端末と共に移動して、移動に伴う処理を行い、通信端末に対してはネットワークの移動を秘匿するモバイルルータについて記載がなされている。
【0005】
モバイルルータは、接続するネットワークの変更毎にホームエージェントへ登録を行う気付アドレスの他に、モバイルルータと共に移動する通信端末との通信で使用するネットワークアドレスもホームエージェントに登録し、セッションの維持を行っている。
【0006】
【非特許文献1】C.Perkins et al、”IP Mobility Support”、 IETF RFC3220、2002年1月
【非特許文献2】V.Devarapalli et al、”Network Mobility (NEMO) Basic Support Protocol”、 INTERNET DRAFT、2004年10月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
モバイルルータは、車両等に設置されて使用されるが、モバイルルータの設定情報が消失し通信不能となった場合、移動中にモバイルルータの設定復旧作業を行うことは困難である。
【0008】
従って、本発明は、モバイルルータの設定情報に障害が発生した場合でも、設定復旧作業を簡易に行えるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明におけるモバイルルータ管理システムによれば、
インターネットに接続するバックアップサーバと、1以上のメディアを有するモバイルルータと、インターネットにアクセスする手段及びモバイルルータと直接通信する手段とを有する保守端末とを含むシステムにおいて、モバイルルータは、バックアップサーバにアクセスするためのアクセス情報及び自身の識別子を保存する手段と、インターネットに接続可能であるメディアを選択し、選択したメディアを使用してモバイルルータの設定情報を、自身の識別子と共に、バックアップサーバに送信する手段とを有し、バックアップサーバは、モバイルルータから受信する設定情報を、受信する識別子と関連付けて保存する手段と、保守端末からモバイルルータの識別子と共に、設定情報の送信要求を受信した場合は、前記識別子に関連付けられている設定情報を前記保守端末に送信する手段とを有し、保守端末は、モバイルルータと直接通信可能となった際に、モバイルルータが保存しているモバイルルータの識別子及びバックアップサーバへのアクセス情報をモバイルルータより取得する手段と、モバイルルータの設定情報の障害を監視する手段と、モバイルルータの設定情報の障害を検出した場合には、前記取得したバックアップサーバへのアクセス情報及びモバイルルータの識別子に基づき、前記インターネットにアクセスする手段を用いて、設定情報の送信要求を、前記取得したモバイルルータの識別子と共にバックアップサーバに送信する手段と、バックアップサーバから、設定情報を受信した場合は、前記モバイルルータと直接通信する手段を用いて、前記受信した設定情報をモバイルルータに送信する手段とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明のモバイルルータ管理システムにおける他の実施形態によれば、
モバイルルータは、中継している通信が使用しているプロトコル及び/又はポート番号に基づき、各通信の優先順位を識別する手段を有し、前記バックアップサーバへの設定情報の送信には所定の優先順位が設定されており、前記バックアップサーバに設定情報を送信する手段は、モバイルルータの設定情報を送信するために選択したメディアが、他の通信の中継にも使用されている場合は、前記他の通信の優先順位と、前記バックアップサーバへの設定情報の送信の優先順位を比較し、他の通信の優先順位が高い場合は、他の通信が終了するまで設定情報の送信を中断することも好ましい。
【発明の効果】
【0011】
保守端末をモバイルルータに、接続又は無線通信が可能な距離に設置する操作のみで、モバイルルータの設定情報の障害時に、保守端末は、ネットワーク上に存在するバックアップサーバからバックアップしていた設定情報を取得して、モバイルルータに送信し、障害の復旧を行うことができる。
【0012】
プロトコル及び/又はポート番号に対応した通信の優先順位とバックアップの優先順位を設け、優先順位の高い通信が行われている間は、バックアップ処理を待機/中断とし、ルータの本来の機能である通信の中継に与える影響を、優先順位により制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の実施形態について、以下では図面を用いて詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明のモバイルルータ管理システムのシステム構成図である。図1によるとシステムは、モバイルルータ1と、保守端末2と、バックアップサーバ3と、インターネット4とを含む。
【0015】
モバイルルータ1は、メディア11、12及び13とを有する。メディア11〜13は、インターネットに接続するための通信インタフェースであり、各メディアはそれぞれ、各種無線LANや、携帯電話網等の規格に応じた信号の送受信を行う機能を有する。尚、図1の例では、モバイルルータは3つのメディアを実装しているが、3つに限定するものではなく、1以上の任意の数を取り得る。
【0016】
モバイルルータ1は、自身の移動により変化するインターネットアクセスに使用可能なメディアを監視し、使用可能なメディアから1のメディアを選択し、図示しない配下の通信端末とインターネット間の通信の中継を行う。パケットの中継に使用するメディアの選択は、通信に必要な帯域やコスト等の条件から、公知の方法で決定する。
【0017】
モバイルルータ1が、移動と共にインターネットへの接続点を変更しつつ、図示しない配下の通信端末とインターネット間の通信の中継を行うために、モバイルルータ1は、メディアの選択ポリシー、ホームアドレス等の各種の設定情報を有している。前記設定情報に障害が発生した場合に備えて、モバイルルータ1は、周期的に前記設定情報をバックアップサーバ3にバックアップを行う。
【0018】
また、モバイルルータは、前記バックアップの優先順位及び中継している通信の優先順位を予め保存している。中継している通信の優先順位は、配下の通信端末が送受信するパケットのプロトコル及び/又はポート番号に対応して設定される。
【0019】
バックアップサーバ3は、インターネットに接続され、各モバイルルータが周期的に実行するバックアップにおいて送信する各モバイルルータの設定情報を、そのモバイルルータの識別子に関連付けして保存する。また、後述するように、保守端末2から、モバイルルータ1の識別子と共に、設定情報の送信要求を受信した場合には、モバイルルータ1の設定情報を保守端末2に送信する。
【0020】
保守端末2は、モバイルルータ1と直接通信することが可能であり、前記直接通信する機能を利用して、モバイルルータの設定情報障害の監視及び検出を行う。モバイルルータの設定情報の障害検出は、例えば、モバイルルータのログ情報へのアクセス、モバイルルータとインターネットとの接続断又はモバイルルータが出力するアラーム等の監視により行う。
【0021】
また、保守端末2は、モバイルルータを介さずに、インターネットにアクセスして通信を行う機能も有する。保守端末の例としては、赤外線通信又はUSB等の通信機能によりモバイルルータと通信できる、携帯電話等がある。
【0022】
保守端末2は、例えば、モバイルルータ1との直接通信が有線による場合は、保守端末2とモバイルルータ1が通信線で接続されたことにより、モバイルルータ1との通信が無線による場合は、通信可能な距離に近づいたことにより、モバイルルータ1と直接通信可能となった際に、モバイルルータ1が保存しているモバイルルータ1の識別子及びバックアップサーバ3のIPアドレス等の、バックアップサーバ3へのアクセス情報を取得し保存する。その後、前記直接通信する機能を用いて、モバイルルータ1の設定情報の障害の監視を行う。保守端末2が設定情報の障害を検出した場合は、後述する復旧処理を実行する。
【0023】
図2は、本発明のシステムにおいて、モバイルルータ1が周期的に行うバックアップのフロー図である。
(S21) モバイルルータ1は、バックアップに使用するメディアを選択する。
(S22、S23、S24) 選択したメディアが、配下である通信端末と、インターネット上のホストとの通信の中継に使用されている場合は、更に、送受信しているパケットのプロトコル及び/又はポート番号を参照して、中継している通信の優先順位を判別し、予め設定されているバックアップの優先順位と比較する。予め設定されているバックアップの優先順位が低い場合は待機とする。それ以外の場合は、自身の識別子と共に、設定情報のバックアップサーバ3への送信を開始する。
(S25、S26,S27,S28) バックアップ中においても、バックアップより優先度の高い他の通信のパケットが通信端末から送信されるか否かを確認し、送信された場合は、バックアップの中断を行う。バックアップの中断中は、優先度の高い他の通信の終了を監視し、優先度の高い他の通信が終了した場合は、バックアップの再開を行う。
【0024】
図3は、本発明のシステムにおいて、保守端末2がモバイルルータ1の設定情報の障害を検出した場合の復旧シーケンス図である。
【0025】
保守端末2が、モバイルルータ1の設定情報の障害を検出した場合、モバイルルータ1との接続時に取得した、モバイルルータ1の識別子及びバックアップサーバ3へのアクセス情報に基づき、インターネットにアクセスして通信する機能を用いてモバイルルータ1の識別子と共に、バックアップサーバ3へ設定情報の送信要求を送信する。
【0026】
保守端末2から設定情報の送信要求を受信したバックアップサーバ3は、前記送信要求に含まれるモバイルルータの識別子から、保存しているモバイルルータ1の設定情報を保守端末2に送信する。
【0027】
モバイルルータ1の設定情報を受信した保守端末2は、受信した設定情報を、モバイルルータ1と直接通信する機能を用いて、モバイルルータ1に送信し、設定情報の復旧を行う。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のモバイルルータ管理システムのシステム構成図である。
【図2】本システムのバックアップフロー図である。
【図3】本システムの障害復旧のシーケンス図である。
【符号の説明】
【0029】
1 モバイルルータ
11、12、13 メディア
2 保守端末
3 バックアップサーバ
4 インターネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターネットに接続するバックアップサーバと、
1以上のメディアを有するモバイルルータと、
インターネットにアクセスする手段及びモバイルルータと直接通信する手段を有する保守端末と、
を含むシステムにおいて、
モバイルルータは、
バックアップサーバにアクセスするためのアクセス情報及び自身の識別子を保存する手段と、
インターネットに接続可能であるメディアを選択し、選択したメディアを使用してモバイルルータの設定情報を、自身の識別子と共に、バックアップサーバに送信する手段とを有し、
バックアップサーバは、
モバイルルータから受信する設定情報を、受信する識別子と関連付けて保存する手段と、
保守端末からモバイルルータの識別子と共に、設定情報の送信要求を受信した場合は、前記識別子に関連付けられている設定情報を前記保守端末に送信する手段とを有し、
保守端末は、
モバイルルータと直接通信可能となった際に、モバイルルータが保存しているモバイルルータの識別子及びバックアップサーバへのアクセス情報をモバイルルータより取得する手段と、
モバイルルータの設定情報の障害を監視する手段と、
モバイルルータの設定情報の障害を検出した場合には、前記取得したバックアップサーバへのアクセス情報及びモバイルルータの識別子に基づき、前記インターネットにアクセスする手段を用いて、設定情報の送信要求を、前記取得したモバイルルータの識別子と共にバックアップサーバに送信する手段と、
バックアップサーバから、設定情報を受信した場合は、前記モバイルルータと直接通信する手段を用いて、前記受信した設定情報をモバイルルータに送信する手段とを有することを特徴とするモバイルルータ管理システム。
【請求項2】
モバイルルータは、中継している通信が使用しているプロトコル及び/又はポート番号に基づき、各通信の優先順位を識別する手段を有し、
前記バックアップサーバへの設定情報の送信には所定の優先順位が設定されており、
前記バックアップサーバに設定情報を送信する手段は、モバイルルータの設定情報を送信するために選択したメディアが、他の通信の中継にも使用されている場合は、前記他の通信の優先順位と、前記バックアップサーバへの設定情報の送信の優先順位を比較し、他の通信の優先順位が高い場合は、他の通信が終了するまで設定情報の送信を中断することを特徴とする請求項1に記載のモバイルルータ管理システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−135626(P2006−135626A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−321997(P2004−321997)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】