説明

モータ−ポンプ集合体

【課題】簡単な手段によって運転ノイズや摩擦を減少するように改良されたモータ−ポンプ集合体を提供する。
【解決手段】モータ1とピストンポンプ2とを有するモータ−ポンプ集合体に関し、特には、自動車の電気制御ブレーキシステム用であり、ポンプ2のピストン3は、モータ1のシャフト10に接続された偏心器4を通して駆動され、カップリングリング5によって接続され、そして前記モータ1は、保持板6を有する。突出部7が、前記保持板6に設けられ、前記カップリングリング5の動作の範囲に延びている。これは、一方では、カップリングリング5のための止め部を、他方では、ポンプ2の漏洩流体のための改良された排出口を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特許請求の範囲請求項1のプレアンブルによるモータ−ポンプ集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ドイツ特許公開 DE196 32 167 A1 は、自動車の電気制御ブレーキシステムのために、特に好適な、そして、例えば、接触ブラシやピストンポンプ用の保持板を有するとともに、そのポンプのピストンは、偏心器を通して駆動される、一般的なモータ−ポンプ集合体を開示している。この公開では、ピストンは、それぞれ、偏心器に対してリセットスプリングによって付勢されて、偏心器の動きに追従する。
【0003】
しかしながら、一般的に、ピストンに接続されるカップリングリングが、リセットスプリングの代りに使用されることは、この分野では周知である。例えば、2つの相対向するピストンの場合には、ひとつのピストンが偏心器によって圧縮行程動作を実行し、一方、カップリングリングによって後退される他のピストンは、吸引行程動作を実行する。このことは、カップリングリングは偏心器とは一緒に回転せずに、往復振動することを意味する。このカップリングリングの捩れが、特にポンプのスタートの間に生じ、そしてこのカップリングは、モータ−ポンプ集合体の静止または回転部分に対して押圧し、それによって、好ましくない騒音や摩擦が、特に、回転部品との接触が発生する時に生じる。また、そこで生成される擦り落とされた部分が、モータ−ポンプ集合体の動作を損なう。
【0004】
公開された国際特許出願番号WO 00/13951、これはこの特許出願の優先日後にのみ公開されたものであるが、それにおいて、そのハウジングとともにしっかりと形成された止め部(stop)は、したがってモータと反対側のカップリング側に設けられる。増加した摩滅および望ましくない運転ノイズがその位置で発生するので、モータに面する他方の側には、カップリングリングが、運転中にモータシャフトまたは偏心器あるいはその他の回転部分とともに回転する均等になる部材と接触する状態になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記を考慮して、この発明の目的は、簡単な手段によって運転ノイズや摩擦を減少するように、これまでに参照したタイプのモータ−ポンプ集合体に改良を加えるものである。
【0006】
この発明によれば、この目的は、一般的なモータ−ポンプ集合体において、突出部が、モータの保持板に追加的に設けられ、カップリングリングの動作範囲に延びていることで達成される。これは、この発明によるカップリングリングのための据え付け止め部を達成し、それによって摩擦や生じ得る運転ノイズが減少する。現存する部品が変更される事実は、また、例えば組立てコストや時間と同様に、分離した止め部のための製造コストを削減する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この突出部自身の端は、その材料が適切な摩擦抵抗を有するときは、止め部として用い得る。あるいはまた、分離した止め部または適切な材料、例えばシートメタルで造られたカップリングリング対する接合点を前記突出部に設けることができる。
【0008】
好ましくは、この突出部は環状のデザインを有し、ポンプハウジングに延びるモータのシャフトの周囲に配置される。代りに、この突出部はまた、カップリングリングの動作範囲に突出する個々の部分を有するものでもよい。
【0009】
モータ−ポンプ集合体において、モータの内側は異物(foreign body)からは免除されるとの要求が常にある。汚染物質は、この集合体全体の故障の結果をもって、モータの過敏な電子機器に対して影響を与えたり、または損傷したりする。一方、これらの汚損物質は、ほこりや摩擦部分のような固体の材料である。他方、これらはまた、流体力学上の流体、特にポンプのブレーキ流体、集合体内に外部から入る水または塩水の漏洩流体材料である。したがって、モータからポンプを効果的に分離するために、ファイアウォールが、突出部とシャフトとの間に、格別に都合よく配置されて、モータ内部に異物の進入を妨げ、または阻止する。
【0010】
好都合に、このファイアウォールは保持板に一体に設計することができる。しかしながら、また、このファイアウォールは独立した部品、例えば独立した止め部ととともに設計できる。
【0011】
カップリングリングのための止め部としての機能と比べて、カップリングリングの動作の領域にまで延びる保持板の突出部は、他の利点を有する。ポンプの漏洩流体は、常にクランク室に蓄積され、そのことは、モータ−ポンプ集合体の運転中、偏心器が配置される空間を意味する。漏洩流体のための排出通路が、ポンプのハウジング内に設けられ、特に、排出手段が偏心器またはクランク室から離れて前記通路の端部に配置されるときに、前記流体は、クランク室から外部へ、例えば、モータ−ポンプ集合体のための電子制御ユニットが液密状態に収容される制御器ハウジング内に、どのような場合でも放出する漏洩流体から隔離されて、放出される。この流体の排出は、この発明のモータ−ポンプ集合体が、例えば、図1に示される方法で自動車に組み込まれるときには、要求を満たすものである。
【0012】
しかしながら、万一、上述したようにその集合体の縦型搭載が可能でないならば、その漏洩流体の放出は妨げられる。この問題は、特に、図1に比して90°だけ回転する図2に開示された集合体の組立て位置に存在する。漏洩流体の収集のために、湾入すなわち、ぎざぎざ(indentation)が、排出通路におけるハウジングに、特に都合よく設けられる。
【0013】
その突出部が、そのぎざぎざに面する端部の外周における面取りを有するときは、漏洩流体は、容易に、突出部または保持板とポンプハウジングとの間のスロットに入ることができる。その突出部が、この発明によるカップリングリングの作動範囲に延びている事実のために、このさらなる通路は、モータの内側が漏洩流体の流入および流体に含まれる他の異物に対してよりよく保護されるので、比較的にモータから離れている点で、すでに開始している。
【0014】
このさらなる通路が、ポンプハウジングから延びないときは、漏洩流体の収溜は、ポンプハウジングと保持板との間に、流体捕集のための特別に好ましい方法で、設けることができる。その代わりとして、モータ区画室における漏洩流体のための収容溜を配置することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明およびそのさらなる利点や実施例について、以下に、付属の図に関連してなされる実施例を通して詳細に説明する。
【0016】
図1および2の実施例において、モータは符号1で、ピストンポンプは符号2で示される。ポンプ2のハウジング8内に延びる駆動シャフト10が、電動モータとして特に形づくられたモータ1のハウジングに収容されている。さらに、保持板6は、モータ1と、例えば、モータ1の接触ブラシ(図示せず)のためのポンプハウジング8との間に挿入される。偏心器4が配置される支持軸26がポンプ2(一例としてここに説明するもので、この発明に限定されるものではない)のハウジング8に取付けられる。シャフト10とともに回転する偏心器4は、ポンプ2のピストン3が、例えば、自動車のための電子制御ブレーキシステムの動作に要求される圧力を高めるために、駆動シャフトすなわちシャフト10に関して放射方向にあちこち移動する。1つのピストン3が、他のピストン(図示せず)が吸引行程動作を実行する間に、偏心器4によって誘発されて圧縮行程動作を実行するように、ピストン3は、カップリングリング5によって相互に連絡される。このことは、カップリングリング5は、偏心器4とは一緒に回転せずにピストン3の動作の面内に往復振動することを意味する。この配置においては、特にモータ1またはポンプ2が動作を開始するときに、カップリングリング5はピストン3への取付け点(図示せず)の周りを回転することができる。
【0017】
この終端に、カップリングリング5の動作の範囲に突出する突出部(projection)7は、この発明によるモータ1の操作板6に設けられる。ポンプハウジング8における保持板6のセンタリングから離れて、このことはカップリングリング5の据え付け止め部を備える。それによって動作中に生じる摩擦およびポンプ2の運転ノイズが、特にこの発明による好ましい方法で減少する。
【0018】
突出部7自身の端部は、その材料が適当な摩擦抵抗を有するときは、カップリングリング5の止め部として用いられ得る。突出部7は、特別に、保持板と一体にプラスチック材料で製造される。しかしながら、一方、カップリングリング5のために分離した止め部または衝止部を突出部7に設けてもよい。前記止め部は、適当な材料、例えばシートメタルで作成される。このタイプの止め部9は、図4の説明に関して詳細に説明される。
【0019】
突出部7は、好ましくは環状の形状で、ポンプハウジング8に向かって突出するモータ1のシャフト10を囲んで設けられる。あるいは、突出部7は、例えば止め部として作用し、カップリングリング5の動作の範囲にまで延びる単一の部分(図示せず)を有してもよい。
【0020】
この発明の他の重要な点は、電子部品が配置されるモータ1の内部に対する液体およびまたは固体の媒体の進入を絶対的に阻止するという必要性を有する、ポンプ2または偏心器4が配置される室を意味するクランク室とモータ1との効果的遮蔽である。ファイアウォールが突出部7とシャフト10との間に設けられて、モータの内部に異質部材が進入するのを阻止し、妨げることは、特別に望ましいことである。ファイアウォール11は、例えば、図1および2に示されるように、保持板6と一体的に設計することができる。
【0021】
カップリングリング5の止め部としての機能を外れて、この発明によるカップリングリング5の動作範囲にまで延びる保持板6の突出部7は、さらに他の非常に重要な利点を有する。ポンプ2の漏洩流体13は、モータ−ポンプ集合体の動作中、常にクランク室内に収集される。漏洩流体13用の排出通路12が、ポンプ2のハウジング8内に設けられるとき、さらに、特別に、その排出手段14が、さらに偏心器4またはクランク室から離れて通路の一端に配置されるときは、前記流体13はクランク室から外部に、例えば、モータ−ポンプ集合体の電子制御ユニットを収容する制御器ハウジング(図示せず)に放出され得る。
【0022】
この排出または放出通路12は、モータ−ポンプ集合体が、図1に示されるような方法で、例えば、自動車内に組み込まれるときは、その要求を満足する。しかしながら、もし、このタイプの集合体の縦型搭載が可能でないならば、漏洩流体13のクランク室からの放出は妨げられる。この問題は、特に、図1に比して90°だけ回転された図2に示すような集合体の搭載位置において、遭遇する。漏洩流体13が、収集される湾入は望ましくは、または好ましくはハウジング8内の排出通路12に配置される。
【0023】
突出部7が、湾入すなわち、ぎざぎざ部15に近接したその端部の周面に面取り16を有するときは、漏洩流体13は、突出部7または保持板6とポンプハウジング8との間のスロットに容易に流入することができる。好ましくは、このスロットは、漏洩流体13の他の通路17として設けられる。突出部7はこの発明によるカップリングリング5の動作の範囲にまで延びるという事実のために、モータの内側が漏洩流体の流入および流体に含まれる他の部外物質に対してよりよく保護されるので、このさらなる通路17は、すでにモータ1から相対的に離間した位置で開始している。特別に利点があることは、このさらなる通路17が、ポンプハウジング8から延びないときは、漏洩流体13の収容溜18は、ポンプハウジング8と保持板6との間に設けることができる点である。さらにまた、図2の点線で示されるように、モータ1の内側に漏洩流体13のための収容溜19を配置することも可能である。
【0024】
第3図は、保持板6の斜視図を示す。これまでに既述したようなこの発明の突出部のほかに、モータ1とポンプ2との間に境界面としての能力の保持板6は、好ましくは、多くの利点を有する。このように、電気接続システムにおける熱膨張の補償および公差の補償のための接点ターミナル22は、ハウジング(図示せず)に浮動的に組立てられ、保持板6に直接合体されるようにして配置される。このことは、また、電気的干渉が保持板で直接抑制されるので、まっすぐな電気接続素子、例えば、板6のケーブル端のための単純な電気接続を提供する。同様に、接続ブラシケーシング23が、板6に直接取り付けられる。モータ1のハウジングに対する接続のために、1つ、またはそれ以上の留めフック20が板6に統合される。さらに、例えば、1つ、またはそれ以上の、たとえばシリコーン樹脂製の射出成形シール21(図1および2参照)が、外部から集合体内への異物の進入を確実に阻止する板6に一体に設けられる。板6は、また、前記搬送の間に、ロータ(詳細には参照していない)または、(同様に図示していない)モータ1のフローティングアーマチャのための保持または固定機能を果たすことができる。
【0025】
図4に示す実施例によれば、ファイアウォール11は、カップリングリング(図示せず)のための分離した止め部9を一体的に有する独立部品として設計される。この部品9、11間の接続24は、好ましくは円形のシートメタルボールのように形成され、この発明の突出部7は、明確な、およびまたは適切な係合によって確立され、さらに、シール25は、板6の突出部7と部品9、11との間に挿入される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明のモータ−ポンプ組立の縦断面図。
【図2】この発明の集合体の組立て位置であって図1に比して90°だけ回転した縦断面図。
【図3】この発明のモータ−ポンプ集合体の保持板の斜視図。
【図4】この発明の他の実施例の詳細を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0027】
1……モータ
2……ピストンポンプ
3……ピストン
4……偏心器
5……カップリングリング
6……保持板
7……突出部
8……ハウジング
9……止め部
10……シャフト
11……ファイアウォール
12、14、17……排出通路
13……漏洩流体
15……湾入、ぎざぎざ
16……面取り
18、19……収容溜
20……止めフック
21、25……シール
22……接点ターミナル
23……接続ブラシケーシング
24……接続
26……支持軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の電気制御ブレーキシステム用のモータ(1)、ピストンポンプ(2)を有するモータ−ポンプ集合体であって、前記ポンプ(2)のピストン(3)は、モータ(1)のシャフト(10)に接続され、かつカップリングリング(5)によって接続される偏心器(4)の方式で駆動され、そのモータ(1)は保持板(6)を有するものにおいて、突出部(7)が、前記保持板(6)に設けられて、前記カップリングリング(5)の動作の範囲にまで突出して延在するとともに、前記カップリングリング(5)のための分離した止め部(9)を有し、さらに前記ポンプ(2)のハウジング(8)は、漏洩流体(13)のための排出通路(12)を有し、排出手段(14)が、偏心器(4)から離れて前記通路の一端に配置されることを特徴とするモータ−ポンプ集合体。
【請求項2】
前記ハウジング(8)は、排出通路(12)における湾入(15)を有することを特徴とする請求項1記載のモータ−ポンプ集合体。
【請求項3】
前記突出部(7)は、湾入(15)に面する端部の外周面における面取り(16)有することを特徴とする請求項2記載のモータ−ポンプ集合体。
【請求項4】
漏洩流体(13)のための他の通路(17)が、突出部(7)または保持板(6)とハウジング(8)との間に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のモータ−ポンプ集合体。
【請求項5】
漏洩流体(13)のための収容溜(18)が、ハウジング(8)と保持板(6)との間に設けられることを特徴とする請求項4記載のモータ−ポンプ集合体。
【請求項6】
前記漏洩流体(13)のための収容溜(19)が、モータ区画内に設けられることを特徴とする請求項4記載のモータ−ポンプ集合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−24701(P2009−24701A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244777(P2008−244777)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【分割の表示】特願2001−533315(P2001−533315)の分割
【原出願日】平成12年10月25日(2000.10.25)
【出願人】(500030596)コンチネンタル・テベス・アーゲー・ウント・コンパニー・オーハーゲー (126)
【Fターム(参考)】