説明

モータ付減速機及び割り出し装置

【課題】出力部の回転動作時に要求される駆動トルクの水準と出力部の回転方向の位置を保持する時に要求される保持トルクの水準との両方に対して過剰な仕様となることを抑制できるとともに、容量及び装置の大型化を抑制できるモータ付減速機を提供する。
【解決手段】減速機13は、1つの出力部16からトルクを出力する。駆動保持用モータ14は、減速機13に連結され、出力部16の回転動作時における駆動トルク及び出力部16の回転方向の位置を保持する時における保持トルクを発生させて減速機13に伝達する。保持用装置15は、減速機13に連結され、保持トルクのみを発生させて減速機13に伝達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータと減速機とを有するモータ付減速機、及びそのモータ付減速機を用いた工作機械用の割り出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータと減速機とを有するモータ付減速機、及びそのモータ付減速機を用いた工作機械用の割り出し装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に開示されたモータ付減速機においては、工作物を保持する回転テーブル(ワークテーブル)を回転させる駆動力を発生させる回転テーブル駆動モータと、この回転テーブル駆動モータにより回転される食い違い傘歯車機構のピニオン及びこのピニオンに噛み合う大歯車をギア機構として有する減速機とが備えられている。また、特許文献1に開示された割り出し装置においては、上記のワークテーブル及びモータ付減速機に加え、工作機械で工作物の加工が行われるときにワークテーブルに作用する外力である加工反力に抗してワークテーブルの回転方向の位置を保持するための空圧式のクランプ装置が更に設けられている。
【0003】
【特許文献1】実開平6−42047号公報(第6−8頁、第1図、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたモータ付減速機においては、回転テーブル駆動モータは、ワークテーブルの回転動作時における駆動トルクを発生させるために設けられるため、その短時間定格における最大出力トルクの設定は、回転動作時の加減速トルクを発生可能に設定されることになる。そして、このモータにおいては、より小容量で無駄の少ない仕様で高速での位置決めを可能にする観点からは、要求される加減速トルクに対する余裕の少ない仕様の最大出力トルクに設定されることになる。一方、特許文献1に開示の割り出し装置において、ワークテーブルに加工反力が作用したときにワークテーブルの回転方向の位置を保持する保持トルクを上記のモータだけ発生させようとした場合、要求される保持トルクがモータの連続定格における定格トルクの範囲内に収まる必要がある。しかし、一般的に電動モータの定格トルクは、最大出力トルクの数分の1から数十分の1程度であり、工作機械においては、加工反力が大きいため、特許文献1に開示された割り出し装置では、上記のモータの定格トルクの範囲内で保持トルクを確保することができず、別途クランプ装置が設けられている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の割り出し装置のように、ワークテーブルの回転方向の位置をクランプ装置で保持する場合、クランプ動作の完了後に工作物の加工を開始する必要があるため、クランプ動作に時間を要する分だけ更に割り出しに要する作動時間を多く要してしまうことになる。また、クランプ装置が設けられることで、割り出し装置の大型化や機構の複雑化を招いてしまうことになる。これに対し、特許文献1に開示のモータ付減速機において、その出力部に固定されたワークテーブルに作用する加工反力である外力に抗して出力部の回転方向の位置を保持しようとする場合、モータの定格トルクの設定を少なくとも要求される保持トルクを確保できるように大きく設定し、モータの大容量化を図る必要がある。この場合、モータの最大出力トルクの設定が要求される加減速トルクに比して過剰に大きく余裕のある設定となってしまうことになる。このため、モータを制御するドライブ装置(サーボアンプ)の容量も大型化してしまい、装置の大型化も招いてしまい易いという問題がある。また、これにより、このようなモータ付減速機を備える割り出し装置の大型化も招くことになる。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、出力部の高速回転動作時に要求される駆動トルクの水準と出力部の回転方向の位置を保持する時に要求される保持トルクの水準との両方に対して過剰な仕様となることを抑制できるとともに、容量及び装置の大型化を抑制することができるモータ付減速機を提供することを目的とする。また、本発明は、モータ付減速機を備える工作機械用の割り出し装置に関し、割り出しに要する作動時間を低減することができ、装置の大型化及び機構の複雑化を抑制することができる割り出し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための第1発明に係るモータ付減速機は、モータ(電動機)と減速機とを有するモータ付減速機であって、1つの出力部からトルクを出力する前記減速機と、前記減速機に連結される前記モータとして設けられ、前記出力部の高速回転動作時における駆動トルク及び前記出力部の回転方向の位置を保持する時における保持トルクの一部を発生させて前記減速機に伝達する駆動保持用モータと、前記減速機に連結され、前記保持トルクの残部を発生させて前記減速機に伝達する保持用装置と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
この発明によると、駆動保持用モータと保持用装置とが備えられる。そして、減速機の出力部の高速回転動作時の駆動トルクを駆動保持用モータが発生させるように構成されている。このため、要求される駆動トルクの水準に対応させるように駆動保持用モータの仕様を決定することができ、モータの仕様が要求される駆動トルクの水準に対して過剰な仕様となることを抑制できる。更に、本発明では、出力部の回転方向の位置を保持する時の保持トルクを駆動保持用モータ及び保持用装置が発生させるように構成されている。このため、要求される駆動トルクの水準に対応させて決定された駆動保持用モータの仕様を踏まえ、要求される保持トルクの水準に対応させるように保持用装置の仕様を決定することができる。これにより、モータ付減速機の仕様が要求される保持トルクの水準に対して過剰な仕様となることを抑制できる。また、要求される駆動トルク及び保持トルクに対して過剰な仕様となることを抑制できるため、モータ及びそのドライブ装置の容量が大型化してしまうことを抑制でき、モータ付減速機の装置構成が大型化してしまうことも抑制することできる。尚、駆動保持用モータを複数のモータで構成する場合には、小容量化して小型化した各モータをそれらの軸方向と垂直な平面に沿って配置するように減速機に取り付けることができる。これにより、モータ付減速機の全体形状に関し、更に扁平化させた構造を実現することができる。このように扁平化した構造のモータ付減速機は、工作機械用の割り出し装置に用いられる場合により好適となる。
【0009】
従って、本発明によると、出力部の高速回転動作時に要求される駆動トルクの水準と出力部の回転方向の位置を保持する時に要求される保持トルクの水準との両方に対して過剰な仕様となることを抑制できるとともに、容量及び装置の大型化を抑制することができるモータ付減速機を提供することができる。
【0010】
第2発明に係るモータ付減速機は、第1発明のモータ付減速機において、前記駆動保持用モータは、その短時間定格における最大出力トルクの設定が、前記出力部の高速回転動作時の加減速トルクを発生可能に設定されており、前記保持用装置は、その連続定格における定格トルクの設定が、前記保持トルクのうち前記駆動保持用モータの連続定格における定格トルクによって不足するトルクを発生可能に設定されていることを特徴とする。
【0011】
この発明によると、出力部の高速回転動作時の加減速トルクに基づいて駆動保持用モータの最大出力トルクが設定され、保持トルクのうち駆動保持用モータの定格トルクで不足する分を補うように保持用装置の定格トルクが設定される。このため、要求される加減速トルクの水準と保持トルクの水準との両方に対してほとんど無駄のない効率の優れた仕様のモータ付減速機を実現することができ、容量及び装置の更なるコンパクト化を図ることができる。
【0012】
第3発明に係るモータ付減速機は、第1発明又は第2発明のモータ付減速機において、前記保持用装置は、前記減速機に連結されるモータであって、前記保持トルクの残部を発生させて前記減速機に伝達する保持用モータとして設けられていることを特徴とする。
【0013】
この発明によると、保持用装置が保持用モータとして設けられているため、駆動トルク及び保持トルクが全てモータによって発生することになる。そして、要求される駆動トルクの水準に対応させて決定された駆動保持用モータの仕様を踏まえ、要求される保持トルクの水準に対応させるように保持用モータの仕様を決定することができる。これにより、モータ付減速機においてトルクを発生させる全てのモータの仕様について、要求される駆動トルク及び保持トルクの水準の両方に対してより効率よく対応させるように決定でき、容量及び装置の大型化を抑制できる。
【0014】
第4発明に係るモータ付減速機は、第3発明のモータ付減速機において、前記保持用モータの連続定格における定格電流が前記駆動保持用モータの連続定格における定格電流よりも小さくなるように、前記保持用モータのトルク定数が前記駆動保持用モータより大きく設定されていることを特徴とする。
【0015】
この発明によると、保持用モータの定格電流が駆動保持用モータの定格電流よりも小さくなるように、保持用モータのトルク定数が駆動保持用モータより大きく設定されている。このため、出力部の回転方向の位置を保持する保持動作時には、保持用モータに必要な電流が駆動保持用モータに必要な電流よりも少なくてよく、全てのモータの定格トルクを一律に大きくして保持トルクを確保しようとする場合に比して、より小さな電流で保持トルクを確保することができる。また、保持用モータは、出力部の高速回転動作時にはトルクを発生させず、保持動作時にトルクを発生させるため、トルク定数を上記のように変更しても出力部の高速回転動作時には影響が生じないことになる。
【0016】
第5発明に係るモータ付減速機は、第3発明又は第4発明のモータ付減速機において、前記駆動保持用モータと前記保持用モータが低速回転動作時に発生させるトルクが、前記保持トルクと同等となるように前記駆動保持用モータ及び前記保持用モータのトルク定数が設定されていることを特徴とする。
【0017】
この発明によると、駆動保持用モータと保持用モータが低速回転動作時に発生させるトルクが保持トルクと同等となるように、駆動保持用モータや保持用モータの一部又は全部のトルク定数が設定されている。従って、出力部からの反力に対抗しながら、ゆっくりと回転動作させることができ、例えば工作機械用の割り出し装置に用いられる場合は、回転させながら加工をすることができるようになる。なお、一般的に電動モータの低速回転時に発生可能なトルクは、出力部の回転方向の位置を保持する時の保持トルクとほぼ同等か若干小さい程度なので、低速回転時におけるトルクが保持トルクと同等となるように駆動保持用モータや保持用モータの一部又は全部のトルク定数を設定しても大きさはほとんど変わらない。
【0018】
第6発明に係るモータ付減速機は、第1発明又は第2発明のモータ付減速機において、前記保持用装置は、前記減速機に連結される電磁ブレーキであって、前記保持トルクの残部を発生させて前記減速機に伝達する保持用電磁ブレーキとして設けられていることを特徴とする。
【0019】
この発明によると、保持用装置が保持用電磁ブレーキとして設けられ、保持トルクの残部が保持用電磁ブレーキにより確保される。そして、要求される駆動トルクの水準に対応させて決定された駆動保持用モータの仕様を踏まえ、要求される保持トルクの水準に対応させるように保持用電磁ブレーキの仕様を決定することができる。これにより、駆動保持用モータ及び保持用電磁ブレーキの仕様について、要求される駆動トルク及び保持トルクの水準の両方に対してより効率よく対応させるように決定でき、容量及び装置の大型化を抑制できる。更に一般的に電磁ブレーキはモータより構成が単純なためコストダウンを図ることができる。
【0020】
第7発明に係るモータ付減速機は、第1発明乃至第6発明のいずれかのモータ付減速機において、前記減速機は、内周に複数の内歯が配置されたケースと、前記ケースに収納されるとともに前記内歯に噛み合う外歯が外周に設けられた外歯歯車と、前記外歯歯車に形成されたクランク用孔を貫通し、回転することで前記外歯歯車を偏心させて揺動させる複数のクランク軸と、前記クランク軸の一端側を回転自在に保持する基部キャリア、前記クランク軸の他端側を回転自在に保持する端部キャリア、及び、前記基部キャリアと前記端部キャリアとの間に配置されて前記基部キャリアと前記端部キャリアとを連結する支柱、を有するキャリアと、を備えている。そして、第6発明に係るモータ付減速機は、前記複数のクランク軸として、一端側において前記駆動保持用モータに連結されて前記駆動保持用モータからトルクが入力される駆動保持用クランク軸と、一端側において前記保持用装置に連結されて前記保持用装置からトルクが入力される保持用クランク軸と、が設けられ、前記出力部は、前記ケースとして又は前記端部キャリアとして設けられていることを特徴とする。
【0021】
この発明によると、減速機が、偏心して揺動する外歯歯車が設けられた偏心型減速機として構成される。このため、大きい減速比を確保することができ、より小型のモータで大きなトルクを確保することができるモータ付減速機を実現することができる。そして、減速機が偏心型減速機として構成されるため、大きい減速比を小型の構成で実現することでき、モータ付減速機の更なるコンパクト化を図ることができる。また、外歯歯車を貫通するよう配置された複数のクランク軸のそれぞれの一端側に駆動保持用モータや保持用装置が連結されるため、モータ付減速機の全体形状に関し、扁平化した構造を容易に実現することができる。
【0022】
第8発明に係るモータ付減速機は、第7発明のモータ付減速機において、前記外歯歯車及び前記キャリアには中心に貫通孔が形成され、前記複数のクランク軸は前記貫通孔の周囲に配置されていることを特徴とする。
【0023】
この発明によると、外歯歯車及びキャリアの中心に貫通孔が形成されるため、この貫通孔を介して所定の配線や配管等を配置することができる。このため、回転動作を行う減速機において、中心部に配線等が配置されることになり、配線等にねじれや切断等の不具合が発生してしまうことを抑制することができる。また、減速機の中心の貫通孔の周囲に複数のクランク軸が配置されるため、複数のクランク軸をスペース効率よく配置することができる。このため、中心に貫通孔が設けられた偏心型減速機の更なるコンパクト化を図ることができる。
【0024】
また、第9発明に係る割り出し装置は、工作機械に設けられる割り出し装置であって、第1発明乃至第8発明のいずれかのモータ付減速機を少なくとも1つ備え、工作物が保持されるワークテーブルが前記出力部に固定され、前記出力部から出力されるトルクによって前記ワークテーブルの回転方向の位置の割り出しが行われることを特徴とする。
【0025】
この発明によると、駆動トルク及び保持トルクがモータ付減速機によって全て確保されるため、モータ付減速機とは別個に保持トルクを発生させるクランプ装置のような装置を設ける必要がない。このため、クランプ動作のようにモータの作動とは別途行われるようなワークテーブルの保持動作が完了するまで工作物の加工が開始できないといった制約が生じることがない。これにより、割り出しに要する作動時間を低減することができる。そして、モータ付減速機とは別個に保持トルクを発生させるクランプ装置のような装置を設ける必要がないため、割り出し装置の大型化や機構の複雑化を招いてしまうことを抑制できる。また、装置の大型化が抑制されたモータ付減速機を備えて構成されるため、割り出し装置の大型化を抑制することができる。なお、モータ付減速機は複数台、例えば2台、2軸分、備えていても良い。
【0026】
従って、本発明によると、モータ付減速機を備える工作機械用の割り出し装置に関し、割り出しに要する作動時間を低減することができ、装置の大型化及び機構の複雑化を抑制することができる割り出し装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によると、出力部の高速回転動作時に要求される駆動トルクの水準と出力部の回転方向の位置を保持する時に要求される保持トルクの水準との両方に対して過剰な仕様となることを抑制できるとともに、容量及び装置の大型化を抑制することができるモータ付減速機を提供することができる。また、本発明によると、モータ付減速機を備える工作機械用の割り出し装置に関し、割り出しに要する作動時間を低減することができ、装置の大型化及び機構の複雑化を抑制することができる割り出し装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明は、モータと減速機とを有するモータ付減速機として広く適用することができ、また、モータ付減速機を備える工作機械用の割り出し装置として広く適用することができるものである。
【0029】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る割り出し装置1が設けられた工作機械100を示す模式図である。工作機械100には、ベッド101、コラム102、主軸台103、上下駆動モータ104、主軸駆動モータ105、主軸106、スライドワークテーブル107、割り出し装置1等が設けられている。主軸台103は、ベッド101に固定されたコラム102に支持されており、コラム102の上端部に取り付けられた上下駆動モータ104の運転によって上下方向(Z軸方向)に移動するように構成されている。主軸台103に支持された主軸106には、図示しない工具交換装置によってドリル等の工具108が着脱自在に取り付けられる。この主軸106は、主軸駆動モータ105の運転によって回転駆動されるように構成されている。また、スライドワークテーブル107は、ベッド101上において水平方向における直交する2軸方向(XY方向)に移動するように構成されており、このスライドワークテーブル107における割り出し装置取付部107aに対して、割り出し装置1が取り付けられている。
【0030】
図2は、割り出し装置1についての一部切欠き状態で示す断面図である。この図2に示すように、割り出し装置1は、本発明の第1実施形態に係るモータ付減速機2と、図中二点鎖線で示すワークテーブル11とを備えて構成されている。ワークテーブル11に対して、工作機械100による切削等の加工対象となる工作物(図示せず)が、図示しない保持具を介して保持される。このワークテーブル11は、後述するモータ付減速機2における減速機13の出力部であるケース16に対して固定される。そして、スライドワークテーブル107が移動して割り出し装置1のワークテーブル11に保持された工作物が所定の位置に配置された状態で、モータ付減速機2の減速機13のケース16から出力されるトルクによってワークテーブル11の回転方向の位置の割り出しが行われることになる。そして、割り出しが完了すると、主軸106の主軸モータ105による回転駆動が開始され、回転する工具108によって工作物に対して切削等の加工が施されることになる。
【0031】
次に、割り出し装置1の構成要素であるとともに本実施形態に係るモータ付減速機2について説明する。図3は、図2のモータ付減速機2をA線矢視方向から見た模式図である。尚、図2は、図3のC−C線矢視断面図である。図2及び図3に示すように、モータ付減速機2は、減速機13と複数の電動サーボモータであるモータ(14、15)とを備えて構成されている。そして、複数の電動サーボモータとして、2つの駆動保持用モータ14と1つの保持用モータ(保持用装置)15とが備えられている。
【0032】
図2に示すように、減速機13は、ケース16、外歯歯車17、クランク軸18、キャリア19等を備えた偏心型減速機として構成されている。そして、減速機13は、キャリア19における後述の基部キャリア22において工作機械100におけるスライドワークテーブル107の割り出し装置取付部107aに固定されている。これにより、割り出し装置1が、工作機械100に取り付けられている。また、減速機13は、複数のクランク軸18にトルクが入力され、1つの出力部であるケース16からトルクを出力するように構成されている。
【0033】
図4は、図2のB−B線矢視断面図である。図2及び図4に示すように、ケース16は、両端が開口した円筒状の部材として設けられ、モータ(14、15)が配置される一端側の開口からはキャリア22が突出し、出力側である他端側にはワークテーブル11が取り付けられている。また、ケース16の内周には複数の内歯16aが配置されている。内歯16aは、ピン状の部材(丸棒状の部材)として形成され、その長手方向がケース16の軸方向と平行となるように、ケース16の内周において形成されたピン溝に嵌め込まれて配置されている。そして、内歯16aは、ケース16の内周において周方向に沿って等間隔に配列されている。尚、以下の減速機13についての説明では、ケース16の説明と同様に、モータ(14、15)が配置される側を一端側として、出力側を他端側として説明する。
【0034】
図2及び図4に示すクランク軸18(図2では、断面でなく外径を図示)は、減速機13の回転中心線P(図2にて一点鎖線で図示)を中心とした周方向に沿った均等角度の位置に複数(本実施形態では3つ)配置されており、その軸方向が回転中心線Pと平行になるように配置されている。そして、この複数のクランク軸18として、2つの駆動保持用クランク軸20と、1つの保持用クランク軸21とが設けられている。各駆動保持用クランク軸20は、その一端側の端部20bにおいて、各駆動保持用モータ14に連結されて各駆動保持用モータ14からトルクが入力されるように構成されている。一方、保持用クランク軸21は、その一端側の端部21bにおいて、保持用モータ15に連結されて保持用モータ15からトルクが入力されるように構成されている。
【0035】
また、各クランク軸18は、外歯歯車17に形成されたクランク用孔17bをそれぞれ貫通するように配置されており、回転することで外歯歯車17を偏心させて揺動させる軸部材として設けられている。そして、駆動保持用クランク軸20には、その中途部分において、複数(2つ)の偏心部20aが直列に形成されている。同様に、保持用クランク軸21には、その中途部分において、複数(2つ)の偏心部21aが直列に形成されている。各クランク軸(20、21)における各偏心部(20a、21a)は、軸方向と垂直な断面が円形断面となるように形成され、それぞれの中心位置が各クランク軸(20、21)の回転中心線に対して偏心するように設けられている。また、各駆動保持用クランク軸20の一端側の端部20b及び他端側の端部20cは、キャリア19に対して回転自在に支持されている。同様に、保持用クランク軸21の一端側の端部21b及び他端側の端部21cも、キャリア19に対して回転自在に支持されている。
【0036】
図2及び図4に示す外歯歯車17は、平行に配置された状態でケース16内に複数(2つ)収納されている。各外歯歯車17には、中心に貫通孔27が形成されている。また、各外歯歯車17には、前述のように、クランク軸18が貫通するクランク用孔17bが円形孔として形成されている。これにより、複数のクランク軸18が、貫通孔27の周囲に配置されるように構成されている。尚、各クランク軸28は、クランク用孔17bにおいて針状ころ軸受を介して外歯歯車17に対して回転自在に保持されている。
【0037】
また、各外歯歯車17には、クランク用孔17bに加え、後述する支柱24が貫通する支柱用孔17cが更に形成されている。尚、各外歯歯車17は、回転中心線Pと平行な方向において、クランク用孔17b及び支柱用孔17cの位置がそれぞれ対応するように配置されている。支柱用孔17cは、支柱24に対応して外歯歯車17の周方向に沿った均等角度の位置に複数(本実施形態では3つ)配置されている。また、支柱用孔17cは、外歯歯車17の周方向において、クランク用孔17bと交互に形成されている。尚、支柱用孔17cには、支柱24が非接触の遊嵌状態で貫通している。
【0038】
また、各外歯歯車17の外周には、内歯16aに噛み合う外歯17aが設けられている。外歯歯車17の外歯17aの歯数と内歯16aの歯数とは異なっており、クランク軸18の回転に伴って、外歯歯車17の外歯17aと内歯16aとの噛み合いがずれ、外歯歯車17が偏心して揺動するように構成されている。
【0039】
図5は、図4のD−D線矢視断面図である。図2乃至図5に示すように、キャリア19は、基部キャリア22、端部キャリア23、及び支柱24を備えて構成されている。基部キャリア22は、各クランク軸18の一端側を回転自在に保持するよう構成されており、駆動保持用クランク軸20の一端側の端部20b及び保持用クランク軸21の一端側の端部21bをそれぞれ円錐ころ軸受25を介して回転自在に保持している。また、ケース16から突出する基部キャリア22の一端側の端部の縁部分にはフランジ部22aが形成され、基部キャリア22は、このフランジ部22aにおいてボルト28(図2、図5で1つのみ図示)を介して、工作機械100における割り出し装置取付部107aに取り付けられる。
【0040】
端部キャリア23は、支柱24を介して基部キャリア22と連結されている。そして、端部キャリア23は、各クランク軸18の他端側を回転自在に保持するように構成されており、駆動保持用クランク軸20の他端側の端部20c及び保持用クランク軸21の他端側の端部21cをそれぞれ円錐ころ軸受26を介して回転自在に保持している。
【0041】
支柱24は、基部キャリア22と端部キャリア23との間に配置され、基部キャリア22と端部キャリア23とを連結する柱状部部分として設けられている。支柱24は、回転中心線Pを中心とした周方向に沿った均等角度の位置に複数(本実施形態では3つ)配置され、その軸方向が回転中心線Pの方向と平行となるように配置されている。尚、支柱24とクランク軸18とは、回転中心線Pを中心とした周方向に沿って交互に配置されている。各支柱24は、端部キャリア23に一体に形成され、端部キャリア23の一端側において突出するように設けられている。また、支柱24は、その一端側において、基部キャリア22を貫通する支柱ボルト31と螺合するように構成されている。これにより、基部キャリア22と端部キャリア23とが支柱24及び支柱ボルト31を介して結合されるように構成されている。
【0042】
尚、キャリア19の外周とケース16の内周との間には、一対の円錐ころ軸受(29、30)が配置されている。円錐ころ軸受29は基部キャリア22の外周とケース16の内周との間に配置され、円錐ころ軸受30は端部キャリア23の外周とケース16の内周との間に配置されている。これにより、キャリア19に対してケース16が一対の円錐ころ軸受(29、30)を介して回転自在に取り付けられている。
【0043】
また、キャリア19には、その中心において、基部キャリア22及び端部キャリア23のいずれもが貫通する貫通孔32が形成されている。そして、キャリア19の内側には円筒部材33が配置されている。この円筒部材33は、外歯歯車17の貫通孔27を貫通するとともに、一端側が基部キャリア22の内周に取り付けられ、他端側が端部キャリア23の内周に取り付けられている。これにより、貫通孔32における基部キャリア22側と端部キャリア23側とが円筒部材33を介して連通する1つの貫通孔として設けられ、この貫通孔32内に配線等が挿通されたときに外歯歯車17と干渉することがないように構成されている。
【0044】
図2及び図4に示す駆動保持用モータ14は、2つ設けられており、それぞれ減速機13に連結されている。そして、各駆動保持用モータ14は、ステータ14aとロータ14bとを備えて構成されており、ステータ14aは基部キャリア22に対して固定され、ロータ14bは駆動保持用クランク軸20の一端側の端部20bに連結されている。この駆動保持用モータ14は、出力部であるケース16の回転動作時においては回転動作のための駆動トルクを発生させ、ケース16の回転方向の位置を保持する時においてはその保持動作のための保持トルクを発生させて減速機13に伝達するモータとして設けられている。また、部品点数の削減によるコストダウンを図るべく、2つの駆動保持用モータ14のうちの一方にのみロータ14bの回転角を検出するためのエンコーダ34が取り付けられている。なお、偏心型減速機である減速機13はバックラッシュの影響が小さいため、エンコーダ34の信号を利用して、他方の駆動保持用モータ14を制御することができる。もちろん、他方の駆動保持用モータ14にもエンコーダを取り付けても構わない。
【0045】
図2及び図4に示す保持用モータ15は、1つ設けられており、減速機13に連結されている。そして、保持用モータ15は、ステータ15aとロータ15bとを備えて構成されており、ステータ15aは基部キャリア22に対して固定され、ロータ15bは保持用クランク軸21の一端側の端部21bに連結されている。この保持用モータ15は、ケース16の回転方向の位置を保持する時における保持トルクを発生させて減速機13に伝達するモータとして設けられている。尚、部品点数の削減によるコストダウンを図るべく、保持用モータ15には、エンコーダは取り付けられていない。偏心型減速機である減速機13はバックラッシュの影響が小さいため、エンコーダ34の信号を利用して、保持用モータ15を制御することができる。もちろん、保持用モータ15にもエンコーダを取り付けても構わない。
【0046】
図6は、駆動保持用モータ14及び保持用モータ15の制御構成を示すブロック図である。図6に示すように、モータ付減速機2においては、その制御系統として、ドライブ装置35、ドライブ装置36、及びコントローラ37が備えられている。ドライブ装置35は、2つの駆動保持用モータ14に接続され、これらの駆動保持用モータ14を制御するように構成されている。また、ドライブ装置35には、エンコーダ34も接続されている。尚、2つの駆動保持用モータ14はトルク特性が同一であり、ドライブ装置35から出力される同一のトルク指令信号が2つの駆動保持用モータ14に入力される。ドライブ装置36は、保持用モータ15に接続され、保持用モータ15を制御するように構成されている。
【0047】
コントローラ37は、ドライブ装置(35、36)に接続され、ドライブ装置(35、36)に対して制御指令を出力するように構成されている。尚、コントローラ37においては、エンコーダ34で検出された回転角信号がドライブ装置35を介して入力され、この回転角信号に基づいて出力部であるケース16の回転方向の位置が算出される。そして、この算出結果と所定の目標値とに基づいて作成された制御指令がドライブ装置35及びドライブ装置36へ入力され、駆動保持用モータ14及び保持用モータ15の回転方向の位置を制御するフィードバック制御が行われることになる。
【0048】
また、ケース16に加減速回転及び高速域における定速回転の回転動作を行わせる時には、コントローラ37からは、ドライブ装置35に対して、ケース16が回転方向における所定の位置に到達するまで駆動保持用モータ14を運転させる制御指令が出力される。ドライブ装置35は、この制御指令に基づいて2つの駆動保持用モータ14の運転を制御し、ケース16の回転方向の位置を所定の位置に到達させて停止させる。一方、ケース16の回転方向の位置を保持する保持動作時には、コントローラ37からは、ドライブ装置35及びドライブ装置36に対して、ケース16をその回転方向における所定の位置に位置決めするための制御指令が出力される。この制御指令に基づいて、ドライブ装置35は2つの駆動保持用モータ14に同一の所定のトルク指令信号を出力し、ドライブ装置36は保持用モータ15に所定のトルク指令信号を出力する。これにより、ケース16をその回転方向における所定の位置に位置決めする制御が行われる。なお、回転しながら加工できるように、外力(割り出し装置1に作用する加工反力)に対抗しながら高速域よりも極めて低い回転速度である低速域で回転動作するように構成してもよく、このとき、駆動保持用モータ14及び保持用モータ15は、保持トルクと同等のトルクである低速駆動トルクが発生可能なように構成され、コントローラ37からは、ドライブ装置35及びドライブ装置36に対して、ケース16を低速域における定速回転の回転動作させるための制御指令が出力される。この制御指令に基づいて、ドライブ装置35は2つの駆動保持用モータ14に同一の所定のトルク指令信号を出力し、ドライブ装置36は保持用モータ15に所定のトルク指令信号を出力する。これにより、ケース16を低速域における定速回転の回転動作させるための制御が行われる。
【0049】
次に、モータ付減速機2の作動について説明する。ケース16の高速回転動作時(加減速回転動作時、高速域における定速回転動作時)には、上述のように、コントローラ37からの制御指令に基づいてドライブ装置35が駆動保持用モータ14を制御し、2つの駆動保持用モータ14のロータ14bが回転する。各駆動保持用モータ14のロータ14bが回転すると、各駆動保持用クランク軸20がその2つの偏心部20aとともに回転する。これにより、各偏心部20aから各外歯歯車17にそれぞれ荷重が作用し、各外歯歯車17が内歯16aと噛み合いをずらしながら偏心して揺動する。そして、外歯歯車17の揺動に伴って、ケース16がキャリア19に対して回転し、ケース16から駆動トルクが出力されることになる。尚、駆動保持用クランク軸20の回転によって外歯歯車17が揺動するときには、保持用クランク軸21も回転し、この保持用クランク軸21とともにロータ15bも回転する。このとき、負荷とならないように、保持用モータ15は、制御回路において切り離された状態となっており、空転することになる。なお、負荷が無視できる程度であれば、切り離さなくても構わない。
【0050】
一方、ケース16の保持動作時には、前述のように、コントローラ37からの制御指令に基づいてドライブ装置35が駆動保持用モータ14を制御するとともにドライブ装置36が保持用モータ15を制御する。そして、駆動保持用モータ14のロータ14bから駆動保持用クランク軸20に対して、保持トルクの一部が、また保持用モータ15のロータ15bから保持用クランク軸21に対して、保持トルクの残部が入力される。駆動保持用クランク軸20及び保持用クランク軸21を介して保持トルクが入力されると、それらの各偏心部(20a、21a)から各外歯歯車17にそれぞれ荷重が作用し、各外歯歯車17が内歯16aと噛み合いをずらして偏心しながら揺動して、保持トルクを伝達する。そして、外歯歯車17の揺動に伴って、ケース16に作用する外力(割り出し装置1に作用する加工反力)に抗してこのケース16を回転方向における所定の位置に保持するための保持トルクが、ケース16から出力されることになる。
【0051】
また、ケース16を低速域における定速回転動作(低速回転動作)させるように構成してもよく、低速回転動作時には、前述のように、コントローラ37からの制御指令に基づいてドライブ装置35が駆動保持用モータ14を制御するとともにドライブ装置36が保持用モータ15を制御する。そして、駆動保持用モータ14のロータ14bから駆動保持用クランク軸20に対して、低速駆動トルクの一部が、保持用モータ15のロータ15bから保持用クランク軸21に対して、低速駆動トルクの残部が入力される。駆動保持用クランク軸20及び保持用クランク軸21を介して低速駆動トルクが入力されると、それらの各偏心部(20a、21a)から各外歯歯車17にそれぞれ荷重が作用し、各外歯歯車17が内歯16aと噛み合いをずらして偏心しながら揺動して、低速駆動トルクを伝達する。そして、外歯歯車17の揺動に伴って、ケース16に作用する外力(割り出し装置1に作用する加工反力)に抗してこのケース16を低速回転させるための低速駆動トルクが、ケース16から出力されることになる。
【0052】
次に、駆動保持用モータ14及び保持用モータ15の仕様について更に説明する。駆動保持用モータ14は、その短時間定格における最大出力トルクの設定が、ケース16の回転動作時に要求される加減速トルクを発生可能に設定されている。そして、保持用モータ15は、その連続定格における定格トルクの設定が、ケース16をその回転方向における所定の位置に保持するために要求される保持トルクのうち2つの駆動保持用モータ14の連続定格における定格トルクによって不足する分のトルクを発生可能に設定されている。即ち、要求される保持トルクから2つの駆動保持用モータ14の定格トルクの合計を差し引いた分のトルクを補うことができるように、保持用モータ15の定格トルクが設定されている。
【0053】
また、保持用モータ15のトルク定数は、保持用モータ15の連続定格における定格電流が駆動保持用モータ14の連続定格における定格電流よりも小さくなるように、設定されている。尚、このように保持用モータ15のトルク定数を設定するには、例えば、駆動保持用モータ14に対して保持用モータ15の巻き線のターン数を多くする方法や、コイルの巻かれている積層鋼板の厚みを増やす方法により対応することができる。この場合、減速機13の外歯歯車17及びキャリア19の貫通孔(27、32)の寸法と干渉することがなければ、保持用モータ15の外径寸法を大きく設定することもできる。
【0054】
ここで、駆動保持用モータ14及び保持用モータ15の仕様の設定の仕方について、更に一般化して説明する。クランク軸18の軸数がk(例えば、kは2〜4程度の整数)に設定され、駆動保持用モータ14の軸数がLとすると、保持用モータ15の軸数Mは(k−L)となる。即ち、k=2であれば、LとMの組み合わせは、(L、M)=(1、1)のみとなる。また、k=3であれば、LとMの組み合わせは、(L、M)=(2、1)又は(L、M)=(1、2)となる。また、k=4であれば、LとMの組み合わせは、(L、M)=(3、1)、(L、M)=(2、2)、又は(L、M)=(1、3)となる。
【0055】
全てのモータについて同じ仕様のモータを用い、それらの最大出力トルクを要求される加減速トルクに対応させた設定とした場合、ケース16の保持動作時にはモータの定格トルクでは要求される保持トルクに対して不足するため、従来技術のようにクランプ装置等が別途必要となる。そして、全てのモータの定格トルクを一律にP倍に大きく設定して要求される保持トルクを確保しようとする場合は、全てのモータの最大出力トルクも一律にP倍となるとともにドライブ装置の容量もP倍必要となり、保持トルクに対応できるものの要求される加減速トルクに対しては過剰な仕様となってしまう。これに対し、本実施形態の場合は、駆動保持用モータ14の容量についてはk/L倍に設定し、駆動保持用モータ14の定格トルク及び最大出力トルクともにk/L倍に設定することができる。そして、要求される保持トルクが上記の例ではP倍となるため、保持用モータ15の定格トルクについては、{k×P−(k/L)×L}/M倍に設定することができる。
【0056】
上記の設定の仕方について、例えば、k=3、(L、M)=(2、1)、P=2の場合を例にとって具体的に説明する。尚、ここでは仮に、全てのモータについて同じ仕様のモータを用いてそれらの最大出力トルクを要求される加減速トルクに対応させた設定とした場合における定格トルクを100%とし、最大出力トルクが定格トルクの3倍の値となるものとして説明する。この場合、要求される加減速トルクの合計は、300%×k=900%となる。そして、全てのモータの定格トルクを一律にP倍に大きく設定して要求される保持トルクを確保しようとする場合、要求される保持トルクの合計は100%×k×P=600%となる。しかし、このように設定すると、最大出力トルクの合計は300%×k×P=1800%となって、要求される加減速トルクの水準である900%に対して過剰な仕様となる。
【0057】
これに対し、本実施形態の場合は、駆動保持用モータ14については、定格トルクの合計は100%×k/L×L=300%で、最大出力トルクの合計は300%×k/L×L=900%となる。このため、要求される加減速トルクの水準である900%に対応した設定となる。そして、保持用モータ15については、定格トルクが{100%×k×P−100%×(k/L)×L}/M=300%となる。このため、駆動保持用モータ14及び保持用モータ15の定格トルクの合計は300%+300%=600%となり、要求される保持トルクの水準である600%に対応した設定となる。尚、保持用モータ15はトルクを発生させずに高速回転駆動時には空転するため、保持用モータ15の最大出力トルクの仕様は、高速回転駆動時の動作に影響を与えないことになる。
【0058】
また、例えば、保持用モータ15のトルク定数を、駆動保持用モータ14の4倍とすることで、保持用モータ15の連続定格における定格電流は、全ての駆動保持用モータ14の連続定格における定格電流の総和と比べて、4分の1(本実施形態の場合、駆動保持用モータ14は2つあるため、1台あたりでは2分の1)となる。従って、全てのモータの定格トルクを一律に大きくして保持トルクを確保しようとする場合に比して、より小さな電流で保持トルクを確保することができる。
【0059】
なお、回転させながら加工をするために、外力(割り出し装置1に作用する加工反力)に対抗しながら、高速回転域よりも極めて低い回転速度である低速回転させる場合は、必要な回転速度において、保持トルクと同等のトルクである低速駆動トルクを確保すべく、駆動保持用モータ14又は保持用モータ15のいずれか又は両方のトルク定数を低速回転動作させない場合に比べて大きくすれば良い。更に本実施形態においては、2つの駆動保持用モータ14のトルク特性を同一としているが、ドライブ装置を個別に設け、一方の駆動保持用モータ14の低速駆動トルクを他方よりも大きくして異なる仕様としても構わない。
【0060】
以上説明したモータ付減速機2によると、駆動保持用モータ14と本実施形態の保持用装置である保持用モータ15とが備えられる。そして、減速機13の出力部であるケース16の回転動作時の駆動トルクを駆動保持用モータ14が発生させるように構成されている。このため、要求される駆動トルクの水準に対応させるように駆動保持用モータの仕様を決定することができ、モータの仕様が要求される駆動トルクの水準に対して過剰な仕様となることを抑制できる。更に、モータ付減速機2では、ケース16の回転方向の位置を保持する時の保持トルクを駆動保持用モータ14及び保持用モータ15が発生させるように構成されている。このため、要求される駆動トルクの水準に対応させて決定された駆動保持用モータ14の仕様を踏まえ、要求される保持トルクの水準に対応させるように保持用モータ15の仕様を決定することができる。これにより、モータ付減速機2の仕様が要求される保持トルクの水準に対して過剰な仕様となることを抑制できる。また、要求される駆動トルク及び保持トルクに対して過剰な仕様となることを抑制できるため、モータ(14、15)及びそのドライブ装置(35、36)の容量が大型化してしまうことを抑制でき、モータ付減速機2の装置構成が大型化してしまうことも抑制することできる。また、モータ付減速機2のモータは、複数のモータ(14、14、15)として構成するため、小容量化して小型化した各モータをそれらの軸方向と垂直な平面に沿って配置するように減速機13に取り付けることができる。これにより、モータ付減速機2の全体形状に関し、更に扁平化させた構造を実現することができる。このように扁平化した構造のモータ付減速機2は、工作機械用の割り出し装置1に用いられる場合により好適となる。
【0061】
従って、本実施形態によると、ケース16の高速回転動作時に要求される駆動トルクの水準とケース16の回転方向の位置を保持する時に要求される保持トルクの水準との両方に対して過剰な仕様となることを抑制できるとともに、容量及び装置の大型化を抑制することができるモータ付減速機2を提供することができる。
【0062】
また、モータ付減速機2によると、ケース16の回転動作時の加減速トルクに基づいて駆動保持用モータ14の最大出力トルクが設定され、保持トルクのうち駆動保持用モータ14の定格トルクで不足する分を補うように保持用モータ15の定格トルクが設定される。このため、要求される加減速トルクの水準と保持トルクの水準との両方に対してほとんど無駄のない効率の優れた仕様のモータ付減速機2を実現することができ、容量及び装置の更なるコンパクト化を図ることができる。
【0063】
また、モータ付減速機2によると、保持用装置が保持用モータ15として設けられているため、駆動トルク及び保持トルクが全てモータによって発生することになる。そして、要求される駆動トルクの水準に対応させて決定された駆動保持用モータ14の仕様を踏まえ、要求される保持トルクの水準に対応させるように保持用モータ15の仕様を決定することができる。これにより、モータ付減速機2においてトルクを発生させる全てのモータの仕様について、要求される駆動トルク及び保持トルクの水準の両方に対してより効率よく対応させるように決定でき、容量及び装置の大型化を抑制できる。
【0064】
また、モータ付減速機2によると、保持用モータ15の定格電流が駆動保持用モータ14の定格電流よりも小さくなるように、保持用モータ15のトルク定数が駆動保持用モータ14より大きく設定されている。このため、ケース16の回転方向の位置を保持する保持動作時には、保持用モータ15に必要な電流が駆動保持用モータ14に必要な電流よりも少なくてよく、全てのモータの定格トルクを一律に大きくして保持トルクを確保しようとする場合に比して、より小さな電流で保持トルクを確保することができる。また、保持用モータ15は、ケース16の高速回転動作時にはトルクを発生させず、保持動作時にトルクを発生させるため、トルク定数を上記のように変更してもケース16の回転動作時には影響が生じないことになる。
【0065】
また、モータ付減速機2によると、駆動保持用モータ14と保持用モータ15が低速回転動作時に発生させるトルクが保持トルクと同等となるように、駆動保持用モータ14や保持用モータの一部又は全部のトルク定数が設定されている。従って、出力部からの反力に対抗しながら、ゆっくりと回転動作させることができ、例えば工作機械用の割り出し装置に用いられる場合は、回転させながら加工をすることができるようになる。なお、一般的に電動モータの低速回転動作時に発生可能なトルクは、ケース16の回転方向の位置を保持する時の保持トルクとほぼ同等か若干小さい程度なので、低速回転動作時におけるトルクが保持トルクと同等となるように駆動保持用モータ14や保持用モータ15の一部又は全部のトルク定数を設定しても容積としてはほとんど変わらない。
【0066】
また、モータ付減速機2によると、減速機13が、偏心して揺動する外歯歯車17が設けられた偏心型減速機として構成される。このため、大きい減速比を確保することができ、より小型のモータ(14、15)で大きなトルクを確保することができるモータ付減速機2を実現することができる。そして、減速機13が偏心型減速機として構成されるため、大きい減速比を小型の構成で実現することでき、モータ付減速機2の更なるコンパクト化を図ることができる。また、外歯歯車17を貫通するよう配置された複数のクランク軸18のそれぞれの一端側に駆動保持用モータ14や保持用モータ15が連結されるため、モータ付減速機2の全体形状に関し、扁平化した構造を容易に実現することができる。
【0067】
また、モータ付減速機2によると、外歯歯車17及びキャリア19の中心に貫通孔(27、32)が形成されるため、この貫通孔(27、32)を介して所定の配線や配管等を配置することができる。このため、回転動作を行う減速機13において、中心部に配線等が配置されることになり、配線等にねじれや切断等の不具合が発生してしまうことを抑制することができる。また、減速機13の中心の貫通孔(27、32)の周囲に複数のクランク軸18が配置されるため、複数のクランク軸18をスペース効率よく配置することができる。このため、中心に貫通孔(27、32)が設けられた偏心型減速機の更なるコンパクト化を図ることができる。
【0068】
また、本実施形態の割り出し装置1によると、駆動トルク及び保持トルクがモータ付減速機2によって全て確保されるため、モータ付減速機2とは別個に保持トルクを発生させるクランプ装置のような装置を設ける必要がない。このため、クランプ動作のようにモータの作動とは別途行われるようなワークテーブルの保持動作が完了するまで工作物の加工が開始できないといった制約が生じることがない。これにより、割り出しに要する作動時間を低減することができる。そして、モータ付減速機2とは別個に保持トルクを発生させるクランプ装置のような装置を設ける必要がないため、割り出し装置1の大型化や機構の複雑化を招いてしまうことを抑制できる。また、装置の大型化が抑制されたモータ付減速機2を備えて構成されるため、割り出し装置1の大型化を抑制することができる。
【0069】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る割り出し装置3及びモータ付減速機4について説明する。図7は、割り出し装置3についての一部切欠き状態で示す断面図である。割り出し装置3は、第1実施形態の割り出し装置1と同様に、工作機械100に設けられて、割り出し装置1と同様に使用される。そして、割り出し装置3は、第1実施形態の割り出し装置1と同様に、モータ付減速機4とワークテーブル11とを備えて構成されている。また、本実施形態のモータ付減速機4は、第1実施形態のモータ付減速機2と同様に、減速機13と複数の電動サーボモータであるモータ14と保持用装置40とを備えて構成されている。そして、モータ付減速機4は、複数のモータ14として2つの駆動保持用モータ14を備え、保持用装置40として、電磁ブレーキである、保持用電磁ブレーキ40を備えている。但し、割り出し装置3及びモータ付減速機4では、保持用装置40の構成において第1実施形態とは異なっている。以下、第1実施形態と同様の構成については図面において同一の符号を付して説明を省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0070】
図7に示すように、割り出し装置3及びモータ付減速機2では、保持用装置40として保持用モータではなく保持用電磁ブレーキ40(図7では、断面でなく外径を図示)が設けられている。保持用電磁ブレーキ40は、減速機13に連結されており、外部のハウジング部分は基部キャリア22に固定され、内部において保持用クランク軸21に制動トルクを付与可能に連結されている。即ち、保持用電磁ブレーキ40は、一般的な電磁ブレーキと同様に、その内部においてコイル40aと磁性粉体(図示せず)とが備えられており、コイル40に通電することで、その通電によって生じる磁束により内部の磁性粉体を結合させ、保持用クランク軸21の一端側の端部21bに制動トルクを付与できるように構成されている。なお、保持用電磁ブレーキ40は、必要な保持トルクを発生可能なものであれば、バネを用いたものであってもよい。この場合、通電していないときにトルクを発生させる非励磁作動型とすれば、通電していないときでも一定の外力には対抗可能となるため、特に割り出し装置1に用いる場合において安全性を高めることができるようになる。
【0071】
モータ付減速機4では、駆動保持用モータ14は、第1実施形態と同様に構成され、ケース16の回転動作時においては回転動作のための駆動トルクを発生させ、ケース16の回転方向の位置を保持する保持動作時においてはその保持動作のための保持トルクを発生させて減速機13に伝達するモータとして設けられている。そして、保持用電磁ブレーキ40は、保持動作時のみコイル40aに通電が行われ、保持動作時における保持トルクのみを発生させて減速機13に伝達するように構成されている。
【0072】
図8は、モータ付減速機4における駆動保持用モータ14及び保持用電磁ブレーキ40の制御構成を示すブロック図である。図8に示すように、モータ制御装置4では、その制御系統として、第1実施形態と同様のドライブ装置35及びコントローラ37と、保持用電磁ブレーキ40を制御する制御装置41とが備えられている。制御装置41は、コントローラ37からの制御指令に基づいて、保持用電磁ブレーキ40のコイル40aへの通電タイミングや電流を制御するように構成されている。
【0073】
モータ付減速機4は、ケース16の回転動作時においては、第1実施形態と同様に作動する。そして、ケース16の保持動作時には、前述のように、コントローラ37からの制御指令に基づいてドライブ装置35が駆動保持用モータ14を制御するとともに制御装置41が保持用電磁ブレーキ40を制御する。そして、駆動保持用モータ14のロータ14bから駆動保持用クランク軸20に対して、保持用電磁ブレーキ40から保持用クランク軸21に対して、それぞれ保持トルクが入力される。駆動保持用クランク軸20及び保持用クランク軸21に保持トルクが入力されると、それらの各偏心部(20a、21a)から各外歯歯車17にそれぞれ荷重が作用し、各外歯歯車17が内歯16aと噛み合いをずらして偏心しながら揺動して、保持トルクを伝達する。そして、外歯歯車17の揺動に伴って、ケース16に作用する外力(割り出し装置3に作用する加工反力)に抗してこのケース16を回転方向における所定の位置に保持するための保持トルクが、ケース16から出力されることになる。
【0074】
また、モータ付減速機4においては、駆動保持用モータ14は、第1実施形態と同様に、その短時間定格における最大出力トルクの設定が、ケース16の回転動作時に要求される加減速トルクを発生可能に設定されている。そして、保持用電磁ブレーキ40は、その連続定格における定格トルクの設定が、ケース16をその回転方向における所定の位置に保持するために要求される保持トルクのうち2つの駆動保持用モータ14の連続定格における定格トルクによって不足する分のトルクを発生可能に設定されている。即ち、要求される保持トルクから2つの駆動保持用モータ14の定格トルクの合計を差し引いた分のトルクを補うことができるように、保持用電磁ブレーキ15の定格トルクが設定されている。
【0075】
以上説明したモータ付減速機4によると、駆動保持用モータ14と本実施形態の保持用装置である保持用電磁ブレーキ40とが備えられる。そして、減速機13の出力部であるケース16の回転動作時の駆動トルクを駆動保持用モータ14が発生させるように構成されている。このため、要求される駆動トルクの水準に対応させるように駆動保持用モータの仕様を決定することができ、モータの仕様が要求される駆動トルクの水準に対して過剰な仕様となることを抑制できる。更に、モータ付減速機4では、ケース16の回転方向の位置を保持する時の保持トルクを駆動保持用モータ14及び保持用電磁ブレーキ40が発生させるように構成されている。このため、要求される駆動トルクの水準に対応させて決定された駆動保持用モータ14の仕様を踏まえ、要求される保持トルクの水準に対応させるように保持用電磁ブレーキ40の仕様を決定することができる。これにより、モータ付減速機4の仕様が要求される保持トルクの水準に対して過剰な仕様となることを抑制できる。また、要求される駆動トルク及び保持トルクに対して過剰な仕様となることを抑制できるため、モータ14及びそのドライブ装置35と、保持用電磁ブレーキ40及びその制御装置41の容量が大型化してしまうことを抑制でき、モータ付減速機4の装置構成が大型化してしまうことも抑制することできる。
【0076】
従って、本実施形態によると、ケース16の高速回転動作時に要求される駆動トルクの水準とケース16の回転方向の位置を保持する時に要求される保持トルクの水準との両方に対して過剰な仕様となることを抑制できるとともに、容量及び装置の大型化を抑制することができるモータ付減速機4を提供することができる。
【0077】
また、モータ付減速機4によると、ケース16の回転動作時の加減速トルクに基づいて駆動保持用モータ14の最大出力トルクが設定され、保持トルクのうち駆動保持用モータ14の定格トルクで不足する分を補うように保持用電磁ブレーキ40の定格トルクが設定される。このため、要求される加減速トルクの水準と保持トルクの水準との両方に対してほとんど無駄のない効率の優れた仕様のモータ付減速機4を実現することができ、容量及び装置の更なるコンパクト化を図ることができる。
【0078】
また、モータ付減速機4によると、保持用装置が保持用電磁ブレーキ40として設けられ、保持トルクが保持用電磁ブレーキ40により確保される。そして、要求される駆動トルクの水準に対応させて決定された駆動保持用モータ14の仕様を踏まえ、要求される保持トルクの水準に対応させるように保持用電磁ブレーキ40の仕様を決定することができる。これにより、駆動保持用モータ14及び保持用電磁ブレーキ40の仕様について、要求される駆動トルク及び保持トルクの水準の両方に対してより効率よく対応させるように決定でき、容量及び装置の大型化を抑制できる。
【0079】
また、本実施形態の割り出し装置3によると、駆動トルク及び保持トルクがモータ付減速機4によって全て確保されるため、モータ付減速機4とは別個に保持トルクを発生させるクランプ装置のような装置を設ける必要がない。このため、クランプ動作のようにモータの作動とは別途行われるようなワークテーブルの保持動作が完了するまで工作物の加工が開始できないといった制約が生じることがない。これにより、割り出しに要する作動時間を低減することができる。そして、モータ付減速機4とは別個に保持トルクを発生させるクランプ装置のような装置を設ける必要がないため、割り出し装置3の大型化や機構の複雑化を招いてしまうことを抑制できる。また、装置の大型化が抑制されたモータ付減速機4を備えて構成されるため、割り出し装置3の大型化を抑制することができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。例えば、次のように変更して実施してもよい。
【0081】
上記の実施形態では、駆動保持用モータが2つで保持用装置が1つ備えられたモータ付減速機を例にとって説明したが、この通りでなくてもよく、駆動保持用モータ及び保持用装置の数については、種々変更して実施することができる。また、減速機については、必ずしも偏心型減速機として構成されていなくてもよい。また、偏心型減速機として構成された減速機を用いる場合であっても、クランク軸や外歯歯車の数については種々変更して実施してもよい。また、上記の実施形態では、減速機の出力部がケースとして設けられている場合を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、ケースが割り出し装置取付部に対して固定されるとともに、出力部が端部キャリアとして設けられ、この端部キャリアにワークテーブルが取り付けられるものであってもよい。
【0082】
上記の実施形態では、上下方向に沿って配置された工具を支持する主軸が工作物に対して上下方向に移動しながら加工を行う工作機械に対して本発明の割り出し装置が適用される場合を例にとって説明したが、この通りでなくてもよく、制御軸の構成が異なる工作機械に対して本発明を適用することもできる。図9は、図1に示す工作機械100とは制御軸の構成が異なる工作機械110に割り出し装置1が設けられた状態を示す模式図である。工作機械110では、コラム102は、ベッド101に対して水平方向における所定の方向(図面の左右方向)に移動し、工具108が取り付けられる主軸106がコラム102に対して上下方向に移動する。そして、スライドワークテーブル107がベッド101に対して水平方向におけるコラム102の移動方向と直交する方向に移動し、このスライドワークテーブル107に割り出し装置1が取り付けられている。割り出し装置1は、ワークテーブル11が上方に向くように配置されており、このワークテーブル11に工作物111が図示しない保持具を介して保持される。割り出し装置1による割り出しの作動が完了すると、主軸106の回転駆動が開始され、水平姿勢で回転する工具108によって工作物111に対して切削等の加工が施されることになる。更にワークテーブル11は例えば直交する2つの軸を回転軸として備えており、両方の軸にモータ付減速機2が設けられていても良い。このように、構成が異なる工作機械であっても本発明の割り出し装置を広く適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、モータと減速機とを有するモータ付減速機、及びそのモータ付減速機を用いた工作機械用の割り出し装置として、広く適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の第1実施形態に係る割り出し装置が設けられた工作機械を示す模式図である。
【図2】図1に示す割り出し装置についての一部切欠き状態で示す断面図である。
【図3】図2に示す割り出し装置のモータ付減速機をA線矢視方向から見た模式図である。
【図4】図2のB−B線矢視断面図である。
【図5】図4のD−D線矢視断面図である。
【図6】図2に示すモータ付減速機における駆動保持用モータ及び保持用モータの制御構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る割り出し装置についての一部切欠き状態で示す断面図である。
【図8】図7に示すモータ付減速機における駆動保持用モータ及び保持用電磁ブレーキの制御構成を示すブロック図である。
【図9】図1に示す工作機械とは制御軸の構成が異なる工作機械に図2に示す割り出し装置が設けられた状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0085】
2 モータ付減速機
13 減速機
14 駆動保持用モータ
15 保持用モータ(保持用装置)
16 ケース(出力部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと減速機とを有するモータ付減速機であって、
1つの出力部からトルクを出力する前記減速機と、
前記減速機に連結される前記モータとして設けられ、前記出力部の高速回転動作時における駆動トルク及び前記出力部の回転方向の位置を保持する時における保持トルクの一部を発生させて前記減速機に伝達する駆動保持用モータと、
前記減速機に連結され、前記保持トルクの残部を発生させて前記減速機に伝達する保持用装置と、
を備えていることを特徴とする、モータ付減速機。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ付減速機であって、
前記駆動保持用モータは、その短時間定格における最大出力トルクの設定が、前記出力部の高速回転動作時の加減速トルクを発生可能に設定されており、
前記保持用装置は、その連続定格における定格トルクの設定が、前記保持トルクのうち前記駆動保持用モータの連続定格における定格トルクによって不足するトルクを発生可能に設定されていることを特徴とする、モータ付減速機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のモータ付減速機であって、
前記保持用装置は、前記減速機に連結されるモータであって、前記保持トルクの残部を発生させて前記減速機に伝達する保持用モータとして設けられていることを特徴とする、モータ付減速機。
【請求項4】
請求項3に記載のモータ付減速機であって、
前記保持用モータの連続定格における定格電流が前記駆動保持用モータの連続定格における定格電流よりも小さくなるように、前記保持用モータのトルク定数が前記駆動保持用モータより大きく設定されていることを特徴とする、モータ付減速機。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載のモータ付減速機であって、
前記駆動保持用モータと前記保持用モータが低速回転動作時に発生させるトルクが、前記保持トルクと同等となるように前記駆動保持用モータ及び前記保持用モータのトルク定数が設定されていることを特徴とする、モータ付減速機。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載のモータ付減速機であって、
前記保持用装置は、前記減速機に連結される電磁ブレーキであって、前記保持トルクの残部を発生させて前記減速機に伝達する保持用電磁ブレーキとして設けられていることを特徴とする、モータ付減速機。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のモータ付減速機であって、
前記減速機は、
内周に複数の内歯が配置されたケースと、
前記ケースに収納されるとともに前記内歯に噛み合う外歯が外周に設けられた外歯歯車と、
前記外歯歯車に形成されたクランク用孔を貫通し、回転することで前記外歯歯車を偏心させて揺動させる複数のクランク軸と、
前記クランク軸の一端側を回転自在に保持する基部キャリア、前記クランク軸の他端側を回転自在に保持する端部キャリア、及び、前記基部キャリアと前記端部キャリアとの間に配置されて前記基部キャリアと前記端部キャリアとを連結する支柱、を有するキャリアと、
を備え、
前記複数のクランク軸として、一端側において前記駆動保持用モータに連結されて前記駆動保持用モータからトルクが入力される駆動保持用クランク軸と、一端側において前記保持用装置に連結されて前記保持用装置からトルクが入力される保持用クランク軸と、が設けられ、
前記出力部は、前記ケースとして又は前記端部キャリアとして設けられていることを特徴とする、モータ付減速機。
【請求項8】
請求項7に記載のモータ付減速機であって、
前記外歯歯車及び前記キャリアには中心に貫通孔が形成され、前記複数のクランク軸は前記貫通孔の周囲に配置されていることを特徴とする、モータ付減速機。
【請求項9】
工作機械に設けられる割り出し装置であって、
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載にモータ付減速機を少なくとも1つ備え、
工作物が保持されるワークテーブルが前記出力部に固定され、前記出力部から出力されるトルクによって前記ワークテーブルの回転方向の位置の割り出しが行われることを特徴とする、割り出し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−130815(P2010−130815A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303927(P2008−303927)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】