モータ駆動装置、シート搬送装置及び画像形成装置
【課題】ドライバ回路に入力される回転センシング信号へのノイズの混入に起因するモータ回転の不安定化と、モータ起動時のギヤ歯の衝突に起因するギヤの寿命低下とを抑えつつ、搬送モータによって第1搬送ローラ16aを迅速に加速する。
【解決手段】DCブラシレスモータからなる搬送モータ210の回転量を検知するモータエンコーダ211と、ドライバ回路212とを搬送モータ210に搭載し、モータ起動時にて、搬送モータ210の回転速度を第1加速特性で加速させるように搬送モータ210を駆動しながら、モータエンコーダ211による検知結果と第1加速特性とに基づいて把握したタイミングが到来した後に、搬送モータ210の回転速度を第1加速特性よりも加速性に優れた第2加速特性で加速させるように搬送モータ210を駆動する加速度変更処理を実施するようにモータ制御回路200を構成した。
【解決手段】DCブラシレスモータからなる搬送モータ210の回転量を検知するモータエンコーダ211と、ドライバ回路212とを搬送モータ210に搭載し、モータ起動時にて、搬送モータ210の回転速度を第1加速特性で加速させるように搬送モータ210を駆動しながら、モータエンコーダ211による検知結果と第1加速特性とに基づいて把握したタイミングが到来した後に、搬送モータ210の回転速度を第1加速特性よりも加速性に優れた第2加速特性で加速させるように搬送モータ210を駆動する加速度変更処理を実施するようにモータ制御回路200を構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被駆動体を駆動するためのDCブラシレスモータを制御するモータ駆動装置、並びに、かかるモータ駆動装置を用いるシート搬送装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像形成装置内に搭載される紙搬送装置など、定量的な動作が必要になる駆動系においては、駆動源として、交流モータの一種であるステッピングモータを用いるのが一般的であった。ステッピングモータは、制御装置から発せられたパルス数に正確に対応する量だけ回転するので、定量的な駆動に非常に適したモータである。しなしながら、脱調の発生を防止するために、最大負荷の1.3倍程度、あるいは平均負荷の2倍程度、の負荷がかかっても回転周期を乱さないほどトルクに余裕のある条件で駆動することから、無駄な電力を消費してしまうという不具合があった。
【0003】
一方、特許文献1には、被駆動体たるローラの回転量をエンコーダによって検知した結果に基づいて、駆動源たるDCブラシレスモータの駆動量を調整することで、ローラの定量的な回転駆動を実現するモータ駆動装置が記載されている。DCブラシレスモータは、一般にモータ本体とは別体で構成されるドライバ回路によって励磁コイルが切り替えられるモータである。ドライバ回路は、例えば、3相コイルのDCブラシレスモータであれば、DCブラシレスモータの回転角度が120[°]、240[°]、0(360)[°]と120[°]ずつ変化していく過程で、励磁対象となるコイルをスイッチング手段によって順に切り替えていく。DCブラシレスモータは、そのスイッチングのタイミングをドライバ回路に対して適切に把握させるために、モータ軸を所定の角度ずつ回転させる毎に、ホール素子などから回転センシング信号を出力する。負荷トルクに応じた電流が流れるためステッピングモータのような電流のロスがない。特許文献1に記載のモータ駆動装置は、かかる構成のDCブラシレスモータを用いることで、ステッピングモータを用いる場合に比べて、無駄な電力消費を抑えることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このモータ駆動装置においては、DCブラシレスモータのホール素子などからドライバ回路に送られる回転センシング信号にノイズを混入させることによるモータ回転の不安定化を引き起こすおそれがある。具体的には、ドライバ回路からDCブラシレスモータに対しては、各コイルに対してそれぞれ励磁電圧を個別に供給する必要がある。励磁対象となるコイルは非常に短時間のうちに切り替わるため、各コイルにそれぞれ励磁電圧を個別に導くための複数の駆動電源用電線においては、モータの回転に応じて、励磁電流の流れる駆動電源用電線が高速で切り替わる。すると、複数の駆動電源用電線とともに這い回されている信号用電線によって交信される回転センシング信号にノイズが混入して、DCブラシレスモータの回転を不安定にしてしまうのである。
【0005】
また、このモータ駆動装置では、モータ起動時のギヤ歯の衝突によってギヤの寿命を縮めてしまうという問題があった。具体的には、モータ軸に固定されたモータギヤと、従動ギヤとの噛み合い部には、両者間にある程度の隙間が設けられている。このため、DCブラシレスモータの駆動停止時に、噛み合い部において、モータギヤの歯が従動ギヤの歯から離間することがある。この状態では、DCブラシレスモータに対して負荷をかけるものが存在しないことから、DCブラシレスモータは駆動と同時に勢い良く回転を開始する。そして、モータギヤの歯が従動ギヤの歯に勢い良く衝突した時点で、DCブラシレスモータに初めて負荷がかかる。その衝突の際、モータギヤや従動ギヤの歯に大きな衝撃を与えて、歯の摩耗や破損を助長することから、ギヤの寿命を縮めてしまうのである。
【0006】
また、ギヤの寿命低下を抑える狙いで、DCブラシレスモータをゆっくりした回転加速度で立ち上げると、被駆動体たるローラの回転を迅速に加速することができなくなってしまう。
【0007】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、次のようなモータ駆動装置、シート搬送装置、及び画像形成装置を提供することである。即ち、ドライバ回路に入力される回転センシング信号へのノイズの混入に起因するモータ回転の不安定化と、モータ起動時のギヤ歯の衝突に起因するギヤの寿命低下とを抑えつつ、DCブラシレスモータによって被駆動体を迅速に加速することができるモータ駆動装置等である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、DCブラシレスモータと、前記DCブラシレスモータのコイルを励磁するためのドライバ回路と、前記ドライバ回路を介してDCブラシレスモータの駆動を制御する制御手段とを有するモータ駆動装置において、前記DCブラシレスモータの励磁コイルの切り替えタイミングを前記ドライバ回路に把握させるために前記DCブラシレスモータの回転量を検知する回転量検知手段とは別に、前記DCブラシレスモータの回転量を前記回転量検知手段よりも高精度に検知する第2回転量検知手段を前記DCブラシレスモータに搭載するとともに、前記ドライバ回路を前記DCブラシレスモータに搭載し、モータ起動時にて、前記DCブラシレスモータの回転速度を所定の第1加速特性で加速させるように前記DCブラシレスモータを駆動しながら、前記第2回転量検知手段による検知結果と、前記第1加速特性を示す第1アルゴリズムとに基づいて、モータ加速性が低下するタイミングを特定し、タイミングが到来した後に、前記DCブラシレスモータの回転速度を前記第1加速特性よりも加速性に優れた第2加速特性で加速させるように前記DCブラシレスモータを駆動する加速度変更処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、ドライバ回路をDCブラシレスモータに搭載したことで、ドライバ回路をDCブラシレスモータから離れた位置に配設していた従来に比べて、ドライバ回路とDCブラシレスモータのコイルとの距離を近づけている。これにより、複数の駆動電源用電線や信号用電線を束ねたハーネスをドライバ回路とDCブラシレスモータとの間に設けることなく、回路基板上の電極によってドライバ回路からモータコイルに励磁電圧を供給したり、モータからドライバ回路に回転センシング信号を送信したりすることが可能になる。この結果、励磁対象となるコイルを高速で切り替える際のノイズの発生を抑えたり、発生したノイズの回転センシング信号への混入を抑えたりすることで、回転センシング信号へのノイズの混入に起因するモータ回転の不安定化を抑えることができる。
【0010】
また、本発明においては、DCブラシレスモータの駆動を開始した制御手段が、DCブラシレスモータのモータ軸に固定されたモータギヤと、従動ギヤの噛み合い部にて、モータギヤの歯を従動ギヤの歯に接触させるまで、DCブラシレスモータの回転速度を第2加速特性よりも加速性に劣る第1加速特性に従って比較的ゆっくりと加速していく。このようにゆっくりと加速していく過程でモータギヤの歯を従動ギヤの歯に接触させることで、モータ起動時にギヤ歯にかけてしまう衝撃を軽減する。これにより、モータ起動時のギヤ歯の衝突に起因するギヤの寿命低下を抑えることができる。
【0011】
また、本発明では、モータの起動時に、第1加速特性に従った比較的ゆっくりと加速度でモータギヤの歯が従動ギヤの歯に接触すると、DCブラシレスモータに対する負荷を高めることから、モータ加速性を急激に低下させる。制御手段は、このようにモータ加速性が低下するタイミングを、モータ軸の単位時間あたりの回転量(回転速度)を第2回転量検知手段によって高精度に検知した結果と、第1アルゴリズムとに基づいて特定する。そして、そのタイミングの後に、DCブラシレスモータの回転速度を前記第1加速特性よりも加速性に優れた第2加速特性に従って加速させる。これにより、DCブラシレスモータの回転速度を素速く目標速度まで加速することで、被駆動体を迅速に加速することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係る複写機を示す概略構成図。
【図2】同複写機における画像形成部の一部を拡大して示す部分構成図。
【図3】同画像形成部における4つの作像ユニットからなるタンデム部の一部を示す部分拡大図。
【図4】同複写機のスキャナ及びADFを示す斜視図。
【図5】同ADFの要部構成をスキャナの上部とともに示す拡大構成図。
【図6】同複写機のシート供給装置における搬送ローラ対の第1搬送ローラを回転駆動させるためのモータ駆動装置を示す平面構成図。
【図7】同モータ駆動装置の搬送モータを前方から示す拡大斜視図。
【図8】同搬送モータを後方から示す拡大斜視図。
【図9】同搬送モータに搭載されたコードホイールの第1例を示す斜視図。
【図10】同コードホイールの第2例を示す斜視図。
【図11】同モータ駆動装置における電気回路の要部を示すブロック図。
【図12】第1加速特性を示すグラフ。
【図13】第2加速特性を示すグラフ。
【図14】同複写機のADFの読取入口ローラ等を回転駆動させるためのモータ駆動装置を示す平面構成図。
【図15】第1変形例に係る複写機の搬送ローラ対を駆動するためのモータ駆動装置に用いられている搬送モータを正面から示す斜視図。
【図16】同搬送モータを背面から示す斜視図。
【図17】同搬送モータの変形例を示す斜視図。
【図18】第2変形例に係る複写機の画像形成部1を示す概略構成図。
【図19】第3変形例に係る複写機を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を、電子写真方式の複写機(以下、単に複写機という)に適用した実施形態について説明する。
まず、実施形態に係る複写機の基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係る複写機を示す概略構成図である。この複写機は、画像形成装置としての画像形成部1と、シート供給装置40と、画像読取ユニット50とを備えている。画像読取装置としての画像読取ユニット50は、画像形成部1の上に固定されたスキャナ150と、これに支持されるシート搬送装置としての原稿自動搬送装置(以下、ADFという)51とを有している。
【0014】
シート供給装置40は、ペーパーバンク41内に多段に配設された2つの給紙カセット42、給紙カセットから記録シートを送り出す送出ローラ43、送り出された記録シートを1枚ずつに分離する分離ローラ45等を有している。また、画像形成部1の搬送路としての給紙路37に対して、シート部材としての記録シートを搬送する複数の搬送ローラ対46等も有している。
【0015】
給紙カセット42は、複数の記録シートを重ねたシート束の状態で内部に収容している。そして、一番上の記録シートに対して送出ローラ43を押し当てている。送出ローラ43が回転すると、シート束の一番上の記録シートが給紙カセット42から送り出される。
【0016】
給紙カセット42の付近では、搬送ローラ対46の第1搬送ローラと、これの側方(図中右側方)に配設された第2搬送ローラとが互いに当接して搬送ニップを形成している。また、第1搬送ローラの下方には、分離ローラ45が配設されており、第1搬送ローラに対して下方から当接して分離搬送ニップを形成している。
【0017】
送出ローラ43の回転駆動によって給紙カセット42から送り出された記録シートは、搬送ローラ対46の第1搬送ローラと、これの下方に配設された分離ローラ45との当接による分離搬送ニップに進入する。この分離搬送ニップでは、記録シートの上面に当接する第1搬送ローラが図中反時計回り方向に回転駆動しながら、記録シートに対して給紙カセット42側から給送路44側に向かう搬送力を付与する。これに対し、記録シートの下面に当接する分離ローラ45が図中反時計回り方向に回転駆動しながら、記録シートに対して給送路44側から給紙カセット42側に向かう搬送力を付与して、記録シートを給紙カセット42に戻そうとする。
【0018】
給紙カセット42から記録シートが1枚だけの状態で送り出された場合、分離搬送ニップにおいて、第1搬送ローラと分離ローラ45とが記録シートに対して互いに逆方向に向かう搬送力を付与することで、分離ローラ45の駆動伝達系に所定の閾値を超える負荷がかかる。すると、その駆動伝達系内に配設されたトルクリミッターが作動して、図示しないDCブラシレスモータからの駆動力の分離ローラ45に対する伝達を切る。これにより、分離ローラ45が第1搬送ローラによって搬送される記録シートに連れ回るようになって、記録シートが分離搬送ニップから給送路44に向けて排出される。
【0019】
一方、給紙カセット42から記録シートが複数枚重なった状態で送り出された場合、分離搬送ニップにおいて、第1搬送ローラが一番上の記録シートに対して給紙カセット42側から給送路44側に向かう搬送力を付与して、一番上の記録シートを分離搬送ニップから給送路44側に向けて送り出す。これに対し、分離ローラが下側に位置している記録シートに対して給送路44側から給紙カセット側に向かう搬送力を付与して、下側の記録シートを分離搬送ニップ内から給紙カセット42側に逆戻りさせる。これにより、分離搬送ニップでは、一番上の記録シートが他の記録シートから分離されて1枚の状態で給送路44に送り出される。
【0020】
給送路44に進入した記録シートは、搬送ローラ対46の搬送ニップに進入して、鉛直方向下方側から上方側に向かう搬送力を付与される。これにより、給送路44内では、記録シートが画像形成部1の給紙路37に向けて搬送される。
【0021】
画像形成手段としての画像形成部1は、光書込装置2や、黒,イエロー,マゼンタ,シアン(K,Y,M,C)のトナー像を形成する4つの作像ユニット3K,Y,M,C、転写ユニット24、紙搬送ユニット28、レジストローラ対33、定着装置34、スイッチバック装置36、給紙路37等を備えている。そして、光書込装置2内に配設された図示しないレーザーダイオードやLED等の光源を駆動して、ドラム状の4つの感光体4K,Y,M,Cに向けてレーザー光Lを照射する。この照射により、感光体4K,Y,M,Cの表面には静電潜像が形成され、この潜像は所定の現像プロセスを経由してトナー像に現像される。
【0022】
図2は、画像形成部1の内部構成の一部を拡大して示す部分構成図である。また、図3は、4つの作像ユニット3K,Y,M,Cからなるタンデム部の一部を示す部分拡大図である。なお、4つの作像ユニット3K,Y,M,Cは、それぞれ使用するトナーの色が異なる他はほぼ同様の構成になっているので、図3においては各符号に付すK,Y,M,Cという添字を省略している。
【0023】
作像ユニット3K,Y,M,Cは、それぞれ、感光体とその周囲に配設される各種装置とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、画像形成部1本体に対して着脱可能になっている。黒用の作像ユニット3Kを例にすると、これは、感光体4の周りに、帯電装置23、現像装置6、ドラムクリーニング装置15、除電ランプ22等を有している。本複写機では、4つの作像ユニット3K,Y,M,Cを、後述する中間転写ベルト25に対してその無端移動方向に沿って並べるように対向配設した、いわゆるタンデム型の構成になっている。
【0024】
感光体4としては、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材の塗布による感光層を形成したドラム状のものを用いている。但し、無端ベルト状のものを用いても良い。
【0025】
現像装置6は、図示しない磁性キャリアと非磁性トナーとを含有する二成分現像剤を用いて潜像を現像するようになっている。内部に収容している二成分現像剤を攪拌しながら搬送して現像スリーブ12に供給する攪拌部7と、現像スリーブ12に担持された二成分現像剤中のトナーを感光体4に転移させるための現像部11とを有している。
【0026】
攪拌部7は、現像部11よりも低い位置に設けられており、互いに平行配設された2本の搬送スクリュウ8、これらスクリュウ間に設けられた仕切り板、現像ケース9の底面に設けられたトナー濃度センサー10などを有している。
【0027】
現像部11は、現像ケース9の開口を通して感光体4に対向する現像スリーブ12、これの内部に回転不能に設けられたマグネットローラ13、現像スリーブ12に先端を接近させるドクタブレード14などを有している。現像スリーブ12は、非磁性の回転可能な筒状になっている。マグネットローラ12は、ドクタブレード14との対向位置からスリーブの回転方向に向けて順次並ぶ複数の磁極を有している。これら磁極は、それぞれスリーブ上の二成分現像剤に対して回転方向の所定位置で磁力を作用させる。これにより、攪拌部7から送られてくる二成分現像剤を現像スリーブ13表面に引き寄せて担持させるとともに、スリーブ表面上で磁力線に沿った磁気ブラシを形成する。
【0028】
磁気ブラシは、現像スリーブ12の回転に伴ってドクタブレード14との対向位置を通過する際に適正な層厚に規制されてから、感光体4に対向する現像領域に搬送される。そして、現像スリーブ12に印加される現像バイアスと、感光体4の静電潜像との電位差によってトナーを静電潜像上に転移させて現像に寄与する。更に、現像スリーブ12の回転に伴って再び現像部11内に戻り、マグネットローラ13の磁極間に形成される反発磁界の影響によってスリーブ表面から離脱した後、攪拌部7内に戻される。攪拌部7内には、トナー濃度センサー10による検知結果に基づいて、二成分現像剤に適量のトナーが補給される。なお、現像装置6として、二成分現像剤を用いるものの代わりに、磁性キャリアを含まない一成分現像剤を用いるものを採用してもよい。
【0029】
ドラムクリーニング装置15としては、弾性体からなるクリーニングブレード16を感光体4に押し当てる方式のものを用いているが、他の方式のものを用いてもよい。クリーニング性を高める目的で、本例では、外周面を感光体4に接触させる接触導電性のファーブラシ17を、図中矢印方向に回転自在に有する方式のものを採用している。このファーブラシ17は、図示しない固形潤滑剤から潤滑剤を掻き取って微粉末にしながら感光体4表面に塗布する役割も兼ねている。ファーブラシ17にバイアスを印加する金属製の電界ローラ18を図中矢示方向に回転自在に設け、これにスクレーパ19の先端を押し当てている。ファーブラシ17に付着したトナーは、ファーブラシ17に対してカウンタ方向に接触して回転しながらバイアスが印加される電界ローラ18に転位する。そして、スクレーパ19によって電界ローラ18から掻き取られた後、回収スクリュウ20上に落下する。回収スクリュウ20は、回収トナーをドラムクリーニング装置15における図紙面と直交する方向の端部に向けて搬送して、外部のリサイクル搬送装置21に受け渡す。リサイクル搬送装置21は、受け渡されたトナーを現像装置15に送ってリサイクルする。
【0030】
除電ランプ22は、光照射によって感光体4を除電する。除電された感光体4の表面は、帯電装置23によって一様に帯電せしめられた後、光書込装置2による光書込処理がなされる。なお、帯電装置23としては、帯電バイアスが印加される帯電ローラを感光体4に当接させながら回転させるものを用いている。感光体4に対して非接触で帯電処理を行うスコロトロンチャージャ等を用いてもよい。
【0031】
先に示した図2において、4つの作像ユニット3K,Y,M,Cの感光体4K,Y,M,Cには、これまで説明してきたプロセスによってK,Y,M,Cトナー像が形成される。
【0032】
4つの作像ユニット3K,Y,M,Cの下方には、転写ユニット24が配設されている。ベルト駆動装置としての転写ユニット24は、複数のローラによって張架した中間転写ベルト25を、感光体4K,Y,M,Cに当接させながら図中時計回り方向に無端移動させる。これにより、感光体4K,Y,M,Cと、無端状のベルト部材である中間転写ベルト25とが当接するK,Y,M,C用の1次転写ニップが形成されている。K,Y,M,C用の1次転写ニップの近傍では、ベルトループ内側に配設された1次転写ローラ26K,Y,M,Cによって中間転写ベルト25を感光体4K,Y,M,Cに向けて押圧している。これら1次転写ローラ26K,Y,M,Cには、それぞれ図示しない電源によって1次転写バイアスが印加されている。これにより、K,Y,M,C用の1次転写ニップには、感光体4K,Y,M,C上のトナー像を中間転写ベルト25に向けて静電移動させる1次転写電界が形成されている。図中時計回り方向の無端移動に伴ってK,Y,M,C用の1次転写ニップを順次通過していく中間転写ベルト25のおもて面には、各1次転写ニップでトナー像が順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト25のおもて面には4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
【0033】
転写ユニット24の図中下方には、駆動ローラ30と2次転写ローラ31との間に、無端状の紙搬送ベルト29を掛け渡して無端移動させる紙搬送ユニット28が設けられている。そして、自らの2次転写ローラ31と、転写ユニット24の下部張架ローラ27との間に、中間転写ベルト25及び紙搬送ベルト29を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト25のおもて面と、紙搬送ベルト29のおもて面とが当接する2次転写ニップが形成されている。2次転写ローラ31には図示しない電源によって2次転写バイアスが印加されている。一方、転写ユニット24の下部張架ローラ27は接地されている。これにより、2次転写ニップに2次転写電界が形成されている。
【0034】
この2次転写ニップの図中右側方には、レジストローラ対33が配設されている。また、レジストローラ対33のレジストニップの入口付近には、図示しないレジストローラセンサーが配設されている。図示しないシート供給装置からレジストローラ対33に向けて搬送されてくる記録シートは、その先端がレジストローラセンサーに検知された所定時間後記録シートの搬送が一時停止し、レジストローラ対33のレジストニップに先端を突き当てる。
【0035】
記録シートの先願がレジストニップに突き当たると、レジストローラ対33は、記録シートを中間転写ベルト25上の4色トナー像に同期させ得るタイミングでローラ回転駆動を再開して、記録シートを2次転写ニップに送り出す。2次転写ニップ内では、中間転写ベルト25上の4色トナー像が2次転写電界やニップ圧の作用によって記録シートに一括2次転写され、記録シートの白色と相まってフルカラー画像となる。2次転写ニップを通過した記録シートは、中間転写ベルト25から離間して、紙搬送ベルト29のおもて面に保持されながら、その無端移動に伴って定着装置34へと搬送される。
【0036】
2次転写ニップを通過した中間転写ベルト25の表面には、2次転写ニップで記録シートに転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、中間転写ベルト25に当接するベルトクリーニング装置によって掻き取り除去される。
【0037】
定着装置34に搬送された記録シートは、定着装置34内における加圧や加熱によってフルカラー画像が定着させしめられた後、定着装置34から排紙ローラ対35に送られた後、機外へと排出される。
【0038】
先に示した図1において、紙搬送ユニット22および定着装置34の下には、スイッチバック装置36が配設されている。これにより、片面に対する画像定着処理を終えた記録シートが、切換爪で記録シートの進路を記録シート反転装置側に切り換えられ、そこで反転されて再び2次転写転写ニップに進入する。そして、もう片面にも画像の2次転写処理と定着処理とが施された後、排紙トレイ上に排紙される。
【0039】
画像形成部1の上に固定されたスキャナ150やこれの上に固定されたADF51は、固定読取部や移動読取部152を有している。移動読取部152は、原稿MSに接触するようにスキャナ150のケーシング上壁に固定された図示しない第2コンタクトガラスの直下に配設されており、光源や、反射ミラーなどからなる光学系を図中左右方向に移動させることができる。そして、光学系を図中左側から右側に移動させていく過程で、光源から発した光を第2コンタクトガラス上に載置された図示しない原稿で反射させた後、複数の反射ミラーを経由させて、スキャナ本体に固定された画像読取センサー153で受光する。
【0040】
一方、固定読取部は、スキャナ150の内部に配設された第1面固定読取部151と、ADF51内に配設された図示しない第2面固定読取部とを有している。光源、反射ミラー、CCD等の画像読取センサーなどを有する第1面固定読取部151は、原稿MSに接触するようにスキャナ150のケーシング上壁に固定された図示しない第1コンタクトガラスの直下に配設されている。そして、後述するADF51によって搬送される原稿MSが第1コンタクトガラス上を通過する際に、光源から発した光を原稿面で順次反射させながら、複数の反射ミラーを経由させて画像読取センサーで受光する。これにより、光源や反射ミラー等からなる光学系を移動させることなく、原稿MSの第1面を走査する。また、第2面固定読取部は、第1面固定読取部151を通過した後の原稿MSの第2面を走査する。
【0041】
スキャナ150の上に配設されたADF51は、本体カバー52に、読取前の原稿MSを載置するための原稿載置台53、シート部材としての原稿MSを搬送するための搬送ユニット54、読取後の原稿MSをスタックするための原稿スタック台55などを保持している。図4に示されるように、スキャナ150に固定された蝶番159によって上下方向に揺動可能に支持されている。そして、その揺動によって開閉扉のような動きをとり、開かれた状態でスキャナ150の上面の第1コンタクトガラス154や第2コンタクトガラス155を露出させる。原稿束の片隅を綴じた本などの片綴じ原稿の場合には、原稿を1枚ずつ分離することができないため、ADFによる搬送を行うことができない。そこで、片綴じ原稿の場合には、ADF51を図4に示すように開いた後、読み取らせたいページが見開かれた片綴じ原稿を下向きにして第2コンタクトガラス154上に載せた後、ADFを閉じる。そして、スキャナ150の図1に示した移動読取部152によってそのページの画像を読み取らせる。
【0042】
一方、互いに独立した複数の原稿MSを単に積み重ねた原稿束の場合には、その原稿MSをADF51によって1枚ずつ自動搬送しながら、スキャナ150内の第1面固定読取部151やADF51内の第2面固定読取部に順次読み取らせていくことができる。この場合、原稿束を原稿載置台53上にセットした後、図示しないコピースタートボタンを押す。すると、ADF51が、原稿載置台53上に載置された原稿束の原稿MSを上から順に搬送ユニット54内に送り、それを反転させながら原稿スタック台55に向けて搬送する。この搬送の過程で、原稿MSを反転させた直後にスキャナ150の第1面固定読取部151の真上に通す。このとき、原稿MSの第1面の画像がスキャナ150の第1面固定読取部151によって読み取られる。
【0043】
図5は、ADF51の要部構成をスキャナ150の上部とともに示す拡大構成図である。ADF51は、原稿セット部A、分離給送部B、レジスト部C、ターン部D、第1読取搬送部E、第2読取搬送部F、排紙部G、スタック部H等を備えている。
【0044】
原稿セット部Aは、原稿MSの束がセットされる原稿載置台53等を有している。また、分離給送部Bは、セットされた原稿MSの束から原稿MSを一枚ずつ分離して給送するものである。また、レジスト部Cは、給送された原稿MSに一時的に突き当たって原稿MSを整合した後に送り出すものである。また、ターン部Dは、C字状に湾曲する湾曲搬送部を有しており、この湾曲搬送部内で原稿MSを折り返しながらその上下を反転させるものである。また、第1読取搬送部Eは、第1コンタクトガラス155の上で原稿MSを搬送しながら、第1コンタクトガラス155の下方で図示しないスキャナの内部に配設されている第1固定読取部151に原稿MSの第1面を読み取らせるものである。また、第2読取搬送部Fは、第2固定読取部95の下で原稿MSを搬送しながら、原稿MSの第2面を第2固定読取部95に読み取らせるものである。また、排紙部Gは、両面の画像が読み取られた原稿MSをスタック部Hに向けて排出するものである。また、スタック部Hは、スタック台55の上に原稿MSをスタックするものである。
【0045】
原稿MSは、原稿MSの束の厚みに応じて図中矢印a、bの方向に揺動可能な可動原稿テーブル54の上に原稿先端部が載せられるとともに、原稿後端側が原稿載置台53の上に載せられた状態でセットされる。このとき、原稿載置台53上において、その幅方向(図紙面に直交する方向)の両端に対してそれぞれ図示しないサイドガイドが突き当てられることで、幅方向における位置が調整される。このようにしてセットされる原稿MSは、可動原稿テーブル54の上方で揺動可能に配設されたレバー部材62を押し上げる。すると、それに伴って原稿セットセンサー63が原稿MSのセットを検知して、検知信号を図示しないコントローラに送信する。そして、この検知信号は、コントローラからI/Fを介してスキャナの読取制御部に送られる。
【0046】
原稿載置台53には、原稿MSの搬送方向の長さを検知する反射型フォトセンサー又はアクチュエーター・タイプのセンサーからなる第1長さセンサー57、第2長さセンサー58が保持されている。これら長さセンサーにより、原稿MSの搬送方向の長さが検知される。
【0047】
可動原稿テーブル54の上に載置された原稿MSの束の上方には、カム機構によって上下方向(図中矢印c,d方向)に移動可能に支持されるピックアップローラ80が配設されている。このカム機構は、ピックアップモータ56によって駆動することで、ピックアップローラ80を上下移動させることが可能である。ピックアップローラ80が上昇移動すると、それに伴って可動原稿テーブル54が図中矢印a方向に揺動して、ピックアップローラ80が原稿MSの束における一番上の原稿MSに当接する。更に可動原稿テーブル54が上昇すると、やがてテーブル上昇検知センサー59によって可動原稿テーブル54の上限までの上昇が検知される。これにより、ピックアップモータ56が停止するとともに、可動原稿テーブル54の上昇が停止する。
【0048】
複写機の本体に設けられたテンキーやディスプレイ等からなる本体操作部に対しては、操作者によって両面読取モードか、あるいは片面読取モードかを示す読取モード設定のためのキー操作や、コピースタートキーの押下操作などが行われる。コピースタートキーが押下されると、図示しない本体制御部からADF51のコントローラに原稿給紙信号が送信される。すると、ピックアップローラ80が給紙モータ76の正転によって回転駆動して、可動原稿テーブル54上の原稿MSを可動原稿テーブル54上から送り出す。
【0049】
両面読取モードか、片面読取モードかの設定に際しては、可動原稿テーブル54上に載置された全ての原稿MSについて一括して両面、片面の設定を行うことが可能である。また、1枚目及び10枚目の原稿MSについては両面読取モードに設定する一方で、その他の原稿MSについては片面読取モードに設定するなどといった具合に、個々の原稿MSについてそれぞれ個別に読取モードを設定することも可能である。
【0050】
送出部材としてのピックアップローラ80によって送り出された原稿MSは、分離搬送部Bに進入して、給紙ベルト84との当接位置に送り込まれる。この給紙ベルト84は、駆動ローラ82などによって張架されており、給紙モータ76の正転に伴う駆動ローラ82の回転によって図中時計回り方向に無端移動せしめられる。この給紙ベルト84の下部張架面には、給紙モータ76の正転によって図中時計回りに回転駆動される分離ローラ85が当接している。当接部においては、給紙ベルト84の表面が給紙方向に移動する。これに対し、分離ローラ85は、給紙ベルト84に所定の圧力で当接しており、給紙ベルト84に直接当接している際、あるいは当接部に原稿MSが1枚だけ挟み込まれている際には、ベルト又は原稿MSに連れ回る。但し、当接部に複数枚の原稿MSが挟み込まれた際には、連れ回り力がトルクリミッターのトルクよりも低くなることから、連れ回り方向とは逆の図中時計回りに回転駆動する。これにより、最上位よりも下の原稿MSには、分離ローラ85によって給紙とは反対方向の移動力が付与されて、数枚の原稿から最上位の原稿MSだけが分離される。
【0051】
給紙ベルト84や分離ローラ85の働きによって1枚に分離された原稿MSは、レジスト部Cに進入する。そして、突き当てセンサー72の直下を通過する際にその先端が検知される。このとき、ピックアップモータ56の駆動力を受けているピックアップローラ80がまだ回転駆動しているが、可動原稿テーブル54の下降によって原稿MSから離間するため、原稿MSは給紙ベルト84の無端移動力のみによって搬送される。そして、突き当てセンサー72によって原稿MSの先端が検知されたタイミングから所定時間だけ給紙ベルト84の無端移動が継続して、原稿MSの先端がプルアウト駆動ローラ86とこれに当接しながら回転駆動するプルウト駆動ローラ87との当接部に突き当たる。
【0052】
プルアウト従動ローラ87は、原稿MSを原稿搬送方向下流側の中間ローラ対66まで搬送する役割を担っており、給紙モータ76の逆転によって回転駆動される。給紙モータ76が逆転すると、プルアウト従動ローラ87と、互いに当接している中間ローラ対66における一方のローラとが回転を開始するとともに、給紙ベルト84の無端移動が停止する。また、このとき、ピックアップローラ80の回転も停止される。
【0053】
プルアウト従動ローラ87から送り出された原稿MSは、原稿幅センサー73の直下を通過する。原稿幅センサー73は、反射型フォトセンサー等からなる紙検知部を複数有しており、これら紙検知部は原稿幅方向(図紙面に直交する方向)に並んでいる。どの紙検知部が原稿MSを検知するのかに基づいて、原稿MSの幅方向のサイズが検知される。また、原稿MSの搬送方向の長さは、原稿MSの先端が突き当てセンサー72によって検知されてから、原稿MSの後端が突き当てセンサー72によって検知されなくなるまでのタイミングに基づいて検知される。
【0054】
原稿幅センサー73によって幅方向のサイズが検知された原稿MSの先端は、ターン部Dに進入して、中間ローラ対66のローラ間の当接部に挟み込まれる。この中間ローラ対66による原稿MSの搬送速度は、後述する第1読取搬送部Eでの原稿MSの搬送速度よりも高速に設定されている。これにより、原稿MSを第1読取搬送部Eに送り込むまでの時間の短縮化が図られている。
【0055】
ターン部D内を搬送される原稿MSの先端は、原稿先端が読取入口センサー67との対向位置を通過する。これによって原稿MSの先端が読取入口センサー67によって検知されると、その先端が搬送方向下流側の読取入口ローラ対(89と90との対)の位置まで搬送される間での間に、中間ローラ対66による原稿搬送速度が減速される。また、図示しない読取モータの回転駆動の開始に伴って、読取入口ローラ対(89,90)における一方のローラ、読取出口ローラ対92における一方のローラ、第2読取出口ローラ対93における一方のローラがそれぞれ回転駆動を開始する。
【0056】
ターン部D内においては、原稿MSが中間ローラ対66と読取入口ローラ対(89、90)との間の湾曲搬送路で搬送される間に上下面が逆転されるとともに、搬送方向が折り返される。そして、読取入口ローラ対(89、90)のローラ間のニップを通過した原稿MSの先端は、レジストセンサー65の直下を通過する。このとき原稿MSの先端がレジストセンサー65によって検知されると、所定の搬送距離をかけながら原稿搬送速度が減速されていき、第1読取搬送部Eの手前で原稿MSの搬送が一時停止される。また、図示しない読取制御部に対してレジスト停止信号が送信される。
【0057】
レジスト停止信号を受けた読取制御部が読取開始信号を送信すると、ADF51のコントローラの制御により、原稿MSの先端が第1読取搬送部E内に到達するまで、読取モータの回転が再開されて所定の搬送速度まで原稿MSの搬送速度が増速される。そして、読取モータのパルスカウントに基づいて算出された原稿MSの先端が第1固定読取部151による読取位置に到達するタイミングで、コントローラから読取制御部に対して原稿MSの第1面の副走査方向有効画像領域を示すゲート信号が送信される。この送信は、原稿MSの後端が第1固定読取部151による読取位置を抜け出るまで続けられ、原稿MSの第1面が第1固定読取部151によって読み取られる。
【0058】
第1読取搬送部Eを通過した原稿MSは、後述の読取出口ローラ対92を経由した後、その先端が排紙センサー61によって検知される。片面読取モードが設定されている場合には、後述する第2固定読取部95による原稿MSの第2面の読取が不要である。そこで、排紙センサー61によって原稿MSの先端が検知されると、排紙モータの正転駆動が開始されて、排紙ローラ対94における図中下側の排紙ローラが図中時計回り方向に回転駆動される。また、排紙センサー61によって原稿MSの先端が検知されてからの排紙モータパルスカウントに基づいて、原稿MSの後端が排紙ローラ対94のニップを抜け出るタイミングが演算される。そして、この演算結果に基づいて、原稿MSの後端が排紙ローラ対94のニップから抜け出る直前のタイミングで、排紙モータの駆動速度が減速せしめられて、原稿MSがスタック台55から飛び出さないような速度で排紙される。
【0059】
一方、両面読取モードが設定されている場合には、排紙センサー61によって原稿MSの先端が検知された後、第2固定読取部95に到達するまでのタイミングが読取モータのパルスカウントに基づいて演算される。そして、そのタイミングでコントローラから読取制御部に対して原稿MSの第2面における副走査方向の有効画像領域を示すゲート信号が送信される。この送信は、原稿MSの後端が第2固定読取部95による読取位置を抜け出るまで続けられ、原稿MSの第2面が第2固定読取部95によって読み取られる。
【0060】
読取手段としての第2固定読取部95は、密着型イメージセンサー(CIS)からなり、原稿MSに付着している糊状の異物が読取面に付着することによる読取縦スジを防止する目的で、読取面にコーティング処理が施されている。第2固定読取部95との対向位置には、原稿MSを非読取面側から支持する原稿支持手段としての第2読取ローラ96が配設されている。この第2読取ローラ96は、第2固定読取部95による読取位置での原稿MSの浮きを防止するとともに、第2固定読取部95におけるシェーディングデータを取得するための基準白部として機能する役割を担っている。
【0061】
次に、実施形態に係る複写機の特徴的な構成について説明する。上述したように、図1のシート供給装置40の給送路44では、記録シートに対して搬送ローラ対46の搬送ニップで上方に向かう搬送力が付与されて、記録シートが画像形成部1の給紙路37に向けて搬送される。
【0062】
図6は、搬送ローラ対46の第1搬送ローラ46aを回転駆動させるためのモータ駆動装置を示す平面構成図である。このモータ駆動装置は、モータ制御回路200と、インナーロータ型のDCブラシレスモータからなる搬送モータ210と、減速機225とを有している。
【0063】
モータ制御回路200は、後述するモータエンコーダによる検知結果に基づいて、搬送モータ210の回転駆動を制御する制御手段として機能している。搬送モータ210の駆動によって搬送モータ210のモータ軸214が回転すると、モータ軸214に固定されたモータギヤ213の回転速度が減速機225によって減速された後、被駆動体としての第1搬送ローラ46aに伝達される。
【0064】
減速機225は、モータギヤ213に噛み合う第1減速ギヤ221と、これに噛み合う第2減速ギヤ222と、これに噛み合う第3減速ギヤ223と、第1搬送ローラ46aと同一の回転軸線で回転するように第1搬送ローラ46aの軸部材に固定された状態で第3減速ギヤ223に噛み合う第4減速ギヤとを有している。
【0065】
図7は、モータ駆動装置の搬送モータ210を前方から示す拡大斜視図である。また、図8は、搬送モータ210を後方から示す拡大斜視図である。これらの図に示すように、搬送モータ210のモータ軸213は、モータ本体を前後方向に貫いた状態で、モータ本体の前部においてモータ本体から前方に向けて突出しているとともに、モータ本体の後部においてモータ本体から後方に向けて突出している。
【0066】
モータ本体の後側面には、ドライバ基板216が固定されており、このドライバ基板216には、搬送モータ210の3相のコイルを所定の順序で励磁するためのドライバ回路を搭載している。モータ軸213は、このドライバ基板216も貫いて後方に向けて突出している。
【0067】
モータ軸213におけるドライバ基板216よりも後方の箇所には、第2回転量検知手段としてのモータエンコーダ211のコードホイール211aが固定されており、モータ軸213の回転に伴ってモータ軸213と同じ回転軸線上で回転する。コードホイール211aは、図9に示されるように、回転方向に所定のピッチで並ぶ複数のスリットSLを具備している。コードホイール211aの回転に伴ってそれらのスリットSLを順次検知するように、透過型フォトセンサーからなる光学センサー211bが、搬送モータ210のドライバ基板216に固定されている(図8参照)。なお、便宜上、図示を省略しているが、搬送モータ210のモータ本体における後端部には、ドライバ起案216やモータエンコーダ211を覆うカバー部材が嵌め込まれている。
【0068】
温度変化に伴う伸縮が生じてもコードホイール211aを確実にモータ軸213に同期させて回転させるように、コードホイール211aについては、モータ軸213に圧入するだけでなく、接着剤によってモータ軸213に接着することが望ましい。
【0069】
コードホイール211aとしては、金属板の打ち抜き加工によってホイール本体及びスリットSLを加工したものを用いている。かかるコードホイール211aは、金属製であることから、温度変化に伴う伸縮を抑えて、スリットピッチの経時変動を軽減することができる。しなしながら、打ち抜き加工のときに生じたバリに埃などの異物を付着させ易い。そこで、図9に示されるコードホイール211aに代えて、図10に示されるコードホイール211aを用いてもよい。このコードホイール211aは、回転方向に所定のピッチでならぶ複数の暗部DPを目印として具備している。暗部DPは、フォトリソグラフィー法を用いたハーフエッチング加工によって形成されたものである。基材として表面に鏡面仕上げ層が被覆されたものを用い、ハーフエッチングによって鏡面仕上げ層を除去して暗部層を露出させている箇所が暗部DPになっている。暗部DPを高精度で加工することができる。但し、ハーフエッチング加工によってコスト高になる。また、油脂に弱いために取り扱いに注意を要する。
【0070】
図10に示されるコードホイール211aを用いる場合には、光学センサー211bとしては、透過型フォトセンサーからなるものに代えて、反射型フォトセンサーからなるものを用いて、光反射性の違いによって暗部DPを検知させるようにすればよい。
【0071】
このように、実施形態に係る複写機においては、ドライバ回路、及び第2回転量検知手段たるモータエンコーダ211を、搬送モータ210に搭載している。
【0072】
図11は、モータ駆動装置における電気回路の要部を示すブロック図である。DCブラシレスモータからなる搬送モータ210の駆動を制御するモータ制御回路200は、搬送モータ210とは別体として形成されており、画像形成部(図1の1)の本体に固定されている。このモータ制御回路200は、目標位置・速度計算回路201、位置・速度追従制御回路202、モータ回転量・速度計算回路203などを有している。
【0073】
同図に示される目標信号生成手段250は、モータ駆動装置とは別体として構成されたものであり、プリントジョブの進行状況に応じて、第1搬送ローラ(46a)の目標回転量、目標回転速度、目標回転停止位置などの目標信号を生成する。画像形成部(1)内の各種機器の全体的な制御を司るメイン制御部を目標信号生成手段250として機能させてもよい。
【0074】
モータ制御回路200としては、1チップマイコンからなるもの、あるいは制御用ASIC(Application Specific Integrated Circuit)からなるものが用いられている。
【0075】
目標信号生成手段250からモータ制御回路200に送られた目標信号は、モータ制御回路200の目標位置・速度計算回路201に入力される。目標位置・速度計算回路201は、入力された目標信号に基づいて、第1搬送ローラ(46a)を目標の回転姿勢で停止させるための目標モータ停止位置を算出し、その結果を目標位置信号として出力する。また、目標信号に基づいて、第1搬送ローラ(46a)を目標の回転速度で回転させるための目標モータ回転速度を算出し、その結果を目標速度信号として出力する。
【0076】
搬送モータ210に搭載されたモータエンコーダ211の光学センサーとしては、スリットSL透過後の光を受光する受光部を2つ具備する2チャンネル光学センサーを用いている。2つの受光部は、次のような条件を具備するように配設されている。即ち、コードホイール211aのスリットSLが第1受光部に対向したときに、第2受光部がそのスリットSLの脇に存在するホイール非スリット部に対向する条件である。第1受光部による受光量と、第2受光部による受光量との比率の変化に基づいて、それぞれの受光部に対してコードホイール211のスリットSLをずれなく対向させた瞬間が高精度に把握される。第1受光部は受光量に応じた電圧をパルス信号Aとして出力する。また、第2受光部は、受光量に応じた電圧をパルス信号Bとして出力する。
【0077】
光学センサー211bから出力されるパルス信号Aやパルス信号Bは、モータ制御回路200のモータ回転量・速度計算回路203に入力される。モータ位置・速度計算経路203は、パルス信号A、パルス信号Bについてそれぞれパルス立ち上がり数やパルス周波数を演算した結果に基づいて、モータ回転量を算出し、その結果をモータ回転量信号として出力する。また、モータ回転速度を算出し、その結果をモータ回転速度信号として出力する。
【0078】
位置・速度追従制御回路202は、ドライバ回路212に対して、GND(−電源)を常時供給している。また、必要に応じて励磁用+電源(+24V)や、信号用+電源(+5V)をドライバ回路212に供給する。更には、必要に応じてブレーキ信号、PWM信号、方向信号(CW,CCW)をそれぞれ個別にドライバ回路212に出力する。方向信号としては、正転命令を行うための正転信号、逆転命令を行うための逆転信号の何れかを出力する。PWM信号は、ドライバ回路212から搬送モータ210のコイルに対して出力される励磁電圧値を指示するためのものである。
【0079】
搬送モータ210は、ホール素子217を有している。このホール素子は、搬送モータ210のモータ軸213の回転角度姿勢について、基準となる0[°](360°)になったことや、120[°]、240[°]になったことを示すためのホール信号をドライバ回路212に出力する。
【0080】
ドライバ回路212は、モータ制御回路200の位置・速度追従制御回路202から出力されるPWM信号に基づいて搬送モータ210のコイルに対する励磁電圧の出力を調整する出力調整部と、搬送モータ210における3相のコイルのうち、励磁電圧を出力するコイルを切り替えるコイル切替部とを具備している。出力調整部は、PWM信号に基づいて、コイル切替部に対する+24[V]の電圧の出力をオンオフすることで、コイル切替部を介してコイルに流れる単位時間あたりの励磁電圧の値を調整する。また、コイル切替部は、プリドライバや複数のFET(フィールドエフェクトトランジスタ)などを具備している。複数のFETとしては、少なくとも、1相目のコイルに励磁するためのU励磁電圧の出力をオンオフするための第1FET、2相目のコイルに励磁するためのV励磁電圧の出力をオンオフするための第2FET、及び3相目のコイルに励磁するためのW励磁電圧の出力をオンオフするための第3FETを具備している。それらFETには、FETによるスイッチングを制御するためのゲート電圧がプリドライバからそれぞれ個別に出力される。プリドライバは、ホール素子217からのホール信号に基づいて、3つのFETに対するゲート電圧のオンオフを個別に制御することで、搬送モータ210に出力する励磁電圧を、U励磁電圧と、V励磁電圧と、W励磁電圧とで切り替える。この切り替えにより、搬送モータ210のモータ軸213に対して磁界の切り替えによる回転力が付与される。
【0081】
位置・速度追従制御回路202は、モータ回転量・速度計算回路203から送られてくるモータ回転速度信号の目標速度信号からのずれ量を算出し、そのずれ量に基づいてPWM信号を調整することで、搬送モータ210に対する励磁電圧を調整して、搬送モータ210の回転速度を目標の回転速度に制御するための速度調整処理を実施する。この速度調整処理により、搬送モータ210によって駆動される被駆動体たる第1搬送ローr46aの回転速度を自在に調整することができる。かかる速度調整処理については、PID制御を利用したフィードバック制御によって行われる。
【0082】
モータ駆動装置は、搬送モータ210によって回転駆動される第1搬送ローラ46aの回転速度を検知することなく、図8に示されるように、搬送モータ210に搭載されたモータエンコーダ211によって搬送モータ210の回転速度を直接的に検知する。かかる構成では、第1搬送ローラ46aの回転速度変化に基づいて搬送モータ210の回転速度の変化を間接的に検知していた従来に比べて、搬送モータ210の回転速度の変化を迅速に検知する。そして、その検知結果に応じて、搬送モータ210の回転速度を元の速度に素速く戻すことで、負荷変動に起因する第1搬送ローラ46aの回転速度不安定化を抑えることができる。
【0083】
また、このモータ駆動装置においては、ドライバ回路212が組み込まれたドライバ基板216を搬送モータ210に搭載したことで、ドライバ回路212を搬送モータ210から離れた位置に配設していた従来に比べて、ドライバ回路210と搬送モータ210のコイルとの距離を近づけている。これにより、複数の駆動電源用電線や信号用電線を束ねたハーネスをドライバ回路212と搬送モータ210との間に設けることなく、ドライバ基板216上の電極によってドライバ回路212からモータコイルに励磁電圧を供給したり、搬送モータ210からドライバ回路212にセンシング信号としてのホール信号を送信したりすることが可能になる。この結果、励磁対象となるコイルを高速で切り替える際のノイズの発生を抑えたり、発生したノイズのホール信号への混入を抑えたりすることで、ホール信号へのノイズの混入に起因するモータ回転の不安定化を抑えることができる。
【0084】
なお、ドライバ回路212とモータ制御回路200との間には、励磁用+電源、GND、ブレーキ信号、PWM信号、方向信号、信号用+電源、パルス信号A、及びパルス信号Bをそれぞれ個別に導くための8本の電線からなるハーネスを這い回している。このハーネスにおいては、励磁電圧の元になる励磁用+電源を導くための電線を1本しか設けておらず、この電線には長期に渡って+24Vが安定して供給される。ドライバ回路212と搬送モータ210との間とは異なり、励磁対象となるコイルの切り替えに伴う+24V導通線の高速切り替えが行われないため、高速切り替えに起因するノイズの発生は起こらない。このため、励磁用+電源を導くための電線と、パルス信号Aを導くための電線と、パルス信号Bを導くための電線とを一緒に這い回していても、パルス信号Aやパルス信号Bへのノイズ混入は起こらない。
【0085】
位置・速度追従制御回路202は、モータ回転量・速度計算回路203から送られてくるモータ回転量信号に基づいて、搬送モータ210について、起動時からの総回転量を把握する。そして、把握結果と、目標位置信号との比較に基づいて、搬送モータ210について、目標の回転量になる制動タイミングを把握し、その制動タイミングでドライバ回路212に対するPWM信号の出力を停止するとともに、ブレーキ信号を出力して、搬送モータ210を目標の回転角度姿勢で停止させる目標停止処理を実施する。これにより、搬送モータ210によって駆動される第1搬送ローラ46aや、これに連れ回る第2搬送ローラ46bを、目標の回転角度姿勢で停止させることができる。かかる目標停止処理については、PID制御を利用してフィードバック制御によって行われる。
【0086】
搬送モータ210を停止させている状態において、位置・速度追従制御回路202は、ホールド処理を行う。このホールド処理では、モータ回転量・速度計算回路203から送られてくるモータ回転量信号に基づいて、モータ軸213の正転や逆転の有無を監視する。そして、正転を検知した場合には、正転量に応じた量だけ搬送モータ210を逆転駆動する一方で、逆転を検知した場合には逆転量に応じた量だけ搬送モータ210を正転駆動する。これにより、搬送モータ210の回転駆動力によって駆動される第1搬送ローラ(46a)を目標の回転姿勢に拘束する。かかる構成では、ハス歯ギヤの付設によらず、ホールド制御によって搬送モータ210を所望の回転角度姿勢に拘束することで、装置の小型化、及び装置構成の簡素化を図ることができる。
【0087】
光学センサー211としては、分解能が45[LPI]であるものを用いている。また、コードホイール211aとしては、1周あたりにスリットSLを100個設けたものを用いている。このようにしたのは、次に説明した理由による。即ち、従来、搬送ローラ対の駆動源としては、HB型ステッピングモータが一般的に用いられていた。HB型ステッピングモータの基本分解能は200パルス(2相励磁)である。1−2相励磁で400パルス、W1−2相励磁で800パルスである。かかる分解能と同様の能力を、DCブラシレスモータからなる搬送モータ210で得ることが望ましい。DCブラシレスモータは、ステッピングモータに比べて2倍以上の回転速度で用いられるのが一般的であるので、減速比を考慮すると、基本分解能は半分の100パルスで、ステッピングモータの基本分解能(2相励磁)と同様の能力を発揮することが可能になる。また、光学センサー211bの2つの受光部からそれぞれ出力されるパルス信号A及びBを利用することで、モータ1周につき、2逓倍の200パルスや、4逓倍の400パルスを生成することが可能であるため、ステッピングモータの1−2相励磁時やW1−2相励磁時の分解能とそれぞれ同様の能力を発揮することも可能である。そこで、1周あたり100個のスリットSLを設けたコードホイール211aを用いたのである。
【0088】
また、光学センサー211bとして、分解能が45[LPI]であるものを用いることで、100個のスリットSLを設けるコードホイール211aの中心円径φを17.97[mm]に留める。これにより、コードホイール211aを搬送モータ210の径内に収めて、コードホイール211aを搭載することによる搬送モータ210の径の大型化を回避することができる。なお、コードホイールパルスを2倍の200パルスにすると、コードホイール211aの中心円径φは35.93[mm]まで大型化してしまう。この中心円形φを、搬送モータ210の径内に収めることは非常に困難である。また、コードホイールパルスを1.5倍の150パルスにしても、応答周波数が使用限界を超えないことから、分解能は45[LPI]であることが望ましい。
【0089】
図8において、ドライバ基板216には、コネクター215が固定されている。このコネクター215に対しては、モータ制御回路200から這い回されてくるハーネスの末端に設けられたハーネスコネクターが係合せしめられる。コネクター215のピン数は、励磁用+電源受入用ピン、GND受入用ピン、ブレーキ信号受入用ピン、PWM信号受入用ピン、方向信号受入用ピン、信号用+電源受入用ピン、パルス信号A出力用ピン、及びパルス信号受入用ピンの8個である。なお、図11では、便宜上、図示が省略されているが、ドライバ回路212から光学センサー211bに対して、+5[V]の電源配線と、GND配線とが延びている。
【0090】
コネクター215におけるピンの配設ピッチは1.5[mm]である。また、ピンの配列順序は、次の通りである。即ち、1番ピン=励磁用+電源受入用ピン、2番ピン=GND受入用ピン、3番ピン=ブレーキ信号受入用ピン、4番ピン=PWM信号受入用ピン、5番ピン=方向信号受入用ピン、6番ピン=信号用+電源受入用ピン、7番ピン=パルス信号A出力用ピン、8番ピン=パルス信号受入用ピン。24[V]の励磁用+電源受入用ピン(1番)に対して、パルス信号A出力用ピン(7番)及びパルス信号受入用ピン(8番)の組み合わせを最も遠ざけることで、パルス信号へのノイズの混入を効率的に抑えることができる。
【0091】
従来、搬送ローラ対の駆動源として最も多く使用されていたのは、回転軸線と直交する方向の平面が42[mm]×42[mm]で、且つ軸線方向の長さが42[mm]である「□42×L42」である。その次に多く使用されていたのは「□56×L42」である。これら2種類で、搬送ローラ対の駆動源として使用されるHB型ステッピングモータの約90%を占めていた。よって、搬送モータ210については、それら2種類のHB型ステッピングモータと置き換え可能なサイズにすることが望ましい。
【0092】
HB型ステッピングモータと同等の制御性を搬送モータ210に発揮させるためには、スリットSLや暗部DPの読み取りを高精度に行わせる必要がある。そのために、モータに組み付いた状態でのコードホイール211aの1回転内におけるセンサ読取位置での回転方向の位置誤差を0.3[%]以下に留める必要がある。かかる位置誤差は、コードホイール211aの寸法精度、モータ軸213に対するコードホイール211aの組み付け精度、モータ軸の真直度などを、厳密に管理した各部品を用いることが望ましい。
【0093】
図11において、位置・速度追従制御回路202は、モータ起動時に加速度変更処理を実施する。位置・速度追従制御回路202は、ROMを具備しており、このROMの中に、起動時のモータの回転速度について第1加速特性を示す第1アルゴリズムと、第2加速特性を示す第2アルゴリズムとを記憶している。
【0094】
図12は、第1アルゴリズムによって表される第1加速特性を示すグラフである。また、図13は、第2アルゴリズムによって表される第2加速特性を示すグラフである。これらの加速特性は、パルス周波数[Hz]の値を示す縦軸と、モータ起動時からの経過時間[s]を示す横軸との2次元座標におけるグラフの傾きによって表される。パルス周波数は、光学センサー211bから出力されるパルス信号Aやパルス信号Bの周波数であり、それらはモータの回転周波数を表している。グラフの傾きが大きいほど、加速性に優れている。図12、図13からわかるように、第1加速特性は第2加速特性よりも加速性に劣っている(図12のグラフの傾き<図13のグラフの傾き)。
【0095】
加速度変動処理において、位置・速度追従制御回路202は、まず、図12に示される第1加速特性に従って搬送モータ210の回転速度が徐々に上げるために、PWM信号を徐々に変化させて、ドライバ回路212から搬送モータ210への励磁電圧値を徐々に高くしていく。この処理については、PID制御を利用したフィードフォワード制御によって行う。この際、所定の時間間隔で、次のような処理を繰り返し実施する。即ち、パルス信号に基づいてモータ回転周波数実測値を演算し、演算結果と目標周波数(第1加速特性の縦軸値)との差分を求める。そして、この差分が所定の閾値を下回っている場合には、差分に応じてPWM信号のデューティ比を調整して、差分に応じた励磁電圧の増減を生じせしめる。これにより、モータの加速性を第1加速特性に追従させる。
【0096】
一方、モータ回転周波数実測値<目標周波数であって、且つその差分が前述の閾値以上である場合、即ち、実際の加速性が目標の第1加速特性よりも著しく低下した場合には、参照する加速特性を第1加速特性から第2加速特性に切り替える(使用するアルゴリズムを第1アルゴリズムから第2アルゴリズムに切り替える)。
【0097】
この切り替えは、次に説明する理由から行うものである。即ち、減速機を用いた駆動伝達系では、減速比を優先してギヤ周長や歯数が決定されることから、モータギヤとこれに噛み合う従動ギヤとの間に比較的大きな隙間が発生する。この大きな隙間により、モータが停止している状態では、モータギヤの歯が従動ギヤの歯から離間した状態になることがある。実施形態に係るモータ駆動装置でも、モータギヤ213の歯と、従動ギヤとしての第1減速ギヤ221の歯とが離間した状態になる。この状態では、搬送モータ210に対して負荷をかけるものが存在しないことから、搬送モータ210は駆動と同時に勢い良く回転を開始する。そして、モータギヤ213の歯が第1減速ギヤ221の歯に勢い良く衝突した時点で、搬送モータ210に初めて負荷がかかる。その衝突の際、モータギヤ213や第1減速ギヤ221の歯に大きな衝撃を与えて、ギヤの寿命を縮めてしまう。そこで、起動初期には、比較的ゆっくりとした加速性が得られる第1加速特性に従ってモータの回転を加速していく。
【0098】
第1加速特性に従ってモータの回転を加速していく過程で、実際の加速性が目標の第1加速特性よりも著しく低下する理由は、第1減速ギヤ221の歯から離間していたモータギヤ213の歯が第1減速ギヤ221の歯に突き当たるからである。このとき、第1加速特性に従ってモータギヤ213を比較的ゆっくりとした速度で加速しているため、突き当たり時の衝撃が抑えられる。
【0099】
その後(歯が突き当たったタイミングが到来した後)、位置・速度追従制御回路202は、搬送モータ210の回転速度を前記第1加速特性よりも加速性に優れた第2加速特性で一気に加速させる。具体的には、所定の時間間隔で、次のような処理を繰り返し実施する。即ち、パルス信号に基づいてモータ回転周波数実測値を演算し、演算結果と目標周波数(第2加速特性の縦軸値)との差分を求める。そして、この差分に応じてPWM信号のデューティ比を調整して、差分に応じた励磁電圧の増減を生じせしめる。これにより、モータの加速性を第2加速特性に追従させる。
【0100】
かかる構成では、前記タイミングの後に、搬送モータ210の回転速度を第1加速特性よりも加速性に優れた第2加速特性に従って加速して、搬送モータ210の回転速度を素速く目標速度に到達させることで、被駆動体たる第1搬送ローラ(46a)の回転速度を迅速に目標速度まで加速することができる。
【0101】
加速度変更処理を実施する際には、急激な負荷変動が起こる。このため、上述したプリドライバとしては、負荷変動に強い同期整流タイプの4象限プリドライバを用いている。よって、モータ起動時に加速度変更処理によって搬送モータ210に急激な負荷変動を与えても、搬送モータ210を適切に急加速させることができる。
【0102】
図5に示されるADF51においては、既に述べたように、読取入口ローラ対(89,90)における一方のローラ、読取出口ローラ対92における一方のローラ、及び第2読取出口ローラ対93における一方のローラが、それぞれ読取モータを駆動源として回転する。この読取モータは、搬送モータ210と同様の構成のDCブラシレスモータからなる。また、読取モータを駆動するためのモータ駆動装置は、搬送モータ210を駆動するためのモータ駆動装置と同様の構成になっている。つまり、読取モータを駆動するためのモータ駆動装置も、本発明を適用したものである。
【0103】
図14は、読取入口ローラ89等を回転駆動させるためのモータ駆動装置を示す平面構成図である。このモータ駆動装置は、モータ制御回路300と、DCブラシレスモータからなる読取モータ310と、減速機とを有している。
【0104】
モータ制御回路300は、モータエンコーダ311による検知結果に基づいて、読取モータ310の回転駆動を制御する制御手段として機能している。読取モータ310の駆動によってモータ軸313が回転すると、モータ軸に固定された図示しないモータギヤの回転速度が減速機によって減速された後、被駆動体としての読取入口ローラ89に伝達される。減速機225は、モータギヤに噛み合う第1減速ギヤ321と、これに噛み合う第2減速ギヤ322と、これに噛み合う第3減速ギヤ323と、これに噛み合う第4減速ギヤ324と、読取入口ローラ89と同一の回転軸線で回転する第5減速ギヤ325とを有している。
【0105】
ADF51の排紙ローラ対94は、排紙モータを駆動源として回転する。この排紙モータは、搬送モータ210と同様の構成のDCブラシレスモータからなる。また、排紙モータを駆動するためのモータ駆動装置は、搬送モータ210を駆動するためのモータ駆動装置と同様の構成になっている。つまり、排紙モータを駆動するためのモータ駆動装置も、本発明を適用したものである。
【0106】
次に、各変形例に係る複写機について説明する。なお、以下に特筆しない限り、各変形例に係る複写機の構成は、実施形態と同様である。
[第1変形例]
図15は、第1変形例に係る複写機の搬送ローラ対を駆動するためのモータ駆動装置に用いられている搬送モータ210を正面から示す斜視図である。また、図16は、搬送モータ210を背面から示す斜視図である。第1変形例では、搬送モータ210として、アウターロータ型のDCブラシレスモータからなるものが用いられている。モータエンコーダ211は、搬送モータ210のアウターロータ219に一体形成されたコードロータ部211cと、コードロータ部211cに設けられた複数のスリットを検知する反射型フォトセンサからなる光学センサー211bとを有している。
【0107】
アウターロータ型のDCブラシレスモータは、優れた等速性が要求される条件下で使用するのに適したモータであり、内蔵しているFG信号発電器から発したFG信号の周波数を、外部から入力される目標周波数に合わせるためのPLL回路を具備しているのが一般的である。第1変形例においては、搬送モータ210を目標速度で回転させるときには、そのPLL回路を利用する。このため、位置・速度追従制御回路202は、上述した速度調整処理を実施する代わりに、FG信号目標値を搬送モータ210に出力する。
【0108】
なお、コードロータ部211cとしては、図15に示したような複数のスリットを設けたものの他、図17に示すように、目印として複数の暗部を設けたものを採用することも可能である。
【0109】
[第2変形例]
図18は、第2変形例に係る複写機の画像形成部1を示す概略構成図である。この画像形成部1は、給紙カセット42と搬送ローラ対46とを内蔵している。搬送ローラ対46を駆動するためのモータ駆動装置は、実施形態に係る複写機のシート供給装置40の搬送ローラ対を駆動するためのモータ駆動装置と同様の構成になっている。
【0110】
[第3変形例]
図19は、第3変形例に係る複写機を示す概略構成図である。この複写機は、作像ユニットとして、黒用の作像ユニット3を1つだけ備えている。そして、作像ユニット3の感光体と、転写ローラとの当接による転写ニップに記録シートを通す際に、感光体上のトナー像を記録シートに転写する。画像形成部1に記録シートを供給するシート供給装置40は、実施形態と同様の構成になっている。
【0111】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
態様Aは、DCブラシレスモータ(例えば搬送モータ210)と、DCブラシレスモータのコイルを励磁するためのドライバ回路と、ドライバ回路を介してDCブラシレスモータの駆動を制御する制御手段(例えばモータ制御回路200)とを有するモータ駆動装置において、DCブラシレスモータの励磁コイルの切り替えタイミングをドライバ回路に把握させるためにDCブラシレスモータの回転量を検知する回転量検知手段(例えばホール素子217)とは別に、DCブラシレスモータの回転量を前記回転量検知手段よりも高精度に検知する第2回転量検知手段(例えばモータエンコーダ211)をDCブラシレスモータに搭載するとともに、ドライバ回路を前記DCブラシレスモータに搭載し、モータ起動時にて、DCブラシレスモータの回転速度を所定の第1加速特性で加速させるようにDCブラシレスモータを駆動しながら、第2回転量検知手段による検知結果と、第1加速特性を示す第1アルゴリズムとに基づいて、モータ加速性が低下するタイミングを特定し、タイミングが到来した後に、DCブラシレスモータの回転速度を第1加速特性よりも加速性に優れた第2加速特性で加速させるようにDCブラシレスモータを駆動する加速度変更処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
【0112】
[態様B]
態様Bは、態様Aにおいて、第2回転量検知手段をDCブラシレスモータ内に配設されたドライバ回路の基板(例えばドライバ基板216)に固定したことを特徴とするものである。かかる構成では、ドライバ回路の基板を第2回転量検知手段の保持部材として利用することで、部品点数を減らして、DCブラシレスモータの大型化を抑えることができる。
【0113】
[態様C]
態様Cは、第2回転量検知手段による検知結果と、所定の目標値との比較に基づいてドライバ回路からコイルに供給される電流量を電圧によって調整することで、DCブラシレスモータの回転速度を調整する速度調整処理を実施するように、制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、被駆動体の速度を自在に調整することができる。
【0114】
[態様D]
態様Dは、態様A〜Cにおいて、ドライバ回路として、制御手段から出力されるPWM信号に基づいてコイルに対する励磁電圧の出力を調整する出力調整部と、DCブラシレスモータにおける複数のコイルのうち、励磁するコイルを所定の順序で切り替えるコイル切替部とを具備するものを用いたことを特徴とするものである。かかる構成では、市販のドライバ回路を採用して低コスト化を図ることができる。
【0115】
[態様E]
また、態様Eは、態様A〜Dにおいて、第2回転量検知手段として、モータ軸に固定されたコードホイール、及びコードホイールに設けられた複数の目印(例えばスリットSLや暗部DP)を光学的に検知する光学センサーを具備するものを用いるとともに、第2回転量検知手段をカバー部材で覆ったことを特徴とするものである。かかる構成では、光学センサーの受光部に対する異物の付着をカバー部材によって抑えることで、異物の付着に起因する検知精度の低下を抑えることができる。
【0116】
[態様F]
態様Fは、態様A〜Eにおいて、DCブラシレスモータとして、インナーロータ型のものを用いたことを特徴とするものである。かかる構成では、インナーロータ型のDCブラシレスモータの良好な加速調整性により、被駆動体の加速度を自在に調整することができる。
【0117】
[態様G]
態様Gは、態様A〜Eにおいて、DCブラシレスモータとして、アウターロータ型のものを用いたことを特徴とするものである。かかる構成では、アウターロータ型のDCブラシレスモータに搭載されたPLL回路を利用して、速度調整処理を実施することができる。
【符号の説明】
【0118】
46a:第1搬送ローラ(被駆動体)
200:モータ制御回路(制御手段)
210:搬送モータ(DCブラシレスモータ)
211:モータエンコーダ(第2回転量検知手段)
211a:コードホイール
211b:光学センサー
212:ドライバ回路
217:ホール素子(回転量検知手段)
310:読取モータ(DCブラシレスモータ)
SL:スリット(目印)
DP:暗部(目印)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0119】
【特許文献1】特開2010−133990号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、被駆動体を駆動するためのDCブラシレスモータを制御するモータ駆動装置、並びに、かかるモータ駆動装置を用いるシート搬送装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像形成装置内に搭載される紙搬送装置など、定量的な動作が必要になる駆動系においては、駆動源として、交流モータの一種であるステッピングモータを用いるのが一般的であった。ステッピングモータは、制御装置から発せられたパルス数に正確に対応する量だけ回転するので、定量的な駆動に非常に適したモータである。しなしながら、脱調の発生を防止するために、最大負荷の1.3倍程度、あるいは平均負荷の2倍程度、の負荷がかかっても回転周期を乱さないほどトルクに余裕のある条件で駆動することから、無駄な電力を消費してしまうという不具合があった。
【0003】
一方、特許文献1には、被駆動体たるローラの回転量をエンコーダによって検知した結果に基づいて、駆動源たるDCブラシレスモータの駆動量を調整することで、ローラの定量的な回転駆動を実現するモータ駆動装置が記載されている。DCブラシレスモータは、一般にモータ本体とは別体で構成されるドライバ回路によって励磁コイルが切り替えられるモータである。ドライバ回路は、例えば、3相コイルのDCブラシレスモータであれば、DCブラシレスモータの回転角度が120[°]、240[°]、0(360)[°]と120[°]ずつ変化していく過程で、励磁対象となるコイルをスイッチング手段によって順に切り替えていく。DCブラシレスモータは、そのスイッチングのタイミングをドライバ回路に対して適切に把握させるために、モータ軸を所定の角度ずつ回転させる毎に、ホール素子などから回転センシング信号を出力する。負荷トルクに応じた電流が流れるためステッピングモータのような電流のロスがない。特許文献1に記載のモータ駆動装置は、かかる構成のDCブラシレスモータを用いることで、ステッピングモータを用いる場合に比べて、無駄な電力消費を抑えることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このモータ駆動装置においては、DCブラシレスモータのホール素子などからドライバ回路に送られる回転センシング信号にノイズを混入させることによるモータ回転の不安定化を引き起こすおそれがある。具体的には、ドライバ回路からDCブラシレスモータに対しては、各コイルに対してそれぞれ励磁電圧を個別に供給する必要がある。励磁対象となるコイルは非常に短時間のうちに切り替わるため、各コイルにそれぞれ励磁電圧を個別に導くための複数の駆動電源用電線においては、モータの回転に応じて、励磁電流の流れる駆動電源用電線が高速で切り替わる。すると、複数の駆動電源用電線とともに這い回されている信号用電線によって交信される回転センシング信号にノイズが混入して、DCブラシレスモータの回転を不安定にしてしまうのである。
【0005】
また、このモータ駆動装置では、モータ起動時のギヤ歯の衝突によってギヤの寿命を縮めてしまうという問題があった。具体的には、モータ軸に固定されたモータギヤと、従動ギヤとの噛み合い部には、両者間にある程度の隙間が設けられている。このため、DCブラシレスモータの駆動停止時に、噛み合い部において、モータギヤの歯が従動ギヤの歯から離間することがある。この状態では、DCブラシレスモータに対して負荷をかけるものが存在しないことから、DCブラシレスモータは駆動と同時に勢い良く回転を開始する。そして、モータギヤの歯が従動ギヤの歯に勢い良く衝突した時点で、DCブラシレスモータに初めて負荷がかかる。その衝突の際、モータギヤや従動ギヤの歯に大きな衝撃を与えて、歯の摩耗や破損を助長することから、ギヤの寿命を縮めてしまうのである。
【0006】
また、ギヤの寿命低下を抑える狙いで、DCブラシレスモータをゆっくりした回転加速度で立ち上げると、被駆動体たるローラの回転を迅速に加速することができなくなってしまう。
【0007】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、次のようなモータ駆動装置、シート搬送装置、及び画像形成装置を提供することである。即ち、ドライバ回路に入力される回転センシング信号へのノイズの混入に起因するモータ回転の不安定化と、モータ起動時のギヤ歯の衝突に起因するギヤの寿命低下とを抑えつつ、DCブラシレスモータによって被駆動体を迅速に加速することができるモータ駆動装置等である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、DCブラシレスモータと、前記DCブラシレスモータのコイルを励磁するためのドライバ回路と、前記ドライバ回路を介してDCブラシレスモータの駆動を制御する制御手段とを有するモータ駆動装置において、前記DCブラシレスモータの励磁コイルの切り替えタイミングを前記ドライバ回路に把握させるために前記DCブラシレスモータの回転量を検知する回転量検知手段とは別に、前記DCブラシレスモータの回転量を前記回転量検知手段よりも高精度に検知する第2回転量検知手段を前記DCブラシレスモータに搭載するとともに、前記ドライバ回路を前記DCブラシレスモータに搭載し、モータ起動時にて、前記DCブラシレスモータの回転速度を所定の第1加速特性で加速させるように前記DCブラシレスモータを駆動しながら、前記第2回転量検知手段による検知結果と、前記第1加速特性を示す第1アルゴリズムとに基づいて、モータ加速性が低下するタイミングを特定し、タイミングが到来した後に、前記DCブラシレスモータの回転速度を前記第1加速特性よりも加速性に優れた第2加速特性で加速させるように前記DCブラシレスモータを駆動する加速度変更処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、ドライバ回路をDCブラシレスモータに搭載したことで、ドライバ回路をDCブラシレスモータから離れた位置に配設していた従来に比べて、ドライバ回路とDCブラシレスモータのコイルとの距離を近づけている。これにより、複数の駆動電源用電線や信号用電線を束ねたハーネスをドライバ回路とDCブラシレスモータとの間に設けることなく、回路基板上の電極によってドライバ回路からモータコイルに励磁電圧を供給したり、モータからドライバ回路に回転センシング信号を送信したりすることが可能になる。この結果、励磁対象となるコイルを高速で切り替える際のノイズの発生を抑えたり、発生したノイズの回転センシング信号への混入を抑えたりすることで、回転センシング信号へのノイズの混入に起因するモータ回転の不安定化を抑えることができる。
【0010】
また、本発明においては、DCブラシレスモータの駆動を開始した制御手段が、DCブラシレスモータのモータ軸に固定されたモータギヤと、従動ギヤの噛み合い部にて、モータギヤの歯を従動ギヤの歯に接触させるまで、DCブラシレスモータの回転速度を第2加速特性よりも加速性に劣る第1加速特性に従って比較的ゆっくりと加速していく。このようにゆっくりと加速していく過程でモータギヤの歯を従動ギヤの歯に接触させることで、モータ起動時にギヤ歯にかけてしまう衝撃を軽減する。これにより、モータ起動時のギヤ歯の衝突に起因するギヤの寿命低下を抑えることができる。
【0011】
また、本発明では、モータの起動時に、第1加速特性に従った比較的ゆっくりと加速度でモータギヤの歯が従動ギヤの歯に接触すると、DCブラシレスモータに対する負荷を高めることから、モータ加速性を急激に低下させる。制御手段は、このようにモータ加速性が低下するタイミングを、モータ軸の単位時間あたりの回転量(回転速度)を第2回転量検知手段によって高精度に検知した結果と、第1アルゴリズムとに基づいて特定する。そして、そのタイミングの後に、DCブラシレスモータの回転速度を前記第1加速特性よりも加速性に優れた第2加速特性に従って加速させる。これにより、DCブラシレスモータの回転速度を素速く目標速度まで加速することで、被駆動体を迅速に加速することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係る複写機を示す概略構成図。
【図2】同複写機における画像形成部の一部を拡大して示す部分構成図。
【図3】同画像形成部における4つの作像ユニットからなるタンデム部の一部を示す部分拡大図。
【図4】同複写機のスキャナ及びADFを示す斜視図。
【図5】同ADFの要部構成をスキャナの上部とともに示す拡大構成図。
【図6】同複写機のシート供給装置における搬送ローラ対の第1搬送ローラを回転駆動させるためのモータ駆動装置を示す平面構成図。
【図7】同モータ駆動装置の搬送モータを前方から示す拡大斜視図。
【図8】同搬送モータを後方から示す拡大斜視図。
【図9】同搬送モータに搭載されたコードホイールの第1例を示す斜視図。
【図10】同コードホイールの第2例を示す斜視図。
【図11】同モータ駆動装置における電気回路の要部を示すブロック図。
【図12】第1加速特性を示すグラフ。
【図13】第2加速特性を示すグラフ。
【図14】同複写機のADFの読取入口ローラ等を回転駆動させるためのモータ駆動装置を示す平面構成図。
【図15】第1変形例に係る複写機の搬送ローラ対を駆動するためのモータ駆動装置に用いられている搬送モータを正面から示す斜視図。
【図16】同搬送モータを背面から示す斜視図。
【図17】同搬送モータの変形例を示す斜視図。
【図18】第2変形例に係る複写機の画像形成部1を示す概略構成図。
【図19】第3変形例に係る複写機を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を、電子写真方式の複写機(以下、単に複写機という)に適用した実施形態について説明する。
まず、実施形態に係る複写機の基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係る複写機を示す概略構成図である。この複写機は、画像形成装置としての画像形成部1と、シート供給装置40と、画像読取ユニット50とを備えている。画像読取装置としての画像読取ユニット50は、画像形成部1の上に固定されたスキャナ150と、これに支持されるシート搬送装置としての原稿自動搬送装置(以下、ADFという)51とを有している。
【0014】
シート供給装置40は、ペーパーバンク41内に多段に配設された2つの給紙カセット42、給紙カセットから記録シートを送り出す送出ローラ43、送り出された記録シートを1枚ずつに分離する分離ローラ45等を有している。また、画像形成部1の搬送路としての給紙路37に対して、シート部材としての記録シートを搬送する複数の搬送ローラ対46等も有している。
【0015】
給紙カセット42は、複数の記録シートを重ねたシート束の状態で内部に収容している。そして、一番上の記録シートに対して送出ローラ43を押し当てている。送出ローラ43が回転すると、シート束の一番上の記録シートが給紙カセット42から送り出される。
【0016】
給紙カセット42の付近では、搬送ローラ対46の第1搬送ローラと、これの側方(図中右側方)に配設された第2搬送ローラとが互いに当接して搬送ニップを形成している。また、第1搬送ローラの下方には、分離ローラ45が配設されており、第1搬送ローラに対して下方から当接して分離搬送ニップを形成している。
【0017】
送出ローラ43の回転駆動によって給紙カセット42から送り出された記録シートは、搬送ローラ対46の第1搬送ローラと、これの下方に配設された分離ローラ45との当接による分離搬送ニップに進入する。この分離搬送ニップでは、記録シートの上面に当接する第1搬送ローラが図中反時計回り方向に回転駆動しながら、記録シートに対して給紙カセット42側から給送路44側に向かう搬送力を付与する。これに対し、記録シートの下面に当接する分離ローラ45が図中反時計回り方向に回転駆動しながら、記録シートに対して給送路44側から給紙カセット42側に向かう搬送力を付与して、記録シートを給紙カセット42に戻そうとする。
【0018】
給紙カセット42から記録シートが1枚だけの状態で送り出された場合、分離搬送ニップにおいて、第1搬送ローラと分離ローラ45とが記録シートに対して互いに逆方向に向かう搬送力を付与することで、分離ローラ45の駆動伝達系に所定の閾値を超える負荷がかかる。すると、その駆動伝達系内に配設されたトルクリミッターが作動して、図示しないDCブラシレスモータからの駆動力の分離ローラ45に対する伝達を切る。これにより、分離ローラ45が第1搬送ローラによって搬送される記録シートに連れ回るようになって、記録シートが分離搬送ニップから給送路44に向けて排出される。
【0019】
一方、給紙カセット42から記録シートが複数枚重なった状態で送り出された場合、分離搬送ニップにおいて、第1搬送ローラが一番上の記録シートに対して給紙カセット42側から給送路44側に向かう搬送力を付与して、一番上の記録シートを分離搬送ニップから給送路44側に向けて送り出す。これに対し、分離ローラが下側に位置している記録シートに対して給送路44側から給紙カセット側に向かう搬送力を付与して、下側の記録シートを分離搬送ニップ内から給紙カセット42側に逆戻りさせる。これにより、分離搬送ニップでは、一番上の記録シートが他の記録シートから分離されて1枚の状態で給送路44に送り出される。
【0020】
給送路44に進入した記録シートは、搬送ローラ対46の搬送ニップに進入して、鉛直方向下方側から上方側に向かう搬送力を付与される。これにより、給送路44内では、記録シートが画像形成部1の給紙路37に向けて搬送される。
【0021】
画像形成手段としての画像形成部1は、光書込装置2や、黒,イエロー,マゼンタ,シアン(K,Y,M,C)のトナー像を形成する4つの作像ユニット3K,Y,M,C、転写ユニット24、紙搬送ユニット28、レジストローラ対33、定着装置34、スイッチバック装置36、給紙路37等を備えている。そして、光書込装置2内に配設された図示しないレーザーダイオードやLED等の光源を駆動して、ドラム状の4つの感光体4K,Y,M,Cに向けてレーザー光Lを照射する。この照射により、感光体4K,Y,M,Cの表面には静電潜像が形成され、この潜像は所定の現像プロセスを経由してトナー像に現像される。
【0022】
図2は、画像形成部1の内部構成の一部を拡大して示す部分構成図である。また、図3は、4つの作像ユニット3K,Y,M,Cからなるタンデム部の一部を示す部分拡大図である。なお、4つの作像ユニット3K,Y,M,Cは、それぞれ使用するトナーの色が異なる他はほぼ同様の構成になっているので、図3においては各符号に付すK,Y,M,Cという添字を省略している。
【0023】
作像ユニット3K,Y,M,Cは、それぞれ、感光体とその周囲に配設される各種装置とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、画像形成部1本体に対して着脱可能になっている。黒用の作像ユニット3Kを例にすると、これは、感光体4の周りに、帯電装置23、現像装置6、ドラムクリーニング装置15、除電ランプ22等を有している。本複写機では、4つの作像ユニット3K,Y,M,Cを、後述する中間転写ベルト25に対してその無端移動方向に沿って並べるように対向配設した、いわゆるタンデム型の構成になっている。
【0024】
感光体4としては、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材の塗布による感光層を形成したドラム状のものを用いている。但し、無端ベルト状のものを用いても良い。
【0025】
現像装置6は、図示しない磁性キャリアと非磁性トナーとを含有する二成分現像剤を用いて潜像を現像するようになっている。内部に収容している二成分現像剤を攪拌しながら搬送して現像スリーブ12に供給する攪拌部7と、現像スリーブ12に担持された二成分現像剤中のトナーを感光体4に転移させるための現像部11とを有している。
【0026】
攪拌部7は、現像部11よりも低い位置に設けられており、互いに平行配設された2本の搬送スクリュウ8、これらスクリュウ間に設けられた仕切り板、現像ケース9の底面に設けられたトナー濃度センサー10などを有している。
【0027】
現像部11は、現像ケース9の開口を通して感光体4に対向する現像スリーブ12、これの内部に回転不能に設けられたマグネットローラ13、現像スリーブ12に先端を接近させるドクタブレード14などを有している。現像スリーブ12は、非磁性の回転可能な筒状になっている。マグネットローラ12は、ドクタブレード14との対向位置からスリーブの回転方向に向けて順次並ぶ複数の磁極を有している。これら磁極は、それぞれスリーブ上の二成分現像剤に対して回転方向の所定位置で磁力を作用させる。これにより、攪拌部7から送られてくる二成分現像剤を現像スリーブ13表面に引き寄せて担持させるとともに、スリーブ表面上で磁力線に沿った磁気ブラシを形成する。
【0028】
磁気ブラシは、現像スリーブ12の回転に伴ってドクタブレード14との対向位置を通過する際に適正な層厚に規制されてから、感光体4に対向する現像領域に搬送される。そして、現像スリーブ12に印加される現像バイアスと、感光体4の静電潜像との電位差によってトナーを静電潜像上に転移させて現像に寄与する。更に、現像スリーブ12の回転に伴って再び現像部11内に戻り、マグネットローラ13の磁極間に形成される反発磁界の影響によってスリーブ表面から離脱した後、攪拌部7内に戻される。攪拌部7内には、トナー濃度センサー10による検知結果に基づいて、二成分現像剤に適量のトナーが補給される。なお、現像装置6として、二成分現像剤を用いるものの代わりに、磁性キャリアを含まない一成分現像剤を用いるものを採用してもよい。
【0029】
ドラムクリーニング装置15としては、弾性体からなるクリーニングブレード16を感光体4に押し当てる方式のものを用いているが、他の方式のものを用いてもよい。クリーニング性を高める目的で、本例では、外周面を感光体4に接触させる接触導電性のファーブラシ17を、図中矢印方向に回転自在に有する方式のものを採用している。このファーブラシ17は、図示しない固形潤滑剤から潤滑剤を掻き取って微粉末にしながら感光体4表面に塗布する役割も兼ねている。ファーブラシ17にバイアスを印加する金属製の電界ローラ18を図中矢示方向に回転自在に設け、これにスクレーパ19の先端を押し当てている。ファーブラシ17に付着したトナーは、ファーブラシ17に対してカウンタ方向に接触して回転しながらバイアスが印加される電界ローラ18に転位する。そして、スクレーパ19によって電界ローラ18から掻き取られた後、回収スクリュウ20上に落下する。回収スクリュウ20は、回収トナーをドラムクリーニング装置15における図紙面と直交する方向の端部に向けて搬送して、外部のリサイクル搬送装置21に受け渡す。リサイクル搬送装置21は、受け渡されたトナーを現像装置15に送ってリサイクルする。
【0030】
除電ランプ22は、光照射によって感光体4を除電する。除電された感光体4の表面は、帯電装置23によって一様に帯電せしめられた後、光書込装置2による光書込処理がなされる。なお、帯電装置23としては、帯電バイアスが印加される帯電ローラを感光体4に当接させながら回転させるものを用いている。感光体4に対して非接触で帯電処理を行うスコロトロンチャージャ等を用いてもよい。
【0031】
先に示した図2において、4つの作像ユニット3K,Y,M,Cの感光体4K,Y,M,Cには、これまで説明してきたプロセスによってK,Y,M,Cトナー像が形成される。
【0032】
4つの作像ユニット3K,Y,M,Cの下方には、転写ユニット24が配設されている。ベルト駆動装置としての転写ユニット24は、複数のローラによって張架した中間転写ベルト25を、感光体4K,Y,M,Cに当接させながら図中時計回り方向に無端移動させる。これにより、感光体4K,Y,M,Cと、無端状のベルト部材である中間転写ベルト25とが当接するK,Y,M,C用の1次転写ニップが形成されている。K,Y,M,C用の1次転写ニップの近傍では、ベルトループ内側に配設された1次転写ローラ26K,Y,M,Cによって中間転写ベルト25を感光体4K,Y,M,Cに向けて押圧している。これら1次転写ローラ26K,Y,M,Cには、それぞれ図示しない電源によって1次転写バイアスが印加されている。これにより、K,Y,M,C用の1次転写ニップには、感光体4K,Y,M,C上のトナー像を中間転写ベルト25に向けて静電移動させる1次転写電界が形成されている。図中時計回り方向の無端移動に伴ってK,Y,M,C用の1次転写ニップを順次通過していく中間転写ベルト25のおもて面には、各1次転写ニップでトナー像が順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト25のおもて面には4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
【0033】
転写ユニット24の図中下方には、駆動ローラ30と2次転写ローラ31との間に、無端状の紙搬送ベルト29を掛け渡して無端移動させる紙搬送ユニット28が設けられている。そして、自らの2次転写ローラ31と、転写ユニット24の下部張架ローラ27との間に、中間転写ベルト25及び紙搬送ベルト29を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト25のおもて面と、紙搬送ベルト29のおもて面とが当接する2次転写ニップが形成されている。2次転写ローラ31には図示しない電源によって2次転写バイアスが印加されている。一方、転写ユニット24の下部張架ローラ27は接地されている。これにより、2次転写ニップに2次転写電界が形成されている。
【0034】
この2次転写ニップの図中右側方には、レジストローラ対33が配設されている。また、レジストローラ対33のレジストニップの入口付近には、図示しないレジストローラセンサーが配設されている。図示しないシート供給装置からレジストローラ対33に向けて搬送されてくる記録シートは、その先端がレジストローラセンサーに検知された所定時間後記録シートの搬送が一時停止し、レジストローラ対33のレジストニップに先端を突き当てる。
【0035】
記録シートの先願がレジストニップに突き当たると、レジストローラ対33は、記録シートを中間転写ベルト25上の4色トナー像に同期させ得るタイミングでローラ回転駆動を再開して、記録シートを2次転写ニップに送り出す。2次転写ニップ内では、中間転写ベルト25上の4色トナー像が2次転写電界やニップ圧の作用によって記録シートに一括2次転写され、記録シートの白色と相まってフルカラー画像となる。2次転写ニップを通過した記録シートは、中間転写ベルト25から離間して、紙搬送ベルト29のおもて面に保持されながら、その無端移動に伴って定着装置34へと搬送される。
【0036】
2次転写ニップを通過した中間転写ベルト25の表面には、2次転写ニップで記録シートに転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、中間転写ベルト25に当接するベルトクリーニング装置によって掻き取り除去される。
【0037】
定着装置34に搬送された記録シートは、定着装置34内における加圧や加熱によってフルカラー画像が定着させしめられた後、定着装置34から排紙ローラ対35に送られた後、機外へと排出される。
【0038】
先に示した図1において、紙搬送ユニット22および定着装置34の下には、スイッチバック装置36が配設されている。これにより、片面に対する画像定着処理を終えた記録シートが、切換爪で記録シートの進路を記録シート反転装置側に切り換えられ、そこで反転されて再び2次転写転写ニップに進入する。そして、もう片面にも画像の2次転写処理と定着処理とが施された後、排紙トレイ上に排紙される。
【0039】
画像形成部1の上に固定されたスキャナ150やこれの上に固定されたADF51は、固定読取部や移動読取部152を有している。移動読取部152は、原稿MSに接触するようにスキャナ150のケーシング上壁に固定された図示しない第2コンタクトガラスの直下に配設されており、光源や、反射ミラーなどからなる光学系を図中左右方向に移動させることができる。そして、光学系を図中左側から右側に移動させていく過程で、光源から発した光を第2コンタクトガラス上に載置された図示しない原稿で反射させた後、複数の反射ミラーを経由させて、スキャナ本体に固定された画像読取センサー153で受光する。
【0040】
一方、固定読取部は、スキャナ150の内部に配設された第1面固定読取部151と、ADF51内に配設された図示しない第2面固定読取部とを有している。光源、反射ミラー、CCD等の画像読取センサーなどを有する第1面固定読取部151は、原稿MSに接触するようにスキャナ150のケーシング上壁に固定された図示しない第1コンタクトガラスの直下に配設されている。そして、後述するADF51によって搬送される原稿MSが第1コンタクトガラス上を通過する際に、光源から発した光を原稿面で順次反射させながら、複数の反射ミラーを経由させて画像読取センサーで受光する。これにより、光源や反射ミラー等からなる光学系を移動させることなく、原稿MSの第1面を走査する。また、第2面固定読取部は、第1面固定読取部151を通過した後の原稿MSの第2面を走査する。
【0041】
スキャナ150の上に配設されたADF51は、本体カバー52に、読取前の原稿MSを載置するための原稿載置台53、シート部材としての原稿MSを搬送するための搬送ユニット54、読取後の原稿MSをスタックするための原稿スタック台55などを保持している。図4に示されるように、スキャナ150に固定された蝶番159によって上下方向に揺動可能に支持されている。そして、その揺動によって開閉扉のような動きをとり、開かれた状態でスキャナ150の上面の第1コンタクトガラス154や第2コンタクトガラス155を露出させる。原稿束の片隅を綴じた本などの片綴じ原稿の場合には、原稿を1枚ずつ分離することができないため、ADFによる搬送を行うことができない。そこで、片綴じ原稿の場合には、ADF51を図4に示すように開いた後、読み取らせたいページが見開かれた片綴じ原稿を下向きにして第2コンタクトガラス154上に載せた後、ADFを閉じる。そして、スキャナ150の図1に示した移動読取部152によってそのページの画像を読み取らせる。
【0042】
一方、互いに独立した複数の原稿MSを単に積み重ねた原稿束の場合には、その原稿MSをADF51によって1枚ずつ自動搬送しながら、スキャナ150内の第1面固定読取部151やADF51内の第2面固定読取部に順次読み取らせていくことができる。この場合、原稿束を原稿載置台53上にセットした後、図示しないコピースタートボタンを押す。すると、ADF51が、原稿載置台53上に載置された原稿束の原稿MSを上から順に搬送ユニット54内に送り、それを反転させながら原稿スタック台55に向けて搬送する。この搬送の過程で、原稿MSを反転させた直後にスキャナ150の第1面固定読取部151の真上に通す。このとき、原稿MSの第1面の画像がスキャナ150の第1面固定読取部151によって読み取られる。
【0043】
図5は、ADF51の要部構成をスキャナ150の上部とともに示す拡大構成図である。ADF51は、原稿セット部A、分離給送部B、レジスト部C、ターン部D、第1読取搬送部E、第2読取搬送部F、排紙部G、スタック部H等を備えている。
【0044】
原稿セット部Aは、原稿MSの束がセットされる原稿載置台53等を有している。また、分離給送部Bは、セットされた原稿MSの束から原稿MSを一枚ずつ分離して給送するものである。また、レジスト部Cは、給送された原稿MSに一時的に突き当たって原稿MSを整合した後に送り出すものである。また、ターン部Dは、C字状に湾曲する湾曲搬送部を有しており、この湾曲搬送部内で原稿MSを折り返しながらその上下を反転させるものである。また、第1読取搬送部Eは、第1コンタクトガラス155の上で原稿MSを搬送しながら、第1コンタクトガラス155の下方で図示しないスキャナの内部に配設されている第1固定読取部151に原稿MSの第1面を読み取らせるものである。また、第2読取搬送部Fは、第2固定読取部95の下で原稿MSを搬送しながら、原稿MSの第2面を第2固定読取部95に読み取らせるものである。また、排紙部Gは、両面の画像が読み取られた原稿MSをスタック部Hに向けて排出するものである。また、スタック部Hは、スタック台55の上に原稿MSをスタックするものである。
【0045】
原稿MSは、原稿MSの束の厚みに応じて図中矢印a、bの方向に揺動可能な可動原稿テーブル54の上に原稿先端部が載せられるとともに、原稿後端側が原稿載置台53の上に載せられた状態でセットされる。このとき、原稿載置台53上において、その幅方向(図紙面に直交する方向)の両端に対してそれぞれ図示しないサイドガイドが突き当てられることで、幅方向における位置が調整される。このようにしてセットされる原稿MSは、可動原稿テーブル54の上方で揺動可能に配設されたレバー部材62を押し上げる。すると、それに伴って原稿セットセンサー63が原稿MSのセットを検知して、検知信号を図示しないコントローラに送信する。そして、この検知信号は、コントローラからI/Fを介してスキャナの読取制御部に送られる。
【0046】
原稿載置台53には、原稿MSの搬送方向の長さを検知する反射型フォトセンサー又はアクチュエーター・タイプのセンサーからなる第1長さセンサー57、第2長さセンサー58が保持されている。これら長さセンサーにより、原稿MSの搬送方向の長さが検知される。
【0047】
可動原稿テーブル54の上に載置された原稿MSの束の上方には、カム機構によって上下方向(図中矢印c,d方向)に移動可能に支持されるピックアップローラ80が配設されている。このカム機構は、ピックアップモータ56によって駆動することで、ピックアップローラ80を上下移動させることが可能である。ピックアップローラ80が上昇移動すると、それに伴って可動原稿テーブル54が図中矢印a方向に揺動して、ピックアップローラ80が原稿MSの束における一番上の原稿MSに当接する。更に可動原稿テーブル54が上昇すると、やがてテーブル上昇検知センサー59によって可動原稿テーブル54の上限までの上昇が検知される。これにより、ピックアップモータ56が停止するとともに、可動原稿テーブル54の上昇が停止する。
【0048】
複写機の本体に設けられたテンキーやディスプレイ等からなる本体操作部に対しては、操作者によって両面読取モードか、あるいは片面読取モードかを示す読取モード設定のためのキー操作や、コピースタートキーの押下操作などが行われる。コピースタートキーが押下されると、図示しない本体制御部からADF51のコントローラに原稿給紙信号が送信される。すると、ピックアップローラ80が給紙モータ76の正転によって回転駆動して、可動原稿テーブル54上の原稿MSを可動原稿テーブル54上から送り出す。
【0049】
両面読取モードか、片面読取モードかの設定に際しては、可動原稿テーブル54上に載置された全ての原稿MSについて一括して両面、片面の設定を行うことが可能である。また、1枚目及び10枚目の原稿MSについては両面読取モードに設定する一方で、その他の原稿MSについては片面読取モードに設定するなどといった具合に、個々の原稿MSについてそれぞれ個別に読取モードを設定することも可能である。
【0050】
送出部材としてのピックアップローラ80によって送り出された原稿MSは、分離搬送部Bに進入して、給紙ベルト84との当接位置に送り込まれる。この給紙ベルト84は、駆動ローラ82などによって張架されており、給紙モータ76の正転に伴う駆動ローラ82の回転によって図中時計回り方向に無端移動せしめられる。この給紙ベルト84の下部張架面には、給紙モータ76の正転によって図中時計回りに回転駆動される分離ローラ85が当接している。当接部においては、給紙ベルト84の表面が給紙方向に移動する。これに対し、分離ローラ85は、給紙ベルト84に所定の圧力で当接しており、給紙ベルト84に直接当接している際、あるいは当接部に原稿MSが1枚だけ挟み込まれている際には、ベルト又は原稿MSに連れ回る。但し、当接部に複数枚の原稿MSが挟み込まれた際には、連れ回り力がトルクリミッターのトルクよりも低くなることから、連れ回り方向とは逆の図中時計回りに回転駆動する。これにより、最上位よりも下の原稿MSには、分離ローラ85によって給紙とは反対方向の移動力が付与されて、数枚の原稿から最上位の原稿MSだけが分離される。
【0051】
給紙ベルト84や分離ローラ85の働きによって1枚に分離された原稿MSは、レジスト部Cに進入する。そして、突き当てセンサー72の直下を通過する際にその先端が検知される。このとき、ピックアップモータ56の駆動力を受けているピックアップローラ80がまだ回転駆動しているが、可動原稿テーブル54の下降によって原稿MSから離間するため、原稿MSは給紙ベルト84の無端移動力のみによって搬送される。そして、突き当てセンサー72によって原稿MSの先端が検知されたタイミングから所定時間だけ給紙ベルト84の無端移動が継続して、原稿MSの先端がプルアウト駆動ローラ86とこれに当接しながら回転駆動するプルウト駆動ローラ87との当接部に突き当たる。
【0052】
プルアウト従動ローラ87は、原稿MSを原稿搬送方向下流側の中間ローラ対66まで搬送する役割を担っており、給紙モータ76の逆転によって回転駆動される。給紙モータ76が逆転すると、プルアウト従動ローラ87と、互いに当接している中間ローラ対66における一方のローラとが回転を開始するとともに、給紙ベルト84の無端移動が停止する。また、このとき、ピックアップローラ80の回転も停止される。
【0053】
プルアウト従動ローラ87から送り出された原稿MSは、原稿幅センサー73の直下を通過する。原稿幅センサー73は、反射型フォトセンサー等からなる紙検知部を複数有しており、これら紙検知部は原稿幅方向(図紙面に直交する方向)に並んでいる。どの紙検知部が原稿MSを検知するのかに基づいて、原稿MSの幅方向のサイズが検知される。また、原稿MSの搬送方向の長さは、原稿MSの先端が突き当てセンサー72によって検知されてから、原稿MSの後端が突き当てセンサー72によって検知されなくなるまでのタイミングに基づいて検知される。
【0054】
原稿幅センサー73によって幅方向のサイズが検知された原稿MSの先端は、ターン部Dに進入して、中間ローラ対66のローラ間の当接部に挟み込まれる。この中間ローラ対66による原稿MSの搬送速度は、後述する第1読取搬送部Eでの原稿MSの搬送速度よりも高速に設定されている。これにより、原稿MSを第1読取搬送部Eに送り込むまでの時間の短縮化が図られている。
【0055】
ターン部D内を搬送される原稿MSの先端は、原稿先端が読取入口センサー67との対向位置を通過する。これによって原稿MSの先端が読取入口センサー67によって検知されると、その先端が搬送方向下流側の読取入口ローラ対(89と90との対)の位置まで搬送される間での間に、中間ローラ対66による原稿搬送速度が減速される。また、図示しない読取モータの回転駆動の開始に伴って、読取入口ローラ対(89,90)における一方のローラ、読取出口ローラ対92における一方のローラ、第2読取出口ローラ対93における一方のローラがそれぞれ回転駆動を開始する。
【0056】
ターン部D内においては、原稿MSが中間ローラ対66と読取入口ローラ対(89、90)との間の湾曲搬送路で搬送される間に上下面が逆転されるとともに、搬送方向が折り返される。そして、読取入口ローラ対(89、90)のローラ間のニップを通過した原稿MSの先端は、レジストセンサー65の直下を通過する。このとき原稿MSの先端がレジストセンサー65によって検知されると、所定の搬送距離をかけながら原稿搬送速度が減速されていき、第1読取搬送部Eの手前で原稿MSの搬送が一時停止される。また、図示しない読取制御部に対してレジスト停止信号が送信される。
【0057】
レジスト停止信号を受けた読取制御部が読取開始信号を送信すると、ADF51のコントローラの制御により、原稿MSの先端が第1読取搬送部E内に到達するまで、読取モータの回転が再開されて所定の搬送速度まで原稿MSの搬送速度が増速される。そして、読取モータのパルスカウントに基づいて算出された原稿MSの先端が第1固定読取部151による読取位置に到達するタイミングで、コントローラから読取制御部に対して原稿MSの第1面の副走査方向有効画像領域を示すゲート信号が送信される。この送信は、原稿MSの後端が第1固定読取部151による読取位置を抜け出るまで続けられ、原稿MSの第1面が第1固定読取部151によって読み取られる。
【0058】
第1読取搬送部Eを通過した原稿MSは、後述の読取出口ローラ対92を経由した後、その先端が排紙センサー61によって検知される。片面読取モードが設定されている場合には、後述する第2固定読取部95による原稿MSの第2面の読取が不要である。そこで、排紙センサー61によって原稿MSの先端が検知されると、排紙モータの正転駆動が開始されて、排紙ローラ対94における図中下側の排紙ローラが図中時計回り方向に回転駆動される。また、排紙センサー61によって原稿MSの先端が検知されてからの排紙モータパルスカウントに基づいて、原稿MSの後端が排紙ローラ対94のニップを抜け出るタイミングが演算される。そして、この演算結果に基づいて、原稿MSの後端が排紙ローラ対94のニップから抜け出る直前のタイミングで、排紙モータの駆動速度が減速せしめられて、原稿MSがスタック台55から飛び出さないような速度で排紙される。
【0059】
一方、両面読取モードが設定されている場合には、排紙センサー61によって原稿MSの先端が検知された後、第2固定読取部95に到達するまでのタイミングが読取モータのパルスカウントに基づいて演算される。そして、そのタイミングでコントローラから読取制御部に対して原稿MSの第2面における副走査方向の有効画像領域を示すゲート信号が送信される。この送信は、原稿MSの後端が第2固定読取部95による読取位置を抜け出るまで続けられ、原稿MSの第2面が第2固定読取部95によって読み取られる。
【0060】
読取手段としての第2固定読取部95は、密着型イメージセンサー(CIS)からなり、原稿MSに付着している糊状の異物が読取面に付着することによる読取縦スジを防止する目的で、読取面にコーティング処理が施されている。第2固定読取部95との対向位置には、原稿MSを非読取面側から支持する原稿支持手段としての第2読取ローラ96が配設されている。この第2読取ローラ96は、第2固定読取部95による読取位置での原稿MSの浮きを防止するとともに、第2固定読取部95におけるシェーディングデータを取得するための基準白部として機能する役割を担っている。
【0061】
次に、実施形態に係る複写機の特徴的な構成について説明する。上述したように、図1のシート供給装置40の給送路44では、記録シートに対して搬送ローラ対46の搬送ニップで上方に向かう搬送力が付与されて、記録シートが画像形成部1の給紙路37に向けて搬送される。
【0062】
図6は、搬送ローラ対46の第1搬送ローラ46aを回転駆動させるためのモータ駆動装置を示す平面構成図である。このモータ駆動装置は、モータ制御回路200と、インナーロータ型のDCブラシレスモータからなる搬送モータ210と、減速機225とを有している。
【0063】
モータ制御回路200は、後述するモータエンコーダによる検知結果に基づいて、搬送モータ210の回転駆動を制御する制御手段として機能している。搬送モータ210の駆動によって搬送モータ210のモータ軸214が回転すると、モータ軸214に固定されたモータギヤ213の回転速度が減速機225によって減速された後、被駆動体としての第1搬送ローラ46aに伝達される。
【0064】
減速機225は、モータギヤ213に噛み合う第1減速ギヤ221と、これに噛み合う第2減速ギヤ222と、これに噛み合う第3減速ギヤ223と、第1搬送ローラ46aと同一の回転軸線で回転するように第1搬送ローラ46aの軸部材に固定された状態で第3減速ギヤ223に噛み合う第4減速ギヤとを有している。
【0065】
図7は、モータ駆動装置の搬送モータ210を前方から示す拡大斜視図である。また、図8は、搬送モータ210を後方から示す拡大斜視図である。これらの図に示すように、搬送モータ210のモータ軸213は、モータ本体を前後方向に貫いた状態で、モータ本体の前部においてモータ本体から前方に向けて突出しているとともに、モータ本体の後部においてモータ本体から後方に向けて突出している。
【0066】
モータ本体の後側面には、ドライバ基板216が固定されており、このドライバ基板216には、搬送モータ210の3相のコイルを所定の順序で励磁するためのドライバ回路を搭載している。モータ軸213は、このドライバ基板216も貫いて後方に向けて突出している。
【0067】
モータ軸213におけるドライバ基板216よりも後方の箇所には、第2回転量検知手段としてのモータエンコーダ211のコードホイール211aが固定されており、モータ軸213の回転に伴ってモータ軸213と同じ回転軸線上で回転する。コードホイール211aは、図9に示されるように、回転方向に所定のピッチで並ぶ複数のスリットSLを具備している。コードホイール211aの回転に伴ってそれらのスリットSLを順次検知するように、透過型フォトセンサーからなる光学センサー211bが、搬送モータ210のドライバ基板216に固定されている(図8参照)。なお、便宜上、図示を省略しているが、搬送モータ210のモータ本体における後端部には、ドライバ起案216やモータエンコーダ211を覆うカバー部材が嵌め込まれている。
【0068】
温度変化に伴う伸縮が生じてもコードホイール211aを確実にモータ軸213に同期させて回転させるように、コードホイール211aについては、モータ軸213に圧入するだけでなく、接着剤によってモータ軸213に接着することが望ましい。
【0069】
コードホイール211aとしては、金属板の打ち抜き加工によってホイール本体及びスリットSLを加工したものを用いている。かかるコードホイール211aは、金属製であることから、温度変化に伴う伸縮を抑えて、スリットピッチの経時変動を軽減することができる。しなしながら、打ち抜き加工のときに生じたバリに埃などの異物を付着させ易い。そこで、図9に示されるコードホイール211aに代えて、図10に示されるコードホイール211aを用いてもよい。このコードホイール211aは、回転方向に所定のピッチでならぶ複数の暗部DPを目印として具備している。暗部DPは、フォトリソグラフィー法を用いたハーフエッチング加工によって形成されたものである。基材として表面に鏡面仕上げ層が被覆されたものを用い、ハーフエッチングによって鏡面仕上げ層を除去して暗部層を露出させている箇所が暗部DPになっている。暗部DPを高精度で加工することができる。但し、ハーフエッチング加工によってコスト高になる。また、油脂に弱いために取り扱いに注意を要する。
【0070】
図10に示されるコードホイール211aを用いる場合には、光学センサー211bとしては、透過型フォトセンサーからなるものに代えて、反射型フォトセンサーからなるものを用いて、光反射性の違いによって暗部DPを検知させるようにすればよい。
【0071】
このように、実施形態に係る複写機においては、ドライバ回路、及び第2回転量検知手段たるモータエンコーダ211を、搬送モータ210に搭載している。
【0072】
図11は、モータ駆動装置における電気回路の要部を示すブロック図である。DCブラシレスモータからなる搬送モータ210の駆動を制御するモータ制御回路200は、搬送モータ210とは別体として形成されており、画像形成部(図1の1)の本体に固定されている。このモータ制御回路200は、目標位置・速度計算回路201、位置・速度追従制御回路202、モータ回転量・速度計算回路203などを有している。
【0073】
同図に示される目標信号生成手段250は、モータ駆動装置とは別体として構成されたものであり、プリントジョブの進行状況に応じて、第1搬送ローラ(46a)の目標回転量、目標回転速度、目標回転停止位置などの目標信号を生成する。画像形成部(1)内の各種機器の全体的な制御を司るメイン制御部を目標信号生成手段250として機能させてもよい。
【0074】
モータ制御回路200としては、1チップマイコンからなるもの、あるいは制御用ASIC(Application Specific Integrated Circuit)からなるものが用いられている。
【0075】
目標信号生成手段250からモータ制御回路200に送られた目標信号は、モータ制御回路200の目標位置・速度計算回路201に入力される。目標位置・速度計算回路201は、入力された目標信号に基づいて、第1搬送ローラ(46a)を目標の回転姿勢で停止させるための目標モータ停止位置を算出し、その結果を目標位置信号として出力する。また、目標信号に基づいて、第1搬送ローラ(46a)を目標の回転速度で回転させるための目標モータ回転速度を算出し、その結果を目標速度信号として出力する。
【0076】
搬送モータ210に搭載されたモータエンコーダ211の光学センサーとしては、スリットSL透過後の光を受光する受光部を2つ具備する2チャンネル光学センサーを用いている。2つの受光部は、次のような条件を具備するように配設されている。即ち、コードホイール211aのスリットSLが第1受光部に対向したときに、第2受光部がそのスリットSLの脇に存在するホイール非スリット部に対向する条件である。第1受光部による受光量と、第2受光部による受光量との比率の変化に基づいて、それぞれの受光部に対してコードホイール211のスリットSLをずれなく対向させた瞬間が高精度に把握される。第1受光部は受光量に応じた電圧をパルス信号Aとして出力する。また、第2受光部は、受光量に応じた電圧をパルス信号Bとして出力する。
【0077】
光学センサー211bから出力されるパルス信号Aやパルス信号Bは、モータ制御回路200のモータ回転量・速度計算回路203に入力される。モータ位置・速度計算経路203は、パルス信号A、パルス信号Bについてそれぞれパルス立ち上がり数やパルス周波数を演算した結果に基づいて、モータ回転量を算出し、その結果をモータ回転量信号として出力する。また、モータ回転速度を算出し、その結果をモータ回転速度信号として出力する。
【0078】
位置・速度追従制御回路202は、ドライバ回路212に対して、GND(−電源)を常時供給している。また、必要に応じて励磁用+電源(+24V)や、信号用+電源(+5V)をドライバ回路212に供給する。更には、必要に応じてブレーキ信号、PWM信号、方向信号(CW,CCW)をそれぞれ個別にドライバ回路212に出力する。方向信号としては、正転命令を行うための正転信号、逆転命令を行うための逆転信号の何れかを出力する。PWM信号は、ドライバ回路212から搬送モータ210のコイルに対して出力される励磁電圧値を指示するためのものである。
【0079】
搬送モータ210は、ホール素子217を有している。このホール素子は、搬送モータ210のモータ軸213の回転角度姿勢について、基準となる0[°](360°)になったことや、120[°]、240[°]になったことを示すためのホール信号をドライバ回路212に出力する。
【0080】
ドライバ回路212は、モータ制御回路200の位置・速度追従制御回路202から出力されるPWM信号に基づいて搬送モータ210のコイルに対する励磁電圧の出力を調整する出力調整部と、搬送モータ210における3相のコイルのうち、励磁電圧を出力するコイルを切り替えるコイル切替部とを具備している。出力調整部は、PWM信号に基づいて、コイル切替部に対する+24[V]の電圧の出力をオンオフすることで、コイル切替部を介してコイルに流れる単位時間あたりの励磁電圧の値を調整する。また、コイル切替部は、プリドライバや複数のFET(フィールドエフェクトトランジスタ)などを具備している。複数のFETとしては、少なくとも、1相目のコイルに励磁するためのU励磁電圧の出力をオンオフするための第1FET、2相目のコイルに励磁するためのV励磁電圧の出力をオンオフするための第2FET、及び3相目のコイルに励磁するためのW励磁電圧の出力をオンオフするための第3FETを具備している。それらFETには、FETによるスイッチングを制御するためのゲート電圧がプリドライバからそれぞれ個別に出力される。プリドライバは、ホール素子217からのホール信号に基づいて、3つのFETに対するゲート電圧のオンオフを個別に制御することで、搬送モータ210に出力する励磁電圧を、U励磁電圧と、V励磁電圧と、W励磁電圧とで切り替える。この切り替えにより、搬送モータ210のモータ軸213に対して磁界の切り替えによる回転力が付与される。
【0081】
位置・速度追従制御回路202は、モータ回転量・速度計算回路203から送られてくるモータ回転速度信号の目標速度信号からのずれ量を算出し、そのずれ量に基づいてPWM信号を調整することで、搬送モータ210に対する励磁電圧を調整して、搬送モータ210の回転速度を目標の回転速度に制御するための速度調整処理を実施する。この速度調整処理により、搬送モータ210によって駆動される被駆動体たる第1搬送ローr46aの回転速度を自在に調整することができる。かかる速度調整処理については、PID制御を利用したフィードバック制御によって行われる。
【0082】
モータ駆動装置は、搬送モータ210によって回転駆動される第1搬送ローラ46aの回転速度を検知することなく、図8に示されるように、搬送モータ210に搭載されたモータエンコーダ211によって搬送モータ210の回転速度を直接的に検知する。かかる構成では、第1搬送ローラ46aの回転速度変化に基づいて搬送モータ210の回転速度の変化を間接的に検知していた従来に比べて、搬送モータ210の回転速度の変化を迅速に検知する。そして、その検知結果に応じて、搬送モータ210の回転速度を元の速度に素速く戻すことで、負荷変動に起因する第1搬送ローラ46aの回転速度不安定化を抑えることができる。
【0083】
また、このモータ駆動装置においては、ドライバ回路212が組み込まれたドライバ基板216を搬送モータ210に搭載したことで、ドライバ回路212を搬送モータ210から離れた位置に配設していた従来に比べて、ドライバ回路210と搬送モータ210のコイルとの距離を近づけている。これにより、複数の駆動電源用電線や信号用電線を束ねたハーネスをドライバ回路212と搬送モータ210との間に設けることなく、ドライバ基板216上の電極によってドライバ回路212からモータコイルに励磁電圧を供給したり、搬送モータ210からドライバ回路212にセンシング信号としてのホール信号を送信したりすることが可能になる。この結果、励磁対象となるコイルを高速で切り替える際のノイズの発生を抑えたり、発生したノイズのホール信号への混入を抑えたりすることで、ホール信号へのノイズの混入に起因するモータ回転の不安定化を抑えることができる。
【0084】
なお、ドライバ回路212とモータ制御回路200との間には、励磁用+電源、GND、ブレーキ信号、PWM信号、方向信号、信号用+電源、パルス信号A、及びパルス信号Bをそれぞれ個別に導くための8本の電線からなるハーネスを這い回している。このハーネスにおいては、励磁電圧の元になる励磁用+電源を導くための電線を1本しか設けておらず、この電線には長期に渡って+24Vが安定して供給される。ドライバ回路212と搬送モータ210との間とは異なり、励磁対象となるコイルの切り替えに伴う+24V導通線の高速切り替えが行われないため、高速切り替えに起因するノイズの発生は起こらない。このため、励磁用+電源を導くための電線と、パルス信号Aを導くための電線と、パルス信号Bを導くための電線とを一緒に這い回していても、パルス信号Aやパルス信号Bへのノイズ混入は起こらない。
【0085】
位置・速度追従制御回路202は、モータ回転量・速度計算回路203から送られてくるモータ回転量信号に基づいて、搬送モータ210について、起動時からの総回転量を把握する。そして、把握結果と、目標位置信号との比較に基づいて、搬送モータ210について、目標の回転量になる制動タイミングを把握し、その制動タイミングでドライバ回路212に対するPWM信号の出力を停止するとともに、ブレーキ信号を出力して、搬送モータ210を目標の回転角度姿勢で停止させる目標停止処理を実施する。これにより、搬送モータ210によって駆動される第1搬送ローラ46aや、これに連れ回る第2搬送ローラ46bを、目標の回転角度姿勢で停止させることができる。かかる目標停止処理については、PID制御を利用してフィードバック制御によって行われる。
【0086】
搬送モータ210を停止させている状態において、位置・速度追従制御回路202は、ホールド処理を行う。このホールド処理では、モータ回転量・速度計算回路203から送られてくるモータ回転量信号に基づいて、モータ軸213の正転や逆転の有無を監視する。そして、正転を検知した場合には、正転量に応じた量だけ搬送モータ210を逆転駆動する一方で、逆転を検知した場合には逆転量に応じた量だけ搬送モータ210を正転駆動する。これにより、搬送モータ210の回転駆動力によって駆動される第1搬送ローラ(46a)を目標の回転姿勢に拘束する。かかる構成では、ハス歯ギヤの付設によらず、ホールド制御によって搬送モータ210を所望の回転角度姿勢に拘束することで、装置の小型化、及び装置構成の簡素化を図ることができる。
【0087】
光学センサー211としては、分解能が45[LPI]であるものを用いている。また、コードホイール211aとしては、1周あたりにスリットSLを100個設けたものを用いている。このようにしたのは、次に説明した理由による。即ち、従来、搬送ローラ対の駆動源としては、HB型ステッピングモータが一般的に用いられていた。HB型ステッピングモータの基本分解能は200パルス(2相励磁)である。1−2相励磁で400パルス、W1−2相励磁で800パルスである。かかる分解能と同様の能力を、DCブラシレスモータからなる搬送モータ210で得ることが望ましい。DCブラシレスモータは、ステッピングモータに比べて2倍以上の回転速度で用いられるのが一般的であるので、減速比を考慮すると、基本分解能は半分の100パルスで、ステッピングモータの基本分解能(2相励磁)と同様の能力を発揮することが可能になる。また、光学センサー211bの2つの受光部からそれぞれ出力されるパルス信号A及びBを利用することで、モータ1周につき、2逓倍の200パルスや、4逓倍の400パルスを生成することが可能であるため、ステッピングモータの1−2相励磁時やW1−2相励磁時の分解能とそれぞれ同様の能力を発揮することも可能である。そこで、1周あたり100個のスリットSLを設けたコードホイール211aを用いたのである。
【0088】
また、光学センサー211bとして、分解能が45[LPI]であるものを用いることで、100個のスリットSLを設けるコードホイール211aの中心円径φを17.97[mm]に留める。これにより、コードホイール211aを搬送モータ210の径内に収めて、コードホイール211aを搭載することによる搬送モータ210の径の大型化を回避することができる。なお、コードホイールパルスを2倍の200パルスにすると、コードホイール211aの中心円径φは35.93[mm]まで大型化してしまう。この中心円形φを、搬送モータ210の径内に収めることは非常に困難である。また、コードホイールパルスを1.5倍の150パルスにしても、応答周波数が使用限界を超えないことから、分解能は45[LPI]であることが望ましい。
【0089】
図8において、ドライバ基板216には、コネクター215が固定されている。このコネクター215に対しては、モータ制御回路200から這い回されてくるハーネスの末端に設けられたハーネスコネクターが係合せしめられる。コネクター215のピン数は、励磁用+電源受入用ピン、GND受入用ピン、ブレーキ信号受入用ピン、PWM信号受入用ピン、方向信号受入用ピン、信号用+電源受入用ピン、パルス信号A出力用ピン、及びパルス信号受入用ピンの8個である。なお、図11では、便宜上、図示が省略されているが、ドライバ回路212から光学センサー211bに対して、+5[V]の電源配線と、GND配線とが延びている。
【0090】
コネクター215におけるピンの配設ピッチは1.5[mm]である。また、ピンの配列順序は、次の通りである。即ち、1番ピン=励磁用+電源受入用ピン、2番ピン=GND受入用ピン、3番ピン=ブレーキ信号受入用ピン、4番ピン=PWM信号受入用ピン、5番ピン=方向信号受入用ピン、6番ピン=信号用+電源受入用ピン、7番ピン=パルス信号A出力用ピン、8番ピン=パルス信号受入用ピン。24[V]の励磁用+電源受入用ピン(1番)に対して、パルス信号A出力用ピン(7番)及びパルス信号受入用ピン(8番)の組み合わせを最も遠ざけることで、パルス信号へのノイズの混入を効率的に抑えることができる。
【0091】
従来、搬送ローラ対の駆動源として最も多く使用されていたのは、回転軸線と直交する方向の平面が42[mm]×42[mm]で、且つ軸線方向の長さが42[mm]である「□42×L42」である。その次に多く使用されていたのは「□56×L42」である。これら2種類で、搬送ローラ対の駆動源として使用されるHB型ステッピングモータの約90%を占めていた。よって、搬送モータ210については、それら2種類のHB型ステッピングモータと置き換え可能なサイズにすることが望ましい。
【0092】
HB型ステッピングモータと同等の制御性を搬送モータ210に発揮させるためには、スリットSLや暗部DPの読み取りを高精度に行わせる必要がある。そのために、モータに組み付いた状態でのコードホイール211aの1回転内におけるセンサ読取位置での回転方向の位置誤差を0.3[%]以下に留める必要がある。かかる位置誤差は、コードホイール211aの寸法精度、モータ軸213に対するコードホイール211aの組み付け精度、モータ軸の真直度などを、厳密に管理した各部品を用いることが望ましい。
【0093】
図11において、位置・速度追従制御回路202は、モータ起動時に加速度変更処理を実施する。位置・速度追従制御回路202は、ROMを具備しており、このROMの中に、起動時のモータの回転速度について第1加速特性を示す第1アルゴリズムと、第2加速特性を示す第2アルゴリズムとを記憶している。
【0094】
図12は、第1アルゴリズムによって表される第1加速特性を示すグラフである。また、図13は、第2アルゴリズムによって表される第2加速特性を示すグラフである。これらの加速特性は、パルス周波数[Hz]の値を示す縦軸と、モータ起動時からの経過時間[s]を示す横軸との2次元座標におけるグラフの傾きによって表される。パルス周波数は、光学センサー211bから出力されるパルス信号Aやパルス信号Bの周波数であり、それらはモータの回転周波数を表している。グラフの傾きが大きいほど、加速性に優れている。図12、図13からわかるように、第1加速特性は第2加速特性よりも加速性に劣っている(図12のグラフの傾き<図13のグラフの傾き)。
【0095】
加速度変動処理において、位置・速度追従制御回路202は、まず、図12に示される第1加速特性に従って搬送モータ210の回転速度が徐々に上げるために、PWM信号を徐々に変化させて、ドライバ回路212から搬送モータ210への励磁電圧値を徐々に高くしていく。この処理については、PID制御を利用したフィードフォワード制御によって行う。この際、所定の時間間隔で、次のような処理を繰り返し実施する。即ち、パルス信号に基づいてモータ回転周波数実測値を演算し、演算結果と目標周波数(第1加速特性の縦軸値)との差分を求める。そして、この差分が所定の閾値を下回っている場合には、差分に応じてPWM信号のデューティ比を調整して、差分に応じた励磁電圧の増減を生じせしめる。これにより、モータの加速性を第1加速特性に追従させる。
【0096】
一方、モータ回転周波数実測値<目標周波数であって、且つその差分が前述の閾値以上である場合、即ち、実際の加速性が目標の第1加速特性よりも著しく低下した場合には、参照する加速特性を第1加速特性から第2加速特性に切り替える(使用するアルゴリズムを第1アルゴリズムから第2アルゴリズムに切り替える)。
【0097】
この切り替えは、次に説明する理由から行うものである。即ち、減速機を用いた駆動伝達系では、減速比を優先してギヤ周長や歯数が決定されることから、モータギヤとこれに噛み合う従動ギヤとの間に比較的大きな隙間が発生する。この大きな隙間により、モータが停止している状態では、モータギヤの歯が従動ギヤの歯から離間した状態になることがある。実施形態に係るモータ駆動装置でも、モータギヤ213の歯と、従動ギヤとしての第1減速ギヤ221の歯とが離間した状態になる。この状態では、搬送モータ210に対して負荷をかけるものが存在しないことから、搬送モータ210は駆動と同時に勢い良く回転を開始する。そして、モータギヤ213の歯が第1減速ギヤ221の歯に勢い良く衝突した時点で、搬送モータ210に初めて負荷がかかる。その衝突の際、モータギヤ213や第1減速ギヤ221の歯に大きな衝撃を与えて、ギヤの寿命を縮めてしまう。そこで、起動初期には、比較的ゆっくりとした加速性が得られる第1加速特性に従ってモータの回転を加速していく。
【0098】
第1加速特性に従ってモータの回転を加速していく過程で、実際の加速性が目標の第1加速特性よりも著しく低下する理由は、第1減速ギヤ221の歯から離間していたモータギヤ213の歯が第1減速ギヤ221の歯に突き当たるからである。このとき、第1加速特性に従ってモータギヤ213を比較的ゆっくりとした速度で加速しているため、突き当たり時の衝撃が抑えられる。
【0099】
その後(歯が突き当たったタイミングが到来した後)、位置・速度追従制御回路202は、搬送モータ210の回転速度を前記第1加速特性よりも加速性に優れた第2加速特性で一気に加速させる。具体的には、所定の時間間隔で、次のような処理を繰り返し実施する。即ち、パルス信号に基づいてモータ回転周波数実測値を演算し、演算結果と目標周波数(第2加速特性の縦軸値)との差分を求める。そして、この差分に応じてPWM信号のデューティ比を調整して、差分に応じた励磁電圧の増減を生じせしめる。これにより、モータの加速性を第2加速特性に追従させる。
【0100】
かかる構成では、前記タイミングの後に、搬送モータ210の回転速度を第1加速特性よりも加速性に優れた第2加速特性に従って加速して、搬送モータ210の回転速度を素速く目標速度に到達させることで、被駆動体たる第1搬送ローラ(46a)の回転速度を迅速に目標速度まで加速することができる。
【0101】
加速度変更処理を実施する際には、急激な負荷変動が起こる。このため、上述したプリドライバとしては、負荷変動に強い同期整流タイプの4象限プリドライバを用いている。よって、モータ起動時に加速度変更処理によって搬送モータ210に急激な負荷変動を与えても、搬送モータ210を適切に急加速させることができる。
【0102】
図5に示されるADF51においては、既に述べたように、読取入口ローラ対(89,90)における一方のローラ、読取出口ローラ対92における一方のローラ、及び第2読取出口ローラ対93における一方のローラが、それぞれ読取モータを駆動源として回転する。この読取モータは、搬送モータ210と同様の構成のDCブラシレスモータからなる。また、読取モータを駆動するためのモータ駆動装置は、搬送モータ210を駆動するためのモータ駆動装置と同様の構成になっている。つまり、読取モータを駆動するためのモータ駆動装置も、本発明を適用したものである。
【0103】
図14は、読取入口ローラ89等を回転駆動させるためのモータ駆動装置を示す平面構成図である。このモータ駆動装置は、モータ制御回路300と、DCブラシレスモータからなる読取モータ310と、減速機とを有している。
【0104】
モータ制御回路300は、モータエンコーダ311による検知結果に基づいて、読取モータ310の回転駆動を制御する制御手段として機能している。読取モータ310の駆動によってモータ軸313が回転すると、モータ軸に固定された図示しないモータギヤの回転速度が減速機によって減速された後、被駆動体としての読取入口ローラ89に伝達される。減速機225は、モータギヤに噛み合う第1減速ギヤ321と、これに噛み合う第2減速ギヤ322と、これに噛み合う第3減速ギヤ323と、これに噛み合う第4減速ギヤ324と、読取入口ローラ89と同一の回転軸線で回転する第5減速ギヤ325とを有している。
【0105】
ADF51の排紙ローラ対94は、排紙モータを駆動源として回転する。この排紙モータは、搬送モータ210と同様の構成のDCブラシレスモータからなる。また、排紙モータを駆動するためのモータ駆動装置は、搬送モータ210を駆動するためのモータ駆動装置と同様の構成になっている。つまり、排紙モータを駆動するためのモータ駆動装置も、本発明を適用したものである。
【0106】
次に、各変形例に係る複写機について説明する。なお、以下に特筆しない限り、各変形例に係る複写機の構成は、実施形態と同様である。
[第1変形例]
図15は、第1変形例に係る複写機の搬送ローラ対を駆動するためのモータ駆動装置に用いられている搬送モータ210を正面から示す斜視図である。また、図16は、搬送モータ210を背面から示す斜視図である。第1変形例では、搬送モータ210として、アウターロータ型のDCブラシレスモータからなるものが用いられている。モータエンコーダ211は、搬送モータ210のアウターロータ219に一体形成されたコードロータ部211cと、コードロータ部211cに設けられた複数のスリットを検知する反射型フォトセンサからなる光学センサー211bとを有している。
【0107】
アウターロータ型のDCブラシレスモータは、優れた等速性が要求される条件下で使用するのに適したモータであり、内蔵しているFG信号発電器から発したFG信号の周波数を、外部から入力される目標周波数に合わせるためのPLL回路を具備しているのが一般的である。第1変形例においては、搬送モータ210を目標速度で回転させるときには、そのPLL回路を利用する。このため、位置・速度追従制御回路202は、上述した速度調整処理を実施する代わりに、FG信号目標値を搬送モータ210に出力する。
【0108】
なお、コードロータ部211cとしては、図15に示したような複数のスリットを設けたものの他、図17に示すように、目印として複数の暗部を設けたものを採用することも可能である。
【0109】
[第2変形例]
図18は、第2変形例に係る複写機の画像形成部1を示す概略構成図である。この画像形成部1は、給紙カセット42と搬送ローラ対46とを内蔵している。搬送ローラ対46を駆動するためのモータ駆動装置は、実施形態に係る複写機のシート供給装置40の搬送ローラ対を駆動するためのモータ駆動装置と同様の構成になっている。
【0110】
[第3変形例]
図19は、第3変形例に係る複写機を示す概略構成図である。この複写機は、作像ユニットとして、黒用の作像ユニット3を1つだけ備えている。そして、作像ユニット3の感光体と、転写ローラとの当接による転写ニップに記録シートを通す際に、感光体上のトナー像を記録シートに転写する。画像形成部1に記録シートを供給するシート供給装置40は、実施形態と同様の構成になっている。
【0111】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
態様Aは、DCブラシレスモータ(例えば搬送モータ210)と、DCブラシレスモータのコイルを励磁するためのドライバ回路と、ドライバ回路を介してDCブラシレスモータの駆動を制御する制御手段(例えばモータ制御回路200)とを有するモータ駆動装置において、DCブラシレスモータの励磁コイルの切り替えタイミングをドライバ回路に把握させるためにDCブラシレスモータの回転量を検知する回転量検知手段(例えばホール素子217)とは別に、DCブラシレスモータの回転量を前記回転量検知手段よりも高精度に検知する第2回転量検知手段(例えばモータエンコーダ211)をDCブラシレスモータに搭載するとともに、ドライバ回路を前記DCブラシレスモータに搭載し、モータ起動時にて、DCブラシレスモータの回転速度を所定の第1加速特性で加速させるようにDCブラシレスモータを駆動しながら、第2回転量検知手段による検知結果と、第1加速特性を示す第1アルゴリズムとに基づいて、モータ加速性が低下するタイミングを特定し、タイミングが到来した後に、DCブラシレスモータの回転速度を第1加速特性よりも加速性に優れた第2加速特性で加速させるようにDCブラシレスモータを駆動する加速度変更処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
【0112】
[態様B]
態様Bは、態様Aにおいて、第2回転量検知手段をDCブラシレスモータ内に配設されたドライバ回路の基板(例えばドライバ基板216)に固定したことを特徴とするものである。かかる構成では、ドライバ回路の基板を第2回転量検知手段の保持部材として利用することで、部品点数を減らして、DCブラシレスモータの大型化を抑えることができる。
【0113】
[態様C]
態様Cは、第2回転量検知手段による検知結果と、所定の目標値との比較に基づいてドライバ回路からコイルに供給される電流量を電圧によって調整することで、DCブラシレスモータの回転速度を調整する速度調整処理を実施するように、制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、被駆動体の速度を自在に調整することができる。
【0114】
[態様D]
態様Dは、態様A〜Cにおいて、ドライバ回路として、制御手段から出力されるPWM信号に基づいてコイルに対する励磁電圧の出力を調整する出力調整部と、DCブラシレスモータにおける複数のコイルのうち、励磁するコイルを所定の順序で切り替えるコイル切替部とを具備するものを用いたことを特徴とするものである。かかる構成では、市販のドライバ回路を採用して低コスト化を図ることができる。
【0115】
[態様E]
また、態様Eは、態様A〜Dにおいて、第2回転量検知手段として、モータ軸に固定されたコードホイール、及びコードホイールに設けられた複数の目印(例えばスリットSLや暗部DP)を光学的に検知する光学センサーを具備するものを用いるとともに、第2回転量検知手段をカバー部材で覆ったことを特徴とするものである。かかる構成では、光学センサーの受光部に対する異物の付着をカバー部材によって抑えることで、異物の付着に起因する検知精度の低下を抑えることができる。
【0116】
[態様F]
態様Fは、態様A〜Eにおいて、DCブラシレスモータとして、インナーロータ型のものを用いたことを特徴とするものである。かかる構成では、インナーロータ型のDCブラシレスモータの良好な加速調整性により、被駆動体の加速度を自在に調整することができる。
【0117】
[態様G]
態様Gは、態様A〜Eにおいて、DCブラシレスモータとして、アウターロータ型のものを用いたことを特徴とするものである。かかる構成では、アウターロータ型のDCブラシレスモータに搭載されたPLL回路を利用して、速度調整処理を実施することができる。
【符号の説明】
【0118】
46a:第1搬送ローラ(被駆動体)
200:モータ制御回路(制御手段)
210:搬送モータ(DCブラシレスモータ)
211:モータエンコーダ(第2回転量検知手段)
211a:コードホイール
211b:光学センサー
212:ドライバ回路
217:ホール素子(回転量検知手段)
310:読取モータ(DCブラシレスモータ)
SL:スリット(目印)
DP:暗部(目印)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0119】
【特許文献1】特開2010−133990号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DCブラシレスモータと、前記DCブラシレスモータのコイルを励磁するためのドライバ回路と、前記ドライバ回路を介してDCブラシレスモータの駆動を制御する制御手段とを有するモータ駆動装置において、
前記DCブラシレスモータの励磁コイルの切り替えタイミングを前記ドライバ回路に把握させるために前記DCブラシレスモータの回転量を検知する回転量検知手段とは別に、前記DCブラシレスモータの回転量を前記回転量検知手段よりも高精度に検知する第2回転量検知手段を前記DCブラシレスモータに搭載するとともに、前記ドライバ回路を前記DCブラシレスモータに搭載し、
モータ起動時にて、前記DCブラシレスモータの回転速度を所定の第1加速特性で加速させるように前記DCブラシレスモータを駆動しながら、前記第2回転量検知手段による検知結果と、前記第1加速特性を示す第1アルゴリズムとに基づいて、モータ加速性が低下するタイミングを特定し、タイミングが到来した後に、前記DCブラシレスモータの回転速度を前記第1加速特性よりも加速性に優れた第2加速特性で加速させるように前記DCブラシレスモータを駆動する加速度変更処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
請求項1のモータ駆動装置において、
前記第2回転量検知手段を前記DCブラシレスモータ内に配設された前記ドライバ回路の基板に固定したことを特徴
とするモータ駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は2のモータ駆動装置において、
前記第2回転量検知手段による検知結果と、所定の目標値との比較に基づいて前記ドライバ回路から前記コイルに供給される電流量を電圧によって調整することで、前記DCブラシレスモータの回転速度を調整する速度調整処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかのモータ駆動装置において、
前記ドライバ回路として、前記制御手段から出力されるPWM信号に基づいて前記コイルに対する励磁電圧の出力を調整する出力調整部と、前記DCブラシレスモータにおける複数のコイルのうち、励磁するコイルを所定の順序で切り替えるコイル切替部とを具備するものを用いたことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかのモータ駆動装置において、
前記第2回転量検知手段として、前記モータ軸に固定されたコードホイール、及び前記コードホイールに設けられた複数の目印を光学的に検知する光学センサーを具備するものを用いるとともに、前記第2回転量検知手段をカバー部材で覆ったことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかのモータ駆動装置において、
前記DCブラシレスモータとして、インナーロータ型のものを用いたことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れかのモータ駆動装置において、
前記DCブラシレスモータとして、アウターロータ型のものを用いたことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項8】
請求項7のモータ駆動装置において、
前記DCブラシレスモータとして、FG信号発電機を搭載したものを用いるとともに、
前記ドライバ回路として、FG信号発電機からのFG信号と、前記制御手段から送られてくる基準信号とに基づいて、前記DCブラシレスモータの回転速度を前記基準信号に対応する値に調整する処理を実施するものを用いたことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項9】
自らの無端移動する表面に押し当てられたシート部材を前記表面の無端移動に伴って搬送するシート搬送部材と、該シート搬送部材の駆動源であるモータを駆動するモータ駆動手段とを備えるシート搬送装置において、
前記モータ駆動手段として、請求項1乃至8の何れかのモータ駆動装置を用いたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項10】
シート部材としての記録シートを搬送するシート搬送装置と、記録シートに画像を形成する画像形成手段とを備える画像形成装置において、
前記シート搬送手段として、請求項9のシート搬送装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
DCブラシレスモータと、前記DCブラシレスモータのコイルを励磁するためのドライバ回路と、前記ドライバ回路を介してDCブラシレスモータの駆動を制御する制御手段とを有するモータ駆動装置において、
前記DCブラシレスモータの励磁コイルの切り替えタイミングを前記ドライバ回路に把握させるために前記DCブラシレスモータの回転量を検知する回転量検知手段とは別に、前記DCブラシレスモータの回転量を前記回転量検知手段よりも高精度に検知する第2回転量検知手段を前記DCブラシレスモータに搭載するとともに、前記ドライバ回路を前記DCブラシレスモータに搭載し、
モータ起動時にて、前記DCブラシレスモータの回転速度を所定の第1加速特性で加速させるように前記DCブラシレスモータを駆動しながら、前記第2回転量検知手段による検知結果と、前記第1加速特性を示す第1アルゴリズムとに基づいて、モータ加速性が低下するタイミングを特定し、タイミングが到来した後に、前記DCブラシレスモータの回転速度を前記第1加速特性よりも加速性に優れた第2加速特性で加速させるように前記DCブラシレスモータを駆動する加速度変更処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
請求項1のモータ駆動装置において、
前記第2回転量検知手段を前記DCブラシレスモータ内に配設された前記ドライバ回路の基板に固定したことを特徴
とするモータ駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は2のモータ駆動装置において、
前記第2回転量検知手段による検知結果と、所定の目標値との比較に基づいて前記ドライバ回路から前記コイルに供給される電流量を電圧によって調整することで、前記DCブラシレスモータの回転速度を調整する速度調整処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかのモータ駆動装置において、
前記ドライバ回路として、前記制御手段から出力されるPWM信号に基づいて前記コイルに対する励磁電圧の出力を調整する出力調整部と、前記DCブラシレスモータにおける複数のコイルのうち、励磁するコイルを所定の順序で切り替えるコイル切替部とを具備するものを用いたことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかのモータ駆動装置において、
前記第2回転量検知手段として、前記モータ軸に固定されたコードホイール、及び前記コードホイールに設けられた複数の目印を光学的に検知する光学センサーを具備するものを用いるとともに、前記第2回転量検知手段をカバー部材で覆ったことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかのモータ駆動装置において、
前記DCブラシレスモータとして、インナーロータ型のものを用いたことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れかのモータ駆動装置において、
前記DCブラシレスモータとして、アウターロータ型のものを用いたことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項8】
請求項7のモータ駆動装置において、
前記DCブラシレスモータとして、FG信号発電機を搭載したものを用いるとともに、
前記ドライバ回路として、FG信号発電機からのFG信号と、前記制御手段から送られてくる基準信号とに基づいて、前記DCブラシレスモータの回転速度を前記基準信号に対応する値に調整する処理を実施するものを用いたことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項9】
自らの無端移動する表面に押し当てられたシート部材を前記表面の無端移動に伴って搬送するシート搬送部材と、該シート搬送部材の駆動源であるモータを駆動するモータ駆動手段とを備えるシート搬送装置において、
前記モータ駆動手段として、請求項1乃至8の何れかのモータ駆動装置を用いたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項10】
シート部材としての記録シートを搬送するシート搬送装置と、記録シートに画像を形成する画像形成手段とを備える画像形成装置において、
前記シート搬送手段として、請求項9のシート搬送装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−99055(P2013−99055A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238177(P2011−238177)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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