説明

モータ駆動装置、画像形成装置、モータ駆動方法、及びコンピュータプログラム

【課題】ダウンタイムが発生するような故障が発生する前に、その故障の原因を検出してその原因に対処し、ダウンタイムの発生を防止する。
【解決手段】エンコーダによって検出されたモータの回転速度に基づいてモータの速度変動を速度変動部で検出し、その検出結果に基づいてモータの回転異常を検出したとき、モータの速度制御部は、異常が発生した周波数帯域が自身で制御不能な領域であるとき、当該異常を自身が制御可能な領域に移行させる処理、例えば、速度制御部自身が制御可能な値までゲインを下げる処理を行い(ステップS101〜S104)、異常に対処し、ダウンタイムの発生を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの負荷異常、モータ異常を検知してこれらの異常に対処するモータ駆動装置、このモータ駆動装置を備えた画像形成装置、モータ駆動方法、及びモータ駆動方法をコンピュータで実行するためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機あるいはプリンタなどのオフィス機器においては高い生産性が要求されるため、故障によるマシンの停止や画質の劣化が許容されず、故障を速やかに検知して、事前に解決することが求められている。これについて、例えば特許文献1には、特別な故障検知回路を追加することなく、モータやギヤの故障を診断できるようにする発明が記載されている。この発明は、電流供給を受けて回転動作する回転駆動部材や当該回転駆動部材の回転駆動力を他の部材に伝達する動力伝達部材などの構成部材を含む回転駆動機構を有する装置に生じる故障を診断する故障診断装置であって、回転駆動部材の回転動作に伴って出力される回転駆動部材の回転動作状態を示す動作信号の特徴量を解析して、回転駆動機構を構成する個々の構成部材についての故障診断を行うというものである。
【特許文献1】特開2007−212719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1記載の発明では、回転駆動部材の動作信号の特徴量を解析して回転駆動機構を構成する個々の構成部材について故障診断を行うようになっているが、故障検出後、サービスマンの到着を待たないと、しばらくマシンが使えない状態となる場合、あるいは、使用できるにしても品質が悪化したままの状態でプリントが継続される場合がある。すなわち、この公知例では、エンコーダ信号について、立ち上がり時間あるいは周波数等の特徴量を解析して故障診断を行うが、故障を診断した後、その診断した故障内容を通知するだけであるので、故障発生時にダウンタイムが発生してしまう。
【0004】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、ダウンタイムが発生するような故障が発生する前に、その故障の原因を検出してその原因に対処し、ダウンタイムの発生を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、第1の手段は、負荷を駆動するモータと、前記モータを駆動するモータ駆動手段と、前記モータの回転速度を検出するモータ速度検出手段と、前記モータ速度検出手段によって検出されたモータの回転速度に基づいてモータの速度変動を検出するモータ速度変動検出手段と、前記モータ速度変動検出手段の検出結果に基づいてモータの回転異常を検出する異常判定手段と、前記モータ駆動手段を介して前記モータの回転速度を制御するモータ速度制御手段と、を備え、前記モータ速度制御手段は、前記異常判定手段によって制御帯域外の近傍に変動成分があることが検出され、通常の制御では当該制御の影響でその変動が悪化してしまう場合に、悪化しないように処理することを特徴とする。
【0006】
第3の手段は、第1又は第2の手段において、前記処理が、ゲインを複数回切り替え、前記モータ速度制御手段自身が制御可能な最適ゲインを選択する処理であることを特徴とする
第4の手段は、第1の手段において、前記処理が、前記モータ速度制御手段自身が制御可能速度まで回転速度を下げて安定回転を維持する処理であることを特徴とする。
【0007】
第5の手段は、第1の手段において、前記処理が、前記モータ速度制御手段自身が制御可能な値まで異常な変動成分を低減するフィルタ処理であることを特徴とする。
【0008】
第6の手段は、第1ないし第5のいずれかの手段において、前記異常判定手段は、回転異常を検出したとき、前記モータ速度制御手段に目標速度指令を出力する本体制御部に異常が発生した旨通知することを特徴とする。
【0009】
第7の手段は、第1ないし第6のいずれかの手段に係るモータ駆動装置を画像形成装置が備えていることを特徴とする。
【0010】
第8の手段は、第4の手段に係るモータ駆動装置を画像形成装置が備え、画像形成装置は、異常検出時には装置全体の速度を下げることを特徴とする。
【0011】
第9の手段は、第7又は第8の手段において、異常検出時には、操作部に異常が発生した旨表示することを特徴とする。
【0012】
第10の手段は、第7又は第8の手段において、異常検出時には、通信回線を通じて遠隔故障診断保守システムに異常が発生した旨通知することを特徴とする。
【0013】
第11の手段は、第7ないし第11のいずれかの手段において、異常検出時にプリント中の用紙をパージトレイに排出することを特徴とする。
【0014】
第12の手段は、負荷を駆動するモータと、前記モータを駆動するモータ駆動手段と、前記モータの回転速度を検出するモータ速度検出手段と、前記モータ速度検出手段によって検出されたモータの回転速度に基づいてモータの速度変動を検出するモータ速度変動検出手段と、前記モータ速度変動検出手段の検出結果に基づいてモータの回転異常を検出する異常判定手段と、前記モータ駆動手段を介して前記モータの回転速度を制御するモータ速度制御手段と、を備えたモータ駆動装置のモータ駆動方法であって、前記異常判定手段によって制御帯域外の近傍に変動成分があることが検出され、通常の制御では当該制御の影響でその変動が悪化してしまう場合に、悪化しないように処理することを特徴とする。
【0015】
第13の手段は、負荷を駆動するモータと、前記モータを駆動するモータ駆動手段と、前記モータの回転速度を検出するモータ速度検出手段と、前記モータ速度検出手段によって検出されたモータの回転速度に基づいてモータの速度変動を検出するモータ速度変動検出手段と、前記モータ速度変動検出手段の検出結果に基づいてモータの回転異常を検出する異常判定手段と、前記モータ駆動手段を介して前記モータの回転速度を制御するモータ速度制御手段と、を備えたモータ駆動装置のモータの駆動制御をコンピュータで実行するためのコンピュータプログラムであって、前記異常判定手段によって制御帯域外の近傍に変動成分があることが検出され、通常の制御では当該制御の影響でその変動が悪化してしまう場合に、悪化しないように処理する手順を備えていることを特徴とする。
【0016】
なお、後述の実施形態では、モータは中間転写ベルト駆動モータ150に、モータ駆動手段はモータ駆動部140に、モータ速度検出手段は速度検出部(エンコーダ)170に、モータ速度変動検出手段は速度変動検出部132に、異常判定手段は異常判定部133に、モータ速度制御手段は速度制御部131に、本体制御部はメイン制御部100に、操作部は符号110に、それぞれ対応する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、異常が発生した周波数帯域がモータ速度制御手段自身で制御不能な領域であるとき、前記異常を自身の制御下に置く処理を実行し、当該異常に対処するので、当該異常が原因となるダウンタイムの発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1は本発明の実施形態に係る画像形成装置全体の概略構成を示す図である。図1において、本実施形態に係る画像形成装置は、プリンタ部1、スキャナ部2、自動原稿給送部3、給紙部4から構成され、プリンタ部1が給紙部4の上に、スキャナ部2がプリンタ部1の上に自動原稿給送部3がスキャナ部2の上に設けられ、プリンタ機能、複写機能、ファクシミリ機能などの複数の機能を備えたデジタル複合機MFPとして構成されている。
【0020】
プリンタ部1は間接転写方式のタンデム型のカラープリンタで、YMCK各色の作像ステーション11Y,11M,11C,11K(総括的には符号11で示す)と、中間転写ベルト12と、各ステーション毎に設けられた1次転写ユニット13Y,13M,13C,13K(総括的には、符号13で示す)と、1次転写部13の下方に設けられた2次転写部14、2次転写部14に続く搬送部15、搬送部15の下流側に設けられた定着ユニット16、定着ユニット16の下流側に設けられた両面ユニット17、及び前記各ステーション11毎に光書き込みを行う書き込みユニット18から基本的に構成されている。
【0021】
スキャナ部2はコンタクトガラス上の原稿に光源からの照明光を照射し、反射光をCCDに導いて光学的に原稿を読み取る。自動原稿給送部3は原稿給紙台に置かれた原稿をスキャナ部2のコンタクトガラス上に自動的に給送する。給紙部4は4段の給紙段を備え、その1つの給紙段から転写紙を引き出し、縦搬送路から2次転写部14の直前のレジストローラ19まで送り、レジストローラ19から中間転写ベルト12上の画像とタイミングを合わせて転写紙を送り込む。
【0022】
なお、本実施形態では、各色の作像ステーションは中間転写ベルト12の回転方向上流側からY,M,C,Kの順で並置されているが、K,C,M,Yの順でも、C,M,Y,Kの順でも、設計条件に応じて適宜設定されるものであり、図の構成は一例に過ぎない。
【0023】
前記作像ステーション11は、感光体ドラムと、この感光体ドラムの外周に沿って設けられた帯電ユニット、現像ユニット、1次転写ユニット、クリーニングユニット及び除電ユニットとからなり、前記帯電ユニットと現像ユニットの間にスキャナ部2からのレーザ光によって露光される露光部が設けられている。なお、これらの構成自体は公知の構造である。
【0024】
このように構成された画像形成装置MFPでは、スキャナ部2が、光源から出射された照明光を原稿に照射しながら原稿を走査して、原稿からの反射光を3ラインCCDセンサにより画像を読み取る。読み取った画像データは、画像処理ユニットでスキャナγ補正、色変換、画像分離、階調補正処理等の画像処理がされた後、画像書き込みユニット18へ送られる。画像書き込みユニット18では画像データに応じてLD(レーザダイオード)の駆動を変調する。作像ステーション11では一様に帯電された回転する感光体ドラムに前記LDからのレーザビームにより潜像を書き込み、現像ユニットによりトナーを付着させて顕像化させる。
【0025】
各色毎に感光体ドラム上に作られたトナー画像は、1次転写ユニット13によって色毎に中間転写ベルト12上に転写される。中間転写ベルト12上にはフルカラーコピーであれば、YMCKの4色のトナーが順次重ねられ、フルカラーのトナー画像が形成される。YMCKのトナー画像が重畳され、中間転写ベルト12への転写工程が終了した時点で、画像先端とタイミングを合わせてレジストローラ19部で停止していた転写紙が送り出され、2次転写部14で中間転写ベルト12から転写紙上にフルカラーのトナー画像が転写される。トナーが転写された転写紙は搬送部15を経て定着ユニット16に送られ、定着ローラと加圧ローラによって熱定着され排紙される。
【0026】
中間転写ベルト12は駆動ローラ12aと2つの従動ローラ12b,12c間に掛け回され、テンションローラ12dによって所定の張力を得ている。これにより、駆動ローラ12aの駆動力が中間転写ベルト12に伝達され、中間転写ベルト12は回転する。
【0027】
転写紙の裏面にも画像を形成する場合には、定着ユニット16から両面ユニット17側に搬送され、表裏を反転させて再度レジストローラ19側に転写紙を送り出し、前述と同様の動作により裏面に画像を転写紙、定着後、排紙する。
【0028】
以下、本実施形態の制御構成を各実施例に分けて説明する。
【実施例1】
【0029】
図2は、本実施形態の実施例1における画像形成装置MFPの制御回路を示すブロック図である。この制御回路は、中間転写ベルトの駆動のための制御構成である。
【0030】
図2において、制御回路は、画像形成装置MFP本体のメイン制御部(本体制御部)100、モータ制御部130、モータ駆動部140、速度検出部(エンコーダ)170からなり、エンコーダ170はモータ駆動部140によって駆動される中間転写ベルト駆動モータ150の歯車減速機構160の回転を検出する。メイン制御部100には、操作部110が接続され、中間転写ベルト駆動モータ150以外の負荷120の制御も実行する。
【0031】
モータ制御部130は速度制御部131、速度変動検出部132、及び異常判定部133を含む。速度制御部131は、加算部131a、ゲイン乗算部131b、ループフィルタ131c、PMW部131dを含む。モータ制御部140はプリドライバ141、FET142を含み、プリドライバ141はさらに3相出力制御部141a及びプリアンプ141bを含む。
【0032】
メイン制御部100から目標速度が速度制御部131に出力され、速度制御部131から速度制御信号がモータ駆動部140に入力され、モータ駆動部140から中間転写ベルト12が掛け回された前記駆動軸12aを駆動するモータ150への駆動信号が出力される。中間転写ベルト駆動モータ150の回転はギヤ減速機構160の減速ギヤ160の回転をエンコーダ170によって検出し、回転信号を速度制御部131にフィードバックする。
【0033】
すなわち、中間転写ベルト駆動モータ150は、メイン制御部100からの速度指示に従って、モータ制御基板のモータ制御部130及びモータ駆動部140によって駆動される。メイン制御部100からの速度指示は、一般的にCLK信号で指示され、指示された信号に基づいて逐次、ゲイン乗算部131bでゲイン乗算を、フィルタ処理部131cでフィルタ処理をそれぞれ行い、処理結果をPWM部131dでPWM化し、プリドライバ141の3相出力制御部141aで3相出力信号に変換し、FET142(またはトランジスタ)で中間転写ベルト駆動モータ150を駆動する。
【0034】
中間転写ベルト駆動モータ150の速度は、エンコーダ170の検出値を加算部131a及び速度変動検出部132にフィードバックし、速度制御部15で制御される。本実施例においては、エンコーダ170の検出信号を速度変動検出部132でFFT(高速フーリエ変換)処理を行い、速度変動を周波数ごとに抽出する。異常判定部133では、速度変動を逐次観測し、異常を検出した場合は、ゲイン乗算部131bにゲインの変更を指示する。
【0035】
なお、メイン制御部100は図示しない中央制御装置(CPU)を備え、CPUは図示しないROMに格納されたプログラムを図示しないRAMに展開し、当該RAMをワークエリアとして使用しながら実行する。これにより各種制御がメイン制御部100によって実行されることになる。
【0036】
図3は、速度変動検出部132におけるFFT処理後の周波数成分ごとの速度変動の計測値の一例を示す図である。FFT処理後の周波数成分ごとの速度変動を検出すると、例えば図3のようになる。図3では、横軸が周波数、縦軸が周波数をパラメータに取ったときの速度変動の割合を示す。
【0037】
図4は、速度変動検出部132におけるFFT処理後の周波数成分ごとの速度変動の計測値とゲイン変更時の効果を示す図である。同図は速度制御部131の制御コントローラの周波数特性(開ループ特性)を表している。外乱による速度変動の影響を説明するため、速度変動成分も同じ図に表示している。
【0038】
同図において、交差周波数XHzまでが制御コントローラで制御可能な制御帯域となるが、制御帯域を少し越えた周波数YHzの速度変動(図では外乱による速度変動成分として示す)が発生すると、ゲインが持ち上げられ、ゲイン0を再び越えてしまう。このとき、位相遅れは−180°を越えているので、制御が不安定となり発振してしまう。発振を起こさないようにするには、速度変動の周波数YHzと交差周波数XHzを十分に離す必要がある。そこで、本実施例では、ゲインを図4鎖線で示すように下げ、交差周波数XHzと変動成分の周波数YHzを制御による悪影響が出ない領域に変動成分Yと公差周波数Xを遠ざけるようにした。
【0039】
図5は、この実施例1におけるメイン制御部100とモータ制御部130による処理手順を示すフローチャートである。モータ制御部130はスタート信号がメイン制御部100から送られると、中間転写ベルト駆動モータ150の回転を開始し、エンコーダ170によって速度を検出し(ステップS101)、速度指示値(目標値)になるようにフィードバック制御を行う。フィードバック制御では、フィードバックされたエンコーダ信号を速度変動検出部132でFFTにかけ周波数成分に変換する(ステップS102)。次に、異常判定部133で交差周波数XHzから交差周波数より大きな周波数YHzの間の速度変動が通常の状態より高い値(一例としてはZ=0.2%以上−図3における太い実線で示した値)を検出した場合、異常が発生していると判断し(ステップS103−yes)、ゲイン乗算部131bにゲインを下げる指示を行う(ステップS104)。ゲインを下げる値については、メカ機構によって異なってくるので、ゲインを下げても極端に画質が劣化しない程度の値をあらかじめ設定しておく。また、Yの値についても機構によって設定値が異なってくるので、設計時にシミュレーションを行いYの値を設定する。
【実施例2】
【0040】
図6は、実施例2におけるメイン制御部100とモータ制御部130による処理手順を示すフローチャートである。なお、制御回路自体は図2に示した実施例1と同等なので、重複する説明は省略する。
【0041】
図6において、ステップS101からステップS103までは実施例1と同様に処理するが、異常判定部133において交差周波数XHzから交差周波数より大きな周波数YHzの間の速度変動が通常の状態より高い値を検出した場合、異常が発生していると判断し(ステップS103−yes)、ゲイン乗算部131bにゲインを下げる指示を行う。ここで、下げるゲインを例えば現在のゲインの3/4倍、1/2倍、1/4倍といった複数回実施して、それぞれのゲイン設定時のときの速度変動を検出する(ステップS104a,S105,S106,S107,S108,S109)。複数回のうち最も速度変動の状態の良いものを次回以降のゲインとして設定する(ステップS110)。ゲインは、例えば、速度変動の最悪値が最も低いもの、全周波数帯の速度変動の平均を取り最も速度変動が低いもの、画像となったときに視覚的にバンディングが見えやすい領域の速度変動が小さいものの1つから選ぶようにする。
【0042】
その他、特に説明しない各部は前述の実施例1と同等に構成され、同等に機能する。
【実施例3】
【0043】
図7は、実施例3における画像形成装置MFPの制御回路を示すブロック図である。実施例3は、実施例1では異常判定部133からゲイン乗算部131bに異常通知を行っていたのに対し、異常判定部133からメイン制御部100に異常通知を行うようにしたものである。その他の各部は実施例1と同等に構成されている。
【0044】
この実施例3では、エンコーダ信号を速度変動検出部132にてFFT(高速フーリエ変換)処理を行い、速度変動を周波数ごとに抽出し、異常判定部133で速度変動を逐次観測し、異常を検出した場合は、メイン制御部100に通知する。 図8は、実施例3におけるメイン制御部100とモータ制御部130による処理手順を示すフローチャートである。
【0045】
図8において、ステップS201からステップS203間では、実施例1と同一の処理を実行し、異常判定部133で交差周波数XHzから交差周波数より大きな周波数YHzの間の速度変動が通常の状態より高い値(精密制御を行う場合の一例としては0.2%以上など)を検出した場合、異常が発生していると判断し(ステップS203−yes)、異常をメイン制御部100に通知する(ステップS204)。メイン制御部100は異常の通知を受けると、機械全体を半速で駆動させるように制御する(ステップS205)。
【0046】
図9は、実施例3におけるFFT処理後の周波数成分ごとの速度変動の計測値の例と半速時の効果を示す図である。横軸に周波数、縦軸にゲインを取っている。同図から分かるように、半速で駆動するように制御することにより、交差周波数XHzより高く、制御不能な帯域にあった外乱を制御帯域内に入れることができる。その結果、前記外乱を制御コントローラの制御で抑圧することが可能となる。
【0047】
本実施例3においては、生産性は下がるが、制御パラメータは変更しないので、画質を逆に劣化させるような副作用は発生しない。
【0048】
その他、特に説明しない各部は前述の実施例1と同等に構成され、同等に機能する。
【実施例4】
【0049】
図10は、実施例4における画像形成装置MFPの制御回路を示すブロック図である。実施例4は、実施例1では異常判定部133からゲイン乗算部131bに異常通知を行っていたのに対し、異常判定部133から速度制御部131のフィルタ131eに異常通知を行うようにしたものである。フィルタ131eはループフィルタ131cの後段であってPWM部131dの前段に設けられ、異常の周波数帯のみ低感度化させる機能を備えたものである。その他の各部は実施例1と同等に構成され、同等に機能する。
【0050】
図11は実施例4におけるメイン制御部100とモータ制御部130による処理手順を示すフローチャートである。ステップS301からステップS303までは実施例1のステップS101からステップS103と同様に処理するが、異常判定部133において交差周波数XHzから交差周波数より大きな周波数YHzの間の速度変動が通常の状態より高い値を検出した場合、異常が発生していると判断し(ステップS303−yes)、前記フィルタ131eに異常通知を行う。フィルタ131eは、ループフィルタ131cの出力に対して、異常の発生している周波数のゲインのみ低感度化させる(ステップS304)。これにより、ゲインの盛り上がりを防ぎ、発振を防止することができる。
【0051】
図12は、実施例4におけるFFT処理後の周波数成分ごとの速度変動の計測値の例とフィルタの効果を示す図である。横軸に周波数、縦軸にゲインを取っている。同図から分かるように、フィルタ131eによって変動の発生している周波数帯のみ、図12においてAに示すような特性を付加することにより、外乱による速度変動成分を低感度化させることが可能となり、発振を防止することができる。
【実施例5】
【0052】
図13は、実施例5における画像形成装置MFPの制御回路を示すブロック図である。実施例5は、実施例1と実施例2を組み合わせたもので、異常判定部133は異常と判定したとき、異常をゲイン乗算部131aとメイン制御部100に通知するようにしたものである。その他の各部は実施例1と同等に構成され、同等に機能する。
【0053】
このように異常通知をゲイン乗算部131aとメイン制御部100に行うと、必要に応じて、操作部13に異常を通知したり、ネットワーク回線や電話回線等を通じてサービスマンに異常を通知したりすることができる。
【0054】
図14は実施例5におけるメイン制御部100とモータ制御部130による処理手順を示すフローチャートである。ステップS401からステップS404までは実施例1のステップS101からステップS104と同様に処理し、ステップS404でゲインを一定量下げた後、メイン制御部100に異常を通知し(ステップS405)、操作部13に異常を通知し、あるいはネットワーク回線や電話回線等を通じてサービスマンに異常を通知する。また、パージトレイのある機種については、異常発生を検知した際に通紙中だった場合はその通紙中の紙をパージトレイに排出する(ステップS406)。
【0055】
これにより、実施例1では、画像形成装置MFP内で処理していたものを、外部に通知して以降のメンテナンスの一助とし、あるいは異常発生が原因となるシートジャムの発生を防止することができる。
【0056】
以上のように本実施形態によれば、
(1)モータ駆動系の負荷異常、メカ機構の磨耗等による駆動系の変化をモータの回転速度を検出するエンコーダ信号の周波数解析により検出し、異常が発生した周波数帯域がモータ速度制御手段自身で制御不能な領域であるとき、前記異常を自身の制御下に置く処理を実行し、当該異常に対処するので、当該異常が原因となるダウンタイムの発生を防止することができる。
【0057】
(2)また、前記モータ駆動系を複写機、プリンタ、デジタル複合機等の画像形成装置MFPに適用した場合、画像形成のための駆動系の負荷異常、メカ機構の磨耗等による駆動系の変化をモータの回転速度を検出するエンコーダ信号の周波数解析により検出し、異常が特定の周波数帯に検出された場合に、マシンを停止させずにゲインの変更、モータ回転速度の低速化、フィルタ処理による異常な変動成分の低減化などの処理を実行することにより画質の劣化を防ぐことができる。
等の効果を奏する。
【0058】
なお、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが対象となる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置全体の概略構成を示す図である。
【図2】本実施形態の実施例1における画像形成装置の制御回路を示すブロック図である。
【図3】図2の速度変動検出部におけるFFT処理後の周波数成分ごとの速度変動の計測値の一例を示す図である。
【図4】図2の速度変動検出部におけるFFT処理後の周波数成分ごとの速度変動の計測値とゲイン変更時の効果を示す図である。
【図5】実施例1におけるメイン制御部とモータ制御部による処理手順を示すフローチャートである。
【図6】実施例2におけるメイン制御部とモータ制御部による処理手順を示すフローチャートである。
【図7】実施例3における画像形成装置の制御回路を示すブロック図である。
【図8】実施例3におけるメイン制御部とモータ制御部による処理手順を示すフローチャートである。
【図9】実施例3におけるFFT処理後の周波数成分ごとの速度変動の計測値の例と半速時の効果を示す図である。
【図10】実施例4における画像形成装置の制御回路を示すブロック図である。
【図11】実施例4におけるメイン制御部とモータ制御部による処理手順を示すフローチャートである。
【図12】実施例4におけるFFT処理後の周波数成分ごとの速度変動の計測値の例とフィルタの効果を示す図である。
【図13】実施例5における画像形成装置の制御回路を示すブロック図である。
【図14】実施例5におけるメイン制御部とモータ制御部による処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0060】
1 プリンタ部
2 スキャナ部
3 自動原稿給送部
4 給紙部
12 中間転写ベルト
12a 駆動ローラ
12b,12c 従動ローラ
100 メイン制御部
110 操作部
130 モータ制御部
131 速度制御部
132 速度変動検出部
133 異常判定部
140 モータ駆動部
141 プリドライバ
142 FET
150 中間転写ベルト駆動モータ
160 減速機構
170 速度検出部(エンコーダ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷を駆動するモータと、
前記モータを駆動するモータ駆動手段と、
前記モータの回転速度を検出するモータ速度検出手段と、
前記モータ速度検出手段によって検出されたモータの回転速度に基づいてモータの速度変動を検出するモータ速度変動検出手段と、
前記モータ速度変動検出手段の検出結果に基づいてモータの回転異常を検出する異常判定手段と、
前記モータ駆動手段を介して前記モータの回転速度を制御するモータ速度制御手段と、
を備え、
前記モータ速度制御手段は、前記異常判定手段によって制御帯域外の近傍に変動成分があることが検出され、通常の制御では当該制御の影響でその変動が悪化してしまう場合に、悪化しないように処理することを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載のモータ駆動装置において、
前記処理が、前記モータ速度制御手段自身が制御可能な値までゲインを下げる処理であることを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のモータ駆動装置において、
前記処理が、前記モータ速度制御手段がゲインを複数回切り替え、自身が制御可能な最適ゲインを選択する処理であることを特徴とするモータ駆動装置
【請求項4】
請求項1記載のモータ駆動装置において、
前記処理が、前記モータ速度制御手段自身が制御可能速度まで回転速度を下げて安定回転を維持する処理であることを特徴とするモータ駆動装置
【請求項5】
請求項1記載のモータ駆動装置において、
前記処理が、前記モータ速度制御手段自身が制御可能な値まで異常な変動成分を低減するフィルタ処理であることを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のモータ駆動装置において、
前記異常判定手段は、前記モータの回転異常を検出したとき、前記モータ速度制御手段に目標速度指令を出力する本体制御部に異常が発生した旨通知することを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のモータ駆動装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項4記載のモータ駆動装置を備え、異常検出時には装置全体の速度を下げることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項7又は8記載の画像形成装置において、
異常検出時には、操作部に異常が発生した旨表示することを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項7又は8記載の画像形成装置において、
異常検出時には、通信回線を通じて遠隔故障診断保守システムに異常が発生した旨通知することを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項7ないし11のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
異常検出時にプリント中の用紙をパージトレイに排出することを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
負荷を駆動するモータと、
前記モータを駆動するモータ駆動手段と、
前記モータの回転速度を検出するモータ速度検出手段と、
前記モータ速度検出手段によって検出されたモータの回転速度に基づいてモータの速度変動を検出するモータ速度変動検出手段と、
前記モータ速度変動検出手段の検出結果に基づいてモータの回転異常を検出する異常判定手段と、
前記モータ駆動手段を介して前記モータの回転速度を制御するモータ速度制御手段と、
を備えたモータ駆動装置のモータ駆動方法であって、
前記異常判定手段によって制御帯域外の近傍に変動成分があることが検出され、通常の制御では当該制御の影響でその変動が悪化してしまう場合に、悪化しないように処理することを特徴とするモータ駆動方法。
【請求項13】
負荷を駆動するモータと、
前記モータを駆動するモータ駆動手段と、
前記モータの回転速度を検出するモータ速度検出手段と、
前記モータ速度検出手段によって検出されたモータの回転速度に基づいてモータの速度変動を検出するモータ速度変動検出手段と、
前記モータ速度変動検出手段の検出結果に基づいてモータの回転異常を検出する異常判定手段と、
前記モータ駆動手段を介して前記モータの回転速度を制御するモータ速度制御手段と、
を備えたモータ駆動装置のモータの駆動制御をコンピュータで実行するためのコンピュータプログラムであって、
前記異常判定手段によって制御帯域外の近傍に変動成分があることが検出され、通常の制御では当該制御の影響でその変動が悪化してしまう場合に、悪化しないように処理する手順を備えていることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−74887(P2010−74887A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236607(P2008−236607)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】