説明

ラジコン模型の統合制御システム

【課題】ラジコン模型に搭載される電子制御機器の制御、動作、異常検出などの情報を連携して管理し、制御の実行を総合判断することで安全性を高め、かつ操縦性能を向上する。
【解決手段】受信機2からの操縦指令信号、センサ部20で検出された各種の検出信号、設定値格納部40Aに格納されている設定値、ID格納部40Cに格納されたバッテリー17、動力モータ7、操舵用サーボモータ8,9,10の識別データは統合制御装置50において、その統合制御部50Aで連携処理される。1つの制御値が単独で実行されることなく、他の関連する操縦指令信号のデータやセンサの検出データを参照して、安全で効果的な飛行制御を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジコン模型の制御に係り、特に当該模型が送信機から受信した指令信号に応じて姿勢や方向等を制御する駆動機器相互間を連携させることで操縦性、安全性を高めたラジコン模型の統合制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
遠隔制御されるヘリコプタや車両などの無線操縦模型はラジコンと愛称され、ホビーの世界だけでなく、多くの産業分野で広く利用されている。電動モータを用いたラジコン模型には、受信機、サーボモータ、スピードコントローラ、ジャイロ、バッテリーなど、飛行または走行制御をするための操縦機器が搭載されている。そして、その操舵角や動力の出力特性など、制御の基準となるパラメータ(所望の操縦パラメータ)を適切に設定しておく必要があり、またこの所望の操縦パラメ−タを変更して種々の操縦パターンを設定することも行われている。
【0003】
ラジコン模型を飛行させ、あるいは走行させる場合、操舵角や動力の出力の特性などを適切に設定、あるいは変更する必要がある。例えば、電動モータを動力源としたラジコンヘリコプターでは、その電動モータの軸出力特性は、リニアな変化ではなく、非線形のような特性で変化するように設定することによって、良好な操縦性の飛行が実現される。また、操舵部位の変化特性はゲインや線形性を調整することでより良好な操縦感覚を楽しむことができる。これら操縦特性の設定は、サーボモータの駆動軸に対するサーボホーンの固定角、サーボホーンとリンケージワイヤの連結部位などの機械的な部分と、電気的な出力値など数値設定をプログラマブルに行う電気的な部分とに分かれる。近年、プログラマブルに行う部分の機能が充実しており、詳細で多様な設定が可能となっている。
【0004】
ラジコン模型に操縦パターン情報を記憶させたメモリを搭載し、このメモリに記憶した情報に従ってラジコン模型を操縦するものは例えば特許文献1に開示がある。また、操縦者がラジコン模型の所望の操縦パラメ−タの設定、変更する従来技術としての特許文献2では、電動ラジコンカーの走行中に、メモリに格納されている動力モータの最大許容電流などの設定値を送信機からの指令で変更するようにしたものが開示されている。
【0005】
また、電動モータを動力源としたラジコン模型の普及に伴い、ラジコン模型の知識や取り扱いに未熟な利用者も多くなり、大出力電動モータ、大容量のエネルギー密度のバッテリーの安全な運用における安全性の確保が求められている。そのため、ラジコン模型自体の性能向上には安全設計思想を組み込むことが要求される。
【特許文献1】特開2006−346144号公報
【特許文献2】特開平6−312065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここでは、仮に、前記した特許文献2に開示の設定情報変更方法を用いて、多様なパラメータを変更し、設定しようとした場合について説明する。図6は、送信機を用いた従来の所望の操縦パラメ−タの設定、変更を行うようにした場合の説明図である。図7は、図6におけるラジコンヘリコプターに搭載される操縦電子機器の構成例の説明図である。ここでは、ラジコン模型として電動モータを動力源としたラジコンヘリコプターを例として説明する。図6中、ラジコンヘリコプター100は送信機300により操縦制御されている。ラジコンヘリコプター100には、受信機2、駆動制御回路101、バッテリー17が搭載される。駆動制御回路101は、図7に示したように、設定情報(制御パラメータ)を格納するメモリ4や演算制御回路5、ドライバ14、15を有する。そして、受信アンテナ102で受信した送信機300からの操縦指令信号に基づいて動力モータ、コレクティブピッチ、ラダー、エルロン等の制御を行うサーボモータを駆動する。
【0007】
送信機300には、スティック301、302、操縦情報を視覚表示したり搭載機器の設定特性などの表示を行う表示器303、送信アンテナ304、その他のスイッチ305、306等が装備されている。前記した電気的な設定(所望の操縦パラメ−タの設定、変更)は、従来から、主としてラジコン模型の操縦に使用する送信機300に搭載された設定・調整機能により、特定のチャンネル選択スイッチ307、308を用いて行われる。
【0008】
ラジコンヘリコプター100は、送信された設定情報を受信機で受信し、高周波処理部(RF部)2Aで増幅し、検波後、デコード部2Bで復号して動力モータ7のドライバ14、所定のサーボモータのドライバ15に駆動信号として供給する。特許文献2に記載されたように、一つの情報についての設定変更は、このような方法でも実用できる。しかし、複数の設定情報について上記と同じような方法で変更し、設定するためには、送信機300にそれ相当の回路、スイッチなどの機能部品を搭載する必要がある。
【0009】
このようなラジコン模型では、当該ラジコン模型に搭載された操縦機器(送信機1)は受信機2で復号された操縦指令に対してそれぞれ個別に機能するだけの能力しかなく、機器相互の情報を連携して活用する制御は行われていない。そのため、電圧、電流、温度などの管理が一義的であるため、バッテリーの電圧、電流、温度異常などの安全面で精度の良い対応ができないだけでなく、電動モータや搭載バッテリーの能力を十分に発揮させることができない。
【0010】
本発明の目的は、ラジコン模型に搭載される電子制御機器の制御、動作、異常検出などの情報を連携して管理し、制御の実行を総合判断することで安全性を高め、かつ操縦性能を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ラジコン模型の機体に搭載される電子制御装置に、受信回路で受信した送信機の信号から操縦指令信号を復号するデコーダ部等を備えた受信機と、前記デコーダで復号した操縦指令信号に基いて駆動モータ、姿勢や速度を司る機器を制御する1又は複数のサーボモータ、バッテリーを有する駆動制御回路を備えた。そして、駆動制御回路には、メモリと統合制御回路とを有し、前記メモリに前記操縦指令信号を加工するための制御パラメータの設定値を格納する設定値格納部を設けた。
【0012】
前記統合制御回路は、前記設定値格納部に格納された制御パラメータの設定値に基いて前記復号した操縦指令信号を加工する制御信号加工部と、複数の操縦指令信号を管理し、相互に反映させる統合制御部とを有し、この統合制御部が生成する出力を用いて前記駆動モータ、前記サーボモータを制御する。
【0013】
また、前記メモリに、履歴格納部を設け、この履歴格納部に、前記駆動モータ、前記姿勢や速度を司る機器を制御するサーボモータ、前記バッテリーの動作履歴を格納し、格納された動作履歴から残り操作可能時間を推定する。さらに、前記メモリに、履歴格納部と、搭載機器のID格納部を設け、このID格納部に前記駆動モータ、前記姿勢や速度を司る機器を制御するサーボモータ、前記バッテリーのIDを格納し、
前記履歴格納部に、前記駆動モータ、前記姿勢や速度を司る機器を制御するサーボモータの負荷履歴、前記バッテリーの動作履歴を前記ID格納部に格納された個々のIDに関連づけて格納して、格納された各搭載機器の動作履歴に基づいて残り操作可能時間を推定する。動作履歴には、バッテリーについては、その容量や放電特性等の定格データ、過去の異常電流発生回数と電流量、充電/放電回数を、駆動モータについては、その最高回転数、最大消費電流等の定格データ、回転数、運用時間を、前記サーボモータについては、回転角、トルク、動作電流等の定格データ、負荷、過去の運用時間を、それぞれ含む。
【0014】
また、本発明は、デコーダで復号した操縦指令信号に基いて駆動モータ、姿勢や速度を司る機器を制御する1又は複数のサーボモータ、バッテリーを有する駆動制御回路と、搭載機器の状態を監視するためのセンサ部を備え、
前記駆動制御回路には、メモリと統合制御回路とを設け、メモリには前記操縦指令信号を加工するための制御パラメータの設定値を格納する設定値格納部を有し、前記統合制御回路は、前記設定値格納部に格納された制御パラメータの設定値と、前記センサ部の検出信号とに基いて、前記復号した操縦指令信号を加工する制御信号加工部と、複数の操縦指令信号を管理し、相互に反映させる統合制御部とを有して、前記統合制御部が生成する出力を用いて前記駆動モータ、前記サーボモータを制御する構成とした。
【0015】
また、前記統合制御部は、操縦によって生じる回転負荷を予測したり、前記センサ部が検出する前記駆動モータの回転負荷、前記バッテリーの電圧等の変化を前記操縦指令信号の加工に先回り的に組み込むことで、当該駆動モータを調速するフィードフォワード制御のガバナー機能を有する。
【0016】
そして、前記センサ部は、前記バッテリーの電流、電圧、温度の各センサ、前記サーボモータの回転角、機体の角速度の各センサを含む。また、前記メモリに履歴格納部を設けて、この履歴格納部に、前記駆動モータ、前記姿勢や速度を司る機器を制御するサーボモータ、前記バッテリーの動作履歴および前記センサ部の検出信号を格納し、格納された動作履歴と前記センサ部の検出信号から残り操作可能時間や前記バッテリー、前記駆動モータ、前記サーボモータの寿命を推定する。
【0017】
前記動作履歴は、前記バッテリーについては、その容量や放電特性等の定格データ、過去の異常電流発生回数と電流量、充電/放電回数を、駆動モータについては、その最高回転数、最大消費電流等の定格データ、回転数、運用時間を、前記サーボモータについては、回転角、トルク、動作電流等の定格データ、負荷、過去の運用時間を、それぞれ含む。
【0018】
また、本発明は、前記メモリに、履歴格納部と、搭載機器のID格納部を設け、前記ID格納部に前記駆動モータ、前記姿勢や速度を司る機器を制御するサーボモータ、前記バッテリーのIDを格納し、前記履歴格納部に、前記駆動モータ、前記姿勢や速度を司る機器を制御するサーボモータの負荷履歴、前記バッテリーの動作履歴および前記センサ部の検出信号を前記ID格納部に格納された個々のIDに関連づけて格納し、
格納された各搭載機器の動作履歴に基づいて残り操作可能時間や前記バッテリー、前記駆動モータ、前記サーボモータの寿命を推定する。
【0019】
さらに、本発明では、所望の操縦パラメ−タの変更すなわち設定情報の操作は、この制御装置に通信ケーブルを介して接続した外部装置で行う。外部装置としては、パーソナル・コンピュータ(以下、単にPCとも称する)が好適であるが、同様の機能を備えた情報設定用の専用装置であってよい。PCはラジコン模型に設定すべき所望の操縦パラメ−タを画面上で所望の値に変更、設定して新しい操縦パラメ−タ(新たな設定情報)を生成する。この新たな設定情報は通信ケーブルを介してラジコン模型に搭載されている制御装置のメモリに設けた設定値の格納領域に直接転送して格納される。
【0020】
ラジコン模型の機体の一部には、上記のケーブルを接続するための外部入力端子を備えている。ラジコン模型を停止させた状態で、通信ケーブルでPCと接続して上記の操作を実行する。
【0021】
また、PCにはラジコン模型の操縦シミュレータソフトウエアを搭載することもできる。PC上で前記パラメータ情報の設定・変更に連動して変更される設定情報に従って、操縦シミュレータソフトウエアを用いてバーチャル操縦を実行することもできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、ラジコン模型に搭載された全ての、あるいは主要な電子機器や部品の特性、動作状態、履歴を中央制御装置(CPU)で総合的に管理し、これらを相互に連携させて制御する。そのため、操縦の安定化、安全操作の向上が図られる。加えて、搭載機器の経歴を把握できることで、搭載機器の交換補修を的確に判断することができる。
【0023】
また、本発明では、操縦パラメ−タの設定値の変更と新たな設定値のラジコン模型への設定のためのラジコン模型に搭載されたメモリへの格納に送信機を必要としないことで、送信機の負担が軽減され、その構成も簡素化でき、小型化、軽量化が容易である。設定情報の変更・設定等の操作は、PCに情報設定用のソフトウエア(パラメータの設定・変更手順)をインストールすることで、さらに詳細な関連情報を分かりやすく表示させ、設定作業を容易にすることができる。
【0024】
なお、前記した各搭載機器の動作履歴は、ラジコン模型とPCをケーブル等で接続した状態で、当該PCの表示画像面上で確認できる。また、安全上の配慮から警告すべき搭載機器対応で警告ランプ、ブザーなどをラジコン模型、送信機に取り付けてもよい。
【0025】
また、ラジコン模型の飛行や、走行の操縦シミュレータソフトウエアを搭載することで、設定情報をシミュレータのパラメータ(設定情報)と連動させることにより送信機やキーボードからPC画面上で設定情報が反映されたラジコン模型の飛行、走行のコンピュータ・シミュレーションを行うことができ、設定確認をすることがきる。
【0026】
さらに、ラジコン模型のパーツ(機能部品)の変更を指示することで、操縦シミュレータソフトウエアにより、当該パーツの特性に値に設定値を自動的に適合させて飛行、走行のコンピュータ・シミュレーションを行うことができ、新たなパーツによる操縦形態の確認をすることがきる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の最良の実施形態につき、本発明をラジコンヘリコプターに適用した実施例の図面を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0028】
図1は、本発明のラジコン模型の統合制御システムの利用の一形態を説明する模式図である。ここでは、ラジコン模型としてのラジコンヘリコプターの構成と、その統合制御システムを利用するために外部装置を接続した状態を示す。外部装置としては、パーソナル・コンピュータ(PC)を用いる。本実施例では、ラジコンヘリコプター100に受信機2やバッテリー17と共に搭載する駆動制御回路101に、メモリ40、統合制御回路50を備える。さらに、ラジコンヘリコプター100に搭載されたバッテリー17、動力モータ、サーボモータ等の各電子機器の状態を検出するセンサからなるセンサ部20を備える。
【0029】
また、ラジコンヘリコプター100にはコネクタ12が設けられており、制御パラメータの設定値の転送とメモリ40への格納時、あるいはメモリ40に格納された履歴情報等の回収時に、外部装置であるパーソナル・コンピュータ(PC)のコネクタ14との間を通信ケーブル13で接続される。受信機2は、高周波(RF)処理部、検波部、およびデコーダを有する。
【0030】
図2は、本発明に係るラジコン模型の統合制御システムの一実施例を説明するブロック図である。図2には、図1で説明した駆動制御回路101の詳細な構成と、バッテリー、センサ部、動力モータ、および各種のサーボモータとの接続例を示す。図2において、図1と同一符号は同一機能部分に対応し、参照符号1は送信機、2は受信機、3はデコーダ、20はセンサ部、21は電流センサ、22は電圧センサ、23は温度センサ、24は回転センサ、25は回転角センサ、26は角速度センサ、7は動力モータ、8〜11は操舵用サーボモータ、12はラジコンヘリコプター側のコネクタ、13は通信ケーブル、14はPC側のコネクタ、17はバッテリー、40はメモリ、40Aは設定値格納部、40Bは履歴格納部、40CはID格納部、50は統合制御装置(CPU)、50Aは統合制御部、50Bは制御信号加工部、50Cは制御メモリ、200はパーソナル・コンピュータ(PC)である。
【0031】
電流センサ21、電圧センサ22、温度センサ23はバッテリーの電流、電圧および温度を検出するセンサとして設置される。回転センサ24は動力モータの出力軸、あるいはロータの回転数を検出する。回転角センサ25と角速度センサはサーボモータで操作される操舵角の回転角と角速度を検出するセンサであるが、サイボモータの駆動パルス数とパルス幅から演算してもよい。サーボモータはロータピッチ、ラダー、エルロン等の飛行制御を行う部位に設置される。
【0032】
図1に示した構成は、ラジコンヘリコプター100の飛行前あるいは飛行後に、PC200で変更、調整した制御パラメータの設定値をラジコンヘリコプター100に搭載したメモリに格納し、または、搭載機器各部の状態を履歴と共に確認する作業を行う状態を示す。その作業の1つとして、PC200から通信ケーブル12を介して転送された制御パラメータの設定値(動力モータの駆動特性、コレクティブピッチ、ラダー、エルロン等の操作特性など)をメモリ40の設定値格納部40Aに格納する。
【0033】
ラジコンヘリコプター100の動力モータ7の回転開始から浮揚、飛行、着陸の期間に、送信機1から送信される操縦指令信号を構成する各制御信号で変調した搬送波はラジコンヘリコプター100に搭載された受信機2で受信される。受信された搬送波は受信機内で検波され、デコーダ3で復号されて各種の操縦指令信号として再生される。再生された操縦指令信号は統合制御回路50の制御信号加工部50Bでメモリ40の設定値格納部40Aに格納されている設定値(制御パラメータ:設定特性)に従ってそれぞれ加工される。
【0034】
また、統合制御部50Aは、センサ部20を構成する所定のセンサが検出する駆動モータの回転負荷、バッテリーの電圧等の変化を操縦指令信号の加工に先回り的に組み込んで、所謂フィードフォワード制御を行い、駆動モータ7を高精度で調速するガバナー機能を有する。
【0035】
図3は、本実施例における制御パラメータの設定、設定値による操縦指令信号の加工と飛行の手順を説明する流れ図である。各処理のプロセスをP―1、P―2、・・・のように表記する。図3において、先ず始めに、ラジコンヘリコプター(ここでは、単にRCと略記)の電源をオン(ON)とする。RCとPCを通信ケーブル(以下、単にケーブル)で接続する(P−1)。RCの現在の設定情報(現在の設定値)をPCに読み込む(P−2)。PCの設定ソフトウエアによる設定値の変更を行う(P−3)。ここで、変更した設定値についてシミュレータソフトを用いて確認するのが望ましい。しかし、これは省略することもできる。
【0036】
設定値をRCに転送し(P−4)、RCのメモリに4の設定値格納部4Aに格納する(P−5)。ケーブルをRCから切り離しすることで(P−6)、飛行スタンバイとなる。送信機から飛行開始指令信号を送信して飛行を開始する(P−7)。
【0037】
飛行状態で、送信機から操縦制御信号が送信される(P―8)。操縦制御信号は線形で、一定ゲインである。送信された操縦制御信号はRC搭載の受信機で受信され、駆動制御回路で設定値による加工処理がなされる(P−9)。すなわち、受信機は受信信号を高周波増幅し、検波して、これをデコーダで復号する(P−91)。本実施例では、送信機で送信される操縦情報から復号される制御信号の種類は、スロットル(動力モータの回転制御)、コレクティブピッチ(メインロータのピッチ)、エルロン、エレベータ、ラダーである。操縦制御信号はこれらの何れかで、複数の操縦制御信号は順次処理されるが、制御信号加工部(マイコン)の処理能力が高く、多重チャンネルを用いた指令信号送信システムを採用した場合には並列処理することもできる。
【0038】
復号されたこれらの制御信号は、メモリ4の設定値格納部4Aに格納されている対応の設定値で加工される(P−92)。RCは加工された制御信号に基づいてそれぞれの飛行制御部位を制御して操縦がなされる(P−93)。この駆動制御回路101での加工処理は、次の操縦制御信号の受信を待ち、新たな操縦制御信号が受信されたときは、(P−9)のプロセスを繰り返す。
【0039】
このようにして加工された操縦指令信号のそれぞれは、後段の駆動機構に供給され、それぞれの制御対象を制御する。すなわち、図2に示した例では、制御信号加工部5から動力モータ制御信号と4つの操舵信号が出力される。4つの操舵信号は、ここでは、コレクティブピッチ制御信号、ラダー制御信号、エルロン制御信号、エレベータ制御信号である。なお、動力モータ制御信号はスピードコントローラ6を通して動力モータ7に印加される。4つの操舵信号(制御信号)は、サーボモータ8、9、10、11に印加され、それぞれの制御部位を制御する。ラジコン模型の種類によって、動力モータ制御信号、操舵信号はそれぞれのラジコン模型の操縦に要する制御部に対応した制御信号に適合したものとされる。
【0040】
加工された操縦指令信号のそれぞれは、後段の動力モータ7やサーボモータ8,9,10、11に供給され、それぞれの制御対象を制御する。ラジコン模型の種類によって、動力モータ制御信号、操舵信号はそれぞれのラジコン模型の操縦に要する制御部に対応した制御信号に適合したものとされる。
【0041】
一方、受信機2からの操縦指令信号、センサ部20で検出された各種の検出信号、設定値格納部40Aに格納されている設定値、ID格納部40Cに格納されたバッテリー17、動力モータ7、操舵用サーボモータ8,9,10の識別データは、統合制御回路50において、その統合制御部50Aで連携処理される。典型例として説明すれば、例えば飛行速度を上げる指令信号(増速指令)が受信されたとき、動力モータ7の温度センサが規定値を超えることが予想される温度を検知している場合には、当該指令信号で指令された速度値を制限する如く修正し、あるいは増速指令を無視する。この修正などの制御は制御メモリ50Cに格納されたプログラムの手順で行われる。そして、このような状態が発生したことは、動力モータ7のIDと共に履歴格納部40Bに履歴として記録される。
【0042】
このように、1つの制御値が単独で実行されることなく、他の関連する操縦指令信号のデータや対応するセンサの検出データを参照して、安全で効率的な飛行制御を可能にする。それぞれの統合制御パターンは、図1に示したPC200に有するプログラムで設定されから制御メモリ50Cに格納される。なお、制御メモリ50Cをメモリ40の領域の一部としてもよい。
【0043】
以下、図4により本実施例における統合制御の一例を説明する。図4は、図2における統合制御回路の処理手順の一例を説明する処理の流れ図である。この統合制御を説明する条件として、動力モータ7の温度センサが規定値ぎりぎりにあることを温度センサが検出しているときに、送信機から速度増加指令が送信されて、その指令信号が復号された場合を想定する。
【0044】
ラジコンヘリコプター(RC)は図3で説明したフローで飛行している(P−10)。このとき、送信機からの操縦指令信号が受信されると(P−11)、統合制御部50Aはその指令の種類を判断する(P−12)。受信した操縦指令信号は図3の手順で加工されると共に、図4の手順を並列に処理する。統合制御部50Aはこの操縦指令信号の種類を判断して振り分ける(P−12)。ここでは、コレクティブピッチを大きくする指令(C)であるとする。この指令はロータブレードの空力負荷増大を意味し、動力モータの負荷を増大させることになる。
【0045】
振り分けられた指令(C)について、対応するセンサの検出値を読み込む(P−13)。このセンサは、動力モータ7の温度センサとバッテリーの電圧センサであり、これらのセンサの検出値が当該指令信号に対応できる基準値の範囲内であれば(P−14)、指令通りの飛行を行う。もし、センサの検出値が当該指令信号に対応できる基準値を満たさない場合(例えば、動力モータ7の温度が異常に高くなっているような場合)は指令信号で指令された値以下の安全値に制限し、あるいは指令信号を無視してホバリングするとか、の安全な姿勢をとる(P−15)。他の指令信号についても同様に処理され、あるいは各操縦部位やセンサ間に関しても同様に連携させて総合的な制御を行う。このように、関連するセンサや指令信号を互いに連携させる制御を行うことで安全な飛行を実現できる。
【0046】
また、本実施例では、PCにラジコンヘリコプターの飛行制御のコンピュータ・シミュレータソフトを搭載し、設定情報に加えて、各種センサの仮想検出データをシミュレータのパラメータと連動させることにより送信機やPCのキーボードからPC画面上でさまざまな操縦状況を仮想再現したラジコンヘリコプター飛行のコンピュータ・シミュレーションをPC上で行うことができる。
【0047】
なお、送信機からの送信信号に含まれる操縦指令信号の指令値は所望の的にリニアで、加工されていないパルス幅や直線特性の信号でよく、送信機のデフォルト値を用いる。この送信機からのリニアな指令値を、ラジコンヘリコプターの機体に搭載されたメモリに格納された設定値により、パルス幅や曲線性に加工されて制御部位を制御すると共に、図4で説明したような制御を行って安全性を確保する。
【0048】
図5は、本発明を適用したラジコンヘリコプターの構成例を制御する全体側面図である。このラジコンヘリコプター100は前方にバッテリー17を、中央部分に各サーボモータ8、9、10、11と統合制御システムを実現する駆動制御回路101を搭載している。前記した各センサ部はバッテリー17の搭載部、動力モータの近傍、その他の対象機器の近傍、センサは駆動制御回路101の搭載部分、その他の適宜の部分に設ける。図5中、機体の後背部には始動ボタン103が設けられている。また、発光ダイオード104、ブザー105を備え、ラジコンヘリコプター100の始動、警告、その他の運用に伴う表示を行うようになっている。その他の各搭載機器の配置等は設計事項である。
【0049】
なお、前記した図3における制御パラメータの設定に関して、従来は、電気的な設定は主に操縦に使う送信機に搭載された設定整機能によって行っていたが、送信機は大きさやコストの制限から設定機能の入力スイッチの数や設定情報を伝える表示装置の機能や大きさが限られており、設定の入力が容易でなく、詳細な設定が行いにくいなど、操作性や機能性に限りがあった。これに対し、本実施例では、ラジコン模型に電気的な設定情報の格納部を有し、設定情報の操作はラジコン模型と通信ケーブルで接続したPCよりPC画面を参照しながら行う。PCで操作した新しい設定情報は再び通信ケーブルを介してラジコン模型に格納することができる。
【0050】
本実施例によれば、ラジコン模型に搭載される電子制御機器の制御、動作、異常検出などの情報を連携して管理し、制御の実行を総合判断することで安全性を高め、かつ操縦性能を向上することができる。
【0051】
上記実施例では、ラジコンヘリコプターを例としたが、本発明は、これに限るものではなく、固定翼ラジコン機、ラジコン自動車、ラジコン船、その他の種々のラジコン模型にも同様に適用できるものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明のラジコン模型の統合制御システムの利用の一形態を説明する模式図である。
【図2】本発明に係るラジコン模型の統合制御システムの一実施例を説明するシステム構成例のブロック図である。
【図3】図2における制御信号加工部での操縦指令信号の加工手順の一例を説明する流れ図である。
【図4】図2における統合制御回路の制御手順の一例を説明する処理の流れ図である。
【図5】本発明を適用したラジコンヘリコプターの構成例を制御する全体側面図である。
【図6】送信機を用いた従来の所望の操縦パラメ−タの設定、変更を行うようにした場合の説明図である。
【図7】図6におけるラジコンヘリコプターに搭載される操縦電子機器の構成例の説明図である。
【符号の説明】
【0053】
1・・・送信機、2・・・受信機、3・・・デコード部、7・・・動力モータ、8〜11・・・操舵用サーボモータ、12・・・ラジコン模型側のコネクタ、13・・・通信ケーブル、14・・・パーソナル・コンピュータ側のコネクタ、17はバッテリー、20・・・センサ部、21・・・電流センサ、22・・・電圧センサ、23・・・温度センサ、24・・・回転センサ、25・・・回転角センサ、26・・・角速度センサ、40・・・メモリ、40A・・・設定値格納部、40B・・・履歴格納部、40C・・・ID格納部、50・・・統合制御装置(CPU)、50A・・・統合制御部、50B・・・制御信号加工部、50C・・・制御メモリ、100・・・ラジコンヘリコプター、101・・・駆動制御回路、102・・・受信アンテナ、200・・・外部装置(パーソナル・コンピュータ:PC)、300・・・送信機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信回路と、受信回路で受信した送信機の信号から操縦指令信号を復号するデコーダとを備えた受信機と、前記デコーダで復号した操縦指令信号に基いて駆動モータ、姿勢や速度を司る機器を制御する1又は複数のサーボモータ、バッテリーを有する駆動制御回路を備え、
前記駆動制御回路は、メモリと統合制御装置を有し、
前記メモリは、前記操縦指令信号を加工するための制御パラメータの設定値を格納する設定値格納部を有し、
前記統合制御装置は、前記設定値格納部に格納された制御パラメータの設定値に基いて前記復号した操縦指令信号を加工する制御信号加工部と、複数の操縦指令信号を管理し、相互に反映させる統合制御部とを有し、
前記統合制御部が生成する出力を用いて前記駆動モータ、前記サーボモータを制御することを特徴とするラジコン模型の統合制御システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記メモリに、履歴格納部を有し、
前記履歴格納部に、前記駆動モータ、前記姿勢や速度を司る機器を制御するサーボモータ、前記バッテリーの動作履歴を格納し、格納された動作履歴から残り操作可能時間を推定することを特徴とするラジコン模型の統合制御システム。
【請求項3】
請求項1において、
前記メモリに、履歴格納部と、搭載機器のID格納部を有し、
前記ID格納部に前記駆動モータ、前記姿勢や速度を司る機器を制御するサーボモータ、前記バッテリーのIDを格納し、
前記履歴格納部に、前記駆動モータ、前記姿勢や速度を司る機器を制御するサーボモータの負荷履歴、前記バッテリーの動作履歴を前記ID格納部に格納された個々のIDに関連づけて格納し、
格納された各搭載機器の動作履歴に基づいて残り操作可能時間を推定することを特徴とするラジコン模型の統合制御システム。
【請求項4】
請求項2又は3において、
前記動作履歴は、
前記バッテリーについては、その容量や放電特性等の定格データ、過去の異常電流発生回数と電流量、充電/放電回数を、
駆動モータについては、その最高回転数、最大消費電流等の定格データ、回転数、運用時間を、
前記サーボモータについては、回転角、トルク、動作電流等の定格データ、負荷、過去の運用時間を、それぞれ含むことを特徴とするラジコン模型の統合制御システム。
【請求項5】
受信回路と、受信回路で受信した送信機の信号から操縦指令信号を復号するデコーダとを備えた受信機と、前記デコーダで復号した操縦指令信号に基いて駆動モータ、姿勢や速度を司る機器を制御する1又は複数のサーボモータ、バッテリーを有する駆動制御回路と、搭載機器の状態を監視するためのセンサ部を備え、
前記駆動制御回路は、メモリと統合制御装置を有し、
前記メモリは、前記操縦指令信号を加工するための制御パラメータの設定値を格納する設定値格納部を有し、
前記統合制御装置は、前記設定値格納部に格納された制御パラメータの設定値と、前記センサ部の検出信号とに基いて、前記復号した操縦指令信号を加工する制御信号加工部と、複数の操縦指令信号を管理し、相互に反映させる統合制御部とを有し、
前記統合制御部が生成する出力を用いて前記駆動モータ、前記サーボモータを制御することを特徴とするラジコン模型の統合制御システム。
【請求項6】
請求項5において、
前記センサ部は、前記バッテリーの電流、電圧、温度の各センサ、前記サーボモータの回転角、角速度の各センサを含むことを特徴とするラジコン模型の統合制御システム。
【請求項7】
請求項5において、
前記統合制御部は、操縦によって生じる回転負荷を予測したり、前記センサ部が検出する前記駆動モータの回転負荷、前記バッテリーの電圧等の変化を前記操縦指令信号の加工に先回り的に組み込むことで、当該駆動モータを調速することを特徴とするラジコン模型の統合制御システム。
【請求項8】
請求項5乃至7の何れかにおいて、
前記メモリに、履歴格納部を有し、
前記履歴格納部に、前記駆動モータ、前記姿勢や速度を司る機器を制御するサーボモータ、前記バッテリーの動作履歴および前記センサ部の検出信号を格納し、格納された動作履歴と前記センサ部の検出信号から残り操作可能時間や前記バッテリー、前記駆動モータ、前記サーボモータの寿命を推定することを特徴とするラジコン模型の統合制御システム。
【請求項9】
請求項8において、
前記動作履歴は、
前記バッテリーについては、その容量や放電特性等の定格データ、過去の異常電流発生回数と電流量、充電/放電回数を、
駆動モータについては、その最高回転数、最大消費電流等の定格データ、回転数、運用時間を、
前記サーボモータについては、回転角、トルク、動作電流等の定格データ、負荷、過去の運用時間を、それぞれ含むことを特徴とするラジコン模型の統合制御システム。
【請求項10】
請求項9において、
前記メモリに、履歴格納部と、搭載機器のID格納部を有し、
前記ID格納部に前記駆動モータ、前記姿勢や速度を司る機器を制御するサーボモータ、前記バッテリーのIDを格納し、
前記履歴格納部に、前記駆動モータ、前記姿勢や速度を司る機器を制御するサーボモータの負荷履歴、前記バッテリーの動作履歴および前記センサ部の検出信号を前記ID格納部に格納された個々のIDに関連づけて格納し、
格納された各搭載機器の動作履歴に基づいて残り操作可能時間や前記バッテリー、前記駆動モータ、前記サーボモータの寿命を推定することを特徴とするラジコン模型の統合制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−206670(P2008−206670A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−45459(P2007−45459)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(591082340)田屋エンジニアリング株式会社 (4)
【Fターム(参考)】