説明

ラックトレイ

【課題】単数或いは複数に拘わらずラックを所望の位置に簡単にセットすることができ、ラックの転倒事故を低減することが可能なラックトレイを提供することを第1の目的とする。また、第1の目的に加え、セットした複数のラックを一括して取り外すことが可能なラックトレイを提供することを第2の目的とする。
【解決手段】複数の試料容器を支持したラックを複数配列して保持すると共に、ラックを配列方向に沿って移動自在に案内する案内部20bが設けられたラックトレイ20。案内部20bは、ラックを装着すると、ラックの係合部と係合してラックを保持する係合保持部21が複数設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のラックを保持して自動分析装置に装着されるラックトレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、分注装置や自動分析装置は、検体を供給あるいは回収する際、複数の試料容器を支持したラックを複数配列させて保持できるラックトレイを使用している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−90378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたラックトレイは、ガイドレールに沿ってラックを搬送するタイプであり、ガイドレールの途中に設けた幅狭の斜行部を利用してラックを着脱する。このため、特許文献1のラックトレイは、1つずつでないとラックをセットできないうえ、セットし難いことから複数配列させるのに時間と手間が掛かり、ラックを所望の位置に簡単にセットすることができないという問題があった。しかも、特許文献1のラックトレイは、ラックをセットし難いことから、セットの際にラックを転倒させ、支持した試料容器内の検体が流出してしまう事故を生ずる可能性が高いという不安があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、単数或いは複数に拘わらずラックを所望の位置に簡単にセットすることができ、ラックの転倒事故を低減することが可能なラックトレイを提供することを第1の目的とする。また、第1の目的に加え、セットした複数のラックを一括して取り外すことが可能なラックトレイを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、第1の目的を達成するために、請求項1に係るラックトレイは、複数の試料容器を支持したラックを複数配列して保持すると共に、このラックを配列方向に沿って移動自在に案内する案内部が設けられたラックトレイであって、前記案内部は、前記ラックを装着すると、前記ラックの係合部と係合して前記ラックを保持する係合保持部が複数設けられていることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係るラックトレイは、上記の発明において、前記係合保持部は、前記ラックに設けた係合部に対して前記ラックを装着する方向と逆方向に離脱自在であることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係るラックトレイは、上記の発明において、前記複数の係合保持部は、それらの間に前記係合保持部を欠落させて前記ラックを取り外す取外し部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係るラックトレイは、上記の発明において、前記案内部は、前記ラックトレイ上面の幅方向中央或いは幅方向中央から変位した位置に前記ラックの配列方向に沿って設けられるガイドレールであることを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に係るラックトレイは、上記の発明において、前記案内部は、前記ラックトレイ上面の幅方向両側に設けられる案内壁であることを特徴とする。
【0011】
また、上述した課題を解決し、第2の目的を達成するために、請求項6に係るラックトレイは、複数の試料容器を支持したラックを複数配列すると共に、このラックを配列方向に沿って移動自在に案内する案内部が設けられたラックトレイであって、前記案内部は、前記ラックトレイ上面に前記ラックの配列方向に沿って対向配置される支持部材と、前記対向配置される支持部材間に昇降自在に支持され、前記ラックに設けた係合部と着脱自在に係合して前記ラックを保持する係合保持部が複数設けられた昇降部材と、前記対向配置される支持部材に対して前記昇降部材を昇降させる操作部材と、を備え、前記操作部材によって前記昇降部材を下降させ、前記支持部材が前記係合部と前記係合保持部との係合を一括して解除することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1にかかるラックトレイは、案内部に、ラックに設けた係合部と着脱自在に係合して前記ラックを保持する係合保持部を複数設けたので、単数或いは複数に拘わらずラックを所望の位置に簡単にセットすることができ、ラックの転倒事故を低減することができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明の請求項4にかかるラックトレイは、案内部は、ラックトレイ上面にラックの配列方向に沿って対向配置された支持部材と、前記支持部材間に昇降自在に支持され、前記ラックに設けた係合部と着脱自在に係合して前記ラックを保持する係合保持部が複数設けられた昇降部材と、前記昇降部材を昇降操作する操作部材とを備え、前記操作部材によって前記昇降部材を下降させた際に、前記支持部材が前記係合部と前記係合保持部との係合を一括して解除するので、請求項1の効果に加え、セットした複数のラックを一括して取り外すことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(実施の形態1)
以下、本発明のラックトレイにかかる実施の形態1について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、実施の形態1にかかるラックトレイの斜視図である。図2は、図1に示すラックトレイの平面図である。図3は、図2のC1−C1線に沿った断面図である。図4は、図1に示すラックトレイに保持されるラックの斜視図である。
【0015】
ラックトレイ20は、図1及び図2に示すように、基板20aの中央にガイドレール20bが長手方向に設けられると共に、基板20aの両側にガイド壁20cが設けられ、2つのガイド壁20c間にラック25が複数配列して保持される。このとき、ガイドレール20b及びガイド壁20cは、複数のラック25を配列方向となる長手方向に沿って移動自在に案内する案内部であり、ガイドレール20bは、天板20dを有する開口の両側に係合保持部となる係合凸部21が長手方向に沿って複数設けられている。
【0016】
係合凸部21は、それぞれラック1個分の厚さに相当する幅を有し、少なくともラック25を装着するときに、ラック25の係合部25e(図4参照)と係合してラック25を保持する。複数の係合凸部21は、図1及び図2に示すように、中間の係合保持部21を欠落させてラック25を上方へ取り外す取外し部となる隙間Sが形成されている。係合凸部21は、図3に示すように、対向する係合凸部21が相互に対をなし、上部をガイドレール20bの天板20d下部両側に回動自在に支持され、ねじりコイルばね22によってそれぞれガイドレール20bから外方へ突出するように付勢されている。
【0017】
ラック25は、図4に示すように、本体25aの上部に試料容器を支持する凹部25bが長手方向に沿って複数設けられ、下部中央には、厚さ方向に貫通し、係合部となる係合凹部25cが形成されている。係合凹部25cは、ガイドレール20bを挿通する上下方向に延びる挿通部25dと、ラックトレイ20の係合凸部21が係合する係合部25eとを有している。
【0018】
以上のように構成されるラックトレイ20は、ガイドレール20bに沿った所望の係合凸部21の上方に複数の試料容器を支持したラック25を配置し、図5に示すように、挿通部25dがガイドレール20bに挿通されるように、上方からラック25を垂直に下降させる。すると、ラック25が下降するのに伴い、図6に示すように、挿通部25d下端によって係合凸部21の斜面が押圧され、ねじりコイルばね22の付勢力に抗して係合凸部21がガイドレール20b内へと押し込まれる。
【0019】
そして、ラック25の下面が基板20a上面まで下降すると、ラックトレイ20は、挿通部25dによる係合凸部21斜面の押圧が解放される。すると、ラックトレイ20は、ねじりコイルばね22の付勢力によって係合凸部21が外方へと押し広げられ、図7に示すように、係合凸部21が係合部25eと係合する。これにより、ラックトレイ20は、係合凸部21がラック25に設けた係合凹部25cと着脱自在に係合し、係合凸部21がラック25を保持する。このとき、ラックトレイ20は、係合凸部21が係合部25eと係合することによってクリック音が発生するので、係合凸部21と係合部25eとの係合をクリック音によって確認することができる。以下、同様にして他のラック25を順次取り付けることにより、ラックトレイ20は、試料容器を支持した複数のラック25が複数配列される。
【0020】
このとき、ラックトレイ20は、係合部25eに係合凸部21が係合した状態でガイドレール20bに沿ってラック25を移動させることにより、新たなラック25を既に配列した複数のラック25の間に割り込ませることができ、或いはガイドレール20bに沿って移動させたラック25を隙間Sの部分で持ち上げるか、ガイドレール20bの端部までラック25を移動させることにより、ラック25をガイドレール20bから簡単に取り外すことができる。
【0021】
このように、ラックトレイ20は、係合凸部21を利用することによりラック25をガイドレール20bの所望の位置にセットすることができ、ガイドレール20bに沿って隙間Sの位置へ移動するか、ガイドレール20bの端部までラック25を移動させることにより、ラック25をガイドレール20bから簡単に取り外すことができる。特に、ラックトレイ20は、ガイドレール20bの上方から下降させるだけでラック25を簡単にセットすることができるので、セットの際にラック25が転倒する事故の発生も低減することができる。
【0022】
以上のように構成される本発明のラックトレイ20は、例えば、採血室等において採血された血液等の検体を収容した試料容器26を各凹部25bに順次支持させたラック25を保持し、図8に示す自動分析装置1にセットして以下のように使用される。
【0023】
ここで、自動分析装置1は、図8に示すように、試料供給部2、試料分析部3及び試料回収部4を備えている。
【0024】
試料供給部2は、図8に示すように、ラックトレイ20を搬送する搬送機構5と、ベルトコンベア6とを備えている。試料供給用のラックトレイ20は、台座1a上に載置されている。搬送機構5は、ラックトレイ20にセットされた複数のラック25をプッシャ5aによって矢印D1で示す第1の方向に搬送し、複数のラック25を順次ベルトコンベア6へ送り出す。プッシャ5aは、図示しないベルトコンベア等の搬送手段によって搬送される。ベルトコンベア6は、搬送機構5によって送り出されたラック25を矢印D2で示す第2の方向に沿って歩進させながら試料回収部4へと搬送する。
【0025】
試料分析部3は、図8に示すように、反応テーブル7と分注機構8とを備えている。反応テーブル7は、複数の反応容器9が周方向に沿って配列され、図示しない駆動手段によって駆動されて反応容器9を搬送する。分注機構8は、ベルトコンベア6によって搬送されてくるラック25に保持された複数の試料容器26内の試料を所定分注位置で反応容器9に分注する。試料が分注された反応容器9は、図示しない試薬分注機構によって試薬が分注され、反応テーブル7により搬送されながら試薬と試料とが反応し、反応液が光学的に測定された後、洗浄される。
【0026】
試料回収部4は、ベルトコンベア6によって搬送されてくるラック25を搬送機構11によってラックトレイ20に回収する。試料回収用のラックトレイ20は、台座1b上に載置されている。搬送機構11は、搬送機構5と同様に構成され、ベルトコンベア6によって順次搬送されてくる試料分注済みのラック25をプッシャ11aによって矢印D3で示す第3の方向に搬送し、ラックトレイ20に回収する。
【0027】
このようにしてラック25を回収したラックトレイ20は、ガイドレール20bに沿ってラック25を移動させて隙間Sの部分で持ち上げるか、ガイドレール20bの端部までラック25を移動させることにより、ラック25を取り外し、新たな試料容器26を支持したラック25と交換され、自動分析装置1にセットされる。
【0028】
以上のように実施の形態1のラックトレイ20は、単数或いは複数に拘わらずラック25を所望の位置に簡単にセットし、使用後はラック25を簡単に取り外すことができ、ラック25の着脱が非常に簡単なことから、ラック25の転倒事故を低減することができる。
【0029】
ここで、実施の形態1のラックトレイ20は、図9及び図10に示すように、ガイドレール20bを基板20aの幅方向中央から左方へ変位した位置に設けてもよい。このように、ガイドレール20bの位置を変位させると、ラックトレイ20は、セットするラック25の向きを規制することができ、向きを誤ったラック25をセットすることができないように規制することや、或いは専用のラックしかセットできないように規制することができ、ラックトレイ20を用途別に分けることができる。
【0030】
また、実施の形態1のラックトレイ20は、図11に示すように、係合凸部21に代えて、ガイドレール20bの外方へ凸に湾曲させた板ばねからなる係合凸部23をガイドレール20bに設けてもよい。このとき、ラック25は、係合部25eに代えて係合凹部25cに係合凸部23に対応した形状の係合部25fを係合凹部25cに形成する。ラックトレイ20は、係合凸部23を設けると、係合凸部23がラック25の係合凹部25cと着脱自在に係合してラック25を保持することができると共に、ラック25を上下方向に容易に着脱することができる。
【0031】
また、実施の形態1のラックトレイ20は、図12に示すように、係合凸部23に代えて、板ばねからなるひし形の係合凸部24をガイドレール20bに設けてもよい。このとき、係合凸部24は、下端がガイドレール20bに形成したV溝20eの底部にヒンジ(図示せず)で固定され、水平方向に拡縮自在に構成されている。従って、ラックトレイ20は、ラック25を上方から装着するとき、ラック25が下降するのに伴い、図12に示すように、挿通部25d下端によって係合凸部24の2つの斜面が押圧される。これにより、係合凸部24は、2つの斜面のそれぞれに矢印で示す水平方向内側へ向かう応力が作用し、図中点線で示すように、上下方向中央部分が水平方向内方へ撓むと共に、上下方向に延びる。そして、ラックトレイ20は、ラック25が下部まで押し下げられると、係合凸部24がラック25の係合凹部25cと着脱自在に係合する。これにより、ラック25は、ラックトレイ20に保持されるが、上方に引き上げると前記と逆の作動によって係合凸部24と係合凹部25cとの係合が解除され、ラックトレイ20から容易に外すことができる。
【0032】
(実施の形態2)
次に、本発明のラックトレイにかかる実施の形態2について、図面を参照しつつ詳細に説明する。実施の形態1のラックトレイは、ラックを取り付けるときだけ係合凸部が動いてラックの係合凹部に係合した。これに対して、実施の形態2のラックトレイは、ラックを着脱するときに係合凸部が動いてラックの係合凹部に係脱させることで、ラックの着脱を容易にした。図13は、実施の形態2にかかるラックトレイの斜視図である。図14は、図13に示すラックトレイの断面図である。ここで、実施の形態2のラックトレイは、実施の形態1のラックトレイと主要部が同一であるので、以下の説明並びに図面においては同一の符号を付し、形状が異なる係合凸部のみについて説明している。
【0033】
ラックトレイ30は、図13に示すように、基板20aの中央に長手方向にガイドレール20bが設けられ、ガイドレール20bは、天板20dを有する開口の両側に係合保持部となる係合凸部31が長手方向に沿って複数設けられている。
【0034】
係合凸部31は、それぞれラック1個分の厚さに相当する幅を有し、ラック27の係合部27e(図15参照)と着脱自在に係合してラック27を保持する。複数の係合凸部31は、図13に示すように、中間の係合保持部31を欠落させてラック27を上方へ取り外す取外し部となる隙間Sが形成されている。係合凸部31は、図14に示すように、対向する係合凸部31が相互に対をなし、上部をガイドレール20bの天板20d下部両側に回動自在に支持され、ねじりコイルばね22によってそれぞれガイドレール20bから外方へ突出するように付勢されている。また、係合凸部31は、図14に示す位置以上に外方へ突出することがないように、下端がガイドレール20bの上部内側に係止されている。
【0035】
ラック27は、図15に示すように、本体27aの上部に試料容器を支持する凹部27bが長手方向に沿って複数設けられ、下部中央には、厚さ方向に貫通し、係合部となる係合凹部27cが形成されている。係合凹部27cは、ガイドレール20bを挿通する上下方向に延びる挿通部27dと、ラックトレイ30の係合凸部31が係合する係合部27eとを有している。
【0036】
以上のように構成されるラックトレイ30は、ガイドレール20bに沿った所望の係合凸部31の上方にラック27を配置し、図15に示すように、挿通部27dがガイドレール20bに挿通されるように、上方からラック27を垂直に下降させる。すると、ラック27が下降するのに伴い、ラックトレイ30は、図16に示すように、挿通部27dの端部によって係合凸部31の斜面が押圧され、ねじりコイルばね22の付勢力に抗して係合凸部31がガイドレール20b内へと押し込まれる。
【0037】
そして、ラック27の下面が基板20a上面まで下降すると、ラックトレイ30は、挿通部27dによる係合凸部31斜面の押圧が解放される。すると、ラックトレイ30は、ねじりコイルばね22の付勢力によって係合凸部31が外方へと押し広げられ、図17に示すように、係合凸部31が係合部27eと係合する。これにより、ラックトレイ30は、係合凸部31がラック27に設けた係合凹部27cと着脱自在に係合し、係合凸部31がラック27を保持する。以下、同様にして他のラック27を順次取り付けることにより、ラックトレイ30は、複数のラック27が複数配列される。
【0038】
このとき、複数のラック27を複数配列したラックトレイ30は、ラックトレイ30を押えながらその位置でラック27を引き上げると、上記と逆の作動によって係合凸部31との係合を解除して簡単にラック27を取り外すことができる。また、ラックトレイ30は、実施の形態1のラックトレイ20と同様に、係合部27eに係合凸部31が係合した状態でラック27をガイドレール20bに沿って移動させることができ、隙間Sの部分で持ち上げるか、ガイドレール20bの端部まで移動させても、ラック27をラックトレイ30から取り外すことができる。
【0039】
このように、ラックトレイ30は、係合凸部31を利用することによりラック27をガイドレール20bの所望の位置に着脱することができ、着脱の際にラックが転倒する事故の発生も低減することができる。特に、ラックトレイ30は、取り付けたその位置でラック27をラックトレイ30から簡単に取り外すことができるので、実施の形態1のラックトレイ20以上に使い勝手が優れている。ここで、ラックトレイ30は、係合凸部31を利用することによりラック27が着脱自在であるので、隙間Sを形成する必要はなく、複数の係合保持部31をガイドレール20bに沿って連続させて設けてもよい。
【0040】
(実施の形態3)
次に、本発明のラックトレイにかかる実施の形態3について、図面を参照しつつ詳細に説明する。実施の形態1,2のラックトレイは、ガイドレールに係合凸部を設けたが、実施の形態3のラックトレイは、両側のガイド壁に係合凸部を設けている。図18は、実施の形態3にかかるラックトレイの斜視図である。図19は、図18に示すラックトレイに保持されるラックの斜視図である。
【0041】
ラックトレイ35は、図18に示すように、基板35aの両側にガイド壁35bが設けられ、2つのガイド壁35b間にラック38が複数配列して保持される。このとき、ガイド壁35bは、複数のラック38を配列方向に沿って移動自在に案内する案内部であり、係合凸部21と同様に構成され、内側に向かって突出する係合保持部である係合凸部36が長手方向に沿って複数設けられている。
【0042】
係合凸部36は、図18に示すように、ラック1個分の厚さに相当する隙間Sをおいて長手方向に沿って5個ずつ連続させてガイド壁35bの内側に設けられている。係合凸部36は、ねじりコイルばね(図示せず)によってガイド壁35bから突出するように付勢されている。
【0043】
ラック38は、図19に示すように、本体38aの上部に試料容器を支持する凹部38bが長手方向に沿って複数設けられ、両側下部には、厚さ方向に貫通し、係合部となる係合凸部36が係合する係合凹部38cが形成されている。
【0044】
以上のように構成されるラックトレイ35は、長手方向に沿った所望の係合凸部36上方にラック38を配置し、図20に示すように、上方からラック38を垂直に下降させると、本体38aの長手方向両側下部によって係合凸部36の斜面が押圧され、前記ねじりコイルばねの付勢力に抗して係合凸部36がガイド壁35b内へと押し込まれる。
【0045】
そして、ラック38の下面が基板35a上面まで下降すると、ラックトレイ35は、本体38aによる係合凸部36斜面の押圧が解放される。すると、ラックトレイ35は、前記ねじりコイルばねの付勢力によって係合凸部36がガイド壁35bから突出する方向へ押し広げられ、図21に示すように、係合凸部36が係合凹部38cと係合する。これにより、ラックトレイ35は、係合凸部36がラック38に設けた係合凹部38cと着脱自在に係合し、係合凸部36がラック38を保持する。以下、同様にして他のラック38を順次取り付けることにより、ラックトレイ35は、複数のラック38が複数配列される。
【0046】
このとき、ラック38は、係合凹部38cに係合凸部36が係合した状態で2つのガイド壁35b間をガイド壁35bに沿って移動させることができ、隙間Sの部分で持ち上げるか、ガイド壁35bの端部まで移動させることにより、ラックトレイ35から取り外すことができる。
【0047】
このように、ラックトレイ35は、係合凸部36を用いることによりラック38を2つのガイド壁35b間の長手方向に沿った所望の位置にセットすると共に取り外すことができる。特に、ラックトレイ35は、ガイド壁35bの上方から下降させるだけでラック38を簡単にセットすることができるので、セットの際にラック38が転倒する事故の発生も低減することができる。また、ラックトレイ35は、両側のガイド壁35bによってラック38と接触するだけで、ガイドレールを有していないので、ラック38との摩擦が低減され、実施の形態1のラックトレイ20や実施の形態2のラックトレイ30に比べてラック38をガイド壁35bに沿って円滑に移動させることができる。なお、ラックトレイ35は、係合凸部36に代えて、実施の形態2の係合凸部31を使用し、ラック38の係合凹部38cを係合凸部31の形状に対応したものにすると、ラック38をその場所で係合凸部31から着脱することができる。
【0048】
(実施の形態4)
次に、本発明のラックトレイにかかる実施の形態4について、図面を参照しつつ詳細に説明する。実施の形態1〜3のラックトレイは、単数或いは複数に拘わらずラックを所望の位置に簡単にセットすることができ、ラックの転倒事故を低減することが可能なラックトレイを提供する本発明の第1の目的を達成するものであった。これに対し、実施の形態4のラックトレイは、第1の目的に加え、セットした複数のラックを一括して取り外すことが可能なラックトレイを提供する本発明の第2の目的を達成するものである。図22は、実施の形態4にかかるラックトレイの斜視図である。図23は、図22に示すラックトレイの縦断面図である。図24は、図23のC2−C2線に沿った断面図である。
【0049】
ラックトレイ40は、図22に示すように、基板40aの両側にガイド壁40bが設けられ、基板40aの中央にラック50(図25参照)を複数配列して保持すると共に、ラックを配列方向となる長手方向に沿って移動自在に案内する案内部Pgが設けられている。
【0050】
案内部Pgは、図22〜図24に示すように、2枚の支持板41、昇降ブロック42及び操作レバー44を備えている。
【0051】
支持板41は、L字形の板材からなる支持部材であり、図22に示すように、基板40aの幅方向中央に所定間隔を置いて対向配置され、これらの間に昇降ブロック42が昇降自在に支持されている。
【0052】
昇降ブロック42は、図22に示すように、基板40aの長手方向に沿って配置され、ラック1個分の厚さに相当する隙間Sをおいて長手方向に沿って5個ずつ連続させた係合凸部43が両側面に設けられている。係合凸部43は、板ばねからなる係合保持部であり、図22及び図24に示すように、ガイドレール20bの外方へ突出するように湾曲形成されている。係合凸部43は、ラック50(図25参照)に設けた係合部50eと着脱自在に係合してラック50を保持する。従って、ラックトレイ40は、ラック50を上下方向に動かすことによってラック50を簡単に着脱することができる。
【0053】
操作レバー44は、昇降ブロック42を昇降させるもので、図23に示すように、リンク45を介して昇降ブロック42の連結軸42aと連結され、端部にロック片44aが回動自在に取り付けられている。ロック片44aは、昇降ブロック42を下降位置にロックするもので、図22に矢印で示すように回動して基板40a下面に設けた係止部材40dに係止される。リンク45は、L字形に折曲された板材で、基板40aの略中央に設けた開口40cに折曲部がピン45aによって回動自在に支持されている。リンク45は、両端に長孔45b,45cが設けられ、一端の長孔45bには連結軸42aに設けたピン42bが連結されると共に、他端の長孔45cには操作レバー44に設けたピン44bが連結されている。リンク45は、長孔45bの近傍と開口40cとの間に設けた引っ張りばね46によって反時計方向に付勢され、昇降ブロック42を常に上方に押圧している。
【0054】
ラック50は、図25に示すように、本体50aの上部に試料容器を支持する凹部(図示せず)が長手方向に沿って複数設けられ、下部中央には、厚さ方向に貫通し、係合部となる係合凹部50cが形成されている。係合凹部50cは、支持板41を挿通する上下方向に延びる挿通部50dと、ラックトレイ40の係合凸部43が係合する係合部50eを有している。
【0055】
以上のように構成されるラックトレイ40は、長手方向に沿った所望の係合凸部43の上方にラック50を配置し、図25に示すように、上方からラック50を垂直に下降させる。すると、ラックトレイ40は、図26に示すように、挿通部50dが2枚の支持板41の両側に配置されると共に、係合凸部43が係合凹部50cの係合部50eと係合する。これにより、ラックトレイ40は、係合凸部43がラック50に設けた係合凹部50cと着脱自在に係合し、係合凸部43がばね力によってラック50を保持する。以下、同様にして他のラック50を順次取り付けることにより、ラックトレイ40は、複数のラック50が複数配列される。
【0056】
このとき、ラックトレイ40に保持されたラック50は、案内部Pgに沿って長手方向へ移動させることにより、他のラック50を割り込ませることができ、或いは移動させたラック50を隙間Sの部分で持ち上げるか、ガイド壁40bの端部まで移動させることにより、ラックトレイ40から簡単に取り外すことができる。
【0057】
このようにして、試料容器を前記各凹部に支持させた複数のラック50を試料供給用のラックトレイ40に配列させ、このラックトレイ40を自動分析装置1にセットして検体の分析が行われる。そして、分析終了後の複数のラック50を回収した試料回収用のラックトレイ40は、ロック片44aに指を掛け、引っ張りばね46のばね力に抗して操作レバー44を引っ張ると、図27に示すように、操作レバー44が左方へ動くのに伴ってリンク45が時計方向に回動し、連結軸42aを介して連結された昇降ブロック42が下降する。
【0058】
これにより、ラックトレイ40は、図28に示すように、係合凸部43が昇降ブロック42と共に対向配置された2枚の支持板41間に没入し、2枚の支持板41によって係合凸部43と係合部50eとの係合が一括して解除される。この結果、ラックトレイ40に保持された複数のラック50は、ラックトレイ40から一括して取り外すことができる。このとき、ラックトレイ40は、図29に示すように、ロック片44aを回動して係止部材40dに係止しておく。これにより、ラックトレイ40は、引っ張りばね46のばね力によって操作レバー44が元に戻ることが規制され、係合凸部43と係合部50eとの係合が解除された状態が維持される。なお、ラック50は、係合凹部50cに係合凸部43が係合した状態で2つのガイド壁40bに沿って移動させることができ、隙間Sの部分で持ち上げることにより個々に取り外すか、或いはガイド壁40bの端部まで移動させても、ラックトレイ40から取り外すことができる。
【0059】
このように、実施の形態4のラックトレイ40は、実施の形態2,3のラックトレイ30,35の効果に加え、保持した複数のラック50を一括して取り外すことができ、ラック50の取外し操作が容易になっている。但し、ラックトレイ40を使用する場合、自動分析装置1は、基板40aの下部に突出している係止部材40d,操作レバー44及びリンク45と干渉しないように、台座1a,1bの形状を変更する必要がある。
【0060】
なお、実施の形態1〜4のラックトレイは、係合保持部として係合凸部を用い、ラックは係合部として係合凹部を用いている。しかし、ラックトレイは、この逆に、係合保持部として係合凹部を用い、ラックは係合部として係合凸部を用いてもよい。また、昇降ブロック42は、係合保持部として係合凸部43を設けたが、係合保持部として係合凸部31を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上のように、本発明にかかるラックトレイは、単数或いは複数に拘わらずラックを所望の位置に簡単にセットすることができ、ラックの転倒事故を低減するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施の形態1にかかるラックトレイの斜視図である。
【図2】図1に示すラックトレイの平面図である。
【図3】図2のC1−C1線に沿った断面図である。
【図4】図1に示すラックトレイに保持されるラックの斜視図である。
【図5】ラックをラックトレイに取り付ける前段階を、ラックトレイを断面にして示す正面図である。
【図6】ラックをラックトレイに取り付ける中間の状態を、ラックトレイを断面にして示す正面図である。
【図7】ラックをラックトレイに取り付けた状態を、ラックトレイを断面にして示す正面図である。
【図8】ラックトレイの自動分析装置における使用態様を説明する斜視図である。
【図9】ラックトレイの変形例を示す平面図である。
【図10】図9のラックトレイの断面正面図である。
【図11】ラックトレイの他の変形例を、ラックトレイを断面にしてラックと共に示す正面図である。
【図12】ラックトレイの更に他の変形例を、ラックトレイを断面にしてラックと共に示す正面図である。
【図13】実施の形態2にかかるラックトレイの斜視図である。
【図14】図13に示すラックトレイの断面図である。
【図15】ラックをラックトレイに取り付ける前段階を、ラックトレイを断面にして示す正面図である。
【図16】ラックをラックトレイに取り付ける中間の状態を、ラックトレイを断面にして示す正面図である。
【図17】ラックをラックトレイに取り付けた状態を、ラックトレイを断面にして示す正面図である。
【図18】実施の形態3にかかるラックトレイの斜視図である。
【図19】図18に示すラックトレイに保持されるラックの斜視図である。
【図20】ラックをラックトレイに取り付ける前段階を示す正面図である。
【図21】ラックをラックトレイに取り付けた状態を示す正面図である。
【図22】実施の形態4にかかるラックトレイの斜視図である。
【図23】図22に示すラックトレイの縦断面図である。
【図24】図23のC2−C2線に沿った断面図である。
【図25】ラックをラックトレイに取り付ける前段階を、ラックトレイを断面にして示す正面図である。
【図26】ラックをラックトレイに取り付けた状態を、ラックトレイを断面にして示す正面図である。
【図27】ラックをラックトレイに取り付けた状態のラックトレイの縦断面図である。
【図28】図27のラックトレイの正面図である。
【図29】操作レバーをロック片によってロックした状態を示す図22の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0063】
20,30,35 ラックトレイ
20a,35a 基板
20b ガイドレール
20c,35b ガイド壁
21,23,24 係合凸部
22 ねじりコイルばね
25 ラック
25a 本体
25b 凹部
25c 係合凹部
25d,25g 挿通部
25e 係合部
25f,25h 係合部
27,38 ラック
27a,38a 本体
27b,38b 凹部
27c,38c 係合凹部
27d 挿通部
27e 係合部
31,36 係合凸部
40 ラックトレイ
40a 基板
40b ガイド壁
40c 開口
40d 係止部材
41 支持板
42 昇降ブロック
42a 連結軸
42b ピン
43 係合凸部
44 操作レバー
45 リンク
46 引っ張りばね
50 ラック
50a 本体
50c 係合凹部
50d 挿通部
50e 係合部
S 隙間
Pg 案内部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の試料容器を支持したラックを複数配列して保持すると共に、このラックを配列方向に沿って移動自在に案内する案内部が設けられたラックトレイであって、
前記案内部は、前記ラックを装着すると、前記ラックの係合部と係合して前記ラックを保持する係合保持部が複数設けられていることを特徴とするラックトレイ。
【請求項2】
前記係合保持部は、前記ラックに設けた係合部に対して前記ラックを装着する方向と逆方向に離脱自在であることを特徴とする請求項1に記載のラックトレイ。
【請求項3】
前記複数の係合保持部は、それらの間に前記係合保持部を欠落させて前記ラックを取り外す取外し部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のラックトレイ。
【請求項4】
前記案内部は、前記ラックトレイ上面の幅方向中央或いは幅方向中央から変位した位置に前記ラックの配列方向に沿って設けられるガイドレールであることを特徴とする請求項1に記載のラックトレイ。
【請求項5】
前記案内部は、前記ラックトレイ上面の幅方向両側に設けられる案内壁であることを特徴とする請求項1に記載のラックトレイ。
【請求項6】
複数の試料容器を支持したラックを複数配列すると共に、このラックを配列方向に沿って移動自在に案内する案内部が設けられたラックトレイであって、
前記案内部は、
前記ラックトレイ上面に前記ラックの配列方向に沿って対向配置される支持部材と、
前記対向配置される支持部材間に昇降自在に支持され、前記ラックに設けた係合部と着脱自在に係合して前記ラックを保持する係合保持部が複数設けられた昇降部材と、
前記対向配置される支持部材に対して前記昇降部材を昇降させる操作部材と、
を備え、
前記操作部材によって前記昇降部材を下降させ、前記支持部材が前記係合部と前記係合保持部との係合を一括して解除することを特徴とするラックトレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2007−303960(P2007−303960A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−132552(P2006−132552)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】