説明

ランキンサイクルシステムの制御装置

【課題】ランキンサイクルシステムにおいて発生する蒸気の量を安定させることを課題とする。
【解決手段】ランキンサイクルシステム1の制御装置100は、熱を付与して液相の冷媒を蒸気化するエンジン2の本体20、過熱器7と、本体20で発生した蒸気を液相の冷媒と分離して取り出す気液分離器5と、発生した蒸気から動力または電力を回収する回収機4と、冷媒を本体20、または気液分離器5へ圧送するベーン型ウォータポンプ10と、ECU50とを備え、本体20、及び過熱器7において発生する蒸気量を算出するとともに、過熱器7において発生する蒸気量に相当する冷媒の液量を算出し、算出された液量を圧送するベーン型ウォータポンプ10の駆動量を算出し、算出された駆動量でベーン型ウォータポンプ10を駆動し、算出された液量の冷媒を供給させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンから発生する廃熱を、蒸気を介して回収するランキンサイクルシステムの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの駆動に伴って発生する廃熱を、ランキンサイクルを利用して回収する廃熱回収装置が知られている。この種の廃熱回収装置は、例えば、エンジンの水冷冷却系統を密閉構造とし、エンジンにおける廃熱により気化した冷媒(蒸気)を用いて膨張機(タービン)を駆動して、その蒸気の持つ熱エネルギーを機械的動力や電気エネルギーに変換して回収するものがある。
【0003】
このようなランキンサイクルを利用する装置が機能するには、作動流体である冷媒が循環しなければならない。このため、ランキンサイクルを利用する装置では、冷却系統に設けた圧送機(ポンプ)により、冷媒が循環するように構成されている。さらに、このような冷却系統に設けられた圧送機は、冷媒の供給時以外に停止することにより運転効率を向上させている。
【0004】
このような装置において、例えば、特許文献1のエンジンの冷却装置では、ウォータジャケット内の冷却水位を検知する水位センサの出力に基づき、ウォータジャケット内の冷却水の有無を判断し、冷却水がないと判断した場合にウォータジャケットへ冷却水を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−79508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の装置において、圧送機は、エンジンの発熱部、すなわち、冷媒へ熱を付与し、冷媒が蒸気化する部位(蒸気発生部)における、液相の冷媒の量が所定値を下回った場合にのみ駆動されるように構成されている。したがって、圧送機は、蒸気発生部の液相冷媒量の変動のみにより駆動され、エンジンの運転状態に関わらず、蒸気発生部への冷媒の供給量が一定である。
【0007】
ところが、エンジンの低温時、または低負荷時では、エンジンの発熱部、すなわち、冷媒へ熱を付与し、冷媒が蒸気化する部位(蒸気発生部)において発生する熱量が少ないため、冷媒は蒸気となりにくい。このため、圧送機の駆動量が一定である場合、蒸気発生部への冷媒の供給量が一時的に多くなり、冷媒が過剰となる。さらに、冷媒の量が過剰となることにより、熱量が冷媒の温度上昇(顕熱の上昇)に用いられるため、蒸気の発生する量が低下してしまう。また、エンジンの高温時、または高負荷時では、蒸気発生部において発生する熱量が多くなるため、蒸気の発生する量が多くなる。圧送機の駆動量が一定である場合、冷媒の供給量が不足する。このため、蒸気発生部における液相の冷媒の量が不足する。この結果、蒸気発生部において冷媒が不足し、エンジン内の冷媒の温度も上昇し、冷却不足になることも考えられる。
【0008】
このように、圧送機による冷媒の供給量が一定である場合、エンジンの運転状態によっては、蒸気発生部において発生する蒸気の量に増減が生じる。このため、ランキンサイクルのタービンの回転にもばらつきが生じ、エネルギーの回収が安定しない。
【0009】
そこで、本発明は、ランキンサイクルシステムにおいて発生する蒸気の量を安定させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決する本発明のランキンサイクルシステムの制御装置は、熱を付与して液相の作動流体を蒸気化する蒸気発生部と、前記蒸気発生部において発生した蒸気から動力または電力を回収する回収機と、前記作動流体を前記蒸気発生部へ圧送する圧送機と、前記蒸気発生部において発生する蒸気量を算出する第1算出手段と、前記蒸気量に相当する前記作動流体の液量を算出し、前記液量を圧送する前記圧送機の駆動量を算出する第2算出手段と、前記第2算出手段により算出された前記駆動量で前記圧送機を駆動し、前記液量を前記蒸気発生部へ供給させる供給手段と、を備える。
【0011】
上記の構成により、発生した蒸気量に相当する液相の作動流体が蒸気発生部に供給される。このため、蒸気発生部では、減少した液相の作動流体に相当する量の作動流体が新たに供給されるので、作動流体の過剰や不足に起因した発生蒸気量のばらつきが抑制される。これにより、ランキンサイクルシステムにおいて発生する蒸気の量を安定させることができる。
【0012】
上記のランキンサイクルシステムの制御装置において、前記作動流体はエンジンを冷却する冷媒であって、前記作動流体はエンジンに設けられた流路内を循環し、前記蒸気発生部はエンジンの廃熱を前記作動流体へ付与する構成とすることができる。このような構成により、エンジンの廃熱を回収するランキンサイクルシステムにおいて、発生する蒸気の量を安定させることができる。また、エンジンに設けられた流路内へ冷媒が過不足なく供給されるため、エンジンの過度の冷却やオーバーヒートが抑制できる。
【0013】
上記のランキンサイクルシステムの制御装置において、前記第1算出手段は、前記エンジンの運転状態に基づいて、発生する蒸気量を算出することとしてもよい。これにより、エンジンの運転状態により変化する蒸気発生部における蒸気の発生量に対応して、蒸気として減少した分の作動流体を供給することができる。このため、蒸気発生部における作動流体の量が適切に維持されて、発生する蒸気の量を安定させることができる。なお、運転状態には、エンジンの回転数、トルク、熱効率、液相の前記作動流体の温度、排気温度、その他蒸気発生部において発生する蒸気の量の算出に関連する情報を含むものとすることができる。また、運転状態には、エンジン運転時の外気温などのエンジン外部の情報をも含むこととしてもよい。
【0014】
上記のランキンサイクルシステムの制御装置において、前記蒸気発生部は、前記エンジンの運転により発生する熱を前記作動流体へ伝播するエンジン本体と、前記エンジンの排気から得られる熱を前記作動流体へ伝播する過熱器と、を含み、前記第1算出手段は、前記作動流体が前記本体から受熱することにより発生した蒸気量と、前記作動流体が前記過熱器において排気から受熱することにより発生した蒸気量とを算出することとしてもよい。これにより、エンジン本体において発生した蒸気量と、過熱器において発生した蒸気量とを別途算出することができるので、発生蒸気量を算出する精度が向上できる。これにより、蒸気発生部へ供給する作動流体の流量の精度が向上するので、発生する蒸気量を安定させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、蒸気発生部において発生する蒸気量に相当する液量を算出し、蒸気発生部へ供給させることにより、ランキンサイクルシステムにおける蒸気の発生量を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ランキンサイクルシステムの制御装置の概略構成を示した説明図である。
【図2】ECUに関する信号の伝達を示したブロック図である。
【図3】蒸気発生部への冷媒の供給に関する制御処理について示したフローチャートである。
【図4】熱効率を算出するマップの一例を示した説明図である。
【図5】図3の蒸気発生部における総発生蒸気量を算出する処理についてのサブルーチンを示したフローチャートである。
【図6】エンジンの本体から受熱することにより発生した蒸気量の算出マップの一例を示した説明図である。
【図7】冷却損失量を算出するマップの一例を示した説明図である。
【図8】排気損失量を算出するマップの一例を示した説明図である。
【図9】過熱器7において排気から受熱することにより発生した蒸気量の算出マップの一例を示した説明図である。
【図10】ベーン型ウォータポンプの回転数の算出マップの一例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を図面と共に詳細に説明する。
【実施例】
【0018】
図1は本実施例におけるランキンサイクルシステム1の制御装置(以下、単に、「制御装置」と言う。)100の概略構成を示した説明図である。ランキンサイクルシステム1はエンジン2、冷媒通路3、回収機4を備えている。ランキンサイクルシステム1は、冷媒を作動流体として、エンジン2から発生する廃熱により冷媒を蒸気化し、発生した蒸気により回収機4を駆動して電気エネルギーを回収する。作動流体である冷媒は、ランキンサイクルシステム1内に形成された冷媒通路3を流れて、ランキンサイクルシステム1内を循環する。
【0019】
冷媒通路3には、冷媒が流れる上流側から順に、気液分離器5、過熱器7、回収機4、凝縮器8、凝縮タンク9、ベーン型ウォータポンプ10、逆止弁11、ウォータポンプ12が配置されている。
【0020】
エンジン2は廃熱を付与して液相の冷媒を蒸気化する蒸気発生部を備えている。蒸気発生部は後述するエンジン2の本体20、気液分離器5、過熱器7からなる。
【0021】
本体20は、ブロック側ウォータジャケット21aが形成されたシリンダブロック20aと、ヘッド側ウォータジャケット21bが形成されたシリンダヘッド20bとを備えている。ブロック側ウォータジャケット21aとヘッド側ウォータジャケット21bとは、冷媒通路3と接続されている。冷媒は、ヘッド側ウォータジャケット21b側から冷媒通路3へ流れ込み、冷媒通路3からブロック側ウォータジャケット21aへ流れ込む。すなわち、冷媒通路3は、ヘッド側ウォータジャケット21b、及びブロック側ウォータジャケット21aとともに、冷媒が循環するループ状の流路を形成している。このため、冷媒はエンジン2に設けられたウォータジャケット21a、21b内を循環する。なお、図中に示す矢印は冷媒の流れる方向を示している。
【0022】
エンジン2が運転されると、シリンダブロック20a、シリンダヘッド20bが暖機する。ブロック側ウォータジャケット21aとヘッド側ウォータジャケット21b内の冷媒は、暖機したシリンダブロック20a、シリンダヘッド20bを冷却する。冷媒はシリンダブロック20a、シリンダヘッド20bを冷却する際に、シリンダブロック20a、シリンダヘッド20bから受熱するため、冷媒の温度が上昇する。すなわち、本体20はエンジン2の運転により発生する熱を冷媒へ伝播する。ここで受熱した冷媒の一部は蒸気化する。
【0023】
エンジン2の運転開始とともに、ウォータポンプ12が稼働し、冷媒通路3内に流れが生じる。これにより、ブロック側ウォータジャケット21a及びヘッド側ウォータジャケット21b内の冷媒は、本体20の下流側に位置する気液分離器5へ送られる。気液分離器5は、冷媒を気相冷媒(蒸気)と液相冷媒とに分離する。したがって、本体20で発生した蒸気は気液分離器5において液相の冷媒と分離されて取り出される。
【0024】
気液分離器5の下流側には、過熱器7が配置されており、気液分離器5と過熱器7とは通路31、及び通路32で接続されている。通路31と通路32とは冷媒通路3の一部である。通路31は気液分離器5において分離された気相の冷媒が通り、通路32は気液分離器5において分離された液相の冷媒が通るように構成されている。通路32には電磁弁13が設けられている。電磁弁13が開弁すると、気液分離器5から過熱器7へ向かって通路32内を液相の冷媒が送られる。このように、気液分離器5から過熱器7へ液相の冷媒を供給できるように構成されている。
【0025】
過熱器7は、エンジン2の排気から得られる熱を気相の冷媒および液相の冷媒へ伝播する。過熱器7の内部には冷媒が通る通路と、エンジン2から排出される排気ガスが通る通路とが別個に形成されており、過熱器7内において、冷媒と排ガスとが熱交換するように構成されている。さらに、過熱器7は、液相の冷媒を蒸気化する蒸発部7aと気相の冷媒へ熱を付与して高温化する過熱部7bとを備えている。過熱部7bは蒸発部7aよりも高温の排ガスと接触するように配置されている。蒸発部7a内の液相の冷媒は排気ガスから熱を得て蒸気化する。蒸気化した(気相の)冷媒は過熱部7bへ移動する。過熱部7b内の気相の冷媒は、排気ガスから熱を得て高温高圧の気相冷媒(蒸気)となる。
【0026】
以上のように、本体20、気液分離器5、過熱器7では、エンジン2から排出される廃熱を液相の冷媒へ付与して液相の冷媒を蒸気化する蒸気発生部として機能する。
【0027】
過熱器7内で排ガスから熱を得て高温高圧となった気相冷媒(蒸気)は、回収機4へと送られる。回収機4は、エンジン2から冷媒が受け取った廃熱のエネルギーを電力へ変換し回収する装置である。すなわち、回収機4は、蒸気発生部において発生した蒸気から電力を回収する。回収機4は、超音速ノズル41、タービン42、発電機43、蓄電池44、シャフト45を備えた廃熱回収用のユニットである。高温高圧の気相冷媒は超音速ノズル41からタービン42へと噴きつけられる。これにより、タービン42が回転する。タービン42と発電機43とはシャフト45で接続されており、タービン42が所定の回転数、及びトルクを得ると、発電機43において安定した発電が可能となる。発電機43において発生した電気は蓄電池44に蓄えられる。また、回収機4は、高温高圧の気相冷媒が持つエネルギーを電力として回収する代わりに機械的動力として回収する構成であってもよい。
【0028】
回収機4においてタービン42に噴きつけられた蒸気は、通路33を通り、凝縮器8へ送られる。この通路33は冷媒通路3の一部である。凝縮器8は、通路33を通り送られてくる気相の冷媒を液相へ凝縮する。凝縮器8は細分化した管路へ冷媒を送り、大気との熱交換を促進することにより冷媒を冷却する。また、エンジン2には凝縮器8へ大気を強制的に供給する冷却ファン14が設けられている。また、凝縮器8の排出口には、凝縮ヘッダタンク15が設けられており、凝縮器8で凝縮した冷媒が一時的に蓄えられる。
【0029】
凝縮ヘッダタンク15内の冷媒は、その後、凝縮タンク9へ送られる。凝縮タンク9に蓄えられた冷媒は、ベーン型ウォータポンプ10により下流側へ送られる。ベーン型ウォータポンプ10は、本発明の圧送機に相当し、凝縮タンク9内の冷媒を蒸気発生部である本体20または気液分離器5へと圧送する。また、ウォータポンプ12は、ベーン型ウォータポンプ10により圧送された冷媒をブロック側ウォータジャケット21aへ供給する。また、ベーン型ウォータポンプ10とウォータポンプ12の間の逆止弁11は、ベーン型ウォータポンプ10へ冷媒が逆流することを防止する。
【0030】
逆止弁11とウォータポンプ12との間の冷媒通路3と、気液分離器5の底部とを連通するように通路34が形成されている。この通路34は冷媒通路3の一部である。通路34における冷媒の流れは、ベーン型ウォータポンプ10の駆動量に応じて変化する。ベーン型ウォータポンプ10の駆動量がウォータポンプ12の駆動量より大きい場合、ウォータポンプ12がブロック型ウォータジャケット21aへ圧送する冷媒の量よりもベーン型ウォータポンプ10が圧送する冷媒の量が多いため、ウォータポンプ12の圧送量を超えた冷媒が通路34へ流入し、通路34の冷媒は気液分離器5へ向かって流れる。反対に、ベーン型ウォータポンプ10の駆動量がウォータポンプ12の駆動量以下である場合、気液分離器5内の冷媒が通路34へ流れ込み、ウォータポンプ12によりブロック側ウォータジャケット21aへ供給される。
【0031】
上記の通り、冷媒は本体20、及び過熱器7において、エンジン2の廃熱を回収し、高温高圧の蒸気となる。回収機4は、この蒸気化した冷媒がエンジンから受け取った熱エネルギーを電気エネルギーへと変換して回収する。蒸気化した冷媒は凝縮器8において再び液体状態に凝縮され、再度、本体20内へ送られて、ランキンサイクルシステム1内を循環する。従って、ランキンサイクルシステム1は、冷媒を作動流体とするランキンサイクルを構成している。
【0032】
さらに、ランキンサイクルシステム1は、ECU(Electronic Control Unit)50を備えている。ECU50は、CPU(Central
Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、入出力ポートを双方向バスで接続した公知の形式のディジタルコンピュータからなり、ランキンサイクルシステム1やエンジン2の制御のために設けられている各種センサや作動装置と信号をやり取りして制御する。図2は本実施例におけるECU50に関する信号の伝達を示したブロック図である。本実施例では、ECU50は回転センサ51、トルクセンサ52、水温センサ53、蒸気温センサ54、排気温センサ55のそれぞれと電気的に接続されている。回転センサ51はエンジン2のクランクシャフト(図示しない)の回転数を検出する。トルクセンサ52はエンジン2のトルクを検出する。水温センサ53は気液分離器5内における液相の冷媒の温度を検出する。蒸気温センサ54は過熱器7の過熱部7bの出口付近に配置されて、気相の冷媒(蒸気)の温度を検出する。排気温センサ55は排気管16における、過熱器7に導入される直前の排気の温度を計測する位置に配置されて、エンジン2の排ガスの温度を検出する。
【0033】
また、ECU50は、ベーン型ウォータポンプ10、電磁弁13、冷却ファン14のそれぞれと電気的に接続されており、各種センサの取得する情報に基づいて、ベーン型ウォータポンプ10、冷却ファン14の運転を制御し、電磁弁13の開閉状態を制御する。
【0034】
さらに、本実施例において、ECU50は本発明の第1算出手段として機能する。すなわち、ECU50は蒸気発生部において発生する蒸気量を算出する。本実施例では、蒸気発生部において発生する蒸気量とは、冷媒が本体20から受熱することにより発生した蒸気量Ve、及び冷媒が過熱器7において排気から受熱することにより発生した蒸気量Vhを合わせた総発生蒸気量Vtを指すものとする。また、ECU50は本発明の第2算出手段として機能する。すなわち、ECU50は、第1算出手段が算出した蒸気量に相当する冷媒(作動流体)の液量を算出し、その液量を圧送するベーン型ウォータポンプ10の駆動量を算出する。さらに、ECU50は、本発明の供給手段として機能する。すなわち、第2算出手段により算出された駆動量でベーン型ウォータポンプ10を駆動し、第1算出手段において算出された液量を本体20または気液分離器5(蒸気発生部)へ供給させる。
【0035】
次に、制御装置100の制御について説明する。図3は蒸気発生部への冷媒の供給に関する制御処理について示したフローチャートである。この制御はECU50により行われる。以下、本実施例の制御処理について図3を参照しつつ説明する。
【0036】
ECU50はステップS1において、ランキンサイクルシステム1が稼動中か否かを判断する。ECU50は、ランキンサイクルシステム1が稼動中であるか否かについて、気液分離器5内の液相冷媒の温度が飽和蒸気温度Ts以上であるか否かにより判断する。気液分離器5内の液相冷媒の温度は、水温センサ53により検出した値を用いる。ECU50はステップS1においてYESと判断する場合、すなわち、ランキンサイクルシステム1が稼動中である場合、ステップS2へ進む。
【0037】
ECU50はステップS2において、エンジン2の運転状態を把握するため、エンジン2の運転条件を取得する。エンジン2の運転条件は、例えば、エンジン回転数、エンジン2のトルク、熱効率、過熱器7内の液相冷媒の温度、排気温度から取得する。エンジン回転数は、回転センサ51が取得する値を用い、エンジン2のトルクはトルクセンサ52が検出する値を用い、過熱器7内の液相冷媒の温度は蒸気温センサ54が検出する値から予測する。排気温度は排気温センサ55が検出する値を用いる。熱効率は、例えば、図4に示すような予め作成されたマップを参照して取得することができる。図4のマップによると、エンジン回転数とエンジン負荷とから熱効率を求めることができる。図4のマップでは、マップの中央付近で最も熱効率が高く、高回転若しくは低回転、または高負荷若しくは低負荷になるほど、熱効率が低下する。ECU50はステップS2において、エンジン2の運転条件を取得すると、ステップS10へ進む。
【0038】
ECU50はステップS10において、蒸気発生部における総発生蒸気量Vtを算出する処理へ進む。ここで、蒸気発生部における総発生蒸気量Vtを算出する処理について説明する。図5はステップS10の蒸気発生部における総発生蒸気量Vtを算出する処理についてのサブルーチンを示したフローチャートである。
【0039】
蒸気発生部における総発生蒸気量Vtを算出する処理が開始すると、ECU50はステップS11において、冷媒が本体20から受熱することにより発生した蒸気量Veを算出する。蒸気量Veは、予め作成された蒸気量Ve算出マップを用いて算出する。ここで、蒸気量Ve算出マップについて説明する。図6は蒸気量Ve算出マップの一例を示した説明図である。図6の縦軸は、蒸気量Veを示し、横軸はエンジン2の出力を示している。エンジン2の出力は、エンジン2の運転状態、例えば、エンジン2の回転数、負荷、熱効率、冷却排気損失割合から特定する。エンジン2の回転数は回転センサ51から取得し、エンジン2の負荷はスロットルの開度から取得し、熱効率は上記の図4のマップを参照して取得する。また、冷却排気損失割合は、例えば、図7及び図8に示すような予め作成されたマップを参照して取得する。図7は冷却損失量を示したマップの一例であり、図8は排気損失量を示したマップの一例である。図7、図8によると、冷却損失量、排気損失量はともに、エンジン回転数、及びエンジン負荷から求めることができる。図7に示すように、エンジン回転数、エンジン負荷が高くなるほど、冷却損失量が大きくなる。図8に示すように、エンジン回転数が高くなるほど、排気損失量が大きくなる。ECU50は、これらのマップを参照して算出した冷却排気損失割合からエンジン出力を特定できる。ECU50は、図6の蒸気量Ve算出マップにおいて、エンジン2の出力に相当する蒸気量Veを算出する。ECU50はステップS11の処理を終えると、ステップS12へ進む。
【0040】
ECU50はステップS12において、電磁弁13が開弁状態であるか否かを判断する。ECU50は、過熱器7内の温度が過熱器制御温Th以上である場合に電磁弁13を開弁させる。過熱器制御温Thは過熱器7の蒸発部7aにおいて、液相の冷媒が排気から受熱し、蒸気化することができる温度である。従って、電磁弁13が開弁状態であるときは、過熱器7内で蒸気が発生している状態である。一方、電磁弁13が閉弁状態であるときは、蒸発部7aで有効なエネルギーを取り出すための蒸気が発生していない状態である。このため、電磁弁13の状態により、蒸気の発生量が変化し、その後の処理が変化する。ECU50はステップS12においてYESと判断する場合、すなわち、電磁弁13が開弁状態である場合、ステップS13へ進む。
【0041】
ECU50はステップS13において、冷媒が過熱器7において排気から受熱することにより発生した蒸気量Vhを算出する。蒸気量Vhは、予め作成された蒸気量Vh算出マップを用いて算出する。図9は蒸気量Vh算出マップの一例を示した説明図である。図9の縦軸は、蒸気量Vhを示し、横軸は排気熱量を示している。排気熱量は、排気温センサ55により検出されるエンジン2の排ガスの温度から導き出される。また、蒸気量Vh算出マップは、排気熱量の他に、エンジン2の回転数、負荷、気液分離器5内の液相冷媒が蒸気化する飽和蒸気温度Ts、過熱器制御温Thのいずれか1つまたはいくつかに基づいて、蒸気量Vhを算出するものであってもよい。また、蒸気量Vh算出マップは、排気熱量やここで述べた情報を総合的に参照して、蒸気量Vhを算出するものであってもよい。ECU50はステップS13において、蒸気量Vhを算出すると、ステップS15へ進む。
【0042】
一方、ECU50はステップS12においてNOと判断する場合、すなわち、電磁弁13が閉弁状態である場合、ステップS14へ進む。
【0043】
ECU50はステップS14において、冷媒が過熱器7において排気から受熱することにより発生した蒸気量Vhの値を0とする。電磁弁13が閉弁状態である場合、過熱器7内の液相冷媒が蒸気化していないため、蒸気量Vhを0とする。ECU50はステップS14の処理を終えるとステップS15へ進む。
【0044】
ECU50はステップS15において、総発生蒸気量Vtを算出する。総発生蒸気量Vtは本体20から受熱し発生した蒸気量Ve、及び過熱器7において排気から受熱して発生した蒸気量Vhを合わせたもの、すなわち、
Vt = Ve + Vh (1)
として表わされる。ECU50は総発生蒸気量Vtを算出し、ステップS15の処理を終えるとサブルーチンを終了する。
【0045】
ECU50は、蒸気発生部における総発生蒸気量Vtを算出する処理についてのサブルーチンを終えると、次にステップS3へ進む。
【0046】
ECU50はステップS3において、ステップS10のサブルーチンで算出された総発生蒸気量Vtに相当する冷媒の液量を算出し、その液量を圧送するベーン型ウォータポンプ10の駆動量を算出する。ここでは、ベーン型ウォータポンプ10の駆動量は、ポンプ回転数Rで表わすものとする。ポンプ回転数Rは、予め作成されたポンプ回転数R算出マップを用いて算出する。図10はポンプ回転数R算出マップの一例を示した説明図である。図10の縦軸は、ポンプ回転数Rを示し、横軸は総発生蒸気量Vtを示している。なお、ベーン型ウォータポンプ10の駆動量を表わすものとして、ポンプ回転数Rに限定されず、ベーン型ウォータポンプ10へ与える印加電圧を算出することにより駆動量を表わし、流量を設定することとしてもよい。また、ECU50はポンプ回転数Rで駆動する時間を算出してもよい。ECU50はステップS3でポンプ回転数を算出すると、ステップS4へ進む。
【0047】
ECU50はステップS4において、ステップS3で算出したポンプ回転数Rとなるようにベーン型ウォータポンプ10へ駆動出力を送り、ベーン型ウォータポンプ10を駆動し、総発生蒸気量Vtに相当する、算出された冷媒の液量を蒸気発生部へ供給させる。これにより、総発生蒸気量Vtに相当する液量の冷媒が蒸気発生部へ圧送される。ECU50はステップS4の処理を終えるとリターンとなる。なお、ECU50はステップS1においてNOと判断する場合、すなわち、ランキンサイクルシステム1が稼動していない場合、処理を終えてリターンとなる。
【0048】
このように、制御装置100の制御処理により、蒸気化して抜け出た分に相当する冷媒が蒸気発生部へ供給される。このため、ウォータジャケット21a、21b、気液分離器5、過熱器7における液相の冷媒量が一定に保たれる。これにより、発生する蒸気量のばらつきが抑制され、回収機4におけるエネルギーの回収が安定する。また、液相の冷媒が過多になる状態や極端に減少することが抑制されるので、本体20の暖機不良や冷却不足が防がれる。
【0049】
上記実施例は本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、これらの実施例を種々変形することは本発明の範囲内であり、さらに本発明の範囲内において、他の様々な実施例が可能であることは上記記載から自明である。
【符号の説明】
【0050】
1 ランキンサイクルシステム
2 エンジン
20 本体(蒸気発生部の一部)
3 冷媒通路
4 回収機
5 気液分離器(蒸気発生部の一部)
7 過熱器(蒸気発生部の一部)
8 凝縮器
10 ベーン型ウォータポンプ(圧送機)
13 電磁弁
15 凝縮ヘッダタンク
50 ECU(第1算出手段、第2算出手段、及び供給手段)
100 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱を付与して液相の作動流体を蒸気化する蒸気発生部と、
前記蒸気発生部において発生した蒸気から動力または電力を回収する回収機と、
前記作動流体を前記蒸気発生部へ圧送する圧送機と、
前記蒸気発生部において発生する蒸気量を算出する第1算出手段と、
前記蒸気量に相当する前記作動流体の液量を算出し、前記液量を圧送する前記圧送機の駆動量を算出する第2算出手段と、
前記第2算出手段により算出された前記駆動量で前記圧送機を駆動し、前記液量を前記蒸気発生部へ供給させる供給手段と、
を備えるランキンサイクルシステムの制御装置。
【請求項2】
前記作動流体はエンジンを冷却する冷媒であって、
前記作動流体はエンジンに設けられた流路内を循環し、
前記蒸気発生部はエンジンの廃熱を前記作動流体へ付与することを特徴とする請求項1記載のランキンサイクルシステムの制御装置。
【請求項3】
前記第1算出手段は、前記エンジンの運転状態に基づいて、発生する蒸気量を算出することを特徴とする請求項2記載のランキンサイクルシステムの制御装置。
【請求項4】
前記蒸気発生部は、
前記エンジンの運転により発生する熱を前記作動流体へ伝播するエンジン本体と、
前記エンジンの排気から得られる熱を前記作動流体へ伝播する過熱器と、
を含み、
前記第1算出手段は、前記作動流体が前記本体から受熱することにより発生した蒸気量と、前記作動流体が前記過熱器において排気から受熱することにより発生した蒸気量とを算出することを特徴とする請求項2または3記載のランキンサイクルシステムの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−172617(P2012−172617A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36350(P2011−36350)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】