説明

ランプ装置取付構造

【課題】衝突荷重が小さい場合にランプ装置の変形を抑制すると共に、衝突荷重が大きい場合に所望のエネルギ吸収性能を発揮する。
【解決手段】ランプ取付構造10は、車両骨格部材2に、ランプ装置3を取り付けるためのものであり、車両骨格部材2は、メンバ4及びエプロン6を含んで構成され、ランプ装置3は、ハウジング9を含んで構成されている。このハウジング9にはフランジ11,15及び係止部13a,16がそれぞれ設けられている。フランジ11はメンバ4の前端を構成するボデー側ブラケット20に、フランジ15はエプロン6にそれぞれ結合され、係止部13a,16は溝部14及びエプロン6の内部18にそれぞれ所定量L1移動可能にして係止される構成とされている。また、フランジ11,15の結合強度は、メンバ4,エプロン6に対する係止部13a,16の係止強度より小さく設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両骨格部材にランプ装置を取り付けるためのランプ装置取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のランプ装置取付構造として、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。このランプ装置取付構造では、ランプ装置がフロントサイドフレーム及びエプロンレインフォースメントのそれぞれにボルトで固定されて取り付けられており、これにより、衝突時において、ランプ装置が受ける衝突荷重をフロントサイドフレーム及びエプロンレインフォースメントのそれぞれに分散して伝達することが図られている。
【特許文献1】特開2005−178705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術においては、ランプ装置の取付強度が強いため、例えば低速衝突時のように衝突荷重が比較的小さい場合でも、ランプ装置が変形してしまうおそれがあり、修理コストが高価になる。一方、例えば中高速衝突時のように衝突荷重が比較的大きい場合においては、所望のエネルギ吸収性能が望まれる。
【0004】
そこで、本発明は、衝突荷重が小さい場合においてランプ装置の変形を抑制することができると共に、衝突荷重が大きい場合において所望のエネルギ吸収性能を発揮することができるランプ装置取付構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するために、本発明に係るランプ装置取付構造は、車両骨格部材にランプ装置を取り付けるためのランプ装置取付構造であって、ランプ装置を車両骨格部材に結合する結合手段と、ランプ装置を車両骨格部材に所定量移動可能にして係止する係止手段と、を備え、結合手段の結合強度は、係止手段の係止強度よりも小さく設定されていることを特徴とする。
【0006】
このランプ装置取付構造では、ランプ装置が結合手段で車両骨格部材に結合されると共に係止手段で車両骨格部材に所定量移動可能にして係止される構造であり、そして、結合強度が係止強度よりも小さく設定されている。これにより、例えば小さな衝突荷重が作用した場合、結合手段の結合が解除されてランプ装置が所定量移動されるため、ランプ装置が受ける衝突荷重を逃がしてランプ装置の変形を抑制することができる。一方、例えば大きな衝突荷重が作用した場合、所定量移動後にランプ装置が係止手段で車両骨格部材に係止されるため、ランプ装置で衝突物に対する高い衝突反力を衝突初期に発生させて衝突エネルギを吸収できると共に、車両骨格部材に衝突荷重を伝達して衝突エネルギを吸収でき、よって、所望のエネルギ吸収性能を発揮することが可能となる。
【0007】
ここで、結合強度は、車両が衝突した際において、ランプ装置の変形前に結合手段が破断するように設定されていることが好ましい。これより、例えば小さな衝突荷重が作用した場合、結合手段の結合がランプ装置の変形前に確実に解除されるため、ランプ装置の変形を一層抑制することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、衝突荷重が小さい場合においてランプ装置の変形を抑制することができると共に、衝突荷重が大きい場合において所望のエネルギ吸収性能を発揮することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、「上」「下」「前」「後」等の語は、車両の上下方向、前後方向に対応したものである。また、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
図1は本発明の一実施形態に係るランプ装置取付構造を示す概略断面図であり、図2は図1のランプ装置取付構造におけるランプハウジングを示す斜視図である。図1に示すように、ランプ取付構造10は、自動車等の車両の骨格を形成する車両骨格部材2に、ヘッドランプ装置(ランプ装置)3を取り付けるためのものである。なお、図1中において、紙面左方向を車両前方とし、車両外形を破線で示しており、図2中において、矢印A方向を車両前方とし、矢印B方向を車両側方向とし、矢印C方向を車両下方としている。
【0011】
車両骨格部材2は、フロントサイドメンバ4及びエプロンアッパメンバ6を含んで構成されている。フロントサイドメンバ4は、車体の左右の骨格を形成するもので、エンジン(不図示)を挟むようにして車幅方向両側に配置されると共に前後方向に延在している。このフロントサイドメンバ4は、その前端にクラッシュボックス5を備えている。クラッシュボックス5は、衝突時の衝突荷重を吸収するものである。このクラッシュボックス5の前端には、フロントサイドメンバ4を横架するようにバンパリインフォースメント8が設けられている。エプロンアッパメンバ6は、フロントサイドメンバ4の上方に配置されており、フェンダパネル(不図示)に沿うように前後方向に延在する共に、その前端部が下方に傾斜している。
【0012】
ヘッドランプ装置3は、車両の前面側に装着され車両の前方に光を照射する投光器であり、ランプハウジング9を含んで構成されている。ランプハウジング9は、例えば樹脂により形成され、光を照射するためのランプユニット(付図示)を収容する。
【0013】
図1及び図2に示すように、ランプハウジング9の下端部9aには、下方に向けて延在する板状の下部フランジ(結合手段)11が設けられている。この下部フランジ11は、図1に示すように、ボデー側ブラケット20にボルト12を介して結合されている。
【0014】
また、図1及び図2に示すように、ランプハウジング9の下端部9aには、側方視においてL字状を成す爪部13が設けられている。この爪部13は、下端部9aに連結され下方に突出する係止部(係止手段)13aと、係止部13aの先端に設けられ後方に突出する凸部13bとにより構成されている。一方、図1に示すように、クラッシュボックス5の上面側及びボデー側ブラケット20には、爪部13が遊嵌配置される溝部14が設けられている。溝部14は、車両の前後方向に延在しており、係止部13aと溝部14との間には、所定量の隙間L1が設定されている。
【0015】
他方、ランプハウジング9の後端部9bには、後方に突出する係止部(係止手段)16が設けられている。この係止部16は、エプロンアッパメンバ6の内部18に挿入されている。また、ランプハウジング9の後端部9bには、後方斜め上方に向けて突出する板状の後部フランジ(結合手段)15が設けられている。この後部フランジ15は、エプロンアッパメンバ6と係止部16との間に所定量の隙間L1が形成される状態で、エプロンアッパメンバ6にボルト12を介して結合されている。
【0016】
また、図1及び図2に示すように、フランジ11,15の一方の面11a,15aには、車幅方向に沿って延在するビード溝17が、所定の深さ及び幅でそれぞれ形成されている。このビード溝17を設けることにより、フランジ11,15の結合強度は、車両衝突時においてランプハウジング9の変形前にフランジ11,15が破断するように設定されている。また、フランジ11の結合強度は、爪部13が後方に移動し係止部13aが溝部14の後端に当接し係止される係止強度よりも小さく設定されると共に、係止部16が後方に移動し係止部16がエプロンアッパメンバ6に当接し係止される係止強度よりも小さく設定されている。
【0017】
なお、ビード溝17は、連続せずに断続でもよく、ビード溝でなくとも切り欠きでもよい。また、フランジ11,15の結合強度が係止部13a,16の係止強度よりも小さく設定されていれば、ビード溝17を形成しない場合もある。
【0018】
以上のように構成されたランプ取付構造10においては、上述したように、ランプハウジング9が車両骨格部材2に結合されると共に前後方向に所定量L1移動可能にして車両骨格部材2に係止される構造であり、且つ、結合強度が係止強度よりも小さく設定されているため、図3に示すように、衝突物Mとヘッドランプ装置3との衝突による衝突荷重が低速衝突時のように比較的小さい場合には、フランジ11,15が破断し、ランプハウジング9が後方へ移動し、ランプハウジング9が受ける衝突荷重を後方へ逃がして当該ランプハウジング9が変形(損傷)するのを抑制することができる。その結果、修理コストを低減することができる。
【0019】
また、上述したように、フランジ11,15の結合強度がランプハウジング9の変形前に破断するように設定されているため、衝突物Mとヘッドランプ装置3との衝突による衝突荷重が比較的小さい場合におけるヘッドランプ装置(ランプハウジング9)3の変形を一層抑制することができる。
【0020】
一方、衝突荷重が中高速衝突時のように比較的大きい場合には、フランジ11,15が破断し、係止部13a,16が所定量L1後方に移動して車両骨格部材2にそれぞれ係止される(受け止められる)。従って、ヘッドランプ装置3にて衝突物Mに対する高い衝突反力が発生して衝突物Mが変形し衝突初期に衝突エネルギを吸収できると共に、車両骨格部材2に衝突荷重を伝達して衝突エネルギを吸収でき、よって、所望のエネルギ吸収性能を発揮することが可能となる。
【0021】
また、衝突物Mが車両であってその車高が自車両よりも高い場合には、衝突物のバンパリインフォースメントが自車両のバンパリインフォースメント8よりも上方に位置することになるが、上述したように、バンパリインフォースメント8よりも上方に配置されるランプハウジング9を高剛性部位となるため、高剛性部位同士(衝突物Mのバンパリインフォースメントと自車両のヘッドランプ装置3)を互いに確実に接触させることができる。よって、十分な衝突反力を発生させることができる。
【0022】
また、上記実施形態では、上述したように、係止部13aの先端に凸部13bが設けられているため、この凸部13bにより、係止部13aが溝部14から抜け出るのを防止することができる。ちなみに、例えば係止部13aが溝部14から抜け出るおそれが少ない場合には、凸部13bはなくてもよい。
【0023】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0024】
例えば、上記実施形態は、車両の前面側に装着されるヘッドランプ装置3を車両骨格部材2に取り付けるためのものであるが、車両の後面側に装着されるリアコンビランプを車両骨格部材に取り付けるためのものであってもよい。この場合、車両後突時に衝突荷重が後方から入力された際に、上記効果と同様な効果、すなわち、衝突荷重が小さい場合においてランプ装置の変形を抑制すると共に衝突荷重が大きい場合において所望のエネルギ吸収性能を発揮するという効果を奏する。
【0025】
また、上記実施形態では、結合手段として、下部フランジ11及び後部フランジ15をそれぞれ設けたが、結合手段をこれらの何れか一方としてもよい。また、係止手段として、係止部13a,16をそれぞれ設けたが、係止手段をこれらの何れか一方としても勿論よい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係るランプ装置取付構造を示す概略断面図である。
【図2】図1のランプ装置取付構造におけるランプハウジングを示す斜視図である。
【図3】図1のランプ装置取付構造における低速衝突時を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0027】
2…車両骨格部材、3…ヘッドランプ装置(ランプ装置)、10…ランプ装置取付構造、
11…下部フランジ(結合手段)、13a,16…係止部(係止手段)、15…後部フランジ(結合手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両骨格部材にランプ装置を取り付けるためのランプ装置取付構造であって、
前記ランプ装置を前記車両骨格部材に結合する結合手段と、
前記ランプ装置を前記車両骨格部材に所定量移動可能にして係止する係止手段と、を備え、
前記結合手段の結合強度は、前記係止手段の係止強度よりも小さく設定されていることを特徴とするランプ装置取付構造。
【請求項2】
前記結合強度は、前記車両が衝突した際において、前記ランプ装置の変形前に前記結合手段が破断するように設定されていることを特徴とする請求項1記載のランプ装置取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−213518(P2008−213518A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49645(P2007−49645)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】