説明

リアノジン受容体安定化剤のスクリーニング方法

【課題】
筋肉の興奮・収縮連関異常疾患等の治療薬又は予防薬を選別するために有用なリアノジン受容体機能改善作用の評価方法等を提供する。
【解決手段】
以下の(1)〜(4)の工程を含む、被験物質のリアノジン受容体に対する結合活性を測定する方法:
(1)リアノジン受容体、被験物質、及びリアノジン受容体安定化作用を有する基準物質を接触させる工程、
(2)(1)における基準物質のリアノジン受容体への結合量を測定する工程、
(3)(2)で測定した結合量を、被験物質非存在下での基準物質のリアノジン受容体への結合量と比較する工程、及び
(4)(3)の結果に基づき、被験物質による、基準物質及びリアノジン受容体の結合阻害活性を決定する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋肉の興奮・収縮連関異常疾患、すなわち、刺激伝導異常、筋肉収縮又は弛緩機能障害を伴う疾患の治療薬又は予防薬、具体的には心肥大、心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、不整脈、心房性もしくは心室性頻脈及び細動、又は筋無力症、悪性高熱症、先天性筋障害もしくは心不全に伴う運動耐用能低下の治療薬もしくは予防薬、あるいは中枢性カルシウムハンドリング異常疾患の治療薬又は予防薬、具体的にはてんかん、躁鬱、不安、統合失調症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、脳卒中、脳梗塞、脳塞栓症、脳血管障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、緑内障、網膜症、又は黄斑変性の治療薬もしくは予防薬として有用な、リアノジン受容体機能改善剤、及び被験物質のリアノジン受容体機能改善作用の評価方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リアノジン受容体(RyR)は、小胞体(SR)からのカルシウムの放出を制御する細胞内カルシウムチャネルとして知られている。心筋の筋小胞体に多く存在するアイソフォームであるリアノジン受容体2(RyR2)は、不整脈や心不全の病態時にホスホキナーゼA(PKA)の刺激などにより過度にリン酸化されることが引き金になって、RyR2上に結合しているタンパク質:FKBP12.6が解離し、RyR2のコンフォメーションが不安定化して開口確率を増強し、心筋内のカルシウム貯蔵庫である筋小胞体からカルシウムが放出(リーク)されることが、臨床及び動物モデルで報告されている(非特許文献1〜3を参照)。最近になって、RyR2とFKBP12.6の解離がカルシウムリークに関与していることや、解離を抑制する物質:4-[3-(4-ベンジルピペリジン-1-イル)プロピオニル]-7-メトキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,4-ベンゾチアゼピン(以下、JTV-519と称する)が報告された(特許文献1〜3を参照)。JTV-519は心筋保護効果を有する1,4-ベンゾチアゼピン誘導体であり、100nM〜1μMの濃度で過リン酸化されたRyR2に対してFKBP12.6の結合を増強すること(非特許文献4を参照)、カルシウムリークが増強したSRにおいて、IC50=30nMでカルシウムリークを抑制すること(非特許文献5を参照)がわかっている。また部分ペプチドを用いたリアノジン受容体コンフォメーション変化の研究により、JTV-519はリアノジン受容体のコンフォメーションを安定化することが示唆されている(非特許文献6を参照)。一方、1,5-ベンゾチアゼピン誘導体であるカルシウム拮抗剤:ジルチアゼム(Diltiazem)は、高血圧、発作性上室性頻拍等の治療薬として知られており、JTV-519よりも高濃度(約1μM)でカルシウムリークを抑制することが報告されている(非特許文献5を参照)。
また、リアノジンはリアノジン受容体に結合することが知られているアルカロイドであるが、リアノジンはリアノジン受容体からのカルシウムリークを抑制する、すなわちリアノジン受容体の機能を改善する作用は有していない。
上記のとおり、JTV-519はRYR2とFKBPの解離を抑制し、筋小胞体からのカルシウムリークを抑制することが知られていた。また、ジルチアゼムは、筋小胞体からのカルシウムリークを抑制することが知られていた。しかしながら、JTV-519やジルチアゼムとリアノジン受容体が相互作用しているかどうかについては不明であった。
【0003】
一方、RYR2を介したカルシウムリークを抑制する薬剤のスクリーニング方法(評価方法)としては、(1)FK506やrapamycinによるRYR2からのFKBPの解離を指標にする方法、(2)ラベル化FKBPとリン酸化したRYR2または小胞体との複合体を免疫沈降や超遠心等で回収してラベル活性を測定する方法、(3)筋小胞体からのFK506によるカルシウムリークを指標にする方法等の方法が知られていた。しかしながら、これらの方法では、同時に多数の化合物を評価することができない。そこで、効率良く多数の被験化合物を評価し、ハイスループットスクリーニングに対応できる評価方法が求められていた。
一方、骨格筋の筋小胞体に多く存在するアイソフォームであるリアノジン受容体1(RyR1)は、RyR2と同様の作用メカニズムによってFKBP12が結合しており、運動耐用能に異常をきたしている骨格筋のRyR1ではFKBP12が解離している。またJTV-519はRyR1とFKBP12の結合を亢進し、運動耐用能を改善うることが明らかとなっている。また、脳や神経細胞に多く存在するアイソフォームであるリアノジン受容体3(RyR3)は、RyR1と同様、FKBP12が結合していることが知られており、RyR3の機能不全は神経細胞のカルシウム過負荷による神経細胞死を引き起こしたり、小胞体内カルシウム量低下による興奮伝達異常が引き起こされることが予想される。
【0004】
【特許文献1】特開2003−95977号公報
【特許文献2】米国特許第6489125号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0229781号明細書
【非特許文献1】S.O.Marx et al., Cell 101: 365-376 (2000)
【非特許文献2】M.Yano et al., Circulation 102: 2131-2136 (2000)
【非特許文献3】X.H.T.Wehrens et al., Cell 113: 829-840 (2003)
【非特許文献4】X.H.T.Wehrens et al., Science 304: 292-296 (2004)
【非特許文献5】M.Yano et al., Circulation 107: 477-484 (2003)
【非特許文献6】小田ら 第8回日本心不全学会学術集会抄録集 P135
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、筋肉の興奮・収縮連関異常疾患、すなわち刺激伝導異常、筋肉収縮又は弛緩機能障害を伴う疾患の治療薬又は予防薬、具体的には心肥大、心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、不整脈、心房性もしくは心室性頻脈及び細動、又は筋無力症の治療薬もしくは予防薬等として有用な、筋小胞体のリアノジン受容体機能改善剤、及び被験物質のリアノジン受容体機能改善作用の評価方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述のように、筋小胞体において、リアノジン受容体を介したカルシウムリークを抑制する物質は心不全等の治療薬又は予防薬として有効である。そこで、本発明者らは、効率良く簡便にリアノジン受容体を介したカルシウムリークを抑制する化合物をスクリーニングする方法を構築すべく、鋭意検討を行った。
すなわち、JTV-519等の、筋小胞体からのカルシウムリークに関与することが報告されている化合物がリアノジン受容体に対して結合活性を有するか否かを検討した。その結果、JTV-519は、ジルチアゼムトリチウムラベル体([3H]ジルチアゼム)及びリアノジン受容体の結合を競合的に阻害することがわかった。JTV-519による[3H]ジルチアゼムの結合阻害活性は、濃度依存的であり、定量性も優れていることがわかった。
すなわち、小胞体のカルシウムリークを抑制するJTV-519やジルチアゼムが、リアノジン受容体と直接相互作用するか否かについては不明であったが、本発明により、リアノジン受容体と前記基準物質が直接結合しており、かつ前記基準物質とリアノジン受容体の結合は、小胞体のカルシウムリークを抑制する別の化合物により拮抗されることがわかった。
本発明は上記の知見を元に、完成するに至ったものである。
【0007】
即ち本発明は、
〔1〕 以下の(1)〜(4)の工程を含む、被験物質のリアノジン受容体に対する結合活性を測定する方法:
(1)リアノジン受容体、被験物質、及びリアノジン受容体安定化作用を有する基準物質を接触させる工程、
(2)(1)における基準物質のリアノジン受容体への結合量を測定する工程、
(3)(2)で測定した結合量を、被験物質非存在下での基準物質のリアノジン受容体への結合量と比較する工程、及び
(4)(3)の結果に基づき、被験物質による、基準物質及びリアノジン受容体の結合阻害活性を決定する工程;
〔2〕 リアノジン受容体安定化作用を有する物質がジルチアゼム、4−[3−(4−ベンジルピペリジン−1−イル)プロピオニル]−7−メトキシ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−ベンゾチアゼピン又はそれらの薬学上許容される塩である、〔1〕に記載の方法;
〔3〕 リアノジン受容体が小胞体リアノジン受容体である、〔1〕又は〔2〕に記載の方法;
〔4〕 小胞体が筋小胞体である〔3〕に記載の方法;
〔5〕 被験物質の、リアノジン受容体に対する結合活性を指標とする、リアノジン受容体機能改善作用の評価方法;
〔6〕 リアノジン受容体に対する結合活性が、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の方法で測定されることを特徴とする、〔5〕に記載の評価方法;
〔7〕 更に、リアノジン受容体に結合しかつリアノジン受容体安定化作用を有さない物質とリアノジン受容体の結合を競合的に阻害しない被験物質を選択することを特徴とする、〔5〕又は〔6〕に記載の評価方法;
〔8〕 リアノジン受容体に結合しかつリアノジン受容体安定化作用を有さない物質が、リアノジンである、〔7〕に記載の評価方法。
〔9〕 〔5〕〜〔8〕のいずれかに記載の方法で評価される被験物質のリアノジン受容体機能改善作用を指標とする、筋肉の興奮・収縮連関異常疾患又は中枢性カルシウムハンドリング異常疾患の治療薬もしくは予防薬の選別方法;
〔10〕 筋肉の興奮・収縮連関異常疾患が、心肥大、心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、不整脈、心房性もしくは心室性頻脈及び細動、又は筋無力症、悪性高熱症、先天性筋障害もしくは心不全に伴う運動耐用能低下、である〔9〕に記載の選別方法;
〔11〕 中枢性カルシウムハンドリング異常疾患が、てんかん、躁鬱、不安、統合失調症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、脳卒中、脳梗塞、脳塞栓症、脳血管障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、緑内障、網膜症又は黄斑変性である、〔9〕に記載の選別方法;
〔12〕 リアノジン受容体に対する結合活性を有する物質であって、ジルチアゼムもしくは4−[3−(4−ベンジルピペリジン−1−イル)プロピオニル]−7−メトキシ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−ベンゾチアゼピンからなる基準物質及びリアノジン受容体の結合を阻害する物質を有効成分として含有する、リアノジン受容体機能改善剤;
〔13〕 リアノジン受容体に対する結合活性を有する物質が、更にリアノジン及びリアノジン受容体の結合を阻害しない物質であることを特徴とする、〔12〕に記載のリアノジン受容体機能改善剤;
〔14〕 筋肉の興奮・収縮連関異常疾患又は中枢性カルシウムハンドリング異常疾患の治療薬もしくは予防薬である、〔12〕又は〔13〕に記載のリアノジン受容体機能改善剤;
〔15〕 筋肉の興奮・収縮連関異常疾患が、心肥大、心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、不整脈、心房性もしくは心室性頻脈及び細動、又は筋無力症、悪性高熱症、先天性筋障害もしくは心不全に伴う運動耐用能低下である、〔14〕に記載のリアノジン受容体機能改善剤;
〔16〕 中枢性カルシウムハンドリング異常疾患が、てんかん、躁鬱、不安、統合失調症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、脳卒中、脳梗塞、脳塞栓症、脳血管障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、緑内障、網膜症又は黄斑変性である、〔14〕に記載のリアノジン受容体機能改善剤;
〔17〕 ジルチアゼム、4−[3−(4−ベンジルピペリジン−1−イル)プロピオニル]−7−メトキシ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−ベンゾチアゼピン又はこれらの薬学上許容される塩を有効成分として含有する、リアノジン受容体に対する結合活性測定用試薬;
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、筋肉の興奮・収縮連関異常疾患、すなわち刺激伝導異常、筋肉収縮又は弛緩機能障害を伴う疾患の治療薬又は予防薬、具体的には心肥大、心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、不整脈、心房性もしくは心室性頻脈及び細動、又は筋無力症の治療薬もしくは予防薬として有用な、筋小胞体のリアノジン受容体機能改善剤、及び被験物質のリアノジン受容体機能改善作用の評価方法等を提供することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書において、リアノジン受容体とは、1つのサブユニットが565kDaからなる非常に大きなタンパク質であり、4つのサブユニットがカルシウム遊離チャネルを形成して小胞体からのカルシウム遊離を担っている。リアノジン受容体としてリアノジン受容体1(以下、RyR1と称する)、リアノジン受容体2(以下、RyR2と称する)及びリアノジン受容体3(以下、RyR3と称する)が挙げられ、それぞれ組織特異的に発現している。
RyR1は主に骨格筋で発現しており、ヒトRyR1のアミノ酸配列又は遺伝子配列はGenbank ACCESSION No.P21817、及び F Zorzato et al., J.Biol.Chem., 265: 2244-2256 (1990)に開示されている。本明細書においてRyR1には前記ヒトRyR1のみならず、他の動物種由来のホモログが包含される。
RyR2は主に心筋で発現しており、ヒトRyR2のアミノ酸配列又は遺伝子配列はGenbank ACCESSION No.Q92736、及び REA Tunwell et al., Biochem.J., 318: 477-487 (1996)に開示されている。本明細書においてRyR2には前記ヒトRyR2のみならず、他の動物種由来のホモログが包含される。
RyR3はあらゆる細胞で発現しているが特に脳で高発現しており、ヒトRyR3のアミノ酸配列又は遺伝子配列はGenbank ACCESSION No.Q15413、及びG Marziali et al., FEBS Lett., 394: 76-82 (1996)に開示されている。本明細書においてRyR3には前記ヒトRyR3のみならず、他の動物種由来のホモログが包含される。
本発明において、リアノジン受容体は、リガンドが結合し得る立体構造をとることができる限り特に限定は無いが、好ましくは、ヒト、ウシ、ブタ、サル、マウス、ラット等の哺乳動物由来の、リアノジン受容体を発現している細胞画分で提供される。具体的には、無傷細胞、細胞ホモジネート、あるいは該ホモジネートから遠心分離等により分画される細胞画分が挙げられる。好ましくは、小胞体、又は小胞体由来の膜画分を用いることができる。
【0010】
また、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、コレステロール等の各種脂質を適当な比率、好ましくは哺乳動物細胞の細胞膜におけるそれに近い比率で混合した溶液から常法により調製される人工脂質二重膜もまた、本発明の一実施態様において好ましく使用され得る。
例えば、RyR1として好ましくは、骨格筋小胞体やRyR1発現遺伝子導入細胞を用いることができる。RyR2として好ましくは、心筋小胞体やRyR2発現遺伝子導入細胞を用いることができる。また、RyR3として好ましくは、神経細胞小胞体やRyR3発現遺伝子導入細胞を用いることができる。
【0011】
本明細書において、リアノジン受容体安定化作用を有する基準物質とは、小胞体(SR)にFK506を作用させたことによって生ずるカルシウムリークを抑制する作用(以下カルシウムリーク抑制作用と称する)、又はリアノジン受容体が形成するカルシウム遊離チャネルの開口確率の亢進を抑制する作用(以下開口確率抑制作用と称する)を有する物質を表す。カルシウムリーク抑制作用を有するとは、小胞体内に取り込ませたカルシウムの小胞体外への自然流出量の測定において、カルシウム流出を抑制することを意味する。当該カルシウムリーク抑制作用の測定方法は当業者に周知であり、T Yamamoto et al., Cardiovasc. Res. 44: 146-155 (1999)に記載された方法が挙げられる。また、開口確率抑制作用を有するとは、例えば、休止期のカルシウムイオン濃度におけるリアノジン受容体を再構成した平面脂質二重膜間の電流の測定において、リアノジン受容体不安定化により引き起こされる電流発生回数を抑制することを意味する。当該開口確率抑制作用の測定方法は当業者に周知であり、AR Marks et al., Science 281: 818-821 (1998)に記載された方法が挙げられる。
リアノジン受容体安定化作用を有する物質は、上記のカルシウムリーク抑制作用や開口確率抑制作用を有する物質であれば特に限定は無いが、好ましくは分子量500以下の化合物が挙げられる。具体的には、ジルチアゼム、JTV-519、すなわち4−[3−(4−ベンジルピペリジン−1−イル)プロピオニル]−7−メトキシ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−ベンゾチアゼピン又はこれらの薬学上許容される塩を例示することができる。ここでJTV-519とは、以下の式(1):
【0012】
【化1】

で表される化合物を示す。式(1)で表される化合物の薬学上許容される塩(例えば塩酸塩などが挙げられる)もまたJTV-519の代わりに用いることができる。
【0013】
被験物質として用いられる化合物には特に限定は無く、蛋白質、ペプチド、核酸、無機化合物、天然もしくは合成化学的に調製された有機化合物等が挙げられる。被験物質として、具体的には、アミノ酸3〜50残基、好ましくは5〜20残基のペプチドライブラリーや、当業者に公知のコンビナトリアルケミストリーの技術を用いて調製された分子量100〜2000、好ましくは200〜800の低分子有機化合物ライブラリーを挙げることができる。
【0014】
以下に、本発明の態様について、詳細に説明する。
I.リアノジン受容体結合活性の測定方法
本発明の第一の態様は、リアノジン受容体に対する結合活性の測定方法に関する。すなわち、ジルチアゼムもしくはJTV-519等のリアノジン受容体安定化作用を有する物質を基準物質として用い、当該基準物質及びリアノジン受容体の結合を、被験物質が競合阻害するか否かを調べることにより、当該被験物質のリアノジン受容体に対する結合活性を評価することができる。
本発明の「リアノジン受容体に対する結合活性の測定方法」は、以下の(1)〜(4)に記載の工程を含む。すなわち、
(1)リアノジン受容体、被験物質、及びリアノジン受容体安定化作用を有する基準物質を接触させる工程、
(2)(1)における基準物質のリアノジン受容体への結合量を測定する工程、
(3)(2)で測定した結合量を、被験物質非存在下での基準物質のリアノジン受容体への結合量と比較する工程、
(4)(3)の結果に基づき、被験物質による、基準物質及びリアノジン受容体の結合阻害活性を決定する工程。
【0015】
前記(1)において、リアノジン受容体は、RyR1、RyR2及び/又はRyR3を含む水溶液、細胞、又は当該細胞から調製した細胞画分を用いることができる。
ここで、筋肉の興奮・収縮連関異常疾患、すなわち、刺激伝導異常、筋肉収縮もしくは弛緩機能障害を伴う疾患の治療薬もしくは予防薬を選別するためには、リアノジン受容体として好ましくはRyR1又はRyR2が用いられる。前記筋肉の興奮・収縮連関異常疾患として、具体的には、心肥大、心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、不整脈、心房性もしくは心室性頻脈及び細動、又は筋無力症、悪性高熱症、先天性筋障害もしくは心不全に伴う運動耐用能低下が挙げられる。特に、心肥大、心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、不整脈、心房性もしくは心室性頻脈及び細動等の治療薬もしくは予防薬を評価する場合はRyR2を、筋無力症、悪性高熱症、先天性筋障害もしくは心不全に伴う運動耐用能低下等を評価する場合はRyR1を用いることが好ましい。
また、中枢性カルシウムハンドリング異常疾患の治療薬もしくは予防薬を選別するためには、リアノジン受容体として好ましくはRyR3が用いられる。前記中枢性カルシウムハンドリング異常疾患として、具体的には、てんかん、躁鬱、不安、統合失調症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、脳卒中、脳梗塞、脳塞栓症、脳血管障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、緑内障、網膜症又は黄斑変性が挙げられる。
前記水溶液としては、リアノジン受容体の蛋白質を含むものであればよく、例えば通常の水溶液の他、細胞溶解液あるいは免疫沈降等によるタンパク質固相担体の懸濁液なども含まれる。
また細胞としては、内在性及び外来性などの由来に関わらず、リアノジン受容体を発現している細胞を挙げることができる。
また細胞画分とは、かかる細胞に由来する各種の画分を意味するものであり、小胞体、特には小胞体膜を含む画分であれば特に限定はない。具体的には、心筋筋小胞体、又はその膜画分が挙げられる。
細胞の破砕方法としては、ポッター(Potter)型ホモジナイザーで細胞を押し潰す方法、超音波により破砕する方法等が挙げられる。小胞体を含む画分を得るには、スクロースによる密度勾配遠心法を用いることができる。
上記において、リアノジン受容体のDNAを含有する形質転換体を培養して得られる細胞、また当該細胞由来の細胞画分を用いることもできる。形質転換体を調製するために用いられる宿主細胞としては、大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞が挙げられ、好ましくはCHO細胞等が挙げられる。例えば、RYRをCHO細胞で発現させて用いることができる〔J.Biol.Chem.278.28856-(2003)〕。
リアノジン受容体は、リアノジン受容体をコードするDNAを含む発現ベクターを導入された組換え細胞から、抗リアノジン受容体抗体や、His-tag、GST-tag等を用いたアフィニティークロマトグラフィー等により精製することもできる。
【0016】
更に、小胞体膜は脂質二重膜構造を有することから、精製されたリアノジン受容体を人工脂質二重層膜中に再構成させたものを使用することができる。
人工脂質二重層膜を構成する脂質としては、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)、コレステロール(Ch)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)等が挙げられ、これら1種または2種以上を適当な比率で混合したものが好ましく使用される。
例えば、人工脂質二重層膜(プロテオリポソーム)は、PC:PI:Ch=12:12:1の混合脂質クロロホルム溶液を適当量ガラスチューブに分取し、窒素ガス蒸気でクロロホルムを蒸発させて脂質をフィルム状に乾燥させた後、適当な緩衝液を加えて懸濁、次いで超音波処理により均一に分散させ、コール酸ナトリウム等の界面活性剤を含む緩衝液をさらに加えて脂質を完全に懸濁する。ここに、精製したリアノジン受容体を、適量添加し、氷中で時々攪拌しながら20〜30分間程度インキュベートした後、適当な緩衝液に対して透析する。約100,000×gで30〜60分間遠心して沈渣を回収することにより、プロテオリポソームを調製することができる。
【0017】
上記で用いられる基準物質のリアノジン受容体への結合量は、当業者に周知の方法で測定することができる。すなわち、基準物質として、検出可能にするために標識されたジルチアゼム又はJTV-519等のリアノジン受容体安定化作用を有する物質を用いて測定することができる。具体的には、リアノジン受容体と結合していない標識化合物を含む溶液、すなわち前記(1)においてリアノジン受容体を含まない溶液中の標識化合物量を測定し、全標識化合物量との差を算出することにより、前記(2)もしくは(3)におけるリアノジン受容体に結合している標識化合物量を測定することができる。又は、リアノジン受容体を分離することによって、リアノジン受容体と結合している標識化合物の結合量を直接測定することもできる。
【0018】
また、リアノジン受容体またはリアノジン受容体を含む膜画分を用いてホモジニアスアッセイ法を実施することもできる。ホモジニアスアッセイ法としては、SPAもしくはα−スクリーン等の当業者に周知の方法を用いることができる。すなわち、リアノジン受容体またはリアノジン受容体を含む膜画分を、液体シンチラントを含む担体に固相化し、標識化合物が結合することによる担体から化学発光を検出することができる。
【0019】
標識化合物としては、例えば〔3H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などの放射性同位元素でラベル化されたリアノジン受容体安定化作用を有する物質が挙げられる。具体的には、トリチウム化されたジルチアゼム:diltiazem, cis(+) [N-methyl-3H](パーキンエルマー社)、又はメトキシ基における水素原子がトリチウム化されたJTV-519(米国特許公開公報:US2004/229781号を参照)等を例示することができる。
【0020】
以下、本発明の測定方法の手順について詳細に説明する。
前記(1)において、リアノジン受容体を含有する細胞又は細胞画分を適切な緩衝液に懸濁する。ここで緩衝液は通常pH6.5〜8.3、好ましくはpH7.0〜7.8に調製される。緩衝液として、例えば、リン酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝液等を用いることができる。また、適宜Tween20、NP-40、CHAPS、Triton X-100等の界面活性剤を添加してもよい。更に、プロテアーゼによるリアノジン受容体の分解を抑える目的でアプロチニン、ロイペプチン、PMSF等のプロテアーゼ阻害剤を添加することもできる。また、リアノジン受容体のリン酸化、脱リン酸化による影響を抑える目的で、オカダ酸、カリクリンA、フッ化ナトリウム、バナジル酸ナトリウム等を添加することもできる。
反応通常0〜50℃、好ましくは約4〜37℃で、約30分〜24時間、更に好ましくは、約1〜2時間実施する。
反応後、過剰量氷冷バッファーの添加、又はUV照射による標識化合物の共有結合化により結合反応を停止させ、フィルターろ過による非結合標識化合物の除去等の処理を行い、標識化合物の量を測定する。標識化合物が放射性同位元素で標識された化合物であれば、放射活性を液体シンチレーションカウンターまたはγ−カウンターで計測する。
【0021】
次いで、前記(3)に記載されているように、前記(2)で測定した、被験物質存在下での基準物質(標識化合物)の結合量を、被験物質非存在下での基準物質(標識化合物)のリアノジン受容体への結合量と比較する。
ここで、被験物質存在下での基準物質の結合量が、被験物質非存在下での基準物質の結合量よりも小さければ、被験物質は基準物質とリアノジン受容体の結合を競合的に阻害すると判断することができる。また、以下の数式:
【0022】
【数1】

で、被験物質の阻害活性を定量的に評価することもできる。
【0023】
II.リアノジン受容体機能改善作用の評価方法
本発明は、リアノジン受容体機能改善作用を有する4−[3−(4−ベンジルピペリジン−1−イル)プロピオニル]−7−メトキシ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−ベンゾチアゼピン(JTV-519)等の化合物が、リアノジン受容体と直接結合するという作用メカニズムを解明し、当該作用メカニズムを指標としてリアノジン受容体機能改善作用を有する物質を評価、スクリーニングすることができることを見出したことに基づく。すなわち、本発明は、被験物質の、リアノジン受容体に対する結合活性を指標とする、リアノジン受容体機能改善作用の評価方法を提供する。
被験物質のリアノジン受容体に対する結合活性は、リアノジン受容体に直接結合することが既にわかっている基準物質とリアノジン受容体の結合を、被験物質が阻害するか否かを指標として測定することができる。
すなわち、上記のIの測定方法により測定された、被験物質のリアノジン受容体結合活性に基づき、被験物質のリアノジン受容体機能改善作用を評価することができる。
具体的には、被験物質が、リアノジン受容体安定化作用を有する物質からなる基準物質とリアノジン受容体との結合を阻害する活性(結合阻害活性)を有する場合、当該被験物質はリアノジン受容体機能改善作用を有すると評価することができる。例えば、前述の阻害率が50%以上、好ましくは80%以上である被験物質を、リアノジン受容体機能改善作用を有する物質、すなわちリアノジン受容体機能改善剤の候補化合物であると判断することができる。
更に、本発明の評価方法は、リアノジン受容体に結合しかつリアノジン受容体安定化作用を有さない物質とリアノジン受容体の結合を競合的に阻害しない被験物質を選択することが好ましい。当該物質としては、リアノジンが挙げられる。
すなわち、上述と同様の方法で、基準物質のかわりにリアノジンを用いることにより、リアノジン受容体とリアノジンの結合を被験物質が阻害するか否かを調べることができる。ここで用いられるリアノジンは、トリチウム等で標識されていることが好ましい。例えば、被験物質のリアノジン受容体とリアノジンの結合阻害率が50%以下、好ましくは30%以下、更に好ましくは10%以下である被験物質を、リアノジン受容体機能改善剤の候補化合物であると判断することができる。
ここでリアノジン受容体機能改善作用としては、リアノジン受容体のコンフォメーションを安定化させる作用(リアノジン受容体安定化作用)、すなわち、リアノジン受容体による小胞体内のカルシウム濃度調節機能を正常に働かせる作用が挙げられる。リアノジン受容体のコンフォメーションを安定化させるとは、分子レベルでは、FK506結合蛋白質(FK506 binding protein)とリアノジン受容体の結合を亢進することであると考えられている。具体的にはカルシウムリークを防止する作用(カルシウムリーク抑制作用)、又はリアノジン受容体が形成するカルシウム遊離チャネルの開口確率の亢進を抑制する作用(開口確率抑制作用)が挙げられる。
ジルチアゼム又はJTV-519は、上述のリアノジン受容体機能改善作用を有する(非特許文献5を参照)。すなわち、本発明の評価方法は、被験物質が、前記基準物質と同等以上のリアノジン受容体機能改善作用を有するか否かを評価することを特徴とする。
尚、本発明の評価方法により、評価されたリアノジン受容体機能改善作用を有する物質、すなわちリアノジン機能改善剤の候補化合物のリアノジン受容体機能改善作用は、前述のカルシウムリーク抑制作用や、開口確率抑制作用を測定することによって確認することができる。
【0024】
III.治療薬又は予防薬の及びその選別方法
前述のIIの評価結果に基づき、リアノジン受容体機能が関与する各種疾患の治療薬又は予防薬を選別することができる。すなわち本発明の第三の態様は、筋肉の興奮・収縮連関異常疾患又は中枢性カルシウムハンドリング異常疾患の治療薬又は予防薬及びその選別方法を提供する。
ここで「筋肉の興奮・収縮連関異常疾患」、すなわち、刺激伝導異常、筋肉収縮もしくは弛緩機能障害を伴う疾患は、骨格筋、心筋、具体的には四肢の筋肉、左心房、左心室、右心房、右心室の収縮もしくは弛緩機能の障害を伴う疾患であれば特に限定は無い。具体的には、心肥大、心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、不整脈、心房性もしくは心室性頻脈及び細動、又は筋無力症、悪性高熱症(特定麻酔薬投与時における高熱発症)、先天性筋障害もしくは心不全に伴う運動耐用能低下等の疾患が挙げられる。
また、「中枢性カルシウムハンドリング異常疾患」としては、神経細胞における神経機能性障害、および神経細胞内カルシウム過負荷による細胞死を伴う器質障害であれば限定はない。具体的には、てんかん、躁鬱、不安、統合失調症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、脳卒中、脳梗塞、脳塞栓症、脳血管障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、緑内障、網膜症、又は黄斑変性等の疾患が挙げられる。
【0025】
本発明の選別方法で得られる治療薬又は予防薬は、そのままもしくは薬学的に許容される担体(賦形剤、増量剤、結合剤、滑沢剤などが含まれる)や慣用の添加剤などと混合して医薬組成物として調製することができる。当該医薬組成物は、調製する形態(錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤などの経口投与剤;注射剤、点滴剤、外用剤、坐剤などの非経口投与剤)等に応じて経口投与または非経口投与することができる。また投与量は、有効成分の種類、投与経路、投与対象または患者の年齢、体重、症状などによって異なり一概に規定できないが、1日投与用量として、数mg〜2g、好ましくは数十mg程度を、1日1〜数回にわけて投与することができる。
以下の実施例で本発明を具体的に詳細に説明するが、もとより本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0026】
(結合阻害作用)
イヌ心筋小胞体(sarcoplasmic reticulum以下SRとする)は左心室より単離した。diltiazem,cis(+) [N-methyl-3H](パーキンエルマー社)以下[3H]-ジルチアゼムとする)の60μg SRに対する結合親和性を検討した。すなわち、SRへ結合する [3H]-ジルチアゼムの全量、大過剰のジルチアゼムの存在下にSRへ結合する[3H]-ジルチアゼムの量をそれぞれ測定し、その差からSRへの[3H]-ジルチアゼムの特異的な結合量を算出し(図1)、図2に示すスキャッチャードプロット(縦軸に遊離標識化合物濃度に対する結合化合物濃度の割合、横軸に特異的結合量をプロットしたもの。解離定数は-1/Slope、最大結合量はX軸との交点となる)から算出した。その結果、解離定数が248 nM、最大結合量が785fmol/mg SRとなった。
また、イヌの左心室より同時に採取した心筋細胞膜(Sarcolemma以下SLとする)と同量のタンパク質中のL型カルシウムチャネル量を比較するためWestern Blotを行った結果、SLでは確かに顕著なL型カルシウムチャネルを示すバンドが検出されたもののSRではほとんど検出できなかった。しかしながらSRとSLを用いて同条件で[3H]-ジルチアゼムに対する結合を行なったところ最大結合量が同程度検出された。
また、SRから免疫沈降により単離したRYR2に対して[3H]-ジルチアゼムを結合させたところ、特異的な結合が検出された。
以上のことから、SRに対する[3H]-ジルチアゼムの結合はL型カルシウムチャネルではなく、RYR2に対する結合であることがわかった。
一方、[3H]-ジルチアゼムの筋小胞体への競合的結合抑制作用を評価した。すなわち、JTV-519及びカルシウム拮抗剤の、[3H]-ジルチアゼムの60μgイヌ心筋小胞体に対する結合阻害を測定した。結果を表1に示した。
その結果、JTV-519及びジルチアゼムの阻害定数(Ki)はそれぞれ850nM及び910nMとなった。一方、ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗剤であるニフェジピンは[3H]-ジルチアゼムに対して結合阻害活性を示さなかった。
以上のことから、競合アッセイによりジルチアゼムおよびJTV-519と同様のリアノジン受容体安定化作用を有する化合物を見出すことができる。
【0027】
【表1】

表1の結果より、ジルチアゼム及びJTV-519はリアノジン受容体に対する結合活性を有することが確認された。一方、ジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗剤であるニフェジピンは、リアノジン結合活性を示さなかった。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のリアノジン受容体機能改善剤は、筋肉の興奮・収縮連関異常疾患、すなわち、刺激伝導異常、筋肉収縮又は弛緩機能障害関連疾患の治療薬又は予防薬、具体的には心肥大、心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、不整脈、心房性もしくは心室性頻脈及び細動、又は筋無力症の治療薬もしくは予防薬として有用である。本発明のリアノジン受容体機能改善作用の評価方法等は筋肉の興奮・収縮連関異常疾患、或いは、筋肉収縮又は弛緩機能障害関連疾患の治療薬又は予防薬のスクリーニングに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】リガンド、すなわちdiltiazem, cis(+) [N-methyl-3H](パーキンエルマー社)とイヌ心筋筋小胞体の結合を種々のリガンド濃度で調べた結果を示す。□(全結合)は、筋小胞体への全結合を、●(非特異的結合)は筋小胞体への非特異的な結合を、△(特異的結合)は特異的な結合を示す。(全結合)はRIとSRの反応、(非特異的結合)は過剰量(100μM)非標識ジルチアゼム存在下での反応でのカウントを測定し、[3H]-ジルチアゼムの比活性からmol数を算出し、SR添加量で割った値を縦軸としている。(特異的結合)は(全結合)−(非特異的結合)により算出したものを表す。
【図2】図1のグラフの特異的結合をスキャッチャードプロットで表したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(1)〜(4)の工程を含む、被験物質のリアノジン受容体に対する結合活性を測定する方法:
(1)リアノジン受容体、被験物質、及びリアノジン受容体安定化作用を有する基準物質を接触させる工程、
(2)(1)における基準物質のリアノジン受容体への結合量を測定する工程、
(3)(2)で測定した結合量を、被験物質非存在下での基準物質のリアノジン受容体への結合量と比較する工程、及び
(4)(3)の結果に基づき、被験物質による、基準物質及びリアノジン受容体の結合阻害活性を決定する工程。
【請求項2】
リアノジン受容体安定化作用を有する物質がジルチアゼム、4−[3−(4−ベンジルピペリジン−1−イル)プロピオニル]−7−メトキシ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−ベンゾチアゼピン又はそれらの薬学上許容される塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リアノジン受容体が小胞体リアノジン受容体である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
小胞体が筋小胞体である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
被験物質の、リアノジン受容体に対する結合活性を指標とする、リアノジン受容体機能改善作用の評価方法。
【請求項6】
リアノジン受容体に対する結合活性が、請求項1〜4のいずれかに記載の方法で測定されることを特徴とする、請求項5に記載の評価方法。
【請求項7】
更に、リアノジン受容体に結合しかつリアノジン受容体安定化作用を有さない物質とリアノジン受容体の結合を競合的に阻害しない被験物質を選択することを特徴とする、請求項5又は6に記載の評価方法。
【請求項8】
リアノジン受容体に結合しかつリアノジン受容体安定化作用を有さない物質が、リアノジンである、請求項7に記載の評価方法。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれかに記載の方法で評価される被験物質のリアノジン受容体機能改善作用を指標とする、筋肉の興奮・収縮連関異常疾患又は中枢性カルシウムハンドリング異常疾患の治療薬もしくは予防薬の選別方法。
【請求項10】
筋肉の興奮・収縮連関異常疾患が、心肥大、心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、不整脈、心房性もしくは心室性頻脈及び細動、又は筋無力症、悪性高熱症、先天性筋障害もしくは心不全に伴う運動耐用能低下、である請求項9に記載の選別方法。
【請求項11】
中枢性カルシウムハンドリング異常疾患が、てんかん、躁鬱、不安、統合失調症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、脳卒中、脳梗塞、脳塞栓症、脳血管障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、緑内障、網膜症又は黄斑変性である、請求項9に記載の選別方法。
【請求項12】
リアノジン受容体に対する結合活性を有する物質であって、ジルチアゼムもしくは4−[3−(4−ベンジルピペリジン−1−イル)プロピオニル]−7−メトキシ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−ベンゾチアゼピンからなる基準物質及びリアノジン受容体の結合を阻害する物質を有効成分として含有する、リアノジン受容体機能改善剤。
【請求項13】
リアノジン受容体に対する結合活性を有する物質が、更にリアノジン及びリアノジン受容体の結合を阻害しない物質であることを特徴とする、請求項12に記載のリアノジン受容体機能改善剤。
【請求項14】
筋肉の興奮・収縮連関異常疾患又は中枢性カルシウムハンドリング異常疾患の治療薬もしくは予防薬である、請求項12又は13に記載のリアノジン受容体機能改善剤。
【請求項15】
筋肉の興奮・収縮連関異常疾患が、心肥大、心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、不整脈、心房性もしくは心室性頻脈及び細動、又は筋無力症、悪性高熱症、先天性筋障害もしくは心不全に伴う運動耐用能低下である、請求項14に記載のリアノジン受容体機能改善剤。
【請求項16】
中枢性カルシウムハンドリング異常疾患が、てんかん、躁鬱、不安、統合失調症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、脳卒中、脳梗塞、脳塞栓症、脳血管障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、緑内障、網膜症又は黄斑変性である、請求項14に記載のリアノジン受容体機能改善剤。
【請求項17】
ジルチアゼム、4−[3−(4−ベンジルピペリジン−1−イル)プロピオニル]−7−メトキシ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−ベンゾチアゼピン又はこれらの薬学上許容される塩を有効成分として含有する、リアノジン受容体に対する結合活性測定用試薬。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−24705(P2007−24705A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−208111(P2005−208111)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】