説明

リオトロピック液晶およびベシクル

シリコーン系液晶またはベシクルが、まず、(A)三Si−H含有ポリシロキサン;および、(B)モノ−アルケニルポリエーテルを、白金触媒の存在下、ポリエーテル基を有する三Si−H含有ポリシロキサン(C)が形成されるまで反応させる。ポリエーテル基を有する三Si−H含有ポリシロキサン(C)を、ついで、(D)不飽和炭化水素、たとえば、α,ω−ジエン;および、(E)水を、白金触媒の存在下、シリコーン系液晶またはベシクルが形成されるまで反応させる。シリコーン系液晶またはベシクルはまた、硬質な液晶ゲルまたはベシクルペーストが形成されるまで、加熱することも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リオトロピック液晶およびベシクルに関する。
関連出願の相互参照:
関連出願の相互参照はない。
【背景技術】
【0002】
シリコーンポリエーテルは一般的には界面活性剤として使用されている。界面活性剤は、界面で吸収して、表面および界面張力を下げるため、有用である。界面活性剤はまた、水中で自己会合して、球状、ひも状、およびディスク状ミセルからベシクル等の二層構造体までの範囲の種々の凝集体を形成する。凝集体間の引力相互作用によって、たとえば液晶相またはいわゆるリオトロピック液晶に凝縮可能である。従って、界面活性剤の自己会合の知識は重要である。なぜならば、剤形のレオロジーおよび凍結融解安定性、および、エマルジョンおよびミクロエマルジョンを形成して安定化する特性をコントロールするからである。このようなミクロ構造体の安定性は、しかしながら、温度、水分量、塩、および他の界面活性剤の存在に依存するものである。本発明による架橋によって、上記依存性は解消される。
【0003】
US 5,811,487(1998年9月22日)(以後、’487特許と称する)により製造されるような典型的なシリコーンエラストマーブレンドは、結果として、液晶またはベシクルなどの秩序ミクロ構造体を形成しないであろう。’487特許による方法は、’487特許の架橋工程2が溶媒の存在下に行われているため、結果として液晶およびベシクルを形成しないであろう。これは、結果として、液晶および/またはベシクルの代わりに架橋エラストマーを本質的に製造することになる。これに対して、本発明による方法は、架橋エラストマーを結果として製造するものではないであろう。なぜならば、架橋工程2は、’487特許の溶媒の存在の代わりに、水の存在下で行われるからである。
【特許文献1】US 5,811,487
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、シリコーン系液晶またはベシクルの製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記方法は、本質的には二工程で行われる。第1工程は、
(A)(i)式:RSiO(R’SiO)(R’’HSiO)SiR、(ii)式:HRSiO(R’SiO)SiRH、または(iii)式:HRSiO(R’SiO)(R’’HSiO)SiRH、(上記式中、R、R’、およびR’’は、1ないし6の炭素原子を有するアルキル基であり;aは0から250であり;bは1から50であり;および、cは0から250である)の三Si−H含有ポリシロキサン;および、
(B)式:CH=CH(CHO(CHCHO)[CHCH(CH)O]R(式中、Rは水素または1から10の炭素原子を有するアルキル基を示し;xは1から6であり;yは0であるかまたは4から100の値を有し;zは0であるかまたは4から100の値を有し;ただし、yまたはzはともに0ではない)のモノ−アルケニルポリエーテルを、白金触媒の存在下、ポリエーテル基を有する三Si−H含有ポリシロキサンが形成されるまで反応させることを含む。
【0006】
第2工程は、
(C)ポリエーテル基を有する三Si−H含有ポリシロキサン;
(D)式:CH=CH(CHCH=CH(式中、xは1から20である)を有するα,ω−ジエン;式:CH三C(CHC三CH(式中、xは1から20である)のα,ω−ジイン;および式:CH=CH(CHC三CH(式中、xは1から20である)を有するα,ω−エン−インからなる群から選択される不飽和炭化水素;および、
(E)水を、白金触媒の存在下、シリコーン系液晶またはベシクルが形成されるまで反応させることを含む。
【0007】
前記第2工程は、硬質な液晶ゲルまたはベシクルペーストが形成されるまで、シリコーン系液晶またはベシクルを加熱する、工程(F)を含有可能である。(A)、(B)、および白金触媒を反応させる第1工程中、溶媒または緩衝液が存在してもよいが、溶媒および緩衝液ともに、(C)、(D)、(E)、および白金触媒を反応させる第2工程前に除去される。第2工程にはまた、界面活性を有するいかなる他の成分も存在しない。本発明のこれらの特徴および他の特徴は、詳細な説明を考慮することにより、明白になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明による方法は、以下に示す反応シナリオを参照して例解可能である。
工程1:ポリエーテルの組み入れ
三SiHシロキサン + モノ−アルケニルポリエーテル + Pt ―> ポリエーテル基を有する三SiHシロキサン
工程2:架橋
ポリエーテル基を有する三SiHシロキサン + α,ω−ジエン + 水 + Pt ―> 液晶またはベシクル
工程3:任意加熱
液晶またはベシクル + 熱 ―> 硬質液晶ゲルまたはベシクルペースト
【0009】
工程1では、三SiHシロキサン中の三SiHに対するポリエーテルのモル比が、0より大きく、1より小さくあるべきである。工程2では、水の、α,ω−ジエンおよびポリエーテル基を有する三SiHシロキサン中の三SiHの重量に対する重量比が、1から98であることが可能であり、好ましくは、3から10である。任意工程3では、液晶またはベシクル溶液は、約3時間、約80℃の温度で加熱可能であり、液晶の硬質ゲル形態およびベシクルのペースト形態が得られる。
【0010】
上記のように、本発明による方法の1つの優位点は、本発明による方法の工程2における架橋によって、他の界面活性剤の存在への依存性を除去することが可能である。したがって、三SiHシロキサンの、ポリエーテル基、α,ω−ジエン、水、および白金触媒との反応には、界面活性を有する如何なる他の成分も存在しないものである。
【0011】
三Si−H含有ポリシロキサン
三Si−H含有ポリシロキサンは、式:RSiO(R’SiO)(R’’HSiO)SiRの化合物、式:HRSiO(R’SiO)SiRHの化合物、または式:HRSiO(R’SiO)(R’’HSiO)SiRHの化合物を含有可能な組成物である。上記3つの式中、R、R’、およびR’’は、1ないし6の炭素原子を有するアルキル基であり;aは0から250であり;bは1から50であり;および、cは0から250である。三Si−H含有ポリシロキサンはまた、一般的に式:(R’SiO)(R’’HSiO)(式中、R’、R’’、aおよびbは上記で定義したものである)で表されるアルキルハイドロジェン−ジアルキルシクロシロキサンコポリマーまたはアルキルハイドロジェンシクロシロキサンを含有可能である。好ましくは、aは0から7であり、bは3から10である。いくつかの代表的な化合物は、(OSiMeH)、(OSiMeH)(OSiMeC13)、(OSiMeH)(OSiMeC13、および、(OSiMeH)(OSiMeC13(式中、Meは−CHである)である。これらの組成物は、ミシガン、ミッドランド、ダウコーニングコーポレーション等の化学サプライヤーから商業的に入手可能である。
【0012】
モノ−アルケニルポリエーテル
モノ−アルケニルポリエーテルは、当該技術分野では、同意語としてポリオール、ポリグリコール、およびポリアルキレングリコールとしばしば称されるが、本発明により好ましくは使用されるポリエーテルは、ヒドロキシ及び/またはアルコキシ末端ポリエーテル組成物であり、一般的には式:CH=CH(CHO(CHCHO)[CHCH(CH)O]R(式中、Rは水素または1から10の炭素原子を有するアルキル基を示し;xは1から6であり;yは0であるかまたは4から100の値を有し;zは0であるかまたは4から100の値を有し;ただし、yまたはzはともに0ではない)を有するものである。1から10の炭素原子を有するアルキル基が好ましいが、約20の炭素原子までを含有する、より大きいアルキル基も使用してもよい。ここで使用に適した組成物は、一般的には、約200から2500の重量平均分子量(Mw)を有するものであり、より好ましくは約300から800である。前記組成物は、オキシエチレン基のみ、オキシプロピレン基のみ、またはオキシエチレンおよびオキシプロピレン基を含有してもよい。これらの組成物は、ミシガン、ミッドランド、ダウコーニングコーポレーションおよびノースカロライナ、シャーロット、クラリアントコーポレーション等の化学サプライヤーから商業的に入手可能である。
【0013】
架橋剤
架橋剤は、不飽和炭化水素、たとえば、式:CH=CH(CHCH=CH(式中、xは1から20である)を有するα,ω−ジエンであることが可能である。ここで使用される適当なα,ω−ジエンとしては、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ペプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、1,11−ドデカジエン、1,13−テトラデカジエン、および1,19−エイコサジエンが挙げられる。他の不飽和炭化水素、たとえば、式:CH三C(CHC三CH(式中、xは1から20である)のα,ω−ジイン、または、式:CH=CH(CHC三CH(式中、xは1から20である)を有するα,ω−エン−インがまた、使用可能である。ここで使用するのに適したα,ω−ジインとしては、1,3−ブタジインHC三C−C三CH、および1,5−ヘキサジインHC三C−CHCH−C三CHが挙げられる。ここで使用するのに適したα,ω−エン−インとしては、ヘキサ−5−エン−1−インCH=CHCHCHC三CHが挙げられる。
【0014】
触媒
ここで使用可能な触媒は、VIII族遷移金属、すなわち、貴金属である。このような貴金属触媒は公知であり、たとえば、ここに参照して組み入れられる米国特許3,923,705(1975年2月2日)に記載されており、白金触媒が示されている。ある好ましい白金触媒は、カールシュテット(Karstedt)触媒であり、これは、ここに参照して組み入れられる、米国特許3,715,334(1973年2月6日)および3,814,730(1974年6月4日)に記載されている。特にカールシュテット触媒は、約1重量%の白金を典型的には含有し、ポリジメチルシロキサン流体または溶媒、たとえばトルエン中に担持された、白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体である。他の好ましい白金触媒は、塩化白金酸と、末端脂肪族不飽和を有する有機シリコン化合物との反応生成物である。これは、ここにさらに参照して組み入れられる米国特許3,419,593(1968年12月31日)に記載されている。これらの貴金属触媒は、100重量部の三SiH含有ポリシロキサンあたり、0.00001から0.5重量部、好ましくは、0.00001から0.02重量部、さらに好ましくは0.00001から0.002重量部の量で使用される。
【0015】

水は、工程2において、溶媒の代わりに使用される。工程2で使用される水の量は、一般的には、反応で使用した成分の全重量に基づいて、65から98重量%の範囲であることが可能であり、好ましくは、約80から98重量%である。
【0016】
工程1の他の成分
反応を増進させるシリコーンポリエーテルを調製するための工程1において、ヒドロシリル化反応に、他の成分を添加することができる。たとえば、溶媒が使用可能であり、好ましくは、有機化合物、たとえばアルコールや芳香族炭化水素などを使用可能である。代表的なアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロパノール(IPA)、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、2−オクタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびグリセロールが挙げられる。代表的な芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、およびキシレンが挙げられる。工程1で使用される溶媒の量は、ヒドロシリル化反応における成分の全重量に対して、1から50重量%であるが、典型的には、前記量は、20から50重量%である。工程1において含有可能なもう1つの成分は、塩、たとえば、酢酸ナトリウムであり、これは、白金系触媒と組み合わせて使用すると、緩衝効果を有するものである。
【0017】
これに関して、工程1のようなヒドロシリル化反応では、典型的には、反応中、モノ−アルケニルポリエーテルと三Si−H含有ポリシロキサンを相溶させるために、IPAなどの溶媒を使用する。溶媒はまた、反応混合物の粘度を下げることを援助するものである。溶媒を使用する副次的な作用は、溶媒が、反応からの発熱をコントロールすることを助けるシートシンクとして作用する。これは一般的には、ヒドロシリル化反応では、共通していることである。
【0018】
酢酸ナトリウム等の塩はまた、ヒドロシリル化反応中に起こる可能性のある逆付加を遅らせるために、工程1における緩衝剤として添加可能である。たとえば、所望の生成物がポリシロキサンの三Si−H基とモノ−アルケニルポリエーテルの不飽和末端基との反応によって得られる一方、三Si−H基は、ポリエーテルの片側の末端基と反応する可能性がある。いくつかの三Si−H基が、たとえばポリエーテルの−OH基と反応する場合、逆付加が起こる。逆付加は結果として、所望する三Si−C直接結合よりもむしろ、加水分解に不安定な三Si−O−C結合を形成する。酢酸ナトリウム等の塩は、逆付加が起こる傾向を減少させる。
【0019】
前記したように、シリコーンポリエーテルを調製する際、工程1のヒドロシリル化反応に、溶媒および塩等の他の成分を添加することが可能であるが、これらは、本発明による液晶および/またはベシクルを調製する場合の、工程2では使用しない。本発明による方法では、シリコーンポリエーテルとα,ω−ジエンとの架橋反応が溶媒の存在下よりもむしろ水の存在下において行われる。
【実施例】
【0020】
以下の実施例によって、本発明をより詳細に例解する。
【0021】
実施例A:シリコーンポリエーテルを形成する一般方法
本方法では、まず、3首丸底フラスコに、三Si−H含有ポリシロキサン、フラスコの内容量の0.50重量%の酢酸ナトリウム、フラスコの内容量の10重量%のイソプロピルアルコール(IPA)を入れることからはじめる。この溶液を、酢酸ナトリウムが溶解するように軽く撹拌しながら、窒素雰囲気下、10分間混合する。この間、モノ−アルケニルポリエーテルを滴下ろうとに添加する。フラスコの内容物をより高い回転速度で、さらに10分間撹拌し、90℃の設定点で加熱を始める。滴下ろうと中のモノ−アルケニルポリエーテルを、フラスコの内容量の10重量%の量で、フラスコに入れる。フラスコは加熱し続け、温度を50と60℃の間に上げる。フラスコ内容物を10分間撹拌し、温度を約75℃に上げる。白金触媒、すなわち、IPA中の塩化白金酸からなる白金触媒を、フラスコに添加する。
【0022】
即座に、滴下ろうと中の残りのモノ−アルケニルポリエーテルをゆっくりフラスコに滴下する。モノ−アルケニルポリエーテルの添加を20から30分間続けるか、または、反応が起こったことを示す、混合物が透明になるまで続ける。もし、混合物がにごったままであったら、モノ−アルケニルポリエーテルのゆっくりした添加を1時間維持する。いずれの場合も、反応混合物が透明になった時、モノ−アルケニルポリエーテルの添加は、反応混合物への早い滴下に滴下速度を増大可能である。同時に、フラスコ中に小さな渦巻きができるまで撹拌を増大するべきである。モノ−アルケニルポリエーテルが完全にフラスコに添加されたら、フラスコ内容物をさらに2時間混合する。この間、フラスコ中の形成したシリコーンポリエーテルの三Si−H含有量を、生成物から完全に消去したことを確かめるために、または、残りの三Si−H含有量がある目標値となったことを確かめるために、モニターする。そのほか、熱の適用をやめ、フラスコの内容物が冷却するまで軽く撹拌する。IPA溶媒を、真空下、内容物を揮散することにより、フラスコから除去する。揮散は、約90℃の温度で、高撹拌速度で約2時間、行われる。内容物が揮散した後、内容物を軽く撹拌し、冷却する。ついで、フラスコの内容物を、セライト545フィルターパウダーを用いて、10ミクロンろ紙に通して濾過することにより、酢酸ナトリウムを除去する。内容物を必要な限り、25psiの圧力下、濾過する。
【0023】
実施例1:ジメチルメチルハイドロジェンポリシロキサンと、メトキシ末端ポリエーテルとの反応
反応容器に、250グラムのジメチルメチルハイドロジェンポリシロキサンを入れた。40グラムのイソプロピルアルコール(IPA)、0.20グラムの酢酸ナトリウム、および全重量の10%(150グラム)のメトキシ末端ポリエーテルを添加した。混合物をメカニカルスターラーで10から15分間撹拌した。混合中、前記溶液を約85℃に加熱し、ついで、IPA中の塩化白金酸溶液で触媒した。メトキシ末端ポリエーテルの残りを、ある期間にわたって添加した。得られた混合物をついで約90℃で7時間撹拌した。得られた流体は透明であり、薄い金色であった。較正フーリエ変換赤外分光(FTIR)に基づいて、残余SiHが、2.37モルと計算された。IPA溶媒の全てを除去するために、前記物質を真空揮散し、次いで、酢酸ナトリウムを除去するために濾過した。
【0024】
実施例2:ジメチルメチルハイドロジェンポリシロキサンと、ヒドロキシ末端ポリエーテルとの反応
反応容器に、250グラムのジメチルメチルハイドロジェンポリシロキサンを入れた。40グラムのイソプロピルアルコール(IPA)、0.20グラムの酢酸ナトリウム、および全重量の10%(150グラム)のヒドロキシ末端ポリエーテルを添加した。混合物をメカニカルスターラーで10から15分間撹拌した。混合中、前記溶液を約85℃に加熱し、ついで、IPA中の塩化白金酸溶液で触媒した。ヒドロキシ末端ポリエーテルの残りを、ある期間にわたって添加した。得られた混合物をついで約90℃で7時間撹拌した。得られた流体は透明であり、薄い金色であった。較正フーリエ変換赤外分光(FTIR)に基づいて、残余SiHが、2.09モルと計算された。IPA溶媒の全てを除去するために、前記物質を真空揮散し、次いで、酢酸ナトリウムを除去するために濾過した。
【0025】
実施例3:液晶
バイアルに、4.94グラムの実施例1で調製した物質、0.07グラムの1,5−ヘキサジエン、1.01グラムの水、および0.04グラムの実施例1で使用した白金触媒を秤量した。前記バイアルを、混合物が透明かつ均一になるまで、2,3分間、ボルテックスミキサー上に置いた。前記混合物を80℃のオーブンに3時間入れた。透明で硬質な液晶ゲルが形成される。偏光光学顕微鏡法により、加熱前の溶液と、加熱後の透明な硬質液晶ゲルの双方とも、液晶であることが確認された。
【0026】
実施例4:ベシクル
バイアルに、6.09グラムの実施例1で調製した物質、0.09グラムの1,5−ヘキサジエン、12.70グラムの水、および0.03グラムの実施例1で使用した白金触媒を秤量した。前記バイアルを、2,3分間、ボルテックスミキサー上に置いた。次いで、8.13グラムの前記混合物と8.24グラムの水をバイアルに入れた。前記バイアルを再度、2,3分間、ボルテックスミキサー上に置いた。バイアルを次いで80℃のオーブンに3時間入れた。白色ペーストが形成され、残りの水と分離した。バイアルを手で振動させた後、白色ペーストを水中に再分散させた。透過電子顕微鏡(TEM)像から、白色ペースト分散物中にベシクルが存在することが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0027】
使用
ここで調製した液晶またはベシクルは、多くの用途を有する。たとえば、これらは、(i)薬理学的および化粧品用途における多くの活性成分用デリバリー媒体として、(ii)鋳型ナノ構造物質への前駆体として、(iii)可変フォーカスレンズ用途などに使用されるサーモトロピック液晶の領域に、(iv)ポリマー分散液晶(PDLC)として、(v)圧電用途に、(vi)非線形光学用途に、(vii)センサー技術に、(viii)プラント、マイクロチップ、フェルメンター、およびバイオリアクター等の制御化学環境における標的放出に、および、(ix)機械的手段による複屈折の光学軸操作に、使用可能である。
【0028】
ここに開示した化合物、組成物、および方法において、本発明の本質的な特徴から逸脱しない限り、他の変形を行うことが可能である。特にここに開示した本発明の実施態様は、単なる例であって、本願クレームに規定したような範囲を何等限定するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン系液晶またはベシクルの製造方法であって、
(A)(i)式:RSiO(R’SiO)(R’’HSiO)SiR、(ii)式:HRSiO(R’SiO)SiRH、または(iii)式:HRSiO(R’SiO)(R’’HSiO)SiRH、(上記式中、R、R’、およびR’’は、1ないし6の炭素原子を有するアルキル基であり;aは0から250であり;bは1から50であり;および、cは0から250である)の三Si−H含有ポリシロキサン;および、
(B)式:CH=CH(CHO(CHCHO)[CHCH(CH)O]R(式中、Rは水素または1から10の炭素原子を有するアルキル基を示し;xは1から6であり;yは0であるかまたは4から100の値を有し;zは0であるかまたは4から100の値を有し;ただし、yまたはzはともに0ではない)のモノ−アルケニルポリエーテルを、白金触媒の存在下、ポリエーテル基を有する三Si−H含有ポリシロキサンが形成されるまで反応させ;
次いで、
(C)ポリエーテル基を有する三Si−H含有ポリシロキサン;
(D)式:CH=CH(CHCH=CH(式中、xは1から20である)を有するα,ω−ジエン;式:CH三C(CHC三CH(式中、xは1から20である)のα,ω−ジイン;および式:CH=CH(CHC三CH(式中、xは1から20である)を有するα,ω−エン−インからなる群から選択される不飽和炭化水素;および、
(E)水を、白金触媒の存在下、シリコーン系液晶またはベシクルが形成されるまで反応させることを含む、方法。
【請求項2】
硬質な液晶ゲルまたはベシクルペーストが形成されるまで、シリコーン系液晶またはベシクルを加熱する、さらなる工程(F)を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(A)、(B)、および白金触媒の反応中、任意に溶媒が存在し、(C)、(D)、(E)、および白金触媒の反応前に、溶媒は除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(A)、(B)、および白金触媒の反応中、任意に緩衝液が存在し、(C)、(D)、(E)、および白金触媒の反応前に、緩衝液は除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
(C)、(D)、(E)、および白金触媒の反応には、界面活性を有する他の成分は存在しな、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
モノ−アルケニルポリエーテルの、三SiHシロキサン中の三SiHに対するモル比が、0より大きく、1より小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
水の、α,ω−ジエンおよびポリエーテル基を有する三SiHシロキサン中の三SiHの重量に対する重量比が、1から98である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
水の、α,ω−ジエンおよびポリエーテル基を有する三SiHシロキサン中の三SiHの重量に対する重量比が、3から10である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法により製造したシリコーン系液晶またはベシクル。

【公表番号】特表2009−504876(P2009−504876A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526953(P2008−526953)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/029194
【国際公開番号】WO2007/021486
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】