説明

リズム認証装置

【課題】多数のキーを用いることなく、またキーの押し間違いを懸念することなく、電子デバイスでのユーザの個人認証を可能にする。
【解決手段】情報処理装置のキーボードやタッチパネルから特定のリズムパターンを入力して、これをあらかじめ記憶装置に記憶された規定パターンと比較し、一致または類似パターンと判定されたときに当該ユーザの認証を成立させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置による認証を入力されるリズムパターンで行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータやPDA(Personal Data Assistant)等の個人認証技術としては、特開平10−283321号(特許文献1)が知られている。
【0003】
この個人認証技術は、キーボードのキー群を構成する各キーにランダムに音程が割り振っておき、ユーザは所望のメロディに対応するようにパスワードを決めておき、パスワードをメロディに合せて暗記しておくものであった。そしてユーザがパスワードをキー入力すると、それに対応するメロディがスピーカから出力される。ユーザは、そのメロディを聞いてキー入力が正しかったか否か判断する。このとき、キー群には同じ音程を割り振られたキーが複数存在し、それにより、他人はメロディだけを聴いてもパスワードを盗用できない点が特徴である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−283321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示された認証方式では、認証操作を行う際に、キーボード上で音程毎のキーを正確に押さなければならず、メロディの入力という第三者に聴取され易い操作を行う必要があった。この点について、特許文献1では、キー群に同じ音程を割り振ったキーを複数用意しているとのことであるが、とはいっても汎用のパーソナルコンピュータにおけるキーの数は限られているため、当該メロティーを聴取した第三者がなりすまして、聴取したメロディが割り当てられたキーを打鍵して認証解除を試みた場合、複数回の試行を繰り返すうちに認証が成功し解除されてしまう可能性もあった。本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、多数のキーを用いることなく、またキーの押し間違いを懸念することなく、ユーザの個人認証が可能な技術を実現することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明では、以下の手段を採用した。
【0007】
本発明の請求項1は、入力部を備えた情報処理装置からなる検索装置において、前記入力部への押圧状態または離反状態を検出する検出部と、前記検出部での単位クロック時間における押圧状態と離反状態との繰り返しパターンを、あらかじめ記憶装置に記憶された規定パターンと比較するパターンマッチング部と、前記パターンマッチング部において一致または類似パターンと判定されたときに当該ユーザの認証を成立させるリズム認証装置である。
【0008】
これによれば、メロディ入力のような複数のキーを押すことなく、場合によっては単一のキーまたはタッチ面からなる入力部への押圧・離反動作のみで認証が可能となる。
【0009】
本発明の請求項2は、前記に加えてインジケータ表示部とこのインジケータ表示部を制御する表示制御部とを有しており、表示制御部は、前記インジケータ表示部に対して、前
記単位クロック時間と、その単位クロック時間における押圧時間と離反時間との長さを可視的に表示することを特徴とする請求項1記載のリズム認証装置である。
【0010】
これによれば、ユーザはインジケータ表示部を参照しながら入力部からリズムパターンを入力することができるため、パターンの入力ミスを防止してパターンの入力精度を高めることができる。
【0011】
本発明の請求項3は、前記インジケータ表示部は、押圧時間と離反時間とを経時的に伸張表示するとともに、押圧時間または離反時間の終了とともに前記伸張表示を動的にリセットする第1の表示部と、一次元方向に配列された複数のセル領域に、押圧状態か離反状態かを示す着色状態を経時的に累積表示していく第2の表示部とからなる請求項2記載のリズム認証装置である。
【0012】
これによれば、第1の表示部により押圧状態と離反状態との切り換えタイミングを可視的に認識でき、第2の表示部により入力されたパターンを可視的に認識できるため、パターンの入力ミスをより一層防止してパターンの入力精度を高めることができる。
【0013】
本発明の請求項4は、前記第1の表示部は、単位クロック時間を等間隔に分割するとともに、押圧状態と離反状態との切り換えの目安となる分割目盛線を有しており、前記検出部は当該分割目盛線の前後の所定範囲内で押圧状態と離反状態との切り換えを検出したときには、当該切り換えは分割目盛線が設定された時間でなされたものと補正することを特徴とする請求項3記載のリズム認識パターン検索装置である。
【0014】
これによれば、リズムパターンの入力の際に、不慣れに起因して押圧状態と離反状態との切り換えに多少のタイミングのずれがあった場合でも、正確なリズムパターンの入力が可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、パーソナルコンピュータやPDA等のロック状態を解除するための個人認証に際して、ユーザにとって多数のキーを押す煩わしさや、キーの押し間違いを懸念させることなく、ユーザの個人認証が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態である情報処理装置のシステム構成を外観図
【図2】実施形態の情報処理装置の内部構成図
【図3】実施形態を説明するためのインジケータ表示部の説明図
【図4】実施形態の処理手順を示す図(1)
【図5】実施形態の処理手順を示す図(2)
【図6】実施形態の規定パターン情報を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の最良の実施形態を図面を用いて説明する。
【0018】
この実施形態では、個人認証機能を備えた情報処理装置として携帯端末(携帯電話端末)を用いた場合で説明するが、これらに限定されるものでなく、パーソナルコンピュータや屋内に設置される情報提供端末等であってもよいことは勿論である。
【0019】
図1は、携帯端末の外観図である。
【0020】
この携帯端末は、iPhone(アイホン社から許諾を受けたアップル社の商標)、Android
(米国グーグル社の商標)等のスマートホン、i-mode(NTTドコモ社の商標)等のネット接続可能な携帯電話端末等である。
【0021】
本実施形態において当該携帯端末における個人認証の特徴は、ユーザの耳で認識している鳥等の鳴き声をリズムとしてとらえてこのリズムパターンをタッチパネルディスプレイ(TDSP)からタッチ入力することでロック状態を解除する等の個人認証を成立させる処理を実現した点にある。
【0022】
実施形態での携帯端末(認証装置)は、同図に示すように、中央処理装置(CPU)を中心に、バス(BUS)で接続されたメインメモリ(MM)、タッチパネルディスプレイ(TDSP)、アプリケーションメモリ(APM)等、通信インターフェース(I/O)、スピーカー(図示省略)等を有している。
【0023】
なお、入力手段としては、上記の他に、図示しないマウス等の補助入力手段を備えていてもよい。
【0024】
アプリケーションメモリ(APM)には、オペレーティングシステム(OS)とともに、アプリケーションプログラム(APL)が格納されている。このアプリケーションプログラム(APL)は、当該装置のロック状態を解除するための認証アプリケーションプログラムであり、このアプリケーションプログラム(APL)がバス(BUS)およびメインメモリ(MM)に読み込まれて中央処理装置(CPU)で順次実行処理されることによって、本実施形態の機能が実現される。
【0025】
また、アプリケーションメモリ(APL)には、図6に示すような規定パターン情報が登録されている。この規定パターン情報は、鳥や動物の鳴き声からリズムパターンだけを抽出してインデックス化したリズムパターンデータベースが登録されている。タッチパネルから入力されたリズムパターンは規定パターン情報と比較されて規定パターンと一致するか類似するかが判定プログラムによって判定する。
【0026】
次に、図6の規定パターンについて説明する。
【0027】
規定パターンは、アプリケーションメモリ(APM)に登録されている。
【0028】
同図の左側の図では、数字は指またはタッチペンでタッチパネルディスプレイ(TDSP)を押している時間を表し、括弧付数字は指またはタッチペンまたはタッチパネルディスプレイ(TDSP)から離されている時間を表している。
【0029】
パターン1(P1)は、「3クロック分タッチパネルが押された→2クロック分タッチパネルから指が離された→2クロック分タッチパネルが押された→2クロック分タッチパネルから指が離された→1クロック分タッチパネルが押された」ことを意味している。
【0030】
パターン2(P2)は、「1クロック分タッチパネルが押された→1クロック分タッチパネルから指が離された→2クロック分タッチパネルが押された」ことを意味している。
【0031】
パターン3(P3)は、「1クロック分タッチパネルが押された→2クロック分タッチパネルから指が離された→1クロック分タッチパネルが押された→2クロック分タッチパネルから指が離された→1クロック分タッチパネルが押された→2クロック分タッチパネルから指が離された→1クロック分タッチパネルが押された」ことを意味する。
【0032】
そして指先またはタッチペンでタッチパネルに対して行った押圧・離反動作のリズムパ
ターンがこのような規定パターン(P1〜P3)と一致するかまたは類似するかを中央処理装置(CPU)が検出することになる。
【0033】
ユーザによるリズムパターンの入力の際には、図3に示すようなタッチパネルディスプレイに表示されるインジケータ表示部を参照することによって、可視的に確認することが可能である。
【0034】
図3のインジケータ表示部について説明する。
【0035】
このインジケータ表示部は、指先またはタッチペンによるタッチパネルディスプレ(TDSP)への押圧時間と離反時間とを経時的に伸張表示する第1インジケータと、横方向に配列された複数のセル領域に、押圧状態か離反状態かを示す着色状態を経時的に累積表示していく第2インジケータとを有している。
【0036】
第1インジケータは、タッチパネルディスプレイ(TDSP)を指先またはタッチペンで押圧している間、および離反させている間、動的にグラフ表示が伸張するようになっている。同図において、「1」で示された範囲が第1クロック時間、同様に「2」で示された範囲が第2クロック時間、「3」で示された範囲が第3クロック時間となっており、それぞれの境界部分には押圧状態と離反状態との切り換えの目安となる分割目盛線が設けられている。
【0037】
ユーザは、指先またはタッチペンでタッチパネルディスプレイ(TDSP)の押圧を開始して、伸張していくグラフ表示を観察しながら第1クロック時間と第2クロック時間との境界部分で離反させると1クロック分の押圧状態の入力が可能となる。その後、離反状態に切り替わり、今度は離反状態が開始されて伸張していくグラフ表示を観察しながら第1クロック時間と第2クロック時間との境界部分で押圧(タッチ)すると2クロック分の離反状態の入力が可能となる。
【0038】
同様に、押圧状態を開始して、第2クロック時間と第3クロック時間との境界部分で離反動作を行えば2クロック分の押圧状態の入力が可能となる。
【0039】
また、離反状態を開始して、第2クロック時間と第3クロック時間との境界部分で押圧動作を行えば2クロック分の離反状態の入力が可能となる。
【0040】
同様に、押圧状態を開始して、第3クロック時間の終了部分で離反動作を行えば3クロック分の押圧状態の入力が可能となる。
【0041】
また、離反状態を開始して、第3クロック時間と終了部分で押圧動作を行えば3クロック分の離反状態の入力が可能となる。
【0042】
なお、第1クロック時間、第2クロック時間、第3クロック時間の境界部分で正確に指先またはタッチペンをタッチパネルディスプレイ(TDSP)から離反または押圧することは難しいため中央処理装置(CPU)は、前記分割目盛線のを越えた範囲で押圧状態と離反状態との切り換えを検出したときには、当該切り換えは分割目盛線が設定された時間でなされたものと補正してもよい。
【0043】
このように、中央処理装置(CPU)は、基準クロックに基づいて、何クロック分の押圧状態または離反状態が続いたかによってリズムパターンを検出するようになっている。
【0044】
次に、ユーザによって入力されたリズムパターンが規定パターンと一致するか否かにつ
いて中央処理装置(CPU)の処理手順を図4および図5を用いて説明する。
【0045】
まず、タッチ入力モードが開始(ステップ401)されると、指先かタッチペンによってタッチパネルディスプレイ(TDSP)が押されているか否かを判定する(ステップ402)。
【0046】
次に、押圧しているクロック時間と離反した状態でのクロック時間(音符処理ステップ403と休符処理ステップ404)とを検出して、リズムパターンの検出を行う。
【0047】
ここで、中央処理装置は、規定パターンの長さを越えたパターンが入力されたとき(ステップ406)、または規定パターンに無いパターンが入力されたとき(具体的には、「2クロック時間押圧→1クロック時間離反」のように規定パターンにありえないパターンが入力された場合)にはエラー判定を行う(ステップ407)。
【0048】
このようにして入力されたリズムパターンが、規定パターンと一致するか否かを判定(ステップ409)して、パターン判定処理を終了する(ステップ410)。
【0049】
図5はステップ409のパターン判定処理の詳細手順を示したものである。このパターン判定処理では、まず処理が開始されると(ステップ501)、入力されたリズムパターンが規定パターンテーブルにあるか否かを判定する(ステップ502)。ここで、規定パターンと一致した場合には該当処理(ステップ503)を実行する。この該当処理とは、たとえば規定パターンに対応する鳴き声の鳥を特定して、当該鳥の鳴き声の音声データをアプリケーションメモリ(APM)から読み出して図示しないスピーカから出力するとともに、当該装置の認証が成立したものとして、ロック状態を解除する。このとき、このリズムパターンに対応した鳥の画像をタッチパネルディスプレイ(TDSP)に表示してもよい。
【0050】
一方、ステップ502において、入力されたリズムパターンが規定パターンに無い場合には、エラー処理(ステップ504)を行う。
【0051】
このエラー処理とは、たとえばタッチパネルディスプレイ(TDSP)に「認証されません」というような表示を行ったり、「ブッブー」というようなブザー音を図示しないスピーカから出力することを意味する。
【0052】
以上の説明では、認証のためのリズムパターンを身近な鳥の鳴き声で置き換えて入力する技術で説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、いかなるリズムパターンであってもよい。たとえば、ユーザが好きな楽曲のドラムやリズムギター等のリズムパターンをあらかじめ登録しておき、これと一致するリズムパターンの入力があった場合だけ認証を成立させるようにしてもよい。
【0053】
また、実施形態では入力部としてタッチパネルディスプレイを用いた場合で説明したが、リズムパターンの入力は別途設けられた(接続された)キーボードの特定キーまたは任意の単一キーを押圧・離反させることで行ってもよい。このような場合でも複数のキーを押すメロディ入力のようにキーを押し間違える懸念がない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、パーソナルコンピュータ、PDA、携帯電話端末、電子辞書等のあらゆる認証
解除を必要とする電子機器に利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
CPU 中央処理装置
MM メインメモリ
BUS バス
TDSP タッチパネルディスプレイ
APM アプリケーションメモリ
OS オペレーティングシステム
APL アプリケーションプログラム
I/O インターフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部を備えた情報処理装置からなる検索装置において、
前記入力部への押圧状態または離反状態を検出する検出部と、
前記検出部での単位クロック時間における押圧状態と離反状態との繰り返しパターンを、あらかじめ記憶装置に記憶された規定パターンと比較するパターンマッチング部と、
前記パターンマッチング部において一致または類似パターンと判定されたときに当該ユーザの認証を成立させるリズム認証装置。
【請求項2】
前記に加えてインジケータ表示部とこのインジケータ表示部を制御する表示制御部とを有しており、
前記表示制御部は、前記インジケータ表示部に対して、前記単位クロック時間と、その単位クロック時間における押圧時間と離反時間との長さを可視的に表示することを特徴とする請求項1に記載のリズム認証装置。
【請求項3】
前記インジケータ表示部は、押圧時間と離反時間とを経時的に伸張表示するとともに、押圧時間または離反時間の終了とともに前記伸張表示を動的にリセットする第1の表示部と、
一次元方向に配列された複数のセル領域に、押圧状態か離反状態かを示す着色状態を経時的に累積表示していく第2の表示部とからなる請求項2に記載のリズム認証装置。
【請求項4】
前記第1の表示部は、単位クロック時間を等間隔に分割するとともに、押圧状態と離反状態との切り換えの目安となる分割目盛線を有しており、
前記検出部は当該分割目盛線の前後の所定範囲内で押圧状態と離反状態との切り換えを検出したときには、当該切り換えは分割目盛線が設定された時間でなされたものと補正することを特徴とする請求項3に記載のリズム認証装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−14401(P2012−14401A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149931(P2010−149931)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】