説明

リソグラフィー用リンス液およびそれを用いたパターン形成方法

【課題】パターン倒れ、表面粗さ、および表面欠陥を改良することができる、リソグラフィー用リンス液とそれを用いたパターン形成方法の提供。
【解決手段】少なくともスルホン酸と、アルキレンオキシ基を有する非イオン性界面活性剤と、水とを含むリソグラフィー用リンス液と、それを用いたパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィー用リンス液に関するものである。さらに詳細には、本発明は、半導体デバイス、液晶表示素子などのフラットパネルディスプレー(FPD)、カラーフィルター等の製造に用いられる感光性樹脂組成物の現像工程で好適に用いられるリソグラフィー用リンス液およびこのリソグラフィー用リンス液を用いたパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LSIなどの半導体集積回路や、FPDの表示面の製造、カラーフィルター、サーマルヘッドなどの回路基板の製造等を初めとする幅広い分野において、微細素子の形成或いは微細加工を行うために、従来からフォトリソグラフィー技術が利用されている。フォトリソグラフィー法においては、レジストパターンを形成するためポジ型またはネガ型の感光性樹脂組成物が用いられている。これら感光性樹脂組成物のうち、ポジ型フォトレジストとしては、例えば、アルカリ可溶性樹脂と感光性物質であるキノンジアジド化合物とからなる感光性樹脂組成物が広く利用されている。
【0003】
ところで、近年、LSIの高集積化のニーズが高まっており、レジストパターンの微細化が求められている。このようなニーズに対応するために、短波長の、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、極端紫外線(EUV;13nm)、X線、電子線等を用いるリソグラフィープロセスが実用化されつつある。このようなパターンの微細化に対応するべく、微細加工の際にフォトレジストとして用いられる感光性樹脂組成物にも高解像性のものが要求されている。さらに、感光性樹脂組成物には、解像性に加え、感度、パターン形状、画像寸法の正確さなどの性能向上も同時に求められている。これに対し、短波長の放射線に感光性を有する高解像度の感放射線性樹脂組成物として、「化学増幅型感光性樹脂組成物」が提案されている。この化学増幅型感光性樹脂組成物は、放射線の照射により酸を発生する化合物を含み、放射線の照射によりこの酸発生化合物から酸が発生され、発生された酸による触媒的な画像形成工程により、高い感度が得られる点等で有利であるため、従来の感光性樹脂組成物に取って代わり、普及しつつある。
【0004】
しかしながら上記のように微細化が進むと、パターン倒れやパターンラフネス悪化などの問題が起こる傾向にある。このような問題に対して、例えばレジスト組成物の成分変更などによる改良などが検討されている。
【0005】
また、パターン倒れは、現像後に純水でパターンを洗浄する際に、純水の表面張力によってパターン間に負圧が生じることによっても起こると考えられている。このような観点から、パターン倒れを改良するために、従来の純水に代えて特定の成分を含むリンス液によって洗浄することが提案されている(特許文献1〜4参照)。これらの特許文献には特定の非イオン性界面活性剤を含むリソグラフィー用リンス液を洗浄に用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−184648号公報
【特許文献2】特開平05−299336号公報
【特許文献3】特開平07−140674号公報
【特許文献4】特開2008−146099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの引用文献に記載された方法は、パターン倒れについては改良効果が認められるものの、さらなる改良が望ましく、また現像処理後のレジスト表面における表面欠陥や表面ラフネスについても改良の余地があった。このため、パターン倒れ、表面欠陥、表面ラフネスの問題を同時に解決することができるリソグラフィー用リンス液またはレジスト基板の処理方法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるリソグラフィー用リンス液は、少なくともスルホン酸と、アルキレンオキシ基を有する非イオン性界面活性剤と、水とを含むことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明によるパターン形成方法は、
(1)基板に感光性樹脂組成物を塗布して感光性樹脂組成物層を形成させ、
(2)前記感光性樹脂組成物層を露光し、
(3)露光済みの感光性樹脂組成物層を現像液により現像し、
(4)上記のリソグラフィー用リンス液で処理すること
を含んでなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるリソグラフィー用リンス液を用いることによって、形成されるレジストパターンの欠陥の除去、パターン倒れの防止、および表面のラフネス改良が達成される。特に、液浸レジストにおいては、接触角を大きくするために含フッ素ポリマーが使用されることが多く、この場合にはより欠陥を生じやすいことが知られているが、本発明によるリンス液を用いることにより効果的に欠陥の除去を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について詳細に説明すると以下の通りである。
【0012】
本発明によるフォトリソグラフィー用リンス液は、少なくともスルホン酸と、アルキレンオキシ基を有する非イオン性界面活性剤と、水とを含んでなる。
【0013】
本発明において用いられるスルホン酸は、スルホ基(−SOH)を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば下記一般式(I)で示されるものである。
R−SOH (I)
式中、Rは炭素数1〜30の炭化水素基であり、炭化水素基は鎖状、環状のいずれであってもよく、分岐鎖を有していてもよく、二重結合または三重結合を含んでいてもよく、また炭化水素基に含まれる水素の一部またはすべてが、ハロゲン原子、水酸基、スルホ基、カルボキシル基などにより置換されていてもよい。
【0014】
このようなスルホン酸のうち、好ましいものの一例は下記一般式(Ia)で示されるものである。
2n+1−xSOH (Ia)
式中、nは1〜30、好ましくは8〜20であり、より好ましくは10〜18であり、0≦x≦2n+1である。
【0015】
このようなスルホン酸のうち、特に好ましいものの具体例としては、t−ブチルスルホン酸、n−ヘキシルスルホン酸、シクロヘキシルスルホン酸、オクチルスルホン酸、ノニルスルホン酸、デシルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、テトラデシルスルホン酸、ヘキサデシルスルホン酸、イコサニルスルホン酸、1−ヒドロキシ−n−オクチルスルホン酸、1,8−ジスルホオクタン、パーフルオロデシルスルホン酸、などが挙げられる。これらのうち、特にオクチルスルホン酸、デシルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、およびヘキサデシルスルホン酸が水溶性や入手容易性の観点から好ましい。
【0016】
また、別の好ましいスルホン酸の例は下記一般式(Ib)で示されるものである。
(R−Ph−SOH (Ib)
式中、Phはフェニレン基であり、Rは水素、前記炭化水素基であり、炭化水素基は鎖状、環状のいずれであってもよく、分岐鎖を有していてもよく、二重結合または三重結合を含んでいてもよく、また炭化水素基に含まれる水素の一部またはすべてが、ハロゲン原子、水酸基、スルホ基、カルボキシル基などにより置換されていてもよく、0≦y≦5であり、yが2以上の場合には、それぞれのRは同じであっても異なっていてもよく、式中に含まれる炭素原子の総数は30以下、好ましくは20以下である。
【0017】
このようなスルホン酸のうち、特に好ましいものの具体例としては、トルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、p−オクチルベンゼンスルホン酸、p−デシルベンゼンスルホン酸、p−ドデシルベンゼンスルホン酸、4−オクチル2−フェノキシベンゼンスルホン酸、スルホサリチル酸、4−カルボキシベンゼンスルホン酸、などが挙げられる。これらのうち、特にp−オクチルベンゼンスルホン酸、p−デシルベンゼンスルホン酸が水溶性や入手容易性の観点から好ましい。
【0018】
さらに別の好ましいスルホン酸の例は下記一般式(Ic)で示されるものである。
【化1】

式中、Rは水素、炭化水素基であり、前記炭化水素基は鎖状、環状のいずれであってもよく、分岐鎖を有していてもよく、二重結合または三重結合を含んでいてもよく、また炭化水素基に含まれる水素の一部またはすべてが、ハロゲン原子、水酸基、スルホ基、カルボキシル基などにより置換されていてもよく、またRは環を構成する炭素に二重結合を介して結合した酸素であってもよく、0≦z≦5であり、zが2以上の場合には、それぞれのRは同じであっても異なっていてもよく、式中に含まれる炭素原子の総数は30以下、好ましくは20以下である。
【0019】
このようなスルホン酸のうち、特に好ましいものの具体例としては、カンファースルホン酸、3−ブルモ−10−カンファースルホン酸、1−スルホエチルノルボルナンなどが挙げられる。これらのうち、特にカンファースルホン酸が水溶性や入手容易性の観点から好ましい。
【0020】
これらのスルホン酸は、必要に応じて2種類以上を組み合わせて用いることもできる。特に一般式(Ia)により示されるスルホン酸を2種類以上組み合わせて用いると、本発明による効果が強く発現する傾向があり好ましい。
【0021】
本発明によるリンス液において、スルホン酸の含有率は、一般的に高いほうが表面欠陥が減少し、またラフネスが改良される傾向があるので好ましい。一方、パターン倒れはスルホン酸含有率が高くなると改良効果が大きくなるが、過度に高いと反対に劣化することがある。実際にはこれらのバランスやリンス液の成分により適当な含有率が選択される。具体的には、スルホン酸含有率はリンス液の全重量を基準として、0.005〜10%であることが好ましく、0.01〜5%であることがより好ましく、0.02〜2%であることが最も好ましい。なお、いずれの場合にも、水、スルホン酸、および界面活性剤が主成分となり、それ以外の成分の含有率は、リンス液の全重量を基準として1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましい。
【0022】
本発明によるリソグラフィー用リンス液は、さらに非イオン性界面活性剤を含む。本発明において、界面活性剤はリンス液によるレジスト表面の濡れ性を改良し、また表面張力を調整することによって、パターン倒れやパターン剥離を改良する作用を有する。
【0023】
非イオン界面活性剤としては、アルキレンオキシ基を有する非イオン性界面活性剤が特に好ましい。この界面活性剤は、具体的には、下記一般式(IIa)または(IIb)で表すことができる。
【化2】

ここで、EOは−(CH−O−、POは−CH−CH(CH)−O−を表し、EOおよびPOの単位はそれぞれがランダムに結合していても、ブロックを形成していてもよい。
【0024】
Lは炭素数1〜30の炭化水素鎖であり、不飽和結合を含んでいてもよい。Lは好ましくは下記式で表される炭化水素鎖である。
【化3】

式中、それぞれのRは独立に炭素数3〜10の直鎖または分岐状の、飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、前記炭化水素鎖を構成する炭素原子に結合した水素が、−OHにより置換されていてもよい。
また、Rは、炭素数5〜30の飽和または不飽和の炭化水素鎖である。
また、r1〜r3およびs1〜s3はEOまたはPOの繰り返し数を表す、20以下の整数である。ここで、r1+s1、およびr2+s2は、それぞれ独立に0〜20の整数であり、ただし、r1+s1+r2+s2は1以上の整数である。r1+s1、およびr2+s2は、好ましくは2〜10の整数である。また、r3+s3は1〜20の整数であり、好ましくは2〜10の整数である。
【0025】
このような非イオン性界面活性剤の例としては、ヒドロキシ基、特に二つのヒドロキシ基を有する化合物とポリアルキレングルコールとの縮合物が好ましい。ヒドロキシ基を有する化合物としては、飽和または不飽和の脂肪族アルコール、脂肪族ジオールが好ましく、特に不飽和脂肪族ジオールであることが好ましい。特に好ましいのは、アセチレン結合を有する不飽和脂肪族ジオール、具体的にはアセチレングリコールである。このようなアセチレングリコールを原料とした界面活性剤を本発明によるリンス液に用いると、パターン倒れがおきにくく、またメルティングも減少するので好ましい。
【0026】
このような界面活性剤のうち、比較的親水性の高いEO基またはPO基が少なく、LまたはRに含まれる炭素数が多く、疎水性の高いもののほうがメルティング防止効果が強い傾向にあるので好ましい。
【0027】
これらの界面活性剤は、必要に応じて2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0028】
本発明によるリンス液において、界面活性剤の含有率は、パターン倒れやパターン剥離などの改良効果を最大に発揮させるために、リソグラフィー用リンス液の全重量を基準として0.005〜10%とされることが好ましく、0.01〜5%であることがより好ましく、0.02〜2%であることが最も好ましい。
【0029】
また、本発明によるリソグラフィー用リンス液は、前記したスルホン酸および界面活性剤のほかに溶媒として水を含んでなる。用いられる水としては、蒸留、イオン交換処理、フィルター処理、各種吸着処理等により、有機不純物、金属イオン等が除去されたもの、特に純水が好ましい。
【0030】
本発明によるリソグラフィー用リンス液は、必要に応じてさらなる添加剤を含むことができる。このような添加剤としては、例えば、酸、塩基、または有機溶剤等が挙げられる。
【0031】
酸または塩基は、処理液のpHを調整したり、各成分の溶解性を改良するために用いられる。用いられる酸または塩基は本発明の効果を損なわない範囲で任意に選択できるが、例えばカルボン酸、アミン類、アンモニウム塩が挙げられる。これらには、脂肪酸、芳香族カルボン酸、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、アンモニウム化合物類が包含され、これらは任意の置換基により置換されていてもよい。より具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、フタル酸、サリチル酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、グルタル酸、アジピン酸、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、テトラメチルアンモニウムなどが挙げられる。
【0032】
また、水以外の有機溶媒を共溶媒として用いることもできる。有機溶剤はリンス液の表面張力を調整する作用を有し、またレジスト表面への濡れ性を改良することができる場合がある。このような場合に用いることのできる有機溶媒は、水に可溶な有機溶媒から選ばれる。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、およびt−ブチルアルコール等のアルコール類、エチレングリコールおよびジエチレングリコール等のグリコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート、アルキルセロソルブアセテート、プロピレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、ブチルカルビトール、カルビトールアセテート、テトラヒドロフラン等の溶媒が挙げられる。
【0033】
しかしながら、これらの有機溶媒はパターンを構成するレジストを溶解したり、変性させることがあるため、使用する場合には少量に限定される。具体的には、有機溶媒の含有量はリンス液の全重量を基準として通常50%以下であり、好ましくは5%以下であり、より好ましくは0.1%以下である。ただし、レジストの溶解または変性を防止する目的のためには、有機溶媒は全く用いないことが好ましい。
【0034】
本発明によるリソグラフィー用リンス液は、さらに殺菌剤、抗菌剤、防腐剤、および/または防カビ剤を含んでもよい。これらの薬剤はバクテリアまたは菌類が経時したリンス液中で繁殖するのを防ぐために用いられる。これらの例には、フェノキシエタノール、イソチアゾロン等のアルコールが包含される。日本曹達株式会社から市販されているベストサイド(商品名)は特に有効な防腐剤、防カビ剤、および殺菌剤である。典型的には、これらの薬剤はリソグラフィー用リンス液の性能には影響を与えないものであり、通常リンス液の全重量を基準として1%以下、好ましくは0.1%以下、また好ましくは0.001%以下の含有量とされる。
【0035】
次に、本発明によるパターンの形成方法について説明する。本発明のパターン形成方法におけるリソグラフィー工程は、公知のポジ型の感光性樹脂組成物、ネガ型の感光性樹脂組成物を用いてレジストパターンを形成する方法として知られた何れのものであってもよい。本発明のリソグラフィー用リンス液が適用される代表的なパターン形成方法をあげると、次のような方法が挙げられる。
【0036】
まず、必要に応じて前処理された、シリコン基板、ガラス基板等の基板の表面に、感光性樹脂組成物をスピンコート法など従来から公知の塗布法により塗布して、感光性樹脂組成物層を形成させる。感光性樹脂組成物の塗布に先立ち、感光性樹脂組成物層の下層に反射防止膜が塗布形成されてもよい。このような反射防止膜により断面形状および露光マージンを改善することができる。このような反射防止膜は、感光性樹脂組成物層の形成後、その上層に設けることもできる。
【0037】
本発明のパターン形成方法には、従来知られている何れの感光性樹脂組成物を用いることもできる。本発明のパターン形成方法に用いることができる感光性樹脂組成物の代表的なものを例示すると、ポジ型では、例えば、キノンジアジド系感光剤とアルカリ可溶性樹脂とからなるもの、化学増幅型感光性樹脂組成物などが、ネガ型では、例えば、ポリケイ皮酸ビニル等の感光性基を有する高分子化合物を含むもの、芳香族アジド化合物を含有するもの或いは環化ゴムとビスアジド化合物からなるようなアジド化合物を含有するもの、ジアゾ樹脂を含むもの、付加重合性不飽和化合物を含む光重合性組成物、化学増幅型ネガ型感光性樹脂組成物などが挙げられる。
【0038】
ここでキノンジアジド系感光剤とアルカリ可溶性樹脂とからなるポジ型感光性樹脂組成物において用いられるキノンジアジド系感光剤の例としては、1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸、これらのスルホン酸のエステル或いはアミドなどが、またアルカリ可溶性樹脂の例としては、ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、アクリル酸或はメタクリル酸の共重合体などが挙げられる。ノボラック樹脂としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、キシレノール等のフェノール類の1種又は2種以上と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等のアルデヒド類の1種以上から製造されるものが好ましいものとして挙げられる。
【0039】
また、化学増幅型の感光性樹脂組成物は、ポジ型およびネガ型のいずれであっても本発明のパターン形成方法に用いることができる。化学増幅型レジストは、放射線照射により酸を発生させ、この酸の触媒作用による化学変化により放射線照射部分の現像液に対する溶解性を変化させてパターンを形成するもので、例えば、放射線照射により酸を発生させる酸発生化合物と、酸の存在下に分解しフェノール性水酸基或いはカルボキシル基のようなアルカリ可溶性基が生成される酸感応性基含有樹脂からなるもの、アルカリ可溶樹脂と架橋剤、酸発生剤からなるものが挙げられる。
【0040】
基板上に形成された感光性樹脂組成物層は、例えばホットプレート上でプリベークされて感光性樹脂組成物中の溶剤が除去され、厚さが通常0.05〜2.5ミクロン程度のフォトレジスト膜とされる。プリベーク温度は、用いる溶剤或いは感光性樹脂組成物により異なるが、通常20〜200℃、好ましくは50〜150℃程度の温度で行われる。
【0041】
フォトレジスト膜はその後、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、超高圧水銀ランプ、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、軟X線照射装置、電子線描画装置など公知の照射装置を用い、必要に応じマスクを介して露光が行われる。
【0042】
露光後、必要に応じベーキングを行った後、例えばパドル現像などの方法で現像が行われ、レジストパターンが形成される。レジストの現像は、通常アルカリ性現像液を用いて行われる。アルカリ性現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)などの水溶液或いは水性溶液が用いられる。現像処理後、リンス液を用いてレジストパターンのリンス(洗浄)が行われる。なお、形成されたレジストパターンは、エッチング、メッキ、イオン拡散、染色処理などのレジストとして用いられ、その後必要に応じ剥離される。
【0043】
本発明によるパターン形成方法は、特に、微細で、アスペクト比の高いレジストパターンに対しても有効にパターン倒れおよびメルティングを改善することができるものである。ここで、アスペクト比とはレジストパターンの幅に対する高さの比である。したがって、本発明によるパターン形成方法は、このような微細なレジストパターンが形成されるリソグラフィー工程、すなわち、露光光源として、KrFエキシマレーザーやArFエキシマレーザー、更にはX線、電子線などを用いる、250nm以下の露光波長での露光を含むリソグラフィー工程を組み合わせることが好ましい。さらに、レジストパターンのパターン寸法でみると、ライン・アンド・スペース・パターンにおける線幅、またはコンタクトホール・パターンにおける孔径が300nm以下、特に50nm以下のレジストパターンを形成するリソグラフィー工程を含むものが好ましい。
【0044】
本発明によるパターン形成方法においては、レジストパターンを現像後、前記のリソグラフィー用リンス液で処理する。リソグラフィー用リンス液をレジスト基板に接触させる時間、すなわち処理時間は特に制限されないが、一般に処理時間を1秒以上とすることで本発明の効果が発現する。リンス液をレジストに接触させる方法も任意であり、例えばレジスト基板をリンス液に浸漬したり、回転しているレジスト基板表面にリンス液を滴下、噴霧または吹き付けにより供給することにより行うことができる。
【0045】
本発明によるパターン形成方法においては、現像後、本発明による特定のリンス液により処理する前に、および/または本発明によるリンス液による処理を行った後に、純水により洗浄処理を行うことができる。前者の洗浄処理は、レジストパターンに付着した現像液を洗浄するために行われるものであり、後者の洗浄処理はリンス液を洗浄するために行われるものである。純水による洗浄処理の方法は任意の方法により行うことができ、例えばレジスト基板を純水に浸漬したり、回転しているレジスト基板表面に純水を滴下、噴霧または吹き付けにより供給することにより行うことができる。これらの純水による洗浄処理はどちらか一方だけ、あるいは両方行うことができる。現像処理後には現像後に残存するレジスト残渣や現像液を洗浄処理により除去することによって、本発明の効果をより強く発現させることができるので好ましい。また、本発明において、後者の洗浄処理はリンス液の除去のために行うことができる。特に1%を超えるような濃度のリンス液を用いた場合には、リンス液で処理した後に純水により洗浄処理することにより、メルティング改良効果が強くなり、本発明の効果を最大限に発揮できることがある。
【0046】
本発明を諸例を用いて説明すると以下の通りである。なお、本発明の態様はこれらの例に限定されるものではない。
【0047】
比較例101
シリコン基板上にArF露光に対応した底面反射防止膜用組成物(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製ArF1C5D(商品名))を塗布し、200℃で60秒間加熱することにより、37nmの膜厚で反射防止膜を製膜した。その上にArFレジスト組成物(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製AX2110P(商品名))を膜厚90nmになるように塗布し、100℃/60秒の条件でベーク処理してレジスト膜を有する基板を準備した。得られた基板をArF露光装置(ニコン株式会社製NSR−S306C(商品名))で露光し、110℃/60秒の条件で加熱した後、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を用いて現像し、引き続き純水でリンスして、ラインパターンを有する現像済みレジスト基板を作製した。なお、露光時に露光条件を変化させることによりライン幅を変化させて、アスペクト比が異なる複数のパターンを形成させた。
【0048】
形成させたパターンをCD−SEM(S−9200型(商品名)、日立製作所株式会社製)により観察して、パターン倒れが起きていない最大のアスペクト比がいくつであるかを評価した。比較例101において、パターン倒れの起こらないアスペクト比は3.0であった。
【0049】
また、得られたパターンを欠陥検査装置KLA2115(KLA−Tencor社製)により観察し、線幅粗さ(以下、LWRといいます)およびパターン表面に再付着した異物を評価した。比較例101においてLWRは5.5nmであり、表面異物数は10000超であった。
【0050】
次に、本発明によるリンス液を調製し、それを用いた場合について同様に性能を評価した。このとき、用いた界面活性剤は下記式(S−1)、(S−2)、または(S−3)で示されるものを用いた。
【0051】
【化4】

式中、Ra1はメチル基、Ra2はイソブチル基であり、r11、s11、r21、およびs21はr11+r21=5、s11+s21=2をそれぞれ満たす整数であり、
b2は、C1837、r12=15であり、
b3は、C1837、r13=10、s13=5である。
【0052】
実施例101〜107
比較例101に対して、現像後に各種のスルホン酸を含むリンス液で処理する工程を追加して、評価を行った。リンス処理は、現像後のレジストパターンを、表1に記載したスルホン酸を含むリンス液をパターン表面に滴下し、1000rpm/20秒、1500rpm/10秒の条件でスピン乾燥することにより行った。得られた結果は表1に示すとおりであった。
【0053】
【表1】

【0054】
表中、アルキルスルホン酸混合物とは、炭素数12〜18の飽和脂肪族スルホン酸の混合物であり、アルキルベンゼンスルホン酸混合物とは、炭素数12〜18のアルキルベンゼンスルホン酸の混合物である。
表中のパターン倒れの評価基準は以下の通りである。
A: パターン倒れの起こるアスペクト比が5.0を超え、パターン倒れ改良効果が顕著である
B: パターン倒れの起こるアスペクト比が4.0以上5.0以下であり、パターン倒れ改良効果が認められる
C: パターン倒れの起こるアスペクト比が4.0未満であり、パターン倒れ改良効果がほとんど無いか、全く認められない
また、表中の表面欠陥の評価基準は以下の通りである。
A: 異物付着数が250以下
B: 異物付着数が250〜1,000
C: 異物付着数が1,000超
【0055】
比較例201および実施例201〜208、211〜216
スルホン酸としてオクチルスルホン酸、界面活性剤としてS−1を含むリンス液を用いて、比較例101と同様の評価を行った。この際、オクチルスルホン酸およびS−1の濃度を表2に示すとおりに変化させた。得られた結果は表2に示すとおりであった。
【0056】
【表2】

表中、パターン倒れおよび表面欠陥の評価基準は前記の通りである。
【0057】
比較例301〜302および実施例301〜305
スルホン酸および/または界面活性剤を含むリンス液を用いて、比較例101と同様の評価を行った。このとき界面活性剤としては、式(S−1)、(S−2)、または(S−3)で示されるものを用いた。得られた結果は表3に示すとおりであった。
【0058】
【表3】

【0059】
比較例401〜402および実施例401
レジスト組成物として、KrF用レジスト組成物を用いたほかは、比較例101と同様にしてリンス液として純水を用いて評価を行った(比較例401)。レジスト層を塗布した基板は以下の通りにして作成した。シリコン基板上にKrF露光に対応した底面反射防止膜用組成物(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製KrF−17B(商品名))を用いて80nmの膜厚で反射防止膜を製膜した。その上にKrFレジスト組成物(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製DX6270(商品名))を膜厚620nmになるように塗布し、130℃/90秒の条件でベーク処理してレジスト膜を有する基板を準備した。得られた基板をKrF露光装置(キャノン株式会社製FPA−EX5(商品名))で露光し、現像して、ラインパターンを有する現像済みレジスト基板を作製した。
【0060】
また、リンス液を界面活性剤のみを含むもの(比較例402)、界面活性剤とスルホン酸とを含むもの(実施例401)についても同様に評価を行った。得られた結果は表4に示すとおりであった。
【0061】
比較例501〜502および実施例501
レジスト組成物としてArF用レジスト組成物を用いて、リンス液として純水を用いて評価を行った(比較例501)。具体的には、比較例101を繰り返した。
【0062】
また、リンス液を界面活性剤のみを含むもの(比較例502)、界面活性剤とスルホン酸とを含むもの(実施例501)についても同様に評価を行った。得られた結果は表4に示すとおりであった。
【0063】
比較例601〜602および実施例601
レジスト組成物として、浸漬露光用レジスト組成物を用いて、比較例101と同様にしてリンス液として純水を用いて評価を行った(比較例601)。レジスト層を塗布した基板は以下の通りにして作成した。
【0064】
シリコン基板上に液浸露光に対応した底面反射防止膜用組成物(ARC29SR(商品名)、Brewer Science社製)を塗布し、205℃で60秒加熱して95nmの膜厚で反射防止膜を製膜した。その上に液浸露光用レジスト組成物(住友化学株式会社製AY−2666(商品名)を塗布し、105℃/90℃で60秒加熱して、膜厚110nmのレジスト膜を形成させた。さらにそのうえにトップコート用組成物(JSR株式会社製NFC TCX−041(商品名)を塗布し、90℃で60秒間加熱して、厚さ90nmのトップコート層を形成させて、塗布済み基板を準備した。
【0065】
得られた基板を液浸露光装置(ASMLホールディングNV社製TWINSCAN XT 1900i(商品名))を用いて露光し、現像液としてTMAH水溶液(2.38%)を用いて、CLEAN TRACK ACT12型現像装置(東京エレクトロン株式会社製)により現像した。評価は、CD−SEM(CG4000型(商品名)、日立製作所株式会社製)により行った。
【0066】
また、リンス液を界面活性剤のみを含むもの(比較例602)、界面活性剤とスルホン酸とを含むもの(実施例601)についても同様に評価を行った。得られた結果は表4に示すとおりであった。
【0067】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともスルホン酸と、アルキレンオキシ基を有する非イオン性界面活性剤と、水とを含んでなることを特徴とするリソグラフィー用リンス液。
【請求項2】
前記スルホン酸が、下記一般式(I)で表されるものである、請求項1に記載のリソグラフィー用リンス液。
R−SOH (I)
(式中、Rは炭素数1〜30の炭化水素基であり、炭化水素基は鎖状、環状のいずれであってもよく、分岐鎖を有していてもよく、二重結合または三重結合を含んでいてもよく、また炭化水素基に含まれる水素の一部またはすべてが、ハロゲン原子、水酸基、スルホ基、カルボキシル基などにより置換されていてもよい)。
【請求項3】
前記スルホン酸が、下記一般式(Ia):
2n+1−xSOH (Ia)
(式中、nは1〜30であり、0≦x≦2n+1である)
で表されるものである、請求項2に記載のリソグラフィー用リンス液。
【請求項4】
前記スルホン酸が、下記一般式(Ib):
(R−Ph−SOH (Ib)
(式中、Phはフェニレン基であり、Rは水素、前記炭化水素基であり、炭化水素基は鎖状、環状のいずれであってもよく、分岐鎖を有していてもよく、二重結合または三重結合を含んでいてもよく、また炭化水素基に含まれる水素の一部またはすべてが、ハロゲン原子、水酸基、スルホ基、カルボキシル基などにより置換されていてもよく、0≦y≦5であり、yが2以上の場合には、それぞれのRは同じであっても異なっていてもよく、式中に含まれる炭素原子の総数は30以下である)
で表されるものである、請求項2に記載のリソグラフィー用リンス液。
【請求項5】
前記スルホン酸が、下記一般式(Ic):
【化1】

(式中、Rは水素、炭化水素基であり、前記炭化水素基は鎖状、環状のいずれであってもよく、分岐鎖を有していてもよく、二重結合または三重結合を含んでいてもよく、また炭化水素基に含まれる水素の一部またはすべてが、ハロゲン原子、水酸基、スルホ基、カルボキシル基などにより置換されていてもよく、またRは環を構成する炭素に二重結合を介して結合した酸素であってもよく、0≦z≦5であり、zが2以上の場合には、それぞれのRは同じであっても異なっていてもよく、式中に含まれる炭素原子の総数は30以下である)
で表されるものである、請求項2に記載のリソグラフィー用リンス液。
【請求項6】
スルホン酸の含有率が、リソグラフィー用リンス液の全重量を基準として0.005〜10%である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のリソグラフィー用リンス液。
【請求項7】
前記界面活性剤が、下記一般式(IIa)または(IIb):
【化2】

(式中、EOは−(CH−O−、POは−CH−CH(CH)−O−を表し、EOおよびPOの単位はそれぞれがランダムに結合していても、ブロックを形成していてもよく、
Lは炭素数1〜30の炭化水素鎖であり、不飽和結合を含んでいてもよく、
は、炭素数5〜30の飽和または不飽和の炭化水素鎖であり、
r1〜r3およびs1〜s3はEOまたはPOの繰り返し数を表す、20以下の整数であり、r1+s1、およびr2+s2は、それぞれ独立に0〜20の整数であり、ただし、r1+s1+r2+s2は1以上の整数であり、
r3+s3は1〜20の整数である)
で表される、請求項1〜6のいずれか1項に記載のリソグラフィー用リンス液。
【請求項8】
前記界面活性剤の含有率が、リソグラフィー用リンス液の全重量を基準として0.005〜10%である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のリソグラフィー用リンス液。
【請求項9】
(1)基板に感光性樹脂組成物を塗布して感光性樹脂組成物層を形成させ、
(2)前記感光性樹脂組成物層を露光し、
(3)露光済みの基板を現像液により現像し、
(4)請求項1〜8のいずれか1項に記載のリソグラフィー用リンス液で処理すること
を含んでなることを特徴とする、パターン形成方法。

【公開番号】特開2012−198456(P2012−198456A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64003(P2011−64003)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(312001188)AZエレクトロニックマテリアルズIP株式会社 (14)
【Fターム(参考)】