説明

リソースレンタル可能な画像形成装置

【課題】ネットワーク接続された画像形成装置において分散処理を行う場合に、リソースの貸借を制限できるようにして、分散処理を最適化する。
【解決手段】画像形成装置(MFP)1は、ネットワーク2を介して他の画像形成装置やサーバー3と通信できる。画像形成装置(MFP)1は、CPUやメモリやHDDなどのリソースを管理し、搭載されているリソース容量を超えるようなジョブが投入されると、他機に搭載されたリソースを、ネットワークを介して借用して分散処理を行う。リソース貸借を制限するために、リソース借用許可条件とリソース貸与許可条件を設定しておく。リソース貸借条件に従って他装置のリソースを借り、リソース貸借条件に従って他装置にリソースを貸す。動作状況などに応じてきめ細かく制御できるので、画像処理効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に、ネットワーク接続された他の装置との間でリソースレンタルを行う画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のデジタル複写機や複合機(MFP)は、LAN等のネットワークに接続されている。そのネットワークには、サーバーやPC等のさまざまなデバイスが接続されている。各デバイスは相互通信でき、LAN間同士での通信も可能である。最近では、こういったネットワーク環境を利用して、複数のMFPやデバイスを連携させることで、システムの処理能力を有効活用する分散処理や連結機能が提案されている。また、ネットワーク上にあるMFPやデバイスが持つリソースを有効活用して、仮想的な処理装置を提供するための技術として、グリッドコンピューティングが知られている。グリッドコンピューティングを利用して、種々の問題解決を図っている。グリッドコンピューティングでは、ネットワーク上にあるリソースを仮想的に1つのリソースとして捉えて利用している。
【0003】
画像形成装置は、同時に複数のアプリからジョブを受け付けたり、処理の重いジョブを実行したりすると、リソースの枯渇によりジョブが中断したり、ジョブの処理が待たされるケースがある。リソースの枯渇が発生したところで、ネットワークを介して他のリソースを一時的に借りることで、ジョブの中断や遅延を抑制でき、処理効率が高くなる。また、リソース搭載量を減らしても、減らす前と同様の処理ができるので、コスト等の削減も見込める。画像形成装置には、機器本体に搭載されるアプリケーションやユーザーの要望に応じて、後から追加できるアプリケーションがある。そのアプリケーションの処理の内容により、リソースの消費量等も変わる。
【0004】
種々の装置が接続されたネットワークにおいて、複数の情報処理装置の処理の能力や情報を自動的に取得して、効率的な分散処理を実現するネットワークシステムがある。また、利用されていないCPUなどのリソースにジョブを分配し、ユーザーが意識することなく、複数の機器での分散処理を可能にするデスクトップグリッドコンピューティングが実現されている。処理の効率化のため、分散画像処理ネットワークシステムが実現されている。分散処理の割り当て先に履歴情報を活用するものもある。以下に、これに関連する従来技術の例をいくつかあげる。
【0005】
特許文献1に開示された「ネットワークシステム」は、処理能力の高い情報処理装置の実行環境の効率的な活用を図り、ネットワークに接続されたプリンタや情報処理装置の効率的な分散処理を実現するものである。クライアントプリンタと処理能力の高いサーバデバイスが、通信回線を介して接続されたネットワークシステムである。クライアントプリンタは、印刷用データの処理を、ネットワーク上のサーバデバイスに依頼する。サーバデバイスは、必要なデータ処理用のプログラムを有していない場合には、クライアントプリンタ又はネットワーク上の他のデバイスから、必要なデータ処理プログラムを受信してデータ処理を行う。クライアントプリンタは、処理後の印刷用データを受信して印刷する。
【0006】
特許文献2に開示された「複数出力の画像形成装置」は、大量プリントの印刷ジョブを短時間で終了し、競合する新たな印刷ジョブの実行開始の待ち時間を短縮し、複数の印刷ジョブが混み合うとき、各印刷ジョブに対して平等に使用機会を分配するものである。複数のプリンタがあり、蓄積手段から読み出される画像情報を、1以上のプリンタに選択出力する。ネットワークからの画像情報を、蓄積手段に書き込み、分配手段を介してプリンタに与えてプリントアウトする。各ジョブに各プリンタを割り当てても、割当てのないプリンタが生ずるときには、該プリンタにもジョブを分割して割り当てる。この分割割り当てをしているときに新たなジョブが発生すると、分割割り当てがあるプリンタの分割割り当てを解除して、新たなジョブの印刷に割り当てる。
【0007】
特許文献3に開示された「画像処理装置」は、複数の画像処理装置で効率的にジョブの処理分散を行う画像処理装置である。ネットワーク上に接続された装置間で、投入されたジョブを処理分散する。投入されたジョブを他の装置で
処理分散できるか否かを判定する。自装置の能力不足や故障の場合、他の装置で処理分散可能と判定する。他の装置に代行させたジョブに関する情報である履歴情報から、類似したジョブの履歴情報を検索する。検索結果に応じて、投入されたジョブを代行させる他の装置を決定する。決定した装置にジョブを代行させる。
【0008】
特許文献4に開示された「分散画像処理ネットワークシステム」は、クライアントが、サーバーの処理能力と状態を自動的に取得して、最適なサーバーに画像処理を行わせることにより、画像処理の効率化を図るものである。データ処理の依頼を行うクライアントが、データ処理を行うサーバーの処理能力情報を取得する。サーバーの稼動状態情報を取得して、それらの情報に基づき、データ処理を依頼するサーバーを決定する。データ処理を複数のサーバーに依頼して、最も短時間で送信されてきた処理結果のみを印刷する。
【0009】
特許文献5に開示された「グリッドコンピューティングを適用した画像処理システム」は、グリッドコンピューティングにおける画像処理装置の異常等により電源断が起こっても、ジョブの実行を継続するものである。グリッドコンピューティングによる負荷分散可能なシステム(グリッド)である。画像形成装置からグリッドに対してジョブを依頼する。画像形成装置はジョブを分割し、グリッドにジョブを依頼する。ジョブ依頼手段によって入力されたジョブ結果を、ジョブ結合処理手段でまとめる。画像形成装置と同様の機能を行える装置のリストを作成する。処理途中で電源が落ちても、ジョブから受け取った結果を保存する。
【0010】
特許文献6に開示された「グリッドコンピューティングを適用した印刷装置」は、分散処理の対象になるコンピュータの指定とセットアップが容易にできるユーザーインターフェースをもつ画像形成装置である。ホストインタフェースを介してホストコンピュータ(クライアント)と接続されている。操作パネルなどから環境設定可能である。グリッドコンピューティング(グリッド)による負荷分散処理が可能なプリントシステムである。画像形成装置をグリッドのジョブスケジューラとした時に、負荷分散対象にするグリッドの各リソースにする機器を操作パネルから選択する。
【特許文献1】特開平11-175295号公報
【特許文献2】特開2002-041266号公報
【特許文献3】特開2003-060832号公報
【特許文献4】特開2005-078461号公報
【特許文献5】特開2006-048271号公報
【特許文献6】特開2006-048272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、従来の分散処理方法では、次のような問題がある。グリッドコンピューティングでは、自機の持つリソースと他のデバイスが持つリソースとが区別されていないし、リソース利用上の優先度が考慮されていない。そのため、処理の分散を避けたい場合や、リソースを使用されたくない状況等に対応できないケースがある。また、ネットワークの通信状況は刻々と変化するので、必ずしも一定の通信速度を維持できるとは限らず、分散処理が処理全体の速度向上にならないケースがある。ジョブにより処理負荷や消費リソース量が異なり、リソース貸与側のリソース保有量も異なるため、借用側が強制的にリソースを消費してしまえば、リソース貸与側の処理動作にも影響を及ぼす。
【0012】
本発明の目的は、上記従来の問題を解決して、ネットワーク接続された画像処理装置において分散処理を行う場合に、グリッドコンピューティングのようにネットワーク上のリソースを仮想的に1つのリソースとして扱うのではなく、各装置の動作状況やジョブの特性などに応じてリソースの貸借を個別に制限できるようにして、分散処理を最適化することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明では、画像形成装置を、画像形成用エンジンを管理するエンジン管理モジュールと、エンジン管理モジュールからのリソース要求に応じてリソースを管理するリソース管理モジュールと、リソース貸借条件を設定するリソース貸借条件設定手段と、ネットワークを介して他装置と通信する通信モジュールとを具備し、リソース管理モジュールに、リソース要求に応じてリソース貸借条件に従って通信モジュールを介して他装置のリソースを借りるリソース借用手段を備え、通信モジュールに、リソース貸借条件に従って他装置にリソースを貸すリソース貸与手段を備える構成とした。
【発明の効果】
【0014】
上記のように構成したことにより、ネットワーク接続された画像形成装置において、リソースのレンタル(貸借)を状況に応じてきめ細かく制御できるので、分散処理を最適化できる。すなわち、処理負荷や消費リソース量がジョブにより異なるため、リソースレンタルしたほうが、単体で処理するより総処理時間が短くなる場合があり、逆に、画像形成装置単体で処理したほうが、個別の処理は遅延しても総処理時間が短くなる場合があるので、ジョブの内容に応じて柔軟に対応できる。例えば、元々搭載されているアプリケーションでは、すべて本体のリソースを使い、後から追加されるアプリケーションでは、レンタルしたリソースも使う。こうすると、アプリケーションを追加しても、リソース搭載量を変える必要がない。
【0015】
また、リソースレンタルを許可する動作条件を設定することにより、動作状況に応じたリソースレンタルを行うことができる。ユーザー認証モジュールで認証したユーザーのうちの特定のユーザーにリソースレンタルを許可することで、リソースレンタル可能なユーザーを制限できる。リソース貸与側でも貸与許可条件を設定することで、状況に応じたリソースレンタルを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1〜図9を参照しながら詳細に説明する。
【実施例】
【0017】
本発明の実施例は、設定されたリソース貸借条件に従って、ネットワークに接続された他装置のリソースを借りたり他装置にリソースを貸したりする画像形成装置である。
【0018】
図1は、本発明の実施例における画像形成装置(MFP)が接続されたネットワークシステムの概念図である。図1において、MFP1は、画像形成装置である。ネットワーク2は、LANやインターネットなどのネットワークである。サーバー3は、高機能の情報処理装置である。通信線4は、MFP1を個別に接続するIEEE1394の通信線である。
【0019】
図2は、画像形成装置の構成図である。図3は、画像形成装置間の接続状態を示す模式図である。図2と図3において、CPU5は、中央演算制御装置である。HDD6は、ハードディスク装置である。メモリ7は、CPUの主記憶のRAMやROMなどである。エンジン8は、画像形成を行うハードウエアである。OS9は、全体を制御するソフトウエアである。リソース管理モジュール10は、リソースの割当てなどを行うソフトウエアである。具体的には、例えばメモリ管理モジュールである。リソースがメモリの場合は、メモリ管理モジュール10という。リソース管理モジュールは、エンジン管理モジュールからのリソース要求に応じてリソースを管理する。通信管理モジュール11は、ネットワークなどを介する他装置との通信を管理するソフトウエアである。エンジン管理モジュール12は、エンジンを制御して画像形成を行なうソフトウエアである。パネル管理モジュール13は、表示パネルを制御してユーザーインターフェースの機能を管理するソフトウエアである。認証モジュール14は、ユーザー認証などを行うソフトウエアである。アプリ15は、画像処理を要求するアプリケーションソフトウエアである。
【0020】
図4は、画像形成装置のリソース枯渇からリソースレンタル開始までの処理手順を示す流れ図である。図5は、画像形成装置のリソースレンタル開始からリソース利用までの処理手順を示す流れ図である。図6は、画像形成装置のジョブ完了からリソースレンタル終了までの処理手順を示す流れ図である。図7は、画像形成装置のリソースレンタルをユーザーへ通知するパネル表示を示す図である。図8は、画像形成装置でリソースを借りる場合のリソースレンタル実行判定の処理手順を示す流れ図である。図9は、画像形成装置でリソースを貸す場合のリソースレンタル実行判定の処理手順を示す流れ図である。
【0021】
上記のように構成された本発明の実施例における画像形成装置の機能と動作を説明する。最初に、図1を参照しながら、画像形成装置の機能の概要を説明する。LANのネットワークや、LAN同士をつなぐWANのネットワーク環境の中には、複数のMFP1やサーバー3や、図示してないPCなどが接続され、相互に通信することが可能となっている。これらの装置間で、互いにリソースをレンタルすることができる。リソースレンタルは、無制限に行えるのではなく、装置の動作条件や装置間の優先度などに基づいて、他装置のリソース利用に制限を設ける。
【0022】
具体的には、MFP1のリソース管理モジュールに、リソース貸借条件を設定するリソース貸借条件設定手段であるリソースレンタル許可テーブルを設ける。リソースレンタル許可テーブルに、リソースを借りる場合の制限条件を管理者などが設定する。つまり、リソース貸借条件設定手段の借用許可条件設定手段に、パネル管理モジュールを介してリソース借用許可条件を設定する。例えば、リソースの借り主となれるジョブやアプリと、リソースを借用できる動作条件と、リソースレンタルを実行できるユーザーを、リソース貸借条件として設定する。リソースを借用できる動作条件としては、次のような例がある。処理を急ぐジョブが一定以上溜まった場合は、リソース借用を許可する。ネットワークが混雑している時間帯以外において、リソース借用を許可する。リソース管理モジュールのリソース借用手段は、リソース要求に応じて、リソース要求に関連するジョブ名やアプリ名やユーザー名などについて借用許可条件設定手段を参照して借用可否を判定し、借用可ならば通信モジュールを介して他装置のリソースを借りる。
【0023】
また、リソースレンタル許可テーブルに、リソースを貸す場合の制限条件を設定する。リソース貸借条件設定手段の貸与許可条件設定手段に、リソースを貸す場合の制限条件を、パネル管理モジュールを介して設定する。例えば、リソースを貸してよい相手ジョブや相手アプリや動作条件や借用者側ユーザーや貸主側ユーザーを設定する。例えば、処理待ちのジョブが一定以上溜まっているときはリソースを貸与しないように、リソース貸与許可条件を設定する。通信モジュールのリソース貸与手段は、リソース要求に関連するジョブ名またはアプリ名やリソース借用側ユーザー名やリソース貸与側ユーザー名などについて、貸与許可条件設定手段を参照して貸与可否を判定し、貸与可ならば他装置にリソースを貸す。
【0024】
次に、図2を参照しながら、画像形成装置の動作を説明する。画像形成装置は、複数のアプリケーション15を持つ。リソース管理モジュール10で、CPU5やHDD6やメモリ7などのハードウエアを管理して利用する。エンジン管理モジュール12で、画像形成用のエンジン8を管理する。通信管理モジュール11で、ネットワーク接続を実現している。パネル管理モジュール13でユーザーインターフェースを提供する。認証モジュール14で利用者を特定する。OS9で、装置全体を制御する。リソースレンタルに関する部分以外は従来の装置と同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0025】
次に、図3を参照しながら、画像形成装置間の接続について説明する。アプリ15から要求されるジョブの実行は、基本的にはその画像形成装置内で処理される。要求内容によっては、通信管理モジュール11を使用してネットワーク通信を行い、外部機器や他の画像形成とデータ通信を行う。エンジン管理モジュール12からのリソース要求に対して、リソースが不足する場合は、リソース管理モジュール10は、通信管理モジュール11を介して、他装置にリソースレンタルを要求する。また、他装置からリソースレンタルの要求が来た場合は、通信管理モジュール11がリソースレンタルを行う。リソースレンタルの詳細は後述する。
【0026】
次に、図4を参照しながら、ジョブ実行中にリソース枯渇(ここではメモリフル)を起した場合のリソースレンタル開始までを説明する。この場合のメモリは、RAMやHDDを含む記憶領域全体をいう。ジョブ実行要求を受けたエンジン管理モジュール12は、メモリ管理モジュール10に、ジョブ実行のためのメモリを確保しに行く。ジョブ実行中にメモリフルが起きて、ジョブ実行が不可能な状態となると、メモリ管理モジュール10は、他機のリソースを借り受けるために、通信管理モジュール11に対してリソースレンタル実行要求をする。これを受けた通信管理モジュール11は、通信可能機器一覧を参照して、ブロードキャストなどの方法により通信可能機器を探しだす。実際に通信可能な機器(ここでは画像形成装置B)に対して、リソースレンタルの要求を行う。画像形成装置Bの通信管理モジュール11は、自機のメモリ管理モジュール10に対して、画像形成装置A用のメモリ確保の要求をする。ここで、メモリ確保が可能となれば、画像形成装置Bの通信管理モジュール11は、画像形成装置Aの通信管理モジュール11に対し、リソースレンタルOKを通知する。さらに、他機でのリソースレンタルを受けた旨を、画像形成装置Aのメモリ管理モジュール10に通知する。ここからリソースレンタルが開始される。
【0027】
次に、図5を参照しながら、リソースレンタル開始から、ジョブが継続されてレンタルしたリソースを利用するまでを説明する。画像形成装置Bからリソースレンタルを受けた画像形成装置Aでは、メモリ管理モジュール10がエンジン管理モジュール12からメモリ確保要求を受けると、自機のリソースは枯渇状態であっても、レンタルしたリソースがあるため、メモリフルは起さず、エンジン管理モジュール12のデータ格納要求を受け付ける。メモリ管理モジュール10は、この受け付けたデータを、2者の通信管理モジュール11を介して、画像形成装置Bのメモリ管理モジュール10に対して送信し、データ格納を行う。データ格納を終えた画像形成装置Bの通信管理モジュール11は、データ受信が完了したことを画像形成装置Aに伝える。これを繰り返すことでジョブを完了させる。
【0028】
次に、図6を参照しながら、ジョブ完了からリソースレンタル終了までを説明する。ジョブ実行が完了した画像形成装置Aのエンジン管理モジュール12は、メモリ管理モジュール10に対してリソースの開放を通知する。そこでメモリ管理モジュール10は、画像形成装置Bからレンタルしているリソースを開放するために、レンタルリソース開放要求を2者の通信管理モジュール11を介して画像形成装置Bに伝える。開放要求を受けた画像形成装置Bのメモリ管理モジュール10は、画像形成装置A用に確保しておいたメモリを開放する。開放完了したことを、通信管理モジュール11を介して画像形成装置Aに通知することで、リソースレンタルが終了となる。
【0029】
次に、図7を参照しながら、メモリフルが起こった場合にリソースレンタルを行ってジョブを継続していることをユーザーへ通知するためのパネル管理モジュールでの表示を説明する。ジョブを実行中にメモリフルが起きると、リソースレンタル実行可能な他機を検索する。これが完了すると、どの機器からリソースをレンタルしているかを通知するための情報を表示し、ジョブは再度実行される。
【0030】
次に、図8を参照しながら、画像形成装置A(リソースを借りる側の機器)において、メモリフル発生時にメモリ管理モジュールが、リソースレンタルを実行するかどうかの判定をする場合を説明する。画像形成エンジンを管理するエンジン管理モジュールから、リソースを管理するリソース管理モジュールにリソース要求を伝え、リソース借用可能ジョブ名とリソース借用可能アプリ名とリソース借用可能動作条件とリソース借用可能ユーザー名のいずれか1つ以上が設定されたリソース借用条件に従って、リソース管理モジュールで借用可否を判定し、借用可の判定結果に応じて、ネットワークを介して他装置にリソースレンタルを要求し、他装置からリソースレンタルが許可されたことに応じて、リソース管理モジュールは、借用したリソースをエンジン管理モジュールに使用させる。
【0031】
メモリフルが発生すると、メモリ管理モジュール10は、実行中のジョブの名前が、リソースレンタル許可テーブルにあるかどうか調べる。あれば、リソースレンタル実行要求を出す。なければ、リソースレンタル実行要求を出さない。このようにして、ジョブに応じてリソースレンタル実行要求を出すことに制限をかける。また、メモリフルが発生すると、メモリ管理モジュール10は、実行中のアプリ15の名前が、リソースレンタル許可テーブルにあるかどうか調べる。あれば、リソースレンタル実行要求を出す。なければ、リソースレンタル実行要求を出さない。このようにして、アプリに応じてリソースレンタル実行要求を出すことに制限をかける。
【0032】
また、メモリフルが発生すると、メモリ管理モジュール10は、リソースレンタル許可テーブルのユーザー設定内容を調べる。動作状態がユーザー設定内容の条件を満たしていれば、リソースレンタル実行要求を出す。そうでなければ、リソースレンタル実行要求を出さない。このようにして、ユーザー設定内容に応じて、リソースレンタル実行要求を出すことに制限をかける。
また、メモリフルが発生すると、メモリ管理モジュール10は、リソースレンタル許可テーブルのユーザー権限を調べる。認証モジュール14によって認証されたユーザーが、リソースレンタル実行の権限をもっていれば、リソースレンタル実行要求を出す。そうでなければ、リソースレンタル実行要求を出さない。このようにして、ユーザー権限に応じて、リソースレンタル実行要求を出すことに制限をかける。
【0033】
次に、図9を参照しながら、画像形成装置B(リソースを貸す側の機器)において、他機からリソースレンタル要求を受けた時に、それを許可するかどうかの判定をする場合を説明する。ネットワークを介して他の画像形成装置からリソースレンタルの要求を受信すると、リソース貸与可能ジョブ名と、リソース貸与可能アプリ名と、リソース貸与可能動作条件と、リソース貸与可能借用側ユーザー名と、リソース貸与可能借用側ユーザー名とリソース貸与可能貸与側ユーザー名の組のいずれか1つ以上が設定されたリソース貸与条件に従って貸与可否を判定し、貸与可の判定結果に応じて、ネットワークを介して画像形成装置にリソースレンタルを許可し、貸与したリソースを画像形成装置に使用させる。
【0034】
他機からリソースレンタル要求を受けると、通信管理モジュール11は、画像形成装置A(リソースを借りる側)で実行中のジョブの名前が、リソースレンタル許可テーブルにあるかどうか調べる。あれば、リソースレンタルを許可する。なければ許可しない。このようにして、実行中のジョブに応じて、リソースレンタルの許可を制限する。また、他機からリソースレンタル要求を受けると、通信管理モジュール11は、画像形成装置A(リソースを借りる側)で実行中のアプリ15の名前が、リソースレンタル許可テーブルにあるかどうか調べる。あれば、リソースレンタルを許可する。なければ許可しない。このようにして、実行中のアプリに応じて、リソースレンタルの許可を制限する。
【0035】
また、他機からリソースレンタル要求を受けると、通信管理モジュール11は、画像形成装置B(リソースを貸す側)のリソースレンタル許可テーブルのユーザーの設定内容を調べる。動作状態がユーザー設定内容の条件を満たしていれば、リソースレンタルを許可する。そうでなければ許可しない。このようにして、画像形成装置B(リソースを貸す側)でのユーザーの設定内容に応じて、リソースレンタルの許可を制限する。また、他機からリソースレンタル要求を受けると、通信管理モジュール11は、画像形成装置A(リソースを借りる側)の認証モジュールによって認証されたユーザーの権限について、画像形成装置B(リソースを貸す側)のリソースレンタル許可テーブルを調べる。そのユーザーにリソースレンタルの権限があれば、リソースレンタルを許可する。そうでなければ許可しない。このようにして、画像形成装置A(リソースを借りる側)の認証モジュールによって認証されたユーザーの権限に応じて、リソースレンタルの許可を制限する。
【0036】
また、他機からリソースレンタル要求を受けると、通信管理モジュール11は、画像形成装置A(リソースを借りる側)の認証モジュールによって認証されたユーザーの権限と、画像形成装置B(リソースを貸す側)の認証モジュールによって認証されたユーザーの権限について、画像形成装置B(リソースを貸す側)のリソースレンタル許可テーブルを調べる。両方のユーザーにリソースレンタルの権限があれば、リソースレンタルを許可する。そうでなければ許可しない。このようにして、画像形成装置A(リソースを借りる側)の認証モジュールによって認証されたユーザーと画像形成装置B(リソースを貸す側)の認証モジュールによって認証されたユーザーの権限に応じて、リソースレンタルの許可を制限する。
【0037】
リソースを貸す場合に、現在実行中のアプリやジョブに応じて、貸与制限を行うこともできる。例えば、リソース貸与可能な相手ジョブに対しても、自機で実行中のジョブのリソースが不足する場合は、自機で実行中のジョブに優先権を与えて、相手ジョブにリソースを貸与しないように制御する。また、リソース貸与中に、自機でリソースが不足した場合は、相手側にリソースを返却するように要求することもできる。リソースがメモリの場合を説明したが、他のリソースについても、同様にして制限つきでリソースレンタルを実行することができる。リソースを貸す側として画像形成装置の例を説明したが、サーバーやPCからリソースを貸すことも、同様にして可能である。例えば、色変換処理や画像回転処理を、サーバーのCPUを借りて実行することができる。
【0038】
上記のように、本発明の実施例では、画像形成装置を、設定されたリソース貸借条件従って、ネットワークに接続された他装置のリソースを借りたり他装置にリソースを貸したりする構成としたので、リソースの貸借を制限して分散処理を最適化できる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の画像形成装置は、リソースレンタルを行う画像形成装置として最適である。その他のグリッドコンピューティングや分散処理にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施例における画像形成装置(MFP)が接続されたネットワークシステムの概念図である。
【図2】本発明の実施例における画像形成装置の構成図である。
【図3】本発明の実施例における画像形成装置間の接続状態を示す模式図である。
【図4】本発明の実施例における画像形成装置のリソース枯渇からリソースレンタル開始までの処理手順を示す流れ図である。
【図5】本発明の実施例における画像形成装置のリソースレンタル開始からリソース利用までの処理手順を示す流れ図である。
【図6】本発明の実施例における画像形成装置のジョブ完了からリソースレンタル終了までの処理手順を示す流れ図である。
【図7】本発明の実施例における画像形成装置のリソースレンタルをユーザーへ通知するパネル表示を示す図である。
【図8】本発明の実施例における画像形成装置でリソースを借りる場合のリソースレンタル実行判定の処理手順を示す流れ図である。
【図9】本発明の実施例における画像形成装置でリソースを貸す場合のリソースレンタル実行判定の処理手順を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0041】
1・・・MFP、2・・・ネットワーク、3・・・サーバー、4・・・通信線、5・・・CPU、6・・・HDD、7・・・メモリ、8・・・エンジン、9・・・OS、10・・・リソース管理モジュール(メモリ管理モジュール)、11・・・通信管理モジュール、12・・・エンジン管理モジュール、13・・・パネル管理モジュール、14・・・認証モジュール、15・・・アプリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成用エンジンを管理するエンジン管理モジュールと、前記エンジン管理モジュールからのリソース要求に応じてリソースを管理するリソース管理モジュールと、リソース貸借条件を設定するリソース貸借条件設定手段と、ネットワークを介して他装置と通信する通信モジュールとを具備し、前記リソース管理モジュールは、前記リソース要求に応じて前記リソース貸借条件に従って前記通信モジュールを介して他装置のリソースを借りるリソース借用手段を備え、前記通信モジュールは、前記リソース貸借条件に従って他装置にリソースを貸すリソース貸与手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
ユーザーインターフェースの機能を管理するパネル管理モジュールを備え、前記リソース貸借条件設定手段は、前記パネル管理モジュールを介してリソース借用許可条件を設定する借用許可条件設定手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記借用許可条件設定手段は、リソース借り主となれるジョブ名とリソース借り主となれるアプリ名とリソース借用可能動作条件のいずれか1つ以上を設定する手段を備え、前記リソース借用手段は、前記リソース要求に関連するジョブ名またはアプリ名について前記借用許可条件設定手段を参照して借用可否を判定する手段を備えることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
利用者の認証を行う認証モジュールを備え、前記借用許可条件設定手段は、リソース借用を実行できるユーザー名を設定する手段を備え、前記リソース借用手段は、前記認証モジュールで認証されたユーザー名について前記借用許可条件設定手段を参照して借用可否を判定する手段を備えることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
ユーザーインターフェースの機能を管理するパネル管理モジュールを備え、前記リソース貸借条件設定手段は、リソースを貸す場合の制限条件を、前記パネル管理モジュールを介して設定する貸与許可条件設定手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記貸与許可条件設定手段は、リソース貸与可能ジョブ名とリソース貸与可能アプリ名とリソース貸与可能動作条件のいずれか1つ以上を設定する手段を備え、前記リソース貸与手段は、前記リソース要求に関連するジョブ名またはアプリ名について前記貸与許可条件設定手段を参照して貸与可否を判定する手段を備えることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
利用者の認証を行う認証モジュールを備え、前記貸与許可条件設定手段は、リソース貸与可能借用側ユーザー名とリソース貸与可能貸与側ユーザー名を設定する手段を備え、前記リソース貸与手段は、前記認証モジュールで認証されたユーザー名と受信したリソース借用側ユーザー名について前記貸与許可条件設定手段を参照して貸与可否を判定する手段を備えることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
画像形成エンジンを管理するエンジン管理モジュールから、リソースを管理するリソース管理モジュールにリソース要求を伝え、リソース借用可能ジョブ名とリソース借用可能アプリ名とリソース借用可能動作条件とリソース借用可能ユーザー名のいずれか1つ以上が設定されたリソース借用条件に従って、前記リソース管理モジュールで借用可否を判定し、借用可の判定結果に応じて、ネットワークを介して他装置にリソースレンタルを要求し、他装置からリソースレンタルが許可されたことに応じて、前記リソース管理モジュールは、借用したリソースを前記エンジン管理モジュールに使用させることを特徴とする画像形成リソースレンタル制御方法。
【請求項9】
ネットワークを介して他の画像形成装置からリソースレンタルの要求を受信すると、リソース貸与可能ジョブ名と、リソース貸与可能アプリ名と、リソース貸与可能動作条件と、リソース貸与可能借用側ユーザー名と、リソース貸与可能借用側ユーザー名とリソース貸与可能貸与側ユーザー名の組のいずれか1つ以上が設定されたリソース貸与条件に従って貸与可否を判定し、貸与可の判定結果に応じて、ネットワークを介して前記画像形成装置にリソースレンタルを許可し、貸与したリソースを前記画像形成装置に使用させることを特徴とする画像形成リソースレンタル制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−301745(P2007−301745A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−129906(P2006−129906)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】