説明

リソース管理システム

【課題】 フォント、フォーム、カラープロファイルなどのライセンスをサーバで管理することにより、許可されていないプリンタでの不正使用を防止するとともに、より細かなライセンス管理が行えるようにする。
【解決手段】 印刷ジョブを発行するPCと、認証サーバと、プリンタから構成され、印刷ジョブ発行に先立って、認証サーバに対して使用するリソースの認証情報を記載したチケットを発行要求し、発行されたチケットと印刷ジョブをプリンタに送出する。チケットと印刷ジョブを受け取ったプリンタは、チケットが正しいかどうか、リソースが許可されているかどうかをサーバに確認し、許可されているリソースのみを使用して印刷ジョブを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ等の印刷装置で使用する、フォントデータ、フォームオーバレイデータ、カラーマッチングデータ等の印刷リソースの管理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フォントはダウンロード時のプロテクトが無いか、キーFD方式と呼ばれるプロテクションが存在した。
【0003】
一方、プリンタのライセンス管理としては、特開2001-236183に見られるように、サーバを用いた使用可能なプリンタの認証を行うものがあった。
【特許文献1】特開2001−236183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キーFD方式では、ダウンロード時にFDにダウンロード済みであるという情報を書き込むことで、ダウンロード済みではないという情報が入っているFDが無ければ再ダウンロードできず、HDDのクラッシュ等、フォントが使えなくなったときの再ダウンロードができなかった。
【0005】
また、特開2001-236183に見られるプリンタのライセンス管理では、不正なプリンタへのアクセス防止、ドライバの整合性管理を行うことは出来たが、リソースの使用権管理を行うことは出来なかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、リソース使用権の認証サーバを設け、次の手順に従って印刷ジョブを実行することで、リソースの使用を管理することが可能となった。
【0007】
(1)PCは印刷ジョブを発行する前に、リソースチケット発行をサーバに要求する。
(2)サーバはリソースチケットを発行する。
(3)リソースチケットを付加したジョブをプリンタに送出する。
(4)プリンタからサーバにチケットの有効性を確認する。
(5)サーバはチケットの認証情報を返す。
(6)プリンタは認証情報から有効性を判断する。
(7)チケットが有効であると判断されたら印刷ジョブを実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プリンタに搭載されたリソースを用いて印刷を行う場合に、その使用権をサーバで管理し、使用許可不許可を判断して、チケット発行と認証を行う一方で、プリンタはサーバが発行した使用許可不許可情報に従って動作することにより、リソースにプロテクトをかけることなく使用権の管理が行える。さらに、期間限定での使用許可、ユーザ限定での使用許可などより細かいライセンス管理が可能となる。リソースデータそのものにプロテクト情報をもたないため、いわゆるプロテクト破りといった不正使用を行うことが防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は本発明の特徴をもっとも良く表した図であり、同図を用いて本発明のシステム構成を説明する。図1において、1はネットワークである。ネットワークは、物理的なケーブルと、通信のためのプロトコルを合わせた概念であり、ここではTCP/IPによる通信が行われているものとする。2はPCであり、プリンタ内に保持されているフォント、フォーム、カラープロファイルなどのリソースを用いた印刷ジョブを生成し、プリンタに送出する。3は印刷を実行するプリンタであり、1台の場合もあるが、通常は複数のプリンタがネットワーク上に接続されている。4は認証サーバであり、どのプリンタのリソースが使用可能かという情報を保持し、かつ要求に従って認証チケットを発行する。
【0010】
ここで使用するリソースについて説明する。フォントは文字の印字には欠かせないものであるが、フォントの使用権はライセンスによって束縛されている場合が多い。通常はプリンタ内に1〜5個程度のフォントを搭載し、これらの使用権はプリンタの代金に含まれるが、追加で搭載したフォントについては、フォントの購入もしくはライセンス料の支払いなど、対価を払って使用権を得る。指定したフォントが使用できない場合、代替フォントで印刷されることが一般的である。フォームについては、定型文書をあらかじめプリンタに登録しておくものであり、フォームデータを登録したプリンタであれば、非定型文に定型文書をオーバレイすることで、印刷処理時間短縮とデータ転送処理時間短縮を可能とする。例としては、定型の契約書をフォームとしてプリンタに登録しておき、契約相手の名前を印刷するときに契約書フォームをオーバレイして印刷することで、正規の契約書とするといった目的で使われる。フォームが使用できない場合、オーバレイしないで印刷するかエラーとするかはプリンタによって異なる。カラープロファイルは、印刷時の色合わせを行う情報であり、カラープロファイルを用いることで、PCのモニタやカラースキャナ等の画像処理デバイスとプリンタの色を合わせることが出来る。カラープロファイルが使用できない場合は、正確なカラーマッチングが行われないが印刷は可能である。
【0011】
図2は、印刷ジョブの実行手順を表した図である。PCが印刷ジョブを発行する前に、(1)でリソースチケット発行をサーバに要求する。サーバは(2)でリソースチケットを発行する。(3)ではリソースチケットを付加したジョブをプリンタに送出する。プリンタは(4)でサーバにチケットの有効性を確認し、サーバは(5)でチケットの認証情報を返す。プリンタは、認証の結果、リソースの使用権があると判断された場合は、そのリソースを用いて印刷を行う。使用権が無いと判断された場合、エラーとするか、そのリソースに代わり認証が不要なリソースを用いて印刷するか、リソースを使用しないで印刷するかのいずれかである。どの方法を取るかはプリンタの処理およびリソースによって異なる。一例としては、プリンタ内フォントの使用権が無いと判断された場合は、代替フォントを用いる。フォームデータの使用権が無いと判断された場合はエラーとする。カラープロファイルが使用できない場合は、カラーマッチングを行わずに印刷する。
【0012】
図3はPCの動作を表すフローチャートである。同図を用いて、印刷ジョブ発行時のPCの動作を説明する。まずステップS301ではサーバにプリンタIDを送信する。プリンタIDはプリンタのシリアル番号などプリンタを特定出来るものである。続けてS302で使用するリソース個数とリソース名を送出する。リソース名は、リソースを特定する情報であればよく、リソースの種類やファイル名、リソースファイル内部に格納されている情報などを組み合わせた情報であり、コンピュータで処理できれば人間にとって可読性のある名前でなくてもよい。例えばフォントであれば、書体名称とID、フォームであればフォームタイトルとID、カラープロファイルであればプロファイル名称などがこれに相当する。
【0013】
ステップS301とステップS302は連続して行われる必要があり、ネットワークでコネクションを張ってから解除するまでに連続して行われる。
【0014】
ステップS303では、サーバからチケットが発行されるのを待ち、発行されたチケットを受信する。ステップS304では受け取ったチケットを印刷ジョブに付加してプリンタに送出して処理を終了する。
【0015】
図4はチケット発行要求受信時のサーバの動作を表すフローチャートである。同図を用いて、チケット発行要求受信時のサーバの動作を説明する。ステップS401ではチケット発行要求を受信する。チケット発行要求には、プリンタのID、リソース数、リソース名を受け取る。ステップS402ではカウンターNにリソース数Nをセットする。ステップS403ではNが0より大きいかどうかを判断し、0より大きければステップS404にすすみ、0以下ならばステップS407に進む。ステップS404ではN番目のリソースが、IDで特定されたプリンタで使用してよいかどうかの判断を行う。ステップS405では前ステップで判断した情報を配列であるTableのN番目に保持する。配列Tableは少なくともN個のリソース許可/不許可情報を保持できる配列である。ステップS406ではNを1減じてステップS403に戻る。ステップS407では配列Tableからチケット情報を生成する。チケット情報には、チケット生成時刻、リソース数、各リソースの許可不許可情報が暗号化され、改ざん防止情報とともに保持される。改ざん防止は、一般にハッシングと呼ばれる方法で行われ、秘密キーと公開キーを用いるものである。即ち、サーバ内に保持された秘密キーとチケットデータからハッシング情報を生成し、チケットに保持する。改ざんされているかどうかは公開キーを用いて判断することが出来るが、新たな改ざん防止情報を生成しようとしても公開キーでは生成できないものであり、インターネット等を使用したファイル転送システムではデジタル署名等で使われている。ステップS408では、生成したチケットを要求元のPCに送出して処理を終了する。
【0016】
図5はプリンタの動作を表すフローチャートである。同図を用いて、印刷ジョブ受信時のプリンタの動作を説明する。ステップS501では印刷ジョブを受信する。印刷ジョブには、リソースの使用許可不許可を判断するためのチケットが付加されている。ステップS502ではチケットをサーバに送出する。ステップS503では、サーバからの認証情報を受信する。
【0017】
ステップS504では、使用不許可とされたリソースの使用を停止する。もし全リソース使用不許可となっていた場合は、全てのリソースの使用を停止するため、フォント、フォーム、カラープロファイルは使用できないが、リソースを使用しないでビットマップイメージの印刷やグラフィックの印刷を行うことは可能である。ステップS505では前ステップで設定したリソースの状態で印刷を実行する。
【0018】
図6はチケット認証情報要求受信時のサーバの動作を表すフローチャートである。同図を用いて、チケット認証情報要求受信時のサーバの動作を説明する。ステップS601ではチケット発行要求を受信する。ステップS602では改ざんチェック処理を行う。ステップS603では前ステップの処理に従って改ざんされているかどうかを判定し、改ざんされていると判断された場合はステップS606に進み、改ざんされていないと判断された場合はステップS604に進む。なお、プリンタのIDがチケット内に書かれているプリンタとは異なるプリンタから送られてきたチケットも改ざんと判断する。ステップS604では、チケットの有効期限を判断し、有効期限切れ、即ちTimeoutしていると判断された場合はステップS606に進み、有効期限内と判断された場合はステップS605に進む。ステップS605では、チケットの内容から、使用許可不許可情報を生成する。ステップS607では、リソースの使用許可不許可情報をプリンタに返送する。
【0019】
図7はサーバの管理画面である。同図から分かるように、管理情報は、プリンタ毎に、ComputerのMACアドレス、有効期限、使用可能なリソース名が入っている。MACアドレスは、どのコンピュータかを特定するときに使用される。コンピュータ毎ではなく、ユーザ毎に認証する場合は、ここにユーザ名もしくはユーザIDが入る。通常はより厳密に管理するためにパスワードを使用するが、管理者からもパスワードを見ることはできない。有効期限は、そのリソースの使用期限であり、有効期限が切れたリソースは管理対象から外される。リソースの種類は、プリンタで認証され管理される単位毎にサーバで管理される。例えば、この画面に表示されている状態では、カラープロファイルはAll_Profと設定されており、全プロファイルまとめて使用許可されるが、フォントは書体ごと、フォームもそのデータ毎に使用許可情報が設定される。あるユーザは全フォント、あるユーザは個別のフォントというように、ユーザによって使用許可される単位が変わっても良い。ユーザ、有効期限、リソースのいずれかが異なる場合には1件として表示される。すなわち同一ユーザで複数のリソースを使う場合は複数の件として表示される。
【0020】
本実施例で表示されている情報以外に、個別のユーザ名、ユーザを特定するID、複数リソースをグループ化して管理対象とする場合のグループ情報、使用開始時期、一時停止情報などを設定することもありうる。
【0021】
次に、実際の動作を説明する。
【0022】
PC上では、印刷時に、フォントA、フォントBを使用して印刷を行う印刷ジョブを発行し、プリンタXで印刷しようとしている。フォントAはプリンタXで使用許可、フォントBはプリンタYで使用不許可である。ただしダウンロード時点では、ライセンス等の管理はされておらず自由にダウンロード可能である。サーバにチケットを発行してもらい、印刷ジョブに、フォントA、フォントBを使用するというチケットを付加して、PCはプリンタXに印刷ジョブを送る。プリンタXはサーバに対してチケットを送ると、サーバは、フォントAは使用許可、フォントBは使用不許可という情報を返す。プリンタはサーバからの情報に従って、フォントBを使用不可能にして印刷を行う。
【0023】
ユーザがフォントの使用権を購入し、フォントBをプリンタXで使用可能という情報がサーバにセットされると、上記の同じ動作で、サーバは、フォントA、Bとも使用許可という情報を返す。プリンタはサーバからの情報に従って、フォントBを使用不可能にして印刷を行う。ここでプリンタにフォントを再ダウンロードしたりライセンスキーを登録する必要は無く、サーバのみで管理できる。
【0024】
リソースの使用に有効期限がある場合も同様に、サーバ上で使用可能な期間のみ使用許可を返せば、プリンタから使用期限が切れたリソースを削除するといった作業は不要である。
【0025】
また、プリンタのIDのかわりにユーザごとにIDを持つことによって、ユーザごとの使用権管理を行うことも可能である。
【0026】
サーバは同一ネットワーク上に無くてもよく、リソースを提供するベンダーが管理しても良い。後者の場合、ユーザが悪意を持って改ざんすることが前者に比べ困難になる。
【0027】
以上述べたように、サーバでリソースの使用許可不許可を判断して、チケット発行と認証を行い、プリンタがその認証情報に従って動作することにより、リソースにプロテクトをかけることなく使用権の管理が行え、かつ期間限定などより細かいライセンス管理が可能となる。
【0028】
なお、本発明はあらかじめ各装置に実装されたプログラムとして実施してもよく、また汎用コンピュータ等にロードされて実行されるソフトウェアプログラムとして実施してもよく、またそのプログラムをCD-ROM等の媒体に記憶させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を実施したシステムの構成を表した図である。
【図2】本発明のデータの流れを表した図である。
【図3】PCの印刷ジョブ発行時の動作を表すフローチャートである。
【図4】サーバのチケット発行時の動作を表すフローチャートである。
【図5】プリンタの印刷ジョブ受信時の動作を表すフローチャートである。
【図6】サーバの、リソースの使用許可不許可情報を発行するときの動作を表すフローチャートである。
【図7】サーバにおけるユーザ編集・登録画面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷に用いられるソフトウェア資源を管理するシステムであって、印刷で使用するソフトウェア資源を使用する印刷ジョブを認証する認証手段と、印刷ジョブに関連付けられ認証手段によって発行された認証情報と印刷装置の情報から該印刷装置で該ソフトウェア資源が使用可能かどうかを判定する判定手段を含み、印刷ジョブに関連付けられたソフトウェア資源の使用許可不許可を制御することを特徴とするソフトウェア資源管理システム。
【請求項2】
使用が許可されたときには、その使用に対して課金を行うことを特徴とする請求項1のソフトウェア資源管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−26077(P2007−26077A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−207165(P2005−207165)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】