説明

リチウム電池用正極

【課題】比容量が大きく、大電流取得が可能な放電特性に優れ、かつ劣化が少ないリチウム電池を実現するための正極を提供する。
【解決手段】リチウムイオンを電気化学的に挿入脱離しうる正極活物質であるリチウム金属酸化物と、導電助剤の炭素材料と、これらの粒子を結着するためのバインダー材料とで構成され、導電助剤が、リチウム金属酸化物の粒子表面上に炭素をすべて直接形成し被覆してなるリチウム電池用正極とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた電池特性を実現できるリチウム電池用正極に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器の小型化、高性能化、携帯型化によって、電池の需要が高まっている。それに応じて電池の改良、開発はますます活発化している。また、電池の新しい適用領域も拡大してきている。
【0003】
鉛電池、ニッケルカドミウム電池(以下、Ni/Cd電池と称す)だけであった民生用の二次電池市場に、1990年前後から携帯機器の急速な普及とともに高エネルギー密度であるニッケル水素電池(以下、Ni/MH電池と称す)とリチウムイオン電池(以下、Liイオン電池と称す)が開発され普及して大幅なシェアを占めるに至った(非特許文献1参照)。
【0004】
しかし、携帯電話やノートPCに代表される電子機器は頻繁なモデルチェンジを繰り返し、そのたびに多機能化、小型化していっそうの高エネルギー密度化を二次電池に要求してきている。
【0005】
また、近年、京都議定書(COP3)などに謳われているように、環境保全、環境負荷低減、物質エネルギーの有効利用が叫ばれるようになり、順次義務化されてきている。二次電池に関しても、規制対象物質の厳格な管理や当該物質を含む電池の使用規制が求められるようになり、電池構成材料のリサイクル化も要求されるようになってきた(例えば、非特許文献2参照)。こうした環境負荷低減、信頼性の確保のためには、電池劣化の進行を極力抑制し、長寿命化を図って物質エネルギーの有効利用を図ることが重要な対策の一つである。
【0006】
電池特性を向上させ、電池劣化を抑制する根本的な方策は高機能の電池材料の探索や開発、およびその改質、電池構成法の最適化などが挙げられる。
【0007】
Liイオン電池においても、さらなる高性能化を目指して正極活物質では、LiCoOの改質のほか、LiNiO、スピネルLiMn,Co,Ni,Mn三元系リチウム金属酸化物Li(CoMnNi)O(x+y+z=1)、オリビンLiFePOなどが開発されているし、負極についてもグラファイト材料、Si系やSn系合金などが研究されている(非特許文献3および非特許文献4)。
【0008】
正極に関して言えば、上述したように優れた特性の正極活物質を採用することはもちろんであるが、正極が正極活物質だけでなく十分な導電性を確保するための導電助剤、および、これらの粒子を結着、成形するためのバインダーで構成された多孔質電極であることを考えると、電極反応に伴う電子の移動を円滑に進めるための導電助剤の導電率、粒子形状、正極活物質と導電助剤との混合状態も特性向上、劣化抑制の条件となる。
【0009】
しかしながら、現実には比重の大きく異なる正極活物質と導電助剤を混合し適正に分散することは非常に困難であり、必然的に導電助剤の含有量が多くなり電池反応に与る正極活物質の含有量が相対的に減少し、特性が十分に向上しないことがしばしばであった。また、電池の充放電に伴うリチウムの正極活物質内への挿入脱離によって膨張収縮の繰り返しが正極活物質と導電助剤との接触状態を悪化させ電池特性の劣化を促進する(非特許文献5)という課題があった。
【非特許文献1】オーム社編集部、「特集 飛躍する二次電池電池の世界PartII」、OHM、2006.02,p.32(2006).
【非特許文献2】社団法人電池工業会ホームページ、http://www.baj.or.jp/recycle/industrial.html,2008.5.26.
【非特許文献3】岡田重人、「リチウムイオン二次電池第二版」、第3章、日刊工業新聞社、pp.35−37(2000).
【非特許文献4】日経エレクトロニクス2005.2.28,pp.34−35(2005).
【非特許文献5】田渕光春、竹内友成、鹿野昌弘、辰巳国昭、「Fe含有Li2MnO3系正極の作製と炭素複合化による高出力化の検討」、電池技術委員会資料19−07、電池技術委員会(2007).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、上記現状を改良し、比容量が大きく、大電流取得が可能な放電特性に優れ、かつ劣化が少ないリチウム電池を実現するための正極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を達成するために、本発明の一態様では、リチウム塩を溶質として溶解した非水有機溶媒を電解液として含むリチウム電池において、正極活物質であるリチウム金属酸化物と、導電助剤の炭素材料と、これらの粒子を結着するためのバインダー材料とで構成され、かつ、導電助剤のすべてがリチウム金属酸化物の粒子表面上に炭素を直接形成し被覆してなるリチウム電池用正極を提案するものである。
【0012】
本発明の一態様では、この場合、導電助剤の重量割合が正極活物質重量に対して4wt%以上20wt%以下であることを提案する。
【0013】
さらに本発明の一態様では、あらかじめ正極を構成するリチウム金属酸化物、導電助剤、およびバインダー材料の重量割合を決めておき、正極活物質であるリチウム金属酸化物粒子上に該重量割合の範囲内となるよう導電助剤となる炭素材料を直接表面上に固着被覆して形成し、その生成割合を算出した上で、必要ならば該混合割合を満たすようこれに同種または異種の導電助剤を必要量加えて混合し、正極を製造することを提案するものである。この場合、正極活物質表面に直接形成する炭素重量割合は正極活物質重量に対して1.5wt%以上15wt%以下となるように材料を作製することを提案する。
【0014】
本発明の一態様では、リチウム金属酸化物粒子上に導電助剤である炭素を直接形成し被覆するもっとも簡易で効果的な方法として化学気相成長法を提案する。当該方法において本発明の一態様では、炭素を形成するための原料ガスがアセチレンガスまたはエチレンカーボネートガスであり、これを不活性ガスもしくは低反応性ガスをキャリアガスとして、該リチウム金属酸化物粒子に供給して該炭素を形成する。
【0015】
本発明の一態様によると、リチウム金属酸化物粒子上に炭素を直接形成するために、リチウム金属酸化物を設置する温度を350℃以上800℃以下とし、室温からかかる温度まで昇温する期間にはキャリアガスを供給してあらかじめ反応系内の酸素を除去し、該温度に到達した後、該リチウム金属酸化物粒子への原料ガス供給を開始する。原料ガスを供給する時間を5分以上1時間以下とし、原料ガスの供給量については正極活物質粒子1g当たり毎分2ml以上とし、該原料ガスの供給はキャリアガスの供給を伴うものとし、その供給量を原料ガスに対して1倍以上7倍以下とすることを提案する。
【0016】
本発明の一態様では、リチウム電池用正極に用いる炭素/リチウム金属酸化物の複合材料の製造方法に関して、当該リチウム金属酸化物粒子上に直接炭素を形成する場合、その炭素形成のためにあらかじめ当該リチウム金属酸化物粒子上に触媒を担持する方法を提案する。
【0017】
すなわち、まず、Fe,Ni,Co,Cu,Sn,Zn,Cr,In,Sbの金属塩化物または硫化物または炭酸塩もしくは酢酸塩の1種あるいは複数種を溶質として0.05wt%以上10wt%以下の濃度となるよう溶解した水溶液に、10g/リットル以上500g/リットル以下の正極活物質粒子を浸漬し乾燥して該正極活物質粒子表面上に炭素成長の触媒を付与する。この正極活物質の一定量を石英管に設定し、一定温度で一定時間、乾燥Arガス、乾燥窒素ガス、乾燥ヘリウムガスなどのキャリアガスとともに原料としてアセチレンガス、エチレンガスなどを流入して該正極活物質粒子表面上に導電助剤である炭素を固着形成する。
【0018】
当該化学気相成長法(CVD法)による触媒の付与に用いる水溶液への正極活物質粒子の浸漬時間は特に限定されないが、一例として1分間以上1時間以内とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
上記のように、正極活物質粒子上に導電助剤である炭素を直接形成し被覆する正極を適用することによって、比容量が大きく、大電流取得が可能な放電特性に優れ、かつ劣化が少ないリチウム電池を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
かかる構成の正極が効果的となる理由としては、すべての、または一部の導電助剤を直接正極活物質粒子の表面に固着することによって、正極活物質と導電助剤の接触抵抗が大幅に低減でき、正極活物質表面上で起こる電極反応に必要な電子の授受が極めて円滑に進むようになるためと解釈できる。また、正極活物質表面に固着させることによって限られた導電助剤を導電性確保のために効果的に配置させることも可能になると解釈できる。
【0021】
リチウム電池の負極としては、リチウム金属を直接電極とする他、天然グラファイトや、グラファイト化小球体、不定形炭素、PIC(Pseudo Isotropic Carbon)、FMC(Fine Mosaic Carbon)、ポリアセンやポリパラフェニレンなどの高分子化合物を焼成したカーボンなど、リチウムを挿入脱離することができるカーボン材料、Sn系、Si系合金などを選択することができる。ただし、リチウム電池の電池反応が円滑に行われる物質であれば何らこれらに限定されることはない。
【0022】
リチウム電池用の正極活物質としては、LiCoO、スピネルLiMnO、LiNiO、オリビン型LiFePO、LiCoMnNi(x+y+z=1)などのリチウム金属酸化物が考えられるが、リチウム電池の電池反応が円滑に行われる物質であれば、何らこれらに限定されることはない。
【0023】
また、電解液としては、LiClO,LiAsF,LiPF,LiBF,LiSbF,LiN(SOCF,LiCFSOなどのリチウム塩を溶質として、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、2−メチルテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジオキソランなどの非水溶媒単独、または混合溶媒に溶解した溶液を用いるが、同様に、リチウム電池の電池反応が円滑に行われる物質であれば何らこれらに限定されることはない。
【0024】
本発明の一形態では、正極活物質粒子表面上に直接形成する導電助剤となる炭素の重量割合を正極活物質重量に対して4wt%以上20wt%以下であることを提案する。
【0025】
導電助剤は電池反応に関わる電子の移動を円滑にする役割を果たしており、正極活物質粒子表面上に直接形成する炭素の重量割合が4wt%未満であると電子の円滑な授受が阻害され、実用に供する電流の取得ができない。しかし、導電助剤が20wt%超では、肝心の正極活物質の含有割合が低下し、容量自体が低下して実用電池に供することができない。
【0026】
本発明の一形態によると導電助剤は正極活物質粒子上に直接形成することで含有する方法を提案するが、電池規格上正極活物質と導電助剤との混合割合が厳密に決められ、かつ正極活物質粒子上に形成する炭素の量を厳密に制御することが困難などの条件では、あらかじめ正極活物質粒子上に直接炭素を形成した量を計測し、この複合粒子に別の同種または異種の導電助剤を混合して規定の混合割合にする方法も提案する。この場合、正極活物質粒子表面上に直接形成する炭素の重量割合は、正極活物質重量に対して1.5wt%以上15wt%以下であることを併せて提案する。当該方法では製造工程が増加するものの、正極活物質粒子表面上に直接形成した炭素が、充放電による活物質の膨張収縮の繰り返しに対しても良好な接触状態を失わないため、導電助剤のすべてを直接正極活物質上に形成した場合と同様の安定した電池特性を提供できる。
【0027】
本発明では、当該炭素/正極活物質複合材料を作製するために、正極活物質であるリチウム金属酸化物粒子上に炭素を直接形成し被覆する方法が化学気相成長法であって、当該炭素を形成するための原料ガスが不飽和炭化水素ガスであり、これを不活性ガスもしくは低反応性ガスをキャリアガスとして、該正極活物質粒子に供給して該炭素を形成することを提案する。
【0028】
不飽和炭化水素ガスとしてはエチレンガス、アセチレンガスがもっとも安価で容易に使用できるが、正極活物質粒子表面上に電池反応を円滑にする導電助剤としての機能を満たす炭素を形成することができればよく、何らこれらに限定されることはない。
【0029】
不飽和炭化水素ガスを原料ガスとして用いる理由は、飽和炭化水素に比べて反応性が高く効率的に炭素を生成できるためである。
【0030】
本発明の一形態では、かかる原料ガスを定量的、安定的に基盤材料である正極活物質表面上に供給するために、キャリアガスを供給する。キャリアガスとしては、アルゴン、窒素などの不活性ガス、あるいは低反応性ガスを用いることができるが、炭素形成反応の進行を阻害せず、定量的、安定的に原料ガスの供給を支えることができれば、何らこれらのガスに限定されることはない。
【0031】
本発明の一形態では、かかる原料ガスの供給によって正極活物質粒子表面上に炭素を形成するに当たって、炭素を直接形成するために正極活物質粒子を放置する温度(反応温度)を350℃以上800℃以下とすることを提案する。
【0032】
正極活物質粒子表面上に炭素形成する反応の詳細は不明だが、たとえばエチレンガスを原料とする場合、
→C+CH・・・(1)
が考えられる。反応温度が350℃未満だと、上記反応が進行せず、
2C→C・・・(2)
などの反応によって炭素形成反応の進行が困難になる。一方、反応温度が800℃を超えると、たとえば正極活物質がLiCoOの場合では
→2C+2H・・・(3)
2H+2LiCoO→LiO+CoO+2HO・・・(4)
などの反応によって、炭素形成は行われるものの、同時に正極活物質の分解が発生する可能性があり、好ましくない。
【0033】
本発明の一形態によると、室温からかかる温度まで昇温する期間にはキャリアガスを供給して酸素を反応系から除去し、該温度に到達した後、該正極活物質粒子への原料ガス供給を開始し、炭素形成反応を開始する。管状炉の温度が設定温度に達するまでのキャリアガスの供給量は、該設定温度に到達するまでに石英管内の酸素がパージされればよく、特に限定されることはないが、実用上の観点から好ましくは毎分30mlの供給量とする。毎分30ml未満だと、反応系内の酸素除去が十分に行われない恐れがあり、好ましくない。
【0034】
本発明の一形態では炭素形成反応を起こすための原料ガスを供給する時間(反応時間)を5分以上1時間以下とし、原料ガスの供給量を正極活物質粒子1g当たり毎分2ml以上とし、総供給量該原料ガスの供給はキャリアガスの供給を伴うものとし、その供給量を原料ガスに対して1倍以上7倍以下とすることを提案する。
【0035】
原料ガスを供給する時間、すなわち反応時間が5分未満だと、炭素形成量が不十分であり、1時間を越えると炭素形成量が鈍化し、いずれの場合も好ましくない。
【0036】
また、原料ガスに対するキャリアガスの供給量比が1未満だと、安定した原料ガスの供給が不可能であり、一方7倍を超える場合は原料ガスの濃度が極端に低下し、炭素形成量が低下していずれも好ましくない。
【0037】
本発明の一形態では、また、正極活物質粒子表面上に炭素形成を効果的に進めるため、触媒の使用を提案するものである。すなわち、炭素形成の触媒物質であるFe,Ni,Co,Cu,Sn,Zn,Cr,In,Sbの塩化物または硫化物または炭酸塩もしくは酢酸塩の1種あるいは複数種を溶質として0.05wt%以上10wt%以下の濃度となるよう溶解した水溶液に、10g/リットル以上500g/リットル以下の正極活物質粒子を浸漬し乾燥した後、該正極活物質粒子上に炭素を直接形成する方法を提案する。
【0038】
触媒として期待される上記金属の塩化物、硫化物または炭酸化物もしくは酢酸塩を付与するのは、たとえば触媒にニッケル、原料ガスにエチレンガスを用いた場合、
→C+CH・・・(1)
塩化ニッケルでは、
2NiCl+CH→2Ni+4HCl+C・・・(5)
であり、硫酸ニッケルでは、
2NiSO+CH→2Ni+2HO+2SO+CO・・・(6)
であり、炭酸ニッケルでは、
2Ni(CO+CH→2Ni+2HO+5CO・・・(7)
であり、酢酸ニッケルでは、
2Ni(OCOCH+CH→2Ni+2HO+8C・・・(8)
などの反応によって、触媒であるNi金属に変化する。
【0039】
上記触媒金属化合物が0.05wt%未満だと、正極活物質粒子表面上に担持される該触媒金属量が不足して炭素形成が効果的に進行せず、一方、10wt%を越えると、正極活物質表面上に担持された触媒化合物量の増加ほど炭素形成量は増加せず、いずれも好ましくない。
【0040】
また、当該金属触媒化合物を溶解した溶液中に浸漬する正極活物質粒子の量が10g/リットル未満だと該触媒化合物の正極活物質粒子上への担持が非効率であり、500g/リットルを超えた正極活物質を浸漬すると粒子表面上への金属触媒化合物の担持が不均一かつ不十分な量となり、いずれも好ましくない。
【0041】
以下に実施例によって本発明のリチウム電池用正極およびその製造方法を説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
リチウム電池用正極活物質としてLiCoO粉末をセラミックボートに秤取し、石英管に該試料ボートを設置する。この石英管を、該試料ボートが加熱部位に位置するよう管状炉に設置し、石英管の一端をガス供給管に、他端をガス排気ホースに繋ぐ。
【0043】
キャリアガスとしてアルゴン(以下Ar)ガスを50ml/minで5分間石英管に供給し、石英管内の酸素をパージする。Arガスの供給を継続しながら管状炉を加熱し炉内温度が650℃に達したらArガスを150ml/minに増加し、原料ガスとしてアセチレン(以下C)ガスを30ml/min(C/Ar=1/3.3)、20分間供給する。所定の時間に達したらCガス供給を停止し、Arガスの供給を50ml/minに戻す。5分経過後に管状炉の加熱ヒーターを停止し、炉内温度を低下する。2時間後に、Arガスの供給を停止し、石英管より試料ボートを取り出し、ボート内の粉末を秤量した。その結果、LiCoO粉末上に形成された炭素は、LiCoO粉末に対し14.91wt%だった。
【0044】
得られた粉末をめのう乳鉢で軽く攪拌した後、2.9164gを秤取し、めのう乳鉢に写して8分間らいかい機で混合し、これに0.1338gのテフロン(登録商標)粉末を加えさらに2分間混合して粗シート化し、ロール成形機でシート化した後、ポンチで打ち抜き正極を作製した。作製した正極は、LiCoO82wt%、炭素12wt%、テフロン6wt%、厚さ約0.5mm、重量0.12g〜0.13gであった。
【0045】
比較のため、Ni網をセラミックボート上に置き、これを石英管内に設置し、上記と同様に円筒炉に該石英管を設置した。セラミックボート上に得られた炭素は、0.1586gであった。LiCoO82wt%、該炭素12wt%、テフロン粉末6wt%、計3.004gとなるようそれぞれを秤取し、まずLiCoOとAB(アセチレンブラック)との混合をらいかい機で8分、これにテフロン粉末を加えて2分間混合し、同様にしてポンチで打ち抜き正極を作製した。
【0046】
作製した正極と、負極としてリチウム金属、電解液として1M LiPF−エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート(体積比1/1)、セパレータとしてジュラガード2502からなる2032型コインセルAおよびBを作製して電池特性を評価した。試験電池AおよびBの特性評価は、21℃の恒温槽に試験電池を設置し、自動充放電試験装置によって充放電電圧範囲3.0V〜4.3V、充電電流値1mA、充電と放電との間に10分間の休止を設ける条件で行った。
【0047】
図1に試験電池AおよびBの各放電電流値での容量を示した。
【0048】
すなわち、図1は、横軸に放電電流値、縦軸に試験電池の比容量(正極活物質重量当たりの放電容量)を示した図であり、図1の曲線1は本発明の試験電池Aの特性であり、曲線2は比較例である試験電池Bの特性を示している。
【0049】
図1で明らかなように、本発明の試験電池Aは、低電流で比容量が大きく、かつ大電流でも大きな比容量を維持する優れた電池特性を示した。
【0050】
これに対して比較例として示した試験電池Bでは、試験した放電電流全般での比容量は本発明の試験電池Aに比べて小さくなり好ましくないことがわかった。
【0051】
(実施例2)
実施例1で作製した本発明の正極を用い、実施例1と同じ材料を用いて2032型コイン電池を作製した。
【0052】
比較例として、実施例1の炭素/LiCoO複合材料を作製したのに用いた同じバッチのLiCoO粉末を正極活物質に用い、これに導電助剤としてアセチレンブラック(以下AB)、バインダーとしてテフロン粉末を、本発明の正極と同じ組成となるよう、それぞれLiCoO82wt%、AB12wt%、テフロン粉末6wt%を秤取し、実施例1の本発明の正極と同じ方法で作製し、これに本発明の電池と同じ負極、電解液、セパレータを用いて2032型コイン電池を作製した。
【0053】
それぞれの試験電池は、21℃に設定した恒温槽中に設置し、自動充放電装置によって、1mAの定電流で4.3Vまで充電し、10分間の休止の後、16mAの定電流で3.0Vまで放電し、10分間の休止を行った。この充放電を繰り返して電池の放電容量を測定した。
【0054】
結果を図2に示す。すなわち、図2は試験電池の第1回目の放電容量を100とした比容量の充放電サイクルに伴う変化を示したグラフであり、曲線3は本発明の容量変化を、曲線4は比較例としてABを導電助剤に用いた電池の容量変化を示した。
【0055】
図2より明らかなように、本発明の複合材料を正極として用いた電池は、従来の材料で作製した電池に比べ充放電サイクルに伴う容量の減少割合が小さく、優れた特性を示すことがわかった。
【0056】
(実施例3)
LiCoO粉末を入れたセラミックボートを石英管内に設置し、アセチレン(以下C)ガスを原料ガス、アルゴン(以下Ar)ガスをキャリアガスとして、Cガスの供給量を変えた以外は実施例1と同様の手法によってLiCoO粒子表面に炭素を形成し、複合材料を作製した。Cガスの供給量と得られた試料の生成炭素重量割合は表1のようになった。
【0057】
【表1】

【0058】
得られた各複合材料粉末4.5gを8分間らいかい機で混合し、いったん混合を停止してテフロン粉末0.5gを加え、さらにらいかい機で2分間混合し、粗シート化した。粗シートはロール成形機でシート化した後、ポンチで打ち抜き正極を作製した。
【0059】
作製した正極と、負極としてリチウム金属、電解液として1M LiPF−エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート(体積比1/1)、セパレータとしてジュラガード2502からなる2032型コインセルを作製して電池特性を評価した。
【0060】
作製したコイン電池は、21℃に設定した恒温槽に設置し、自動充放電試験装置によって電圧範囲3.0V〜4.3V、1mAの定電流、10分間の休止をはさんで2回充放電を行い、2回目の放電容量を測定し、コイン電池の正極に充填したLiCoOの重量当たりの比容量を算定した。
【0061】
結果を表1および図3に示す。表1および図3から明らかなように、本発明の提案する、正極活物質粒子表面上に直接形成した炭素割合がLiCoO重量に対して4wt%以上20wt%以下の範囲では比容量が100mAh/g以上となり優れた特性を示すことが明らかになった。
【0062】
これに対し、4wt%未満または20wt%超の重量割合の場合、十分な比容量を示さず好ましくないことがわかった。
【0063】
(実施例4)
上記実施例2で用いた試料1から7を用い、これに補填導電助剤としてアセチレンブラック(以下AB)を表2に示すそれぞれの量を秤取し、これにテフロン粉末0.15gとから、上記実施例に示したのと同じ方法で、LiCoO80wt%、導電助剤17wt%、テフロン粉末3wt%の組成となる正極を作製した。
【0064】
作製した正極と、負極としてリチウム金属、電解液として1M LiPF−エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート(体積比1/1)、セパレータとしてジュラガード2502からなる2032型コインセルを作製した。
【0065】
作製したコイン電池は、21℃に設定した恒温槽に設置し、自動充放電試験装置によってまず1mAの定電流で4.3Vまで充電し、10分間休止の後、16mAの電流値で3.0Vまで放電し10分間休止した。この操作を2回繰り返し、2回目の放電容量を測定した。該測定値より、コイン電池の正極に充填したLiCoOの重量当たりの比容量を算定した。
【0066】
【表2】

【0067】
結果を表2および図4に示す。表2および図4から明らかなように、本発明の提案する、正極活物質粒子表面上に直接形成した炭素割合がLiCoO重量に対して1.5wt%以上15wt%以下の範囲では比容量が60mAh/g以上となり優れた特性を示すことが明らかになった。
【0068】
これに対し、1.5wt%未満または15wt%超の重量割合の場合、十分な比容量を示さず好ましくないことがわかった。
【0069】
(実施例5)
LiCoO粉末5gを入れたセラミックボートを石英管内に設置し、上記実施例と同様の手順によってキャリアガスとしてアルゴン(以下Ar)ガスを50ml/minで5分間石英管に供給して石英管内の酸素をパージし、石英管を設置した管状炉を表3に示す所定温度に設定した。所定温度に到達したらArガスを150ml/minに増加するとともに、原料ガスであるアセチレン(C)ガスを60ml/min供給開始した。同条件を10分間維持した後、Cガスの供給を停止するとともにArガス供給を50ml/minに減少した。さらに5分後、管状炉のヒーターを停止し炉内温度を低下した。2時間後にArガス供給を停止し、試料ボートを石英管より取り出して表3に示す6種類の複合材料8〜13を作製した。
【0070】
【表3】

【0071】
得られた試料8〜13について、生成炭素のLiCoOに対する重量割合を求め、X線回折測定を実施して基盤のLiCoOの分解の有無を確認した。LiCoO重量に対する形成炭素割合(%)とLiCoOの分解を示す指標として分解生成物であるLiCOの回折ピークの有無を表3に示した。
【0072】
表3から明らかなように、試料9から試料12では10%以上の炭素が形成されており、LiCoOの顕著な分解も認められず、本発明で提案する温度範囲350℃〜800℃が妥当な範囲であることが確認された。これに対し、反応温度が300℃の試料8では、LiCoOの分解は認められないものの炭素の形成がほとんど起こっておらず、好ましくないことがわかった。また、反応温度が850℃の試料13では、一定量の炭素形成量が得られたものの、LiCoOの分解が認められ、同様に好ましくないことがわかった。
【0073】
(実施例6)
5gのLiCoOをセラミック製試料ボートに充填して石英管内に設置し、管状炉に設定した。上記実施例と同様の手順によってキャリアガスとしてアルゴン(以下Ar)ガスを50ml/minで5分間石英管に供給して石英管内の酸素をパージし、石英管を設置した管状炉の温度を450℃に設定した。管状炉が所定温度に到達したらArガスを150ml/minに増加するとともに、原料ガスであるアセチレン(C)ガスを60ml/min供給開始し、表4に示す時間維持した。該設定時間経過後、Cガスの供給を停止するとともにArガス供給量を50ml/minに戻した。さらに5分後、管状炉のヒーターを停止し炉内温度を低下した。2時間後にArガス供給を停止し、試料ボートを石英管より取り出して表4に示す6種類の複合材料14〜19を作製した。
【0074】
【表4】

【0075】
得られた試料14〜19について、生成炭素のLiCoOに対する重量割合(%)を求め、X線回折測定を実施して基盤のLiCoOの分解の有無を確認した。LiCoO重量に対する形成炭素割合(%)とLiCoOの分解を示す指標として分解生成物であるLiCOの回折ピークの有無を表4に示した。
【0076】
表4から明らかなように、試料15から試料18では10%以上の炭素が形成されており、またLiCoOの顕著な分解も認められず本発明で提案する5分以上1時間以下の反応時間が好ましい条件であることが確認された。これに対し、反応時間が3分の場合は反応時間が短すぎて十分な炭素形成量が得られず、また、反応時間が70分と長くなると形成炭素量は一定量得られるものの、LiCoOの分解が認められ、いずれの場合も好ましくないことがわかった。
【0077】
(実施例7)
上記実施例と同様に、LiCoO5gを試料ボートに充填して石英管内に設置し、この石英管を管状炉に設置してキャリアガスとしてアルゴン(以下Ar)ガスを50ml/minで5分間石英管に供給して石英管内の酸素をパージし、石英管を設置した管状炉の温度を450℃に設定した。管状炉が所定温度に到達したらArガスを150ml/minに増加するとともに、原料ガスであるアセチレン(C)ガスの供給を開始した。Cガスの供給量は表5に示す量を設定した。該条件を10分間維持した後、Cガスの供給を停止するとともにArガス供給を50ml/minに変更した。さらに5分後、管状炉のヒーターを停止し炉内温度を低下した。2時間後にArガス供給を停止し、試料ボートを石英管より取り出して表5に示す4種類の複合材料20〜23を作製した。
【0078】
【表5】

【0079】
得られた試料20〜23について、生成炭素のLiCoOに対する重量割合(%)を表5に示した。
【0080】
表5から明らかなように、試料21から試料23では1.5%以上の炭素が形成されており、本発明で提案する良好な電池特性を示す複合材料となり、LiCoO1g当たり2ml/min以上のCガス供給量が好ましい条件であることが確認された。これに対し、Cガス供給量が5ml/min(LiCoO1g当たり1ml/min)の場合は形成炭素量が不十分であり好ましくないことがわかった。
【0081】
(実施例8)
上記実施例と同様に、LiCoO5gを試料ボートに充填して石英管内に設置し、この石英管を管状炉に設置してキャリアガスとしてアルゴン(以下Ar)ガスを50ml/minで5分間石英管に供給して石英管内の酸素をパージし、石英管を設置した管状炉の温度を450℃に設定した。管状炉が所定温度に到達したらArガスを表6に示す量に変更するとともに、原料ガスであるアセチレン(C)ガス30ml/minの供給を開始した。該条件を10分間維持した後、Cガスの供給を停止するとともにArガス供給を50ml/minに変更した。さらに5分後、管状炉のヒーターを停止し炉内温度を低下した。2時間後にArガス供給を停止し、試料ボートを石英管より取り出して表6に示す6種類の複合材料24〜29を作製した。
【0082】
【表6】

【0083】
得られた試料24〜29について、生成炭素のLiCoOに対する重量割合(%)を表6に示した。
【0084】
表6から明らかなように、試料25から試料28では1.5%以上の炭素が形成されており、本発明で提案する良好な電池特性を示す複合材料となり、キャリアガス供給量の原料ガス供給量に対する比(Ar/C比)が1以上7以下という条件が好ましい条件であることが確認された。これに対し、CAr/C比が0.67であった試料24の場合は形成炭素量が不十分であり好ましくないことがわかった。
【0085】
(実施例9)
塩化ニッケル六水和物NiCl・6HOと蒸留水から表7に示す濃度のNiCl水溶液100mlを調製し、これにLiCoO5gを混合して10分間攪拌した。これをろ過して得られた粉末を乾燥し、表面上にNiClを定着したLiCoO粉末を得た。
【0086】
得られた粉末5gを秤取し、セラミック製試料ボートに移して該ボートを石英管内に設置し、管状炉にこの石英管を設定した。
【0087】
上記実施例と同様にしてキャリアガスとしてアルゴン(以下Ar)ガスを50ml/minで5分間石英管に供給し、石英管内の酸素をパージした後、Arガスの供給を継続しながら管状炉を加熱した。炉内温度が450℃に達したらArガスを100ml/minに増加し、原料ガスとしてアセチレン(以下C)ガスを30ml/min、5分間供給した。所定の時間に達したらCガス供給を停止し、Arガスの供給量を50ml/minに戻した。5分経過後に管状炉の加熱ヒーターを停止し、炉内温度を低下し、2時間後にArガスの供給を停止して石英管より試料ボートを取り出し、表7に示す6種類の複合材料30〜35を作製した。
【0088】
【表7】

【0089】
得られた試料30〜35について、生成炭素のLiCoOに対する重量割合(%)を測定した結果、表7に示す値となった。
【0090】
得られた試料に、補填導電助剤としてアセチレンブラック(AB)、バインダーとしてテフロン粉末を加え、LiCoO90wt%、導電助剤5wt%、バインダー5wt%の割合で構成される厚さ0.5mmの正極を実施例1と同様の手順で作製した。
【0091】
作製した正極と、負極としてリチウム金属、電解液として1M LiPF−エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート(体積比1/1)、セパレータとしてジュラガード2502からなる2032型コインセルを作製して電池特性を評価した。試験電池の特性評価は、21℃の恒温槽に設置し、自動充放電試験装置によって充放電電圧範囲3.0V〜4.3V、充電電流値1mA、充電と放電との間に10分間の休止を設ける条件で行った。2回目の放電容量を電池容量として評価した。
【0092】
結果を図5に示す。すなわち、図5は、触媒であるNiの担持量の目安となるNiCl水溶液の濃度と、正極活物質重量当たりの比容量の関係を示した図である。図5から明らかなように、NiCl濃度が0.05wt%以上、10wt%以下の溶液にLiCoOを浸漬した試料31、32、33、34では比容量が100mAh/g以上となり良好な特性を示すことが確認された。
【0093】
これに対して、試料30、試料35を用いた正極では、比容量が100mAh/gに達せず好ましくないことがわかった。
【0094】
(実施例10)
濃度0.05wt%硫酸第一スズSnSO水溶液を調製し、この水溶液500mlにLiCoOを表8に示す所定量を混合して10分間攪拌した。これをろ過して得られた粉末を乾燥し、表面上にSnSOを定着したLiCoO粉末を得た。
【0095】
得られた粉末5gを秤取し、セラミック製試料ボートに移して該ボートを石英管内に設置し、管状炉にこの石英管を設定した。
【0096】
上記実施例と同様にしてキャリアガスとしてアルゴン(以下Ar)ガスを50ml/minで5分間石英管に供給し、石英管内の酸素をパージした後、Arガスの供給を継続しながら管状炉を加熱した。炉内温度が450℃に達したらArガスを50ml/minのまま、原料ガスとしてアセチレン(以下C)ガスを30ml/min、5分間供給した。所定の時間に達したらCガス供給を停止し、Arガス50ml/minのみ供給を続けた。5分経過後に管状炉の加熱ヒーターを停止し、炉内温度を低下し、2時間後にArガスの供給を停止して石英管より試料ボートを取り出し、表8に示す6種類の複合材料36〜41を作製した。
【0097】
【表8】

【0098】
得られた試料36〜41について、生成炭素のLiCoOに対する重量割合(%)を測定した結果、表8に示す値となった。
【0099】
得られた試料に、補填導電助剤としてアセチレンブラック(AB)、バインダーとしてテフロン粉末を加え、LiCoO90wt%、導電助剤5wt%、バインダー5wt%の割合で構成される厚さ0.5mmの正極を実施例8と同様の手順で作製した。
【0100】
作製した正極と、負極としてリチウム金属、電解液として1M LiPF−エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート(体積比1/1)、セパレータとしてジュラガード2502からなる2032型コインセルを作製して電池特性を評価した。試験電池の特性評価は、21℃の恒温槽に設置し、自動充放電試験装置によって充放電電圧範囲3.0V〜4.3V、充電電流値1mA、充電と放電との間に10分間の休止を設ける条件で行った。2回目の放電容量を電池容量として評価した。
【0101】
結果を図6に示す。すなわち、図6は、触媒であるSnの担持量の目安となるSnSO水溶液へのLiCoO添加量と、正極活物質重量当たりの比容量の関係を示した図である。図6から明らかなように、SnSO水溶液へ5g(10g/l)以上、250g(500g/l)以下の範囲でLiCoOを浸漬した試料37、38、39、40では比容量が100mAh/g以上となり良好な特性を示すことが確認された。
【0102】
これに対して、試料36、試料41を用いた正極では、比容量が100mAh/gに達せず好ましくないことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0103】
以上述べたように本発明によれば、電池の放電容量が大きく、かつ充放電サイクルの経過後も優れた容量維持を示すリチウム電池特性を実現でき、環境保全とエネルギー有効利用に大きな貢献を果たすことになる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の正極複合材料の効果を示す一例としてリチウム電池の正極活物質重量当たりの比容量と電流値との関係を示した図である。
【図2】本発明の正極複合材料の効果を示す一例としてリチウム電池の第1回目放電容量に対する比容量の充放電サイクルに伴う変化を示した図である。
【図3】本発明の正極複合材料の効果を示す一例として各試料の形成炭素重量割合とリチウム電池の正極活物質重量当たりの比容量との関係を示した図である。
【図4】本発明の正極複合材料の効果を示す一例として各試料の形成炭素重量割合とリチウム電池の正極活物質重量当たりの比容量との関係を示した図である。
【図5】本発明の正極複合材料の効果を示す一例として正極活物質上に触媒担持するためのNiCl水溶液濃度とリチウム電池正極活物質重量当たりの比容量との関係を示した図である。
【図6】本発明の正極複合材料の効果を示す一例として正極活物質上に触媒担持するためのSnSO水溶液への正極活物質LiCoO添加量とリチウム電池正極活物質重量当たりの比容量との関係を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩を溶質として溶解した非水有機溶媒を電解液として含むリチウム電池における、リチウムイオンを電気化学的に挿入脱離しうる正極活物質であるリチウム金属酸化物と、導電助剤の炭素材料と、これらの粒子を結着するためのバインダー材料とで構成されるリチウム電池用正極であって、
前記導電助剤は、前記リチウム金属酸化物の粒子表面上に炭素をすべて直接形成し被覆してなるものであることを特徴とするリチウム電池用正極。
【請求項2】
前記導電助剤の重量割合が正極活物質重量に対して4wt%以上20wt%以下であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池用正極。
【請求項3】
前記リチウム電池用正極に関して、あらかじめ正極を構成するリチウム金属酸化物、導電助剤、およびバインダー材料の重量割合を決めておき、正極活物質であるリチウム金属酸化物粒子上に炭素重量割合が正極活性物質重量に対して1.5wt%以上15wt%以下の範囲内となるよう導電助剤となる炭素材料を直接被覆して形成し、
この正極活物質表面に直接形成されたその炭素重量生成割合を算出した上で、炭素重量割合が正極活物質重量に対して4wt%以上20wt%以下である割合を満たすよう、
これに同種または異種の導電助剤を必要量加えて混合するものであることを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池用正極。
【請求項4】
前記正極活物質であるリチウム金属酸化物粒子上に炭素を直接形成し被覆する方法が化学気相成長法であり、炭素を形成するための原料ガスが不飽和炭化水素ガスであり、これを不活性ガスもしくは低反応性ガスをキャリアガスとして、該正極活物質粒子に供給して炭素を形成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のリチウム電池用正極。
【請求項5】
前記正極活物質粒子上に炭素を直接形成する方法が、炭素を直接形成するために前記正極活物質粒子を放置する温度は350℃以上800℃以下であり、室温からかかる温度まで昇温する期間にはキャリアガスを供給して酸素を反応系から除去し、該温度に到達した後、前記正極活物質粒子への原料ガス供給を開始し、その供給する時間を5分以上1時間以下とし、原料ガスの供給量を前記正極活物質粒子1g当たり毎分2ml以上とし、該原料ガスの供給はキャリアガスの供給を伴うものとし、その供給量を原料ガスに対して1倍以上7倍以下とすることを特徴とする請求項4に記載のリチウム電池用正極。
【請求項6】
あらかじめFe,Ni,Co,Cu,Sn,Zn,Cr,In,Sbの塩化物または硫化物または炭酸塩もしくは酢酸塩の1種あるいは複数種を溶質として0.05wt%以上10wt%以下の濃度となるよう溶解した水溶液に、10g/リットル以上500g/リットル以下の正極活物質粒子を浸漬し乾燥した後、該正極活物質粒子上に炭素を直接形成し被覆することを特徴とする請求項4または5に記載のリチウム電池用正極。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−92819(P2010−92819A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264409(P2008−264409)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 研究集会名:2008年電気化学会北陸支部秋季大会 表面技術協会中部支部講演・見学会合同大会 主催者名:(社団法人)電気化学会 会長 依田 誠 (社団法人)表面技術協会 会長 縄舟 秀美 発表日:2008年9月25日 発表場所:富山大学五福キャンパス 黒田講堂会議室
【出願人】(000236920)富山県 (197)
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【Fターム(参考)】