説明

リッドのロック装置

【課題】部品点数を増加することなく、運転席からのロック解除操作のみでは完全にロックが解除されることのないリッドのロック装置の提供。
【解決手段】中央部にフロントリッド2に装着されたストライカ3が嵌入する嵌入孔13を有したベースプレート11と、ストライカ3に係合する係合部を有し、ベースプレート11に所定範囲回動可能に装着されワイヤーが連結されたロックレバー12と、ロックレバー12をロック方向に付勢するスプリングとを備え、ストライカ3はリッドの開放方向に複数段の係合部31、32を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リッドのロック装置に関するものであり、特に自動車のフロントリッドのロック装置に好適な複数のロック位置を有するリッドのロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロントリッドは、上辺を複数箇所のヒンジ機構で回動可能にフロントボディに支持され、ロック装置によって、フロントリッドを閉じた状態に保持するようになっている。また運転席近傍に配設されたオープンレバーを操作することにより、ロック装置のロック状態を解除することでフロントリッドを開くことができるようになっている。
【0003】
前記ロック装置の機構として、例えば前記フロントリッドに固着されたストライカの先端に設けた円錐状肩部を、フロントボディに固着されたラッチに設けたレバーに係止することにより、フロントリッドを閉じた状態に保持し、前記レバーとワイヤーで結線され運転席近傍に設けたオープンレバーを引くことにより、レバーを回動して前記ストライカに設けた円錐状肩部とレバーの係止状態を解くことによりフロントリッドを開けることができる構造が知られている。
例えば特許文献1には、このような構造のロック装置において、前記レバーに前記円錐状肩部に当接する突起を備え、僅かな力でロックを解除することのできるロック装置が開示されている。さらに特許文献2及び特許文献3には図1と同様にロック装置をフロントリッドの左右2箇所に設け、1本のワイヤーの引き操作の作動のみで左右のロック装置のロック解除を行うことができるロック装置が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1〜3に開示されたリッドのロック装置は何れも、例えば運転中にオープンレバーの誤操作によってロック装置を解除してしまった場合、フロントリッドがヒンジを中心にふらついてしまう。
そこで、従来より運転席からのロック解除操作のみでは、完全にロック解除が成されないような工夫が従来よりされてきており、例えば図1に示したようにフロントリッドの左右に運転席側からロック解除可能なラッチを設け、フロントリッドの中央部に室外から手でロック状態を解除可能なセカンドラッチを持つことで、運転席でラッチのロック状態を解除しただけではセカンドラッチのロック状態は解除されないために、フロントリッドがヒンジを中心にふらつかない構成のリッドのロック装置が知られている。このようなリッドのロック装置は例えば特許文献4に開示されている。
【0005】
【特許文献1】実公昭61−40856号公報
【特許文献2】実用新案登録第2597240号公報
【特許文献3】実用新案登録第2597241号公報
【特許文献4】特開2000−280936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献4に開示されているようなセカンドラッチを持つリッドのロック装置は、運転席からロック解除可能であるメインのラッチとは別にセカンドラッチを設けるため、セカンドラッチの分だけ部品点数が増加して生産コストがアップするとともに、他の機器類がレイアウト上の制約を受ける。
従って、本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、部品点数を増加することなく、運転席からのロック解除操作のみでは完全にロックが解除されることのないリッドのロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明においては、車両の外面を覆い、該車両にヒンジ機構によって支持され、該車両の運転席近傍に配設されているオープンレバーの操作により作動伝達部材を介して開閉されるリッドのロック装置において、前記ロック装置は、中央部に前記リッドに装着されたストライカが嵌入する嵌入孔を有したベースプレートと、前記ストライカに係合する係合部を有し、前記ベースプレートに所定範囲回動可能に装着され前記作動伝達部材が連結されたロックレバーと、該ロックレバーをロック方向に付勢するスプリングとを備え、前記ストライカは前記リッドの開放方向に複数段の係合部を有していることを特徴とする。
【0008】
このように構成することによって、前記運転室近傍に配設されているオープンレバーを車両の運転中に誤って操作しても、前記ストライカが有する複数段の係合部の一部の段の係合状態が解除されるだけで、ロック装置は完全には解除されない。そのため、車両の運転中のオープンレバーを誤操作しても、フロントリッドがヒンジを中心にふらついたり、開放することを防止することができる。
【0009】
また、前記ストライカは略棒状をなし、前記係合部は前記棒状に対して径方向に突出して形成され、前記ストライカが前記リッドの内面側に突設して取り付けられた状態で前記複数段の係合部は、リッドから離れる方向に順次径が大きくなるように形成されていることを特徴とする。
このことにより、オープンレバーの誤操作によってロックの最初の係合部が開錠されてリッドに装着された棒状のストライカが開放方向に嵌入孔から抜ける方向に移動しても、次の係合部が最初の係合部よりも大きいため、ストライカはロックレバーに係合され、リッドのロック装置は確実にロック状態を維持することができる。
【0010】
さらに、前記ロック装置の第一段目(初期段)は前記オープンレバーをフルストローク操作したときにロック開錠され、第二段目(後期段)は手動操作によりロック開錠を行うことを特徴とする。
このことにより、オープンレバーをフルストローク操作しても、第二段目(後期段)がロックレバーに係合されるため、リッドのロック装置は確実にロック状態を維持することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上記載のごとく本発明によれば、部品点数を増加することなく、運転席でオープンレバーを操作しただけでは、ストライカが有する係合部の一部の段の係合状態が解除されるだけで、ロック装置が完全には解除されず、そのため車両の運転中にオープンレバーを誤って操作しても、フロントリッドがヒンジを中心にふらついたり、開放することを防止することの出来るリッドのロック装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を例示的に詳しく説明する。但しこの実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0013】
図1は、本発明のリッドのロック装置を適用したキャブオーバトラックの車体の正面図である。該車体のフロントリッド2は、上辺が2箇所のヒンジ機構5で回動可能にフロントボディ1に支持され、下辺の左右2箇所に設けられたストライカ3L及び3Rをそれぞれフロントボディ1に設けられたラッチ4L及び4Rに係止し、フロントリッド2を閉じた状態に保持するようになっている。
【0014】
本発明にかかるラッチの詳細は図2及び図3に示すとおりであり、図2はラッチ4Lがフロントボディ1に取り付けられた状態での正面図、図3は図2のB矢視方向のラッチの側面図である。なお、図2及び図3にはフロントボディ1の左右2箇所のラッチのうち一方のラッチ4Lのみを示しているが、もう一方のラッチ4Rも同じ機構である。
【0015】
ラッチ4Lはフロントボディ1に取り付けられるベースプレート11と、該ベースプレート11に回動可能に軸着されたロックレバー12からなる。
また、前記ベースプレート11は略ハット形断面形状になっており両端部分にはフロントボディ1への取り付け部14a及び14bが形成され、中央部には前記ストライカ3Lが嵌入する嵌入孔13が設けられ、さらに他の周辺部品に取り付けられるためのフランジ部16が車体下方向に突出して形成されている。
【0016】
また、ロックレバー12は、ストライカ3と係合する略L字形状に折れ曲がった係合部21を有し、軸22によってベースプレート11に回動可能に軸着されている。そして、スプリング23によって係合部21がベースプレート11の嵌入孔13の中心方向、すなわちロック方向に付勢されている。
さらに、ロックレバー12にワイヤー24が接続され、該ワイヤー24はベースプレート11の入口端部に形成されたワイヤ取付けフランジ部15と運転席の間に介在するチューブ25の内部を通り、運転席に設けられたオープンレバー26に接続されており、運転席でオープンレバー26を引くことによりワイヤー24を介してロックレバー12を、軸22を中心に回動させることができる。
そして、前記フランジ部15とロックレバー12との間の位置にはワイヤー24に係止部材27が取り付けられ、オープンレバー26を引いたとき係止部材27がフランジ部15(チューブ25の端末部28)に達するまでロックレバー12が移動可能なようになっている(図2のAの距離)。すなわち、係止部材27がフランジ部15に当ることで、ロックレバー12の回動する範囲を制限しており、回動範囲は図2のα2となる。
【0017】
また、本発明にかかるストライカ3の詳細は図4及び図5に示すとおりであり、図4はストライカ3の側面図であり、図5は後述する受け皿状の圧接部材が遊嵌されたストライカ3の斜視図である。
ストライカ3は、軸部30の一端側30aが例えばネジ止めによってフロントリッド2に固着され、該軸部30のフロントリッドに固着した一端側30aとは反対の他端部に2段の係合部(第1の係合部31及び第2の係合部32)を持った構成となっている。また、該2段の係合部31及び32はフロントリッドに固着される一端側30aに近いほど径が小さく、即ち第1の係合部31の径は第2の係合部32の径より小さくなるように構成されている。
また、図5に示したように、ストライカ3の軸部30には、受け皿状の圧接部材33が遊嵌され、ストライカ3の軸部30に取り付けられた押えプレート40と圧接部材33との間には、圧接部材33を押圧するようにスプリング34が設けられている。
【0018】
次に、このような構造において、ロック状態を図6に示す。図6は図2におけるA−A断面図である。
フロントリッド2を閉じるとき、ストライカ3には第1の係合部31と、該第1の係合部よりも径の大きい第2の係合部32とを有しているため、第2の係合部32、次いで第1の係合部31が順に前記ロックレバー12の係合部21に当たって該ロックレバー12をスプリング23の回転力に抗して押圧回動させて、ベースプレート11の嵌入孔13に嵌入し、最後に第1の係合部31基端の段部31a(径d)にロックレバー12の係合部21が係合してロック状態となる。
【0019】
また、フロントリッド2を開けるときの状態を図7に示す。図7は図6の対応図で図2におけるA−A断面図である。
まず、運転席でオープンレバー26を引くことによりロックレバー12を図2における時計方向へα1を越えてα2以下の範囲で回動すると、即ち図6におけるA1を越えて且つA2以下である距離だけ移動させることでロックレバーの係合部21が段部31aから外れて、ロックレバー12と第1の係合部31によるロック状態が解除され、ロックレバーの係合部21が第2の係合部32と係合してロック状態となる。
このロックレバー12の回動範囲の調整は、オープンレバー26を引くことのできる距離、すなわち、図2におけるフランジ部15と係止部材27との距離Aによって調整することができる。
この距離Aを調整することによって運転席からオープンレバー26を引いたときに、ロックレバー12がα1を越えて且つα2以下の範囲回動するようなに調整される。すなわち、α2までの範囲に調整される。
【0020】
さらに、ロックを完全に解除するには、ロックレバー12を図2における時計方向へさらに回動させてロックレバーの係合部21を第2の係合部32から外すようにしなければならない。そして、ロックレバー12と第2の係合部32によるロック状態が解除され、ストライカが嵌入孔から抜け出すことで完全にロック解除がなされる。
このロックレバー12の回動は、ストライカ3が取り付けられたフロントリッド2を人手で開けると、ストライカ3は嵌入方向と反対の方向に引っ張られ、第2の係合部がロックレバーの係合部21に当たって該ロックレバー12をスプリング23の回転力に抗して開方向に押圧回動させてストライカが抜け、ロック状態が解除されるようになっている。
【0021】
ここで、図5、図6及び図7に示した圧接部材33はストライカ3がベースプレート11の嵌入孔13に嵌入するとき、ベースプレート11に当接しストライカ3の嵌入に伴い押えプレート40によってスプリング34をたわませながら軸部30に対し相対的にフロントリッド2方向へ移動し、ロック状態では強いバネ力でベースプレート11を押圧して第1の係合部31又は第2の係合部32とロックレバーの係合部21との係合を強固なものとし、またロックが解除された瞬間にスプリング34の強いバネ反力でストライカを嵌入孔13より抜け出させるようになっている。
【0022】
また、前記ストライカの第1の係合部31及び第2の係合部32の形状は特に限定されるものではないが、第1の係合部31はロックレバーの係合部21との係合を強固にするため、ストライカーの軸方向に直角方向の段部をもつ円錐状または半球状であることが好ましく、第2の係合部32は人手でフロントリッド2を開けてストライカ3を引っ張る際に、引っかかりによる力が過大にならないよう略球形であることが好ましい。
【0023】
図1に示したように、上記のように構成された左右のラッチ4L及び4Rをフロントボディ1の左右2ヶ所に設け、それに対応したフロントリッド2の左右2ヶ所にストライカ3L及び3Rを設けられる。
【0024】
このとき、左右のラッチ4L、4Rの何れか一方(例えば4L)と運転席に装着されたオープンレバー26間及び左右のラッチ4Lと4R間を1本のワイヤー24で連繋される。即ち、図8に示すようにワイヤー24はその中間部で左のラッチ4Lのロックレバー12と右のラッチ4Rのロックレバー12とにそれぞれ2ヶ所で接続された構造であり、左右のラッチ4L、4Rのそれぞれにワイヤ取付けフランジ部15を形成し、左右のラッチ用の係止部材27、27をワイヤーにそれぞれ設けて左右のラッチラッチ4L、4Rのロックレバー12、12の回動範囲をそれぞれ制限している。
【0025】
このように構成することで、室内では1つのオープンレバー26を引くだけで、左右両方の第1の係合部のロックを解除することができる。また、左右のラッチ4L、4Rを結ぶワイヤー24を左のラッチ4Lのベースプレート11の縦壁部50を利用して支持できるため、ワイヤー24の張り回しのためのクランプ等別途設置しなくてよく部品点数を削減できる。
【0026】
以上のように本実施の形態によると、運転室近傍に配設されているオープンレバー26を車両の運転中に誤って操作しても、前記ストライカ3が有する第1の係合部31の係合状態が解除されるだけで、第2の係合部32のロック状態が解除されない。
すなわち、オープンレバー26の操作範囲が、第2の係合部32のロック状態を解除できる範囲にないため、オープンレバーをフルストローク操作しても、リッドのロック装置は確実にロック状態を維持することができ、車両の運転中のオープンレバー26を誤操作しても、フロントリッド2がヒンジ5、5を中心にふらついたり、開放することを防止することができる。
また、従来のような二段階のラッチ構造とするためにセカンドラッチを別途設置する必要もなく、一箇所に設置されるラッチ装置において簡単な構造によって二段階のラッチ構造を達成することができ、部品点数を増加することなく、さらに組立て工数を増加することなくフロントリッドのロック装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
部品点数を増加することなく、運転席でオープンレバーを操作しただけでは、ストライカが有する係合部の一部の段の係合状態が解除されるだけで、ロック装置が完全には解除されないため、自動車のフロントリッドのロック装置として利用される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のリッドのロック装置を適用したトラックの正面図である。
【図2】本発明にかかるラッチの正面図である。
【図3】本発明にかかるラッチの側面図である。
【図4】本発明にかかるストライカの側面図である。
【図5】本発明にかかる受け皿状の圧接部材が遊嵌されたストライカの斜視図である。
【図6】第1の係合部にロックレバーが係合状態となっているときの図2におけるA−A断面図である。
【図7】第2の係合部にロックレバーが係合状態となっているときの図2におけるA−A断面図である。
【図8】左右のラッチを連結するワイヤーの連結状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0029】
1 フロントボディ
2 フロントリッド
3L、3R ストライカ
4L、4R ラッチ
11 ベースプレート
12 ロックレバー
13 嵌入孔
15 ワイヤ取付けフランジ部
21 係合部
23 スプリング
24 ワイヤー
26 オープンレバー
27 係止部材
31 第1の係合部
32 第2の係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外面を覆い、該車両にヒンジ機構によって支持され、該車両の運転席近傍に配設されているオープンレバーの操作により作動伝達部材を介して開閉されるリッドのロック装置において、
前記ロック装置は、中央部に前記リッドに装着されたストライカが嵌入する嵌入孔を有したベースプレートと、前記ストライカに係合する係合部を有し、前記ベースプレートに所定範囲回動可能に装着され前記作動伝達部材が連結されたロックレバーと、該ロックレバーをロック方向に付勢するスプリングとを備え、前記ストライカは前記リッドの開放方向に複数段の係合部を有していることを特徴とするリッドのロック装置。
【請求項2】
前記ストライカは略棒状をなし、前記係合部は前記棒状に対して径方向に突出して形成され、前記ストライカが前記リッドの内面側に突設して取り付けられた状態で前記複数段の係合部は、リッドから離れる方向に順次径が大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1記載のリッドのロック装置。
【請求項3】
前記ロック装置の第一段目(初期段)は前記オープンレバーをフルストローク操作したときにロック開錠され、第二段目(後期段)は手動操作によりロック開錠を行うことを特徴とする請求項1記載のリッドのロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−81973(P2008−81973A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261276(P2006−261276)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】