説明

リニアアクチュエータ

【課題】外径を大きくすることなく、ブレーキ力を向上させる。
【解決手段】軸受54で支持されたシャフト16と、シャフト16の正逆回転で進退するナット19と、ナット19に固定されハウジング11に対し進退する移動筒12と、シャフト16の一方向回転時に制動力を発揮するブレーキ機構57とを備えたリニアアクチュエータにおいて、ブレーキ機構57をクラッチケース58とブレーキプレート60Aおよび60Bと固定プレート63と摩擦板66とで構成する。クラッチケース58はシャフト16の一方向の回転時に一体的に回転するようにハウジング11と相対移動可能に設ける。ブレーキプレート60A、60Bはクラッチケース58と一体回転可能かつ軸方向移動可能でハウジング11に対して相対移動する。固定プレート63はハウジング11と一体回転可能かつ軸方向移動可能でクラッチケース58と相対移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動送りねじ式のリニアアクチュエータに関する。
例えば、医療・介護用ベッドの寝床を上下させたり、背部や膝部の寝床を傾斜させたりするのに利用して有効なものに関する。
【背景技術】
【0002】
医療・介護用ベッドにおいては患者の寝食の負担を軽減するために、電動送りねじ式リニアアクチュエータによってベッドの寝床を上下させたり、背部や膝部の寝床を傾斜させたりすることが実施されている。
【0003】
従来のこの種のリニアアクチュエータとして、ハウジングに連結されたモータと、ハウジングに回転自在に支承された送りねじ軸と、モータの出力軸と送りねじ軸との間に介設されてモータの出力軸の回転を減速して送りねじ軸に伝達する減速装置と、送りねじ軸に進退自在に螺合されたナットと、ナットに一体的に移動するように連結された移動筒とからなるアクチュエータ本体に、送りねじ軸の回転時のスラスト力を受けて制動力を発揮するブレーキプレートと、送りねじ軸の一方向の回転のみブレーキプレートと一体となるワンウエイクラッチと、を備えたもの、がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−188536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記したリニアアクチュエータにおいては、ブレーキ面(摩擦面)が一面にて構成されているために、大きな荷重が想定される場合には、ブレーキ面の有効面積(直径)を大きくする必要がある。
しかし、ブレーキ面の直径を大きくすると、リニアアクチュエータ自体の外形も大型化することになる。
また、アクチュエータを連続稼働させると、内部の温度上昇により内部の減速装置に塗布されたグリースやブレーキ面に塗布されたブレーキ力安定のためのグリースが軟らかくなり、効率向上による逆転力の増加やグリース自体の粘度低下によってブレーキ面が滑り易くなって来るために、ブレーキ面の面積はある程度余裕を持った設定が必要である。
しかし、ベッド下降時のモータ電流を抑えたいという要求もあって、リニアアクチュエータを大型化せずに、連続稼働にも耐えられるブレーキ力をいかに確保するかという課題があった。
【0005】
本発明の目的は、外径を大きくすることなく、ブレーキ力を向上させることができるリニアアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願において開示される発明のうち代表的なものは、次の通りである。
(1)ハウジングに連結されたモータと、前記ハウジングに軸受により回転自在に支承された送りねじ軸と、前記モータの出力軸と前記送りねじ軸との間に介設されて前記モータの出力軸の回転を減速して前記送りねじ軸に伝達する減速装置と、前記送りねじ軸に進退自在に螺合されたナットと、該ナットに一体的に移動するように連結された移動筒と、前記送りねじ軸の一端側に配されて前記送りねじ軸の一方向の回転時に前記送りねじ軸と前記ハウジングとの間で制動力を発揮するブレーキ機構と、を備えたリニアアクチュエータにおいて、
前記ブレーキ機構は、
前記軸受と前記ハウジングとの間で一端側が前記軸受に当接可能に設けられるとともに、前記ハウジングと相対移動可能に設けられ、前記送りねじ軸の一方向の回転時に一体的に回転するクラッチケースと、
前記クラッチケースと前記ハウジングとの間に設けられるとともに、前記クラッチケースと一体回転可能かつ軸方向移動可能で前記ハウジングに対して相対移動自在に設けられた複数のブレーキプレートと、
該複数のブレーキプレートの間に配され、前記ハウジングと一体回転可能かつ軸方向移動可能で前記クラッチケースと相対移動自在に設けられた少なくとも1つの固定プレートと、
前記複数のブレーキプレートと前記固定プレートとの接触面および前記ブレーキプレートと前記ハウジングとの接触面において摩擦力を発揮するブレーキ面と、
から構成されることを特徴とするリニアアクチュエータ。
(2)前記ハウジングの前記ブレーキ機構と対向する面には、所定の摩擦力を発揮する摩擦板が設けられていることを特徴とする(1)に記載のリニアアクチュエータ。
(3)前記ブレーキプレートは、
リング形状に形成されたベースプレートと、
該ベースプレートの前記クラッチケースとの当接面と、前記ハウジングとの当接面とに一体的にリング形状に設けられ、所定の摩擦力を発揮する摩擦板と、
から構成されることを特徴とする(1)または(2)に記載のリニアアクチュエータ。
(4)前記クラッチケースと前記ハウジングとの間には、所定の摩擦力を発揮する摩擦部材が設けられていることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載のリニアアクチュエータ。
【発明の効果】
【0007】
前記したリニアアクチュエータによれば、外径を大きくすることなく、ブレーキ力を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施の形態を図面に即して説明する。
【0009】
図1に示されているように、本実施の形態に係るリニアアクチュエータは医療・介護用ベッド(以下、ベッドという。)の背部の寝床を起伏させるためのものとして構成されている。
すなわち、図2および図3に示されているように、リニアアクチュエータ7はハウジング11と、ハウジング11に対して進退する移動筒12とからなるアクチュエータ本体10を備えており、リニアアクチュエータ7の固定端側であるハウジング11がベッド1のフレーム2に枢軸3によって回転自在に枢支され、リニアアクチュエータ7の自由端側である移動筒12の先端が背部の寝床(以下、寝床という。)4を起伏させるためのリンク5に枢軸6によって回転自在に連結されている。
図1(a)に示されているように、リニアアクチュエータ7の移動筒12が短縮した状態で、寝床4は水平に倒伏されており、リニアアクチュエータ7の移動筒12が伸長すると、寝床4は図1(b)に示されているように起立されるようになっている。
【0010】
図3に示されているように、リニアアクチュエータ7(アクチュエータ本体10)のハウジング11は樹脂が使用されて略円筒形状に形成されており、ハウジング11の一端部(以下、先端部とする。)には、支持筒13の一端部が嵌入されて支持されている。支持筒13は外径がハウジング11の内径と等しい断面円筒形の丸パイプ形状に形成されている。
支持筒13の内周面には雌ねじ部材を回り止めするための回り止め部14が一対、略全長にわたってそれぞれ敷設されており、両回り止め部14、14は軸方向に一定幅一定高さに延在する細長いキー形状にそれぞれ形成されている。
図2に示されているように、支持筒13の先端開口部には外周に鍔部を有する円筒形状に形成されたプラグ部15が嵌入されている。
【0011】
支持筒13の筒心上には送りねじ軸としてのシャフト16が軸架されている。シャフト16の支持筒13に対応する領域の外周には送り用の雄ねじ部17が形成されており、雄ねじ部17には雌ねじ部18が螺合されたナット19が進退自在に装着されている。
ナット19の基端部の外周部には、キー溝形状に形成された回り止め部20が一対それぞれ形成されており、両回り止め部20、20は支持筒13の内周面の一対の回り止め部14、14に軸方向に摺動自在にそれぞれ嵌合されている。したがって、ナット19は支持筒13に回り止め部14、20によって回り止めされた状態で、軸方向に摺動するようになっている。
【0012】
ナット19の先端部外周には移動筒12の基端部が嵌入されており、移動筒12はナット19に固定部23によって固定されている。移動筒12は支持筒13よりも長い丸パイプ形状に形成されている。
【0013】
図2に示されているように、移動筒12の先端部は、支持筒13に嵌着されたプラグ部15から先方に突き出されており、移動筒12の中間部はプラグ部15によって摺動自在に支承されている。
移動筒12の先端部には移動筒12をベッド1のリンク5に連結するための連結具25の基端部26が嵌入されており、連結具25は移動筒12の先端開口部に固定されている。連結具25の先端部には取付孔27が開設されており、枢軸6が取付孔27に挿入されることにより、移動筒12がリンク5に連結されるようになっている。
【0014】
図3に示されているように、ハウジング11の基端面にはサブハウジング30が当接されている。サブハウジング30は外径がハウジング11の外径と同一でハウジング11と反対側の端面が開口した筒形状に形成されており、その開口部にはハウジング11をベッド1のフレーム2に連結するための連結具32の閉塞部33が被せられている。サブハウジング30および連結具32の閉塞部33はハウジング11に、複数本のビスによって一緒に締結されている。
連結具32の外側端面にはブラケット34が突設されており、ブラケット34には取付孔35が開設されている。枢軸3が取付孔35に挿入されることにより、リニアアクチュエータ10の基端部がフレーム2に連結されるようになっている。
【0015】
図3に示されているように、サブハウジング30における開口部31と直角の位置にはモータ装着部36が開設されており、モータ装着部36にはモータ40が、回転軸がサブハウジング30の中心線方向と直交するように配されて装着されている。
モータ40の回転軸の一端部はサブハウジング30の内部に挿入されており、回転軸の中間部はモータ装着部36に回転自在に支承されている。
【0016】
回転軸のサブハウジング30内の挿入部分の外周には、互いに反対向きの捩れを有する一対のウオーム42、43がそれぞれ一体的に形成されている。サブハウジング30の一対のウオーム42、43にそれぞれ対向する位置であって回転軸の互いに反対側の位置には、一対の支持軸44、45がサブハウジング30の中心線方向と平行にそれぞれ植設されている。
一対の支持軸44、45には一対のウオームホイール46、47がそれぞれ嵌合されて回転自在に支承されており、一対のウオームホイール46、47は一対のウオーム42、43にそれぞれ噛合されている。一対のウオームホイール46、47には一対の中間ギヤ48、49が軸芯合わせされて一体的にそれぞれ連設されており、一対の中間ギヤ48、49は同一の駆動ギヤ50にそれぞれ噛合されている。
【0017】
図3に示されているように、駆動ギヤ50はサブハウジング30からハウジング11にわたって軸架されたサブシャフト52に滑りキー結合されることにより、軸方向に摺動自在で一体的に回転するように結合されている。
このように駆動ギヤ50をサブシャフト52に軸方向に摺動自在で一体的に回転するように結合することにより、サブシャフト52に加わる軸方向(スラスト方向)の荷重(力)が駆動ギヤ50に伝達されるのを防止することができる。
但し、駆動ギヤ50はサブシャフト52に一体成形してもよい。
【0018】
図3に示されているように、ハウジング11のサブハウジング30と反対側の部分には軸受設置部53が形成されており、軸受設置部53には深溝玉軸受54が設置されている。深溝玉軸受54のインナレースはシャフト16の基端部の外周にカラー55を介して嵌合されており、シャフト16の基端部は深溝玉軸受54によって回転自在に支承されている。
深溝玉軸受54はシャフト16のラジアル荷重だけでなくシャフト16のスラスト荷重も支承し得るようにサイズが大きめに設定されており、軸受設置部53は深溝玉軸受54のアウタレースの外周面を摺動させる構造に構成されている。
このようにシャフト16を回転自在に支承するラジアル転がり軸受をサイズが大きめの深溝玉軸受54によって構成し、外周面で摺動し得るように設定することにより、シャフト16のスラスト荷重を支承するスラスト軸受を省略することができる。
【0019】
図3および図4に示されているように、ハウジング11の軸受設置部53に隣接する部位には、ブレーキ機構設置部56が軸受設置部53と連続して形成されており、ブレーキ機構設置部56には、シャフト16の一端側に配されてシャフト16の一方向の回転時にカラー55すなわちシャフト16とハウジング11との間で制動力を発揮するブレーキ機構57が設置されている。
ブレーキ機構57はワンウエイクラッチ58を構成するクラッチケース59Aおよびローラ59Bを備えている。
クラッチケース59Aは深溝玉軸受54とハウジング11との間で、深溝玉軸受54側端部が深溝玉軸受54に当接可能に設けられているとともに、ハウジング11と相対移動可能に設けられており、シャフト16の一方向の回転時に一体的に回転する。すなわち、クラッチケース59Aとカラー55との間には複数本のローラ59Bが転動自在に挟設されており、複数本のローラ59Bがクラッチケース59Aの内周面とカラー55の外周面とに楔状に噛合することにより、シャフト16の一方向の回転時にクラッチケース59Aとカラー55とを連結するワンウエイ機構が構成されている。
【0020】
ブレーキ機構57は複数枚のブレーキプレートとしての第一ブレーキプレート60Aおよび第二ブレーキプレート60Bを備えている。第一ブレーキプレート60Aおよび第二ブレーキプレート60Bはクラッチケース58と一体的に形成されたボス部59Cとハウジング11との間にそれぞれ設けられているとともに、クラッチケース59Aと一体回転可能かつ軸方向移動可能でハウジング11に対して相対移動自在にそれぞれ設けられている。
図5(b)に示されているように、第一ブレーキプレート60Aおよび第二ブレーキプレート60Bは円形リング形状にそれぞれ形成されているとともに、その内周には4条のガイド溝61が周方向に等間隔に配置されて軸方向に延在するようにそれぞれ没設されており、4条のガイド溝61にはクラッチケース59Aの外周の対向部位にそれぞれ突設されたガイド突起62が軸方向に摺動自在にそれぞれ係合している。また、第二ブレーキプレート60Bの外周側はハウジング11のガイド溝65に係合することなく、互いに軸方向および周方向に相対回転可能とされている。
第一ブレーキプレート60Aと第二ブレーキプレート60Bとの間には、固定プレート63が配置されており、固定プレート63はハウジング11と一体回転可能かつ軸方向移動可能でクラッチケース59Aと相対移動自在に設けられている。
図5(a)に示されているように、固定プレート63は円形リング形状に形成されているとともに、その外周には4条のガイド突起64が周方向に等間隔に配置されて軸方向に延在するようにそれぞれ突設されており、4条のガイド突起64はハウジング11の内壁の対向部位にそれぞれ没設されたガイド溝65に軸方向に摺動自在にそれぞれ係合している。また、固定プレート63の内周側はボス部59Cの各ガイド突起62に係合することなく、互いに軸方向および周方向に相対回転可能とされている。
ハウジング11のブレーキ機構57との対向面すなわちハウジング11と第二ブレーキプレート60Bとの対向面には、所定の摩擦力を発揮する円形リング形状の摩擦板66が設けられており、摩擦板66はハウジング11に固定されている。
ブレーキ機構57は、第一ブレーキプレート60Aの片側面と固定プレート63との接触面、固定プレート63と第二ブレーキプレート60Bとの接触面、第二ブレーキプレート60Bと摩擦板66との接触面の3箇所において、所定の摩擦力を発揮するブレーキ面を備えていることになる。
図5(c)は第二ブレーキプレート60Bの詳細図を示している。
図5(c)に示されているように、第二ブレーキプレート60Bは、リング形状に形成されたベースプレート67と、ベースプレート67の固定プレート63との当接面と、摩擦板66との当接面とに一体的にリング形状に設けられ所定の摩擦力を発揮する摩擦板68と、から構成されている。
なお、第一ブレーキプレート60Aにも部品の共通化を図るために、第二ブレーキプレート60Bと同一形状のものが用いられている。第二ブレーキプレート60Bとして用いる場合には、その片側面である固定プレート63との当接面のみが摩擦作用をなすようになっている。
【0021】
図3に示されているように、ハウジング11のシャフト16基端部脇には位置検出機構設置部70が構成されており、位置検出機構設置部70内には位置検出機構71が設置されている。
位置検出機構71はハウジング11の内側に固定された一対のブラケット72A、72Aとブラケット72A、72A間に固定された基板72Bとを備えており、基板72Bは位置検出機構設置部70内にシャフト16と平行に固定されている。ブラケット72A、72Aの間には位置検出シャフト73が、シャフト16と平行に軸架された状態でその両端が回転自在に支持されている。位置検出シャフト73は全長がシャフト16よりも短く、雄ねじ部74が略全長にわたって形成されており、雄ねじ部74にはストライカ75が進退自在に螺合されている。すなわち、ストライカ75はハウジング11またはブラケット72に回り止めされた状態で摺動自在に案内されるようになっている。
なお、本実施の形態においては、雄ねじ部74のピッチはシャフト16の雄ネジ部17のピッチと同じに設定されている。
基板72Bのブラケット72A、72A寄りのそれぞれの位置の両端部には一対の位置検出スイッチ76、77が、位置検出シャフト73に対向するように固定されており、図6に示されているように、一対の位置検出スイッチ76、77はストライカ75の移動両端部の位置をそれぞれ検出するようになっている。すなわち、位置検出シャフト73の基端側端部に配置された位置検出スイッチ(以下、下限スイッチという)76は、位置検出シャフト73の基端側端部に位置するストライカ75を検出し、位置検出シャフト73の先端側端部に配置された位置検出スイッチ(以下、上限スイッチという)77は、位置検出シャフト73の先端側端部に位置するストライカ75を検出するようになっている。
なお、図示しないが、基板72B上にはストライカ75の位置検出に必要なその他の電気素子が配されている。
【0022】
図3および図6に示されているように、位置検出機構71は歯車減速装置80を備えており、歯車減速装置80の原動ギヤ81はシャフト16の基端部に固定されている。原動ギヤ81には原動ギヤ81よりも大径すなわち歯数の大きい従動ギヤ82が噛合されており、従動ギヤ82はハウジング11に回転自在に支持されている。従動ギヤ82には第二段原動ギヤ83が一体回転するように固定されており、第二段原動ギヤ83には第二段原動ギヤ83よりも大径すなわち歯数の大きい第二段従動ギヤ84が噛合されている。第二段従動ギヤ84は位置検出シャフト73の基端側端部に固定されている。
シャフト16の回転は、原動ギヤ81→従動ギヤ82→第二段原動ギヤ83→第二段従動ギヤ84を経由して減速され、位置検出シャフト73に伝達される。
【0023】
次に、作用および効果を説明する。
【0024】
予め、リニアアクチュエータ7(アクチュエータ本体10)はベッド1に、図1に示されているように組み付けられる。すなわち、枢軸3がベッド1のフレーム2に挿通されてリニアアクチュエータ7の連結具32に挿通されることにより、リニアアクチュエータ7は枢軸3によってベッド1のフレーム2に回転自在に枢支され、寝床4側の枢軸6がリニアアクチュエータ7の移動筒12側の連結具25に挿通されることにより、リニアアクチュエータ7は寝床4に枢軸6によって回転自在に連結される。
【0025】
リニアアクチュエータ7がベッド1に組み付けられた後に、操作者が寝床4を起立させるべく正回転側の操作ボタンを押すことにより、図1(a)の状態から、モータ40が正方向に回転運転されると、回転軸の駆動力が一対のウオーム42、43、一対のウオームホイール46、47、一対の中間ギヤ48、49および駆動ギヤ50を介してサブシャフト52に伝達される。サブシャフト52の正回転はカラー55を介してシャフト16に伝達される。
このシャフト16の正回転時にはワンウエイ機構が働かず、クラッチケース59Aとカラー55すなわちシャフト16との連結が解除されるために、ブレーキ機構57の制動力は起こらない。
【0026】
シャフト16がモータ40によって正回転されると、ナット19は支持筒13に沿って前進される状態になるために、ナット19に連結された移動筒12は支持筒13から押し出されて行く。この際、ナット19は支持筒13の回り止め部14に沿って摺動する。
なお、回り止め機構はリニアアクチュエータ7がベッド1に取り付けられていない時に移動筒12が回ってしまい、位置検出機構71と移動筒12との位置関係に狂いが出てしまうのを防止するためのものであり、リニアアクチュエータ7がベッド1に取り付いてしまうと、移動筒12がベッド1に固定された状態になるので、不要になる。
【0027】
移動筒12の前進によって移動筒12の連結具25に連結されたベッド1の寝床4が、図1(b)に示されているように起立されて行く。
【0028】
他方、シャフト16の正回転は、原動ギヤ81→従動ギヤ82→第二段原動ギヤ83→第二段従動ギヤ84を経由して、位置検出シャフト73に減速されて伝達される。位置検出シャフト73の正回転に伴って、ストライカ75は先端側に向かって前進する。
ストライカ75が上限位置まで前進すると、上限スイッチ77がストライカ75を検出するので、モータ40は自動的に停止される。
【0029】
モータ40の運転が停止されると、ベッド1の寝床4の荷重(患者の体重等)がナット19へ、ナット19を後退させる方向の力として移動筒12を介して作用する状態になるために、シャフト16には移動筒12すなわち負荷側から逆回転させようとする負荷側逆回転作用力が、ナット19の雌ねじ部18およびシャフト16の送り用雄ねじ部17の作用によって加わる。
この負荷側逆回転作用力はブレーキ機構57とクラッチケース58とを連結させるように作用するために、第一ブレーキプレート60Aと固定プレート63とのブレーキ面、固定プレート63と第二ブレーキプレート60Bとのブレーキ面および第二ブレーキプレート60Bと摩擦板66とのブレーキ面において、所定の摩擦力がそれぞれ発揮され、シャフト16は逆回転を阻止される。したがって、リニアアクチュエータ7は寝床4の荷重を持ち上げたままの状態で支持することができる。
【0030】
その後に、操作者が寝床4を倒伏させるべく逆回転側の操作ボタンを押すことにより、モータ40が逆方向に回転運転されると、回転軸の逆回転駆動力は一対のウオーム42、43、一対のウオームホイール46、47、一対の中間ギヤ48、49および駆動ギヤ50を介してサブシャフト52に伝達される。サブシャフト52の逆回転はカラー55を介してシャフト16に伝達される。
シャフト16がモータ40によって逆回転されると、ナット19は支持筒13に沿って後退される状態になるために、ナット19に連結された移動筒12は支持筒13に引き込まれて行く。移動筒12の後退によって移動筒12の連結具25に連結されたベッド1の寝床4が倒されて行く。
この際にはシャフト16が逆回転するために、クラッチケース59Aとカラー55とはワンウエイ機構により連結した状態になるが、第一ブレーキプレート60Aと固定プレート63とのブレーキ面、固定プレート63と第二ブレーキプレート60Bとのブレーキ面、第二ブレーキプレート60Bと摩擦板66とのブレーキ面の制動力は、シャフト16の逆回転力よりも僅かに大きく設定されているため、モータ40はこの制動力と逆回転力の差の分だけ駆動すればよく、クラッチケース58はカラー55に対してワンウエイ機構で連結されていても、モータ40は小さな駆動力でシャフト16の逆回転を許容する。
つまり、シャフト16がハウジング11に対して逆回転することにより、ナット19を支持筒13に沿って後退させるので、ナット19に連結された移動筒12を支持筒13に引き込み、移動筒12の連結具25に連結されたベッド1の寝床4を倒して行く。
【0031】
他方、シャフト16の逆回転は、原動ギヤ81→従動ギヤ82→第二段原動ギヤ83→第二段従動ギヤ84を経由して、位置検出シャフト73に減速されて伝達される。位置検出シャフト73の逆回転に伴って、ストライカ75は基端側に向かって後退する。
ストライカ75が下限位置まで前進すると、下限スイッチ76がストライカ75を検出するので、モータ40は自動的に停止される。
【0032】
モータ40の運転が停止されると、寝床4の荷重(患者の体重等)はベッド1のフレーム2によって機械的に支持されることにより、移動筒12にはナット19に後退させる方向の力が作用する状態にならないために、負荷側逆回転作用力がシャフト16に作用することはない。
但し、寝床4が倒伏した状態で、負荷側逆回転力がシャフト16に常に加わったとしても、シャフト16の逆回転は前述した作用によって防止されることになる。
【0033】
本実施の形態によれば、次のような効果を得ることができる。
【0034】
1) 第一ブレーキプレートの片側面と第二ブレーキプレートの両端面とをブレーキ面として使用することにより、3倍のブレーキ力を創出することができるので、従来のブレーキ面と同一直径の場合にはブレーキ力を3倍に増強することができ、従来のブレーキ力と同一のブレーキ力の場合には直径を3分の1に抑制することができる。
【0035】
2) ハウジングのブレーキ機構との対向面に摩擦板を設けることにより、ハウジングのブレーキ機構との間にブレーキ面を構成することができるので、ブレーキ力を増強することができる。
【0036】
3) ブレーキプレートをリング形状に形成されたベースプレートと、ベースプレートの両端面に設けられた摩擦板とから構成することにより、所望の摩擦力を任意しつ精密に設計することができる。
【0037】
図7は本発明の第二実施形態であるリニアアクチュエータのブレーキ機構を示す模式図である。
【0038】
本実施形態が前記実施の形態と異なる点は、3枚のブレーキプレート60A、60B、60Cと、2枚の固定プレート63A、63Bとが設けられている点である。
【0039】
本実施形態によれば、ブレーキ面が5箇所になるので、ブレーキ力を5倍増強することができる。
なお、ブレーキプレートおよび固定プレートの枚数を増加することにより、ブレーキ力は7倍や9倍というように増強することができる。
【0040】
図8は本発明の第三実施形態であるリニアアクチュエータのブレーキ機構を示す模式図である。
【0041】
本実施形態が前記実施の形態と異なる点は、クラッチケース59Aのハウジング11との対向面に、所定の摩擦力を発揮する摩擦部材69が設けられるとともに、ハウジング11のクラッチケース59Aとの対向面すなわちハウジング11と摩擦部材69との対向面に、所定の摩擦力を発揮するように面加工された受面11Aが設けられている点である。
【0042】
本実施形態によれば、クラッチケース58とハウジング11との間の摩擦力を摩擦部材69によって増強することができる。
【0043】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0044】
前記実施形態では、ベッドの背部の寝床を起伏させる場合について説明したが、本発明に係るリニアアクチュエータは、ベッドの床面を上下させるように構成してもよい。
【0045】
また、前記実施形態においては、寝床の荷重(患者の体重等)をベッドのフレームによって機械的に支持する構造に適用したものを説明したが、本発明に係るブレーキ機構は、寝床の荷重をリニアアクチュエータ側で支持する構造に適用することもできる。
【0046】
また、前記実施の形態においては、リニアアクチュエータが医療・介護用ベッドに使用される場合について説明したが、本発明に係るアクチュエータはこれに限らず、自動車電装品等の用途にも適用することができる。
【0047】
さらに、前記実施の形態においては、ハウジングの摩擦部材との対向面とに、所定の摩擦力を発揮する受面を設けたものを示したが、これに限らず、各対向面として各部材の成形時の面をそのまま使うようにしてもよく、また、受面を別部材にて構成して一体化するようにしてもよい。
【0048】
さらに、前記実施の形態においては、第一ブレーキプレートと第二ブレーキプレートの内周に4条のガイド溝を設け、クラッチケースの外周に設けたガイド突起が摺動自在に係合する例を示したが、ガイド溝は4条に限らず、また、ブレーキ面の有効面積を確保するために、各ブレーキプレートとクラッチケースとはスプラインやセレーションによる係合としてもよい。同様に、固定プレートの4条のガイド突起とハウジングのガイド溝との係合関係についても適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施の形態であるリニアアクチュエータが使用された医療・介護用ベッドの要部を示す正面図であり、(a)は倒伏状態を、(b)は起立状態を示している。
【図2】本発明の一実施の形態であるリニアアクチュエータを示す一部切断正面図である。
【図3】ブレーキ機構設置部を示す正面断面図である。
【図4】ブレーキ機構を示す模式図である。
【図5】(a)は図4のa−a線に断面図、(b)は図4のb−b線に沿う断面図、(c)は第二ブレーキプレートの詳細図である。
【図6】位置検出機構を示す模式図である。
【図7】本発明の第二実施形態であるリニアアクチュエータのブレーキ機構を示す模式図である。
【図8】本発明の第三実施形態であるリニアアクチュエータのブレーキ機構を示す模式図である。
【符号の説明】
【0050】
1…ベッド(医療・介護用ベッド)、2…フレーム、3…枢軸、4…寝床、5…リンク、6…枢軸、7…リニアアクチュエータ、
10…アクチュエータ本体、11…ハウジング、11A…受面、12…移動筒、13…支持筒、14…回り止め部、15…プラグ部、16…シャフト(送りねじ軸)、17…雄ねじ部、18…雌ねじ部、19…ナット、20…回り止め部、23…固定部、25…連結具、26…基端部、27…取付孔、
30…サブハウジング、31…開口部、32…連結具、33…閉塞部、34…ブラケット、35…取付孔、36…モータ装着部、40…モータ、
42、43…ウオーム、44、45…支持軸、46、47…ウオームホイール、48、49…中間ギヤ、50…駆動ギヤ、
52…サブシャフト、53…軸受設置部、54…深溝玉軸受、55…カラー、
57…ブレーキ機構、58…ワンウエイクラッチ、59A…クラッチケース、59B…ローラ、59C…ボス部、
60A…第一ブレーキプレート、60B…第二ブレーキプレート、61…ガイド溝、62…ガイド突起、
63…固定プレート、64…ガイド突起、65…ガイド溝、
66…摩擦板、
67…ベースプレート、68…摩擦板、
69…摩擦部材、
70…位置検出機構設置部、71…位置検出機構、72A…ブラケット、72B…基板、73…位置検出シャフト、74…雄ねじ部、75…ストライカ、76、77…位置検出スイッチ、
80…歯車減速装置、81…原動ギヤ、82…従動ギヤ、83…第二段原動ギヤ、84…第二段従動ギヤ、85…第三段原動ギヤ、86…第三段従動ギヤ、
90…ポテンショセンサ、91…センサ軸、92…ポテンショメータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに連結されたモータと、前記ハウジングに軸受により回転自在に支承された送りねじ軸と、前記モータの出力軸と前記送りねじ軸との間に介設されて前記モータの出力軸の回転を減速して前記送りねじ軸に伝達する減速装置と、前記送りねじ軸に進退自在に螺合されたナットと、該ナットに一体的に移動するように連結された移動筒と、前記送りねじ軸の一端側に配されて前記送りねじ軸の一方向の回転時に前記送りねじ軸と前記ハウジングとの間で制動力を発揮するブレーキ機構と、を備えたリニアアクチュエータにおいて、
前記ブレーキ機構は、
前記軸受と前記ハウジングとの間で一端側が前記軸受に当接可能に設けられるとともに、前記ハウジングと相対移動可能に設けられ、前記送りねじ軸の一方向の回転時に一体的に回転するクラッチケースと、
前記クラッチケースと前記ハウジングとの間に設けられるとともに、前記クラッチケースと一体回転可能かつ軸方向移動可能で前記ハウジングに対して相対移動自在に設けられた複数のブレーキプレートと、
該複数のブレーキプレートの間に配され、前記ハウジングと一体回転可能かつ軸方向移動可能で前記クラッチケースと相対移動自在に設けられた少なくとも1つの固定プレートと、
前記複数のブレーキプレートと前記固定プレートとの接触面および前記ブレーキプレートと前記ハウジングとの接触面において摩擦力を発揮するブレーキ面と、
から構成されることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記ハウジングの前記ブレーキ機構と対向する面には、所定の摩擦力を発揮する摩擦板が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項3】
前記ブレーキプレートは、
リング形状に形成されたベースプレートと、
該ベースプレートの前記クラッチケースとの当接面と、前記ハウジングとの当接面とに一体的にリング形状に設けられ、所定の摩擦力を発揮する摩擦板と、
から構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項4】
前記クラッチケースと前記ハウジングとの間には、所定の摩擦力を発揮する摩擦部材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のリニアアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−65778(P2010−65778A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233502(P2008−233502)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】