説明

リニアガイドウェー用転がり素子保持具

【課題】 リニアガイドウェーの運動安定性が向上されたと共に、転がり素子の転がり順調度も向上され、且つリニアガイドウェー用転がり素子保持具の部材の製造を容易にすること。
【解決手段】 転がり素子保持チェーン連接部用収容溝は、主に、負荷側保持具と回流部保持具とから構成され、前記回流部保持具の転がり素子溝の開口はエンドプレートの案内素子の内側に位置するリニアガイドウェー用転がり素子保持具において、前記負荷側保持具の両端は回流部保持具に応じて外側に延びた凸部が設けてあり、前記凸部は、負荷側保持具の転がり素子溝の方向に沿って延在し、且つエンドプレートの案内素子に当接し、回流部保持具の転がり素子溝の開口の端面に対応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアガイドウェー用転がり素子保持具に係り、特に、負荷側保持具の両端に改良を加えることにより、リニアガイドウェーの運動安定性が向上されたと共に、転がり素子の転がり順調度も向上されたリニアガイドウェー用転がり素子保持具に関するものである。

【背景技術】
【0002】
リニアガイドウェー用転がり素子保持具は精密移動が必要な設備(例えばNC工作機や自動溶接機や運搬装置など)に広汎に採用される。一般のリニアガイドウェーは、一つの転がり素子保持具が環状の転がり経路に沿って循環に転がる構成を有し、なお、転がり素子保持具を持つリニアガイドウェーは循環経路において転がり素子保持具を収容するための転がり素子溝を設けることが必要であり、しかしながら、全ての循環経路に転がり素子溝を設けることは単一の部材で構成することが無理であるので、複数の部材で構成することが一般であるが、複数の部材によって構成された循環経路には段差が発生されるので、転がり素子保持チェーン連接部の運動が順調にならない。
【0003】
図1と図2に示すのは従来のリニアガイドウェー用転がり素子保持具であり、図面から明らかなように、ブロック本体11がリニアガイドウェー上に設置され、リニアガイドウェーは、主に、一つの負荷側保持器12と、一つの回流部保持具13とから構成されたものであり、且つ負荷側保持器12と回流部保持具13とは、転がり素子保持チェーン連接部141を収容するために、互いに連通した転がり素子保持チェーン連接部用収容溝121,131を有し、転がり素子保持チェーン14は、図3に示すように、対称した連接チェーン141上に複数の仕切部143が取付けられて構成され、この構成により、転がり素子142が転がり素子保持チェーン14の間に保持される。
【0004】
従来の回流部保持具13の転がり素子保持チェーン連接部用収容溝131と、荷重側保持具12の転がり素子保持チェーン連接部用収容溝121との接続箇所には特殊な設計が実施しないので、転がり素子保持チェーン14の連接部141が回流部保持具13から負荷側保持具12に進入するときには不順調になり、分析およびシミュレーションを実施した後、下記のキーポイントが整理された。
【0005】
(1)リニアガイドウェーに使用された転がり素子保持チェーン14は、一般に撓み性を持つ樹脂材料で作製されたものであり、その原因は、転がり素子保持チェーン14が回流部保持具13を順調に通過できる。しかししながら、連接部141は、回流部保持具13と負荷側保持具12との接続箇所に接近するときに、素材の弾性によって、連接部141が回流部保持具13の転がり素子保持チェーン連接部用収容溝131の外縁に当接する。その状態は図4で示す。図面において、転がり素子保持チェーン14は太い実線で表示される。連接部141は、接続箇所に到達するときに転がり素子保持チェーン14の予定の進行経路に前進できなく、角度ズレが発生し、そのズレ状態は図5で示す。図5において、実矢印は実際の進行方向であり、空心矢印は予定の進行方向である。
【0006】
(2)負荷側保持具12は、他の部材との組付けはピン結合方式を採用することが一般であるが、許容値の合いと製造誤差とを考慮すると、回流部保持具13の転がり素子保持チェーン連接部用収容溝131と、荷重側保持具12の転がり素子保持チェーン連接部用収容溝121との接続箇所には段差が発生する。
【0007】
上記原因によって、図6に示すように、転がり素子保持チェーン14の連接部141の端部は、回流部保持具13の転がり素子保持チェーン連接部用収容溝131の出口を通過するときに、負荷側保持具12の転がり素子保持チェーン連接部用収容溝121の端縁と衝突する。そうすると、転がり素子保持チェーン14の運行が不順調になる。
【0008】
そのため、転がり素子保持具を持つリニアガイドウェーの運行の順調性を確保するために日本特許3349238号が提案されている。これは、前記段差の発生箇所を回流部と負荷側との接続面に設けないので、転がり素子保持具連接部が段差を順調に通過できる。しかしながら、このような構成によれば、生産性が良くなく、且つ部材が樹脂材料で作製されたので、幅長比が大きすぎて寸法収縮の把握が難しくなり、部材を組付けるときに問題が発生ある可能性がある。

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の主な目的は、リニアガイドウェーの運動安定性が向上されたと共に、転がり素子の転がり順調度も向上されたリニアガイドウェー用転がり素子保持具を提供することにある。
【0010】
本発明の次の目的は、リニアガイドウェー用転がり素子保持具の部材の製造が容易になるリニアガイドウェー用転がり素子保持具を提供することにある。

【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するためになされた本願の発明は、転がり素子保持チェーン連接部用収容溝は、主に、負荷側保持具と回流部保持具とから構成され、前記回流部保持具の転がり素子溝の開口はエンドプレートの案内素子の内側に位置するリニアガイドウェー用転がり素子保持具において、前記負荷側保持具の両端は回流部保持具に応じて外側に延びた凸部が設けてあり、前記凸部は、負荷側保持具の転がり素子溝の方向に沿って延在し、且つエンドプレートの案内素子に当接し、回流部保持具の転がり素子溝の開口の端面に対応し、Aは隙間、Mは回流頂部から底部までの長さ、Bは延び長さ、Lは保持具長さ、wは熱膨張係数、Δtは適用可能な温度範囲、pは許容値である場合には、前記凸部の好適な延び長さは、A+M>B>A=LxwxΔt+2pであることを特徴とするリニアガイドウェー用転がり素子保持具であることを要旨としている。
【0012】
本願の発明では、ブロックと、エンドプレートと、回流チューブと、複数の回流部保持具と、複数の負荷側保持具とから構成されるリニアガイドウェー用転がり素子保持具において、前記ブロックとエンドプレートとは互いに連接し、且つ前記回流部保持具はエンドプレートの保持具空間内に設置され、前記回流チューブは、ブロックの内側に設置され、前記回流部保持具は、転がり素子溝の端部の開口には外側へ行くほど断面積が徐徐に縮小する案内部が設けてあり、なお、各負荷側保持具がブロックの内側に取付けられ、前記エンドプレートは、保持具空間において、回流部保持具の案内部と転がり素子溝の端面とに応じて案内素子が設けてあり、且つ前記案内素子の一側には連接面が設けてあり、前記負荷側保持具は、その両端は回流部保持具に応じて外側に延びた凸部が設けてあり、回流部保持具の転がり素子溝に応じて転がり素子溝が設けてあり、前記凸部は、負荷側保持具の転がり素子溝の方向に沿って延在し、且つエンドプレートの案内素子の外面に当接し、その当接面がエンドプレートの案内素子の当接面に当接し、且つ回流部保持具の案内部の外面に位置することを特徴とする請求項1に記載のリニアガイドウェー用転がり素子保持具であることを要旨としている。

【発明の効果】
【0013】
本発明に係るリニアガイドウェー用転がり素子保持具によれば、リニアガイドウェーの運動安定性が向上されたと共に、転がり素子の転がり順調度も向上され、且つリニアガイドウェー用転がり素子保持具の部材の製造が容易になる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
まず、図7乃至図13を参照する。本発明に係るリニアガイドウェー用転がり素子保持具は、主に、ブロック20と、エンドプレート30と、回流チューブ60と、複数の回流部保持具40と、複数の負荷側保持具50とから構成される。
【0016】
前記ブロック20とエンドプレート30とは互いに連接し、且つ前記回流部保持具40はエンドプレート30の保持具空間31内に設置される。
【0017】
前記回流チューブ60は、ブロック20の内側に設置される。
【0018】
前記回流部保持具40は、転がり素子溝42の端部の開口には外側へ行くほど断面積が徐徐に縮小する案内部41が設けてあり、なお、各負荷側保持具50がブロック20の内側に取付けられる。
【0019】
前記エンドプレート30は、保持具空間31において、回流部保持具40の案内部41と転がり素子溝42の端面とに応じて案内素子32が設けてあり、且つ前記案内素子32の一側には連接面321が設けてある。
【0020】
前記負荷側保持具50は、その両端は回流部保持具40に応じて外側に延びた凸部51が設けてあり、回流部保持具40の転がり素子溝42に応じて転がり素子溝52が設けてある。前記凸部51は、負荷側保持具50の転がり素子溝52の方向に沿って延在し、且つエンドプレート30の案内素子32の外面に当接し、その当接面511がエンドプレート30の案内素子32の連接面321に当接し、且つ回流部保持具40の案内部41の外面に位置する。
【0021】
本発明に係る負荷側保持具50の凸部51はエンドプレート30の案内素子32の外側から容易に取り付けることができ、そしてリニアガイドウェー用転がり素子保持具の部材の製造も容易になる。
【0022】
もっとも重要なのは、各負荷側保持具50の両端には回流部保持具40に応じて外側に延びた凸部51が設けてあり、前記凸部51の当接面511がエンドプレート30の案内素子32の連接面321に当接し、且つ前記凸部51は回流部保持具40の案内部41の外面に位置するので、各回流部保持具40の案内部41と、負荷側保持部50の転がり素子溝52との接続箇所には隙間が発生しなくなる。これにより、転がり素子保持具の連接部は干渉または衝突が発生しない。
【0023】
図13に示すように、部材の形状を変更しない前提で、凸部51によって、本発明は転がり素子保持具の進行方向に発生したズレを吸収するので、転がり素子保持具連接部は負荷側保持部50と回流部保持具40との接続箇所での段差を順調に通過できる。
【0024】
部品の間に隙間を残る原因は各状況による寸法変動を吸収するが、従来の設計による欠点を解決するために、本発明は、回流部保持具40の案内部41と、負荷側保持部50の転がり素子溝52との接続箇所に隙間を出来る限り発生させなく、且つ前記凸部51は回流部保持具40の案内部41の外面に位置する。だから、本発明は段差無しの転がり素子保持具の転がり素子溝を形成し、これにより、転がり素子保持具の連接部の端部は負荷側の転がり素子溝に沿って負荷側保持部50の転がり素子溝52に順調に進入でき、なお、転がり素子保持具の連接部は隙間を順調に通過でき、だから、リニアガイドウェーが運行しているときに、転がり素子保持具は運行の順調性を損なうものに成らなくなる。
【0025】
前記負荷側保持具50は、回流部保持具40の転がり素子溝42に応じて転がり素子溝52が設けてあり、前記凸部51は、負荷側保持具50の転がり素子溝52の方向に沿って延在し、エンドプレート30の案内素子32の外面に当接し、当接面511がエンドプレート30の案内素子32の連接面321に安定に当接するので、本発明の運行はもっと安定になり、且つ隙間の調整は軸方向に沿って安定に移動することも可能になる。
【0026】
また、本発明は負荷側保持具50の構造を大幅に変更することが必要ないので、前記凸部51の製造は容易になり、且つ樹脂射出成形によって製造されたので、製品の寸法の変動が少なく、だから、リニアガイドウェーの運動の順調性が向上になり、且つリニアガイドウェー用転がり素子保持具の部材の製造も容易になる。
【0027】
特に注意すべきのは、各回流部保持具40の案内部41と、負荷側保持具50の転がり素子溝52との接続箇所に隙間を残すことが必要である原因は、一部が樹脂製部材の寸法による。その主な原因は下記にある。
【0028】
(1)リニアガイドウェーの適用可能な温度範囲は極めて広い(-20℃〜100℃)ので、温度変化による寸法の変動は前記隙間によって吸収することが必要である。
【0029】
(2)二つの部材を取付けるときに寸法の許容値によって隙間を残らないと、部材の取付作業は容易に完成できない。
【0030】
本発明は下記の関係式によって、部材の前記隙間と、前記凸部51のエンドプレートに伸び入れた長さとの設計値を算出できる。
【0031】
パラメータの設定(図13を参照する)は、
Aは隙間、
Bは延び長さ、
Cは温度による寸法変動、
Dは許容値による隙間、
Lは保持具長さ、
Mは回流頂部から底部までの長さ、
Δtは適用可能な温度範囲、
wは熱膨張係数、
pは許容値であり、
隙間Aは、温度変化による寸法変動Cと、許容値による隙間Dとの総和であり、
【0032】
C=LxwxΔt
【0033】
D=2p
【0034】
A=C+D=LxwxΔt+2pである。
【0035】
なお、前記凸部51の延び長さBは隙間Aよりも大きいのが必要であるので、
【0036】
B>A=LxwxΔt+2pであり、
【0037】
且つ実施の可能性を考慮すると、延び長さBは、回流頂部から底部までの長さMと、隙間Aとの総和よりも小さいのが必要であるので、
B<A+Mである。
だから、前記凸部51の好適な延び長さは、
【0038】
A+M>B>A=LxwxΔt+2pである。

【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】従来のリニアガイドウェー用転がり素子保持具の分解斜視図である。
【図2】図1の一部の拡大図である。
【図3】転がり素子保持チェーンの斜視図である。
【図4】転がり素子保持チェーンが従来の回流部保持具の内部での作動状態を示す概略図である(断面斜線部分は保持チェーン連接部を示し)。
【図5】転がり素子保持チェーンが従来の回流部保持具から押し出された状態を示す概略図である(断面斜線部分は保持チェーン連接部を示し)。
【図6】転がり素子保持チェーンが従来の回流部保持具から押し出されるときに荷重側保持具に当った状態を示す概略図である。
【図7】本発明の組合状態を示す斜視図である。
【図8】本発明に係るエンドプレートを示す概略図である。
【図9】本発明の取付方法を示す分解斜視図である。
【図10】本発明の取付方法を示す概略図である。
【図11a】本発明の一部の透視図である。
【図11b】図11の一部の拡大透視図である。
【図12】本発明の拡大透視図である。
【図13】本発明に係るパラメータの説明図である。
【符号の説明】
【0040】
11 ブロック本体
12 荷重側保持具
121 転がり素子保持チェーン連接部用収容溝
13 回流部保持具
131 転がり素子保持チェーン連接部用収容溝
14 転がり素子保持チェーン
141 連接部
142 転がり素子
143 仕切部
20 ブロック
30 エンドプレート
31 保持具空間
32 案内素子
41 案内部
42 転がり素子用溝
50 荷重側保持具
51 凸部
511 当接面
52 転がり素子用溝
60 回流チューブ
A 隙間
B 延び長さ
C 温度による寸法変動
D 許容値による隙間
L 保持具長さ
M 回流頂部から底部までの長さ
Δt 適用可能な温度範囲
w 熱膨張係数
p 許容値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり素子保持チェーン連接部用収容溝は、主に、負荷側保持具と回流部保持具とから構成され、前記回流部保持具の転がり素子溝の開口はエンドプレートの案内素子の内側に位置するリニアガイドウェー用転がり素子保持具において、
前記負荷側保持具の両端は回流部保持具に応じて外側に延びた凸部が設けてあり、前記凸部は、負荷側保持具の転がり素子溝の方向に沿って延在し、且つエンドプレートの案内素子に当接し、回流部保持具の転がり素子溝の開口の端面に対応し、
Aは隙間、Mは回流頂部から底部までの長さ、Bは延び長さ、Lは保持具長さ、wは熱膨張係数、Δtは適用可能な温度範囲、pは許容値である場合に、前記凸部の好適な延び長さが、
A+M>B>A=LxwxΔt+2p
であることを特徴とする、
リニアガイドウェー用転がり素子保持具。
【請求項2】
ブロックと、エンドプレートと、回流チューブと、複数の回流部保持具と、複数の負荷側保持具とから構成されるリニアガイドウェー用転がり素子保持具において、
前記ブロックとエンドプレートとは互いに連接し、且つ前記回流部保持具はエンドプレートの保持具空間内に設置され、
前記回流チューブは、ブロックの内側に設置され、
前記回流部保持具は、転がり素子溝の端部の開口には外側へ行くほど断面積が徐徐に縮小する案内部が設けてあり、なお、各負荷側保持具がブロックの内側に取付けられ、
前記エンドプレートは、保持具空間において、回流部保持具の案内部と転がり素子溝の端面とに応じて案内素子が設けてあり、且つ前記案内素子の一側には連接面が設けてあり、
前記負荷側保持具は、その両端は回流部保持具に応じて外側に延びた凸部が設けてあり、回流部保持具の転がり素子溝に応じて転がり素子溝が設けてあり、前記凸部は、負荷側保持具の転がり素子溝の方向に沿って延在し、且つエンドプレートの案内素子の外面に当接し、その当接面がエンドプレートの案内素子の当接面に当接し、且つ回流部保持具の案内部の外面に位置することを特徴とする、請求項1に記載のリニアガイドウェー用転がり素子保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−16800(P2007−16800A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−195652(P2005−195652)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(395011229)上銀科技股▲分▼有限公司 (110)
【Fターム(参考)】