リニアモータ、画像読取装置及び画像形成装置
【課題】磁束密度を検出するセンサを用いることなく可動子を移動制御することが可能なリニアモータ、リニアモータを搬送装置として備えた画像読取装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】制御部17はリニアモータ1の制御を行う。制御部17には、配列された複数の磁石6の磁極間情報や磁束密度や可動子7が原点に移動する初期動作時に電磁コイル8に供給される電流値の基準値となる基準電流値等が記憶されている記憶部18と、検出したリニアモータ16の速度と記憶部18による目標速度との差を算出する差分出力部19と、初期動作時にリニアモータ16に供給されている電流値と基準電流値との比較等をする演算部20と、駆動制御信号に基づきリニアモータ16に駆動電力を供給する電力制御部21とが設けられている。電力制御部21は、余弦関数に基づいて電磁コイル8のコイルに駆動電力を供給し、リニアモータ16を駆動制御するようになっている。
【解決手段】制御部17はリニアモータ1の制御を行う。制御部17には、配列された複数の磁石6の磁極間情報や磁束密度や可動子7が原点に移動する初期動作時に電磁コイル8に供給される電流値の基準値となる基準電流値等が記憶されている記憶部18と、検出したリニアモータ16の速度と記憶部18による目標速度との差を算出する差分出力部19と、初期動作時にリニアモータ16に供給されている電流値と基準電流値との比較等をする演算部20と、駆動制御信号に基づきリニアモータ16に駆動電力を供給する電力制御部21とが設けられている。電力制御部21は、余弦関数に基づいて電磁コイル8のコイルに駆動電力を供給し、リニアモータ16を駆動制御するようになっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータ、画像読取装置及び画像形成装置に係り、特にシャフト型リニアモータ、シャフト型リニアモータを搬送装置として用いる画像読取装置及び画像形成装置の初期動作に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、OA機器である画像形成装置の印字ヘッドや露光ヘッド等、また、医療機器における露光走査手段等で直線移動精度が要求される部位には、リニアモータを利用することが提案されている。
【0003】
また、近年は、シャフト状の固定子と、固定子の外周面に沿って直線方向に移動する可動子とから構成されるシャフト型のリニアモータが考案されている。このようなシャフト型のリニアモータは、従来の平板状磁石を用いたリニアモータと比較して、磁束の利用効率が良いため、磁石をそれ程大型化しなくても大きな推力を得ることができる。このため、各種OA機器等装置を小型化、低コスト化することができ、要求される高精度な移動制御を行うのに適している。
【0004】
シャフト型リニアモータの可動子の移動制御としては、リニアモータに磁束密度を測定して固定子に対する可動子の位置を検出するセンサと可動子の移動方向や速度を検出するリニアエンコーダとを配置し、これらの検出結果に基づき可動子に供給する電流を制御することにより行われる技術が一般に知られている。
【0005】
また、他の移動制御方法としては、固定子の磁束密度を検出するセンサをリニアモータに配置し、このセンサによる磁束密度の測定結果をフィードバックすることにより、リニアモータの推力の変動を軽減し、より安定した移動制御を行う技術が公開されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−275694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、磁束密度を測定して可動子の位置を検出するセンサや、特許文献1の固定子の磁束密度を検出するセンサを用いる方法では、搬送装置の構成や制御が複雑になるという問題や、センサを含む駆動処理回路が必要となるためコストが嵩むという問題を有している。そこで、このようなセンサを用いずにリニアモータの推力の変動を検出して可動子の移動制御をすることができる技術開発が課題となっている。
【0007】
さらに、リニアモータに電源を投入したときに実施する初期動作時には、装置の構成や制御が複雑でも時間をかけることなく、又、可動子への高精度な速度制御を行うことなく、可動子を早く確実に原点位置に移動させることが要求されている。
【0008】
本発明の課題は、前記した点に鑑みてなされたもので、磁束密度を検出するセンサを用いることなく可動子を移動制御することが可能なリニアモータ、リニアモータを搬送装置として備えた画像読取装置及び画像形成装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
直線状に複数の磁石が配列された固定子と、
位相補正値を含む三角関数に基づく電力が供給される電磁コイルが前記固定子に沿って可動なように設けられた可動子と、
前記可動子が前記固定子の原点に移動するときに供給される電流値の基準となる基準電流値が記憶された記憶部と、
前記可動子が前記原点に移動するときに前記可動子に供給される電流が前記基準電流値以上であるときに前記位相補正値を変更する制御部とを備えたことを特徴とするリニアモータである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のリニアモータにおいて、
前記可動子の移動状態を検出する検出部を備え、
前記制御部は、前記可動子の移動状態に応じて前記位相補正値を変更することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のリニアモータにおいて、
前記制御部は、前記可動子の移動方向が原点から遠ざかる方向であるときに前記位相補正値を変更して前記可動子を原点方向に移動させることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のリニアモータにおいて、
前記制御部は、前記可動子に対する電流値が一定時間基準電流値未満であるときに前記位相補正値を固定して変更しないことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、
記録材に記録された画像を読み取る読取部が備えられた画像読取装置において、
前記記録材又は前記読取部の少なくとも一方を搬送する搬送装置として請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のリニアモータを備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、
記録材に画像を形成する画像形成部が備えられた画像形成装置において、
前記記録材又は前記画像形成部の少なくとも一方を搬送する搬送装置として請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のリニアモータを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、リニアモータの初期動作時に、位相補正値を用いる簡易な制御構成により可動子を駆動制御して原点位置に移動することが可能となる効果を奏する。また、磁束密度を検出するセンサを用いることがないため、リニアモータの構成を簡易にすることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、可動子の移動状態を検出することができるので、その検出状態に応じて可動子を駆動制御して原点位置に移動することが可能となる効果を奏する。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、可動子が原点方向から遠ざかる方向に移動しているときに位相補正値を変更することによって原点方向へ移動させることができるので、可動子の移動によるリニアモータの破損を防止し、可動子が原点位置に移動することが可能となる効果を奏する。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、可動子に対する電流値が一定時間基準電流値以下のときに、それ以降は可動子の位相補正値を変更しないことによって、可動子が原点位置に移動することが可能となる効果を奏する。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、画像読取装置の搬送装置が位相補正値を用いる簡易な制御構成により可動子を駆動制御して原点位置に移動することが可能となる効果を奏する。また、磁束密度を検出するセンサを用いることがないため、搬送装置の構成も簡易にすることができる。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、画像形成装置の搬送装置が位相補正値を用いる簡易な制御構成により可動子を駆動制御して原点位置に移動することが可能となる効果を奏する。また、磁束密度を検出するセンサを用いることがないため、搬送装置の構成も簡易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[第一の実施形態]
以下、図を参照しながら本発明にかかるリニアモータの構成について説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。
【0022】
リニアモータ1には、図1及び図2に示すように、リニアモータ1の各部材を固定する平板状の基台としての装置基台2が設けられている。装置基台2上には、固定子支持部材3が設けられており、固定子支持部材3の間には、円柱状の固定子4が介設されている。
【0023】
固定子4は、図2に示すように、円筒形のパイプ状部材5と、パイプ状部材5内に収納される複数の円柱形の磁石6とにより構成されている。パイプ状部材5内には、複数の円柱形の磁石6が、互いに隣り合う磁石の同磁極面が対向して密接するように直列状に配列されている。
パイプ状部材5としては、アルミニウム合金、銅合金、非磁性ステンレス鋼などの非磁性材料が用いられ、パイプ状部材5の外側に配置される可動子7に作用する磁界を減少させないように、出来るだけ薄いもので形成されるほうが好ましい。この固定子4の磁束密度は、図3(b)に示すように、互いに隣り合う磁石6の同磁極面が対向している位置を頂点とする波形を示している。また、磁石6の材料としては、磁束密度の大きい希土類磁石が用いられる。特に、希土類磁石としてネオジム系磁石、例えば、ネオジム−鉄−ボロン磁石(Nd―Fe―B磁石)を用いることが好ましく、他の磁石を用いるときに比べて高い推力を得ることができる。
【0024】
固定子4の外周には、その外周面に沿って延在方向に直線方向に移動する円筒形状の可動子7が設けられている。可動子7は、三相のコイルU、V、Wからなる電磁コイル8により構成されており、固定子4の外周面と可動子7の内周面とは微小な間隔を保持している。なお、本実施形態では可動子7が三相の電磁コイル8により構成されるとしたが、これに限定されず、三相の電磁コイルを複数用いて直列に配列することにより構成してもよい。
可動子7には、コイルの半円筒状の凹部が設けられた一対のコイル保持部材9が、電磁コイル8の上下から電磁コイル8の外周面を固定して保持するように設けられている。このコイル保持部材は、可動子7の移動に伴って搬送されるようになっており、この可動子7の移動と共にコイル保持部材9上に設置されたものが搬送されるようになっている。
【0025】
コイル保持部材9の下面には、可動子7が固定子4の原点に位置しているか否かを検出する原点センサ10の原点センサ素子11が設けられており、可動子7の移動に伴って搬送されるようになっている。また、固定子支持部材3の側面には、原点センサ10の原点センサ検出器12が原点位置として設けられており、原点センサ素子11が原点センサ検出器12内に位置すると原点センサ信号を生ずるようになっている。
【0026】
また、コイル保持部材9の下面には、コイル保持部材9の搬送状態を検出するリニアエンコーダ13が設けられている。リニアエンコーダ13は、装置基台2上に固定子4の延在方向と平行に延在しているエンコーダスケール14と、コイル保持部材9の裏面でエンコーダスケール14と対向する位置に設置され、コイル保持部材9の搬送に伴って光をエンコーダスケール14に照射し、その反射光を受光してコイル保持部材9の位置を検出する光センサ15とを備えている。
なお、本実施形態では、リニアエンコーダ13によりコイル保持部材9の搬送状態を検出するとしたが、これに限定されず、リニアエンコーダの代わりにロータリエンコーダ、加速度センサ、レーザ変位計等のいずれか一つ、又は複数を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
本発明では、固定子4と可動子7とからリニアモータ16が構成されている。電磁コイル8の三相のコイルU、V、W各々には、図3(c)に示すように可動子7の位置に応じた位相に対応する電流が通電され、可動子7に推力を生じさせ、可動子7が固定子4に沿って移動するようになっている。これにより、リニアモータ16が作動するようになっている。
【0028】
次に、図4を参照しながら、リニアモータ1の制御構成について説明する。
【0029】
リニアモータ1には、図4に示すように、リニアモータ1全体の制御を行う制御部17が備えられている。制御部17は、配列された複数の磁石6の磁極間情報や磁束密度、リニアモータ16の目標速度、可動子7が原点に移動する初期動作時に電磁コイル8が供給される電流値の基準値となる基準電流値等が予め記憶されている記憶部18と、検出したリニアモータ16の速度と記憶部18による目標速度との差を算出する差分出力部19と、リニアエンコーダ13により検出されたリニアモータ16の位置信号を速度信号に変換して差分出力部に出力したり、差分出力部により算出された差分信号をリニアモータ16に供給する電力値を指示する駆動制御信号に変換したり、初期動作時にリニアモータ16が供給されている電流値と基準電流値との比較をしたり、原点センサ10より入力された原点センサ信号によって初期動作の終了を判断したりする演算部20と、駆動制御信号に基づいてリニアモータ16に駆動電力を供給する電力制御部21とにより構成されている。
【0030】
ここで、磁極間隔情報とは、磁石6の寸法Pや磁極ピッチLを示すものであり、磁石6の寸法Pと磁極ピッチLとの関係は、磁極ピッチL=2×磁石寸法Pである。この磁極間隔情報は、電力制御部21が演算部20からの駆動制御信号に基づき、リニアモータ16に供給する電力を、リニアモータ16を構成する電磁コイル8の各相の位置に応じて分配する際に基準となるものである。
【0031】
また、電力制御部21は、下記の式(1)〜(3)に示す余弦関数に基づいて電磁コイル8のコイルU、V、Wの各相に駆動電力を供給し、リニアモータ16を駆動制御するようになっている。
【0032】
【数1】
【0033】
【数2】
【0034】
【数3】
【0035】
ここで、
Gは、ゲイン定数、
Tは、演算部20から電力制御部21に入力される駆動制御信号の電力値、
θは、位相オフセット、
xは、磁石6の原点から電磁コイル8までの距離、
Pは、磁石寸法、すなわち磁極間隔情報、
である。
位相補正値である位相オフセットとは、磁石6の磁束密度分布の位相に対する電磁コイル8の電流位相のずれを補正してモータの駆動効率が最大になるようにするものであり、リニアモータ16の可動子7が移動して電磁コイル8が原点(x=0とする)に位置したときに基準となる基準位相オフセットが検出されて設定されるようになっている。リニアモータ16が初期動作をするときは、適度な値である初期値が入力されるようになっている。
【0036】
電力制御部21は、リニアモータ16の初期動作時には、電磁コイル8が供給されている電流値を検出して基準電流値と比較するようになっている。電磁コイル8が供給されている電流値が基準電流値以上のときは、電力制御部21は式(1)〜(3)に示す余弦関数の位相オフセットを6度変更して電磁コイル8への供給電力を変更し、電磁コイル8が供給されている電流値が基準電流値未満のときは、電力制御部21は位相オフセットを変更しないようになっている。さらに、電力制御部21は、一定時間位相オフセットが変更されないときは、その位相オフセットを固定して変更しないようになっている。
【0037】
また、リニアモータ16の初期動作時には、電力制御部21は可動子7の位置を検出することによって可動子7の移動方向を検出するようになっている。可動子7が原点方向と逆方向に移動しているときは、電力制御部21は、式(1)〜(3)に示す余弦関数の値が正負逆になるような位相オフセット値を入力して電磁コイル8への供給電力を変更し、可動子7を原点方向に移動させるようになっている。可動子7が原点方向に移動しているときは、電力制御部21は、各位相オフセットを変更しないようになっている。
【0038】
次に、第一の実施形態における作用について説明する。
【0039】
外部から入力されるリニアモータ1の作動指示に基づいて、制御部17は、リニアモータ16を制御し、可動子7を原点に移動する初期動作を行う。図5に示したフローチャートを用いて、第一の実施形態に係る初期動作について以下説明する。
【0040】
外部からリニアモータの作動指示が入力されると、制御部17は、初期値として適度な電力値Tと位相オフセットを設定し、電磁コイル8に電力を供給する(ステップS01)。
【0041】
初期値が設定されると、制御部17によって演算部20に原点センサ10から原点センサ信号が入力されたか否かが検出される(ステップS02)。演算部20に原点センサ信号が入力されていないと判断されると(ステップS02:No)、制御部17によって初期値が設定されてから一定時間が経過したか否かが判断される(ステップS03)。一定時間が経過したと判断されると(ステップS03:Yes)、電磁コイル8に対する電流値が、初期動作時における基準電流値以上か否かが検出される(ステップS04)。電磁コイル8に対する電流値が基準電流値以上だと判断されると(ステップS04:Yes)、制御部17は電力制御部21を駆動制御して位相オフセットを6度変更して電磁コイル8への供給電力を変更し(S05)、ステップS02にリターンする。
電磁コイル8に対する電流値が基準電流値以上ではないと判断されると(ステップS04:No)、ステップS03から一定時間が経過したか否かが判断される(ステップS06)。ステップS03から一定時間が経過したと判断されると(ステップS06:Yes)、ステップS05における位相オフセットを固定し(ステップS07)、ステップS02にリターンする。ステップS03から一定時間が経過していないと判断されると(ステップS06:No)、そのままステップS02にリターンする。
【0042】
制御部17によって初期値が設定されてから一定時間が経過していないと判断されると(ステップS03:No)、ステップS03から一定時間が経過したか否かが判断される(ステップS08)。ステップS03から一定時間が経過したと判断されると(ステップS08:Yes)、リニアモータ16の可動子7の移動方向が検出されて原点方向か否かが判断される(ステップS09)。可動子7の移動方向が原点方向と逆方向であると判断されると(ステップS09:Yes)、制御部17は電力制御部21を駆動制御して余弦関数の値が正負逆になるような位相オフセットを入力し、リニアモータ16への供給電力を変更し(ステップS10)、ステップS02にリターンする。可動子7の移動方向が原点方向であると判断されると(ステップS09:No)、そのままステップS02にリターンする。ステップS03から一定時間が経過していないと判断されると(ステップS08:No)、そのままステップS02にリターンする。
【0043】
演算部20に原点センサ信号が入力されたことが検出されると(ステップS02:Yes)、可動子7が移動して原点に位置したことになり、このとき検出された位相オフセットを基準位相オフセットとして設定し、初期動作は終了する。
【0044】
初期動作が終了すると、リニアモータ16の動作が行われる。
次に、リニアモータ16の動作について説明する。
【0045】
制御部17が電磁コイル8に電力を供給し、電磁コイル8の三相のコイルが通電されると、可動子7に推力が生じ、可動子7が固定子4に沿って移動する。可動子7の移動に伴い、リニアエンコーダ13は、光センサ15から光をエンコーダスケール14に照射し、その反射光を受光する。これを繰り返すことにより、リニアエンコーダ13は、コイル保持部材9の位置を検出し、この検出した位置に基づいて算出したコイル保持部材9の速度信号を差分出力部19に出力し、又、検出に基づく位置信号を電力制御部21に出力する。
【0046】
制御部17は、記憶部18からリニアモータ16の目標速度である目標速度信号を差分出力部19に入力する。差分出力部19は、目標速度信号と、リニアエンコーダ13により検出された位置信号が演算部20によって変換された速度信号との差分を算出し、算出した差分信号を演算部20に出力する。演算部20は、差分信号をリニアモータ16への駆動制御信号に変換して電力制御部21に出力する。電力制御部21は、駆動制御信号を駆動電力に変換し、その駆動電力をリニアモータ16に供給する。
【0047】
以上を繰り返すことにより、制御部17の駆動制御によってリニアモータ16の動作が行われる。
【0048】
従って、リニアモータ16の初期動作である可動子7が原点に移動する時に、磁束密度を検出するセンサを用いることのない簡易な構成によって、可動子7が移動して原点に位置することが可能となる。
【0049】
なお、本実施例では、可動子7に供給される電流値と記憶部18に記憶された基準電流値とを比較することにより位相補正値を変更するか否かを判断するとしたが、これに限定されず、可動子に印加される電圧値を検出し、検出した電圧値と予め記憶部に記憶させた基準電圧値とを比較して位相補正値を変更するようにしても良い。
【0050】
また、本実施例では、リニアモータ16に初期動作時に電力制御部21は余弦関数の各位相オフセットを6度変更するとしたが、これに限定されず、適度な値を設定して各位相オフセットを変更するようにしても良い。
【0051】
さらに、本実施例では、ステップS06にてステップS03から一定時間が経過したか否かを検出する例を示したが、これに限定されず、ステップS03から可動子7の移動距離が一定距離以上であるか否かを検出しても良い。
【0052】
[第二の実施形態]
続いて、図6から図9を参照しながら、第二の実施形態について説明する。第二の実施形態は、上記第一の実施形態におけるリニアモータを搬送装置として備える画像読取装置である。
【0053】
第二の実施形態では、画像読取装置を中心とした説明を行い、上記第一の実施形態と同様の構成には上記と同様の符号を付して、その詳細な説明を省略する。ただし、発明の範囲は図示例に限定するものではない。
【0054】
図6に、本発明に係る画像読取装置100の一実施例を示す。画像読取装置100は、画像情報が蓄積された画像読取用カセッテ101を外部から挿入し、その画像情報を読み取る装置である。
【0055】
画像読取用カセッテ101には、画像情報が蓄積されている記録材である輝尽性蛍光体シート102が収納されている。また、画像読取用カセッテ101は、輝尽性蛍光体シート102を背面から保持するための磁性を有するバック板103と、輝尽性蛍光体シート102の表面を覆うフロント板104とから構成されている。
【0056】
画像読取装置100の正面側上部には、画像読取用カセッテ101を画像読取装置100内に挿入及び排出するカセッテ挿入排出装置105が設けられている。
【0057】
カセッテ挿入排出装置105には、外部より画像読取用カセッテ101が挿入される挿入部106が設けられており、挿入部106の下部には、挿入部106に挿入された画像読取用カセッテ101を画像読取装置100内に挿入する挿入ローラ107が回転可能に設けられている。また、カセッテ挿入排出装置105には、画像読取装置100内から画像読取用カセッテが搬出される排出部108が設けられており、排出部108の下部には、画像読取用カセッテ101を画像読取装置100内部から排出部108に搬出する排出ローラ109が回転可能に設けられている。
【0058】
画像読取装置100内部の下部には、基台110が設けられている。基台110上には、カセッテ挿入排出装置105から挿入された画像読取用カセッテ101を所定位置に搬送するカセッテ搬送装置111が設けられている。
【0059】
カセッテ搬送装置111には、上面及び背面が開放された箱状のカセッテ支持部112が設けられている。
【0060】
カセッテ支持部112の下端には、回転軸113が基台110上で回動可能に設けられており、挿入部106に対向する位置a、排出部108に対抗する位置b、画像読取用カセッテ101が略垂直となる位置cの各位置において停止可能なようになっている。
【0061】
カセッテ支持部112の内部には、画像読取用カセッテ101の下端部を支持する昇降台114が、カセッテ支持部112内を昇降可能に設けられている。また、カセッテ支持部112の内部には、画像読取用カセッテ101をバック板103とフロント板104とに分離可能とするロック解除機構(図示せず)が設けられている。
【0062】
また、基台110上には、バック板103に装着された輝尽性蛍光体シート102を搬送する搬送装置115が設けられている。図7に搬送装置115の斜視図を、図8に搬送装置115の断面図を示す。搬送装置115には、基台110から鉛直方向に延在する板状の支持基台116が設けられている。支持基台116の両端には、支持片117が設けられている。この支持片117の間には、円筒形の固定子4が介設されている。固定子4は、円筒形のパイプ状部材5と、パイプ状部材5内に収納される複数の円柱形の磁石6とにより構成されている。パイプ状部材5内には、複数の円柱形の磁石6が、互いに隣り合う磁石の同磁極面が対向して密接するように直列状に配列されている。
【0063】
固定子4の外周には、その外周面に沿って直線移動する可動子7が設けられている。可動子7は、三相のコイルU、V、Wからなる電磁コイル8と、コイルの円筒状の凹部が設けられたコイル保持部材9とによって構成されており、可動子7の内周面と固定子4の外周面とは微小な間隔を保持している。
【0064】
コイル保持部材9の下面には、可動子7が原点に位置しているか否かを検出する原点センサ10の原点センサ素子11が設けられており、可動子7の移動に伴って搬送されるようになっている。また、支持片117の側面には、原点センサ10の原点センサ検出器12が設けられており、原点センサ素子11が原点センサ検出器12内に位置すると原点センサ信号を生ずるようになっている。
【0065】
可動子7の固定子4の延在する方向の一面には、直方体の取付部材118が設けられている。また、支持基台116上で取付部材118と対向する位置には、ガイドレール119が固定子4と平行に延在して設けられている。取付部材118のガイドレール119と対向する面には、被ガイド部材120が設けられており、被ガイド部材120がガイドレール119に案内されて搬送可能なようになっている。
【0066】
取付部材118の被ガイド部材120と反対側の面には、平板状のカセッテ保持板121が設けられており、取付部材118の移動に伴って搬送されるようになっている。また、カセッテ保持板121には磁石(図示せず)が設けられており、この磁石の磁力によってカセッテ保持板121にバック板103を保持することが出来るようになっている。
【0067】
支持基台116上でガイドレール119の支持片117と反対側には、エンコーダスケール14がガイドレール119と平行に延在して設けられている。カセッテ保持板121上でエンコーダスケール14と対向する位置には、光センサ15が設けられており、カセッテ保持板121の搬送に伴って光をエンコーダスケール14に照射し、その反射光を受光して可動子7の位置を検出するようになっている。
【0068】
カセッテ保持板121と対向する位置には、輝尽性蛍光体シート102に蓄積、記録された画像情報を読み取る読取装置122が固設されている。
【0069】
読取装置122には、輝尽性蛍光体シート102にレーザ光L1を照射するレーザ光照射装置123と、レーザ光L1により励起されて輝尽性蛍光体シート102から発光する輝尽発光光L2を導く導光板124と、導光板124により導かれた輝尽発光光L2を集光する集光管125と、集光管125により集光された輝尽発光光L2を電気信号に変換する光電変換器126とが設けられている。
【0070】
読取装置122の鉛直方向下方には、輝尽性蛍光体シート102に残存する画像情報を消去する消去光を照射する消去装置127が設けられている。この消去装置127には、ハロゲンランプや高輝度蛍光灯、LEDアレイ等を用いることができる。
【0071】
次に、図9を参照しながら、画像読取装置100の制御構成について説明する。
なお、第一の実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略し、第二の実施の形態に特徴的な部分を中心に説明する。
【0072】
画像読取装置100には、図9に示すように、画像読取装置100全体の制御を行う制御部128が備えられている。
【0073】
制御部128には、磁石6の磁石寸法を示す磁極間隔情報や、リニアモータ16の目標速度、可動子7が原点に移動する初期動作時に電磁コイル8への電流値の基準値となる基準電流値等が予め記憶されている記憶部18と、検出したリニアモータ16の速度と記憶部18による目標速度との差を算出する差分出力部19と、リニアエンコーダ13により検出されたリニアモータ16の位置信号を速度信号に変換して差分出力部に出力したり、差分出力部により算出された差分信号をリニアモータ16に供給する電力値を指示する駆動制御信号に変換したり、初期動作時にリニアモータ16に供給されている電力値と基準電力値との比較をしたり、原点センサ10より入力された原点センサ信号によって初期動作の終了を判断したりする演算部20と、駆動制御信号に基づいてリニアモータ16に駆動電力を供給する電力制御部21とが設けられている。
【0074】
また、制御部128には、カセッテ挿入排出装置105、カセッテ搬送装置111、搬送装置115、読取装置122、消去装置127がそれぞれ接続されており、駆動制御されるようになっている。
【0075】
次に、第二の実施形態における作用について説明する。
【0076】
画像読取装置100の電源が入力されると、制御部128は、搬送装置115のリニアモータ16を駆動制御して可動子7を原点に移動する初期動作を行う。この初期動作の詳細は、第一の実施形態と同様である。
【0077】
初期動作の終了によって可動子7が原点に位置した後、外部から画像読取用カセッテ101がカセッテ挿入排出装置105の挿入部106に挿入されると、制御部128は、挿入ローラ107を駆動制御して画像読取用カセッテ101をカセッテ搬送装置111に搬出する。
【0078】
画像読取用カセッテ101は、昇降台114に装着され、カセッテ搬送装置111に搬入される。画像読取用カセッテ101がカセッテ搬送装置111に搬入されると、画像読取用カセッテ101は、ロック解除機構により輝尽性蛍光体シート102を支持するバック板103とフロント板104とに分離される。また、カセッテ搬送装置111の回転軸113が回転して画像読取用カセッテ101が略垂直となる位置cで停止すると、バック板103は、カセッテ保持板121に装着される。
【0079】
カセッテ保持板121にバック板103が装着されると、制御部128は、リニアモータ16を駆動制御して、カセッテ保持板121を読取装置122の照射先に搬送する。カセッテ保持板121が読取装置122の照射先に位置すると、レーザ光照射装置123は、輝尽性蛍光体シート102にレーザを照射し、その反射光を導光板124により導光板124に誘導し、光電変換器126により画像情報に変換する。レーザが照射された輝尽性蛍光体シート102は、制御部128の駆動制御により消去装置127の照射先に搬送され、消去装置127の照射により画像情報が消去される。
【0080】
画像情報が消去された輝尽性蛍光体シート102を支持するバック板103は、制御部128の駆動制御により移動してカセッテ搬送装置111に装着される。カセッテ搬送装置111内では、バック板103とフロント板104とが結合し、昇降台114に装着される。昇降台114に装着された画像読取用カセッテ101は、制御部128により駆動制御される排出ローラ109によって、画像読取用カセッテ101をカセッテ搬送装置111から排出部108に排出される。
【0081】
以上により、画像読取装置100が駆動制御され、輝尽性蛍光体シート102の画像情報が読み取られるようになっている。
【0082】
従って、第二の実施形態では、センサを用いることなく可動子を位置制御することが可能な搬送装置115を画像読取装置100に備えることにより、画像読取装置100の構成や制御構成が簡易なものとなり、長期に渡り安定して画像を読み取ることができる。また、搬送装置115のリニアモータ16の初期動作である可動子7が原点に移動する時に、磁束密度を検出するセンサを用いることなく可動子7を移動させて原点に位置させることが可能となる。
【0083】
なお、本実施例では、画像読取装置100の内部で基板110の鉛直方向に移動する縦型の搬送装置115の例を示したが、これに限定されず、画像読取装置の内部で基板の平行方向に移動する横型の搬送装置を用いても良い。
【0084】
[第三の実施形態]
続いて、図10、図11を参照しながら、本発明に係る第三の実施形態について説明する。第三の実施形態は、上記第二の実施形態における搬送装置を備える画像形成装置である。
【0085】
第三の実施形態では、画像形成装置を中心とした説明を行い、上記第二の実施形態と同様の構成には上記と同様の符号を付して、その詳細な説明を省略する。ただし、発明の範囲は図示例に限定するものではない。
【0086】
図10に、本発明に係る画像形成装置200の一実施例を示す。
【0087】
画像形成装置200の内部には、複数の記録媒体201を積層して収容する収容トレイ202が設けられており、この収容トレイ202の画像形成装置200の中央側の一端上部には、記録媒体201を一枚ずつ収容トレイ202から取り出す取出装置203が設けられている。
【0088】
なお、記録材である記録媒体201には、色材層を有する第一シートとベース層を有する第二シートから形成され、レーザ光を照射することにより色材層とベース層との間で材料のアブレーションを発生させ、色材層を第二シートに転写することにより画像を形成することが可能なものが用いられる。
【0089】
収容トレイ202の取出装置203方向の斜め下には、取出装置203により取り出された記録媒体201を支持する円筒状の支持ドラム204が、回転自在なように配設されている。支持ドラム204の周面には、記録媒体201の前端部の全幅を把持する前端把持部205及び記録媒体201の後端部の全幅を把持する後端把持部206が、支持ドラム204の回転軸方向と平行に延在して設けられている。
【0090】
支持ドラム204の収容トレイ202と反対側には、支持ドラム204に摺接して従動回転する従動ローラ207が、支持ドラム204と接離可能なように設けられている。
【0091】
画像形成装置200の上部には、画像が記録された記録媒体201が排出される排出トレイ208が設けられている。
【0092】
画像形成装置200の内部には、収容トレイ202から供給された記録媒体201が支持ドラム204に搬送され、支持ドラム204の周面に把持された後、支持ドラム204の周面上部から排出トレイ208に排出される経路である搬送経路が設けられている。この搬送経路の所定位置には、記録媒体201を搬送方向に搬送する複数対の搬送ローラ209が設けられている。
【0093】
収容トレイ202の下側には、支持ドラム204に把持された記録媒体201にレーザ光を照射して記録媒体に画像を記録するレーザ光照射装置210が設けられている。レーザ光照射装置210の下部には、レーザ光照射装置210を保持して支持ドラム204の回転軸方向に搬送する搬送装置115が設けられている。
【0094】
搬送装置115には、板状の支持基台116が、支持ドラム204の回転軸方向に延在して設けられている。支持基台116の両端には、支持片117が設けられている。この支持片117の間には、円筒形の固定子4が介設されている。固定子4は、円筒形のパイプ状部材5と、パイプ状部材5内に収納される複数の円柱状の磁石6とにより構成されている。パイプ状部材5内には、複数の磁石6が、互いに隣り合う磁石の同磁極面が対向して密接するように直列状に配列されている。
【0095】
固定子4の外周には、その外周面に沿って延在方向に直線方向に移動する可動子7が設けられている。可動子7は、三相のコイルU、V、Wからなる電磁コイル8と、コイルの円筒状の凹部が設けられたコイル保持部材9とによって構成されており、可動子7の内周面と固定子4の外周面とは微小な間隔を保持している。
【0096】
可動子7の固定子4の延在する方向の一面には、直方体の取付部材118が設けられている。支持基台116上で取付部材118と対向する位置には、ガイドレール119が固定子4と平行に延在して設けられている。取付部材118のガイドレール119と対向する面には、被ガイド部材120が設けられており、被ガイド部材120がガイドレール119に案内されて搬送可能なようになっている。
【0097】
取付部材118の被ガイド部材120と反対側の面には、平板状のレーザ光照射装置保持板211が設けられており、取付部材118の移動に伴って搬送されるようになっている。
【0098】
レーザ光照射装置保持板211の下面には、可動子7が原点に位置しているか否かを検出する原点センサ10の原点センサ素子11が設けられており、可動子7の移動に伴って搬送されるようになっている。また、支持片117の側面には、原点センサ10の原点センサ検出器12が設けられており、原点センサ素子11が原点センサ検出器12内に位置すると原点センサ信号を生ずるようになっている。
【0099】
支持基台116上でガイドレール119の支持片117と反対側には、エンコーダスケール14がガイドレール119と平行に延在して設けられている。カセッテ保持板121上でエンコーダスケール14と対向する位置には、光センサ15が設けられており、カセッテ保持板121の搬送に伴って光をエンコーダスケール14に照射し、その反射光を受光して可動子7の位置を検出するようになっている。
【0100】
支持ドラム204より搬送経路下流側には、レーザ光照射装置によって画像が記録された記録媒体201の第一シートと第二シートとに剥離する剥離装置212が設けられている。剥離装置212の画像形成装置200内側で排出トレイ208の下方には、剥離装置212によって剥離された第一シートを巻き取って回収する回収ロール213が設けられている。また、剥離装置212の搬送経路下流側には、画像が形成された第二シートを排出トレイ208に搬出する搬送ローラ209が設けられている。
【0101】
次に、図11を参照しながら、画像形成装置200の制御構成について説明する。
なお、第二の実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略し、第三の実施形態に特徴的な部分を中心に説明する。
【0102】
画像形成装置200には、図11に示すように、画像形成装置200全体の制御を行う制御部215が備えられている。
【0103】
制御部215は、磁石6の磁石寸法を示す磁極間隔情報や、リニアモータ16の目標速度や、可動子7が原点に移動する初期動作時に電磁コイル8への電流値の基準値となる基準電流値等が予め記憶されている記憶部18と、検出したリニアモータ16の速度と記憶部18による目標速度との差を算出する差分出力部19と、リニアエンコーダ13により検出されたリニアモータ16の位置信号を速度信号に変換して差分出力部に出力したり、差分出力部により算出された差分信号をリニアモータ16に供給する電力値を指示する駆動制御信号に変換したり、初期動作時にリニアモータ16に供給されている電力値と基準電力値との比較をしたり、原点センサ10より入力された原点センサ信号によって初期動作の終了を判断したりする演算部20と、駆動制御信号に基づいてリニアモータ16に駆動電力を供給する電力制御部21とによって構成されている。
【0104】
また、制御部215には、レーザ光照射装置210を保持して支持ドラム204の回転軸方向に搬送する搬送装置115、収容トレイ202から記録媒体201を取り出して支持ドラム204に支持させる取出装置203、支持ドラム204上に記録媒体201が存在するときに記録媒体201にレーザ光を照射するレーザ光照射装置210、レーザ光照射装置210のレーザ光の照射に伴って回転する支持ドラム204、画像が形成された記録媒体201を第一シートと第二シートとに剥離する剥離装置212、記録媒体201や第一シート及び第二シートを搬送する搬送ローラ209がそれぞれ接続されており、制御部215によって駆動制御されるようになっている。
【0105】
次に、第三の実施形態における作用について説明する。
【0106】
画像形成装置200の電源が入力されると、制御部215は、リニアモータ16を駆動制御して可動子7を原点に移動する初期動作を行う。この初期動作の詳細は、第一の実施形態と同様である。
【0107】
初期動作の終了によって可動子7が原点に位置すると、制御部215は、取出装置203を駆動制御して、収容トレイ202から記録媒体201を取出す。収容トレイ202から取り出された記録媒体201は、搬送ローラ209により支持ドラム204に搬送される。搬送された記録媒体201は、前端把持部205に記録媒体201の前端部が把持され、また後端把持部206に記録媒体201の後端部が把持されて支持ドラム204に支持される。
【0108】
支持ドラム204に記録媒体201が支持されると、制御部215は、リニアモータ16を駆動制御して移動させるのに伴って、レーザ光照射装置210が設置されているレーザ光照射装置保持板211を搬送する。レーザ光照射装置210がレーザ光の照射先が支持ドラム204上の記録媒体201の所定位置となる位置に到達すると、制御部215は、レーザ光照射装置210を駆動制御してレーザ光照射装置210からレーザ光を記録媒体201に照射する。レーザ光照射装置210は、制御部215に駆動制御されるリニアモータ16の移動に伴い、支持ドラム204の回転軸と平行に搬送され、記録媒体201全面にレーザ光を照射して画像を記録する。画像が記録された記録媒体201は、前端把持部205及び後端把持部206の把持が外されて支持ドラム204と従動ローラ207とが回転すると、搬送経路に搬出されて搬送ローラ209によって搬送される。所定の位置に搬送された記録媒体201は、剥離装置212によって第一シートと第二シートとに剥離される。剥離された第一シートは、回収ロール213によって巻き取られて回収される。また、第二シートは、搬送ローラ209により搬送経路に従って搬送され、排出ローラ214によって排出トレイ208に排出される。
【0109】
以上により、画像形成装置200が駆動制御され、画像が記録媒体201に形成されるようになっている。
【0110】
従って、第三の実施形態では、センサを用いることなく可動子を位置制御することが可能な搬送装置115を画像形成装置200に備えることにより、画像形成装置200の構成や制御構成が簡易なものとなり、長期に渡り安定して画像を形成することができる。また、搬送装置115のリニアモータ16の初期動作である可動子7が原点に移動する時に、磁束密度を検出するセンサを用いることなく可動子7を移動させて原点に位置させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】第一の実施形態における搬送装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】第一の実施形態における搬送装置の概略構成を示す断面図である。
【図3】図3(a)は、第一の実施形態における固定子を構成する磁石の位置を示す断面図であり、図3(b)は、第一の実施形態における固定子を構成する磁石の位置と磁束密度との関係を示す図であり、図3(c)は、第一の実施形態における固定子を構成する磁石の位置とコイルに流す電流との関係を示す図である。
【図4】第一の実施形態における搬送装置の制御構成を示すブロック図である。
【図5】第一の実施形態における搬送装置の初期動作を示すフロー図である。
【図6】第二の実施形態における画像読取装置の概略構成を示す断面図である。
【図7】第二の実施形態における画像読取装置の搬送装置とレーザ光照射装置との概略構成を示す斜視図である。
【図8】第二の実施形態における画像読取装置の搬送装置とレーザ光照射装置との概略構成を示す断面図である。
【図9】第二の実施形態における画像読取装置の制御構成を示すブロック図である。
【図10】第三の実施形態における画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【図11】第三の実施形態における画像形成装置の制御構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0112】
1 リニアモータ
4 固定子
7 可動子
10 原点センサ
13 リニアエンコーダ
17 制御部
18 記憶部
100 画像読取装置
102 輝尽性蛍光体シート
115 搬送装置
200 画像形成装置
201 記録媒体
210 レーザ光照射装置
215 制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータ、画像読取装置及び画像形成装置に係り、特にシャフト型リニアモータ、シャフト型リニアモータを搬送装置として用いる画像読取装置及び画像形成装置の初期動作に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、OA機器である画像形成装置の印字ヘッドや露光ヘッド等、また、医療機器における露光走査手段等で直線移動精度が要求される部位には、リニアモータを利用することが提案されている。
【0003】
また、近年は、シャフト状の固定子と、固定子の外周面に沿って直線方向に移動する可動子とから構成されるシャフト型のリニアモータが考案されている。このようなシャフト型のリニアモータは、従来の平板状磁石を用いたリニアモータと比較して、磁束の利用効率が良いため、磁石をそれ程大型化しなくても大きな推力を得ることができる。このため、各種OA機器等装置を小型化、低コスト化することができ、要求される高精度な移動制御を行うのに適している。
【0004】
シャフト型リニアモータの可動子の移動制御としては、リニアモータに磁束密度を測定して固定子に対する可動子の位置を検出するセンサと可動子の移動方向や速度を検出するリニアエンコーダとを配置し、これらの検出結果に基づき可動子に供給する電流を制御することにより行われる技術が一般に知られている。
【0005】
また、他の移動制御方法としては、固定子の磁束密度を検出するセンサをリニアモータに配置し、このセンサによる磁束密度の測定結果をフィードバックすることにより、リニアモータの推力の変動を軽減し、より安定した移動制御を行う技術が公開されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−275694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、磁束密度を測定して可動子の位置を検出するセンサや、特許文献1の固定子の磁束密度を検出するセンサを用いる方法では、搬送装置の構成や制御が複雑になるという問題や、センサを含む駆動処理回路が必要となるためコストが嵩むという問題を有している。そこで、このようなセンサを用いずにリニアモータの推力の変動を検出して可動子の移動制御をすることができる技術開発が課題となっている。
【0007】
さらに、リニアモータに電源を投入したときに実施する初期動作時には、装置の構成や制御が複雑でも時間をかけることなく、又、可動子への高精度な速度制御を行うことなく、可動子を早く確実に原点位置に移動させることが要求されている。
【0008】
本発明の課題は、前記した点に鑑みてなされたもので、磁束密度を検出するセンサを用いることなく可動子を移動制御することが可能なリニアモータ、リニアモータを搬送装置として備えた画像読取装置及び画像形成装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
直線状に複数の磁石が配列された固定子と、
位相補正値を含む三角関数に基づく電力が供給される電磁コイルが前記固定子に沿って可動なように設けられた可動子と、
前記可動子が前記固定子の原点に移動するときに供給される電流値の基準となる基準電流値が記憶された記憶部と、
前記可動子が前記原点に移動するときに前記可動子に供給される電流が前記基準電流値以上であるときに前記位相補正値を変更する制御部とを備えたことを特徴とするリニアモータである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のリニアモータにおいて、
前記可動子の移動状態を検出する検出部を備え、
前記制御部は、前記可動子の移動状態に応じて前記位相補正値を変更することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のリニアモータにおいて、
前記制御部は、前記可動子の移動方向が原点から遠ざかる方向であるときに前記位相補正値を変更して前記可動子を原点方向に移動させることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のリニアモータにおいて、
前記制御部は、前記可動子に対する電流値が一定時間基準電流値未満であるときに前記位相補正値を固定して変更しないことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、
記録材に記録された画像を読み取る読取部が備えられた画像読取装置において、
前記記録材又は前記読取部の少なくとも一方を搬送する搬送装置として請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のリニアモータを備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、
記録材に画像を形成する画像形成部が備えられた画像形成装置において、
前記記録材又は前記画像形成部の少なくとも一方を搬送する搬送装置として請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のリニアモータを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、リニアモータの初期動作時に、位相補正値を用いる簡易な制御構成により可動子を駆動制御して原点位置に移動することが可能となる効果を奏する。また、磁束密度を検出するセンサを用いることがないため、リニアモータの構成を簡易にすることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、可動子の移動状態を検出することができるので、その検出状態に応じて可動子を駆動制御して原点位置に移動することが可能となる効果を奏する。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、可動子が原点方向から遠ざかる方向に移動しているときに位相補正値を変更することによって原点方向へ移動させることができるので、可動子の移動によるリニアモータの破損を防止し、可動子が原点位置に移動することが可能となる効果を奏する。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、可動子に対する電流値が一定時間基準電流値以下のときに、それ以降は可動子の位相補正値を変更しないことによって、可動子が原点位置に移動することが可能となる効果を奏する。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、画像読取装置の搬送装置が位相補正値を用いる簡易な制御構成により可動子を駆動制御して原点位置に移動することが可能となる効果を奏する。また、磁束密度を検出するセンサを用いることがないため、搬送装置の構成も簡易にすることができる。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、画像形成装置の搬送装置が位相補正値を用いる簡易な制御構成により可動子を駆動制御して原点位置に移動することが可能となる効果を奏する。また、磁束密度を検出するセンサを用いることがないため、搬送装置の構成も簡易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[第一の実施形態]
以下、図を参照しながら本発明にかかるリニアモータの構成について説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。
【0022】
リニアモータ1には、図1及び図2に示すように、リニアモータ1の各部材を固定する平板状の基台としての装置基台2が設けられている。装置基台2上には、固定子支持部材3が設けられており、固定子支持部材3の間には、円柱状の固定子4が介設されている。
【0023】
固定子4は、図2に示すように、円筒形のパイプ状部材5と、パイプ状部材5内に収納される複数の円柱形の磁石6とにより構成されている。パイプ状部材5内には、複数の円柱形の磁石6が、互いに隣り合う磁石の同磁極面が対向して密接するように直列状に配列されている。
パイプ状部材5としては、アルミニウム合金、銅合金、非磁性ステンレス鋼などの非磁性材料が用いられ、パイプ状部材5の外側に配置される可動子7に作用する磁界を減少させないように、出来るだけ薄いもので形成されるほうが好ましい。この固定子4の磁束密度は、図3(b)に示すように、互いに隣り合う磁石6の同磁極面が対向している位置を頂点とする波形を示している。また、磁石6の材料としては、磁束密度の大きい希土類磁石が用いられる。特に、希土類磁石としてネオジム系磁石、例えば、ネオジム−鉄−ボロン磁石(Nd―Fe―B磁石)を用いることが好ましく、他の磁石を用いるときに比べて高い推力を得ることができる。
【0024】
固定子4の外周には、その外周面に沿って延在方向に直線方向に移動する円筒形状の可動子7が設けられている。可動子7は、三相のコイルU、V、Wからなる電磁コイル8により構成されており、固定子4の外周面と可動子7の内周面とは微小な間隔を保持している。なお、本実施形態では可動子7が三相の電磁コイル8により構成されるとしたが、これに限定されず、三相の電磁コイルを複数用いて直列に配列することにより構成してもよい。
可動子7には、コイルの半円筒状の凹部が設けられた一対のコイル保持部材9が、電磁コイル8の上下から電磁コイル8の外周面を固定して保持するように設けられている。このコイル保持部材は、可動子7の移動に伴って搬送されるようになっており、この可動子7の移動と共にコイル保持部材9上に設置されたものが搬送されるようになっている。
【0025】
コイル保持部材9の下面には、可動子7が固定子4の原点に位置しているか否かを検出する原点センサ10の原点センサ素子11が設けられており、可動子7の移動に伴って搬送されるようになっている。また、固定子支持部材3の側面には、原点センサ10の原点センサ検出器12が原点位置として設けられており、原点センサ素子11が原点センサ検出器12内に位置すると原点センサ信号を生ずるようになっている。
【0026】
また、コイル保持部材9の下面には、コイル保持部材9の搬送状態を検出するリニアエンコーダ13が設けられている。リニアエンコーダ13は、装置基台2上に固定子4の延在方向と平行に延在しているエンコーダスケール14と、コイル保持部材9の裏面でエンコーダスケール14と対向する位置に設置され、コイル保持部材9の搬送に伴って光をエンコーダスケール14に照射し、その反射光を受光してコイル保持部材9の位置を検出する光センサ15とを備えている。
なお、本実施形態では、リニアエンコーダ13によりコイル保持部材9の搬送状態を検出するとしたが、これに限定されず、リニアエンコーダの代わりにロータリエンコーダ、加速度センサ、レーザ変位計等のいずれか一つ、又は複数を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
本発明では、固定子4と可動子7とからリニアモータ16が構成されている。電磁コイル8の三相のコイルU、V、W各々には、図3(c)に示すように可動子7の位置に応じた位相に対応する電流が通電され、可動子7に推力を生じさせ、可動子7が固定子4に沿って移動するようになっている。これにより、リニアモータ16が作動するようになっている。
【0028】
次に、図4を参照しながら、リニアモータ1の制御構成について説明する。
【0029】
リニアモータ1には、図4に示すように、リニアモータ1全体の制御を行う制御部17が備えられている。制御部17は、配列された複数の磁石6の磁極間情報や磁束密度、リニアモータ16の目標速度、可動子7が原点に移動する初期動作時に電磁コイル8が供給される電流値の基準値となる基準電流値等が予め記憶されている記憶部18と、検出したリニアモータ16の速度と記憶部18による目標速度との差を算出する差分出力部19と、リニアエンコーダ13により検出されたリニアモータ16の位置信号を速度信号に変換して差分出力部に出力したり、差分出力部により算出された差分信号をリニアモータ16に供給する電力値を指示する駆動制御信号に変換したり、初期動作時にリニアモータ16が供給されている電流値と基準電流値との比較をしたり、原点センサ10より入力された原点センサ信号によって初期動作の終了を判断したりする演算部20と、駆動制御信号に基づいてリニアモータ16に駆動電力を供給する電力制御部21とにより構成されている。
【0030】
ここで、磁極間隔情報とは、磁石6の寸法Pや磁極ピッチLを示すものであり、磁石6の寸法Pと磁極ピッチLとの関係は、磁極ピッチL=2×磁石寸法Pである。この磁極間隔情報は、電力制御部21が演算部20からの駆動制御信号に基づき、リニアモータ16に供給する電力を、リニアモータ16を構成する電磁コイル8の各相の位置に応じて分配する際に基準となるものである。
【0031】
また、電力制御部21は、下記の式(1)〜(3)に示す余弦関数に基づいて電磁コイル8のコイルU、V、Wの各相に駆動電力を供給し、リニアモータ16を駆動制御するようになっている。
【0032】
【数1】
【0033】
【数2】
【0034】
【数3】
【0035】
ここで、
Gは、ゲイン定数、
Tは、演算部20から電力制御部21に入力される駆動制御信号の電力値、
θは、位相オフセット、
xは、磁石6の原点から電磁コイル8までの距離、
Pは、磁石寸法、すなわち磁極間隔情報、
である。
位相補正値である位相オフセットとは、磁石6の磁束密度分布の位相に対する電磁コイル8の電流位相のずれを補正してモータの駆動効率が最大になるようにするものであり、リニアモータ16の可動子7が移動して電磁コイル8が原点(x=0とする)に位置したときに基準となる基準位相オフセットが検出されて設定されるようになっている。リニアモータ16が初期動作をするときは、適度な値である初期値が入力されるようになっている。
【0036】
電力制御部21は、リニアモータ16の初期動作時には、電磁コイル8が供給されている電流値を検出して基準電流値と比較するようになっている。電磁コイル8が供給されている電流値が基準電流値以上のときは、電力制御部21は式(1)〜(3)に示す余弦関数の位相オフセットを6度変更して電磁コイル8への供給電力を変更し、電磁コイル8が供給されている電流値が基準電流値未満のときは、電力制御部21は位相オフセットを変更しないようになっている。さらに、電力制御部21は、一定時間位相オフセットが変更されないときは、その位相オフセットを固定して変更しないようになっている。
【0037】
また、リニアモータ16の初期動作時には、電力制御部21は可動子7の位置を検出することによって可動子7の移動方向を検出するようになっている。可動子7が原点方向と逆方向に移動しているときは、電力制御部21は、式(1)〜(3)に示す余弦関数の値が正負逆になるような位相オフセット値を入力して電磁コイル8への供給電力を変更し、可動子7を原点方向に移動させるようになっている。可動子7が原点方向に移動しているときは、電力制御部21は、各位相オフセットを変更しないようになっている。
【0038】
次に、第一の実施形態における作用について説明する。
【0039】
外部から入力されるリニアモータ1の作動指示に基づいて、制御部17は、リニアモータ16を制御し、可動子7を原点に移動する初期動作を行う。図5に示したフローチャートを用いて、第一の実施形態に係る初期動作について以下説明する。
【0040】
外部からリニアモータの作動指示が入力されると、制御部17は、初期値として適度な電力値Tと位相オフセットを設定し、電磁コイル8に電力を供給する(ステップS01)。
【0041】
初期値が設定されると、制御部17によって演算部20に原点センサ10から原点センサ信号が入力されたか否かが検出される(ステップS02)。演算部20に原点センサ信号が入力されていないと判断されると(ステップS02:No)、制御部17によって初期値が設定されてから一定時間が経過したか否かが判断される(ステップS03)。一定時間が経過したと判断されると(ステップS03:Yes)、電磁コイル8に対する電流値が、初期動作時における基準電流値以上か否かが検出される(ステップS04)。電磁コイル8に対する電流値が基準電流値以上だと判断されると(ステップS04:Yes)、制御部17は電力制御部21を駆動制御して位相オフセットを6度変更して電磁コイル8への供給電力を変更し(S05)、ステップS02にリターンする。
電磁コイル8に対する電流値が基準電流値以上ではないと判断されると(ステップS04:No)、ステップS03から一定時間が経過したか否かが判断される(ステップS06)。ステップS03から一定時間が経過したと判断されると(ステップS06:Yes)、ステップS05における位相オフセットを固定し(ステップS07)、ステップS02にリターンする。ステップS03から一定時間が経過していないと判断されると(ステップS06:No)、そのままステップS02にリターンする。
【0042】
制御部17によって初期値が設定されてから一定時間が経過していないと判断されると(ステップS03:No)、ステップS03から一定時間が経過したか否かが判断される(ステップS08)。ステップS03から一定時間が経過したと判断されると(ステップS08:Yes)、リニアモータ16の可動子7の移動方向が検出されて原点方向か否かが判断される(ステップS09)。可動子7の移動方向が原点方向と逆方向であると判断されると(ステップS09:Yes)、制御部17は電力制御部21を駆動制御して余弦関数の値が正負逆になるような位相オフセットを入力し、リニアモータ16への供給電力を変更し(ステップS10)、ステップS02にリターンする。可動子7の移動方向が原点方向であると判断されると(ステップS09:No)、そのままステップS02にリターンする。ステップS03から一定時間が経過していないと判断されると(ステップS08:No)、そのままステップS02にリターンする。
【0043】
演算部20に原点センサ信号が入力されたことが検出されると(ステップS02:Yes)、可動子7が移動して原点に位置したことになり、このとき検出された位相オフセットを基準位相オフセットとして設定し、初期動作は終了する。
【0044】
初期動作が終了すると、リニアモータ16の動作が行われる。
次に、リニアモータ16の動作について説明する。
【0045】
制御部17が電磁コイル8に電力を供給し、電磁コイル8の三相のコイルが通電されると、可動子7に推力が生じ、可動子7が固定子4に沿って移動する。可動子7の移動に伴い、リニアエンコーダ13は、光センサ15から光をエンコーダスケール14に照射し、その反射光を受光する。これを繰り返すことにより、リニアエンコーダ13は、コイル保持部材9の位置を検出し、この検出した位置に基づいて算出したコイル保持部材9の速度信号を差分出力部19に出力し、又、検出に基づく位置信号を電力制御部21に出力する。
【0046】
制御部17は、記憶部18からリニアモータ16の目標速度である目標速度信号を差分出力部19に入力する。差分出力部19は、目標速度信号と、リニアエンコーダ13により検出された位置信号が演算部20によって変換された速度信号との差分を算出し、算出した差分信号を演算部20に出力する。演算部20は、差分信号をリニアモータ16への駆動制御信号に変換して電力制御部21に出力する。電力制御部21は、駆動制御信号を駆動電力に変換し、その駆動電力をリニアモータ16に供給する。
【0047】
以上を繰り返すことにより、制御部17の駆動制御によってリニアモータ16の動作が行われる。
【0048】
従って、リニアモータ16の初期動作である可動子7が原点に移動する時に、磁束密度を検出するセンサを用いることのない簡易な構成によって、可動子7が移動して原点に位置することが可能となる。
【0049】
なお、本実施例では、可動子7に供給される電流値と記憶部18に記憶された基準電流値とを比較することにより位相補正値を変更するか否かを判断するとしたが、これに限定されず、可動子に印加される電圧値を検出し、検出した電圧値と予め記憶部に記憶させた基準電圧値とを比較して位相補正値を変更するようにしても良い。
【0050】
また、本実施例では、リニアモータ16に初期動作時に電力制御部21は余弦関数の各位相オフセットを6度変更するとしたが、これに限定されず、適度な値を設定して各位相オフセットを変更するようにしても良い。
【0051】
さらに、本実施例では、ステップS06にてステップS03から一定時間が経過したか否かを検出する例を示したが、これに限定されず、ステップS03から可動子7の移動距離が一定距離以上であるか否かを検出しても良い。
【0052】
[第二の実施形態]
続いて、図6から図9を参照しながら、第二の実施形態について説明する。第二の実施形態は、上記第一の実施形態におけるリニアモータを搬送装置として備える画像読取装置である。
【0053】
第二の実施形態では、画像読取装置を中心とした説明を行い、上記第一の実施形態と同様の構成には上記と同様の符号を付して、その詳細な説明を省略する。ただし、発明の範囲は図示例に限定するものではない。
【0054】
図6に、本発明に係る画像読取装置100の一実施例を示す。画像読取装置100は、画像情報が蓄積された画像読取用カセッテ101を外部から挿入し、その画像情報を読み取る装置である。
【0055】
画像読取用カセッテ101には、画像情報が蓄積されている記録材である輝尽性蛍光体シート102が収納されている。また、画像読取用カセッテ101は、輝尽性蛍光体シート102を背面から保持するための磁性を有するバック板103と、輝尽性蛍光体シート102の表面を覆うフロント板104とから構成されている。
【0056】
画像読取装置100の正面側上部には、画像読取用カセッテ101を画像読取装置100内に挿入及び排出するカセッテ挿入排出装置105が設けられている。
【0057】
カセッテ挿入排出装置105には、外部より画像読取用カセッテ101が挿入される挿入部106が設けられており、挿入部106の下部には、挿入部106に挿入された画像読取用カセッテ101を画像読取装置100内に挿入する挿入ローラ107が回転可能に設けられている。また、カセッテ挿入排出装置105には、画像読取装置100内から画像読取用カセッテが搬出される排出部108が設けられており、排出部108の下部には、画像読取用カセッテ101を画像読取装置100内部から排出部108に搬出する排出ローラ109が回転可能に設けられている。
【0058】
画像読取装置100内部の下部には、基台110が設けられている。基台110上には、カセッテ挿入排出装置105から挿入された画像読取用カセッテ101を所定位置に搬送するカセッテ搬送装置111が設けられている。
【0059】
カセッテ搬送装置111には、上面及び背面が開放された箱状のカセッテ支持部112が設けられている。
【0060】
カセッテ支持部112の下端には、回転軸113が基台110上で回動可能に設けられており、挿入部106に対向する位置a、排出部108に対抗する位置b、画像読取用カセッテ101が略垂直となる位置cの各位置において停止可能なようになっている。
【0061】
カセッテ支持部112の内部には、画像読取用カセッテ101の下端部を支持する昇降台114が、カセッテ支持部112内を昇降可能に設けられている。また、カセッテ支持部112の内部には、画像読取用カセッテ101をバック板103とフロント板104とに分離可能とするロック解除機構(図示せず)が設けられている。
【0062】
また、基台110上には、バック板103に装着された輝尽性蛍光体シート102を搬送する搬送装置115が設けられている。図7に搬送装置115の斜視図を、図8に搬送装置115の断面図を示す。搬送装置115には、基台110から鉛直方向に延在する板状の支持基台116が設けられている。支持基台116の両端には、支持片117が設けられている。この支持片117の間には、円筒形の固定子4が介設されている。固定子4は、円筒形のパイプ状部材5と、パイプ状部材5内に収納される複数の円柱形の磁石6とにより構成されている。パイプ状部材5内には、複数の円柱形の磁石6が、互いに隣り合う磁石の同磁極面が対向して密接するように直列状に配列されている。
【0063】
固定子4の外周には、その外周面に沿って直線移動する可動子7が設けられている。可動子7は、三相のコイルU、V、Wからなる電磁コイル8と、コイルの円筒状の凹部が設けられたコイル保持部材9とによって構成されており、可動子7の内周面と固定子4の外周面とは微小な間隔を保持している。
【0064】
コイル保持部材9の下面には、可動子7が原点に位置しているか否かを検出する原点センサ10の原点センサ素子11が設けられており、可動子7の移動に伴って搬送されるようになっている。また、支持片117の側面には、原点センサ10の原点センサ検出器12が設けられており、原点センサ素子11が原点センサ検出器12内に位置すると原点センサ信号を生ずるようになっている。
【0065】
可動子7の固定子4の延在する方向の一面には、直方体の取付部材118が設けられている。また、支持基台116上で取付部材118と対向する位置には、ガイドレール119が固定子4と平行に延在して設けられている。取付部材118のガイドレール119と対向する面には、被ガイド部材120が設けられており、被ガイド部材120がガイドレール119に案内されて搬送可能なようになっている。
【0066】
取付部材118の被ガイド部材120と反対側の面には、平板状のカセッテ保持板121が設けられており、取付部材118の移動に伴って搬送されるようになっている。また、カセッテ保持板121には磁石(図示せず)が設けられており、この磁石の磁力によってカセッテ保持板121にバック板103を保持することが出来るようになっている。
【0067】
支持基台116上でガイドレール119の支持片117と反対側には、エンコーダスケール14がガイドレール119と平行に延在して設けられている。カセッテ保持板121上でエンコーダスケール14と対向する位置には、光センサ15が設けられており、カセッテ保持板121の搬送に伴って光をエンコーダスケール14に照射し、その反射光を受光して可動子7の位置を検出するようになっている。
【0068】
カセッテ保持板121と対向する位置には、輝尽性蛍光体シート102に蓄積、記録された画像情報を読み取る読取装置122が固設されている。
【0069】
読取装置122には、輝尽性蛍光体シート102にレーザ光L1を照射するレーザ光照射装置123と、レーザ光L1により励起されて輝尽性蛍光体シート102から発光する輝尽発光光L2を導く導光板124と、導光板124により導かれた輝尽発光光L2を集光する集光管125と、集光管125により集光された輝尽発光光L2を電気信号に変換する光電変換器126とが設けられている。
【0070】
読取装置122の鉛直方向下方には、輝尽性蛍光体シート102に残存する画像情報を消去する消去光を照射する消去装置127が設けられている。この消去装置127には、ハロゲンランプや高輝度蛍光灯、LEDアレイ等を用いることができる。
【0071】
次に、図9を参照しながら、画像読取装置100の制御構成について説明する。
なお、第一の実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略し、第二の実施の形態に特徴的な部分を中心に説明する。
【0072】
画像読取装置100には、図9に示すように、画像読取装置100全体の制御を行う制御部128が備えられている。
【0073】
制御部128には、磁石6の磁石寸法を示す磁極間隔情報や、リニアモータ16の目標速度、可動子7が原点に移動する初期動作時に電磁コイル8への電流値の基準値となる基準電流値等が予め記憶されている記憶部18と、検出したリニアモータ16の速度と記憶部18による目標速度との差を算出する差分出力部19と、リニアエンコーダ13により検出されたリニアモータ16の位置信号を速度信号に変換して差分出力部に出力したり、差分出力部により算出された差分信号をリニアモータ16に供給する電力値を指示する駆動制御信号に変換したり、初期動作時にリニアモータ16に供給されている電力値と基準電力値との比較をしたり、原点センサ10より入力された原点センサ信号によって初期動作の終了を判断したりする演算部20と、駆動制御信号に基づいてリニアモータ16に駆動電力を供給する電力制御部21とが設けられている。
【0074】
また、制御部128には、カセッテ挿入排出装置105、カセッテ搬送装置111、搬送装置115、読取装置122、消去装置127がそれぞれ接続されており、駆動制御されるようになっている。
【0075】
次に、第二の実施形態における作用について説明する。
【0076】
画像読取装置100の電源が入力されると、制御部128は、搬送装置115のリニアモータ16を駆動制御して可動子7を原点に移動する初期動作を行う。この初期動作の詳細は、第一の実施形態と同様である。
【0077】
初期動作の終了によって可動子7が原点に位置した後、外部から画像読取用カセッテ101がカセッテ挿入排出装置105の挿入部106に挿入されると、制御部128は、挿入ローラ107を駆動制御して画像読取用カセッテ101をカセッテ搬送装置111に搬出する。
【0078】
画像読取用カセッテ101は、昇降台114に装着され、カセッテ搬送装置111に搬入される。画像読取用カセッテ101がカセッテ搬送装置111に搬入されると、画像読取用カセッテ101は、ロック解除機構により輝尽性蛍光体シート102を支持するバック板103とフロント板104とに分離される。また、カセッテ搬送装置111の回転軸113が回転して画像読取用カセッテ101が略垂直となる位置cで停止すると、バック板103は、カセッテ保持板121に装着される。
【0079】
カセッテ保持板121にバック板103が装着されると、制御部128は、リニアモータ16を駆動制御して、カセッテ保持板121を読取装置122の照射先に搬送する。カセッテ保持板121が読取装置122の照射先に位置すると、レーザ光照射装置123は、輝尽性蛍光体シート102にレーザを照射し、その反射光を導光板124により導光板124に誘導し、光電変換器126により画像情報に変換する。レーザが照射された輝尽性蛍光体シート102は、制御部128の駆動制御により消去装置127の照射先に搬送され、消去装置127の照射により画像情報が消去される。
【0080】
画像情報が消去された輝尽性蛍光体シート102を支持するバック板103は、制御部128の駆動制御により移動してカセッテ搬送装置111に装着される。カセッテ搬送装置111内では、バック板103とフロント板104とが結合し、昇降台114に装着される。昇降台114に装着された画像読取用カセッテ101は、制御部128により駆動制御される排出ローラ109によって、画像読取用カセッテ101をカセッテ搬送装置111から排出部108に排出される。
【0081】
以上により、画像読取装置100が駆動制御され、輝尽性蛍光体シート102の画像情報が読み取られるようになっている。
【0082】
従って、第二の実施形態では、センサを用いることなく可動子を位置制御することが可能な搬送装置115を画像読取装置100に備えることにより、画像読取装置100の構成や制御構成が簡易なものとなり、長期に渡り安定して画像を読み取ることができる。また、搬送装置115のリニアモータ16の初期動作である可動子7が原点に移動する時に、磁束密度を検出するセンサを用いることなく可動子7を移動させて原点に位置させることが可能となる。
【0083】
なお、本実施例では、画像読取装置100の内部で基板110の鉛直方向に移動する縦型の搬送装置115の例を示したが、これに限定されず、画像読取装置の内部で基板の平行方向に移動する横型の搬送装置を用いても良い。
【0084】
[第三の実施形態]
続いて、図10、図11を参照しながら、本発明に係る第三の実施形態について説明する。第三の実施形態は、上記第二の実施形態における搬送装置を備える画像形成装置である。
【0085】
第三の実施形態では、画像形成装置を中心とした説明を行い、上記第二の実施形態と同様の構成には上記と同様の符号を付して、その詳細な説明を省略する。ただし、発明の範囲は図示例に限定するものではない。
【0086】
図10に、本発明に係る画像形成装置200の一実施例を示す。
【0087】
画像形成装置200の内部には、複数の記録媒体201を積層して収容する収容トレイ202が設けられており、この収容トレイ202の画像形成装置200の中央側の一端上部には、記録媒体201を一枚ずつ収容トレイ202から取り出す取出装置203が設けられている。
【0088】
なお、記録材である記録媒体201には、色材層を有する第一シートとベース層を有する第二シートから形成され、レーザ光を照射することにより色材層とベース層との間で材料のアブレーションを発生させ、色材層を第二シートに転写することにより画像を形成することが可能なものが用いられる。
【0089】
収容トレイ202の取出装置203方向の斜め下には、取出装置203により取り出された記録媒体201を支持する円筒状の支持ドラム204が、回転自在なように配設されている。支持ドラム204の周面には、記録媒体201の前端部の全幅を把持する前端把持部205及び記録媒体201の後端部の全幅を把持する後端把持部206が、支持ドラム204の回転軸方向と平行に延在して設けられている。
【0090】
支持ドラム204の収容トレイ202と反対側には、支持ドラム204に摺接して従動回転する従動ローラ207が、支持ドラム204と接離可能なように設けられている。
【0091】
画像形成装置200の上部には、画像が記録された記録媒体201が排出される排出トレイ208が設けられている。
【0092】
画像形成装置200の内部には、収容トレイ202から供給された記録媒体201が支持ドラム204に搬送され、支持ドラム204の周面に把持された後、支持ドラム204の周面上部から排出トレイ208に排出される経路である搬送経路が設けられている。この搬送経路の所定位置には、記録媒体201を搬送方向に搬送する複数対の搬送ローラ209が設けられている。
【0093】
収容トレイ202の下側には、支持ドラム204に把持された記録媒体201にレーザ光を照射して記録媒体に画像を記録するレーザ光照射装置210が設けられている。レーザ光照射装置210の下部には、レーザ光照射装置210を保持して支持ドラム204の回転軸方向に搬送する搬送装置115が設けられている。
【0094】
搬送装置115には、板状の支持基台116が、支持ドラム204の回転軸方向に延在して設けられている。支持基台116の両端には、支持片117が設けられている。この支持片117の間には、円筒形の固定子4が介設されている。固定子4は、円筒形のパイプ状部材5と、パイプ状部材5内に収納される複数の円柱状の磁石6とにより構成されている。パイプ状部材5内には、複数の磁石6が、互いに隣り合う磁石の同磁極面が対向して密接するように直列状に配列されている。
【0095】
固定子4の外周には、その外周面に沿って延在方向に直線方向に移動する可動子7が設けられている。可動子7は、三相のコイルU、V、Wからなる電磁コイル8と、コイルの円筒状の凹部が設けられたコイル保持部材9とによって構成されており、可動子7の内周面と固定子4の外周面とは微小な間隔を保持している。
【0096】
可動子7の固定子4の延在する方向の一面には、直方体の取付部材118が設けられている。支持基台116上で取付部材118と対向する位置には、ガイドレール119が固定子4と平行に延在して設けられている。取付部材118のガイドレール119と対向する面には、被ガイド部材120が設けられており、被ガイド部材120がガイドレール119に案内されて搬送可能なようになっている。
【0097】
取付部材118の被ガイド部材120と反対側の面には、平板状のレーザ光照射装置保持板211が設けられており、取付部材118の移動に伴って搬送されるようになっている。
【0098】
レーザ光照射装置保持板211の下面には、可動子7が原点に位置しているか否かを検出する原点センサ10の原点センサ素子11が設けられており、可動子7の移動に伴って搬送されるようになっている。また、支持片117の側面には、原点センサ10の原点センサ検出器12が設けられており、原点センサ素子11が原点センサ検出器12内に位置すると原点センサ信号を生ずるようになっている。
【0099】
支持基台116上でガイドレール119の支持片117と反対側には、エンコーダスケール14がガイドレール119と平行に延在して設けられている。カセッテ保持板121上でエンコーダスケール14と対向する位置には、光センサ15が設けられており、カセッテ保持板121の搬送に伴って光をエンコーダスケール14に照射し、その反射光を受光して可動子7の位置を検出するようになっている。
【0100】
支持ドラム204より搬送経路下流側には、レーザ光照射装置によって画像が記録された記録媒体201の第一シートと第二シートとに剥離する剥離装置212が設けられている。剥離装置212の画像形成装置200内側で排出トレイ208の下方には、剥離装置212によって剥離された第一シートを巻き取って回収する回収ロール213が設けられている。また、剥離装置212の搬送経路下流側には、画像が形成された第二シートを排出トレイ208に搬出する搬送ローラ209が設けられている。
【0101】
次に、図11を参照しながら、画像形成装置200の制御構成について説明する。
なお、第二の実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略し、第三の実施形態に特徴的な部分を中心に説明する。
【0102】
画像形成装置200には、図11に示すように、画像形成装置200全体の制御を行う制御部215が備えられている。
【0103】
制御部215は、磁石6の磁石寸法を示す磁極間隔情報や、リニアモータ16の目標速度や、可動子7が原点に移動する初期動作時に電磁コイル8への電流値の基準値となる基準電流値等が予め記憶されている記憶部18と、検出したリニアモータ16の速度と記憶部18による目標速度との差を算出する差分出力部19と、リニアエンコーダ13により検出されたリニアモータ16の位置信号を速度信号に変換して差分出力部に出力したり、差分出力部により算出された差分信号をリニアモータ16に供給する電力値を指示する駆動制御信号に変換したり、初期動作時にリニアモータ16に供給されている電力値と基準電力値との比較をしたり、原点センサ10より入力された原点センサ信号によって初期動作の終了を判断したりする演算部20と、駆動制御信号に基づいてリニアモータ16に駆動電力を供給する電力制御部21とによって構成されている。
【0104】
また、制御部215には、レーザ光照射装置210を保持して支持ドラム204の回転軸方向に搬送する搬送装置115、収容トレイ202から記録媒体201を取り出して支持ドラム204に支持させる取出装置203、支持ドラム204上に記録媒体201が存在するときに記録媒体201にレーザ光を照射するレーザ光照射装置210、レーザ光照射装置210のレーザ光の照射に伴って回転する支持ドラム204、画像が形成された記録媒体201を第一シートと第二シートとに剥離する剥離装置212、記録媒体201や第一シート及び第二シートを搬送する搬送ローラ209がそれぞれ接続されており、制御部215によって駆動制御されるようになっている。
【0105】
次に、第三の実施形態における作用について説明する。
【0106】
画像形成装置200の電源が入力されると、制御部215は、リニアモータ16を駆動制御して可動子7を原点に移動する初期動作を行う。この初期動作の詳細は、第一の実施形態と同様である。
【0107】
初期動作の終了によって可動子7が原点に位置すると、制御部215は、取出装置203を駆動制御して、収容トレイ202から記録媒体201を取出す。収容トレイ202から取り出された記録媒体201は、搬送ローラ209により支持ドラム204に搬送される。搬送された記録媒体201は、前端把持部205に記録媒体201の前端部が把持され、また後端把持部206に記録媒体201の後端部が把持されて支持ドラム204に支持される。
【0108】
支持ドラム204に記録媒体201が支持されると、制御部215は、リニアモータ16を駆動制御して移動させるのに伴って、レーザ光照射装置210が設置されているレーザ光照射装置保持板211を搬送する。レーザ光照射装置210がレーザ光の照射先が支持ドラム204上の記録媒体201の所定位置となる位置に到達すると、制御部215は、レーザ光照射装置210を駆動制御してレーザ光照射装置210からレーザ光を記録媒体201に照射する。レーザ光照射装置210は、制御部215に駆動制御されるリニアモータ16の移動に伴い、支持ドラム204の回転軸と平行に搬送され、記録媒体201全面にレーザ光を照射して画像を記録する。画像が記録された記録媒体201は、前端把持部205及び後端把持部206の把持が外されて支持ドラム204と従動ローラ207とが回転すると、搬送経路に搬出されて搬送ローラ209によって搬送される。所定の位置に搬送された記録媒体201は、剥離装置212によって第一シートと第二シートとに剥離される。剥離された第一シートは、回収ロール213によって巻き取られて回収される。また、第二シートは、搬送ローラ209により搬送経路に従って搬送され、排出ローラ214によって排出トレイ208に排出される。
【0109】
以上により、画像形成装置200が駆動制御され、画像が記録媒体201に形成されるようになっている。
【0110】
従って、第三の実施形態では、センサを用いることなく可動子を位置制御することが可能な搬送装置115を画像形成装置200に備えることにより、画像形成装置200の構成や制御構成が簡易なものとなり、長期に渡り安定して画像を形成することができる。また、搬送装置115のリニアモータ16の初期動作である可動子7が原点に移動する時に、磁束密度を検出するセンサを用いることなく可動子7を移動させて原点に位置させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】第一の実施形態における搬送装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】第一の実施形態における搬送装置の概略構成を示す断面図である。
【図3】図3(a)は、第一の実施形態における固定子を構成する磁石の位置を示す断面図であり、図3(b)は、第一の実施形態における固定子を構成する磁石の位置と磁束密度との関係を示す図であり、図3(c)は、第一の実施形態における固定子を構成する磁石の位置とコイルに流す電流との関係を示す図である。
【図4】第一の実施形態における搬送装置の制御構成を示すブロック図である。
【図5】第一の実施形態における搬送装置の初期動作を示すフロー図である。
【図6】第二の実施形態における画像読取装置の概略構成を示す断面図である。
【図7】第二の実施形態における画像読取装置の搬送装置とレーザ光照射装置との概略構成を示す斜視図である。
【図8】第二の実施形態における画像読取装置の搬送装置とレーザ光照射装置との概略構成を示す断面図である。
【図9】第二の実施形態における画像読取装置の制御構成を示すブロック図である。
【図10】第三の実施形態における画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【図11】第三の実施形態における画像形成装置の制御構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0112】
1 リニアモータ
4 固定子
7 可動子
10 原点センサ
13 リニアエンコーダ
17 制御部
18 記憶部
100 画像読取装置
102 輝尽性蛍光体シート
115 搬送装置
200 画像形成装置
201 記録媒体
210 レーザ光照射装置
215 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状に複数の磁石が配列された固定子と、
位相補正値を含む三角関数に基づく電力が供給される電磁コイルが前記固定子に沿って可動なように設けられた可動子と、
前記可動子が前記固定子の原点に移動するときに供給される電流値の基準となる基準電流値が記憶された記憶部と、
前記可動子が前記原点に移動するときに前記可動子に供給される電流が前記基準電流値以上であるときに前記位相補正値を変更する制御部とを備えたことを特徴とするリニアモータ。
【請求項2】
前記可動子の移動状態を検出する検出部を備え、
前記制御部は、前記可動子の移動状態に応じて前記位相補正値を変更することを特徴とする請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項3】
前記制御部は、前記可動子の移動方向が原点から遠ざかる方向であるときに前記位相補正値を変更して前記可動子を原点方向に移動させることを特徴とする請求項2に記載のリニアモータ。
【請求項4】
前記制御部は、前記可動子に対する電流値が一定時間基準電流値未満であるときに前記位相補正値を固定して変更しないことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のリニアモータ。
【請求項5】
記録材に記録された画像を読み取る読取部が備えられた画像読取装置において、
前記記録材又は前記読取部の少なくとも一方を搬送する搬送装置として請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のリニアモータを備えたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項6】
記録材に画像を形成する画像形成部が備えられた画像形成装置において、
前記記録材又は前記画像形成部の少なくとも一方を搬送する搬送装置として請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のリニアモータを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
直線状に複数の磁石が配列された固定子と、
位相補正値を含む三角関数に基づく電力が供給される電磁コイルが前記固定子に沿って可動なように設けられた可動子と、
前記可動子が前記固定子の原点に移動するときに供給される電流値の基準となる基準電流値が記憶された記憶部と、
前記可動子が前記原点に移動するときに前記可動子に供給される電流が前記基準電流値以上であるときに前記位相補正値を変更する制御部とを備えたことを特徴とするリニアモータ。
【請求項2】
前記可動子の移動状態を検出する検出部を備え、
前記制御部は、前記可動子の移動状態に応じて前記位相補正値を変更することを特徴とする請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項3】
前記制御部は、前記可動子の移動方向が原点から遠ざかる方向であるときに前記位相補正値を変更して前記可動子を原点方向に移動させることを特徴とする請求項2に記載のリニアモータ。
【請求項4】
前記制御部は、前記可動子に対する電流値が一定時間基準電流値未満であるときに前記位相補正値を固定して変更しないことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のリニアモータ。
【請求項5】
記録材に記録された画像を読み取る読取部が備えられた画像読取装置において、
前記記録材又は前記読取部の少なくとも一方を搬送する搬送装置として請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のリニアモータを備えたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項6】
記録材に画像を形成する画像形成部が備えられた画像形成装置において、
前記記録材又は前記画像形成部の少なくとも一方を搬送する搬送装置として請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のリニアモータを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−20330(P2007−20330A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−200292(P2005−200292)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
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