説明

リニアモータ

【課題】リニアモータにおいて、リニアスケールを使用することなく安価で、しかも数μm程度の精度での位置検出の実現を図る。
【解決手段】リニアモータ1は、複数の永久磁石22を隣り合う極性が異なるように、所定の隙間Lを有して所定ピッチPで列設した固定子2と、複数のリニアコイル32を有する、固定子2上を移動する可動子3と、固定子3上における可動子3の位置を検出する位置検出手段4とを備える。可動子3は、永久磁石22の磁界を検知する基準用磁気センサ41と、移動方向に所定の間隔Sで配置され、永久磁石22の磁界を検知する複数の測定用磁気センサ42を備える。移動時に、位置検出手段4は、基準用磁気センサ41からの基準信号RSに応じて隙間Lの上方を通過する各測定用磁気センサ42からの各測定信号MSを逐次取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石が列設された固定子と、リニアコイルを有する可動子とを備えたリニアモータに関する。特に、可動子の固定子上における位置を磁気的に検出するリニアモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
工作機械、半導体製造装置等における直動機構において、ボールネジと回転モータの組み合わせによる直動機構の代わりに、リニアモータによる直動機構が採用されている。このリニアモータは、部品点数が少なく、省スペース化が可能であり、ボールネジでのバックラッシュが不存在のため、より高精度な位置決め制御が可能であるとして注目されている。
【0003】
一般に、リニアモータは、固定子上における可動子の位置を検出するために、リニアエンコーダが利用されることが多い。このリニアエンコーダには、光学式リニアエンコーダと磁気式リニアエンコーダが存在する。
【0004】
光学式リニアエンコーダは、光学特性の異なる面を交互に有する光学式リニアスケールからの光学的情報を光センサで検知するものであり、数nm程度の高精度な位置検出が可能であるが、一方で粉塵の多い場所、切削油等が飛散する場所では、光センサの検知感度が低下するため、耐環境性が低いものである。また、光学式リニアスケールは、高額であり、コスト面におけるデメリットも存在する。
【0005】
磁気式リニアエンコーダは、N極とS極とを交互に細かいピッチで着磁したリニアスケールからの磁気的情報を磁気センサで検知するものであり、光学式リニアエンコーダと比較して耐環境性において優れている。
【0006】
特許文献1には、シャフト状の界磁マグネットの固定子と、この固定子が貫通するリング状のリニアコイルを有する可動子とを備えたシャフト型リニアモータにおいて、固定子に着磁して形成された磁気式リニアスケールと、可動子に設けられた磁気センサにより、固定子における可動子の位置を磁気的に検出する技術が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、磁気式リニアスケールを設けず、固定子上の永久磁石を磁気式リニアスケールとして兼用し、可動子に設けた磁気センサが固定子上の永久磁石の磁界を検知することにより、可動子の固定子上の位置を検出する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平11−206099号公報
【特許文献2】特開2004−56892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、光学式リニアエンコーダを使用しての高精度な位置検出を必要とする装置以外の、数μm程度の精度の位置検出で十分な装置においても、前述のリニアモータが有するメリットから当該装置にもリニアモータを使用したいとする要求がある。
【0009】
しかしながら、数μm程度の精度の位置検出をするために、高価な光学式エンコーダを使用することはコスト的に望ましくない。
【0010】
また、特許文献1に開示されている技術でも、当該装置内に磁気式リニアスケールを設ける必要があり、その分、部品点数の増加、コスト的なデメリットが存在する。
【0011】
また、特許文献2に開示されている技術では、各永久磁石の磁界のバラツキの影響を受けやすい。すなわち各永久磁石は、工作機械や産業機械の移動装置または搬送装置のリニアモータでは、通常、数mm程度の隙間を有して数十mm程度のピッチで列設されているため、各永久磁石を検出した検出信号に基づいて数μm程度の精度で固定子上の可動子の位置を検出するためには、この検出信号を1万分割程度以上に分解する必要があり、且つ各検出信号は、同一性が要求される。すなわち、各永久磁石での磁界のバラツキによる影響が大きく、数μm程度の精度で位置検出することが困難である。
【0012】
本発明の目的は、上記事情に鑑み、リニアスケールを使用せず、且つ数μm程度の精度の位置検出を安価に実現するリニアモータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の課題を解決するために、本発明のリニアモータは、複数の永久磁石を、隣り合う永久磁石同士の表面の極性が異なるように、所定の隙間を有して所定ピッチで列設した固定子と、複数のリニアコイルを有する、固定子上を移動する可動子と、この可動子の固定子上における位置を検出する位置検出手段とを備えたリニアモータにおいて、可動子が、列設された永久磁石の磁界を検知する基準用磁気センサと、移動方向に所定の間隔で配置された、列設された永久磁石の磁界を検知する複数の測定用磁気センサとを備え、可動子の移動時に、位置検出手段が、基準用磁気センサからの基準信号に応じて隙間の上方を通過する各測定用磁気センサからの各測定信号を逐次取得することにより、可動子の固定子上における位置を検出することを特徴とする。
【0014】
ここで、「表面の極性」とは、可動子の底面と対向する面における永久磁石の極性を意味する。上記「隙間」とは、隣接する永久磁石同士の隙間を意味する。上記「ピッチ」とは、移動方向における永久磁石の前縁から隣接する次の永久磁石の前縁までの距離を意味する。上記「基準信号に応じて」とは、基準用磁気センサが永久磁石の上方を通過することによる基準信号の経時変化に応じることを意味する。「隙間の上方」とは、厳密に隙間の真上のみを意味するものでなく、当該真上における移動方向の前後をも含むものである。
【0015】
各測定用磁気センサは、隙間の上方を時間的に連続して通過するものであり、逐次取得される各測定信号は、時間的に連続するものであってもよい。
【0016】
ここで、「時間的に連続」とは、時間的な間隔を有することなく、連続することを意味する。
【0017】
逐次取得される各測定信号は、同一の隙間の上方を通過する各測定用磁気センサからの各測定信号であってもよい。
【0018】
ここで、「同一の隙間」とは、固定子上の同じ場所における隙間を意味する。
【0019】
逐次取得される各測定信号は、異なる隙間の上方を通過する各測定用磁気センサからの各測定信号であってもよい。
【0020】
ここで、「異なる隙間」とは、固定子上の異なる場所における隙間を意味する。
【0021】
永久磁石の所定ピッチP、永久磁石同士の隙間Lおよび測定用磁気センサの個数nが、P<L×nの式を満たすものであってもよい。
【0022】
また、同一の基準長におけるリニアコイルの個数と永久磁石の個数の比率が9:8であってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明のリニアモータによれば、基準用磁気センサからの基準信号に応じて所定の隙間の上方を通過した各測定用磁気センサからの各測定信号を逐次取得して固定子上における可動子の位置を検出するため、逐次取得する各測定信号は、磁界の変化が最も大きい状態で変化率が略一定の直線で変化する部分の測定信号であり、各信号の同一性も高く、また、隙間寸法は、通常、数mm程度であり、数μm程度の精度で位置を検出するためには、1000分割程度の分解で十分であり、永久磁石のバラツキによる影響も小さい。
【0024】
したがって、本発明のリニアモータは、リニアスケールを使用することなく安価で、しかも数μm程度の精度での位置検出を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係るリニアモータの実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1の実施形態であるリニアモータの一部斜視図、図2は、図1に示すリニアモータの一部正面図、図3は、図1に示すリニアモータの一部上面図を示す。なお、図3は、理解を容易にするため、後述する可動子の一部を破線で図示している。
【0026】
リニアモータ1は、長尺板状の固定子2と、この固定子2上を固定子2の長手方向に移動する可動子3と、この可動子3の固定子2上における上記長手方向の位置を検出する位置検出手段4とから構成される。なお、リニアモータ1は、通常、可動子3内蔵の後述するリニアコイルを給電するための電源ケーブル34を有している。
【0027】
固定子2は、長尺板状の鋼材からなる固定子本体21上に複数の永久磁石22を所定の隙間Lを有して所定ピッチPで列設したものである。各永久磁石22は、所定の幅寸法Wを有して固定子本体21上に列設されている。具体的に、永久磁石22は、幅Wが10mm、隙間Lが2mm、ピッチPが12mmで列設されているが、上記寸法に限定されるものではない。また、永久磁石22は、隣接する極性が交互に異なるように列設され、且つ幅方向の中心部分の磁界強度が最も強くなるように、着磁されている。
【0028】
可動子3は、ブロック状の鋼材からなる可動子本体31と、可動子3の移動方向に沿って可動子本体31に内蔵された複数のリニアコイル32とから主に構成される。各リニアコイル32は、鋼材のコア33を有し、U相、V相、W相の3つの位相を有する3相交流で励磁されている。リニアコイル32u、32v、32wで1セットを構成し、可動子本体31は、3セットを有する。すなわち可動子本体31は、長手方向に並んで9個のリニアコイル32を内蔵する。
【0029】
リニアコイル32は、交流で励磁されるものであればよく、上記3相交流に限定される必要はなく、2相交流等であってもよい。また、コア33は、可動子3の高推力が重視される場合に設けられるものであり、コア33を有するリニアコイル32に限定されるものではない。すなわち推力よりも制御性が重視される場合、リニアモータ1のコギングを低減させるために、コア33を有さないリニアコイル32をも含むものである。
【0030】
可動子3は、図2に示す通り、リニアコイル32と永久磁石22との間に1mm程度の空隙を有して固定子2上を移動する。また、リニアコイル32と永久磁石22においては、3相交流で励磁された3個のリニアコイル32u、32v、32wと、隣接する永久磁石22の2個とが互いに作用する。また、同一の基準長さにおけるリニアコイル32の個数と永久磁石22の個数の比率は、9:8である。この比率は、特に限定されるものではない。
【0031】
図3および図4を用いて位置検出手段4について説明する。図4は、位置検出回路の回路構成図である。位置検出手段4は、永久磁石22の磁界を検知する1個の基準用磁気センサ41と、永久磁石22からの磁界を検知する複数の測定用磁気センサ42と、基準用磁気センサ41および測定用磁気センサ42に基づいて、可動子3の固定子2上における長手方向の位置を検出する位置検出回路43とから構成される。位置検出手段4は、測定用磁気センサ42を9個有する。
【0032】
基準用磁気センサ41は、表面の極性がN極である永久磁石22の上方を通過した場合に正電圧、S極である永久磁石22の上方を通過した場合に負電圧となる基準信号RSを出力する。
【0033】
測定用磁気センサ42は、基準用磁気センサ41と同様に、表面の極性がN極である永久磁石22の上方を通過した場合に正電圧、S極である永久磁石22の上方を通過した場合に負電圧となる測定信号MSを出力する。9個の各測定用磁気センサ42k(k=1〜9)は、測定信号MSk(k=1〜9)を出力する。
【0034】
位置検出回路43は、図4に示す通り、デジタルコンパレータ43a、ゲート回路43bと、分割器43cとから構成される。ゲート回路43bは、9個のANDゲート43dと8個のORゲート43eから構成される。
【0035】
基準用磁気センサ41からの基準信号RSと測定用磁気センサ425の測定信号MS5とがデジタルコンパレータ43aに入力される。9分岐されたデジタルコンパレータ43aからの後述する比較信号と各測定信号MSk(k=1〜9)とがゲート回路43bに入力される。ゲート回路43bからの後述するORゲート出力が分割器43cに入力され、分割器43cから位置信号PSが出力される。
【0036】
第1の実施形態では、図3に示す通り、可動子本体31に併設されたプレート44上に永久磁石22と対向するように、1個の基準用磁気センサ41と、磁性体45を介して9個の各測定用磁気センサ42k(k=1〜9)が所定の間隔Sを有して配置されている。なお、磁性体45は、永久磁石22の磁界を検知する場合の便宜のために配置されるものであり、磁性体45を有することに限定されるものではない。
【0037】
各測定用磁気センサ42k(k=1〜9)は、移動方向に1.333mm程度の間隔Sで配置されている。各測定用磁気センサ42k(k=1〜9)の中間に位置する測定用磁気センサ425は、基準用磁気センサ41がN極である永久磁石22の中心位置の上方を通過する時に、N極とS極との隙間Lの中間位置を通過するように配置されている。
【0038】
次に、位置検出手段4における信号処理について説明する。図5は、位置検出手段4における信号処理を示す図である。図5において、(A)が基準信号RS、(B)が測定信号MS5、(C)が各測定信号MSk(k=1〜9)、(D)がデジタルコンパレータ43aからの比較信号CSk(k=1〜9)、(E)がANDゲート43dからのANDゲート出力、(F)がORゲート43eからのORゲート出力を示す図、(G)が分割器43cからの位置信号PSを示す。ここで、図5の横軸は、可動子3の等速である場合の時間を示し、部分的に時間を距離に換算して位置が示されている。また、縦軸は、電圧を示すものである。
【0039】
基準用磁気センサ41は、永久磁石22からある程度離れた距離に設けられ、積分されて磁力に対応する曲線の基準信号RSを出力する。基準信号RSは、前述の通り、各永久磁石22の幅W方向における中心位置での磁界が最も強い場合、正弦波形となる。そのため、可動子3が移動する全域にわたり位置を検出できる。(A)では、基準用磁気センサ41が各永久磁石22同士の隙間Lの中心位置(図中原点)の上方から表面の極性がN極である永久磁石22から表面の極性がS極である永久磁石22の上方へ移動する時の経時変化を示している。
【0040】
各測定用磁気センサ42k(k=1〜9)は、可能な限り永久磁石に近接して設けられるので、永久磁石22の配置に近似する台形波の測定信号MSk(k=1〜9)を出力する。各測定用磁気センサ42k(k=1〜9)からの各測定信号MSk(k=1〜9)は、前述の通りプレート44上に磁性体45を介して取り付けられており、永久磁石22の磁界が強くなるため、(C)に示すような一層明確に変化が大きく時間と位置の変化に対して変化率が略一定で変化する安定した台形波形となる。したがって、隙間Lの大きさによるが、隙間Lが2mmの場合で分割数が1300〜1400程度までであるならば、許容誤差以内で正確な単位位置信号を得ることができる。
【0041】
また、各測定信号MSk(k=1〜9)は、各測定用磁気センサ42k(k=1〜9)が所定の間隔Sを有して配置されるため、所定の間隔Sに相当する位相差を有している。すなわち第1の実施形態では、各測定信号MSk(k=1〜9)は、距離に換算して1.333mmの位相差を有している。
【0042】
この基準信号RSおよび各測定信号MSk(k=1〜9)は、位置検出回路43に入力される。
【0043】
デジタルコンパレータ43aには、基準用磁気センサ41の基準信号RSの負の極値を取る時点から次の負の極値を取る時点までの1周期における負の極値から正の極値までの値を測定用磁気センサ42の個数で分割するようにして得られる測定磁気センサ42の個数と同数の比較基準値RFが設定されている。具体的に、第1の実施形態では、(A)に示すように基準信号RSの上記1周期を18等分した各分割時点における1周期中の負の極値から正の極値までを9分割して得られる9種類の比較基準値RFが設定されている。
【0044】
デジタルコンパレータ43aは、基準信号RSと測定信号MS5とを入力して基準信号RSと予め設定されている複数の比較基準値とを比較する。基準信号RSの1周期中に比較基準値RFが9種類であり、同一の比較基準値RFに対応する比較信号CSkが2種類存在するので、デジタルコンパレータ43aは、基準信号RSの値が複数の比較基準値のいずれかと一致したときは、測定信号MS5の値の正負によって基準信号RSの値が第1半周期λAと第2半周期λBとのどちらにあるかに対応して(D)に示すように適する比較信号CSk(k=1〜9)を出力すると同時に既に出力されている比較信号CSk−1(但し、k=1の時は9)をリセットする。比較信号CSk(k=1〜9)は、基準信号RSの周波数に対応して1.333mm程度の距離Sに対応するパルス幅を有する矩形波となる。なお、(D)では、理解を容易にするため、各比較信号CSk(k=1〜9)を3軸上に表示している。
【0045】
また、測定信号MS5をデジタルコンパレータ43aに入力するのは、(A)および(B)が示す通り、基準用磁気センサ41が各永久磁石22の中心位置の上方を通過する時に、測定信号MS5は、正負が切り替わるタイミングを有するからである。すなわち、上記のタイミングを有する測定信号が存在しない場合は、他のセンサを設けても良い。
【0046】
各比較信号CSk(k=1〜9)と各測定信号MSk(k=1〜9)が各ANDゲート43dに入力されることにより、(E)のような斜波形のANDゲート出力が得られる。
【0047】
このANDゲート出力は、各測定信号MSk(k=1〜9)の最も変化が大きい部分、すなわち各測定用磁気センサ42k(k=1〜9)が永久磁石22同士の隙間Lの上方を通過した時の各測定信号MSk(k=1〜9)を取得したものである。具体的に、各測定用磁気センサ42k(k=1〜9)が同一の隙間Sの上方を通過した時の各測定信号MSk(k=1〜9)を中心振り分けで1.333mm間を取得したものとなる。なお、(E)においては、理解を容易にするため、各ANDゲート出力を同軸上で表示している。
【0048】
各ANDゲート出力を8個のORゲート43eに入力することにより、(F)に示すような鋸波形のORゲート出力が得られる。なお、ORゲート43eの配置は、図3に示す配置に限定されるものではない。
【0049】
このORゲート出力は、分割器43cに入力される。分割器43cでは、予め設定された分割数でORゲート出力が分割され、パルス状の位置信号PSとして出力される。前述の通り、ORゲート出力は、各ANDゲート43dにより、各測定信号MSk(k=1〜9)の最も変化が大きい部分のうちの1.333mm間を取得したものであり、これを分割器43cで、例えば1000程度に分割することにより、1.333μm程度の精度を有するパルス状の位置信号PSが出力される。言い換えれば、分割器43cに入力されるORゲート出力は、(F)に示されるように変化が大きい直線状に変化する鋸波形であり、1333分割することで1μm程度の位置信号を許容誤差以内の検出精度で得ることができると言える。
【0050】
永久磁石22のピッチPと、永久磁石22同士の隙間Lと、測定用磁気センサ41の個数nとの関係が、P<L×nの関係を満たす場合、取得する各測定信号MSは、測定用磁気センサ42が隙間Lの上方を通過した時の検知部分を連続して取得できるため、固定子2の全長にわたり、可動子3の位置信号PSが出力される。すなわち測定用磁気センサ42の個数は、上記の通り、各測定用磁気センサ42が隙間Lの上方を通過した時の検知部分が連続すればよく、特に9個に限定されるものではない。
【0051】
この位置信号PSを不図示の制御手段に入力し、不図示の制御手段においてインクリメントすることにより、可動子3の固定子2上における長手方向の位置を数μm程度の精度で検出可能となる。
【0052】
第2の実施形態について説明する。図6は、本発明の第2の実施形態であるリニアモータの一部正面図を示す。なお、図6において、第1の実施形態と同一の部品には同一の符号を付して説明する。
【0053】
第2の実施形態では、取得する各測定信号MSk(k=1〜9)は、各測定用磁気センサ42k(k=1〜9)が各永久磁石22同士の其々異なった隙間Lの上方を通過した時の検知部分が連続するように、各測定用磁気センサ42を配置している。第2の実施形態は、第1の実施形態と同様に、9個の測定用磁気センサ42k(k=1〜9)を有し、各測定用磁気センサ42を、永久磁石22のピッチPよりも、このピッチPを測定用磁気センサ42の個数で分割した寸法分だけ短い間隔Sで配置している。具体的に、各測定用磁気センサ42は、ピッチP寸法12mmよりも、1.333mm程度短い、10.667mm程度の間隔Sで配置されている。
【0054】
これにより、各測定信号MSk(k=1〜9)は、各測定用磁気センサ42k(k=1〜9)が其々異なる永久磁石22の隙間Lの上方を通過した時の検知部分が連続するものとなる。この第2の実施形態では、第1の実施形態と比較して、各測定用磁気センサ42kを可動子本体31に内蔵することができるので、各測定用磁気センサ42k(k=1〜9)を密集して配置するスペースを必要としない点において有利である。
【0055】
また、第2の実施形態では、隣接する測定用磁気センサ42k(k=1〜9)の測定信号MSk(k=1〜9)の符号が反転する点において、第1の実施形態と相違するが、基準信号RSおよび測定信号MSk(k=1〜9)の処理方法は、基本的に第1の実施形態と同一であり、その説明を省略する。
【0056】
第3の実施形態について説明する。図7は、本発明の第3の実施形態であるリニアモータの一部正面図、図8は、図7に示すリニアモータの一部上面図を示す。なお、図7および図8において、第1の実施形態と同一の部品には同一の符号を付して説明し、図8は、理解を容易にするため、可動子3の一部を破線で図示している。
【0057】
第3の実施形態は、第1の実施形態と第2の実施形態を組み合わせたものである。すなわち第3の実施形態では、図8に示す通り、第1の実施形態のように、各測定用磁気センサ42k(k=1〜9)が永久磁石22の同一の隙間Sの上方を通過した時の各測定信号MSk(k=1〜9)の検知部分が連続するように、各測定用磁気センサ42k(k=1〜9)を配置するとともに、第2の実施形態のように、各測定用磁気センサ42k(k=1〜9)が永久磁石22の其々異なる隙間Lの上方を通過した時の測定信号MSk(k=1〜9)の検知部分が連続するように、各測定用磁気センサ42k(k=1〜9)を配置する。
【0058】
これにより、第3の実施形態では、其々異なる隙間Lの上方を通過した時の測定信号MSk(k=1〜9)の検知部分を同時に取得することにより、固定子2上の永久磁石22の取り付けによるバラツキを平均化できる。
【0059】
以上の述べた通り、本発明の実施形態であるリニアモータ1によれば、基準用磁気センサ41からの基準信号RSに応じて、永久磁石22同士の隙間Lの上方を通過した各測定用磁気センサ42k(k=1〜9)からの各測定信号MSk(k=1〜9)を逐次取得するため、逐次取得される各測定信号MSk(k=1〜9)の検知部分は、移動による磁界の変化が最も大きい部分で各測定信号MSk(k=1〜9)が直線状に変化する部分であり、可動子3の移動による変化を明確に検知できるとともに分割した時の値のバラツキが十分に小さく、また、ORゲート出力は、各測定信号MSk(k=1〜9)の1.333mm程度の部分を連続させたものであるため、分割器43cで1000程度に分解するだけで数μm程度の精度の位置信号PSが出力される。
【0060】
したがって、本発明の実施形態であるリニアモータ1は、リニアスケールを使用せずに、数μm程度の精度での位置検出を安価に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】第1の実施形態の斜視図
【図2】第1の実施形態の一部正面図
【図3】第1の実施形態の一部上面図
【図4】位置検出回路の回路構成図
【図5】位置検出手段による信号処理を示す図
【図6】第2の実施形態の一部正面図
【図7】第3の実施形態の一部正面図
【図8】第3の実施形態の一部上面図
【符号の説明】
【0062】
L 隙間
MS 測定信号
P ピッチ
RS 基準信号
S 間隔
W 幅
1 リニアモータ
2 固定子
3 可動子
4 位置検出手段
22 永久磁石
32 リニアコイル
41 基準用磁気センサ
42 測定用磁気センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の永久磁石を、隣り合う永久磁石同士の表面の極性が異なるように、所定の隙間を有して所定ピッチで列設した固定子と、
複数のリニアコイルを有する、前記固定子上を移動する可動子と、
該可動子の前記固定子上における位置を検出する位置検出手段とを備えたリニアモータにおいて、
前記可動子が、前記列設された永久磁石の磁界を検知する基準用磁気センサと、前記移動方向に所定の間隔で配置された、前記列設された永久磁石の磁界を検知する複数の測定用磁気センサとを備え、
前記可動子の移動時に、前記位置検出手段が、前記基準用磁気センサからの基準信号に応じて前記隙間の上方を通過する前記各測定用磁気センサからの各測定信号を逐次取得することにより、前記可動子の前記固定子上における位置を検出することを特徴とするリニアモータ。
【請求項2】
前記各測定用磁気センサは、前記隙間の上方を時間的に連続して通過するものであり、前記逐次取得される各測定信号は、時間的に連続することを特徴とする請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項3】
前記逐次取得される各測定信号は、同一の前記隙間の上方を通過する前記各測定用磁気センサからの各測定信号であることを特徴とする請求項2に記載のリニアモータ。
【請求項4】
前記逐次取得される各測定信号は、異なる前記隙間の上方を通過する前記各測定用磁気センサからの各測定信号であることを特徴とする請求項2に記載のリニアモータ。
【請求項5】
前記永久磁石の所定ピッチP、前記永久磁石同士の隙間Lおよび測定用磁気センサの個数nが、P<L×nの式を満たすことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のリニアモータ。
【請求項6】
同一の基準長における前記リニアコイルの個数と前記永久磁石の個数との比率が9:8であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のリニアモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−142033(P2010−142033A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316490(P2008−316490)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000132725)株式会社ソディック (197)
【復代理人】
【識別番号】100152401
【弁理士】
【氏名又は名称】我妻 慶一
【Fターム(参考)】