説明

リパーゼと漂白剤触媒を含む組成物

本発明は、(i)リパーゼと、(ii)ペルオキシ酸から酸素原子を受け取ることができ、その酸素原子を酸化可能基材に受け渡すことができる漂白剤触媒とを含む組成物に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許法第119(e)条に基づき、米国特許仮出願第60/761,114号(2006年1月23日申請)、米国特許仮出願第60/796,269号(2006年4月28日申請)、および米国特許仮出願第60/854,840号(2006年10月27日申請)の優先権を主張するものである。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、リパーゼと漂白剤触媒を含む組成物に関するものである。さらに具体的には、本発明は、リパーゼと、ペルオキシ酸から酸素原子を受け取り、その酸素原子を酸化可能基材に受け渡すことができる漂白剤触媒を含む組成物に関するものである。本発明の組成物は典型的には、洗濯洗剤組成物として用いるのに適しており、また、とりわけ、厄介な乳製品の残留汚れ上で、優れたクリーニング性能と悪臭特性の低減をもたらす。
【背景技術】
【0003】
黒ずみ、例えば、生地汚れ、および乳製品の汚れのようなその他の疎水性の汚れは、洗濯プロセス中に布地から除去するのは非常に難しい。1980年代に、洗剤での利用に適しているリパーゼ酵素(例えば、旧ノボノルディスク(Novo Nordisk)(現ノボザイムズ(Novozymes))のリポラーゼ(Lipolase)とリポラーゼウルトラ(Lipolase Ultra))が出現したことによって、配合者は、油脂の除去を高めるための新たなアプローチを得た。リパーゼ酵素は、皮脂、動物脂(例えばラード、ギー、バター)、植物油(例えばオリーブ油、ひまわり油、ピーナッツ油)などの一般的に見られる多くの脂肪質汚れの主構成要素を形成するトリグリセリドの加水分解を触媒する。しかしながら、これらの酵素は、第1の洗浄サイクルでの性能が限られており(主に、洗濯プロセスの乾燥段階中に効果を発揮し)、洗浄後の悪臭を発生させる。理論に束縛されるものではないが、この悪臭は、脂肪の加水分解によって放出される脂肪酸に起因するとともに、牛乳、クリーム、バター、およびヨーグルトのような乳製品の汚れで特に顕著である(乳脂は、短鎖(例えばC)脂肪族アシル単位で官能化されているトリグリセリドを含んでおり、脂肪分解後に、前記脂肪族アシル単位が、悪臭を伴う揮発性脂肪酸を放出する)。洗濯用固体洗剤中にリパーゼを用いることの概説は、「洗剤中の酵素(Enzymes in Detergency)」(J.H.ファンエー(van Ee)ら編、マーセルデッカー界面活性剤シリーズ(Marcel Dekker Surfactant Series)第69巻、マーセルデッカー(Marcel Dekker)、ニューヨーク、1997年、93〜132ページ、ISBN 0−8247−9995−X)という参考文献を参照されたい。
【0004】
最近になり、いわゆる「1番洗い」リパーゼが商品化されている(最初の洗浄サイクルで性能効果を発揮するリポプライム(Lipoprime)(商標)およびライペックス(Lipex)(商標)(ノボザイムズ(Novozymes))など)。ライペックス(Lipex)(商標)酵素は、WO00/60063号および米国特許第6,939,702B1号(ノボザイムズ(Novozymes))にさらに詳しく記載されている。ライペックス(Lipex)(商標)酵素を含む洗濯洗剤配合物は、IP.com出版物IP6443D(ノボザイムズ(Novozymes))にさらに詳しく記載されている。しかし、リパーゼテクノロジーをさらに有効利用するためには、乳製品の残留汚れに対する悪臭特性と複合的な汚れに対する洗浄性能の双方を改善する必要性がまだある。
【0005】
洗剤メーカーは、優れた漂白性能をもたらそうと、漂白剤触媒、とりわけオキサジリジウムまたはオキサジリジニウムを形成する漂白剤触媒を自社の洗剤製品の中に組み込む試みも行ってきた。欧州特許第0 728 181号、欧州特許第0 728 182号、欧州特許第0 728 183号、欧州特許第0 775 192号、米国特許第4,678,792号、米国特許第5,045,223号、米国特許第5,047,163号、米国特許第5,360,568号、米国特許第5,360,569号、米国特許第5,370,826号、米国特許第5,442,066号、米国特許第5,478,357号、米国特許第5,482,515号、米国特許第5,550,256号、米国特許第5,653,910号、米国特許第5,710,116号、米国特許第5,760,222号、米国特許第5,785,886号、米国特許第5,952,282号、米国特許第6,042,744号、WO95/13351号、WO95/13353号、WO97/10323号、WO98/16614号、WO00/42151号、WO00/42156号、WO01/16110号、WO01/16263号、WO01/16273号、WO01/16274号、WO01/16275号、WO01/16276号、WO01/16277号は、オキサジリジウムおよび/またはオキサジリジニウムを形成する漂白剤触媒を含む洗剤組成物に関するものである。
【0006】
優れた総合的洗浄特性、低水温での優れた漂白性能、油汚れに対する優れた洗浄性能、および残留脂肪汚れ、とりわけ乳製品の汚れに対する悪臭特性の低減をもたらす洗濯洗剤組成物に対する必要性が引き続き存在する。
【0007】
ペルオキシ酸から酸素原子を受け取ることができ、かつその酸素原子を酸化可能基材に受け渡すことのことのできる漂白触媒と組み合わせてリパーゼを用いることによって、洗剤組成物の洗浄性能が高まるとともに、残留脂肪汚れ、とりわけ乳製品の汚れに対する悪臭特性が低下した状態に維持されることを本発明者達は見出した。
【0008】
本発明の別の実施形態では、ジアシルおよび/またはテトラアシルペルオキシド種をリパーゼと組み合わせると、ゴム製排水ホースに対する適合特性が向上することを本発明者達は見出した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明のとりわけ好ましい実施形態では、(i)ペルオキシ酸から酸素原子を受け取ることができ、その酸素原子を酸化可能基材に受け渡すことができる漂白剤触媒および(ii)ジアシルおよび/またはテトラアシルペルオキシド種、を組み合わせてリパーゼを用いると、洗剤組成物の洗浄性能が大きく向上し、洗剤組成物の悪臭特性が低減され、洗剤組成物のゴム製排水ホースに対する適合特性が向上することを本発明者らは見出した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の実施形態では、本発明は、(i)リパーゼと、(ii)ペルオキシ酸から酸素原子を受け取ることができ、その酸素原子を酸化可能基材に受け渡すことができる漂白剤触媒とを含む組成物を提供する。
【0011】
第2の実施形態では、本発明は、(i)リパーゼと、(ii)ジアシルおよび/またはテトラアシルペルオキシド種とを含む組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
組成物
本組成物は、(i)リパーゼと、(ii)ペルオキシ酸から酸素原子を受け取ることができ、その酸素原子を酸化可能基材に受け渡すことができる漂白剤触媒とを含む。前記リパーゼと漂白剤触媒については、以下でさらに詳しく説明する。
【0013】
本組成物は、洗濯洗剤組成物、洗濯用添加組成物、食器洗浄用組成物、または硬質面清浄用組成物として用いるのに好適であることがある。本組成物は典型的には洗剤組成物である。本組成物は、布地処理用組成物であってよい。好ましくは、本組成物は洗濯洗剤組成物である。
【0014】
本組成物は、液体または固体といったいずれの形状であることもできるが、好ましくは本組成物は、固形状である。典型的には、本組成物は、粒塊、噴霧乾燥済み粉末、押出品、フレーク、針状、麺状、ビーズ、またはこれらのいずれかの組み合わせなどの微粒子状である。本組成物は、圧縮粒子状、例えば、タブレットまたはバーの形状であってよい。本組成物は、他の何らかの1回用量形状、例えば小袋形状であってよく、その場合、本組成物は典型的には、少なくとも部分的に、好ましくは実質的に完全に、水溶性フィルム(ポリビニルアルコールなど)で密閉される。好ましくは本組成物は、自由流動粒子状であり、自由流動粒子形状とは典型的に、組成物が別個の離散粒子状であることを意味する。本組成物は、集塊形成、噴霧乾燥、押出成形、混合、乾燥混合、液体噴霧、ローラー圧縮、球形化、錠剤化、またはこれらのいずれかの組み合わせなど、いずれかの適切な方法で作製してよい。
【0015】
本組成物は典型的には450g/L〜1,000g/Lのバルク密度を有し、好ましい低バルク密度洗剤組成物は550g/L〜650g/Lのバルク密度を有し、好ましい高バルク密度洗剤組成物のバルク密度は750g/L〜900g/Lのバルク密度を有す。本組成物は、650g/L〜750g/Lのバルク密度を有してもよい。洗濯プロセス中、本組成物は典型的には水と接触して、pH7超〜13未満、好ましくは7超〜10.5未満を有する洗浄溶液をもたらす。これは、良好な洗浄を提供すると同時に、良好な布地ケア特性も確保するために最適なpHである。
【0016】
本組成物には、(i)テトラアセチルエチレンジアミンおよび/またはオキシベンゼンスルホネート漂白活性剤を本組成物の0重量%〜10重量%未満、好ましくは7重量%以下、もしくは4重量%以下、または1重量%以上もしくは1.5重量%以上含有するのが好ましい。本組成物は、テトラアセチルエチレンジアミンおよび/またはオキシベンゼンスルホネート漂白活性剤が本質的に含まないのが最も好ましい。「本質的に含まない」とは典型的に、「意図的に組み込んだものがまったくない」ことを意味する。これらのタイプの漂白活性剤の濃度を最小限に保つと、組成物の染料保護安全特性が高い状態に維持される。
【0017】
本組成物は、水と接触した場合に、7〜10.5のpHを有する洗浄溶液を形成するのが好ましい。この予備アルカリ性特性およびpH特性を備えている組成物は、リパーゼに対する優れた安定性特性を示す。
【0018】
本組成物は、カーボネートアニオン源を組成物の0重量%以上または1重量%以上または2重量%以上または3重量%以上または4重量%以上または5重量%以上、および30重量%以下または20重量%以下または10重量%以下含有するのが好ましい。上記濃度のカーボネートアニオン源によって、本組成物に、優れた全体的洗浄性能と優れた漂白性能が備わるようにする。
【0019】
本組成物は移染防止剤を含有するのが好ましい。適切な移染防止剤は、好ましくは、40,000Da〜80,000Da好ましくは50,000D1〜70,000Daの重量平均分子量を有するポリビニルピロリドン、好ましくは、10,000Da〜40,000Da好ましくは15,000Da〜25,000Daの重量平均分子量を有するポリビニルイミダゾール、好ましくは、30,000Da〜70,000Da好ましくは40,000Da〜60,000Daの重量平均分子量を有するポリビニルピリジンN−オキシドポリマー、30,000Da〜70,000Da好ましくは40,000Da〜60,000Daの重量平均分子量を有するポリビニルピロリドンとビニルイミダゾールのコポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される。移染防止剤を含む組成物は、さらに優れた染料安全特性を示す。
【0020】
本組成物は、組成物の0重量%〜5重量%未満、好ましくは4重量%以下または3重量%以下または2重量%以下、さらには1重量%以下のゼオライトビルダーを含有してよい。本組成物は5重量%以上の濃度でゼオライトビルダーを含有してもよいが、好ましくは本組成物は5重量%未満のゼオライトビルダーを含有する。本組成物はゼオライトビルダーを本質的に含まないのが好ましいことがある。「ゼオライトビルダーが本質的に含まない」とは典型的には、本組成物が、意図的に組み込まれたゼオライトビルダーを含まないことを意味する。これは、組成物が洗濯用固体洗剤組成物である場合に特に好ましく、非水溶性残留物(例えば、布地表面上に堆積することがある)の量を最小限に抑えるためにも、透明な洗浄溶液を実現させるのが非常に望ましい場合にも、本組成物は、可溶性が非常に高いのが望ましい。適切なゼオライトビルダーとしては、ゼオライトA、ゼオライトX、ゼオライトP、およびゼオライトMAPが挙げられる。
【0021】
本組成物は組成物の0重量%〜10重量%未満、または5重量%未満、好ましくは4重量%以下、3重量%以下、または2重量%以下、さらには1重量%以下のホスフェートビルダーを含有してよい。本組成物は10重量%以上の濃度でホスフェートビルダーを含有してもよいが、本組成物は10重量%未満のホスフェートビルダーを含有するのが好ましい。さらには、本組成物はホスフェートビルダーが本質的に含まないのが好ましいことがある。「ホスフェートビルダーを本質的に含まない」とは典型的に、本組成物が、意図的に組み込まれたホスフェートビルダーを含まないことを意味する。これは、組成物が非常に良好な環境特性を持つことが望ましい場合に、特に好ましい。適切なホスフェートビルダーとしては、ナトリウムトリポリホスフェートが挙げられる。
【0022】
本組成物は組成物の0重量%〜5重量%未満、または好ましくは4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、さらには1%重量以下のシリケート塩を含んでよい。本組成物にはシリケート塩を5重量%超の濃度で含有してもよいが、本組成物はシリケート塩を5重量%未満含有するのが好ましい。さらには、本組成物はシリケート塩を本質的に含まないのが好ましいことがある。「シリケート塩を本質的に含まない」とは典型的に、本組成物が、意図的に添加されたシリケート塩を含まないことを意味する。これは、組成物が洗濯用固体洗剤組成物であり、組成物が非常に優れた投与特性および溶解特性を有することが確実であり、組成物が、水に溶解すると透明な洗浄溶液を提供することが確実であることが望ましい場合に特に好ましい。シリケート塩としては、非水溶性シリケート塩が挙げられる。シリケート塩としては、非晶質シリケート塩および結晶層状シリケート塩(例えばSKS−6)も挙げられる。シリケート塩としては、ナトリウムシリケートが挙げられる。
【0023】
本組成物は典型的に、補助剤成分を含んでいる。前記補助剤成分としては、洗剤用アニオン性界面活性剤、洗剤用非イオン性界面活性剤、洗剤用カチオン性界面活性剤、洗剤用双性イオン性界面活性剤、洗剤用両性界面活性剤などの洗剤用界面活性剤、好ましい洗剤用アニオン性界面活性剤は、アルコキシル化した洗剤用アニオン性界面活性剤、例えば、平均アルコキシル化度が1〜30、好ましくは1〜10である直鎖または分岐鎖、置換または非置換のC12〜18アルキルアルコキシル化サルフェート、さらに好ましくは、平均エトキシル化度が1〜10である直鎖または分岐鎖、置換または非置換のC12〜18アルキルエトキシル化サルフェート、最も好ましくは、平均エトキシル化度が3〜7である直鎖で非置換のC12〜18アルキルエトキシル化サルフェートであり、別の好ましい洗剤用アニオン性界面活性剤は、アルキルサルフェート、アルキルスルホネート、アルキルホスフェート、アルキルホスホネート、アルキルカルブキシレート、またはこれらのいずれかの混合物であり、好ましいアルキルサルフェートとしては、直鎖または分岐鎖、置換または非置換のC10〜18アルキルサルフェートが挙げられ、別の好ましい洗剤用アニオン性界面活性剤は、C10〜13直鎖アルキルベンゼンスルホネートであり、好ましい洗剤用非イオン性界面活性剤は、平均アルコキシル化度が1〜20、好ましくは3〜10であるC8〜18アルキルアルコキシル化アルコールであり、最も好ましいのは、平均アルコキシル化度が3〜10であるC12〜18アルキルエトキシル化アルコールであり、好ましい洗剤用カチオン性界面活性剤は、モノC6〜18アルキルモノヒドロキシエチルジメチル4級アンモニウムクロリドであり、さらに好ましいのはモノC8〜10アルキルモノヒドロキシエチルジメチル4級アンモニウムクロリド、モノC10〜12アルキルモノヒドロキシエチルジメチル4級アンモニウムクロリド、およびモノC10アルキルモノヒドロキシエチルジメチル4級アンモニウムクロリドである)、過酸素源、例えば、ペルカーボネート塩および/またはペルボレート塩などであり、好ましくはナトリウムペルカーボネートであり、過酸素源は、カーボネート塩、サルフェート塩、シリケート塩、ボロシリケート塩、またはこれらの塩の混合物などのコーティング成分によって、好ましくは少なくとも部分的にコーティングされており、好ましくは完全にコーティングされており、テトラアセチルエチレンジアミンのような漂白活性剤、ノナノイルオキシベンゼンスルホネートのようなオキシベンゼンスルホネート漂白活性剤、カプロラクタム漂白活性剤、N−ノナノイル−N−メチルアセトアミドのようなイミド漂白活性剤、例えば、アミラーゼ、アラビナーゼ、キシラナーゼ、ガラクタナーゼ、グルカナーゼ、カルボヒドラーゼ、セルラーゼ、ラッカーゼ、オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、プロテアーゼ、グルカナーゼ、ペクテートリアーゼ、およびマンナナーゼ、特に好ましくはプロテアーゼ、などの酵素、シリコーン系泡抑制剤など泡抑制剤系、蛍光増白剤、光漂白剤、サルフェート塩、好ましくはナトリウムサルフェートなどの充填剤塩、粘土、シリコーン、および/または4級アンモニウムの化合物、特に好ましくは所望によりシリコーンと組み合わせたモンモリロナイト粘土、などの布地柔軟化剤、ポリエチレンオキシドなどの凝集剤、ポリビニルピロリドン、ポリ4−ビニルピリジンN−オキシド、および/またはビニルピロリドンとビニルイミダゾールのコポリマーなどの移染防止剤、疎水変性セルロース、およびイミダゾールとエピクロルヒドリンの縮合によって生成されたオリゴマーなどの布地一体性成分、アルコキシル化ポリアミンおよびエトキシル化エチレンイミンポリマーなどの汚れ分散剤および汚れ再付着防止助剤、カルボキシメチルセルロースおよびポリエステルなどの再付着防止成分、香料、スルファミン酸またはその塩、クエン酸またはその塩、特に好ましいのはナトリウムカーボネートである、カーボネート塩、並びに、オレンジ色染料、青色染料、緑色染料、紫色染料、ピンク色染料、またはこれらの混合物などの染料が挙げられる。
【0024】
本発明の第2の実施形態は、(i)リパーゼ、例えば第1サイクルのリパーゼ(first cycle lipases)と(ii)ジアシルペルオキシドとを含む組成物に関するものである。
【0025】
リパーゼ
本組成物はリパーゼを含む。組成物にリパーゼを組み入れることによって、洗浄性能が向上する。これに加えてリパーゼを漂白触媒と組み合わせると、組成物の悪臭特性が大きく低下する。
【0026】
典型的には、リパーゼは、IUPAC−IUBMBの酵素分類(Enzyme Classification)(EC)によって定義されているEC番号3.1.1、さらに詳しくは3.1.1.3である。
【0027】
好ましくは本組成物は、本組成物100gあたりの活性リパーゼが少なくとも0.5mg、好ましくは少なくとも0.7mg、または少なくとも1.0mg、または少なくとも1.5mg、または少なくとも2.0mg、またはさらには少なくとも3.0mg、または少なくとも5.0mgまたはさらには少なくとも10mgになる量でリパーゼを含む。このリパーゼはカルシウム結合部位を含んでもよい。このリパーゼは、洗浄溶液中に存在することがある高レベルの遊離カルシウムカチオンの存在下において、より一層の安定性および/または活性、とりわけ活性も示すことがある。これは、本組成物が低濃度のゼオライトビルダーとホスフェートビルダーを含む場合に特に好ましい。
【0028】
典型的なEC3.1.1.3のリパーゼとしては、WO00/60063号、WO99/42566号、WO97/04078号、WO97/04079号、米国特許第5,869,438号、および米国特許第6,939,702B1号に記載されているものが挙げられる。好ましいリパーゼは、アブシディアレフレクサ(reflexa)、アブシディアコリムビフェラ、リズムコアミエヘイ(Rhizmucor miehei)、リゾープスデレマ、アスペルギルスニガー、アスペルギルスツビンゲンシス(tubigensis)、フザリウムオキシスポラム、フザリウムヘテロスポラム(heterosporum)、アスペルギルスオリゼー、ペニシリウムカマンベルディ、アスペルギルスフォエティダス、アスペルギルスニガー、サーモミセスラノギノサス(Thermomyces lanoginosus)(別名:フミコララヌギノーサ(Humicola lanuginosa))、およびランデリナペニサポラ(Landerina penisapora)、とりわけサーモミセスラノギノサス(Thermomyces lanoginosus)によって生成されている。好ましいリパーゼは、商品名ノボザイムズ(Novozymes)によって供給される。リポラーゼ(Lipolase)(登録商標)、リポラーゼウルトラ(Lipolase Ultra)(登録商標)、リポプライム(Lipoprime)(登録商標)、およびライペックス((登録商標)(ノボザイムズ(Novozymes)の登録商標名)という商品名で供給されているもの、エリアリオ製薬(Areario Pharmaceutical Co. Ltd.)(日本、名古屋)から入手可能なリパーゼP(LIPASE P)「アマノ(AMANO)(登録商標)」、東洋醸造株式会社(日本、タガタ)から入手可能なアマノ−CES(AMANO-CES)(登録商標)、およびさらには、U.S.バイオケミカル(U.S. Biochemical Corp.)(米国)およびジオシンス(Diosynth Co.)(オランダ)から入手可能なクロモバクタービスコサム(Chromobacter viscosum)リパーゼ、並びに、シュードモナスグラディオリなどのその他のリパーゼである。その他の適切なリパーゼは、WO02062973号、WO2004/1
01759号、WO2004/101760号、およびWO2004/101763号に記載されている。
【0029】
好ましくは、リパーゼは、アミノ酸配列を有するポリペプチドであり、(a)フミコララヌギノーサ(Humicola lanuginosa)菌株DSM4109由来の野生型リパーゼとの同一性が少なくとも90%であり、(b)前記野生型リパーゼと比較した場合、E1またはQ249から15Å以内の3次元構造体の表面にある電気的に中性のアミノ酸もしくは負に荷電したアミノ酸の正に荷電したアミノ酸による置換を含み、および/または(c)C末端にペプチド付加物を含み、および/または(d)N末端にペプチド付加物を含み、および/または(e)(i)野生型リパーゼのE210の位置に負に荷電したアミノ酸を含み、(ii)前記野生型リパーゼの90〜101位に相当する領域に負に荷電したアミノ酸を含み、並びに(iii)前記野生型リパーゼのN94の位置にに相当する位置に中性のアミノ酸もしくは負に荷電したアミノ酸を含み、および/または野生型リパーゼの90〜101位に相当する領域に負もしくは中性の正味電荷を備えるという制限を満たす。野生型リパーゼのペプチド配列は後掲される(配列番号2)。
【0030】
ある1つの実施形態では、適切なリパーゼとしては、WO00/60063号および米国特許第6,939,702B1号に記載されている「第1サイクルのリパーゼ(first cycle lipases)」、好ましくは配列番号2の変異体、より好ましくは配列番号2に対する相同性が少なくとも90%であり、3位、224位、229位、231位、および233位のいずれかにRまたはKを有している電気的に中性のアミノ酸または負に荷電したアミノ酸の置換を含む配列番号2の変異体、最も好ましくは突然変異体T231RおよびN233Rを含む変異体であり、このような最も好ましい変異体はライペックス(Lipex)(登録商標)という商品名で市販されている。
【0031】
その他の適切なリパーゼはクチナーゼとエステラーゼである。
【0032】
典型的には、本組成物は10LU/g〜20,000LU/g、または100LU/g〜10,000LU/g、またはさらには500LU/g〜、または750LU/g〜、および〜3,000LU/g、または〜1,500LU/g、または〜1,250LU/gの量のリパーゼを含む。
【0033】
漂白剤触媒
漂白剤触媒は、ペルオキシ酸および/またはその塩から酸素原子を受け取ることができ、その酸素原子を酸化可能基材に受け渡すことができる。適切な漂白剤触媒としては、イミニウムカチオンおよびポリイオン、イミニウム双性イオン、変性アミン、変性アミンオキシド、N−スルホニルイミン、N−ホスホニルイミン、N−アシルイミン、チアジアゾールジオキシド、ペルフルオロイミン、環状糖ケトン、並びに、これらの混合物が挙げられるが、これらに限らない。
【0034】
適切なイミニウムカチオンおよびポリイオンとしては、「テトラヘドロン(Tetrahedron)」(1992年)49(2)号、423〜38ページ(例えば433ページの化合物4を参照)に記載されているとおりに調製したN−メチル−3,4−ジヒドロイソキノリニウムテトラフルオロボレート、米国特許第5,360,569号(例えば11段落目の実施例1を参照)に記載されているとおりに調製したN−メチル−3,4−ジヒドロイソキノリニウムp−トルエンスルホネート、および米国特許第5,360,568号(例えば10段落目の実施例3を参照)に記載されているとおりに調製したN−オクチル−3,4−ジヒドロイソキノリニウムp−トルエンスルホネートが挙げられるが、これらに限らない。
【0035】
適切なイミニウム双性イオンとしては、米国特許第5,576,282号(例えば31段落目の実施例IIを参照)に記載されているとおりに調製したN−(3−スルホプロピル)−3,4−ジヒドロイソキノリニウム分子内塩、米国特許第5,817,614号(例えば32段落目の実施例Vを参照)に記載されているとおりに調製したN−[2−(スルホオキシ)ドデシル]−3,4−ジヒドロイソキノリニウム分子内塩、WO05/047264号(例えば18ページの実施例8を参照)に記載されているとおりに調製した2−[3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−2−(スルホオキシ)プロピル]−3,4−ジヒドロイソキノリニウム分子内塩、および2−[3−[(2−(ブチルオクチル)オキシ]−2−(スルホオキシ)プロピル]−3,4−ジヒドロイソキノリニウム分子内塩が挙げられるが、これらに限らない。
【0036】
適切な変性アミン酸素移動触媒としては、1,2,3,4−テトラヒドロ−2−メチル−1−イソキノリノール(「テトラヘドロンレターズ(Tetrahedron Letters)」(1987年)、28(48)号、6061〜6064ページに記載されている手順に従って生成させることができる)が挙げられるが、これに限らない。適切な変性アミンオキシド酸素移動触媒としては、ナトリウム1−ヒドロキシ−N−オキシ−N−[2−(スルホオキシ)デシル]−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンが挙げられるが、これに限らない。
【0037】
適切なN−スルホニルイミン酸素移動触媒としては、「有機化学会誌(Journal of Organic Chemistry)」(1990年)、55(4)号、1254〜61ページに記載されている手順に従って調製した3−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾール1,1−ジオキシドが挙げられるが、これに限らない。
【0038】
適切なN−ホスホニルイミン酸素移動触媒としては、「化学会誌(Journal of the Chemical Society)」(ケミカルコミュニケーションズ(Chemical Communications)、1994年)(22)号、2569〜70ページに記載されている手順に従って生成させることのできる[R−(E)]−N−[(2−クロロ−5−ニトロフェニル)メチレン]−P−フェニル−P−(2,4,6−トリメチルフェニル)−ホスフィン酸アミドが挙げられるが、これに限らない。
【0039】
適切なN−アシルイミン酸素移動触媒としては、「ポーランド化学会誌(Polish Journal of Chemistry)」(2003年)、77(5)号、577〜590ページに記載されている手順に従って生成させることのできる[N(E)]−N−(フェニルメチレン)アセトアミドが挙げられるが、これに限らない。
【0040】
適切なチアジアゾールジオキシド酸素移動触媒としては、米国特許第5,753,599号(9段落目、実施例2)に記載されている手順に従って生成させることのできる3−メチル−4−フェニル−1,2,5−チアジアゾール1,1−ジオキシドが挙げられるが、これに限らない。
【0041】
適切なペルフルオロイミン酸素移動触媒としては、「テトラヘドロンレター(Tetrahedron Letters)」(1994年)、35(34)号、6329〜30ページに記載されている手順に従って生成させることのできる(Z)−2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−N−(ノナフルオロブチル)ブタンイミドイルフルオリドが挙げられるが、これに限らない。
【0042】
適切な環状糖ケトン酸素移動触媒としては、米国特許第6,649,085号(12段落目、実施例1)に記載されているような1,2:4,5−ジ−O−イソプロピリデン−D−エリトロ−2,3−ヘキソジウロ−2,6−ピラノースが挙げられるが、これに限らない。
【0043】
好ましくは、漂白剤触媒がイミニウムおよび/またはカルボニル官能基を含むとともに、漂白剤触媒が典型的に、酸素原子を受け取ると、とりわけペルオキシ酸および/またはその塩から酸素原子を受け取ると、オキサジリジニウムおよび/またはジオキシラン官能基を形成することができる。好ましくは、漂白剤触媒がオキサジリジニウム官能基を含み、および/または漂白剤触媒が典型的に、酸素原子を受け取ると、とりわけペルオキシ酸および/またはその塩から酸素原子を受け取ると、オキサジリジニウム官能基を形成することができる。好ましくは、漂白剤触媒が環状イミニウム官能基を含み、好ましくはその場合、環状部分の環のサイズは、原子5〜8個(窒素原子も含む)、好ましくは原子6個である。好ましくは、漂白剤触媒は、アリールイミニウム官能基、好ましくは2環状アリールイミニウム官能基、好ましくは3,4−ジヒドロイソキノリニウム官能基を含む。典型的にはイミン官能基は4級イミン官能基であるとともに、典型的には、酸素原子を受け取ると、とりわけペルオキシ酸および/またはその塩から酸素原子を受け取ると、4級オキサジリジニウム官能基を形成することができる。
【0044】
好ましくは、漂白剤触媒は以下の化学式に相当する化学構造を有する。
【化1】

式中、nおよびmは独立して0〜4であり、好ましくはnおよびmはいずれも0であり、Rはそれぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、縮合アリール、複素環、縮合複素環、ニトロ、ハロ、シアノ、スルホナト、アルコキシ、ケト、カルボン酸、およびカルボアルコキシラジカルからなる群から選択した置換または非置換ラジカルから選択され、近接している2つのR置換のいずれかが結合して縮合アリール環、縮合炭素環、または縮合複素環を形成してもよく、Rはそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、アルキル、シクロアルキル、アルカリル、アリール、アラルキル、アルキレン、複素環、アルコキシ、アリールカルボニル基、カルボキシアルキル基、およびアミド基からなる群から独立して選択した置換または非置換ラジカルから選択されるとともに、Rは他のRのいずれかと結合して共通環の一部を形成してもよく、ジェミナルな2つのRのいずれかが結合してカルボニルを形成してもよく、2つのRのいずれかが結合して置換または非置換の縮合不飽和部分を形成してもよく、RはC〜C20の置換または非置換アルキルであり、Rは水素またはQ−Aの部分であり、式中、Qは分岐または非分岐アルキレンであり、tは0または1であり、Aは、OSO、SO、CO、OCO、OPO2−、OPO、およびOPOからなる群から選択したアニオン基であり、Rは水素または−CR1112−Y−G−Y−[(CR10−O]−Rの部分であり、式中、Yはそれぞれ独立してO、S、N−H、またはN−Rからなる群から選択され、Rはそれぞれ独立してアルキル、アリール、およびヘテロアリールからなる群から選択され、部分は置換または非置換であり、部分は、置換または非置換を問わず、21個未満の炭素を備え、Gはそれぞれ独立してCO、SO、SO、PO、およびPOからなる群から選択され、RおよびR10は独立して、HおよびC〜Cアルキルからなる群から選択され、R11およびR12は独立して、Hおよびアルキルからなる群から選択され、あるいは、1つにまとまると、結合してカルボニルを形成してもよく、bは0または1であり、cは0または1であることができるが、bが0の場合cは0でなければならず、yは1〜6の整数であり、kは0〜20の整数であり、RはH、またはアルキル、アリール、もしくは、ヘテロアリール部分であり、部分は置換または非置換であり、Xが存在する場合、Xは適切な電荷平衡式対イオンであり、Rが水素である場合にはXが存在しているのが好ましく、適切なXとしては、クロリド、ブロミド、サルフェート、メトサルフェート、スルホネート、p−トルエンスルホネート、ボロンテトラフルオリド(borontetraflouride)、およびホスフェートが挙げられるが、これらに限らない。
【0045】
本発明の1つの実施形態では、漂白剤触媒は、以下の一般式に相当する構造を有す。
【化2】

式中、R13は、3〜24個の炭素原子(分岐炭素原子も含む)を含む分岐アルキル基、または1〜24個の炭素原子を含む直鎖アルキル基であり、好ましくは、R13は、8〜18個の炭素原子を含む分岐アルキル基、または8〜18個の炭素原子を含む直鎖アルキル基であり、好ましくは、R13は、2−プロピルヘプチル、2−ブチルオクチル、2−ペンチルノニル、2−ヘキシルデシル、n−ドデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル、n−オクタデシル、イソノニル、イソデシル、イソトリデシル、およびイソペンタデシルからなる群から選択され、好ましくは、R13は、2−ブチルオクチル、2−ペンチルノニル、2−ヘキシルデシル、イソトリデシル、およびイソペンタデシルからなる群から選択される。
【0046】
オキシベンゼンスルホネートおよび/またはオキシベンゾイン漂白活性剤
本組成物には、(i)オキシベンゼンスルホネート漂白活性剤および/またはオキシベンゾイン漂白活性剤、並びに、(ii)過酸素源を含有するのが好ましい。典型的には、オキシベンゾイン酸漂白活性剤は、その塩の形状をしている。好ましいオキシベンゼンスルホネート漂白活性剤としては、以下の一般式を有する漂白活性剤が挙げられる。
【0047】
R−(C=O)−L
式中、Rは、漂白活性剤が疎水性の場合に6〜12個の炭素原子、または8〜12個の炭素原子を有する、任意で分岐のアルキル基であり、Lは脱離基である。好適な脱離基の例は、ベンゾイン酸およびその誘導体、特にはその塩である。特に好ましい別の脱離基はオキシベンゼンスルホネートである。適切な漂白活性剤としては、ドデカノイルオキシベンゼンスルホネート、デカノイルオキシベンゼンスルホネート、デカノイルオキシベンゾイン酸塩、3,5,5−トリメチルヘキサノイルオキシベンゼンスルホネート、ノナノイルアミドカプロイルオキシベンゼンスルホネート、およびノナノイルオキシベンゼンスルホネート(NOBS)が挙げられる。適切な漂白活性剤はWO98/17767号にも開示されている。これらの漂白活性剤を本組成物に組み込むのは、本組成物が低レベルのゼオライトビルダーとホスフェートビルダーを含む場合に特に好ましい。特に低ビルダー(under-built)洗剤組成物(このような洗剤組成物は低濃度のゼオライトビルダーとホスフェートビルダーを含む)の中で、これらの漂白活性剤を過酸素源、および上でさらに詳細に説明されている漂白触媒、並びにリパーゼと組み合わせると、全体的な洗浄性能が向上し、ゴム製排水ホースに対する適合特性が向上し、本組成物の悪臭特性が低下することを本発明者達は見出した。
【0048】
ジアシルペルオキシド
別の実施形態では、本組成物は、(i)リパーゼと、(ii)ジアシルおよび/またはテトラアシルペルオキシド種を含んでいる。上記組成物は、ゴム製排水ホースに対する優れた適合特性を呈することを本発明者達は発見した。ジアシルペルオキシド、さらにはテトラアシルペルオキシドは、ゴム、例えば、自動洗濯機のゴム製排水ホースを傷めることで知られており、これにより、複数の洗浄サイクルにわたって、ゴム製排水ホースの破損を引き起こす可能性がある。ジアシルペルオキシドおよび/またはテトラアシルペルオキシドをリパーゼと組み合わせると、ゴム製排水ホースに対する不適合性の問題が解消されることを本発明者達は発見した。
【0049】
ジアシルペルオキシド漂白種は、好ましくは以下の一般式のジアシルペルオキシドから選択される。
【0050】
−C(O)−OO−(O)C−R
式中、RはC〜C18アルキル、好ましくは、少なくとも5個の炭素原子の直鎖を含んでおり、所望に応じて1つ以上の置換(例えば、−N(CH、−COOHまたは−CN)および/またはアルキルラジカルの隣接炭素原子間に挿入されている1つ以上の妨害部分(例えば、−CONH−または−CH=CH−)を含んでいるC〜C12アルキル基を表しており、Rはペルオキシド部分と相溶性のある脂肪族基を表しており、RおよびRには合計で8〜30個の炭素原子を含んでいる。好ましいある1つの態様では、RおよびRは非置換の直鎖C〜C12アルキル鎖である。RおよびRは同一であるのが最も好ましい。ジアシルペルオキシド(RおよびRの両方がC〜C12アルキル基である)が特に好ましい。R基(RまたはR)のうちの好ましくは少なくとも1つ、最も好ましくは1つのみでは、α位に、または好ましくはα位にもβ位にも、または最も好ましくはα位、β位、γ位のいずれにも、分岐またはペンダント環を含んでいない。さらに好ましいある1つの実施形態では、DAPは非対称であってよく、過酸を生成させるためにR1のアシル基の加水分解は急速であるが、R2のアシル基の加水分解はゆっくりになるようにするのが好ましい。
【0051】
テトラアシルペルオキシド漂白種は、以下の一般式のテトラアシルペルオキシドから選択するのが好ましい。
【0052】
−C(O)−OO−C(O)−(CH)n−C(O)−OO−C(O)−R
式中、RはC〜C、好ましくはC〜Cアルキル基を表しており、nは2〜12、好ましくは4〜10の整数を表している。
【0053】
ジアシルおよび/またはテトラアシルペルオキシド漂白種は、洗浄溶液の少なくとも0.5重量ppm、より好ましくは少なくとも10重量ppm、さらに好ましくは少なくとも50重量ppmになるのに十分な量で存在するのが好ましい。好ましい実施形態では、前記漂白種は、洗浄溶液の約0.5〜約300重量ppm、より好ましくは約30〜約150重量ppmになるのに十分な量で存在している。
【0054】
予備形成済みのペルオキシ酸
予備形成済みのペルオキシ酸(pre-formed peroxyacid)またはその塩は典型的に、ペルオキシカルボン酸もしくはその塩、またはペルオキシスルホン酸もしくはその塩のいずれかである。
【0055】
予形成済みのペルオキシ酸またはその塩は好ましくは、典型的に以下の化学式に相当する化学構造を備えているペルオキシカルボン酸またはその塩である。
【化3】

式中、R14は、アルキル基、アラルキル基、シクロアルキル基、アリール基、または複素環基から選択され、R14の基は、直鎖または分枝鎖、置換または非置換であることができ、Yは電荷中性を実現するいずれかの適切な対イオンであり、好ましくはYは、水素、ナトリウム、またはカリウムから選択される。好ましくはR14は、直鎖または分枝鎖、置換または非置換のC6〜9アルキルである。好ましくはペルオキシ酸またはその塩は、ペルオキシヘキサン酸、ペルオキシヘプタン酸、ペルオキシオクタン酸、ペルオキシノナン酸、ペルオキシデカン酸、およびこれらの塩のいずれか、またはこれらの組み合わせのいずれかから選択される。好ましくは、ペルオキシ酸またはその塩は、30℃〜60℃の範囲内に融点を有する。
【0056】
予形成済みのペルオキシ酸またはその塩は、典型的には以下の化学式に相当する化学構造を備えているペルオキシスルホン酸またはその塩にすることもできる。
【化4】

式中、R15は、アルキル基、アラルキル基、シクロアルキル基、アリール基、または複素環基から選択され、R15の基は、直鎖または分枝鎖、置換または非置換であることができ、Zは電荷中性を実現するいずれかの適切な対イオンであり、好ましくは、Zは水素、ナトリウム、またはカリウムから選択される。好ましくはR15は、直鎖または分枝鎖、置換または非置換のC6〜9アルキルである。
【実施例】
【0057】
(実施例1):硫酸モノ−[2−(3,4−ジヒドロ−イソキノリン−2−イル)−1−(2−エチルヘキシルオキシメチル)−エチル]エステル分子内塩の調製
2−エチルヘキシルグリシジルエーテルの調製:エピクロロヒドリン(15.62g、0.17モル)が充填されている追加の漏斗が備わっている火力乾燥済みの500mLの丸底フラスコに、2−エチルヘキサノール(16.5g、0.127モル)と塩化第2スズ(0.20g、0.001モル)を加える。反応物をアルゴン雰囲気下で保ち、油浴を用いて90℃まで加温する。エピクロロヒドリンを60分かけて攪拌溶液に滴下した後、90℃で18時間攪拌する。反応物を真空蒸留ヘッドに取り付け、1−クロロ−3−(2−エチル−ヘキシルオキシ)−プロパン−2−オルを27Pa(0.2mm Hg)で蒸留する。1−クロロ−3(2−エチル−ヘキシルオキシ)−プロパン−2−オル(4.46g、0.020モル)をテトラヒドロフラン(50mL)に溶解し、アルゴン雰囲気下の室温で攪拌する。攪拌溶液に、カリウムt−ブトキシド(2.52g、0.022モル)を加え、その懸濁液を室温で18時間攪拌する。次に、反応物を蒸発乾固し、残留物をヘキサン中に溶解させ、水(100mL)で洗う。ヘキサン相を分離させ、NaSOによって乾燥させ、ろ過および蒸発乾固して、粗製2−エチルヘキシルグリシジルエーテルを得、これはさらに、真空蒸留によって精製することができる。
【0058】
硫酸モノ−[2−(3,4−ジヒドロ−イソキノリン−2−イル)−1−(2−エチルヘキシルオキシメチル)−エチル]エステル分子内塩の調製:凝縮器、乾燥アルゴン注入口、磁気攪拌棒、温度計、および加熱浴が備わっている火力乾燥済みの250mLの3つ口丸底フラスコに、3,4−ジヒドロイソキノリン(0.40モル、米国特許第5,576,282号の実施例1に記載されているとおりに調製)、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル(0.38モル、上記のとおり調製)、SO−DMF錯体(0.38モル)、およびアセトニトリル(500mL)を加える。反応物を80℃まで加温し、温度で72時間攪拌する。反応物を室温まで冷却して蒸発乾固し、残留物をエチルアセテートおよび/またはエタノールから再結晶化させて、所望の生成物を得る。溶媒アセトニトリルは、1,2−ジクロロエタンが挙げられるが、これに限らない他の溶媒に置き換えてよい。
【0059】
(実施例2):硫酸モノ−[2−(3,4−ジヒドロ−イソキノリン−2−イル)−1−(2−ブチル−オクチルオキシメチル)−エチル]エステル分子内塩の調製
所望の生成物は、2−ブチルオクタノールを2−ヘキシルオクタノールに置き換える以外は実施例1に従って調製する。
【0060】
(実施例3):洗濯洗剤組成物
以下の洗濯洗剤組成物A、B、C、およびDは、本発明で用いるのに適している。典型的に、これらの組成物は、洗濯プロセス中に80g/L〜120g/Lの濃度で水中に投与する。
【表1−1】

【表1−2】

以下の洗濯洗剤組成物E、F、GおよびHは、本発明で用いるのに適している。典型的に、これらの組成物は、洗濯プロセス中に80g/L〜120g/Lの濃度で水中に投与する。
【表2】

【0061】
以下の洗濯洗剤組成物I、J、K、およびLは、本発明で用いるのに適している。典型的に、これらの組成物は、洗濯プロセス中に20g/L〜60g/Lの濃度で水中に投与する。
【表3】

【0062】
顆粒洗濯洗剤の形状をしている漂白洗剤組成物は、以下の配合によって例示されている。上記の組成物のいずれかを用いて、水中濃度600〜10000ppm(典型的な中央条件は2500ppmである)、25℃、水対布の比率25:1によって、布地を洗濯する。典型的なpHは約10であるが、酸とNa塩形状のアルキルベンゼンスルホネートの比率を変えることによって調整することができる。
【表4】

* リパーゼは好ましくはライペックス(Lipex)(登録商標)である。
** 実施例1もしくは2に従って調製した有機触媒、またはこれらの混合物
*** ジアシルペルオキソドは、ジノナノイルペルオキシドであるのが好ましい。
【表5】

【0063】
「発明を実施するための最良の形態」で引用した全ての文献は、関連部分において参考として本明細書に組み込まれるが、いずれの文献の引用も、それが本発明に対する先行技術であることを容認するものと解釈すべきではない。本書における用語の任意の意味または定義が、参照として組み込まれた文献における同一の用語の任意の意味または定義と相反する限りにおいては、本書においてその用語に与えられた意味または定義を適用するものとする。
【0064】
本発明の特定の実施形態を例示し記載してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく他の様々な変更および修正を実施できることが、当業者には明白であろう。従って、本発明の範囲内にあるそのような全ての変更修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)リパーゼ、および
(b)ペルオキシ酸から酸素原子を受け取ることができ、かつ前記酸素原子を酸化可能な基材に受け渡すことができる漂白触媒
を含む組成物。
【請求項2】
前記漂白触媒が、イミニウムおよび/またはカルボニル官能基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記漂白触媒が、オキサジリジニウムおよび/もしくはカルボニル官能基を含み、および/または前記漂白触媒が、酸素原子を受け取ると、オキサジリジニウムおよび/もしくはジオキシラン官能基を形成することができる、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記漂白触媒が、以下の化学式に対応する化学構造を有し、
【化1】

式中、nおよびmは独立して0〜4であり、各Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、縮合アリール、複素環、縮合複素環、ニトロ、ハロ、シアノ、スルホナト、アルコキシ、ケト、カルボキシル、およびカルボアルコキシラジカルから成る群から選択される置換または非置換ラジカルから独立して選択され、かついずれか2つの隣接したR置換基は、組み合わされて縮合アリール、縮合炭素環、または縮合複素環を形成してもよく、各Rは、水素、ヒドロキシ、アルキル、シクロアルキル、アルカリール、アリール、アラルキル、アルキレン、複素環、アルコキシ、アリールカルボニル基、カルボキシアルキル基、およびアミド基から成る群から独立して選択される置換または非置換ラジカルから独立して選択され、いずれかのRはいずれか他のRと共に結合して共通環の一部を形成してもよく、いずれかのジェミナルRは組み合わされてカルボニルを形成してもよく、かついずれか2つのRは組み合わされて置換または非置換の縮合不飽和部分を形成してもよく、RはC〜C20の置換または非置換アルキルであり、Rは水素または部分Q−Aであり、式中、Qは分岐鎖または非分岐鎖アルキレンであり、t=0または1であり、かつAは、OSO、SO、CO、OCO、OPO2−、OPO、およびOPOから成る群から選択されるアニオン基であり、Rは水素または部分−CR1112−Y−G−Y−[(CR10−O]−Rであり、式中、各YはO、S、N−H、またはN−Rから成る群から独立して選択され、各Rはアルキル、アリール、およびヘテロアリールから成る群から独立して選択され、前記部分は置換または非置換であり、かつ置換または非置換にかかわらず前記部分が21個未満の炭素を備え、各GはCO、SO、SO、PO、およびPOから成る群から独立して選択され、RおよびR10は、水素およびC〜Cアルキルから成る群から独立して選択され、R11およびR12は、水素およびアルキルから成る群から独立して選択され、あるいは統合されたときには結合してカルボニルを形成してもよく、b=0または1であり、c=0または1であることができるが、b=0の場合c=0でなければならず、yは1〜6の整数であり、kは0〜20の整数であり、RはH、またはアルキル、アリール、もしくはヘテロアリール部分であり、前記部分は置換または非置換であり、かつXは、存在する場合、好適な電荷平衡式対イオンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記漂白触媒が、以下の化学式に対応する化学構造を有し、
【化2】

式中、R13が、3〜24個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、または1〜24個の炭素原子を含む直鎖アルキル基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記漂白触媒が、以下の化学式に対応する化学構造を有し、
【化3】

式中、R13が、2−ブチルオクチル、2−ペンチルノニル、2−ヘキシルデシル、イソ−トリデシル、およびイソ−ペンタデシルから成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記リパーゼが、アミノ酸配列を有するポリペプチドであり、
(a)フミコララヌギノーサ(Humicola lanuginosa)菌株DSM4109由来の野生型リパーゼとの同一性が少なくとも90%であり、
(b)前記野生型リパーゼと比較した場合、E1またはQ249から15Å以内の3次元構造表面における電気的に中性もしくは負に荷電したアミノ酸の正に荷電したアミノ酸による置換を含み、および/または
(c)C末端にペプチド付加物を含み、および/または
(d)N末端にペプチド付加物を含み、および/または
(e)
(i)前記野生型リパーゼのE210の位置に負のアミノ酸を含み、
(ii)前記野生型リパーゼの90〜101位に対応する領域に負に荷電したアミノ酸を含み、かつ、
(iii)前記野生型リパーゼのN94の位置に対応する位置に中性または負のアミノ酸を含み、および/または前記野生型リパーゼの90〜101位に対応する領域に負もしくは中性の正味電荷を備える、
という制限を満たす、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記リパーゼが、突然変異体T231RおよびN233Rを有する、フミコララヌギノーサ(Humicola lanuginosa)リパーゼの変異体である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物の5重量%未満の過酸素源を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物の5重量%〜10重量%のカーボネートアニオン源を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
移染防止剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
(a)前記組成物の5重量%未満のゼオライトビルダー、
(b)所望により、前記組成物の5重量%未満のホスフェートビルダー、および
(c)所望により、前記組成物の5重量%未満のシリケート塩
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
ジアシルおよび/またはテトラアシルペルオキシド種を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
オキシベンゼンスルホネート漂白活性剤と過酸素源を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
予備形成されたペルオキシ酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
(a)第1サイクルのリパーゼ(first cycle lipase)、および
(b)ジアシルおよび/またはテトラアシルペルオキシド種
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
ペルオキシ酸から酸素原子を受け取ることができ、かつ前記酸素原子を酸化可能な基材に受け渡すことができる漂白触媒を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記リパーゼが、アミノ酸配列を有するポリペプチドであり、
(a)フミコララヌギノーサ(Humicola lanuginosa)菌株DSM4109由来の野生型リパーゼとの同一性が少なくとも90%であり、
(b)前記野生型リパーゼと比較した場合、E1またはQ249から15Å以内の3次元構造表面における電気的に中性もしくは負に荷電したアミノ酸の正に荷電したアミノ酸による置換を含み、および/または
(c)C末端にペプチド付加物を含み、および/または
(d)N末端にペプチド付加物を含み、および/または
(e)
(i)前記野生型リパーゼのE210の位置に負のアミノ酸を含み、
(ii)前記野生型リパーゼの90〜101位に対応する領域に負に荷電したアミノ酸を含み、かつ
(iii)前記野生型リパーゼのN94の位置に対応する位置に中性もしくは負のアミノ酸を含み、および/または前記野生型リパーゼの90〜101位に対応する領域に負もしくは中性の正味電荷を備える、
という制限を満たす、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
前記リパーゼが、突然変異体T231RおよびN233Rを有する、フミコララヌギノーサ(Humicola lanuginosa)リパーゼの変異体である、請求項18に記載の組成物。

【公表番号】特表2009−523904(P2009−523904A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552348(P2008−552348)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/001671
【国際公開番号】WO2007/087258
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】