説明

リボンを巻き付けたロール

円筒状のベースと、第1のリボンとを有し、第1のリボンが、内面と、外面と、それらの間に位置する第1及び第2の主要側面とを有する成形型ロールが提供される。第1のリボンの外面は、その中に形成された複数の凹部又は穴を有し、第1のリボンは、内面がベースロールに近接するように、ベースロールの周りに螺旋コイル状に巻き付けられる。第1のリボンの外面内の複数の凹部又は穴は、複数の独立した型穴を形成し、独立した型穴の各々は、第1のリボンの外面に型開口部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造化表面を有する物品の製造分野に関する。より具体的には、本発明は、1つ以上の構造化表面を有する物品を製造するための成形型、その成形型を製造する方法、及び、その成形型を使用して1つ以上の構造化表面を有する物品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1つ以上の構造化表面を有する物品には、多様な用途が見出される。この物品は、例えば、表面積の増加、メカニカルファスナを設けるために使用される構造、各光学特性などを呈するフィルムとして提供されることができる。これらのフィルムが、メカニカルファスナとして使用するために製造される場合、構造化表面上に見られる突起は、一般にフックと呼ばれる。このフックは、湾曲形状などをなすフックとして直接形成されても、また、頂部がマッシュルームの形状などに変形される実質的に直立するステムなど、フック先行体(hook precursors)として形成されてもよい。そのようなメカニカルファスナが米国特許第3,192,589号(ピアソン(Pearson))に示されており、この特許において、これらのファスナは、噛み合ったときに頭付きスタッドが雄の特徴と雌の特徴の双方を有するため、「両性型」と呼ばれている。ピアソン(Pearson)のファスナは、一体型の頭なしスタッドが突出するベースを成形し、次いでスタッドの先端部を加熱軟化させることによって作製することができる。
【0003】
米国特許第5,077,870号(メルビ(Melbye)ら)には、可動型表面内に形成された穴の中に溶融材料を押し込むことによって、メカニカルファスナのフックストリップ部分を製造する1つの方法が開示されている。可動型表面によって形成されたステムは、次いで、キャップを被せられて所望のファスナを形成する。穴は、ドリル加工によって型表面内に形成される。結果として、穴は形状が円筒状となり、また、幾分かの精度を、深さ、直径、及び穴間の間隔において得ることができるが、その精度を得るには、幾分かの困難とコストの増加が伴う。更に、型表面の損傷により、通常、型全体を廃棄することが必要となる。
【0004】
米国特許第5,792,411号(モリス(Morris)ら)には、型表面をレーザー加工することによって製造される成形型が開示されている。次いで、溶融材料は、可動型表面内の穴の中に押し込まれてステムを形成する。次いで、ステムは、キャップを被せられて所望のファスナを形成する。穴はレーザーアブレーションによって形成されるため、穴の形状は、穴を形成するために使用されるレーザー光線内のエネルギー分布に基づいたものとなる。更に、穴の深さを精密に制御することは、型を構成するために使用される材料、レーザー光線の出力、光線内のエネルギー分布、光線の焦点などの変動により、達成が困難である。
【0005】
米国特許第4,775,310号(フィッシャー(Fischer))及びPCT国際公開特許第97/46129号(レイシー(Lacey)ら)には、フックループ形式のメカニカルファスナ用のフックストリップを製造するために使用される成形型が開示されている。この成形型は、水冷ジャケットを有する中空ドラムによって形成される。所望の型穴がロールの表面上に形成されるように、一連の成形ディスク、又は交互に並ぶ成形ディスクとスペーサプレートが、ドラムの長さに沿って互いに積層される。これらの設計の欠点には、型穴の深さ、長さ、間隔などが同じになるように、適切な精度で型ディスクを製造するコストが挙げられる。製造が困難であることにより寸法の制限がディスクに課せられ、またそれによって、成形型を使用するプロセスにおけるライン速度が制限されることがある。この設計の他の欠点には、型穴の冷却が不均一となること、積み重ねられたプレートによって製造される製品が不均一となることなどが挙げられる。
【0006】
米国特許第6,902,389号では、1つ以上の連続ワイヤが螺旋状に巻かれた円筒状のベースロールから構成された成形型ロールが提案されている。これらのワイヤは、成形型ロール上に構造化表面を形成するために使用され、その構造化表面は、成形型ロールを使用して加工された物品上に形成される構造化表面と凹凸が逆である。一実施形態において、凹部を有してもよく、その凹部が、ベースロールの周りに巻き付けられるワイヤのうちの少なくとも1つが、ベースロールの周りに螺旋コイル状に巻き付けられたときに成形型ロールの外表面上に型穴を形成することによって、ワイヤの中に形成される。それらの凹部は、概して、型穴を形成する凹部の最後の側部が、ベースロールの周りに巻き付けられた隣接するワイヤ上の反対側部となるように、ワイヤの側部に形成されている。米国特許第6,902,389号のロール及び方法は、型ディスクと比べて、形成がより容易でかつより低コストであるが、長い1本以上のワイヤを張力下で巻き付けることを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、成形型ロール、及びその成形型ロールを使用して1つ以上の構造化表面を有する物品を製造する方法を提供する。成形型ロールは、適切な粘度又は成形性の材料と共に使用されると物品上に構造化表面を形成することができる外表面を有している。成形型は、ロール形式で製造されるため、連続的な製造プロセスにおいて好都合に使用することができる。あるいは、独立した物品が、本発明の成形型ロールを使用して加工されてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
「構造化表面」とは、物品の表面が、平面又は他の滑らかな表面から逸脱することを意味する。例えば、構造化表面は、メカニカルファスナと共に使用されるステムなど、その構造化表面から延びる突起を有してもよい。代替の構造化表面には、連続的な溝又は隆起、細長い構造などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0009】
本発明の成形型ロールは、円筒状のベースから構成され、そのベースは、ロール又は円筒であることができ、1つ以上の連続リボンを螺旋パターンで巻き付けられる。このリボンは、成形型ロール上に構造化表面を形成するために使用され、その構造化表面は、成形型ロールを使用して加工された物品上に形成される構造化表面と凹凸が逆である。一実施形態において、円筒状のベースの周りに巻き付けられるリボンのうちの少なくとも1つが、そのリボンの中に形成された独立した凹部又は穴を有してもよく、その凹部又は穴は、ベースロールの周りに螺旋コイル状に巻き付けられたときに成形型ロールの外表面上に型穴を形成することによる。
【0010】
本発明による凹部又は穴によって形成される型穴は、外面からリボンの厚さのすべて又は一部分を貫いて延び得る深さを伴って形成することが可能である。型穴は一般に、リボンの外面内に存在する。
【0011】
リボンを通過する型穴(例えば穴)の充填は、リボン及び/又はベースロール上の流出構造によって増強することが可能である。これらの流出構造は、空気が成形の間に型穴から逃げるのを支援する。
【0012】
本発明による成形型ロールの別の利点は、リボンの主要側面における1つ以上の穴又は凹部が、リボンの反対側の主要側面上に形成された穴又は空所と連結されて、単一の穴又は凹部のみでは不可能な形状を有する複合的な型穴が形成され得ることである。
【0013】
成形型ロールの他の利点には、成形型ロールの外表面が損傷するか又は摩耗した場合に、円筒状のベース上のリボンの巻線を交換できることが挙げられるが、これに限定されない。また、これらの成形型ロールは、例えば積み重ねたプレート又は型表面の直接的なドリル加工を用いて成形型ロールを製造するコストと比較して、相対的に安価となり得る。
【0014】
本発明の更に別の利点は、円筒状のベース、特に円筒状のベースロールの熱量と比較して、円筒状のベースの周りに巻き付けられるリボンの熱量が相対的に小さいことである。結果として、型穴に対する熱制御を改善することができ、その結果、成形型ロールを使用して製造される製品の不均一性を、それに応じて改善することができる。
【0015】
本発明に関連して使用するとき、「型穴」は、成型プロセスの間に、成型可能な材料が流れ込むことが可能な滑らかな又は平坦な表面内であればいかなる不連続部であってもよい。本発明のいくつかの実施形態において、成形型ロールは、以下で定義するような高アスペクト比を有する型穴を有してもよいが、型穴が高アスペクト比を有する必要はないことは理解されたい。
【0016】
一態様において、本発明は、円筒状のベースと、第1のリボンとを有し、第1のリボンが、内面と、外面と、それらの間に位置する第1及び第2の主要側面とを有する成形型ロールが提供される。第1のリボンの外面は、その中に形成された複数の凹部又は穴を有し、第1のリボンは、内面がベースロールに近接するように、ベースロールの周りに螺旋コイル状に巻き付けられる。第1のリボンの外面内の複数の凹部又は穴は、複数の独立した型穴を形成し、独立した型穴の各々は、第1のリボンの外面に型開口部を有している。
【0017】
別の態様において、本発明は、円筒状のベースと、第1のリボンとを有し、第1のリボンが、内面と、外面と、それらの間に位置する第1及び第2の主要側面とを有する、成形型ロールが提供される。第1のリボンの外面は、その中に形成された複数の凹部又は穴を有し、第1のリボンは、内面が円筒状のベースに近接するように、円筒状のベースの周りに螺旋コイル状に巻き付けられる。第1のリボンの外面内の複数の凹部又は穴は、複数の独立した型穴を形成し、独立した型穴の各々は、第1のリボンの外面に型開口部を有している。また、成形型ロールは、内面と、外面と、それらの間に位置する第1及び第2の主要側面とを有する第2のリボン又はワイヤを有する。第2のリボン又はワイヤは、第2のリボン又はワイヤの内面が円筒状のベースに近接するように、円筒状のベースの周りに螺旋コイル状に巻き付けられ、第2のリボン又はワイヤは、第1のリボンの隣接する螺旋コイルの間に配置される。第2のリボンの側面及び/又は内面は、その中に形成された流出構造と、流出構造のない表面区域とを有することができる。
【0018】
別の態様において、本発明は、円筒状のベースと、第1のリボンとを有し、第1のリボンが、内面と、外面と、それらの間に位置する第1及び第2の主要側面とを有する成形型ロールを提供する。リボンは、内面がベースに近接するように、ベースの周りに螺旋コイル状に巻き付けられる。また、第1のリボンは、リボンの内面まで外面を貫いて形成された複数の貫通穴を有し、それらの穴の各々は、それらから延びる1つ以上の凹部を有することができる。それらの穴から延びる凹部を有する複数の穴は、複数の複合的な型穴を形成し、複合的な型穴の各々は、リボンの外面に型開口部を有する。
【0019】
別の態様において、本発明は、円筒状のベースと、第1のリボンとを有し、第1のリボンが、内面と、外面と、それらの間に位置する第1及び第2の主要側面とを有する、成形型ロールを提供する。リボンは、内面がベースに近接するように、ベースロールの周りに螺旋コイル状に巻き付けられる。また、第1のリボンは、第1のリボンの外面内に形成された複数の凹部と、リボンの内面まで外面を貫いて形成された複数の穴とを有し、それらの穴の各々は、それから延びる1つ以上の凹部又は第2の穴を有することができる。それらから延びる凹部を有する複数の凹部及び穴は、複数の複合的な型穴を形成し、複合的な型穴の各々は、リボンの外面に型開口部を有する。
【0020】
別の態様において、本発明は、物品上に構造化表面を形成する方法を提供し、その方法は、本発明による成形型ロールを用意する工程と、成形型ロールの外表面を使用して、成形可能な材料を成形型ロールの外表面に接触させる工程であって、それによって構造化表面を形成し、成形可能な材料が、型穴又は複合的な型穴の少なくとも一部を少なくとも部分的に充填する、工程と、構造化表面を成形型ロールの外表面から除去する工程であって、構造化表面が、複数の型穴又は複合的な型穴に対応する複数の突起を有する工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】成形型ロール上の螺旋巻きリボンの斜視図。
【図2】穴を有するリボンの横断面図。
【図3a】穴の形をなす型穴の配列を有するリボンの平面図。
【図3b】凹部の形をなす型穴の配列を有するリボンの平面図。
【図3c】リボンの主軸に対してある角度をなして整列された穴の配列を有するリボンの平面図。
【図3d】穴及び凹部の配列を有するリボンの平面図。
【図3e】大きな穴と小さな穴の配列を有するリボンの平面図。
【図3f】穴の配列の間に散在する細長い凹部を有するリボンの平面図。
【図4】穴の形をなす型穴の配列の間に散在する穴なし領域を有するリボンの平面図。
【図5】螺旋状に巻き付けられたリボンの2つの隣接区間の平面図であり、連続する穴なし領域を形成するように整列された各区間における穴なし領域。
【図6】丸い穴を備える螺旋状に巻き付けられたリボンの2つの区間、及び四角い縁部切り欠きを備えるスペーサワイヤの2つの区間の平面図。
【図7a】様々な設計の穴又は凹部を使用することによって設けることができる様々な型穴を表す斜視図。
【図7b】様々な設計の穴又は凹部を使用することによって設けることができる様々な型穴を表す斜視図。
【図7c】様々な設計の穴又は凹部を使用することによって設けることができる様々な型穴を表す斜視図。
【図7d】様々な設計の穴又は凹部を使用することによって設けることができる様々な型穴を表す斜視図。
【図7e】様々な設計の穴又は凹部を使用することによって設けることができる様々な型穴を表す斜視図。
【図8】本発明のリボン上で使用され得る様々な構造化表面を示すSEM顕微鏡写真。
【図9】本発明のリボン上で使用され得る様々な構造化表面を示すSEM顕微鏡写真。
【図10】本発明のリボン上で使用され得る様々な構造化表面を示すSEM顕微鏡写真。
【図11】本発明のリボン上で使用され得る様々な構造化表面を示す図形。
【図12】本発明のリボン上で使用され得る様々な構造化表面を示す図形。
【図13】本発明のリボン上で使用され得る様々な構造化表面を示す図形。
【図14】本発明のリボン上で使用され得る様々な構造化表面を示す図形。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、成形型ロール、及びその成形型ロールを使用して1つ以上の構造化表面を有する物品を製造する方法を提供する。成形型ロールは、適切な粘度又は成形性の材料と共に使用されると物品上に構造化表面を形成することができる外表面を有している。成形型はロール形式で製造されるため、好都合にも、例えばフィルム、シートなどを形成するために、連続製造プロセスにおいて使用することができる。あるいは、エンボスロール又はその他同種のものとして使用され得る本発明の成形型ロールを使用して、独立した物品が加工されてもよい。
【0023】
本発明の成形型ロールは、外表面内に型穴を有することができ、それらの型穴は、適切な粘度又は成形性の材料と共に使用されると、フィルムの少なくとも1つの表面上に突起又は構造を形成することができる。突起又は構造は、独立することも相互連結することもできる。あるいは、そのような2つのロールを組み合わせて使用して、両方の主要表面が突起又は構造を呈するフィルムを形成することができる。
【0024】
図1〜3は、本発明による成形型ロール10の例示的実施形態を表しており、これらの実施形態は、成形型ロール10の外面22の表面11の中に開口する、独立した型穴30を有している。図2は、図1の成形型ロール10のリボン20の一実施形態の横断面図である。成形型ロール10は好ましくは、円筒状のベースロール12を有しており、このベースロール12の周りに、1つ以上のリボン20が螺旋コイルの形状で巻き付けられて、型穴が中に形成された外面22の表面11を生じている。リボン20は一般に、1mm〜125mm、好ましくは6mm〜25mmの幅13を有する。リボン20の幅は、型の外面の表面11上に所望の型穴を形成するのに十分であるが、リボン20をベースロール12の周りに螺旋状に巻き付けられないほどには広くないものであるべきである。リボン20の幅はまた、リボン20の幅13の厚さ16に対するの比によって特徴付けらることが可能である。最小の比は、2、より好ましくは4、最も好ましくは8となり得る。最大の比は、1000、より好ましくは500、最も好ましくは100となり得る。リボンはまた、0.003〜0.1のリボン幅対ロール直径の比(リボンをロールの周りに巻き付けるための相対力の尺度として役立つ)によって特徴付けることもできる。リボン20の厚さ16は一般に、0.1mm〜5.0mmである。
【0025】
ベースロール12の周りに巻き付けられたリボン20は、限定はしないが、クランプ、溶接、接着剤などを含めた任意の好適な機構によって、定位置に保持されることが可能である。そのような技法は、例えばカーディングロール(carding rolls)の生産において知られている。例えば米国特許第4,272,865号(シュモルケ(Schmolke))を参照されたい。別の実施形態において、リボンは、後にベースロールの上に滑り込ませることができるスリーブを形成するように、円筒状のシェル又はチューブの周りに巻き付けられてもよい。
【0026】
成形型ロール10など、本発明に従って製造された成形型ロールが使用され得る1つの好ましい用途は、高アスペクトトポロジーの(high aspect topology)構造化表面又は突起、好ましくは構造化表面又は突起を有する膜構造の生産にある。突起は、それら突起が形成される元となる型穴と凹凸が逆であり、一般に、独立した型穴から形成された独立した突起である。突起は、高アスペクト比を有してもよく、また、本発明による成形型ロールは、高アスペクト比トポロジーを有する構造化表面の製造において特に有利となり得る。「高アスペクト比」とは、突起の高さ対突起の底部における最小幅の比(h’:w’)が、例えば、少なくとも約2:1以上、より好ましくは約3:1以上、更に好ましくは少なくとも約4:1以上であることを意味する。また、これらの比は、型穴の深さ対成形型ロールの外面における型穴の幅の比(d’:w’)として表現され得る。上で定義した高アスペクト比に加えて、又はそれに代わって、物品の主表面上における突起又は構造の高さh’(又は型穴の深さ)は、例えば、約0.1ミリメートル以上、より好ましくは約0.2ミリメートル以上、更に好ましくは約0.4ミリメートル以上であることが好ましい場合がある。
【0027】
本発明の成形型ロール及び方法によって生産され得る物品は、有利にはメカニカルファスナとして使用されるが、それらの物品には、様々な他の用途を見出すことができ、また、本発明による成形型ロール及び成形型ロールを使用して構造化表面を有する物品を製造する方法は、メカニカルファスナの分野に限定されるべきではない。例えば、本発明による膜などの物品の構造化表面上に形成された突起又は構造は、例えば膜の表面積を増加させることによって接着剤又は他のコーティング/材料を保持する際に、利点をもたらすことができる。また、本発明の成形型ロールによって形成された構造化表面は、流路、抵抗抑制構造、研磨裏材(abrasive backings)など、装飾的な目的にも有用となり得る。様々な用途に対する構造化物品を提供するためにリボン上に設けられ得る例示的な別の構造化表面が、図8〜12に示されている。
【0028】
巻き付けられたリボンが螺旋状をなす性質が、図1に示されている。コイルは、好ましくは、円筒状の成形型ロール10の表面に垂直な基準線に対して螺旋角α(アルファ)をなして向き付けられる。巻き付けられたリボン20が螺旋状をなすという性質の結果、リボン20は、一方の端部から反対側の端部へと円筒状の成形型10の表面全体にわたって進む。螺旋角は、一般に、円筒状の成形型10の直径と共にリボン20の幅13によって指定される(リボン20は、円筒状の成形型ロール10に対して平坦に置かれる)。螺旋角α(アルファ)は、少なくとも0.1度、あるいは少なくとも0.2度、あるいは少なくとも0.4度となり得る。螺旋角は、最大8度、あるいは最大4度、あるいは最大2度となり得る。他の(より大きな又はより小さな)螺旋角が企図されてもよいが、より大きな螺旋角は、ベースロールの成形型表面15とのリボン20の完全な接触を維持しながら得ることがしばしば困難となり、また、より引張り強度の高いリボン材料を必要とすることがある。
【0029】
図示した円筒状の成形型10は、外表面15を有する円筒状のベースロール12を使用して製造され、その外表面15の周りに、型穴30を形成する凹部32又は穴31を有する連続リボン20が設けられている。典型的には、成形型ロール10の製造上での容易性をもたらすために、1列以上(例えば2列以上)の穴又は凹部が、リボンの幅13及び/又は長さ寸法に設けられる。その結果、凹部32又は穴31を有するリボン20が、成形型ロール10の表面15の上に配置される。図1及び2を参照すると、リボン20の内面24は、ベースロール12の周りに巻き付けられ、一方でリボン20の外面22は、ベースロール12の表面15から外向きに面して巻き付けられている。リボン20は、好ましくは、螺旋コイルがベースロール10全体にわたって均一に進行するのに適合する矩形の横断面(図2に示すような)を有していてもよい。
【0030】
リボン20は、リボン20の内面24と外面22との間に延びる2つの主要側面を有している。リボン20は、概ね平坦な主要側面21及び25を有しているが、本発明に関連して使用されるリボンの主要側面は、いかなる好適な形を取ってもよく、ただし、対向する側面は好ましくは、リボン20がそれ自体で巻かれたとき、互いに対をなすか又は鏡像となる。
【0031】
本明細書で使用するとき、「凹部」という用語は、凹部を中に形成された外面22の表面が、凹部のない相補的なロール表面に対して配置された場合に、凹部が、連結した又は非独立の型穴を形成することができるような、外面22の表面における変動として定義される。また、凹部は、独立した型穴を形成するために使用することもできる。例えば、凹部は、リボンの厚さが変動するように材料を変位させかつ/又は除去することによって、外面22の表面11内に形成された独立した又は連続した空所又はくぼみであってもよい。本発明の説明において本明細書で使用される凹部は、一般に、穴と連結されない限り、リボンの反対側の内面24にまで延びることはない。本発明の説明において本明細書で使用する「穴」は、リボンの外面22からリボンの内面24まで延びる空所の通路であり、その通路は、より大きな凹部から若しくはより大きな凹部へと延びてもよく、かつ/又は、穴の中に延びる1つ以上の凹部を有してもよい。穴は、一般に、独立した型穴を形成するが、不規則な又は長円形の形状を有し、リボンの長さ又は幅に沿って延びることができる。
【0032】
図3a及び3bでは、リボン20の外面22上に形成された独立した穴31又は凹部32を有するものとして表されているが、本発明は、外面22と内面24の双方に形成された穴又は凹部を有するリボン20を更に有してもよい。穴又は凹部が内面24上に形成される場合、それらの穴又は凹部は、一般に、外面22上に形成された穴又は凹部に連結され、その結果、連続した型穴30が形成される。結果として得られる型穴30の寸法及び間隔が均一となるように、穴31又は凹部32の各々が同じ寸法のものであり、リボン20の長さに沿って均等に離間されることが、必須ではないが好ましい場合がある。しかしながら、図3eに示す大きな穴31a及び小さな穴31bによって例示されるように、寸法及び/又は間隔が変動する穴又は凹部を設けることもまた可能である。穴又は凹部は、例えば、丸い、四角い、又は細長い(図3fに示す細長い凹部63のような)任意の所望の形状を有することが可能である。また、穴又は凹部(例えば「穴」)の機構は、突出する機構と組み合わされてもよい。特に有用な実施形態において、細長い凹部は、細長い突出する機構(例えば隆起部)に隣接して配置されてもよく、その細長い突起する機構は、弱い領域を設けるのに役立つ場合があり、その弱い領域は、形成された物品がこれらの機構によって定められた線に沿って引き裂かれる機能を付与するのに役立ち得る。
【0033】
型穴(穴、凹部、及びその他同種のもの)は、典型的には、多数の独立した型穴を備える配列として設けられる。図3a、3b,及び3dの実施形態において、独立した型穴は、リボンの主軸に沿って向き付けられた規則的な配列として存在する。別の実施形態において、独立した型穴の配列は、図3cに示すように、リボンの主軸に対して角度β(ベータ)をなして存在することができる。特定の実施形態において、型穴の配列は、リボンが成形型ロール上に存在する螺旋角α(アルファ)に対して、大きさは等しいが向きが反対である角度β(ベータ)をなして整列することができる。したがって、2つの角度は、成形型ロール10の主軸と整列された配列で存在する型穴とは食い違うことになる。その結果、最終製品に形成される機構(例えば、ステム、フック、及びその他同種のもの)は、最終製品の主軸と整列された配列で存在することになる。また、規則的な配列ではなく不規則な又は無秩序なパターンで型穴を設けることも可能である。
【0034】
一般に、リボン20のコイルの外面22は、成形型ロール全体にわたって平坦であるが、図6に示すように、スペーサワイヤ又はリボン39を、隣接するリボンの巻線の第1の主要側面21と第2の主要側面24との間に設けることが可能である。このスペーサワイヤ又はリボンが、リボン20と同じ高さである場合、最終的な成形型ロール10は、相当に滑らかであり、すなわち、スペーサワイヤとリボン20との間に顕著な不連続性を伴うことがない。しかしながら、スペーサワイヤは、リボン20と比べて、より薄いか又はより厚い可能性があり、その結果、リボン20とは異なる高さで設けられ、それによって、製造される物品の表面に構造が付与される。その構造は、例えば、突起部のようなより高い隆起部を強化し得る細長い隆起部の形をなしてもよく、あるいは、最終物品における谷の形をなす隆起部の弱化線であってもよい。図6に示す具体的な実施形態において、スペーサワイヤ39は、縁部切り欠きを中に有していてもよく、その縁部切り欠きは、スペーサワイヤがリボン20の縁部24に対して巻き付けられるとき、型穴61を設けるのに役立つ。そのような型穴は、図6に示すように、リボン内の穴又は凹部によって設けられる穴とは寸法及び形状が異なるものであってもよい。
【0035】
リボン20は、その中に形成された凹部32又は穴31を有しており、ベースロール12の周りに巻き付けられるとき、所望の型穴30を設ける。上で論じたように、成形型ロール10は、好ましくは、概ね矩形の横断面を有するリボン又はストリップを使用して製造され得る。リボン20は、凹部32又は穴31と共に製造することが可能で、また、実質的に均一な側面を有するリボンがまず製造され、次いで、任意の好適な技法によって加工されて、凹部32又は穴31が中に形成され得る。好適な技法には、ローレット切り、型押し、エンボス加工、型彫り、通常の機械加工、ドリル加工、レーザー加工、電子放電加工、ウォータージェット加工、エッチング、フォトリソグラフィなどを挙げることができるが、これらに限定されない。また、そのような方法は、当該技術分野において知られているように、例えば図8〜14に例示した構造体など、他の構造化表面を形成するために使用されてもよい。リボン20は、いかなる好適な材料から製造されてもよいが、いくつかの好ましい材料には、鋼、より好ましくは中程度から低程度の炭素鋼が挙げられる。
【0036】
そのように設けられた独立した型穴30は、成形型ロール10の表面22における開口部からリボンの内面24における型穴の底部まで、深さに沿って実質的に均一な横断面積を有することができる。型穴の底部は、型穴30と円筒状のベースロール12の外表面15とによって形成される。型穴30は、深さdに沿って任意の好適な横断面積を呈することが可能である。図示した独立した型穴30はまた、実質的にロール10の半径に沿って向き付けされているが、以下で論じるように、様々な向き付けが可能である。
【0037】
不均一な形状を有する独立した型穴を形成することが望ましく、例えば、穴がフック又は他の構造の形状で形成される場合、型穴の「底部」は、型穴のうちの、円筒状のベースロールの外表面に最も近接した部分として一般に定義され、図7aの型穴65に示されるような拡大区間64を有する。型穴のこの拡大区間は、例えば、リボン20の内面24上に形成された、より大きな横断面積の凹部と連結する、所与の横断面積の穴を形成するなど、各技法の組み合わせによって形成することができる。様々な例示的な型穴の底部が、好ましくはベースロールによって形成されるが、凹部は、その凹部が形成される表面内に型穴の底部が形成されるように、ベースロールの上方で終端してもよいことを理解されたい。いくつかの例示的な型穴の形状が、図7b〜7eに示されている。
【0038】
本発明に従って製造された成形型ロールは、成形型ロールの少なくとも一部分にわたって1cm当たり少なくとも30以上の型穴の密度を有することができる。成形型ロール10は、1cm当たり少なくとも100以上の独立した型穴の密度を有することが好ましい場合がある。成形型ロール10は、1cm当たり少なくとも500以上の独立した型穴の密度を有することがより好ましい場合がある。
【0039】
成形型の表面における独立した型穴開口部の寸法は、例えばリボンの厚さに比べて、相対的に小さくてもよい。例えば、独立した型穴開口部の接線方向の横断面積は、0.1cm以下、場合によっては0.02m以下、あるいは場合によっては0.01cm以下であってもよい。
【0040】
好ましい円筒状のベースロール12は、好ましくは、厳密に制御された直径を有するように(例えば、最大で0.03mmの直径変動を呈するように)精密成形される。このことが、リボン20の高さ寸法h(例えば厚さ16)が厳密に制御されることと相まって、ロール10の外表面から測定して実質的に均一な深さdを、型穴30に設けることができる。
【0041】
また、型穴30は、アスペクト比の点から特徴付けることもできる。型穴30のアスペクト比は、型穴の最小幅wと比較した深さdに基づいて決まり、その最小幅wは、型穴の開口部においてベースロール12の表面に接する平面内で測定される。換言すれば、型穴30のアスペクト比はd:wであり、成形型ロール10は、高アスペクト比トポロジーを持つ構造化表面を有する物品を製造するために使用されるものであり、この比d:wは、例えば、少なくとも約2:1以上、より好ましくは少なくとも約3:1以上、更に好ましくは少なくとも約4:1以上であることが好ましい場合がある。上で定義した高アスペクト比に加えて、又はそれに代わって、型穴の深さdは、例えば、約0.1ミリメートル以上、より好ましくは約0.2ミリメートル以上、更に好ましくは約0.4ミリメートル以上であることが好ましい場合がある。
【0042】
本発明のもう一つの所望による特徴は、メッキ又は他のコーティングをロール10上に加えることである。コーティングは、成形型ロール10の外表面全体、すなわち型穴30の間、並びに型穴30の内表面上に配置することができる。あるいは、コーティングは、ロール10の外表面上にのみ配置され、型穴30の内表面には存在しないことも可能である。もう1つの別法において、コーティングは、型穴30内にのみ配置され、ロール10の外表面上には配置されないことが可能である。更にもう1つの別法において、第1のコーティングが、型穴30内に配置され、第2のコーティングが、成形型ロール10の外表面上に配置されることが可能である。
【0043】
コーティングは、連続する層に混在された又は添加された1つ以上の材料の混合物であってもよい。コーティング50において使用される材料は、所望の物理特性に応じて異なってもよい。望まれ得るいくつかの物理特性には、向上した耐摩耗性、抑えられた剥離性、抑えられた表面粗さ、隣接するリボンの巻線間の接合性などが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの好ましい材料は、金属メッキ、より好ましくは無電解ニッケルメッキ、クロムなどであり得る。
【0044】
図示した成形型ロール10は好ましくは、1つのリボン20を使用して提供されるが、成形型ロール10は、2つ以上のリボン、又は先に議論したような薄いスペーサワイヤと結合されたリボンを使用して生産され得ることが理解されよう。
【0045】
1つの成形型ロールリボンの変型が図3aに表されており、図3aは1つのリボンの平面図を示し、独立した型穴30(この場合は穴31)が、型穴のない区域を伴うことなく、リボンの全表面にわたって延在している。もう1つの成形型ロールリボンの変型が図3bに表されており、図3bは1つのリボンの平面図を示し、独立した型穴30(この場合は凹部32)が、型穴のない区域を伴うことなく、リボンの全表面にわたって延在している。
【0046】
別の実施形態において、図4のロール成形型リボンは、形成された物品の長手方向に沿って(又はロール成形型の半径に沿って)延びる、型穴30のない領域40を有し、この領域は、取り付け領域、フィンガーリフト(fingerlifts)、又はその他同種のものを作製するために使用することができる。
【0047】
もう1つの成形型ロールリボンの変型が図5に表されており、図5は、螺旋状に巻かれたリボンの2つの隣接区間の平面図を示している。この場合、2つのリボン区間は各々、型穴のない領域41を有しており、この領域41は、形成された物品の横方向に向き付けられた穴なし区間を設けるために、螺旋状に巻かれると、2つの穴なし区間が互いに近接して位置するように配置されているそのような領域は、ここでもまた、取り付け領域、フィンガーリフト、又はその他同種のものを作製するために使用することができる。この特定の構成は、穴なし領域が、穴を備える連続領域によって囲まれた不連続領域として設けられる一般配置の例示的な実施形態である。別の実施形態において、穴を持つ領域は、連続する穴なし領域によって囲まれた不連続領域として存在することができる。そのような配置は、リボンが螺旋状に巻かれると、種々の構造体を持つ(及び/又は構造体を持たない)様々な領域が結合して、所望通りの機構を有する所望の巨視的パターンの領域を形成するように、リボンに付与される構造又は機構を設計することによって達成されてもよい。
【0048】
上記の実施形態において示された凹部及び穴は、対照的な反復するパターンとして表されているが、型穴を形成するために使用される凹部及び穴は、対照的又は非対称的であっても、無規則であっても、順番に又は順不同に反復していても、単一の穴又は凹部から形成されていてもよく、また、複合的な型穴が、2つ以上の凹部及び/又は穴によって形成され得ることを理解されたい。
【0049】
また、本発明は、型穴を形成するために使用されるリボンの表面、一般的にはリボンの内面の表面又はベースロール成形型12の外面15内に形成された放出構造を有してもよい。流出構造は、流体(例えば空気)を型穴からより容易に逃がし、それによって穴の充填を増強することができる。高アスペクト比がなければ充填するのが困難となる高アスペクト比を型穴が有するとき流出構造は、特に有用となることがある。
【0050】
流出構造は、リボンの表面のうちの、穴のない部分のみを占め、穴自体は好ましくは、プロセスの間に流出構造が成形可能な材料によって不必要に充填されることを防ぐために、流出構造を持たないことが好ましい場合がある。
【0051】
ベースロールの周りに巻き付けられたリボン上に流出構造が形成されることに加えて(又はそれに代わって)、リボンが巻き付けられる成形型ロールの表面もまた、空気又は他の流体をプロセスの間に型穴から除去するのを支援するために、流出構造を有することも可能である。ベースロールの表面上の流出構造は、単独で使用されてもよく(リボン上に流出構造を持たない)、型穴は、ベースロール自体の外表面によって形成された底部を有し、それによって、型穴は、ベースロール上の流出構造と流体連通に置かれる。ベースロール上の流出構造は、無秩序に粗面化された表面(例えばエッチング、サンドブラストなどによって形成される)の形態をなすことができる。流出構造は、ベースロールの全表面にわたって延在してもよく、また、選択された領域にのみ設けられてもよい。
【0052】
外表面上に形成された流出構造をベースロールが有することによってもたらされ得る更なる利点は、流出構造が、リボンとベースロールとの間に生じる摩擦力を増加させることによって、リボンを円筒状のベースロールの周りの定位置に保持するのに役立ち得るということである。
【0053】
本発明に関連して使用される流出構造(リボン又はベースロール上)は、当該技術分野において既知の任意の好適な技法、例えば、ローレット切り、型押し、エンボス加工、型彫り、通常の機械加工、レーザー加工、電子放電加工、ウォータージェット加工、エッチング、フォトリソグラフィなどを使用して形成することが可能である。一般に、本発明による流出構造は、流体が2つの対向する表面の間を移動するための経路を設けることができる任意の好適な構造又は表面処理、例えば、チャネル、空所を生じる支持棒(standoffs)、粗面(エッチング、サンドブラストなどによって形成される)、及びそれらの組み合わせによって形成することか可能である。
【0054】
本発明による成形型ロールを製造する方法においては、完成した成形型ロールの直径の制御を改善するために、リボンを巻き付けた後に成形型ロールの外表面を機械加工することが望ましい場合がある。
【0055】
また、例えば巻き付けられたロールのリボンの型押し及び/又は機械加工の後に残るバリを、重炭酸ナトリウム(重曹)又は類似の材料でロールをブラスト処理することによって除去することが望ましい場合がある。また、完成した成形型ロールは、型穴内に、かつ/又は、型穴の間の成形型ロールの外表面上に、所望の表面仕上げをもたらすように加工されてもよい。例えば、成形型ロールの表面を化学的にエッチングするか、サンドブラストするか、メッキするか、コーティングするか、ないしは別の方法で改質することが望ましい場合がある。
【0056】
本発明による成形型ロールが使用され得る1つのプロセスは、高アスペクトトポロジーのフィルムを形成することである。成形型内の型穴の複製である突起を有するフィルムを作製するために、成形可能な材料を、例えば押出し又は注型成形によって成形型ロールの表面に付けることができる。好ましい実施形態において、成形型ロールへの材料の接着力は、成形型ロールからの除去時における材料内の凝集力未満である。成形型ロールへの材料の接着力は、成形型ロールを形成するために使用されるリボンの引張り強度を超えないことが、更に好ましい場合がある。
【0057】
実質的に任意の成形可能な材料を、本発明に関連して使用することが可能である。成形可能な材料は、方向付け可能な熱可塑性樹脂であることが好ましい場合がある。押出し成形され得、かつ有用であることに違いない方向付け可能な熱可塑性樹脂には、ポリ(エチレンテレフタレート)などのポリエステル、ナイロンなどのポリアミド、ポリ(スチレン−アクリロニトリル)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、及び可塑化ポリ塩化ビニルが挙げられる。1つの好ましい熱可塑性樹脂が、コネチカット州ダンベリー(Danbury)のユニオン・カーバイド社(Union Carbide)からSRD7−587として入手可能な、17.5%のポリエチレンを含有し30のメルト・フロー・インデックスを有する、ポロプロピレンとポリエチレンのインパクトコポリマーである。また、熱可塑性樹脂は、ポリエチレンとポリプロピレンのブレンドを含めたブレンド、ポリプロピレン−ポリエチレンコポリマーなどのコポリマーを備えてもよく、また、複数の層として又は交互に並ぶ区域に共押出しされてもよい。また、可塑剤、充填剤、顔料、染料、酸化防止剤、離型剤などの添加剤が、成形可能な材料の中に組み込まれてもよい。
【0058】
1つの好ましいプロセスにおいて、その内容のすべてが引用によって本願に組み込まれる米国特許第6,902,389号において示されているように、材料は、成形型ロールとバックアップロールによって形成されたニップの中に押出しされることによって供給される。バックアップロールは好ましくは、幾分かの圧力を与えて、成形可能な材料を、成形型ロール内に設けられた型穴の中に押し込むのを支援する。あるいは、バックアップロールは、成形材料を成形型ロール内の型穴の中に押し込むのを支援することができる、連続的に移動する表面と、又は移動しない表面(例えばドクターブレード)と、置き換えられてもよい。
【0059】
成形型ロールの内部は、もしなければ型穴を完全に充填する妨げとなり得る空気の除去を支援するために、真空状態になされてもよい。しかしながら、多くの場合、型穴内の空気が、成形型ロールを製造するために使用されたリボンの間に逃げ込むので、真空状態になされることはない。換言すれば、このプロセスは、真空状態でない中で実施されてもよい。
【0060】
また、成形型ロールとバックアップロールの一方又は双方に、何らかの熱制御をもたらすことが望ましい場合がある。プロセス条件、成形可能な材料の温度、成形可能な材料の特性などに応じて、ロールの一方若しくは双方を加熱するか、ロールの一方若しくは双方を冷却するか、又は、ロールの一方を加熱しかつ他方のロールを冷却することが望ましい場合がある。
【0061】
材料が、成形型ロール内の型穴内に押し込まれ、所望の形状を維持できる突起を有するフィルムを形成するように十分に冷却された後、その材料は、更なる加工のために成形型ロールから剥がされるか、フィルムがロール状に巻かれる。例えば、メカニカルファスナストリップが望まれる場合、突起を改良し、接着剤をコーティングし、例えば、米国特許第5,845,375号(ミラー(Miller)ら)、同第5,077,870号(メルビ(Melbye)ら)、PCT国際出願公開第98/57565号、同第98/57564号、同第98/30381号、及び同第98/14086号において論じられているような他の加工を実施するために、フィルムがステーションの内部に導かれ得る。
【0062】
1つ以上の更なる材料を、成形型ロールとバックアップロールとによって形成されたニップの中に導き、所望の付加的な特性をフィルムに設けることが望ましい場合がある。例えば、織布又は不織布ウェブがニップの中に導入され得る。あるいは、フィルムが、1つ以上の付加的な層へと、例えば、熱、接着剤、共押出しなどによって積層されることが可能である。
【0063】
バックアップロールに組み込まれ得るもう1つの所望による特徴は、表面積を増加させるために何らかの構造をロールの表面に付加することである。バックアップロール上の表面積を増加させることにより、フィルム上の表面積を増加させ、それによって、フィルムの裏側に供給されたあらゆる接着剤の接着力を改善することができる。有用な構造の一例は、1インチ当たり約400本(1センチメートル当たり160本)の規模の線状プリズムのマイクロエンボスパターンであり得る。
【0064】
本願において引用されたすべての特許、特許出願、及び公報はそれぞれ、引用によって個別に組み込まれるのと同様に、それらのすべてが引用によって本願に組み込まれる。すべての数値は、「約」という用語で修飾されると仮定されている。本発明の様々な修正形態及び変更形態が、当業者には、本発明の範囲から逸脱することなく明らかとなろう。また、本発明は、本明細書に記載した例示的な実施形態に不当に限定されるべきでないことを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のベースと、
前記円筒状のベースの周りに螺旋状に巻き付けられて取り付けられた第1のリボンとを備え、前記第1のリボンが、第1の外向き面と第2の内向き面と2つの側面とを有し、前記リボンの幅の前記リボンの厚さに対する比が少なくとも2となる幅及び厚さを更に有し、
前記第1の外向き面が、前記第1の面内の複数の凹部又は穴を有し、前記第2の内向き面が、前記円筒状のベースロールに面する、成形型ロール。
【請求項2】
前記リボンの前記幅の前記厚さに対する比が1000未満である、請求項1に記載のロール成形型。
【請求項3】
前記リボンの前記幅の前記厚さに対する比が4〜500である、請求項2に記載のロール成形型。
【請求項4】
前記リボンの前記幅の前記厚さに対する比が8〜100である、請求項2に記載のロール成形型。
【請求項5】
前記リボンの前記幅が1mm〜125mmである、請求項2に記載のロール成形型。
【請求項6】
前記リボンの前記幅が6mm〜25mmである、請求項5に記載のロール成形型。
【請求項7】
前記リボンの前記厚さが0.1mm〜5mmである、請求項5に記載のロール成形型。
【請求項8】
前記リボンが、円筒状のロールの周りに巻き付けられる、請求項5に記載のロール成形型。
【請求項9】
前記コイル又は前記リボンが8度未満の螺旋角で向き付けされるように、前記リボンが巻き付けられる、請求項5に記載のロール成形型。
【請求項10】
前記コイル又は前記リボンが2度未満の螺旋角で向き付けされるように、前記リボンが巻き付けられる、請求項5に記載のロール成形型。
【請求項11】
前記リボンが、独立した凹部又は穴を、少なくとも、独立した型穴を形成する前記リボンの第1の面上に有する、請求項1に記載のロール成形型。
【請求項12】
前記リボンが、前記リボンの前記幅全体にわたって、複数列の独立した型穴を有する、請求項11に記載のロール成形型。
【請求項13】
前記リボンの独立した型穴が、高アスペクト比の突起を規定し、2:1を超える深さ対幅の比(リボンの外面において)を有する、請求項11に記載のロール成形型。
【請求項14】
前記リボンの独立した型穴が、高アスペクト比の突起を規定し、3:1を超える深さ対幅の比(リボンの外面において)を有する、請求項11に記載のロール成形型。
【請求項15】
前記リボンの独立した型穴が、高アスペクト比の突起を規定し、4:1を超える深さ対幅の比(リボンの外面において)を有する、請求項11に記載のロール成形型。
【請求項16】
前記独立した型穴の深さが、0.1mm以上である、請求項13に記載のロール成形型。
【請求項17】
前記独立した型穴の深さが、0.2mm以上である、請求項13に記載のロール成形型。
【請求項18】
前記独立した型穴の深さが、0.4mm以上である、請求項13に記載のロール成形型。
【請求項19】
前記第1のリボンが、隣接する第2のスペーサワイヤ又はリボンと共に巻き付けられる、請求項1に記載のロール成形型。
【請求項20】
前記隣接する第2のスペーサワイヤ又はリボンが、前記第1のリボンとは異なる厚さを有する、請求項19に記載のロール成形型。
【請求項21】
前記独立した型穴が、概ね不均一な形状をなす、請求項11に記載のロール成形型。
【請求項22】
前記独立した型穴が、メカニカルファスナフックの形状を有する、請求項21に記載のロール成形型。
【請求項23】
前記独立した型穴が、前記ロール成形型の少なくとも一部分にわたって、1cm当たり少なくとも30の独立した型穴の密度で設けられる、請求項21に記載のロール成形型。
【請求項24】
前記独立した型穴が、前記ロール成形型の少なくとも一部分にわたって、1cm当たり少なくとも100の独立した型穴の密度で設けられる、請求項21に記載のロール成形型。
【請求項25】
前記独立した型穴が、前記ロール成形型の少なくとも一部分にわたって、1cm当たり少なくとも500の独立した型穴の密度で設けられる、請求項21に記載のロール成形型。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図3e】
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【図3f】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図7d】
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【図7e】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2010−513100(P2010−513100A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543012(P2009−543012)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/085721
【国際公開番号】WO2008/079579
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】