説明

リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物、並びにリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物、その製造方法及び用途

【課題】難燃性、絶縁性及び透明性に優れたリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物及びその原料であるリン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物、並びにかかる重合体含有組成物の製造方法及び用途を提供する。
【解決手段】(ポリ)ホスホン酸基及び/又は(ポリ)リン酸基からなるリン系酸残基を有する(メタ)アクリルアミドと含窒素界面活性剤とを含むリン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物は、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物と良好に相溶し、透明な混合物が得られる。かかる混合物中のリン系酸残基含有(メタ)アクリルアミドとその他のエチレン性不飽和結合含有化合物とを反応させてなるリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物は、難燃性、絶縁性及び透明性に優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性、絶縁性及び透明性に優れたリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物及びその原料であるリン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物、並びにかかる重合体含有組成物の製造方法及び用途に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系樹脂等のエチレン性不飽和結合含有化合物の重合体(ビニル系重合体)は、成形性、絶縁性、透明性等に優れているので、多岐の分野で使用されている。しかしビニル系重合体は容易に燃焼するので、一般的に難燃剤が添加されている。難燃剤としては、優れた難燃性をビニル系重合体に付与するのみならず、火災時やリサイクル処理時に有毒ガスを発生しないようにハロゲンを含まないリン系化合物が好ましい。しかし、リン系化合物をビニル系重合体に練り混んだり、塗布したりしただけでは、リン系化合物のブリードアウトや脱落が生じ、ビニル系重合体に恒久的な難燃性を付与することができなかった。
【0003】
そこで特開2007-106803号(特許文献1)は、恒久的な難燃性を有するビニル系重合体として、下記式(I):
【化1】


(ただしRは水素基又はメチル基である)により表されるN-モノホスホン酸(メタ)アクリルアミドのアミン変性物、及び/又は下記式(II):
【化2】


(ただしRは水素基又はメチル基である)により表されるN, N-ジホスホン酸(メタ)アクリルアミドのアミン変性物と、その他の不飽和化合物((メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸等)との共重合体を提案している。
【0004】
しかしN-モノホスホン酸(メタ)アクリルアミド及びN, N-ジホスホン酸(メタ)アクリルアミドのアミン変性物と、その他の不飽和化合物とを均一に混合するのは容易ではなく、必ずしも透明な共重合体が得られず、特許文献1のビニル系重合体は外観上良好でないことがあった。またN-モノホスホン酸(メタ)アクリルアミド及びN, N-ジホスホン酸(メタ)アクリルアミドは導電性を有し、アミン変性しても良好な絶縁性が得られず、特許文献1のビニル系重合体は絶縁性が要求される用途に適していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-106803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、難燃性、絶縁性及び透明性に優れたリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物及びその原料であるリン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物、並びにかかる重合体含有組成物の製造方法及び用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、(1) リン系酸残基を有する(メタ)アクリルアミド及び含窒素界面活性剤を含む組成物は、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物と良好に相溶して透明な混合物が得られること、及び(2) かかる混合物中のリン系酸残基含有(メタ)アクリルアミドとその他のエチレン性不飽和結合含有化合物とを反応させると、難燃性、絶縁性及び透明性に優れたビニル系重合体含有組成物が得られることを見出し、本発明に想到した。
【0008】
すなわち、本発明のリン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物は、(ポリ)ホスホン酸基及び/又は(ポリ)リン酸基からなるリン系酸残基を有する(メタ)アクリルアミド(A)と、含窒素界面活性剤(B)とを含むものであって、
前記リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド(A)は、式(1):
【化3】


(ただしR1は水素基又はメチル基であり、X1及びX2はそれぞれ独立に(ポリ)ホスホン酸基又は(ポリ)リン酸基である)により表されるN, N-置換(メタ)アクリルアミド、及び式(2):
【化4】


(ただしR1は水素基又はメチル基であり、X3は(ポリ)ホスホン酸基又は(ポリ)リン酸基である)により表されるN-置換(メタ)アクリルアミドのいずれか又はこれらの混合物であり、
前記含窒素界面活性剤(B)は、(ポリ)エーテル基を含有するアミン系界面活性剤、及び四級アンモニウム塩基を含有するカチオン性界面活性剤のいずれか又はこれらの混合物であることを特徴とする。
【0009】
前記(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤は、式(3):
【化5】


[ただしR2は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R3は炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R4は-(R4aO)kH基(R4aは炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である)、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、又は水素基であり、f及びkはそれぞれ独立に1〜30の整数である]により表される第一の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤、及び式(4):
【化6】


[ただしR5は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R6は-(R6aO)sH基(R6aは炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である)、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、又は水素基であり、R7は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R8は炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R9は-(R9aO)tH基(R9aは炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である)、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、又は水素基であり、r、s及びtはそれぞれ独立に1〜30の整数である]により表される第二の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤のいずれか又はこれらの混合物であるのが好ましい。
【0010】
前記カチオン性界面活性剤は、式(5):
【化7】


(ただしR10及びR13はそれぞれ独立に炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R11及びR12はそれぞれ独立に炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、R10〜R13にはいずれも水酸基、エステル結合及びアミノ基からなる群から選ばれた少なくとも一種が結合していてもよく、Y-は対イオンである)により表される第一のカチオン性界面活性剤、式(6):
【化8】



(ただしR14は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、Y-は対イオンである)により表される第二のカチオン性界面活性剤、式(7):
【化9】


(ただしR15は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R16及びR17はそれぞれ独立に炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、R18は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、炭素数6〜30のアリーレン基又は炭素数7〜30のアリーレンアルキル基であり、R15〜R18にはいずれも水酸基、エステル結合及びアミノ基からなる群から選ばれた少なくとも一種が結合していてもよい)により表される第三のカチオン性界面活性剤、及び式(8):
【化10】


(ただしR19は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基である)により表される第四のカチオン性界面活性剤からなる群から選ばれた少なくとも一種であるのが好ましい。
【0011】
前記N, N-置換(メタ)アクリルアミドは、式(1a):
【化11】


(ただしR1は水素基又はメチル基であり、n及びn'はそれぞれ独立に0〜2の整数である)により表されるN, N-ジ(ポリ)ホスホン酸(メタ)アクリルアミドであるのが好ましい。前記N-置換(メタ)アクリルアミドは、式(2a):
【化12】


(ただしR1は水素基又はメチル基であり、mは0〜2の整数である)により表されるN-モノ(ポリ)ホスホン酸(メタ)アクリルアミドであるのが好ましい。
【0012】
前記第一の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤は式(3a):
【化13】


(ただしR2aは炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、f及びkは式(3)と同じである)により表される化合物であるのが好ましい。前記第二の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤は式(4a):
【化14】



(ただしR5aは炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、r、s及びtは式(4)と同じである)により表される化合物であるのが好ましい。
【0013】
前記第一のカチオン性界面活性剤は式(5a):
【化15】


(ただしR10及びY-は式(5)と同じである)により表されるトリメチル型カチオン性界面活性剤、式(5b):
【化16】


(ただしR10及びY-は式(5)と同じであり、R13aは炭素数2〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数8〜30のアリールアルキル基である)により表されるジアルキル型カチオン性界面活性剤、式(5c):
【化17】


(ただしR10及びY-は式(5)と同じである)により表されるベンジル型カチオン性界面活性剤、及び式(5d):
【化18】


(ただしR10a,R13bはそれぞれ独立に炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、Y-は式(5)と同じである)により表されるヒドロキシエステル型カチオン性界面活性剤のいずれか又はこれらの組合せであるのが好ましい。
【0014】
前記第三のカチオン性界面活性剤は式(7a):
【化19】


(ただしR15は式(7)と同じである)により表される化合物であるのが好ましい。
【0015】
前記リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド(A)のリン系酸残基一個に対して、前記含窒素界面活性剤(B)がモル比で0.5〜4配合されているのが好ましい。
【0016】
本発明のリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物は、上記リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物(A+B)と、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物(C)とを含むものであって、
前記その他のエチレン性不飽和結合含有化合物(C)は、分子内に少なくとも一個のエチレン性不飽和結合を有するが酸性基を有しない不飽和化合物(C-1)、及び分子内にエチレン性不飽和結合と酸性基とを各々少なくとも一個有する不飽和化合物(C-2)のいずれか又はこれらの混合物であることを特徴とする。
【0017】
前記酸性基非含有不飽和化合物(c-1)は、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N, N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、スチレン、少なくとも一部の水素基がメチル基で置換されたスチレン、ジビニルベンゼン、脂肪酸ビニルエステル、ハロゲン化ビニル、少なくとも一部の水素基がフッ素基で置換された(メタ)アクリル酸エステル、少なくとも一部の水素基がフッ素基で置換された(メタ)アクリル酸、及び少なくとも一部の水素基がフッ素基で置換されたアルキル基を含有するビニルからなる群から選ばれた少なくとも一種であるのが好ましい。前記酸性基含有不飽和化合物(C-2)は、ターシャリーブチルアクリルアミドスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、p-スチレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸ブチル-4-スルホン酸、(メタ)アクリロオキシベンゼンスルホン酸、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸及びその無水物、フマル酸、イタコン酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及び式(9):
【化20】


(ただしR20は水素基又はメチル基であり、R21は炭素数が2〜4で、直鎖状又は分岐状で、少なくとも一部の水素基が塩素基で置換されていてもよいアルキレン基であり、xは1〜6の整数である)で表される化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種であるのが好ましい。
【0018】
前記リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物(A+B)と、前記その他のエチレン性不飽和結合含有化合物(C)との質量比(A+B)/(C)は、(15/85)〜(60/40)であるのが好ましい。
【0019】
本発明の難燃性樹脂は、上記リン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物からなることを特徴とする。
【0020】
本発明の絶縁性樹脂は、上記リン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物からなることを特徴とする。
【0021】
本発明のリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物の製造方法は、(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド又はこれらの混合物と、リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸及びオキシ塩化リンからなる群から選ばれた少なくとも一種との反応物又はその加水分解物であるリン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド(A)を調製し、これに上記含窒素界面活性剤(B)を混合し、得られた組成物(A+B)と上記その他のエチレン性不飽和結合含有化合物(C)とを反応させることを特徴とする。
【0022】
前記組成物(A+B)と前記(C)とを反応させる方法として、水媒体中で、乳化剤及び重合開始剤を用いた乳化重合を用いるのが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明のリン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物は、リン系酸残基を有する(メタ)アクリルアミドと含窒素界面活性剤とを含むので、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物と良好に相溶し、透明な混合物が得られる。かかる混合物中のリン系酸残基含有(メタ)アクリルアミドとその他のエチレン性不飽和結合含有化合物とを反応させてなる本発明のリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物は、難燃性、絶縁性及び透明性に優れている。このような特性を有するリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物は、難燃性樹脂及び絶縁性樹脂として有用であり、リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物は難燃性及び絶縁性に優れた樹脂の設計に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】アクリルアミドの赤外測定チャートである。
【図2】実施例1のホスホン酸基含有加水分解物の赤外測定チャートである。
【図3】ポリオキシエチレン−ステアリルアミンの赤外測定チャートである。
【図4】実施例1のホスホン酸基含有加水分解物とポリオキシエチレン−ステアリルアミンとの組成物の赤外測定チャートである。
【図5】実施例2のホスホン酸基含有加水分解物の赤外測定チャートである。
【図6】実施例2のホスホン酸基含有加水分解物とポリオキシエチレン−ステアリルアミンとの組成物の赤外測定チャートである。
【図7】テトラデシルジメチルベンジル−アンモニムクロライドの赤外測定チャートである。
【図8】実施例7のホスホン酸基含有加水分解物とテトラデシルジメチルベンジル−アンモニムクロライドとの組成物の赤外測定チャートである。
【図9】実施例8のホスホン酸基含有加水分解物とテトラデシルジメチルベンジル−アンモニムクロライドとの組成物の赤外測定チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[1] リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物
(1) リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド
リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミドは、式(1):
【化21】


(ただしR1は水素基又はメチル基であり、X1及びX2はそれぞれ独立に(ポリ)ホスホン酸基又は(ポリ)リン酸基である)により表されるN, N-置換(メタ)アクリルアミド、及び式(2):
【化22】


(ただしR1は水素基又はメチル基であり、X3は(ポリ)ホスホン酸基又は(ポリ)リン酸基である)により表されるN-置換(メタ)アクリルアミドのいずれか又はこれらの混合物である。混合物の場合、N, N-置換(メタ)アクリルアミドとN-置換(メタ)アクリルアミドとのモル比は(50/50)以上が好ましく、(60/40)以上がより好ましく、(70/30)以上が最も好ましい。
【0026】
N, N-置換(メタ)アクリルアミドとしては、式(1a):
【化23】


(ただしR1は水素基又はメチル基であり、n及びn'はそれぞれ独立に0〜2の整数である)により表されるN, N-ジ(ポリ)ホスホン酸(メタ)アクリルアミドが好ましく、n及びn'が0であるN, N-ジホスホン酸(メタ)アクリルアミドがより好ましい。
【0027】
N-置換(メタ)アクリルアミドとしては、式(2a):
【化24】


(ただしR1は水素基又はメチル基であり、mは0〜2の整数である)により表されるN-モノ(ポリ)ホスホン酸(メタ)アクリルアミドが好ましく、mが0であるN-モノホスホン酸(メタ)アクリルアミドがより好ましい。
【0028】
リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミドは、(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド又はこれらの混合物と、リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸及びオキシ塩化リンからなる群から選ばれた少なくとも一種とを反応させ、必要に応じて加水分解することにより得られる。(メタ)アクリルアミドはアクリルアミド、メタクリルアミド又はこれらの混合物でよい。N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミドは、N-ヒドロキシアクリルアミド、N-ヒドロキシメタクリルアミド又はこれらの混合物でよい。リン酸としては、正リン酸、無水リン酸(五酸化リン=P2O5)又はこれらの混合物でよいが、無水リン酸が好ましい。以下原料として、(メタ)アクリルアミドと無水リン酸を用いる場合について説明する。
【0029】
反応及び加水分解の手順及び条件については、例えばWO2005-080454に記載されているので詳細な説明を省略するが、(メタ)アクリルアミドに対して無水リン酸を反応させ、加水分解すると、(メタ)アクリルアミドと無水リン酸とが1:1のモル比で反応する場合、(メタ)アクリルアミドは、例えば式(10):
【化25】



(ただしR1は水素基又はメチル基である)に示すように、中間生成物としてピロリン酸が(メタ)アクリルアミドにN, N-結合した化合物、及び/又はジピロリン酸を介して2つの(メタ)アクリルアミドが結合した化合物が生成する工程、及び中間生成物が加水分解される工程を経て、N, N-ジホスホン酸(メタ)アクリルアミドになる。
【0030】
また(メタ)アクリルアミドと無水リン酸とが2:1のモル比で反応する場合、(メタ)アクリルアミドは、例えば式(11):
【化26】


(ただしR1は水素基又はメチル基である)に示すように、N-モノホスホン酸(メタ)アクリルアミドになる。
【0031】
その他にも、例えば式(12):
【化27】



(ただしR1は水素基又はメチル基であり、x,x',x'',y,y'及びy''はそれぞれ独立に0〜2の整数である)に示すように、N, N-ジ(ポリ)ホスホン酸(メタ)アクリルアミドやN-モノ(ポリ)ホスホン酸(メタ)アクリルアミドが生成する場合もある。
【0032】
N, N-ジホスホン酸(メタ)アクリルアミドを主に製造する場合、(メタ)アクリルアミドに対する無水リン酸のモル比は0.9〜1.2の範囲とするのが好ましい。N-モノホスホン酸(メタ)アクリルアミドを主に製造する場合、(メタ)アクリルアミドに対する無水リン酸のモル比は0.5〜0.8の範囲とするのが好ましい。
【0033】
N, N-ジホスホン酸(メタ)アクリルアミド及びN-モノホスホン酸(メタ)アクリルアミドはいずれも、ゲル化を伴わずにアクリル酸エステル等と共重合することができる(日本化学会誌、2009年7月号及び9月号の広告欄)。
【0034】
(2) 含窒素界面活性剤
含窒素界面活性剤は、以下の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤及びカチオン性界面活性剤に大別される。
【0035】
(i) (ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤
(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤として以下の第一及び第二の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤が好ましい。第一の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤は式(3):
【化28】


[ただしR2は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R3は炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R4は-(R4aO)kH基(R4aは炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である)、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、又は水素基であり、f及びkはそれぞれ独立に1〜30の整数である]により表される。
【0036】
R2は炭素数10〜25の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であるのが好ましい。R3としてはエチレン基及びプロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。R4としては上記-(R4aO)kH基又は水素基が好ましい。上記-(R4aO)kH基のR4aとしては、エチレン基及びプロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。f及びkはそれぞれ独立に1〜25の整数であるのが好ましい。
【0037】
第一の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤は式(3a):
【化29】


(ただしR2aは炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、f及びkは式(3)と同じである)により表される化合物が最も好ましい。
【0038】
第一の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤の市販品として、ナイミーンL-201,同L-202,同L-207,同F-215,同S-202,同S-204,同S-210,同S-215,同S-220,同O-205,同T2-202,同T2-210,同T2-230(以上日油株式会社製)等が挙げられる。
【0039】
第二の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤は式(4):
【化30】


[ただしR5は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R6は-(R6aO)sH基(R6aは炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である)、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、又は水素基であり、R7は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R8は炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R9は-(R9aO)tH基(R9aは炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である)、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、又は水素基であり、r、s及びtはそれぞれ独立に1〜30の整数である]により表される。
【0040】
R5は炭素数10〜25のアルキル基であるのが好ましい。R6としては上記-(R6aO)sH基又は水素基が好ましい。上記-(R6aO)sH基のR6aとしては、エチレン基及びプロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。R7としてはプロピレン基が好ましい。R8としてはエチレン基及びプロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。R9としては上記-(R9aO)tH基又は水素基が好ましい。上記-(R9aO)tH基のR9aとしては、エチレン基及びプロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。r、s及びtはそれぞれ独立に1〜25の整数であるのが好ましい。
【0041】
第二の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤は式(4a):
【化31】



(ただしR5aは炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、r、s及びtは式(4)と同じである)により表される化合物が最も好ましい。
【0042】
第二の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤の市販品として、ナイミーンDT-203,同L-208(以上日油株式会社製)等が挙げられる。
【0043】
(ii) カチオン性界面活性剤
カチオン性界面活性剤は四級アンモニウム塩基を含有する。カチオン性界面活性剤として、以下の第一〜第四のカチオン性界面活性剤が好ましい。第一のカチオン性界面活性剤は式(5):
【化32】


(ただしR10及びR13はそれぞれ独立に炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R11及びR12はそれぞれ独立に炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、R10〜R13にはいずれも水酸基、エステル結合及びアミノ基からなる群から選ばれた少なくとも一種が結合していてもよく、Y-は対イオンである)により表される。
【0044】
第一のカチオン性界面活性剤としては、式(5a):
【化33】


(ただしR10及びY-は式(5)と同じである)により表されるトリメチル型カチオン性界面活性剤、式(5b):
【化34】


(ただしR10及びY-は式(5)と同じであり、R13aは炭素数2〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数8〜30のアリールアルキル基である)により表されるジアルキル型カチオン性界面活性剤、式(5c):
【化35】


(ただしR10及びY-は式(5)と同じである)により表されるベンジル型カチオン性界面活性剤、及び式(5d):
【化36】


(ただしR10a,R13bはそれぞれ独立に炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、Y-は式(5)と同じである)により表されるヒドロキシエステル型カチオン性界面活性剤が好ましい。
【0045】
対イオンY-としては、ハロゲンイオン(塩素イオン等)、アルキル硫酸イオン(CH3SO4-等)、アルキルもしくはアリールスルホン酸イオン、アルキル亜硫酸イオン、アルキルリン酸イオン等が挙げられる。
【0046】
トリメチル型カチオン性界面活性剤の市販品として、ニッサンカチオンBB,同FB,同FB-500,同PB-40R,同PB-300,同ABT2-500,同AB,同AB-600,同VB-M2フレーク,同VB-F(以上日油株式会社製)等が挙げられる。ジアルキル型カチオン性界面活性剤の市販品として、ニッサンカチオン2-DB-500E,同2-DB-800E,同2ABT,同2-OLR(以上日油株式会社製)等が挙げられる。ベンジル型カチオン性界面活性剤の市販品として、ニッサンカチオンF2-40R,同F2-50R,同M2-100R(以上日油株式会社製)等が挙げられる。ヒドロキシエステル型カチオン性界面活性剤の市販品として、ニッサンカチオンEQ-01D(日油株式会社製)等が挙げられる。
【0047】
第二のカチオン性界面活性剤は式(6):
【化37】



(ただしR14は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、Y-は対イオンである)により表される。Y-は上記と同じでよい。第二のカチオン性界面活性剤の市販品としてニッサンカチオンAR-4(日油株式会社製)等が挙げられる。
【0048】
第三のカチオン性界面活性剤は、式(7):
【化38】


(ただしR15は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R16及びR17はそれぞれ独立に炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、R18は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、炭素数6〜30のアリーレン基又は炭素数7〜30のアリーレンアルキル基であり、R15〜R18にはいずれも水酸基、エステル結合及びアミノ基からなる群から選ばれた少なくとも一種が結合していてもよい)により表される。
【0049】
第三のカチオン性界面活性剤としては、式(7a):
【化39】


(ただしR15は式(7)と同じである)により表される化合物が最も好ましい。
【0050】
第三のカチオン性界面活性剤の市販品として、ニッサンアノンBF,同BL,同BL-SF,同BDL-SF,同BDC-SF,同BDF-SF,同BDF-R(以上日油株式会社製)等が挙げられる。
【0051】
第四のカチオン性界面活性剤は、式(8):
【化40】


(ただしR19は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基である)により表される。第四のカチオン性界面活性剤の市販品としてニッサンアノンGLM-R,同GLM-R-LV(以上日油株式会社製)等が挙げられる。
【0052】
(3) 配合割合
リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミドと含窒素界面活性剤との配合割合について、リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミドのリン系酸残基一個(リン系酸残基一個当たり酸性水酸基を二個以上有する。式(1a)及び(2a)参照)に対して、含窒素界面活性剤がモル比で0.5〜4配合されているのが好ましい。具体的には、N, N-置換(メタ)アクリルアミドは一分子当たりリン系酸残基を二個(酸性水酸基の合計は四個以上)有するので、N, N-置換(メタ)アクリルアミドを100モル%として、含窒素界面活性剤の割合が100〜800モル%であるのが好ましい。N-置換(メタ)アクリルアミドは一分子当たりリン系酸残基を一個有するので、N-置換(メタ)アクリルアミドを100モル%として、含窒素界面活性剤の割合が50〜400モル%であるのが好ましい。リン系酸残基一個に対する含窒素界面活性剤の配合割合を0.5モル比未満とすると、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物との相溶性が悪くなり、ビニル系重合体の透明性が悪化する。一方この割合を4モル比超としても相溶性向上効果が飽和する。この配合割合は1〜3モル比がより好ましく、1〜2モル比が最も好ましい。
【0053】
(4) 調製方法
リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物の調製方法について説明する。リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミドは常温で液体であるので、含窒素界面活性剤が常温で液体である場合、リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミドと含窒素界面活性剤とを混合することにより調製することができる。必要に応じて、加熱してもよいし、溶媒中で混合してもよい。加熱温度は約50℃〜約70℃が好ましい。
【0054】
後述するその他のエチレン性不飽和結合含有化合物、すなわちリン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド又はその含窒素界面活性剤変性物(後述)と共重合してリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物を調製するために用いるエチレン性不飽和結合含有化合物が液状の場合、これを溶媒としてリン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物を調製してもよい。
【0055】
(5) リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物の構造
リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物は、非常に均一で、透明性に優れている。リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物は、(i) リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド及び含窒素界面活性剤の単なる混合物であってもよいし、(ii) リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミドのリン系酸残基中の水酸基の少なくとも一部に、含窒素界面活性剤のアミノ基が反応してなる変性物であってもよいし、(iii) これら(i)及び(ii)の混合物であってもよい。(ii)の変性物は、リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド及び含窒素界面活性剤が、酸・塩基反応して四級アンモニウム塩を形成したものである。含窒素界面活性剤による変性度(リン系酸残基中の水酸基の水素原子が含窒素界面活性剤により置換された度合)は、リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミドと含窒素界面活性剤の配合割合等により変えることができる。
【0056】
以下、(ii)の変性物の構造について説明する。式(1a)に示すN, N-ジ(ポリ)ホスホン酸(メタ)アクリルアミドを用いた場合、得られる(ポリ)ホスホン酸基含有(メタ)アクリルアミドの変性物は式(1b):
【化41】


[ただしR1,n及びn'は式(1)と同じであり、Zはそれぞれ独立に-OH基又は-O-+NR4単位(+NR4はカチオン化した含窒素界面活性剤である)であり、Zのうちの少なくとも一つは-O-+NR4単位である]で表される。式(2a)に示すN-モノ(ポリ)ホスホン酸(メタ)アクリルアミドを用いた場合、得られる(ポリ)ホスホン酸基含有(メタ)アクリルアミドの変性物は式(2b):
【化42】


(ただしR1及びmは式(2)と同じであり、Zは式(1b)と同じであり、Zのうちの少なくとも一つは-O-+NR4単位である)で表される構造を有する。
【0057】
カチオン化した含窒素界面活性剤+NR4は、式(3)に示す第一の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤を用いた場合、式(3b):
【化43】


(ただしR2〜R4及びfは式(3)と同じである)で表され、式(4)に示す第二の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤を用いた場合、式(4b):
【化44】


(ただしR5〜R9及びrは式(4)と同じである)又は式(4c):
【化45】



(ただしR5〜R9及びrは式(4)と同じである)で表され、式(5)に示す第一のカチオン性界面活性剤を用いた場合、式(5e):
【化46】


(ただしR10〜R13は式(5)と同じである)で表され、式(6)に示す第二のカチオン性界面活性剤を用いた場合、式(6a):
【化47】



(ただしR14は式(6)と同じである)で表され、式(7)に示す第三のカチオン性界面活性剤を用いた場合、式(7b):
【化48】



(ただしR15〜R18は式(7)と同じである)で表され、式(8)に示す第四のカチオン性界面活性剤を用いた場合、式(8a):
【化49】


(ただしR19は式(8)と同じである)で表される。
【0058】
[2] リン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物
リン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物は、上記リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物と、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物とを反応させてなり、もってリン系酸残基含有(メタ)アクリルアミドとその他のエチレン性不飽和結合含有化合物との共重合体、及び含窒素界面活性剤を含む。リン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物は、(i) リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド及びその他のエチレン性不飽和結合含有化合物の共重合体と、含窒素界面活性剤との単なる混合物であってもよいし、(ii) 上記のリン系酸残基含有(メタ)アクリルアミドの含窒素界面活性剤による変性物と、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物との共重合体であってもよいし、(iii) これら(i)及び(ii)の混合物であってもよい。リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物が含窒素界面活性剤による変性物である場合、リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド及び含窒素界面活性剤が電気的に結合して四級アンモニウム塩を形成しているので、リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物がその他のエチレン性不飽和結合含有化合物と反応しても含窒素界面活性剤は脱離せず、上記(ii)の共重合体が形成される。
【0059】
その他のエチレン性不飽和結合含有化合物は用途に応じて適宜選択されるが、以下の二群(1) 分子内に少なくとも一個のエチレン性不飽和結合を有するが酸性基を有しない不飽和化合物、及び(2) 分子内にエチレン性不飽和結合と酸性基とを各々少なくとも一個有する不飽和化合物に大別できる。
【0060】
(1) 酸性基を含有しない不飽和化合物
酸性基非含有不飽和化合物としては、常温で気体でない、分子内に少なくとも一個のエチレン性不飽和結合を有する不飽和化合物がすべて対象になるが、中でも(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N, N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、置換又は無置換のスチレン、ジビニルベンゼン、脂肪酸ビニルエステル(酢酸ビニル等)、ハロゲン化ビニル、少なくとも一部の水素基がフッ素基で置換された(メタ)アクリル酸エステル、少なくとも一部の水素基がフッ素基で置換された(メタ)アクリル酸、少なくとも一部の水素基がフッ素基で置換されたアルキル基を含有するビニル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上を併用しても良い。
【0061】
(メタ)アクリル酸エステルとして、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0062】
N, N-ジアルキル(メタ)アクリルアミドとしてはN, N-ジメチル(メタ)アクリルアミドが好ましい。ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとして、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0063】
置換スチレンとして、少なくとも一部の水素基がメチル基で置換されたスチレンが挙げられ、具体的にはα-メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。ハロゲン化ビニルとして、塩化ビニル、フッ化ビニル、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン等が挙げられる。
【0064】
少なくとも一部の水素基がフッ素基で置換された(メタ)アクリル酸エステルとして、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル-α-(トリフルオロメチル)アクリレート等のフルオロ(メタ)アクリル酸エステル等のハイドロフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。少なくとも一部の水素基がフッ素基で置換された(メタ)アクリル酸として、α-(トリフルオロメチル)アクリル酸等のハイドロフルオロアルキル基含有(メタ)アクリル酸が挙げられる。少なくとも一部の水素基がフッ素基で置換されたアルキル基を含有するビニルとして、パーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、パーフルオロデシルエチレン等のパーフルオロアルキル基含有ビニルが挙げられる。
【0065】
(2) 酸性基を含有する不飽和化合物
酸性基としては特に制限されないが、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、アルコール性水酸基等が挙げられる。エチレン性不飽和結合を有する骨格としては、(メタ)アクリレート骨格、(メタ)アリルエステル骨格、置換又は無置換の不飽和脂肪族炭化水素骨格、不飽和基により置換された芳香族炭化水素骨格等を挙げることができる。
【0066】
(i) スルホン酸基を含有する不飽和単量体
スルホン酸基を含有する不飽和単量体としては、例えば特開2004-179154号に記載のものが挙げられる。具体的には、ターシャリーブチルアクリルアミドスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、p-スチレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸ブチル-4-スルホン酸、(メタ)アクリロオキシベンゼンスルホン酸等が好ましい。
【0067】
(ii) カルボン酸基を含有する不飽和単量体
カルボン酸基を含有する不飽和単量体の例示化合物としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸及びその無水物、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。
【0068】
(iii) リン酸基を有する不飽和単量体
リン酸基含有不飽和単量体として、式(9):
【化50】


(ただしR20は水素基又はメチル基であり、R21は炭素数が2〜4で、直鎖状又は分岐状で、少なくとも一部の水素基が塩素基で置換されていてもよいアルキレン基であり、xは1〜6の整数である)により表される化合物が挙げられる。一般式(9)により表されるリン酸基含有不飽和単量体の市販品として、ユニケミカル株式会社製の商品名Phosmer(登録商標)がある。
【0069】
(iv) アルコール性水酸基を含有する不飽和単量体
アルコール性水酸基を含有する不飽和単量体としては、ヘキサメチレンジオールジ(メタ)アクリレート;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0070】
(3) 各不飽和化合物の使用割合
リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物(A+B)と、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物(C)との質量比(A+B)/(C)は特に制限されず、所望の物性に応じて適宜選択すればよい。この質量比は(15/85)〜(60/40)が好ましく、(20/80)〜(60/40)がより好ましい。
【0071】
(4) 調製方法
リン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物は、上記リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物と、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物とを反応させることにより調製する。この反応は、リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド又はその含窒素界面活性剤変性物と、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物との共重合反応である。共重合方法は、公知の乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合及び放射線重合のいずれでもよいが乳化重合が好ましい。重合度は、用途に応じて適宜変えることができる。上記のように、リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物は、非常に均一であるので、これを用いて得られるリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物は、非常に均一で、透明性に優れている。上記のように、リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物の調製時にその他のエチレン性不飽和結合含有化合物を溶媒として用いた場合、リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物の調製に引き続き、重合開始剤を添加して共重合を行うのが好ましい。
【0072】
(i) 乳化重合
乳化重合は、水媒体中で、乳化剤及び重合開始剤を用いてラジカル重合により行う。乳化剤としては公知のものを使用することができる。乳化剤としては、フェノール、クレゾール、ブチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール等のフェノール性水酸基を有する化合物のアルキレンオキシド付加物や、ドデシルベンゼンスルホネート等のアルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。好ましくはポリオキシエチレンノニルフエノールエーテル及びドデシルベンゼンスルホネートである。乳化剤の使用量は、水性樹脂エマルジョンの製造において重合に供される不飽和モノマーの合計量を基準として、3質量%以上であり、好ましくは5〜30質量%である。
【0073】
重合開始剤としては、アンモニウムパーサルフェート(APS)、カリウムパーサルフェート(KPS)、アセチルパーオキサイド、イソプロピルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物系開始剤、2, 2’-アゾビスイソブチロニトリル、2, 2 ’-アゾビス(2, 4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2, 2 ’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ジメチル2, 2 ’-アゾビスイソブチレート等のアゾ系開始剤、あるいはラウリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、tert-ブチルパーオキシ・ピバレート等の過酸化物系開始剤、過酸化水素等が挙げられる。
【0074】
重合手順について述べる。攪拌器、還流冷却器付き反応器に、上記リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物、乳化剤及び水を入れ、脱気した後、添加する重合開始剤の分解温度である40℃〜70℃に昇温する。好ましい重合温度は50℃〜70℃である。所定温度到達直後に重合開始剤を添加する。所定温度に到達してから約1時間間隔で重合開始剤を2〜3回添加した後、10〜24時間程度重合反応を継続する。反応温度は最初から最後まで一定である必要はなく、重合末期に温度を上げて未反応単量体を極力少なくする方法をとってもよい。乳化重合に際して、従来より乳化重合操作に一般的に用いられている各種添加剤や助剤、例えば連鎖移動剤、キレート化剤等を使用することができる。
【0075】
重合溶液は不飽和原料(リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物及びその他のエチレン性不飽和結合含有化合物)の初期固形分濃度が10〜40質量%であるのが好ましい。重合開始剤のトータル使用量は、不飽和原料を100とした場合に質量比で0.1〜5であるのが好ましい。
【0076】
得られたポリマーエマルジョンを冷却した後、多量の貧溶媒中に混入してビニル系重合体を分離し、金網等を用いてろ過し、ビニル系重合体を回収する。ビニル系重合体は貧溶媒を用いて洗浄するのが好ましい。貧溶媒としてメタノール等が挙げられる。
【0077】
(ii) 懸濁重合
懸濁重合は、乳化剤を使用しないで、水媒体中で上記重合開始剤を用いたラジカル重合を行う以外乳化重合と同じでよい。ただし懸濁重合には、ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーからなる懸濁剤を用いるのが好ましい。
【0078】
(iii) 溶液重合
溶液重合は、上記リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物及びその他のエチレン性不飽和結合含有化合物の双方が溶解する共通溶媒中で、乳化剤を使用しないで、上記重合開始剤を用いたラジカル重合を行う以外、乳化重合と同じでよい。
【0079】
(iv) 塊状重合
塊状重合は、溶媒及び乳化剤を使用しないで、上記重合開始剤を用いたラジカル重合を行う以外、乳化重合と同じでよい。
【0080】
(v) 放射線重合
放射線としては紫外線が好ましい。紫外線重合による樹脂膜の製造方法は、上記リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物及び光重合開始剤(光増感剤)を含有する組成物を、これが付着しない材料(フッ素系重合体等)により被覆された板に流延し、紫外線透過性板で覆った後、紫外線を照射することにより重合させるものである。光重合開始剤として、2, 2-ジメトキシ-1, 2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン等が挙げられる。光重合開始剤の使用量は上記リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物及びその他のエチレン性不飽和結合含有化合物の合計質量に対して、0.005〜10質量%の範囲が好ましい。紫外線照射強度は5〜150 mW/cm2が好ましく、照射時間は1〜15分間が好ましい。
【0081】
(5) 特性及び用途
リン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物は優れた難燃性、絶縁性、透明性、接着性及び耐溶剤性を有する。具体的には、リン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物をガスバーナーの先端に設置し、炎に2秒間以上曝しても炭化するのみか、着火した場合でも自己消化性を有する。その表面固有抵抗は相対湿度50〜75%/室温の条件下で1×1014Ω以上である。また透明性が高く、屈折率にムラがない。よってリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物は、難燃性樹脂及び絶縁性樹脂として有用である。リン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物は、射出成形、押し出し成形、プレス成形等を用いて任意の形状に成形することができる。
【0082】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0083】
実施例1
(1) ホスホン酸基含有アクリルアミドの調製
WO2005-080454の実施例4と同様にして、アクリルアミド及び無水リン酸を用いてホスホン酸基を有する加水分解物を調製した。この加水分解物を含む反応溶液に貧溶媒を添加し、濾別した加水分解物を100℃で1時間加熱乾燥した。
【0084】
(2) 酸価の測定
ホスホン酸基含有加水分解物の酸価を、1規定KOHを用いて測定した結果、892 mg/gであった(N, N-ジホスホン酸アクリルアミドの理論酸価:969.7 mg/g、N-モノホスホン酸アクリルアミドの理論酸価:741.7 mg/g)。
【0085】
(3) 元素分析
ホスホン酸基含有加水分解物の窒素含有量をCHNコーダ法により測定し、リン含有量をICP発光分光分析法により測定し、窒素とリンの質量比を求めた結果、1:4.4であり、N, N-ジホスホン酸アクリルアミドにおける理論比と同じであった。
【0086】
(4) 赤外スペクトル測定
アクリルアミド及びホスホン酸基含有加水分解物について、フーリエ変換赤外分光装置(形式:IRPrestige-21、株式会社島津製作所製)を用いて、赤外スペクトル測定を行った。結果を図1及び図2に示す。アクリルアミドでは、3,160 cm-1付近及び3,340 cm-1付近にN-H結合による鋭いピークが検出された(図1)。一方、ホスホン酸基含有加水分解物では、N-H結合によるピークは3,210 cm-1付近及び3,360 cm-1付近に僅かに検出されたのみであった(図2)。またホスホン酸基含有加水分解物では、1,010 cm-1を頂点として、700〜1,300 cm-1の範囲に、ホスホン酸基による幅広いピークが検出された(図2)。これらのことから、大部分のアクリルアミドの窒素原子に、2つのホスホン酸基が導入されたことが確認された。
【0087】
酸価の測定、元素分析及び赤外スペクトル測定の結果から、ホスホン酸基含有加水分解物は、N, N-ジホスホン酸アクリルアミド及びN-モノホスホン酸アクリルアミドを含み、N, N-ジホスホン酸アクリルアミドを主成分とする組成物であることが確認された。
【0088】
(5) 組成物の調製
ホスホン酸基含有加水分解物及びポリオキシエチレン−ステアリルアミン(商品名「ナイミーンS-210」、純度100%、日油株式会社製、上記式(3a)におけるf及びkの合計:10、分子量709)を、モル比が1:3となるように混合し[ホスホン酸基含有加水分解物は、N, N-ジホスホン酸アクリルアミド(分子量231)100モル%からなるものとしてモル数を算出]、60℃で30分間撹拌すると透明な組成物が得られた。
【0089】
(6) 赤外スペクトル測定
ポリオキシエチレン−ステアリルアミン及び上記組成物について、赤外スペクトル測定を行った。結果を図3及び図4に示す。ポリオキシエチレン−ステアリルアミンでは、1,123 cm-1付近にエーテル鎖によるピークが検出され、2,855 cm-1付近及び2,924 cm-1付近にステアリル基によるピークが検出されたが(図3)、組成物では、これらのピーク以外に1,678 cm-1付近にN, N-ジホスホン酸アクリルアミドの炭素−酸素二重結合及び/又は炭素−炭素二重結合によるピークが検出された。しかし、組成物ではホスホン酸基の1,010 cm-1付近のピーク(図2参照)が検出されず、このピークはシフトしてエーテル鎖のピーク(1,123 cm-1付近)と重なっていると考えられる。このピークシフトから、組成物は、ホスホン酸基含有加水分解物のホスホン酸基とポリオキシエチレン−ステアリルアミンのアミノ基とが酸・塩基反応した変性物であると考えられる。
【0090】
実施例2
(1) ホスホン酸基含有アクリルアミドの調製
WO2005-080454の実施例1と同様にして、アクリルアミド及び無水リン酸を用いてホスホン酸基を有する加水分解物を調製した。この加水分解物を含む反応溶液に貧溶媒を添加し、分液ロートにより分離した加水分解物を100℃で1時間加熱乾燥した。
【0091】
(2) 酸価の測定
ホスホン酸基含有加水分解物の酸価を、1規定KOHを用いて測定した結果、674 mg/gであり、加水分解物の主成分はN-モノホスホン酸アクリルアミド(理論酸価:741.7 mg/g)であることが確認された。
【0092】
(3) 赤外スペクトル測定
ホスホン酸基含有加水分解物について、フーリエ変換赤外分光装置を用いて、赤外スペクトル測定を行った。結果を図5に示す。3,210 cm-1付近及び3,350 cm-1付近にN-H結合によるピークが検出されるとともに、984 cm-1を頂点として、700〜1,300 cm-1の範囲に、ホスホン酸基による幅広いピークが検出された。これらのことからも、加水分解物の主成分はN-モノホスホン酸アクリルアミドであることが確認された。
【0093】
(4) 組成物の調製
ホスホン酸基含有加水分解物及びポリオキシエチレン−ステアリルアミン(ナイミーンS-210、純度100%)を、モル比が1:1.5となるように混合し[ホスホン酸基含有加水分解物はN-モノホスホン酸アクリルアミド100モル%からなるものとしてモル数を算出]、60℃で30分間撹拌すると透明な組成物が得られた。
【0094】
(5) 赤外スペクトル測定
上記組成物について、赤外スペクトル測定を行った。結果を図6に示す。組成物では、エーテル鎖によるピーク(1,123 cm-1付近)及びステアリル基によるピーク(2,855 cm-1付近及び2,924 cm-1付近)以外に1,680 cm-1付近にN-モノホスホン酸アクリルアミドの炭素−酸素二重結合及び/又は炭素−炭素二重結合によるピークが検出された。しかし、この組成物でもホスホン酸基の984 cm-1付近のピーク(図5参照)が検出されず、このピークはシフトしてエーテル鎖のピーク(1,123 cm-1付近)と重なっていると考えられる。このピークシフトから、組成物は、ホスホン酸基含有加水分解物のホスホン酸基とポリオキシエチレン−ステアリルアミンのアミノ基とが酸・塩基反応した変性物であると考えられる。
【0095】
赤外スペクトル測定を5回行い、エーテル鎖に帰属する1,123 cm-1のピークの強度I1123と、炭素−酸素二重結合及び/又は炭素−炭素二重結合に帰属する1,680cm-1のピークの強度I1680との比I1123/I1680を、実施例1及び2の組成物についてそれぞれ求め、平均した結果、実施例1の組成物では4.9であり、実施例2の組成物では2.5であった。またステアリル基に帰属する2,924 cm-1のピークの強度I2924と、上記ピーク強度I1680との比I2924/I1680を、実施例1及び2の各々の組成物について求め、平均した結果、実施例1の組成物では6.4であり、実施例2の組成物では3.2であった。これらのことから、実施例1の組成物は、実施例2の組成物のほぼ2倍のポリオキシエチレン−ステアリルアミンを含むことが分かり、仕込み比と一致した。
【0096】
実施例3
ポリオキシエチレン−ステアリルアミンとしてナイミーンS-204(日油株式会社製、上記式(3a)におけるf及びkの合計:4、分子量445)を用いた以外実施例1と同様にして組成物を調製した。
【0097】
実施例4
ポリオキシエチレン−ステアリルアミンとしてナイミーンS-202(日油株式会社製、上記式(3a)におけるf及びkの合計:2、分子量357)を用いた以外実施例1と同様にして組成物を調製した。
【0098】
実施例5
ポリオキシエチレン−ステアリルアミンとしてナイミーンS-204(日油株式会社製)を用いた以外実施例2と同様にして組成物を調製した。
【0099】
実施例6
ポリオキシエチレン−ステアリルアミンとしてナイミーンS-202(日油株式会社製)を用いた以外実施例2と同様にして組成物を調製した。
【0100】
実施例7
実施例1と同様にして、N, N-ジホスホン酸アクリルアミドを主成分とするホスホン酸基含有加水分解物を調製した。ホスホン酸基含有加水分解物に、テトラデシルジメチルベンジル−アンモニムクロライド(商品名「ニッサンカチオンM2-100R」、日油株式会社製)を、モル比が1:3となるように(ホスホン酸基含有加水分解物は、N, N-ジホスホン酸アクリルアミド100モル%からなるものとしてとしてモル数を算出)、2-プロピルアルコールに入れ(固形分濃度10質量%)、室温で30分間攪拌した。得られた反応溶液を100℃で1時間加熱乾燥すると、透明な組成物が得られた。
【0101】
テトラデシルジメチルベンジル−アンモニムクロライド及び上記組成物について、赤外スペクトル測定を行った。結果を図7及び図8に示す。テトラデシルジメチルベンジル−アンモニムクロライドでは、720 cm-1付近及び1,610 cm-1付近にベンゼン環に帰属するピークが検出され、2,853 cm-1付近及び2,922 cm-1付近にテトラデシル基及びメチル基に帰属するピークが検出され、3,380 cm-1付近及び3,450 cm-1付近にN-H結合によるピークが検出された(図7)。上記組成物では、これらのピーク以外に1,676 cm-1付近にN, N-ジホスホン酸アクリルアミドの炭素−酸素二重結合及び/又は炭素−炭素二重結合によるピークが検出され、また995 cm-1を頂点として、800〜1,300 cm-1の範囲に、ホスホン酸基による幅広いピークが検出された(図8)。N-H結合によるピークが3,380 cm-1付近及び3,450 cm-1付近(図7参照)から3,340 cm-1付近及び3,430 cm-1付近にシフトし、ホスホン酸基のピークが1,010 cm-1(図2参照)から995 cm-1にシフトしていることから、組成物は、ホスホン酸基含有加水分解物のホスホン酸基とテトラデシルジメチルベンジル−アンモニムクロライドのアミノ基とが酸・塩基反応した変性物であると考えられる。
【0102】
実施例8
実施例2と同様にして、N-モノホスホン酸アクリルアミドを主成分とするホスホン酸基含有加水分解物を調製した。ホスホン酸基含有加水分解物及びテトラデシルジメチルベンジル−アンモニムクロライド(ニッサンカチオンM2-100R、分子量366)を、モル比が1:1.5となるように(ホスホン酸基含有加水分解物はN-モノホスホン酸アクリルアミド100モル%からなるものとしてモル数を算出)、2-プロピルアルコールに入れ(固形分濃度10質量%)、室温で30分間攪拌した。得られた反応溶液を60℃で15時間加熱乾燥すると、透明な組成物が得られた。
【0103】
上記組成物について、赤外スペクトル測定を行った。結果を図9に示す。ベンゼン環に帰属するピーク(720 cm-1付近)並びにテトラデシル基及びメチル基に帰属するピーク(2,853 cm-1付近及び2,922 cm-1付近)以外に、1,678 cm-1付近にN-モノホスホン酸アクリルアミドの炭素−酸素二重結合及び/又は炭素−炭素二重結合によるピークが検出された。また997 cm-1を頂点として、800〜1,300 cm-1の範囲に、ホスホン酸基による幅広いピークが検出された。ホスホン酸基のピークが984 cm-1(図5)から997 cm-1にシフトしていることから、組成物は、ホスホン酸基含有加水分解物のホスホン酸基とテトラデシルジメチルベンジル−アンモニムクロライドのアミノ基とが酸・塩基反応した変性物であると考えられる。
【0104】
赤外スペクトル測定を5回行い、テトラデシル基に帰属する2,924 cm-1のピークの強度I2924と、炭素−酸素二重結合及び/又は炭素−炭素二重結合に帰属するピーク強度I1680との比I2924/I1680を、実施例7及び8の組成物についてそれぞれ求め、平均した結果、実施例7の組成物では12.1であり、実施例8の組成物では7.6であった。これらのことから、実施例7の組成物は、実施例8の組成物の1.6倍のポリオキシエチレン−ステアリルアミンを含むことが分かり、仕込み比とほぼ一致した。
【0105】
比較例1
ポリオキシエチレン−ステアリルアミンに替えて、ステアリルアミンを用いた以外実施例1と同様にして組成物を調製した。
【0106】
比較例2
ポリオキシエチレン−ステアリルアミンに替えて、オレイルアミンを用いた以外実施例1と同様にして組成物を調製した。
【0107】
比較例3
ポリオキシエチレン−ステアリルアミンに替えて、ステアリルアミンを用いた以外実施例2と同様にして組成物を調製した。
【0108】
比較例4
ポリオキシエチレン−ステアリルアミンに替えて、オレイルアミンを用いた以外実施例2と同様にして組成物を調製した。
【0109】
相溶性評価
実施例1〜8及び比較例1〜4で得られた組成物と、スチレンモノマー、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート及び2-エチルヘキシルアクリレートのそれぞれとを等質量で混合し、攪拌した後、目視により相溶性を評価した。相溶性は以下の基準により判定した。結果を表1に示す。
◎:室温で透明な混合物が得られた。
○:60℃で加熱すると、透明な混合物が得られた。
×:白濁した混合物しか得られなかった。
【0110】
【表1】

【0111】
表1(続き)

【0112】
表1(続き)

【0113】
注:(1) N, N-ジホスホン酸アクリルアミドを主成分とする組成物。
(2) ポリオキシエチレン−ステアリルアミン(商品名「ナイミーンS-210」、日油株式会社製)。
(3) N-モノホスホン酸アクリルアミドを主成分とする組成物。
(4) ポリオキシエチレン−ステアリルアミン(商品名「ナイミーンS-204」、日油株式会社製)。
(5) ポリオキシエチレン−ステアリルアミン(商品名「ナイミーンS-202」、日油株式会社製)。
(6) テトラデシルジメチルベンジル−アンモニムクロライド(商品名「ニッサンカチオンM2-100R」、日油株式会社製)。
(7) ステアリルアミン
(8) オレイルアミン
【0114】
表1から、実施例1〜8の組成物はいずれも、スチレンモノマー及びアルキルアクリレートに対して優れた相溶性を有することが分かった。これに対して、比較例1〜4では、オキシアルキレン基又はカチオン性基を有さない界面活性剤を用いたので、実施例1〜8に比較して、スチレンモノマー及びアルキルアクリレートに対する相溶性に劣っていた。
【0115】
実施例9
還流冷却管、触媒投入口等を有する自動合成反応装置に、実施例1で調製したホスホン酸基含有アクリルアミド含有組成物(変性物)20質量部、メチルメタクリレート20質量部、及びイオン交換水60質量部を入れ、窒素ガスを導入しながら攪拌し、60℃まで昇温した後、ホスホン酸基含有アクリルアミド含有組成物及びメチルメタクリレートの合計を100質量%として10質量%のポリオキシエチレンノニルフエノールエーテル及び4質量%のアンモニウムパーサルフェートを添加した。その後22時間60〜65℃に保持して乳化重合し、ホスホン酸基含有アクリルアミド含有組成物(変性物)及びメチルメタクリレートを共重合してなるビニル系重合体を含むエマルジョンを得た。このエマルジョンを冷却し、エマルジョンの5倍重量部のメタノールを加え、撹拌した後、金網を用いてろ過し、固形分を回収し、イオン交換水を用いて洗浄した後、60℃で15時間乾燥することにより、ビニル系重合体を調製した。
【0116】
実施例10
ホスホン酸基含有アクリルアミド含有組成物及びメチルメタクリレートの配合割合をそれぞれ13.3質量部及び26.7質量部とした以外実施例9と同様にして、ビニル系重合体を調製した。
【0117】
実施例11
上記自動合成反応装置に、実施例2で調製したホスホン酸基含有アクリルアミド含有組成物15質量部、メチルメタクリレート15質量部、及びイオン交換水70質量部を入れ、アンモニウムパーサルフェートの添加量を5質量%とした以外実施例9と同様にして、ビニル系重合体を調製した。このビニル系重合体のリン含有量(JIS K0102に準拠して測定)は0.97質量%であった(理論値:1.3質量%)。
【0118】
実施例12
ホスホン酸基含有アクリルアミド含有組成物及びメチルメタクリレートの配合割合をそれぞれ10質量部及び20質量部とした以外実施例11と同様にして、ビニル系重合体を調製した。このビニル系重合体のリン含有量は0.75質量%であった(理論値:0.86質量%)。
【0119】
実施例13
ホスホン酸基含有アクリルアミド含有組成物及びメチルメタクリレートの配合割合をそれぞれ6質量部及び24質量部とした以外実施例11と同様にして、ビニル系重合体を調製した。このビニル系重合体のリン含有量は0.59質量%であった(理論値:0.52質量%)。
【0120】
比較例6
ホスホン酸基含有アクリルアミド含有組成物及びメチルメタクリレートの配合割合をそれぞれ5.7質量部及び34.3質量部とした以外実施例9と同様にして、ビニル系重合体を調製した。
【0121】
比較例7
ホスホン酸基含有アクリルアミド含有組成物及びメチルメタクリレートの配合割合をそれぞれ4.3質量部及び25.7質量部とした以外実施例11と同様にして、ビニル系重合体を調製した。このビニル系重合体のリン含有量は0.43質量%であった(理論値:0.37質量%)。
【0122】
実施例9〜13並びに比較例6及び7で得られたビニル系重合体について、以下の方法により、難燃性及び透明性を評価した。結果を表2に示す。
【0123】
(1) 難燃性
ビニル系重合体をガスバーナーの先端に設置し、炎に2秒間曝し、自己消火性を調べることにより難燃性を評価した(検体数:3個)。自己消火性は以下の基準により判定した。
○:自己消火性があった。
×:自己消火性がなかった。
【0124】
(2) 透明性
目視により判定。透明性は以下の基準により判定した。
○:透明である。
×:白濁している。
【0125】
【表2】

【0126】
表2(続き)

【0127】
注:(1) N, N-ジホスホン酸アクリルアミドを主成分とする組成物。
(2) ポリオキシエチレン−ステアリルアミン(商品名「ナイミーンS-210」、日油株式会社製)。
(3) メチルメタクリレート。
(4) N-モノホスホン酸アクリルアミドを主成分とする組成物。
【0128】
表2から明らかなように、実施例9〜13のビニル系重合体は、難燃性及び透明性に優れていた。これに対して、比較例6及び7では、ホスホン酸基含有アクリルアミド含有組成物とその他のエチレン性不飽和結合含有化合物とのモル比を1/6としたので、実施例9〜13に比較して難燃性に劣っていた。
【0129】
実施例14
還流冷却管、触媒投入口等を有する自動合成反応装置に、実施例1で調製したホスホン酸基含有アクリルアミド含有組成物25質量部、2-エチルヘキシルアクリレート25質量部、及びイオン交換水50質量部を入れ、窒素ガスを導入しながら攪拌し、60℃まで昇温した後、ホスホン酸基含有アクリルアミド含有組成物及び2-エチルヘキシルアクリレートの合計を100質量%として12.6質量%のドデシルベンゼンスルホネート及び2質量%のアンモニウムパーサルフェートを添加した。その後22時間60〜65℃に保持して乳化重合し、ホスホン酸基含有アクリルアミド含有組成物(変性物)及びメチルメタクリレートを共重合してなるビニル系重合体を含むエマルジョンを得た。このエマルジョンを冷却し、エマルジョンの5倍重量部のメタノールを加え、撹拌した後、金網を用いてろ過し、固形分を回収し、イオン交換水を用いて洗浄した後、60℃で15時間乾燥することにより、ビニル系重合体を調製した(収率49%)。
【0130】
実施例15
実施例1で調製したホスホン酸基含有アクリルアミド含有組成物に代えて、実施例2で調製した組成物を用いた以外実施例14と同様にして、ビニル系重合体を調製した(収率34%)。
【0131】
実施例16
2-エチルヘキシルアクリレートに代えてブチルアクリレートを用いた以外実施例14と同様にして、ビニル系重合体を調製した(収率68%)。
【0132】
実施例17
2-エチルヘキシルアクリレートに代えてブチルアクリレートを用いた以外実施例15と同様にして、ビニル系重合体を調製した(収率70%)。
【0133】
比較例8
溶質として50質量部の2-エチルヘキシルアクリレートのみを用いた実施例14と同様にして、ビニル系重合体を調製した(収率91%)。
【0134】
比較例9
溶質として50質量部のブチルアクリレートのみを用いた実施例14と同様にして、ビニル系重合体を調製した(収率64%)。
【0135】
実施例14〜17並びに比較例8及び9で得られたビニル系重合体について、以下の方法により、絶縁性、透明性及び耐溶剤性を評価した(透明性の評価基準は上記と同じ)。結果を表3に示す。
【0136】
(1) 絶縁性
相対湿度60%/室温の条件下で、表面固有抵抗測定器(東亜電波工業株式会社製 SME-8310)により表面固有抵抗を測定することにより絶縁性を評価した。
【0137】
(2) 耐溶剤性
10質量部のビニル系重合体を、90質量部のテトラヒドロフランに入れ、60分間攪拌した後、ビニル系重合体の状態を観察し、以下の基準により耐溶剤性を判定した。
○:膨潤したが、全く溶解しなかった。
△:膨潤し、一部が溶解した。
×:完全に溶解した。
【0138】
【表3】

【0139】
表3(続き)

【0140】
注:(1) N, N-ジホスホン酸アクリルアミドを主成分とする組成物。
(2) ポリオキシエチレン−ステアリルアミン(商品名「ナイミーンS-210」、日油株式会社製)。
(3) 2-エチルヘキシルアクリレート。
(4) N-モノホスホン酸アクリルアミドを主成分とする組成物。
(5) ブチルアクリレート。
【0141】
表3から明らかなように、実施例14及び16のビニル系重合体は、表面固有抵抗が1×1014 Ω以上であり、本発明のビニル系重合体は、絶縁性にも優れていることが分かる。また実施例15及び17より、N-モノホスホン酸アクリルアミドを主成分とする組成物を用いたビニル系重合体は、耐溶剤性に優れていた。これに対して、比較例8及び9では、ホスホン酸基含有アクリルアミド含有組成物を用いず、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物のみを重合したので、実施例14〜17に比較して絶縁性及び耐溶剤性に劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(ポリ)ホスホン酸基及び/又は(ポリ)リン酸基からなるリン系酸残基を有する(メタ)アクリルアミド(A)と、含窒素界面活性剤(B)とを含むリン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物であって、
前記リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド(A)は、式(1):
【化1】


(ただしR1は水素基又はメチル基であり、X1及びX2はそれぞれ独立に(ポリ)ホスホン酸基又は(ポリ)リン酸基である)により表されるN, N-置換(メタ)アクリルアミド、及び式(2):
【化2】


(ただしR1は水素基又はメチル基であり、X3は(ポリ)ホスホン酸基又は(ポリ)リン酸基である)により表されるN-置換(メタ)アクリルアミドのいずれか又はこれらの混合物であり、
前記含窒素界面活性剤(B)は、(ポリ)エーテル基を含有するアミン系界面活性剤、及び四級アンモニウム塩基を含有するカチオン性界面活性剤のいずれか又はこれらの混合物であることを特徴とするリン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のリン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物において、
前記(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤が、式(3):
【化3】


[ただしR2は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R3は炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R4は-(R4aO)kH基(R4aは炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である)、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、又は水素基であり、f及びkはそれぞれ独立に1〜30の整数である]により表される第一の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤、及び式(4):
【化4】


[ただしR5は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R6は-(R6aO)sH基(R6aは炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である)、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、又は水素基であり、R7は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R8は炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R9は-(R9aO)tH基(R9aは炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である)、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、又は水素基であり、r、s及びtはそれぞれ独立に1〜30の整数である]により表される第二の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤のいずれか又はこれらの混合物であり、
前記カチオン性界面活性剤が、式(5):
【化5】


(ただしR10及びR13はそれぞれ独立に炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R11及びR12はそれぞれ独立に炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、R10〜R13にはいずれも水酸基、エステル結合及びアミノ基からなる群から選ばれた少なくとも一種が結合していてもよく、Y-は対イオンである)により表される第一のカチオン性界面活性剤、式(6):
【化6】



(ただしR14は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、Y-は対イオンである)により表される第二のカチオン性界面活性剤、式(7):
【化7】


(ただしR15は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R16及びR17はそれぞれ独立に炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、R18は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、炭素数6〜30のアリーレン基又は炭素数7〜30のアリーレンアルキル基であり、R15〜R18にはいずれも水酸基、エステル結合及びアミノ基からなる群から選ばれた少なくとも一種が結合していてもよい)により表される第三のカチオン性界面活性剤、及び式(8):
【化8】


(ただしR19は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基である)により表される第四のカチオン性界面活性剤からなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とするリン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のリン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物において、前記N, N-置換(メタ)アクリルアミドが、式(1a):
【化9】


(ただしR1は水素基又はメチル基であり、n及びn'はそれぞれ独立に0〜2の整数である)により表されるN, N-ジ(ポリ)ホスホン酸(メタ)アクリルアミドであり、前記N-置換(メタ)アクリルアミドが、式(2a):
【化10】


(ただしR1は水素基又はメチル基であり、mは0〜2の整数である)により表されるN-モノ(ポリ)ホスホン酸(メタ)アクリルアミドであることを特徴とするリン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のリン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物において、前記第一の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤が式(3a):
【化11】


(ただしR2aは炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、f及びkは式(3)と同じである)により表される化合物であり、前記第二の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤が式(4a):
【化12】


(ただしR5aは炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、r、s及びtは式(4)と同じである)により表される化合物であり、前記第一のカチオン性界面活性剤が式(5a):
【化13】


(ただしR10及びY-は式(5)と同じである)により表されるトリメチル型カチオン性界面活性剤、式(5b):
【化14】


(ただしR10及びY-は式(5)と同じであり、R13aは炭素数2〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数8〜30のアリールアルキル基である)により表されるジアルキル型カチオン性界面活性剤、式(5c):
【化15】


(ただしR10及びY-は式(5)と同じである)により表されるベンジル型カチオン性界面活性剤、及び式(5d):
【化16】


(ただしR10a,R13bはそれぞれ独立に炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、Y-は式(5)と同じである)により表されるヒドロキシエステル型カチオン性界面活性剤のいずれか又はこれらの組合せであり、前記第三のカチオン性界面活性剤が式(7a):
【化17】


(ただしR15は式(7)と同じである)により表される化合物であることを特徴とするリン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のリン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物において、前記リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド(A)のリン系酸残基一個に対して、前記含窒素界面活性剤(B)がモル比で0.5〜4配合されていることを特徴とするリン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物。
【請求項6】
(ポリ)ホスホン酸基及び/又は(ポリ)リン酸基からなるリン系酸残基を有する(メタ)アクリルアミド(A)、及び含窒素界面活性剤(B)を含むリン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物(A+B)と、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物(C)とを反応させてなり、もって前記(A)と前記(C)との共重合体、及び前記(B)を含むリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物であって、
前記リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド(A)は、式(1):
【化18】


(ただしR1は水素基又はメチル基であり、X1及びX2はそれぞれ独立に(ポリ)ホスホン酸基又は(ポリ)リン酸基である)により表されるN, N-置換(メタ)アクリルアミド、及び式(2):
【化19】


(ただしR1は水素基又はメチル基であり、X3は(ポリ)ホスホン酸基又は(ポリ)リン酸基である)により表されるN-置換(メタ)アクリルアミドのいずれか又はこれらの混合物であり、
前記その他のエチレン性不飽和結合含有化合物(C)は、分子内に少なくとも一個のエチレン性不飽和結合を有するが酸性基を有しない不飽和化合物(C-1)、及び分子内にエチレン性不飽和結合と酸性基とを各々少なくとも一個有する不飽和化合物(C-2)のいずれか又はこれらの混合物であり、
前記含窒素界面活性剤(B)は、(ポリ)エーテル基を含有するアミン系界面活性剤、及び四級アンモニウム塩基を含有するカチオン性界面活性剤のいずれか又はこれらの混合物である
ことを特徴とするリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物。
【請求項7】
請求項6に記載のリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物において、前記(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤が、式(3):
【化20】


[ただしR2は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R3は炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R4は-(R4aO)kH基(R4aは炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である)、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、又は水素基であり、f及びkはそれぞれ独立に1〜30の整数である]により表される第一の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤、及び式(4):
【化21】


[ただしR5は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R6は-(R6aO)sH基(R6aは炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である)、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、又は水素基であり、R7は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R8は炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R9は-(R9aO)tH基(R9aは炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である)、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、又は水素基であり、r、s及びtはそれぞれ独立に1〜30の整数である]により表される第二の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤のいずれか又はこれらの混合物であり、
前記カチオン性界面活性剤が、式(5):
【化22】


(ただしR10及びR13はそれぞれ独立に炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R11及びR12はそれぞれ独立に炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、R10〜R13にはいずれも水酸基、エステル結合及びアミノ基からなる群から選ばれた少なくとも一種が結合していてもよく、Y-は対イオンである)により表される第一のカチオン性界面活性剤、式(6):
【化23】



(ただしR14は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、Y-は対イオンである)により表される第二のカチオン性界面活性剤、式(7):
【化24】


(ただしR15は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R16及びR17はそれぞれ独立に炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、R18は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、炭素数6〜30のアリーレン基又は炭素数7〜30のアリーレンアルキル基であり、R15〜R18にはいずれも水酸基、エステル結合及びアミノ基からなる群から選ばれた少なくとも一種が結合していてもよい)により表される第三のカチオン性界面活性剤、及び式(8):
【化25】


(ただしR19は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基である)により表される第四のカチオン性界面活性剤からなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とするリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物において、前記酸性基非含有不飽和化合物(c-1)が(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N, N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、スチレン、少なくとも一部の水素基がメチル基で置換されたスチレン、ジビニルベンゼン、脂肪酸ビニルエステル、ハロゲン化ビニル、少なくとも一部の水素基がフッ素基で置換された(メタ)アクリル酸エステル、少なくとも一部の水素基がフッ素基で置換された(メタ)アクリル酸、及び少なくとも一部の水素基がフッ素基で置換されたアルキル基を含有するビニルからなる群から選ばれた少なくとも一種であり、
前記酸性基含有不飽和化合物(C-2)が、ターシャリーブチルアクリルアミドスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、p-スチレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸ブチル-4-スルホン酸、(メタ)アクリロオキシベンゼンスルホン酸、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸及びその無水物、フマル酸、イタコン酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及び式(9):
【化26】


(ただしR20は水素基又はメチル基であり、R21は炭素数が2〜4で、直鎖状又は分岐状で、少なくとも一部の水素基が塩素基で置換されていてもよいアルキレン基であり、xは1〜6の整数である)で表される化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とするリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれかに記載のリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物において、前記リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物(A+B)と、前記その他のエチレン性不飽和結合含有化合物(C)との質量比(A+B)/(C)が、(15/85)〜(60/40)であることを特徴とするリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれかに記載のリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物において、前記N, N-置換(メタ)アクリルアミドが式(1a):
【化27】


(ただしR1は水素基又はメチル基であり、n及びn'はそれぞれ独立に0〜2の整数である)により表されるN, N-ジ(ポリ)ホスホン酸(メタ)アクリルアミドであり、前記N-置換(メタ)アクリルアミドが式(2a):
【化28】


(ただしR1は水素基又はメチル基であり、mは0〜2の整数である)により表されるN-モノ(ポリ)ホスホン酸(メタ)アクリルアミドであることを特徴とするリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれかに記載のリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物において、前記第一の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤が式(3a):
【化29】


(ただしR2aは炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、f及びkは式(3)と同じである)により表される化合物であり、前記第二の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤が式(4a):
【化30】


(ただしR5aは炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、r、s及びtは式(4)と同じである)により表される化合物であり、前記第一のカチオン性界面活性剤が式(5a):
【化31】


(ただしR10及びY-は式(5)と同じである)により表されるトリメチル型カチオン性界面活性剤、式(5b):
【化32】


(ただしR10及びY-は式(5)と同じであり、R13aは炭素数2〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数8〜30のアリールアルキル基である)により表されるジアルキル型カチオン性界面活性剤、式(5c):
【化33】


(ただしR10及びY-は式(5)と同じである)により表されるベンジル型カチオン性界面活性剤、及び式(5d):
【化34】


(ただしR10a,R13bはそれぞれ独立に炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、Y-は式(5)と同じである)により表されるヒドロキシエステル型カチオン性界面活性剤のいずれか又はこれらの組合せであり、前記第三のカチオン性界面活性剤が式(7a):
【化35】


(ただしR15は式(7)と同じである)により表される化合物であることを特徴とするリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物。
【請求項12】
請求項6〜11のいずれかに記載のリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物において、前記リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド含有組成物(A+B)は、前記リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド(A)のリン系酸残基一個に対して、前記含窒素界面活性剤(B)がモル比で0.5〜4配合されていることを特徴とするリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物。
【請求項13】
請求項6〜12のいずれかに記載のリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物からなることを特徴とする難燃性樹脂。
【請求項14】
請求項6〜12のいずれかに記載のリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物からなることを特徴とする絶縁性樹脂。
【請求項15】
(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド又はこれらの混合物と、リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸及びオキシ塩化リンからなる群から選ばれた少なくとも一種との反応物又はその加水分解物であるリン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド(A)を調製し、これに含窒素界面活性剤(B)を混合し、得られた組成物(A+B)とその他のエチレン性不飽和結合含有化合物(C)とを反応させることによりリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物を製造する方法であって、
前記含窒素界面活性剤(B)は、(ポリ)エーテル基を含有するアミン系界面活性剤、及び四級アンモニウム塩基を含有するカチオン性界面活性剤のいずれか又はこれらの混合物であり、
前記その他のエチレン性不飽和結合含有化合物(C)は、分子内に少なくとも一個のエチレン性不飽和結合を有するが酸性基を有しない不飽和化合物(C-1)、及び分子内にエチレン性不飽和結合と酸性基とを各々少なくとも一個有する不飽和化合物(C-2)のいずれか又はこれらの混合物であることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載のリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物の製造方法において、前記リン系酸残基含有(メタ)アクリルアミド(A)が、式(1):
【化36】


(ただしR1は水素基又はメチル基であり、X1及びX2はそれぞれ独立に(ポリ)ホスホン酸基又は(ポリ)リン酸基である)により表されるN, N-置換(メタ)アクリルアミド、及び式(2):
【化37】


(ただしR1は水素基又はメチル基であり、X3は(ポリ)ホスホン酸基又は(ポリ)リン酸基である)により表されるN-置換(メタ)アクリルアミドのいずれか又はこれらの混合物であることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項15又は16に記載のリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物の製造方法において、前記(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤が、式(3):
【化38】


[ただしR2は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R3は炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R4は-(R4aO)kH基(R4aは炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である)、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、又は水素基であり、f及びkはそれぞれ独立に1〜30の整数である]により表される第一の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤、及び式(4):
【化39】


[ただしR5は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R6は-(R6aO)sH基(R6aは炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である)、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、又は水素基であり、R7は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R8は炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R9は-(R9aO)tH基(R9aは炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である)、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、又は水素基であり、r、s及びtはそれぞれ独立に1〜30の整数である]により表される第二の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤のいずれか又はこれらの混合物であり、
前記カチオン性界面活性剤が、式(5):
【化40】


(ただしR10及びR13はそれぞれ独立に炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R11及びR12はそれぞれ独立に炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、R10〜R13にはいずれも水酸基、エステル結合及びアミノ基からなる群から選ばれた少なくとも一種が結合していてもよく、Y-は対イオンである)により表される第一のカチオン性界面活性剤、式(6):
【化41】



(ただしR14は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、Y-は対イオンである)により表される第二のカチオン性界面活性剤、式(7):
【化42】


(ただしR15は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R16及びR17はそれぞれ独立に炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、R18は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、炭素数6〜30のアリーレン基又は炭素数7〜30のアリーレンアルキル基であり、R15〜R18にはいずれも水酸基、エステル結合及びアミノ基からなる群から選ばれた少なくとも一種が結合していてもよい)により表される第三のカチオン性界面活性剤、及び式(8):
【化43】


(ただしR19は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基である)により表される第四のカチオン性界面活性剤からなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項15〜17のいずれかに記載のリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物の製造方法において、前記酸性基非含有不飽和化合物(c-1)が(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N, N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、スチレン、少なくとも一部の水素基がメチル基で置換されたスチレン、ジビニルベンゼン、脂肪酸ビニルエステル、ハロゲン化ビニル、少なくとも一部の水素基がフッ素基で置換された(メタ)アクリル酸エステル、少なくとも一部の水素基がフッ素基で置換された(メタ)アクリル酸、及び少なくとも一部の水素基がフッ素基で置換されたアルキル基を含有するビニルからなる群から選ばれた少なくとも一種であり、
前記酸性基含有不飽和化合物(C-2)が、ターシャリーブチルアクリルアミドスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、p-スチレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸ブチル-4-スルホン酸、(メタ)アクリロオキシベンゼンスルホン酸、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸及びその無水物、フマル酸、イタコン酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及び式(9):
【化44】


(ただしR20は水素基又はメチル基であり、R21は炭素数が2〜4で、直鎖状又は分岐状で、少なくとも一部の水素基が塩素基で置換されていてもよいアルキレン基であり、xは1〜6の整数である)で表される化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項15〜18のいずれかに記載のリン系酸残基含有ビニル系重合体含有組成物の製造方法において、前記組成物(A+B)と前記(C)とを反応させる方法として、水媒体中で、乳化剤及び重合開始剤を用いた乳化重合を用いることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−140606(P2011−140606A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3417(P2010−3417)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(592187833)ユニケミカル株式会社 (23)
【Fターム(参考)】