説明

リン酸カルシウム組成物及びその製造方法

【課題】臨床現場で使用する際などにリン酸カルシウム組成物に液剤を加えてから硬化するまでの時間、すなわち硬化時間が適切な範囲内にあり、しかも辺縁封鎖性の良好なリン酸カルシウム組成物を提供する。
【解決手段】リン酸カルシウム粒子(A)及び層状ケイ酸塩粒子(E)を含むリン酸カルシウム組成物であって、リン酸カルシウム粒子(A)100重量部に対して層状ケイ酸塩粒子(E)を0.5〜30重量部含むことを特徴とするリン酸カルシウム組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸カルシウム組成物に関する。特に医療用材料に適したリン酸カルシウム組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リン酸カルシウム組成物を焼結して得られるヒドロキシアパタイト(Ca10(PO(OH))は、骨や歯などの無機成分に近い組成を有し、骨と直接結合する性質である生体活性を有していることから、骨欠損部や骨空隙部の修復用材料としての利用が報告されている。しかし、このようなヒドロキシアパタイトからなる材料は、生体親和性は優れているが、複雑な形態を有する部位に応用するには、成形性という点で困難な場合があった。
【0003】
一方、リン酸カルシウム組成物の中でもセメントタイプ、即ち硬化性を有するリン酸カルシウム組成物は、生体内や口腔内において生体吸収性のヒドロキシアパタイトへ徐々に転化し、さらに形態を保ったままで生体硬組織と一体化し得ることが知られている。このようなリン酸カルシウム組成物は、生体親和性が優れているだけではなく、成形性を有することから複雑な形態を有する部位への応用が容易であるとされている。
【0004】
例えば、特開2007−190226号公報(特許文献1)には、平均粒径が5〜30μmのリン酸四カルシウム粒子及び平均粒径が0.1〜5μmのリン酸水素カルシウム粒子からなるリン酸カルシウム組成物であって、リン酸四カルシウム粒子が1.5μm以下の粒径の粒子を2〜20重量%含有することを特徴とするリン酸カルシウム組成物について記載されている。臨床現場で使用する際などにリン酸カルシウム組成物に水を主成分とする液剤を加えてから硬化するまでの時間、即ち硬化時間が適切な範囲内にあり、封鎖性が良好であるとされている。しかしながら、必ずしも十分な封鎖性が得られる場合ばかりではなく、さらなる改善が望まれていた。
【0005】
【特許文献1】特開2007−190226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、臨床現場で使用する際などにリン酸カルシウム組成物に液剤を加えてから硬化するまでの時間、すなわち硬化時間が適切な範囲内にあり、しかも辺縁封鎖性の良好なリン酸カルシウム組成物を提供することを目的とするものである。また、そのようなリン酸カルシウム組成物の製造方法及び用途を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、リン酸カルシウム粒子(A)及び層状ケイ酸塩粒子(E)を含むリン酸カルシウム組成物であって、リン酸カルシウム粒子(A)100重量部に対して層状ケイ酸塩粒子(E)を0.5〜30重量部含むことを特徴とするリン酸カルシウム組成物を提供することによって解決される。
【0008】
このとき、層状ケイ酸塩粒子(E)がスメクタイト族に属する層状ケイ酸塩粒子であることが好適であり、層状ケイ酸塩粒子(E)の平均粒径が0.1〜10μmであることが好適である。層状ケイ酸塩粒子(E)の25℃における水蒸気吸着体積が100cm(STP)g−1以上であることが好適であり、更にスルホン酸塩(B)及び/又はリン酸のアルカリ金属塩(C)を含むことが好適である。また、リン酸のアルカリ金属塩(C)がリン酸一水素二ナトリウム及び/又はリン酸二水素一ナトリウムであることが好適であり、リン酸カルシウム粒子(A)がリン酸四カルシウム粒子(A1)及び酸性リン酸カルシウム粒子(A2)からなることが好適であり、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)が無水リン酸一水素カルシウム粒子であることが好適であり、リン酸四カルシウム粒子(A1)と酸性リン酸カルシウム粒子(A2)の配合割合(A1/A2)がモル比で40/60〜60/40であることも好適である。また、リン酸カルシウム組成物が粉体であることも好適な実施態様である。
【0009】
更に上記課題は、リン酸カルシウム粒子(A)及び層状ケイ酸塩粒子(E)を含む粉体と水を主成分とする液体とからなる医療用キットであって、リン酸カルシウム粒子(A)100重量部に対して層状ケイ酸塩粒子(E)を0.5〜30重量部含むことを特徴とする医療用キットを提供することによって解決される。また上記課題は、リン酸カルシウム粒子(A)を含む粉体と層状ケイ酸塩粒子(E)を含む水分散液とからなる医療用キットであって、リン酸カルシウム粒子(A)100重量部に対して層状ケイ酸塩粒子(E)を0.5〜30重量部含むことを特徴とする医療用キットを提供することによっても解決される。
【0010】
また、上記課題は、リン酸カルシウム粒子(A)及び層状ケイ酸塩粒子(E)を含むリン酸カルシウム組成物粉体の製造方法であって、リン酸カルシウム粒子(A)100重量部に対して層状ケイ酸塩粒子(E)を0.5〜30重量部含み、かつリン酸カルシウム粒子(A)及び層状ケイ酸塩粒子(E)を粉体の状態で混合することを特徴とするリン酸カルシウム組成物粉体の製造方法を提供することによって解決される。このとき、リン酸カルシウム粒子(A)がリン酸四カルシウム粒子(A1)及び酸性リン酸カルシウム粒子(A2)からなり、リン酸四カルシウム粒子(A1)、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)及び層状ケイ酸塩粒子(E)を粉体の状態で混合することが好適である。
【0011】
また、上記課題は、リン酸カルシウム粒子(A)及び層状ケイ酸塩粒子(E)を含むリン酸カルシウム組成物ペーストの製造方法であって、リン酸カルシウム粒子(A)100重量部に対して層状ケイ酸塩粒子(E)を0.5〜30重量部含むリン酸カルシウム組成物の粉体に、水を主成分とする液体を加えて混練することを特徴とするリン酸カルシウム組成物ペーストの製造方法を提供することによって解決される。また、上記課題は、リン酸カルシウム粒子(A)及び層状ケイ酸塩粒子(E)を含むリン酸カルシウム組成物ペーストの製造方法であって、リン酸カルシウム粒子(A)100重量部に対して層状ケイ酸塩粒子(E)を0.5〜30重量部含む水分散液を、リン酸カルシウム粒子(A)からなる粉体に加えて混練することを特徴とするリン酸カルシウム組成物ペーストの製造方法を提供することによっても解決される。
【0012】
上記リン酸カルシウム組成物の好適な実施態様は医療用組成物であり、特に骨セメントや歯科用充填材として好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のリン酸カルシウム組成物は、臨床現場で使用する際などにリン酸カルシウム組成物に液剤を加えてから硬化するまでの時間、すなわち硬化時間が適切な範囲内にあり、辺縁封鎖性が良好である。したがって、医療用材料に適しており、特に骨セメントや歯科用充填材に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のリン酸カルシウム組成物は、リン酸カルシウム粒子(A)及び層状ケイ酸塩粒子(E)を含むものである。
【0015】
リン酸カルシウム粒子(A)を含むリン酸カルシウム組成物は、水の存在下で混練すると硬化する。このとき、リン酸カルシウム粒子(A)に加えて、更に層状ケイ酸塩粒子(E)を含むことにより、硬化時間が適切な範囲内にあり、かつリン酸カルシウム組成物ペーストを充填した部位の封鎖性が著しく向上することが明らかになった。この理由については必ずしも明らかではないが、以下のようなメカニズムが推定される。
【0016】
すなわち、リン酸カルシウム粒子(A)及び層状ケイ酸塩粒子(E)を含むリン酸カルシウム組成物ペーストを調製して骨や歯牙などに充填すると、ペースト中に均一に分散された層状ケイ酸塩粒子(E)を起点としてヒドロキシアパタイトの析出が起こるようである。次いで、充填されたペースト中に含まれる粒子間の間隙に前記ヒドロキシアパタイトが析出して間隙が塞がれることにより辺縁封鎖性が良好となるようである。
【0017】
本発明で使用されるリン酸カルシウム粒子(A)としては、特に限定されず、例えばリン酸四カルシウム粒子(A1)、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)、ヒドロキシアパタイト粒子、フッ化アパタイト粒子、炭酸含有アパタイト粒子、カルシウム不足ヒドロキシアパタイト粒子、リン酸三カルシウム粒子及びリン酸八カルシウム等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上が用いられる。
【0018】
本発明で使用されるリン酸カルシウム粒子(A)の平均粒径は、0.5〜30μmであることが好ましい。平均粒径が0.5μm未満の場合、液剤との混合により得られるペーストの粘度が高くなり過ぎるだけではなく、硬化物の強度が低下するおそれがある。リン酸カルシウム粒子(A)の平均粒径は、より好適には2μm以上であり、更に好適には5μm以上である。一方、平均粒径が30μmを超える場合、液剤との混合により得られるペーストが十分な粘性を示さないなどペースト性状が好ましくなくなるおそれがある。また、歯科用の根管充填材などとして使用する場合、狭い移植箇所へシリンジを用いて注入する際にノズルの先端が詰まるおそれもある。リン酸カルシウム粒子(A)の平均粒径は、より好適には25μm以下であり、更に好適には20μm以下である。ここで、本発明で使用するリン酸カルシウム粒子(A)の平均粒径とは、リン酸四カルシウム粒子(A1)、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)等のリン酸カルシウム粒子(A)を構成し得る粒子全体を、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定し、算出したものである。
【0019】
本発明のリン酸カルシウム組成物は、リン酸カルシウム粒子(A)100重量部に対して層状ケイ酸塩粒子(E)を0.5〜30重量部含むものである。このように、層状ケイ酸塩粒子(E)を一定量含むことにより、硬化時間が適切な範囲内にあり、かつ封鎖性が良好なリン酸カルシウム組成物を提供できることが本発明者により見出された。層状ケイ酸塩粒子(E)の含有量が0.5重量部未満の場合、硬化時間が長く臨床現場での操作性に影響を与えるおそれがあるとともに封鎖性が低下するおそれがあり、1重量部以上であることが好ましく、5重量部以上であることがより好ましい。一方、層状ケイ酸塩粒子(E)の含有量が30重量部を超える場合、硬化時間が長く臨床現場での操作性に影響を与えるおそれがあるとともに封鎖性が低下するおそれがあり、28重量部以下であることが好ましく、26重量部以下であることがより好ましい。
【0020】
本発明で使用する層状ケイ酸塩粒子(E)の平均粒径は、0.1〜10μmであることが好ましい。平均粒径が0.1μm未満の場合、液剤との混合により得られるペーストの粘度が高くなり過ぎるおそれがあり、0.5μm以上であることがより好ましい。一方、平均粒径が10μmを超える場合、封鎖性が低下するおそれがあり、8μm以下であることがより好ましい。ここで、本発明で使用する層状ケイ酸塩粒子(E)の平均粒径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定し、算出したものである。
【0021】
本発明で使用される層状ケイ酸塩粒子(E)としては特に限定されず、モンモリロナイト、サポナイト、ハイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、バイロサイト及びステイブンサイト等のスメクタイト族、ジ−バーミキュライト、トリ−バーミキュライト、フッ素バーミキュライト等のバーミキュライト族、白雲母、パラゴナイト、イライト等の雲母系粘土化合物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、合成フッ素雲母(Li型四珪素フッ素雲母、Na型四珪素フッ素雲母等)等が挙げられる。中でも、良好な封鎖性を付与する観点からスメクタイト属に属する層状ケイ酸塩粒子が好ましく用いられる。また、本発明で使用される層状ケイ酸塩粒子(E)は、天然物であっても合成物であってもよく、単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0022】
本発明で用いられる層状ケイ酸塩粒子(E)は、親水性を有していても親油性を有していてもよい。硬化時間が適切な範囲内にあるとともに、リン酸カルシウム組成物ペーストを充填した部位の封鎖性が良好である観点からは、親水性を有する層状ケイ酸塩粒子(E)が好適に用いられる。
【0023】
また、本発明で使用される層状ケイ酸塩粒子(E)の25℃における水蒸気吸着体積が100cm(STP)g−1以上であることが好ましい。25℃における水蒸気吸着体積が100cm(STP)g−1以上である層状ケイ酸塩粒子(E)を用いることにより、硬化時間が適切な範囲内にあるとともに、リン酸カルシウム組成物ペーストを充填した部位の封鎖性が良好となる。ここで、層状ケイ酸塩粒子(E)の25℃における水蒸気吸着体積は、後述の実施例で示されるように湿度50%RH(p/p(相対圧:吸着平衡時の水蒸気圧と飽和水蒸気圧との比)=0.5)における測定サンプル1g辺りの水蒸気吸着体積を標準状態(0℃、1atm)に換算することにより求められる。また、本発明において、25℃における水蒸気吸着体積が100cm(STP)g−1以上であることは、層状ケイ酸塩粒子(E)が親水性を有することの指標にもなる。水蒸気吸着体積が100cm(STP)g−1未満の場合、封鎖性が低下するおそれがあり、120cm(STP)g−1以上であることがより好ましく、150cm(STP)g−1以上であることが更に好ましい。また、25℃における水蒸気吸着体積は、通常、500cm(STP)g−1以下である。
【0024】
本発明のリン酸カルシウム組成物は、更にスルホン酸塩(B)及び/又はリン酸のアルカリ金属塩(C)を含むことが好ましい。このように、リン酸カルシウム組成物中にスルホン酸塩(B)又はリン酸のアルカリ金属塩(C)を含むことにより、硬化時間を短くすることができるため操作性が向上するとともに、封鎖性を向上させることができる。更に、リン酸カルシウム組成物中にスルホン酸塩(B)及びリン酸のアルカリ金属塩(C)の両方を含むことにより、硬化時間を更に短くすることができるとともに、封鎖性をより向上させることができる。本発明のリン酸カルシウム組成物は、更にスルホン酸塩(B)を含むことにより上述のような効果を奏するが、この理由については以下のようなメカニズムが推定される。
【0025】
すなわち、スルホン酸塩(B)を含むリン酸カルシウム組成物ペーストを調製する際に、スルホン酸塩(B)が界面活性剤として機能することでリン酸カルシウム組成物粒子の分散性が良好となり、効率良くパッキングされると考えられ、このことにより辺縁封鎖性が向上すると考えられる。また、原因については必ずしも明らかではないが、スルホン酸塩(B)が存在することにより、リン酸カルシウム組成物粒子間にヒドロキシアパタイトが効率的に生成し、所望の部位に充填されたリン酸カルシウム組成物の硬化する際に形成される孔をヒドロキシアパタイトが塞ぐことで辺縁封鎖性が向上すると考えられる。実際にスルホン酸塩(B)の添加により、リン酸カルシウム組成物の硬化物において生じた孔が小さくなる傾向が観察されており、スルホン酸塩(B)がヒドロキシアパタイトの析出形態や大きさに影響を与えているとも考えられる。
【0026】
本発明で用いられるスルホン酸塩(B)としては特に限定されず、置換基を有してもよい炭素数1〜25の炭化水素基を有するスルホン酸塩、又はポリスルホン酸塩から選択される少なくとも1種を好適に用いることができる。中でもリン酸カルシウム組成物ペーストを充填した部位の辺縁封鎖性が良好となる観点からポリスルホン酸塩がより好適に用いられる。また、本発明において、スルホン酸塩(B)のカチオン種としては特に限定されず、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム等が挙げられるが、ナトリウム又はカリウムが好適に用いられる。
【0027】
置換基を有してもよい炭素数1〜25の炭化水素基としては、例えば、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基等を有するスルホン酸塩が挙げられる。
【0028】
ここで、本発明において、置換基を有してもよいアルキル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。
【0029】
本発明において、置換基を有してもよいアルケニル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、メチルビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0030】
本発明において、置換基を有してもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
【0031】
本発明において、置換基を有してもよいシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプタニル基、シクロオクタニル基、シクロノナニル基、シクロデカニル基、シクロウンデカニル基、シクロドデカニル基等が挙げられる。
【0032】
本発明で用いられる置換基を有してもよい炭素数1〜25の炭化水素基を有するスルホン酸塩の具体例としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、n−プロパンスルホン酸、イソプロパンスルホン酸、n−ブタンスルホン酸、イソブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、ヘプタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ノナンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸、テトラデカンスルホン酸、ペンタデカンスルホン酸、ヘキサデカンスルホン酸、オクタデカンスルホン酸、エイコサンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、アミノエタンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ペンチルベンゼンスルホン酸、ヘキシルベンゼンスルホン酸、ヘプチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、へキサデシルベンゼンスルホン酸、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸、ジプロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、アミノベンゼンスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ペンチルナフタレンスルホン酸、ジメチルナフタレンスルホン酸、10−カンファースルホン酸、タウリン等の塩が挙げられる。
【0033】
また、本発明で用いられるスルホン酸塩(B)は、スルホ基を複数有するものであることが好ましく、例えば、エタンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、キシレンジスルホン酸、クロロベンゼンジスルホン酸、テトラフルオロベンゼンジスルホン酸、ヘキサフルオロプロパンジスルホン酸、ジメチルベンゼンジスルホン酸、ジエチルベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ナフトールジスルホン酸等の塩が挙げられる。
【0034】
上記スルホ基を複数有するものの中でもスルホン酸塩(B)がポリスルホン酸塩であることがより好ましい。ここで、ポリスルホン酸塩とはスルホン酸塩単量体が重合されたものあるいは重合体に対してスルホン化反応によりスルホ基を導入したものを表す。本発明で用いられるポリスルホン酸塩としては特に限定されず、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリナフタレンスルホン酸塩、ポリナフチルメタンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸塩等が挙げられる。中でもポリスチレンスルホン酸塩及び/又はポリビニルスルホン酸塩が好適に用いられ、リン酸カルシウム組成物ペーストを充填した部位の辺縁封鎖性が良好となる観点から、ポリスチレンスルホン酸塩及びポリビニルスルホン酸塩の両方がより好適に用いられる。
【0035】
本発明で用いられるポリスルホン酸塩の分子量としては、分子量100未満のオリゴマーから架橋高分子まで任意の分子量のポリスルホン酸塩を用いることができる。中でも、分子量が1000〜1000万Da(ダルトン)であることが好ましい。分子量が1000Da未満の場合、リン酸カルシウム組成物の硬化物の圧縮強度の向上や硬化時間の短縮の効果が期待できないおそれがあるとともに、封鎖性が低下するおそれがあり、5000Da以上であることがより好ましく、1万Da以上であることが更に好ましい。一方、分子量が1000万Daを超える場合、リン酸カルシウム組成物ペーストを調製する際の粘度が高くなり、混練することが困難となるおそれがあり、800万Da以下であることがより好ましく、600万Da以下であることが更に好ましい。
【0036】
本発明のリン酸カルシウム組成物は、リン酸カルシウム粒子(A)100重量部に対してスルホン酸塩(B)を0.5〜20重量部含むことが好ましい。スルホン酸塩(B)の含有量が0.5重量部未満の場合、封鎖性が低下するおそれがあり、2重量部以上であることがより好ましく、5重量部以上であることが更に好ましい。一方、スルホン酸塩(B)の含有量が20重量部を超える場合、硬化時間が長くなるとともに封鎖性及び圧縮強度が低下するだけでなくリン酸カルシウム組成物ペーストを調製する際の粘度が高くなり、混練することが困難となるおそれがあり、18重量部以下であることがより好ましく、15重量部以下であることが更に好ましい。
【0037】
本発明で使用されるリン酸のアルカリ金属塩(C)としては特に限定されず、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸一水素二カリウム、リン酸二水素一リチウム、リン酸二水素一ナトリウム、リン酸二水素一カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上が用いられる。中でも、安全性、並びに高純度原料の入手の容易さの観点から、リン酸のアルカリ金属塩(C)がリン酸一水素二ナトリウム及び/又はリン酸二水素一ナトリウムであることが好ましい。
【0038】
本発明で使用されるリン酸カルシウム粒子(A)は、リン酸四カルシウム粒子(A1)及び酸性リン酸カルシウム粒子(A2)からなることが好ましい。リン酸四カルシウム粒子(A1)及び酸性リン酸カルシウム粒子(A2)を含有するリン酸カルシウム組成物は、水の存在下で混練すると熱力学的に安定なヒドロキシアパタイトを生成して硬化する。リン酸四カルシウム粒子(A1)及び酸性リン酸カルシウム粒子(A2)を含有するリン酸カルシウム組成物中に層状ケイ酸塩粒子(E)を0.5〜30重量部含むことにより、硬化時間が適切な範囲内にあり、かつ封鎖性が良好なリン酸カルシウム組成物が得られる。
【0039】
本発明で使用されるリン酸四カルシウム[Ca(POO]粒子(A1)の製造方法は特に限定されない。市販されているリン酸四カルシウム粒子をそのまま用いてもよいし、適宜粉砕して粒径を整えて使用してもよい。粉砕方法としては、後に説明する酸性リン酸カルシウム粒子(A2)の粉砕方法と同様の方法が採用できる。
【0040】
リン酸四カルシウム粒子(A1)の平均粒径は5〜30μmであることが好ましい。平均粒径が5μm未満の場合は、リン酸四カルシウム粒子(A1)の溶解が過度になることにより水溶液中のpHが高くなりヒドロキシアパタイトの析出が円滑でなくなることで、硬化物の機械的強度が低下するおそれがある。平均粒径は、より好適には10μm以上である。一方、平均粒径が30μmを超える場合は、液剤との混合により得られるペーストが十分な粘性を示さない、あるいはざらつき感が大きくなるなどペースト性状が好ましくないおそれがある。また、歯科用の根管充填材などとして使用する場合、狭い移植箇所へシリンジを用いて注入する際にノズルの先端が詰まるおそれもある。平均粒径は、より好適には25μm以下である。ここで、本発明で使用するリン酸四カルシウム粒子(A1)の平均粒径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定し、算出したものである。
【0041】
本発明で使用される酸性リン酸カルシウム粒子(A2)は、無水物である無水リン酸一水素カルシウム[CaHPO]粒子、無水リン酸二水素カルシウム[Ca(HPO]粒子、酸性ピロリン酸カルシウム[CaH]であっても、水和物であるリン酸一水素カルシウム2水和物[CaHPO・2HO]粒子やリン酸二水素カルシウム1水和物[Ca(HPO・HO]粒子であっても良いが、好適には無水物が使用され、中でも無水リン酸一水素カルシウム[CaHPO]粒子がより好適に使用される。なお、本発明では、リン酸根のモル数を酸性リン酸カルシウム粒子(A2)のモル数とした。酸性リン酸カルシウム粒子(A2)の平均粒径は0.1〜5μmであることが好ましい。平均粒径が0.1μm未満の場合、液剤との混合により得られるペーストの粘度が高くなり過ぎるおそれがあり、より好適には0.5μm以上である。一方、平均粒径が5μmを超える場合は、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)が液剤へ溶解しにくくなるため、リン酸四カルシウム粒子(A1)の溶解が過度となり、水溶液のpHが高くなることでヒドロキシアパタイトの析出が円滑でなくなり、硬化物の機械的強度が低下するおそれがある。平均粒径は、より好適には2μm以下である。酸性リン酸カルシウム粒子(A2)の平均粒径は、上記リン酸四カルシウム粒子(A1)の平均粒径と同様にして算出される。
【0042】
このような平均粒径を有する酸性リン酸カルシウム粒子(A2)の製造方法は特に限定されず、市販品を入手できるのであればそれを使用してもよいが、市販品を更に粉砕することが好ましい場合が多い。その場合、ボールミル、ライカイ機、ジェットミルなどの粉砕装置を使用することができる。また、酸性リン酸カルシウム原料粉体をアルコールなどの液体の媒体と共にライカイ機、ボールミル等を用いて粉砕してスラリーを調製し、得られたスラリーを乾燥させることにより酸性リン酸カルシウム粒子(A2)を得ることもできる。このときの粉砕装置としては、ボールミルを用いることが好ましく、そのポット及びボールの材質としては、好適にはアルミナやジルコニアが採用される。
【0043】
以上説明したように、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)の平均粒径に比べてリン酸四カルシウム粒子(A1)の平均粒径を大きくすることによって、両者の溶解度のバランスをとり、水溶液のpHを中性付近に維持することで、ヒドロキシアパタイト結晶の生成を円滑とすることが可能であり、硬化物の機械的強度を向上させることができる。具体的には、(A1)の平均粒径を(A2)の平均粒径の2倍以上とすることがより好ましく、4倍以上とすることがさらに好ましく、7倍以上とすることが特に好ましい。一方、(A1)の平均粒径を(A2)の平均粒径の35倍以下とすることがより好ましく、30倍以下とすることが更に好ましく、25倍以下とすることが特に好ましい。
【0044】
リン酸四カルシウム粒子(A1)と酸性リン酸カルシウム粒子(A2)の配合割合(A1/A2)は、特に限定されないが、モル比で40/60〜60/40の範囲となるような配合割合で使用されることが好ましい。これによって、硬化物の機械的強度が高いリン酸カルシウム組成物を得ることができる。上記配合割合(A1/A2)は、より好適には45/55〜55/45であり、実質的に50/50であることが最適である。
【0045】
本発明のリン酸カルシウム組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲でリン酸カルシウム粒子(A)、スルホン酸塩(B)、リン酸のアルカリ金属塩(C)及び層状ケイ酸塩粒子(E)以外の成分を含有しても構わない。例えば必要に応じて増粘剤を配合することができる。これはリン酸カルシウム組成物ペーストの成形性又は均一な充填性を向上させるためである。増粘剤としては例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリグルタミン酸、ポリグルタミン酸塩、ポリアスパラギン酸、ポリアスパラギン酸塩、セルロース以外のデンプン、アルギン酸、アルギン酸塩、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、ペクチン、キチン、キトサン等の多糖類、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の酸性多糖類エステル、またコラーゲン、ゼラチン及びこれらの誘導体などのタンパク質類等の高分子などから選択される1つ又は2つ以上が挙げられるが、水への溶解性及び粘性の面からはカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸、アルギン酸塩、キトサン、ポリグルタミン酸及びポリグルタミン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つが好ましい。増粘剤は、リン酸カルシウム粉体に配合したり、液剤に配合したり、又は混練中のペーストに配合することができる。
【0046】
必要に応じてX線造影剤を含んでも良い。これはリン酸カルシウム組成物ペーストの充填操作のモニタリングや充填後の変化を追跡することができるからである。X線造影剤としては、例えば、硫酸バリウム、次硝酸ビスマス、次炭酸ビスマス、酸化ビスマス、フッ化イッテルビウム、ヨードホルム、バリウムアパタイト、チタン酸バリウム等から選択される1つ又は2つ以上が挙げられる。X線造影剤は、リン酸カルシウム粉体に配合したり、液剤に配合したり、又は混練中のペーストに配合することができる。
【0047】
また、薬理学的に許容できるあらゆる薬剤等を配合することができ、消毒剤、抗癌剤、抗生物質、抗菌剤、アクトシン、PEG1などの血行改善薬、bFGF、PDGF、BMPなどの増殖因子、骨芽細胞、象牙芽細胞、未分化な骨髄由来幹細胞など硬組織形成を促進させる細胞などを配合させることができる。
【0048】
本発明のリン酸カルシウム組成物は、リン酸カルシウム粒子(A)及び層状ケイ酸塩粒子(E)を含むものであるが、本発明のリン酸カルシウム組成物が粉体であることが好ましい。このとき、リン酸カルシウム粒子(A)及び層状ケイ酸塩粒子(E)を粉体の状態で混合することによってリン酸カルシウム組成物粉体が製造される。好適には、リン酸四カルシウム粒子(A1)、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)及び層状ケイ酸塩粒子(E)を粉体の状態で混合する。混合する方法としては、特に限定されず、例えば、ジェットミル、ライカイ機、ボールミル、ビーズミル、遊星ミル、ハイブリダイザー、メカノフュージョン、混練押出し機、高速回転ミルなどを使用することができ、好適にはライカイ機、ボールミル、遊星ミル、高速回転ミルが使用され、より好適には高速回転ミルが使用される。このとき、アルコールなど水を含まない液体の媒体を存在させて混合することも可能である。また、2種類以上のリン酸カルシウム粒子に対して別々に層状ケイ酸塩粒子(E)を混合した後、更にこの2種類以上のリン酸カルシウム粒子を混合することも好ましい態様として実施できる。
【0049】
本発明のリン酸カルシウム粒子(A)及び層状ケイ酸塩粒子(E)を含むリン酸カルシウム組成物が粉体組成物である場合、医療現場で使用するに際しては、水を主成分とする液体、すなわち液剤と混練してリン酸カルシウム組成物ペーストとし、所望の部位に充填あるいは塗布して使用することができる。水を主成分とする液体は、純水であってもよいし、他の成分を含有する水溶液又は水分散液であってもよい。
【0050】
水に対して配合される成分としては、リン酸のアルカリ金属塩(C)を含むことが好ましい。リン酸のアルカリ金属塩(C)としては前述のものを用いることができる。また、リン酸アンモニウム塩類、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸などのpH緩衝剤、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウムなどのフッ化物塩、グリセリン、プロピレングリコールなどの水溶性多価アルコールなどを用いることもできる。
【0051】
また、本発明のリン酸カルシウム組成物が、更にスルホン酸塩(B)を含む場合、リン酸カルシウム組成物の粉体にスルホン酸塩(B)が含まれていてもよいが、リン酸カルシウム粒子(A)及び層状ケイ酸塩粒子(E)を含むリン酸カルシウム組成物の粉体に、スルホン酸塩(B)を含む水溶液を混合することによってもリン酸カルシウム組成物ペーストが得られる。また、スルホン酸塩(B)は、必ずしも水に均一に溶解している必要はなく、スルホン酸塩(B)が水中でミセルを形成していても良いし、水に不溶の小粒径エマルジョン又はスラリー状であっても良い。
【0052】
また、本発明は、リン酸カルシウム粒子(A)及び層状ケイ酸塩粒子(E)を含むリン酸カルシウム組成物に対してではなく、リン酸カルシウム粒子(A)を含む粉体に、層状ケイ酸塩粒子(E)を含む水分散液を混合することによってもリン酸カルシウム組成物ペーストが得られる。すなわち、層状ケイ酸塩粒子(E)をリン酸カルシウム粒子(A)100重量部に対して0.5〜30重量部含む水分散液を、リン酸カルシウム粒子(A)を含む粉体に加えて混練することによりリン酸カルシウム組成物ペーストが製造される。ここで、層状ケイ酸塩粒子(E)を含む水分散液を用いる場合、層状ケイ酸塩粒子(E)の含有量を多くすると、粘度が高くなるため混練することが困難となるおそれがある。したがって、この場合、前記水分散液中の(E)の含有量が、リン酸カルシウム粒子(A)100重量部に対して5重量部以下であることが好ましく、3重量部以下であることがより好ましい。
【0053】
このように、リン酸カルシウム組成物ペーストを製造するにあたっては、層状ケイ酸塩粒子(E)を含むリン酸カルシウム粉体組成物と、液剤とを混練する方法を採用してもよく、リン酸カルシウム粒子(A)を含む粉体に、層状ケイ酸塩粒子(E)を含む水分散液を混合する方法を採用してもよい。しかしながら、前述のように前記水分散液中の(E)の含有量を多くすると粘度が高くなるため混練することが困難となるおそれがある。したがって、層状ケイ酸塩粒子(E)を多量に添加してリン酸カルシウム組成物ペーストを調製する場合には、層状ケイ酸塩粒子(E)を含むリン酸カルシウム粉体組成物と、液剤とを混練する方法を採用することが好ましい。
【0054】
リン酸カルシウム組成物ペーストを調製する際の、リン酸カルシウム組成物と液剤との質量比(リン酸カルシウム組成物/液剤)は特に限定されないが、好適には1〜6であり、より好適には3〜5である。リン酸カルシウム組成物と液剤とが均一に混じるように、十分に混練してから速やかに所望の部位に充填あるいは塗布する。この場合、リン酸カルシウム組成物の硬化時間が適切な範囲内にあるため、水と混練する際の操作性が良好である。
【0055】
本発明のリン酸カルシウム組成物は、上述したようにリン酸カルシウム組成物ペーストとして所望の部位に充填あるいは塗布して使用することができる。このとき、リン酸カルシウム組成物ペーストは、通常、医療現場で調製される。したがって、リン酸カルシウム粒子(A)及び層状ケイ酸塩粒子(E)を含む粉体と水を主成分とする液体とからなる医療用キットであることが本発明の実施態様の一つである。また、リン酸カルシウム粒子(A)を含む粉体と層状ケイ酸塩粒子(E)を含む水分散液とからなる医療用キットであることも本発明の実施態様の一つである。
【0056】
本発明のリン酸カルシウム組成物は、医療用の各種用途に好適に使用される。例えば、接着又は固着用の骨セメントとして好適に使用される。本発明のリン酸カルシウム組成物を上記用途に使用した場合、ペーストの充填性に優れており、複雑な形態をした部位の隅々にまで充填することができ、歯牙、骨などの硬組織修復材に好適である。また、歯科用充填材として、切削根管など表面に象牙細管が存在する患部にリン酸カルシウム組成物を充填する際などには、孔の内部でヒドロキシアパタイト結晶が効率的に析出することにより封鎖性が良好であり、特に根管充填材や根管修復材として好ましく用いられる。また、ペースト自体が生体内又は口腔内で短期間のうちにヒドロキシアパタイトに転化し、生体硬組織との一体化が起こることから生体親和性に優れている。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。本実施例においてリン酸四カルシウム粒子(A1)、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)及び層状ケイ酸塩粒子(E)の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製「SALD−2100型」)を用いて測定し、測定の結果から算出されるメディアン径を平均粒径とした。
【0058】
[水蒸気吸着体積の測定]
本実施例で用いられる親水性スメクタイト(コープケミカル株式会社製「ルーセンタイト SWN」、平均粒径4.1μm)及び親油性スメクタイト(コープケミカル株式会社製「ルーセンタイト SEN」、平均粒径3.3μm)の25℃における水蒸気吸着体積を以下の条件にしたがって測定した。まず、100℃で5時間真空乾燥して各測定サンプルの前処理を行った。次に、高精度蒸気吸着量測定装置(日本ベル株式会社製「BELSORP−aqua3」)を用いて、測定温度25℃、測定湿度0〜100%RH(p/p(相対圧)=0〜1)の条件にて各測定サンプルの水蒸気吸着体積を測定し、湿度50%RH(p/p=0.5)における測定サンプル1g辺りの水蒸気吸着体積を標準状態(0℃、1atm)に換算することにより25℃における水蒸気吸着体積を求めた。上記親油性スメクタイトの25℃における水蒸気吸着体積は、20cm(STP)g−1であり、上記親水性スメクタイトの25℃における水蒸気吸着体積は、225cm(STP)g−1であった。
p:吸着平衡時の水蒸気圧
:25℃における飽和水蒸気圧
STP:標準状態
【0059】
実施例1
(1)リン酸カルシウム組成物の調製
本実験に使用するリン酸四カルシウム粒子(A1)は、以下の様にして調製した。市販の無水リン酸一水素カルシウム粒子(Product No. 1430, J.T.Baker Chemical Co.社製)及び炭酸カルシウム粒子(Product No. 1288, J.T.Baker Chemical Co.社製)を等モルとなる様に水中に加え、1時間撹拌した後、ろ過・乾燥することで得られたケーキ状の等モル混合物を焼成器(Model 51333, Lindberg, Watertown, WI)中で1500℃、24時間加熱し、その後デシケータ中で室温まで冷却することでTTCP(リン酸四カルシウム)塊を調製した。次に得られたTTCP塊を乳鉢で荒く砕き、その後篩がけを行うことで微粉ならびにTTCP塊を除き、0.5〜3mmの範囲に粒度を整え、粗リン酸四カルシウム粒子を得た。更に、本実施例で使用するリン酸四カルシウム粒子(A1)(平均粒径21.2μm)は、粗リン酸四カルシウム粒子100g、及び直径が20mmのジルコニアボール300gを400mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「Type A−3 HDポットミル」)中に加え、200rpmの回転速度で2時間30分粉砕を行うことで得た。
【0060】
酸性リン酸カルシウム粒子(A2)の一例として、本実験に使用する無水リン酸一水素カルシウム粒子(A2)(平均粒径1.1μm)は、市販の無水リン酸一水素カルシウム粒子(Product No. 1430, J.T.Baker Chemical Co.社製、平均粒径10.3μm)を50g、95%エタノール(和光純薬工業株式会社製「Ethanol(95)」)を120g、及び直径が10mmのジルコニアボール240gを400mlのアルミナ製粉砕ポット(株式会社ニッカトー製「Type A−3 HDポットミル」)中に加え120rpmの回転速度で24時間湿式粉砕を行うことで得られたスラリーをロータリーエバポレーターでエタノールを留去した後、60℃で6時間乾燥させ、さらに60℃で24時間真空乾燥することで得た。
【0061】
上記リン酸四カルシウム粒子(A1)145.8g、無水リン酸一水素カルシウム粒子(A2)54.2g及び親水性スメクタイト(コープケミカル株式会社製「ルーセンタイト SWN」)、平均粒径4.1μm)40g((A1)及び(A2)の合計100重量部に対し20重量部)を高速回転ミル(アズワン株式会社製「SM−1」)中に加え、3000rpmの回転羽速度で3分間混合することによりリン酸カルシウム組成物を得た。このとき、混合前と混合後でのリン酸四カルシウム粒子(A1)及び無水リン酸一水素カルシウム粒子(A2)の平均粒径は実質的に変化していない。なお、上記リン酸四カルシウム粒子(A1)及び無水リン酸一水素カルシウム粒子(A2)を上記の比率で混合して得られるリン酸カルシウム粒子(A)の平均粒径は16.2μmであった。
【0062】
(2)硬化時間の測定
上記(1)で得たリン酸カルシウム組成物の硬化時間の測定をISO6876(Dental root canal sealing materials)に準じた方法で測定した。PSS(ポリスチレンスルホン酸ナトリウム)水溶液(東ソー有機化学株式会社製「PS−100」、分子量約100万Da、固形分20%)を凍結乾燥して得たPSS粉末20g及びNaHPO(リン酸水素二ナトリウム)3.2gに対して全量が100gとなるように蒸留水を加えて液剤を調製した。上記で得たリン酸カルシウム組成物1gを精秤し、上記調製した液剤から0.25g((A1)及び(A2)の合計100重量部に対し、それぞれPSSを5重量部、NaHPOを0.8重量部それぞれ含有)を加えて混練することでリン酸カルシウム組成物ペーストを調製した(このときの混合重量比(粉/液)は4である)。このリン酸カルシウム組成物ペーストを、37℃、相対湿度98%に調整したキャビネット中において、ガラス板上に載せた内径10mm、高さ2mmの空洞を有するステンレス鋼製リング型に充填し、ペースト上部をスパチュラーを用いて平滑とした。次に、混練終了から180秒後より10秒毎に、重量が100gで直径が2mmの平らな末端部を有するインジケータを上記リン酸カルシウム組成物ペーストの垂直面へ垂直に静かに下げ、針先の痕が見えなくなるまでこの操作を繰り返し、混練より針先痕が見えなくなるまでの時間を測定した(n=5)。実施例1により得たリン酸カルシウム組成物の硬化時間は5分57秒±11秒であった。
【0063】
(3)辺縁漏洩距離の測定
上記で得たリン酸カルシウム組成物1gを精秤し、これに上記(2)と同様に調製した液剤を加えて混練することでリン酸カルシウム組成物ペーストを調製し(このときの混合重量比(粉/液)は4である)、辺縁漏洩距離の測定に用いた。辺縁漏洩距離の測定はISO/TS11405(第2版、歯科材料−歯質への接着試験)の微小漏洩試験方法に準じて実施した。抜去した単根管の牛歯の歯根ならびに歯髄を除去した後、歯根部分を歯科用コンポジットレジン(クラレメディカル製「AP−X」)で塞いだ。次に、頬側面の中央を#80次いで#2000の研磨紙で研磨しエナメル質の平坦な面を作製した。このエナメル質の面に対して歯科用高速ハンドピースを用いて直径約3mm、深さ約2.5mmの窩洞を作製し、この窩洞中に上記ペーストを充填し、37℃、相対湿度98%の条件で4時間保存することで硬化させた。次に、この試料を37℃の蒸留水中で24時間保存した後にpH7.2に調整した0.2%塩基性フクシン溶液中に浸漬し25℃で24時間保存した。次に、Water−Cooled Diamond Blade(Buehler Ltd製「Isomet」)を用いて窩洞の中央部を切断し、断面をマイクロスコープ(キーエンス製)を用いて拡大像を観察し、歯質と材料の界面において最も深く色素が浸入した距離を辺縁漏洩距離とした(n=5)。実施例1により得たリン酸カルシウム組成物の辺縁漏洩距離は0.31±0.09mmであった。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0064】
実施例2
実施例1において、PSS粉末、及びNaHPOの混合溶液を液剤として用いる代わりに、NaHPO(リン酸水素二ナトリウム)3.2gを蒸留水100gに溶解した溶液から0.25g((A1)及び(A2)の合計100重量部に対し、0.8重量部を含有)を分取し、液剤として用いた以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物ペーストを調製して評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0065】
実施例3
実施例1において、PSS粉末、及びNaHPOの混合溶液を液剤として用いる代わりに、水0.25gを液剤として用いた以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物ペーストを調製して評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0066】
実施例4及び5
実施例1において、親水性スメクタイトの含有量を、それぞれ25重量部(実施例4)、及び0.75重量部(実施例5)とし、PSS粉末、及びNaHPOの混合溶液を液剤として用いる代わりに、水0.25gを液剤として用いた以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物ペーストを調製して評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0067】
実施例6
実施例1において、リン酸四カルシウム粒子(A1)145.8g及び無水リン酸一水素カルシウム粒子(A2)54.2gを混合してリン酸カルシウム粉体組成物を調製し、これに(A1)と(A2)の合計100重量部に対して0.75重量部となるように親水性スメクタイトが分散した水分散液0.25gを加えて混練した以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物ペーストを調製して評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0068】
実施例7
実施例1において、親水性スメクタイトの代わりに親油性スメクタイト(コープケミカル株式会社製「ルーセンタイト SEN」、平均粒径3.3μm)を用いてリン酸カルシウム粉体組成物を調製し、PSS粉末、及びNaHPOの混合溶液を液剤として用いる代わりに、NaHPO(リン酸水素二ナトリウム)3.2gを蒸留水100gに溶解した溶液から0.25g((A1)及び(A2)の合計100重量部に対し、0.8重量部を含有)を分取し、液剤として用いた以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物ペーストを調製して評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0069】
実施例8
実施例3において、リン酸四カルシウム粒子(A1)と無水リン酸一水素カルシウム粒子(A2)のモル比(A1/A2)を0.7とした以外は、実施例3と同様にしてリン酸カルシウム組成物ペーストを調製して評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0070】
比較例1
実施例1において、親水性スメクタイトを添加せずにリン酸カルシウム粉体組成物を調製し、PSS粉末、及びNaHPOの混合溶液を液剤として用いる代わりに、NaHPO(リン酸水素二ナトリウム)3.2gを蒸留水100gに溶解した溶液から0.25g((A1)及び(A2)の合計100重量部に対し、0.8重量部を含有)を分取し、液剤として用いた以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物ペーストを調製して評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0071】
比較例2
実施例1において、親水性スメクタイトを添加せずにリン酸カルシウム粉体組成物を調製し、PSS粉末、及びNaHPOの混合溶液を液剤として用いる代わりに、水0.25gを液剤として用いた以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物ペーストを調製して評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0072】
比較例3
実施例1において、リン酸四カルシウム粒子(A1)145.8g及び無水リン酸一水素カルシウム粒子(A2)54.2gを混合してリン酸カルシウム粉体組成物を調製し、これに(A1)と(A2)の合計100重量部に対して0.25重量部となるように親水性スメクタイトが分散した水分散液0.25gを加えて混練した以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウム組成物ペーストを調製して評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0073】
比較例4及び5
実施例3において、親水性スメクタイトの含有量を、それぞれ0.25重量部(比較例4)及び35重量部(比較例5)とした以外は、実施例3と同様にしてリン酸カルシウム組成物ペーストを調製して評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0074】
【表1】

【0075】
表1から分かるように、層状ケイ酸塩粒子(E)をリン酸カルシウム粒子(A)100重量部に対して0.5〜30重量部含む実施例1〜8では、層状ケイ酸塩粒子(E)を前記一定範囲の量添加しなかった比較例1〜5と比べて、辺縁漏洩距離が短いことから充填部位の封鎖性が良好である。このことにより、層状ケイ酸塩粒子(E)を一定量含むことによる効果は明らかであり、また、実施例1〜8では、硬化時間も適切な範囲内にあった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸カルシウム粒子(A)及び層状ケイ酸塩粒子(E)を含むリン酸カルシウム組成物であって、リン酸カルシウム粒子(A)100重量部に対して層状ケイ酸塩粒子(E)を0.5〜30重量部含むことを特徴とするリン酸カルシウム組成物。
【請求項2】
層状ケイ酸塩粒子(E)がスメクタイト族に属する層状ケイ酸塩粒子である請求項1記載のリン酸カルシウム組成物。
【請求項3】
層状ケイ酸塩粒子(E)の平均粒径が0.1〜10μmである請求項1又は2記載のリン酸カルシウム組成物。
【請求項4】
層状ケイ酸塩粒子(E)の25℃における水蒸気吸着体積が100cm(STP)g−1以上である請求項1〜3のいずれか記載のリン酸カルシウム組成物。
【請求項5】
更にスルホン酸塩(B)及び/又はリン酸のアルカリ金属塩(C)を含む請求項1〜4のいずれか記載のリン酸カルシウム組成物。
【請求項6】
リン酸のアルカリ金属塩(C)がリン酸一水素二ナトリウム及び/又はリン酸二水素一ナトリウムである請求項5記載のリン酸カルシウム組成物。
【請求項7】
リン酸カルシウム粒子(A)がリン酸四カルシウム粒子(A1)及び酸性リン酸カルシウム粒子(A2)からなる請求項1〜6のいずれか記載のリン酸カルシウム組成物。
【請求項8】
リン酸四カルシウム粒子(A1)と酸性リン酸カルシウム粒子(A2)の配合割合(A1/A2)がモル比で40/60〜60/40である請求項7記載のリン酸カルシウム組成物。
【請求項9】
粉体である請求項1〜8のいずれか記載のリン酸カルシウム組成物。
【請求項10】
リン酸カルシウム粒子(A)及び層状ケイ酸塩粒子(E)を含む粉体と水を主成分とする液体とからなる医療用キットであって、リン酸カルシウム粒子(A)100重量部に対して層状ケイ酸塩粒子(E)を0.5〜30重量部含むことを特徴とする医療用キット。
【請求項11】
リン酸カルシウム粒子(A)を含む粉体と層状ケイ酸塩粒子(E)を含む水分散液とからなる医療用キットであって、リン酸カルシウム粒子(A)100重量部に対して層状ケイ酸塩粒子(E)を0.5〜30重量部含むことを特徴とする医療用キット。
【請求項12】
リン酸カルシウム粒子(A)及び層状ケイ酸塩粒子(E)を含むリン酸カルシウム組成物粉体の製造方法であって、
リン酸カルシウム粒子(A)100重量部に対して層状ケイ酸塩粒子(E)を0.5〜30重量部含み、かつリン酸カルシウム粒子(A)及び層状ケイ酸塩粒子(E)を粉体の状態で混合することを特徴とするリン酸カルシウム組成物粉体の製造方法。
【請求項13】
リン酸カルシウム粒子(A)がリン酸四カルシウム粒子(A1)及び酸性リン酸カルシウム粒子(A2)からなり、リン酸四カルシウム粒子(A1)、酸性リン酸カルシウム粒子(A2)及び層状ケイ酸塩粒子(E)を粉体の状態で混合する請求項12記載のリン酸カルシウム組成物粉体の製造方法。
【請求項14】
リン酸カルシウム粒子(A)及び層状ケイ酸塩粒子(E)を含むリン酸カルシウム組成物ペーストの製造方法であって、
リン酸カルシウム粒子(A)100重量部に対して層状ケイ酸塩粒子(E)を0.5〜30重量部含むリン酸カルシウム組成物の粉体に、水を主成分とする液体を加えて混練することを特徴とするリン酸カルシウム組成物ペーストの製造方法。
【請求項15】
リン酸カルシウム粒子(A)及び層状ケイ酸塩粒子(E)を含むリン酸カルシウム組成物ペーストの製造方法であって、
リン酸カルシウム粒子(A)100重量部に対して層状ケイ酸塩粒子(E)を0.5〜30重量部含む水分散液を、リン酸カルシウム粒子(A)からなる粉体に加えて混練することを特徴とするリン酸カルシウム組成物ペーストの製造方法。
【請求項16】
請求項1〜9のいずれか記載のリン酸カルシウム組成物からなる医療用組成物。
【請求項17】
請求項1〜9のいずれか記載のリン酸カルシウム組成物からなる骨セメント。
【請求項18】
請求項1〜9のいずれか記載のリン酸カルシウム組成物からなる歯科用充填材。

【公開番号】特開2009−195452(P2009−195452A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39852(P2008−39852)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(301069384)クラレメディカル株式会社 (110)
【Fターム(参考)】