説明

リン酸基含有ビニル系重合体含有組成物の製造方法

【課題】オキシアルキレン基の平均重合度が3以下のリン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートと、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物とを乳化重合して、実質的に均一なエマルジョンを形成しながらリン酸基含有ビニル系重合体含有組成物を製造する方法を提供する。
【解決手段】オキシアルキレン基の平均重合度が3以下のリン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートと、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物とを、(ポリ)エーテル基、四級アンモニウム塩基及び長鎖炭化水素基のいずれかを有する塩基性含窒素化合物の共存下、水媒体中で乳化重合する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキシアルキレン基の平均重合度が3以下のリン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートと、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物とを乳化重合して、実質的に均一なエマルジョンを形成しながらリン酸基含有ビニル系重合体含有組成物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートと、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物(アクリル系モノマー、スチレン等)とを共重合してなるリン酸基含有ビニル系重合体は、難燃性、接着性、耐熱性、耐食性、成形性等に優れているので、塗料、繊維処理剤、トナー用バインダー、接着剤、電子部品の封止用材料、電子機器の部品用成形材料等多岐の分野で有用である。
【0003】
リン酸基含有ビニル系重合体を乳化重合法により調製すると、高分子量の共重合体を比較的容易に調製できたり、得られるラテックスを塗料、繊維処理剤、接着剤等の用途にそのまま用いることができたりする等の利点がある。しかし乳化重合には一般的に乳化剤を使用するので、残留した乳化剤の重合体中での分散性が悪いと、例えばリン酸基含有ビニル系重合体を塗料やトナー用バインダーとして用いた場合、塗膜の接着性やトナー粒子の強度に悪影響を及ぼすことがある。
【0004】
そこで特表2003-529645号(特許文献1)は、接着性等の物性に優れたリン酸基含有ビニル系重合体を乳化重合により製造する方法として、少なくとも2個のオキシプロピレン単位を有するポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートのリン酸モノエステル及びリン酸ジエステルを80/20より大きい重量比で有するモノマーを乳化剤として作用させながら、このモノマーと、少なくとも一種の他の重合可能なモノマーとを乳化重合により共重合させる方法を記載している。
【0005】
しかし特許文献1の実施例で用いられているリン酸エステル化ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートは、オキシアルキレン基の重合度が5及び6のものである。オキシアルキレン基の重合度が3以下のリン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートを原料とする場合、その他の重合可能なモノマーとの相溶性が悪く、フェノール誘導体等の一般的な乳化剤を用いなければ乳化重合することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2003-529645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、オキシアルキレン基の平均重合度が3以下のリン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートと、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物とを乳化重合して、実質的に均一なエマルジョンを形成しながらリン酸基含有ビニル系重合体含有組成物を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、オキシアルキレン基の平均重合度が3以下のリン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートと、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物とを、(ポリ)エーテル基、四級アンモニウム塩基及び長鎖炭化水素基のいずれかを有する塩基性含窒素化合物の共存下、水媒体中で重合すると、実質的に均一なエマルジョンを形成しながらリン酸基含有ビニル系重合体含有組成物を製造することができることを見出し、本発明に想到した。
【0009】
すなわち、本発明のリン酸基含有ビニル系重合体含有組成物の製造方法は、オキシアルキレン基の平均重合度が3以下のリン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート(A)と、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物(B)とを、塩基性含窒素化合物(C)の共存下で乳化重合するものであって、
前記リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート(A)は、式(1):
【化1】

[ただしR1は水素基又はメチル基であり、R2は炭素数が2〜4で、直鎖状又は分岐状で、少なくとも一部の水素基が塩素基で置換されていてもよいアルキレン基であり、nは1〜6の整数であり、かつ前記nの平均は3以下であり、X1は-P(O)(OH)2基又は-P(O)(OH)-OP(O)(OH)2基であり、前記X1の水酸基の一部がH2C=CRa-C(O)-O-(Rb-O)n'-基(Raは水素基又はメチル基であり、Rbは炭素数が2〜4で、直鎖状又は分岐状で、少なくとも一部の水素基が塩素基で置換されていてもよいアルキレン基であり、n'は1〜6の整数であり、かつn'の平均は3以下である)で置換されていてもよい]で表される化合物であり、
前記その他のエチレン性不飽和結合含有化合物(B)は、分子内に少なくとも一個のエチレン性不飽和結合を有するが酸性基を有しない不飽和化合物(B-1)、及び分子内にエチレン性不飽和結合と酸性基とを各々少なくとも一個有する不飽和化合物(B-2)のいずれか又はこれらの混合物であり、
前記塩基性含窒素化合物(C)は、(ポリ)エーテル基を少なくとも一つ有するアミン系界面活性剤(C-1)、四級アンモニウム塩基を含有するカチオン性界面活性剤(C-2)、及び炭素数7〜30の長鎖炭化水素基を少なくとも一つ有するアミン(C-3)からなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする。
【0010】
一層均一なエマルジョンを形成するために、予め前記リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート(A)に前記塩基性含窒素化合物(C)を混合して組成物(A+C)を調製し、前記組成物(A+C)と前記その他のエチレン性不飽和結合含有化合物(B)とを反応させるのが好ましい。
【0011】
前記リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート(A)は、式(1a):
【化2】

(ただしR1、R2、n及びその平均は式(1)と同じである)により表されるリン酸モノエステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート、式(1b):
【化3】

(ただしR1a及びR1bはそれぞれ独立に水素基又はメチル基であり、R2a及びR2bはそれぞれ独立に炭素数が2〜4で、直鎖状又は分岐状で、少なくとも一部の水素基が塩素基で置換されていてもよいアルキレン基であり、n1及びn2はそれぞれ独立に1〜6の整数であり、かつ前記n1及びn2の各平均は3以下である)により表されるリン酸ジエステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート、式(1c):
【化4】

(ただしR1、R2、n及びその平均は式(1)と同じである)により表されるピロリン酸モノエステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート、及び式(1d):
【化5】

(ただしR1c及びR1dはそれぞれ独立に水素基又はメチル基であり、R2c及びR2dはそれぞれ独立に炭素数が2〜4で、直鎖状又は分岐状で、少なくとも一部の水素基が塩素基で置換されていてもよいアルキレン基であり、n3及びn4はそれぞれ独立に1〜6の整数であり、かつ前記n3及びn4の各平均は3以下である)により表されるピロリン酸ジエステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートからなる群から選ばれた少なくとも一種であるのが好ましい。
【0012】
前記(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤(C-1)は、式(2):
【化6】

[ただしR3は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R4は炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R5は-(R5aO)kH基(R5aは炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である)、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、又は水素基であり、f及びkはそれぞれ独立に1〜30の整数である]により表される第一の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤、及び式(3):
【化7】

[ただしR6は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R7は-(R7aO)sH基(R7aは炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である)、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、又は水素基であり、R8は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R9は炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R10は-(R10aO)tH基(R10aは炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である)、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、又は水素基であり、r、s及びtはそれぞれ独立に1〜30の整数である]により表される第二の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤のいずれか又はこれらの混合物であるのが好ましい。
【0013】
前記第一の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤は、式(2a):
【化8】

(ただしR3aは炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、f及びkは式(2)と同じである)により表される化合物であるのが好ましい。前記第二の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤は、式(3a):
【化9】

(ただしR6aは炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、r、s及びtは式(3)と同じである)により表される化合物であるのが好ましい。
【0014】
前記カチオン性界面活性剤(C-2)は、式(4):
【化10】

(ただしR11及びR14はそれぞれ独立に炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R12及びR13はそれぞれ独立に炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、前記R11〜R14にはいずれも水酸基、エステル結合及びアミノ基からなる群から選ばれた少なくとも一種が結合していてもよく、Y-は対イオンである)により表される第一のカチオン性界面活性剤、式(5):
【化11】

(ただしR15は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、Y-は対イオンである)により表される第二のカチオン性界面活性剤、式(6):
【化12】

(ただしR16は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R17及びR18はそれぞれ独立に炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、R19は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、炭素数6〜30のアリーレン基又は炭素数7〜30のアリーレンアルキル基であり、前記R16〜R19にはいずれも水酸基、エステル結合及びアミノ基からなる群から選ばれた少なくとも一種が結合していてもよい)により表される第三のカチオン性界面活性剤、及び式(7):
【化13】

(ただしR20は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基である)により表される第四のカチオン性界面活性剤からなる群から選ばれた少なくとも一種であるのが好ましい。
【0015】
前記第一のカチオン性界面活性剤は、式(4a):
【化14】

(ただしR11及びY-は式(4)と同じである)により表されるトリメチル型カチオン性界面活性剤、式(4b):
【化15】

(ただしR11及びY-は式(4)と同じであり、R14aは炭素数2〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数8〜30のアリールアルキル基である)により表されるジアルキル型カチオン性界面活性剤、式(4c):
【化16】

(ただしR11及びY-は式(4)と同じである)により表されるベンジル型カチオン性界面活性剤、及び式(4d):
【化17】

(ただしR11a,R14bはそれぞれ独立に炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、Y-は式(4)と同じである)により表されるヒドロキシエステル型カチオン性界面活性剤のいずれか又はこれらの組合せであるのが好ましい。前記第三のカチオン性界面活性剤は、式(6a):
【化18】

(ただしR16は式(6)と同じである)により表される化合物であるのが好ましい。
【0016】
前記長鎖炭化水素基含有アミン(C-3)は、式(8):
【化19】

(ただしR21は炭素数7〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基であり、R22及びR23はそれぞれ独立に水素基、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、前記R21〜R23にはいずれも水酸基及びエステル結合のいずれか又は両方が結合していてもよい)により表される第一の長鎖炭化水素基含有アミン、及び式(9):
【化20】

[ただしR24は炭素数7〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基であり、R25〜R27はそれぞれ独立に水素基、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、前記R24〜R27にはいずれも水酸基及びエステル結合のいずれか又は両方が結合していてもよく、R28は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である]により表される第二の長鎖炭化水素基含有アミンのいずれか又はこれらの混合物であるのが好ましい。
【0017】
前記第一の長鎖炭化水素基含有アミンは、式(8a):
【化21】

(ただしR21aは炭素数10〜25の直鎖状もしくは分岐状の飽和アルキル基である)により表される化合物であるのが好ましい。前記第二の長鎖炭化水素基含有アミンは、式(9a):
【化22】

(ただしR24aは炭素数10〜25の直鎖状もしくは分岐状の飽和アルキル基、R28aは炭素数2〜5の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である)により表される化合物であるのが好ましい。
【0018】
前記酸性基非含有不飽和化合物(B-1)は、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N, N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、スチレン、少なくとも一部の水素基がメチル基で置換されたスチレン、ジビニルベンゼン、脂肪酸ビニルエステル、ハロゲン化ビニル、少なくとも一部の水素基がフッ素基で置換された(メタ)アクリル酸エステル、少なくとも一部の水素基がフッ素基で置換された(メタ)アクリル酸、及び少なくとも一部の水素基がフッ素基で置換されたアルキル基を含有するビニルからなる群から選ばれた少なくとも一種であるのが好ましい。前記酸性基含有不飽和化合物(B-2)は、ターシャリーブチルアクリルアミドスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、p-スチレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸ブチル-4-スルホン酸、(メタ)アクリロオキシベンゼンスルホン酸、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸及びその無水物、フマル酸、イタコン酸、及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれた少なくとも一種であるのが好ましい。
【0019】
一層均一なエマルジョンを形成するために、前記リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート(A)1モルに対する前記塩基性含窒素化合物(C)の配合割合を0.5〜2モルとするのが好ましい。
【0020】
前記リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート含有組成物(A+C)と、前記その他のエチレン性不飽和結合含有化合物(B)との質量比(A+C)/(B)は、(5/95)〜(60/40)であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のリン酸基含有ビニル系重合体含有組成物の製造方法は、オキシアルキレン基の平均重合度が3以下のリン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートと、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物とを、(ポリ)エーテル基、四級アンモニウム塩基及び長鎖炭化水素基のいずれかを有する塩基性含窒素化合物の共存下、水媒体中で重合するので、乳化重合により実質的に均一なエマルジョンを形成しながらリン酸基含有ビニル系重合体含有組成物を製造することができる。得られるリン酸基含有ビニル系重合体含有組成物は、実質的に均一であり、難燃性、接着性、耐熱性、耐食性、成形性、及び透明性に優れており、塗料、繊維処理剤、トナー用バインダー、接着剤、電子部品の封止用材料、電子機器の部品用成形材料等多岐の分野で有用である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[1] リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート
リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートは、式(1):
【化23】

[ただしR1は水素基又はメチル基であり、R2は炭素数が2〜4で、直鎖状又は分岐状で、少なくとも一部の水素基が塩素基で置換されていてもよいアルキレン基であり、nは1〜6の整数であり、かつnの平均は3以下であり、X1は-P(O)(OH)2基又は-P(O)(OH)-OP(O)(OH)2基であり、X1の水酸基の一部がH2C=CRa-C(O)-O-(Rb-O)n'-基(Raは水素基又はメチル基であり、Rbは炭素数が2〜4で、直鎖状又は分岐状で、少なくとも一部の水素基が塩素基で置換されていてもよいアルキレン基であり、n'は1〜6の整数であり、かつn'の平均は3以下である)で置換されていてもよい]で表される。
【0023】
オキシアルキレン基の重合度n及びn'の各平均(平均重合度)は3以下である。この平均重合度が3以下であっても、後述する塩基性含窒素化合物の共存下で、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物とともに乳化重合することにより、エマルジョンを形成することができ、実質的に均一なリン酸基含有ビニル系重合体含有組成物が得られる。この平均重合度は2以下が好ましく、1.5以下がより好ましい。
【0024】
リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートは単独物でもよいし、上記重合度n及びn'の各平均が3以下である限り混合物であってもよい。例えば、上記重合度n及びn'の各平均が3以下である限り、重合度n及びn'が3超の単量体を含む混合物であってもよい。
【0025】
リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートとしては、以下のリン酸モノエステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート(A-1)、リン酸ジエステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート(A-2)、ピロリン酸モノエステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート(A-3)、及びピロリン酸ジエステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート(A-4)からなる群から選ばれた少なくとも一種であるのが好ましい。
【0026】
リン酸モノエステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート(A-1)は、式(1a):
【化24】

(ただしR1、R2、n及びその平均は式(1)と同じである)により表される。
【0027】
リン酸ジエステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート(A-2)は、式(1b):
【化25】

(ただしR1a及びR1bはそれぞれ独立に水素基又はメチル基であり、R2a及びR2bはそれぞれ独立に炭素数が2〜4で、直鎖状又は分岐状で、少なくとも一部の水素基が塩素基で置換されていてもよいアルキレン基であり、n1及びn2はそれぞれ独立に1〜6の整数であり、かつn1及びn2の各平均は3以下である)により表される。
【0028】
ピロリン酸モノエステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート(A-3)は、式(1c):
【化26】

(ただしR1、R2、n及びその平均は式(1)と同じである)により表される。
【0029】
ピロリン酸ジエステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート(A-4)は、式(1d):
【化27】

(ただしR1c及びR1dはそれぞれ独立に水素基又はメチル基であり、R2c及びR2dはそれぞれ独立に炭素数が2〜4で、直鎖状又は分岐状で、少なくとも一部の水素基が塩素基で置換されていてもよいアルキレン基であり、n3及びn4はそれぞれ独立に1〜6の整数であり、かつn3及びn4の各平均は3以下である)により表される。
【0030】
リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートとしては、上記(A-1)の単独物、又は(A-1)と上記(A-2)〜(A-4)からなる群から選ばれた少なくとも一種とからなる組成物がより好ましい。この組成物の配合モル比(A-1)/[(A-2)〜(A-4)の合計]は1/2以上であるのが好ましい。この組成物は上記(A-1)及び(A-2)からなるのが好ましい。
【0031】
リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート(A-1)〜(A-4)は、例えば(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート(ただしオキシアルキレン基の炭素数は2〜4であり、オキシアルキレン基の重合度は1〜6であり、この重合度の平均は3以下である)と、リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸及びオキシ塩化リンからなる群から選ばれた少なくとも一種とを反応させ、必要に応じて加水分解することにより得られる。リン酸としては、正リン酸、無水リン酸(五酸化リン=P2O5)又はこれらの混合物でよいが、無水リン酸が好ましい。
【0032】
リン酸モノエステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート(A-1)のうち、代表的なものの構造式及び物性をそれぞれ表1及び表2に示す。これらの単量体はユニケミカル株式会社から商品名Phosmer(登録商標)として販売されている。ただし本発明に使用できるリン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートはこれらに限定されるものではない。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
注:(1) Brookfield型粘度計により測定(括弧内はロータNo.を示す)。
(2) 単位は質量%。
【0036】
上記のように、リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートは、オキシアルキレン基の平均重合度が3以下である限り、オキシアルキレン基の重合度が3超の単量体を含む混合物であってもよい。そのような混合物として、オキシアルキレン基の重合度が3以下のリン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートと、オキシアルキレン基の重合度が3超のリン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートとを、オキシアルキレン基の平均重合度が3以下となるように混合した組成物が挙げられる。オキシアルキレン基の重合度が3以下のリン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートの具体例として、Phosmer M、Phosmer CL及びPhosmer BAからなる群から選ばれた少なくとも一種が挙げられる。オキシアルキレン基の重合度が3超のリン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートの具体例として、Phosmer PE(商品名。ユニケミカル株式会社製。重合度4〜5のポリオキシエチレン基を有する。)及びPhosmer PP(商品名。ユニケミカル株式会社製。重合度5〜6のポリオキシプロピレン基を有する。)のいずれか又はこれらの両方が挙げられる。
【0037】
[2] 塩基性含窒素化合物
塩基性含窒素化合物は、(ポリ)エーテル基を少なくとも一つ有するアミン系界面活性剤、四級アンモニウム塩基を含有するカチオン性界面活性剤、及び炭素数7〜30の長鎖炭化水素基を少なくとも一つ有するアミンに大別される。
【0038】
(1) (ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤
(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤として、以下の第一及び第二の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤が好ましい。第一の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤は式(2):
【化28】

[ただしR3は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R4は炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R5は-(R5aO)kH基(R5aは炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である)、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、又は水素基であり、f及びkはそれぞれ独立に1〜30の整数である]により表される。
【0039】
R3としては炭素数10〜25の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基が好ましい。R4としてはエチレン基及びプロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。R5としては上記-(R5aO)kH基又は水素基が好ましい。上記-(R5aO)kH基のR5aとしては、エチレン基及びプロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。f及びkはそれぞれ独立に1〜25の整数であるのが好ましい。
【0040】
第一の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤は式(2a):
【化29】

(ただしR3aは炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、f及びkは式(2)と同じである)により表される化合物が最も好ましい。R3aの炭素数は10〜25が好ましい。
【0041】
第一の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤の市販品として、ナイミーンL-201,同L-202,同L-207,同F-215,同S-202,同S-204,同S-210,同S-215,同S-220,同O-205,同T2-202,同T2-210,同T2-230(以上日油株式会社製)等が挙げられる。
【0042】
第二の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤は式(3):
【化30】

[ただしR6は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R7は-(R7aO)sH基(R7aは炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である)、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、又は水素基であり、R8は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R9は炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R10は-(R10aO)tH基(R10aは炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である)、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、又は水素基であり、r、s及びtはそれぞれ独立に1〜30の整数である]により表される。
【0043】
R6は炭素数10〜25のアルキル基であるのが好ましい。R7としては上記-(R7aO)sH基又は水素基が好ましい。上記-(R7aO)sH基のR7aとしては、エチレン基及びプロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。R8としてはプロピレン基が好ましい。R9としてはエチレン基及びプロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。R10としては上記-(R10aO)tH基又は水素基が好ましい。上記-(R10aO)tH基のR10aとしては、エチレン基及びプロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。r、s及びtはそれぞれ独立に1〜25の整数であるのが好ましい。
【0044】
第二の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤は式(3a):
【化31】

(ただしR6aは炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、r、s及びtは式(3)と同じである)により表される化合物が最も好ましい。
【0045】
第二の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤の市販品として、ナイミーンDT-203,同L-208(以上日油株式会社製)等が挙げられる。
【0046】
(2) カチオン性界面活性剤
カチオン性界面活性剤は四級アンモニウム塩基を含有する。カチオン性界面活性剤として、以下の第一〜第四のカチオン性界面活性剤が好ましい。第一のカチオン性界面活性剤は式(4):
【化32】

(ただしR11及びR14はそれぞれ独立に炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R12及びR13はそれぞれ独立に炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、R11〜R14にはいずれも水酸基、エステル結合及びアミノ基からなる群から選ばれた少なくとも一種が結合していてもよく、Y-は対イオンである)により表される。
【0047】
第一のカチオン性界面活性剤としては、式(4a):
【化33】

(ただしR11及びY-は式(4)と同じである)により表されるトリメチル型カチオン性界面活性剤、式(4b):
【化34】

(ただしR11及びY-は式(4)と同じであり、R14aは炭素数2〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数8〜30のアリールアルキル基である)により表されるジアルキル型カチオン性界面活性剤、式(4c):
【化35】

(ただしR11及びY-は式(4)と同じである)により表されるベンジル型カチオン性界面活性剤、及び式(4d):
【化36】

(ただしR11a,R14bはそれぞれ独立に炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、Y-は式(4)と同じである)により表されるヒドロキシエステル型カチオン性界面活性剤が好ましい。ベンジル型カチオン性界面活性剤のR11は、炭素数10〜25のアルキル基であるのが好ましい。
【0048】
対イオンY-としては、ハロゲンイオン(塩素イオン等)、アルキル硫酸イオン(CH3SO4-等)、アルキルもしくはアリールスルホン酸イオン、アルキル亜硫酸イオン、アルキルリン酸イオン等が挙げられる。
【0049】
トリメチル型カチオン性界面活性剤の市販品として、ニッサンカチオンBB,同FB,同FB-500,同PB-40R,同PB-300,同ABT2-500,同AB,同AB-600,同VB-M2フレーク,同VB-F(以上日油株式会社製)等が挙げられる。ジアルキル型カチオン性界面活性剤の市販品として、ニッサンカチオン2-DB-500E,同2-DB-800E,同2ABT,同2-OLR(以上日油株式会社製)等が挙げられる。ベンジル型カチオン性界面活性剤の市販品として、ニッサンカチオンF2-40R,同F2-50R,同M2-100R(以上日油株式会社製)等が挙げられる。ヒドロキシエステル型カチオン性界面活性剤の市販品として、ニッサンカチオンEQ-01D(日油株式会社製)等が挙げられる。
【0050】
第二のカチオン性界面活性剤は式(5):
【化37】

(ただしR15は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、Y-は対イオンである)により表される。Y-は上記と同じでよい。第二のカチオン性界面活性剤の市販品としてニッサンカチオンAR-4(日油株式会社製)等が挙げられる。
【0051】
第三のカチオン性界面活性剤は、式(6):
【化38】

(ただしR16は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R17及びR18はそれぞれ独立に炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、R19は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、炭素数6〜30のアリーレン基又は炭素数7〜30のアリーレンアルキル基であり、R16〜R19にはいずれも水酸基、エステル結合及びアミノ基からなる群から選ばれた少なくとも一種が結合していてもよい)により表される。
【0052】
第三のカチオン性界面活性剤としては、式(6a):
【化39】

(ただしR16は式(6)と同じである)により表される化合物が最も好ましい。
【0053】
第三のカチオン性界面活性剤の市販品として、ニッサンアノンBF,同BL,同BL-SF,同BDL-SF,同BDC-SF,同BDF-SF,同BDF-R(以上日油株式会社製)等が挙げられる。
【0054】
第四のカチオン性界面活性剤は、式(7):
【化40】

(ただしR20は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基である)により表される。第四のカチオン性界面活性剤の市販品としてニッサンアノンGLM-R,同GLM-R-LV(以上日油株式会社製)等が挙げられる。
【0055】
(3) 長鎖炭化水素基含有アミン
長鎖炭化水素基含有アミンは、炭素数7〜30の長鎖炭化水素基を少なくとも一つ有する。長鎖炭化水素基の炭素数は10〜25が好ましい。長鎖炭化水素基含有アミンとして以下の第一及び第二の長鎖炭化水素基含有アミンが好ましい。第一の長鎖炭化水素基含有アミンは式(8):
【化41】

(ただしR21は炭素数7〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基であり、R22及びR23はそれぞれ独立に水素基、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R21〜R23にはいずれも水酸基及びエステル結合のいずれか又は両方が結合していてもよい)により表される。
【0056】
第一の長鎖炭化水素基含有アミンとしては、式(8a):
【化42】

(ただしR21aは炭素数10〜25の直鎖状もしくは分岐状の飽和アルキル基である)により表される化合物が好ましい。
【0057】
第一の長鎖炭化水素基含有アミンの市販品として、ニッサンアミンBB,同FB,同MB,同PB,同AB,同ABT,同OB,同SB,同VB(以上日油株式会社製)等が挙げられる。
【0058】
第二の長鎖炭化水素基含有アミンは式(9):
【化43】

[ただしR24は炭素数7〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基であり、R25〜R27はそれぞれ独立に水素基、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R24〜R27にはいずれも水酸基及びエステル結合のいずれか又は両方が結合していてもよく、R28は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である]により表される。
【0059】
第二の長鎖炭化水素基含有アミンとしては、式(9a):
【化44】

(ただしR24aは炭素数10〜25の直鎖状もしくは分岐状の飽和アルキル基、R28aは炭素数2〜5の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である)により表される化合物が好ましい。
【0060】
第二の長鎖炭化水素基含有アミンの市販品として、ニッサンアミンDT,同DOB-R(以上日油株式会社製)等が挙げられる。
【0061】
[3] 共重合するその他のエチレン性不飽和結合含有化合物
上記リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートと共重合するその他のエチレン性不飽和結合含有化合物は用途に応じて適宜選択されるが、以下の二群(1) 分子内に少なくとも一個のエチレン性不飽和結合を有するが酸性基を有しない不飽和化合物、及び(2) 分子内にエチレン性不飽和結合と酸性基とを各々少なくとも一個有する不飽和化合物に大別できる。
【0062】
(1) 酸性基を含有しない不飽和化合物
酸性基非含有不飽和化合物としては、常温で気体でない、分子内に少なくとも一個のエチレン性不飽和結合を有する不飽和化合物がすべて対象になるが、中でも(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N, N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、置換又は無置換のスチレン、ジビニルベンゼン、脂肪酸ビニルエステル(酢酸ビニル等)、ハロゲン化ビニル、少なくとも一部の水素基がフッ素基で置換された(メタ)アクリル酸エステル、少なくとも一部の水素基がフッ素基で置換された(メタ)アクリル酸、少なくとも一部の水素基がフッ素基で置換されたアルキル基を含有するビニル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上を併用しても良い。
【0063】
(メタ)アクリル酸エステルとして、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0064】
N, N-ジアルキル(メタ)アクリルアミドとしてはN, N-ジメチル(メタ)アクリルアミドが好ましい。ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとして、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0065】
置換スチレンとして、少なくとも一部の水素基がメチル基で置換されたスチレンが挙げられ、具体的にはα-メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。ハロゲン化ビニルとして、塩化ビニル、フッ化ビニル、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン等が挙げられる。
【0066】
少なくとも一部の水素基がフッ素基で置換された(メタ)アクリル酸エステルとして、ハイドロフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。その具体例として、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート及びターシャリーブチル-α-(トリフルオロメチル)アクリレートが挙げられる。少なくとも一部の水素基がフッ素基で置換された(メタ)アクリル酸として、ハイドロフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸が挙げられる。その具体例として、α-(トリフルオロメチル)アクリル酸が挙げられる。少なくとも一部の水素基がフッ素基で置換されたアルキル基を含有するビニルとして、パーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、パーフルオロデシルエチレン等のパーフルオロアルキル基含有ビニルが挙げられる。
【0067】
(2) 酸性基を含有する不飽和化合物
酸性基としては特に制限されないが、スルホン酸基、カルボン酸基、アルコール性水酸基等が挙げられる。エチレン性不飽和結合を有する骨格としては、(メタ)アクリレート骨格、(メタ)アリルエステル骨格、置換又は無置換の不飽和脂肪族炭化水素骨格、不飽和基により置換された芳香族炭化水素骨格等を挙げることができる。
【0068】
(i) スルホン酸基を含有する不飽和単量体
スルホン酸基を含有する不飽和単量体としては、例えば特開2004-179154号に記載のものが挙げられる。具体的には、ターシャリーブチルアクリルアミドスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、p-スチレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸ブチル-4-スルホン酸、(メタ)アクリロオキシベンゼンスルホン酸等が好ましい。
【0069】
(ii) カルボン酸基を含有する不飽和単量体
カルボン酸基を含有する不飽和単量体の例示化合物としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸及びその無水物、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。
【0070】
(iii) アルコール性水酸基を含有する不飽和単量体
アルコール性水酸基を含有する不飽和単量体としては、ヘキサメチレンジオールジ(メタ)アクリレート;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0071】
[4] リン酸基含有ビニル系重合体含有組成物の製造方法
リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートと、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物とを、塩基性含窒素化合物の共存下で乳化重合することにより、リン酸基含有ビニル系重合体含有組成物を製造する。予めリン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートに塩基性含窒素化合物を混合してリン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート含有組成物を調製し、これとその他のエチレン性不飽和結合含有化合物とを、乳化重合法を用いて共重合反応させるのが好ましい。
【0072】
(1) リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート含有組成物の調製
(i) 配合割合
リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート1モルに対する塩基性含窒素化合物の配合割合は、0.5〜2モルであるのが好ましい。この配合割合を0.5モル未満とすると、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物との相溶性が悪くなり、均一なエマルジョンを形成するのが困難となる。一方この割合を2モル超としても相溶性向上効果が飽和する。この配合割合は1〜2モルがより好ましい。
【0073】
(ii) 調製方法
リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートは常温で液体であるので、塩基性含窒素化合物が常温で液体である場合、リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートと塩基性含窒素化合物とを常温で混合することによりリン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート含有組成物を調製することができる。必要に応じて、加熱してもよいし、溶媒中で混合してもよい。加熱温度は約50℃〜約70℃が好ましい。
【0074】
上記その他のエチレン性不飽和結合含有化合物が液状の場合、これを溶媒としてリン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート含有組成物を調製してもよい。
【0075】
(iii) リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート含有組成物の構造
リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート含有組成物は、実質的に均一で、透明性に優れている。この組成物は、(i) リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート及び塩基性含窒素化合物の単なる混合物であってもよいし、(ii) リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートのリン酸基中の水酸基の少なくとも一部に、塩基性含窒素化合物のアミノ基が反応してなる変性物であってもよいし、(iii) これら(i)及び(ii)の混合物であってもよい。(ii)の変性物は、リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート及び塩基性含窒素化合物が、酸・塩基反応して四級アンモニウム塩を形成したものである。塩基性含窒素化合物による変性度(リン酸基中の水酸基の水素原子が塩基性含窒素化合物により置換された度合)は、リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートと塩基性含窒素化合物の配合割合等により変えることができる。
【0076】
以下、(ii)の変性物の構造について説明する。例えば式(1a)に示すリン酸モノエステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートを用いた場合、得られる変性物は式(1e):
【化45】

[ただしR1,R2,n及びその平均は式(1a)と同じであり、Zはそれぞれ独立に-OH基又は-O-+NR4単位(+NR4はカチオン化した塩基性含窒素化合物である)であり、Zのうちの少なくとも一つは-O-+NR4単位である]で表される。
【0077】
カチオン化した塩基性含窒素化合物+NR4は、式(2)に示す第一の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤を用いた場合、式(2b):
【化46】

(ただしR3〜R5及びfは式(2)と同じである)で表され、式(3)に示す第二の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤を用いた場合、式(3b):
【化47】

(ただしR6〜R10及びrは式(3)と同じである)又は式(3c):
【化48】

(ただしR6〜R10及びrは式(3)と同じである)で表され、式(4)に示す第一のカチオン性界面活性剤を用いた場合、式(4e):
【化49】

(ただしR11〜R14は式(4)と同じである)で表され、式(5)に示す第二のカチオン性界面活性剤を用いた場合、式(5a):
【化50】

(ただしR15は式(5)と同じである)で表され、式(6)に示す第三のカチオン性界面活性剤を用いた場合、式(6b):
【化51】

(ただしR16〜R19は式(6)と同じである)で表され、式(7)に示す第四のカチオン性界面活性剤を用いた場合、式(7a):
【化52】

(ただしR20は式(7)と同じである)で表され、式(8)に示す第一の長鎖炭化水素基含有アミンを用いた場合、式(8b):
【化53】

(ただしR21〜R23は式(8)と同じである)で表され、式(9)に示す第二の長鎖炭化水素基含有アミンを用いた場合、式(9b):
【化54】

(ただしR24〜R28は式(9)と同じである)又は式(9c):
【化55】

(ただしR24〜R28は式(9)と同じである)で表される。
【0078】
以上式(1a)に示すリン酸モノエステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートを用いた場合の変性物の構造について説明したが、式(1b)〜式(1d)に示すリン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートを用いた場合の変性物の構造についても同様である。
【0079】
(2) 乳化重合
(i) 各不飽和化合物の使用割合
リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート(A)及び塩基性含窒素化合物(C)を混合してなる組成物(A+C)と、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物(B)との質量比(A+C)/(B)は特に制限されず、所望の物性に応じて適宜選択すればよい。この質量比は(5/95)〜(60/40)が好ましく、(10/90)〜(60/40)がより好ましい。
【0080】
(ii) 重合の手順及び条件
リン酸基含有ビニル系重合体含有組成物は、上記リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート含有組成物と、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物とを乳化重合法を用いて共重合反応させることにより調製する。この共重合反応は、リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート又はその塩基性含窒素化合物による変性物と、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物とを反応させるものである。乳化重合法を用いることにより、高分子量を有する共重合体を比較的容易に調製することができる。重合度は、用途に応じて適宜変えることができる。上記のように、リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート含有組成物は、実質的に均一であるので、これを用いて得られるリン酸基含有ビニル系重合体含有組成物は、実質的に均一で、透明性に優れている。上記のように、リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート含有組成物の調製時にその他のエチレン性不飽和結合含有化合物を溶媒として用いた場合、リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート含有組成物の調製に引き続き、重合開始剤を添加して共重合を行えばよい。
【0081】
乳化重合は、水媒体中で、重合開始剤を用いてラジカル重合により行う。重合開始剤としては、アンモニウムパーサルフェート(APS)、カリウムパーサルフェート(KPS)、アセチルパーオキサイド、イソプロピルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物系開始剤、2, 2’-アゾビスイソブチロニトリル、2, 2 ’-アゾビス(2, 4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2, 2 ’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ジメチル2, 2 ’-アゾビスイソブチレート等のアゾ系開始剤、あるいはラウリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、tert-ブチルパーオキシ・ピバレート等の過酸化物系開始剤、過酸化水素等が挙げられる。
【0082】
重合手順について述べる。攪拌器、還流冷却器付き反応器に、上記リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート含有組成物、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物、及び水を入れ、脱気した後、添加する重合開始剤の分解温度である40℃〜70℃に昇温する。好ましい重合温度は50℃〜70℃である。所定温度到達直後に重合開始剤を添加する。所定温度に到達してから約1時間間隔で重合開始剤を2〜3回添加した後、10〜24時間程度重合反応を継続する。反応温度は最初から最後まで一定である必要はなく、重合末期に温度を上げて未反応単量体を極力少なくする方法をとってもよい。
【0083】
重合溶液は不飽和原料(リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート含有組成物及びその他のエチレン性不飽和結合含有化合物)の初期固形分濃度が10〜40質量%であるのが好ましい。重合開始剤のトータル使用量は、不飽和原料を100とした場合に質量比で0.1〜5であるのが好ましい。
【0084】
リン酸基含有ビニル系重合体含有組成物を塗料、繊維処理剤、接着剤等に用いる場合、乳化重合により得られたエマルジョン(ラテックス)のまま用いることができる。リン酸基含有ビニル系重合体含有組成物の固形物を回収する場合、エマルジョンを冷却した後、多量の貧溶媒中に混入してリン酸基含有ビニル系重合体含有組成物を分離し、金網等を用いてろ過する。リン酸基含有ビニル系重合体含有組成物は貧溶媒を用いて洗浄するのが好ましい。貧溶媒としてアセトン等が挙げられる。
【0085】
[5] リン酸基含有ビニル系重合体含有組成物
上記の方法により製造されるリン酸基含有ビニル系重合体含有組成物は、リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートとその他のエチレン性不飽和結合含有化合物との共重合体、及び塩基性含窒素化合物を含む。リン酸基含有ビニル系重合体含有組成物は、(i) リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート及びその他のエチレン性不飽和結合含有化合物の共重合体と、塩基性含窒素化合物との単なる混合物であってもよいし、(ii) 上記[4](1)(iii)で説明したリン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートの塩基性含窒素化合物による変性物と、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物との共重合体であってもよいし、(iii) これら(i)及び(ii)の混合物であってもよい。リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート含有組成物が塩基性含窒素化合物による変性物である場合、リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート及び塩基性含窒素化合物が電気的に結合して四級アンモニウム塩を形成しているので、リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート含有組成物がその他のエチレン性不飽和結合含有化合物と反応しても塩基性含窒素化合物は脱離せず、上記(ii)の共重合体が形成される。
【0086】
上記(i)の混合物は、四級アンモニウム塩と共重合体(リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート及びその他のエチレン性不飽和結合含有化合物の共重合体)とが良好に相溶した組成物であり、上記(ii)の共重合体は、四級アンモニウム塩を形成しているので、リン酸基含有ビニル系重合体含有組成物は実質的に均一で、透明性が高く、屈折率にムラがない。リン酸基含有ビニル系重合体含有組成物はまた、優れた難燃性、接着性、耐熱性、耐食性、成形性、透明性等を有する。リン酸基含有ビニル系重合体含有組成物は、射出成形、押し出し成形、プレス成形等を用いて任意の形状に成形することができる。リン酸基含有ビニル系重合体含有組成物は、塗料、繊維処理剤、トナー用バインダー、接着剤、電子部品の封止用材料、電子機器の部品用成形材料等多岐の分野で有用である。
【0087】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0088】
実施例1
アシッド・ホスホオキシエチルメタクリレート(商品名「Phosmer M」、分子量:210、ユニケミカル株式会社製)及びポリオキシエチレン-ステアリルアミン(商品名「ナイミーンS-210」、純度100%、日油株式会社製、上記式(2a)におけるf及びkの合計:10、分子量709)を、モル比が1:1となるように混合し、50〜60℃で30分間撹拌すると透明な組成物(アシッド・ホスホオキシエチルメタクリレート含有組成物。アシッド・ホスホオキシエチルメタクリレートのポリオキシエチレン-ステアリルアミンによる変性物)が得られた。
【0089】
アシッド・ホスホオキシエチルメタクリレート含有組成物とスチレンモノマーとを50:50の配合質量比となるように室温で混合した後、目視により相溶性を評価した。相溶性は以下の基準により判定した。結果を表3に示す。
◎:室温で透明な混合物が得られた。
○:50〜60℃で加熱すると、透明な混合物が得られた。
×:50〜60℃で加熱しても白濁した混合物しか得られなかった。
【0090】
還流冷却管、触媒投入口等を有する自動合成反応装置に、アシッド・ホスホオキシエチルメタクリレート含有組成物とスチレンモノマーとの混合物20質量部、及びイオン交換水80質量部を入れ、窒素ガスを導入しながら攪拌し、60℃まで昇温した後、アシッド・ホスホオキシエチルメタクリレート含有組成物及びスチレンモノマーの合計を100質量%として4質量%のアンモニウムパーサルフェートを、3.5時間の間に3回に分けて添加した。その後22時間50〜60℃に保持した。得られた溶液について、目視により均一なエマルジョンが形成されたか否かを判定した。エマルジョン形成の有無は以下の基準により判定した。結果を表3に示す。
○:分離の認められない、実質的に均一なエマルジョンが形成された。
×:油層と水層に分離した非分散液しか得られなかった。
【0091】
得られたエマルジョン(アシッド・ホスホオキシエチルメタクリレート含有組成物及びスチレンモノマーを共重合してなるビニル系重合体含有組成物を含む)を冷却し、エマルジョンの5倍重量部のアセトンを加え、撹拌した後、金網を用いてろ過し、固形分を回収し、イオン交換水を用いて洗浄した後、60℃で15時間乾燥した。得られた粉末状のビニル系重合体含有組成物をテトラヒドロフランに溶解し、再び乾燥した後、目視により透明性を判定することにより均一性を評価した。透明性は以下の基準により判定した。結果を表3に示す。
○:透明である。
×:白濁している。
【0092】
実施例2〜4
その他のエチレン性不飽和結合含有化合物として、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート及び2-エチルヘキシルアクリレートを各々用いた以外実施例1と同様にして、アシッド・ホスホオキシエチルメタクリレート含有組成物とその他のエチレン性不飽和結合含有化合物とを混合し、ビニル系重合体含有組成物を調製した。アシッド・ホスホオキシエチルメタクリレート含有組成物とその他のエチレン性不飽和結合含有化合物との相溶性、エマルジョン形成の有無、及びビニル系重合体含有組成物の均一性について、上記と同様にして評価した。結果を表3に示す。
【0093】
実施例5〜8
ポリオキシエチレン-ステアリルアミンに替えて、テトラデシルジメチルベンジル-アンモニムクロライド(商品名「ニッサンカチオンM2-100R」、日油株式会社製)を用い、アシッド・ホスホオキシエチルメタクリレート含有組成物とその他のエチレン性不飽和結合含有化合物とを50℃の温度で混合した以外実施例1〜4とそれぞれ同様にして、アシッド・ホスホオキシエチルメタクリレート含有組成物を調製し、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物を混合し、ビニル系重合体含有組成物を調製した。アシッド・ホスホオキシエチルメタクリレート含有組成物とその他のエチレン性不飽和結合含有化合物との相溶性、エマルジョン形成の有無、及びビニル系重合体含有組成物の均一性について、上記と同様にして評価した。結果を表3に示す。
【0094】
実施例9〜12
ポリオキシエチレン-ステアリルアミンに替えて、ジメチルラウリルアミン(商品名「3級ニッサンアミンBB」、アミン価260.5、日油株式会社製)を用いた以外実施例1〜4とそれぞれ同様にして、アシッド・ホスホオキシエチルメタクリレート含有組成物を調製した。得られた各組成物について、組成物とその他のエチレン性不飽和結合含有化合物との配合質量比を10:90とした以外実施例1〜4とそれぞれ同様にして、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物を混合し、ビニル系重合体含有組成物を調製した。アシッド・ホスホオキシエチルメタクリレート含有組成物とその他のエチレン性不飽和結合含有化合物との相溶性、エマルジョン形成の有無、及びビニル系重合体含有組成物の均一性について、上記と同様にして評価した。結果を表3に示す。
【0095】
実施例13〜24
アシッド・ホスホオキシエチルメタクリレートに替えて、3-クロロ-2-アシッド・ホスホオキシプロピルメタクリレート(商品名「Phosmer CL」、分子量:258.5、ユニケミカル株式会社製)を用いた以外実施例1〜12とそれぞれ同様にして、3-クロロ-2-アシッド・ホスホオキシプロピルメタクリレート含有組成物及びビニル系重合体含有組成物を調製した。3-クロロ-2-アシッド・ホスホオキシプロピルメタクリレート含有組成物とその他のエチレン性不飽和結合含有化合物との相溶性、エマルジョン形成の有無、及びビニル系重合体含有組成物の均一性について、上記と同様にして評価した。結果を表3に示す。
【0096】
実施例25〜36
アシッド・ホスホオキシエチルメタクリレートに替えて、アシッド・ホスホオキシブチルアクリレート(商品名「Phosmer BA」、分子量:224、ユニケミカル株式会社製)を用いた以外実施例1〜12とそれぞれ同様にして、アシッド・ホスホオキシブチルアクリレート含有組成物及びビニル系重合体含有組成物を調製した。アシッド・ホスホオキシブチルアクリレート含有組成物とその他のエチレン性不飽和結合含有化合物との相溶性、エマルジョン形成の有無、及びビニル系重合体含有組成物の均一性について、上記と同様にして評価した。結果を表3に示す。
【0097】
比較例1〜4
塩基性含窒素化合物としてモノエタノールアミンを用いた以外実施例1〜4と同様にして、アシッド・ホスホオキシエチルメタクリレート含有組成物を調製し、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物を混合した。アシッド・ホスホオキシエチルメタクリレート含有組成物とその他のエチレン性不飽和結合含有化合物との相溶性、及びエマルジョン形成の有無について、上記と同様にして評価した。結果を表3に示す。
【0098】
比較例5〜8
塩基性含窒素化合物としてモノエタノールアミンを用いた以外実施例13〜16と同様にして、3-クロロ-2-アシッド・ホスホオキシプロピルメタクリレート含有組成物を調製し、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物を混合した。3-クロロ-2-アシッド・ホスホオキシプロピルメタクリレート含有組成物とその他のエチレン性不飽和結合含有化合物との相溶性、及びエマルジョン形成の有無について、上記と同様にして評価した。結果を表3に示す。
【0099】
比較例9〜12
塩基性含窒素化合物としてモノエタノールアミンを用いた以外実施例25〜28と同様にして、アシッド・ホスホオキシブチルアクリレート含有組成物を調製し、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物を混合した。アシッド・ホスホオキシブチルアクリレート含有組成物とその他のエチレン性不飽和結合含有化合物との相溶性、及びエマルジョン形成の有無について、上記と同様にして評価した。結果を表3に示す。
【0100】
【表3】

【0101】
表3(続き)

【0102】
表3(続き)

【0103】
表3(続き)

【0104】
表3(続き)

【0105】
表3(続き)

【0106】
表3(続き)

【0107】
表3(続き)

【0108】
表3(続き)

【0109】
表3(続き)

【0110】
表3(続き)

【0111】
表3(続き)

【0112】
注:(1) 商品名「Phosmer M」、分子量:210、ユニケミカル株式会社製。
(2) 商品名「ナイミーンS-210」、日油株式会社製。
(3) 相溶性は以下の基準により判定した。◎:室温で透明な混合物が得られた。○:50〜60℃で加熱すると、透明な混合物が得られた。×:50〜60℃で加熱しても白濁した混合物しか得られなかった。
(4) 水溶媒。リン酸エステル化アルキレングリコール(メタ)アクリレート含有組成物及びその他のエチレン性不飽和結合含有化合物の合計濃度。
(5) リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート含有組成物及びその他のエチレン性不飽和結合含有化合物の合計を100質量%とする。
(6) エマルジョン形成の有無は以下の基準により判定した。○:分離の認められない、実質的に均一なエマルジョンが形成された。×:水層と油層に二層分離した非分散液しか得られなかった。
(7) 均一性は以下の基準により判定した。○:透明である。×:白濁している。
(8) 商品名「ニッサンカチオンM2-100R」、日油株式会社製。
(9) 商品名「3級ニッサンアミンBB」、アミン価260.5、日油株式会社製。
(10) 商品名「Phosmer CL」、分子量:258.5、ユニケミカル株式会社製。
(11) 商品名「Phosmer BA」、分子量:224、ユニケミカル株式会社製。
【0113】
表3から、実施例1〜36のリン酸エステル化アルキレングリコール(メタ)アクリレート含有組成物はいずれも、スチレンモノマー及びアルキルアクリレートに対して優れた相溶性を有することが分かった。実施例1〜36では実質的に均一なエマルジョンが形成された。また実施例1〜36のリン酸エステル化アルキレングリコール(メタ)アクリレート含有ビニル系重合体含有組成物はいずれも、透明性に優れており、実質的に均一であった。これに対して、比較例1〜12では、(ポリ)エーテル基、四級アンモニウム塩基及び長鎖炭化水素基のいずれも有さない塩基性含窒素化合物を用いたので、実施例1〜36に比較して、リン酸エステル化アルキレングリコール(メタ)アクリレート含有組成物のスチレンモノマー及びアルキルアクリレートに対する相溶性に劣っており、エマルジョンが形成されず、乳化重合が不可能であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシアルキレン基の平均重合度が3以下のリン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート(A)と、その他のエチレン性不飽和結合含有化合物(B)とを、塩基性含窒素化合物(C)の共存下で乳化重合することにより、リン酸基含有ビニル系重合体含有組成物を製造する方法であって、
前記リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート(A)は、式(1):
【化1】

[ただしR1は水素基又はメチル基であり、R2は炭素数が2〜4で、直鎖状又は分岐状で、少なくとも一部の水素基が塩素基で置換されていてもよいアルキレン基であり、nは1〜6の整数であり、かつ前記nの平均は3以下であり、X1は-P(O)(OH)2基又は-P(O)(OH)-OP(O)(OH)2基であり、前記X1の水酸基の一部がH2C=CRa-C(O)-O-(Rb-O)n'-基(Raは水素基又はメチル基であり、Rbは炭素数が2〜4で、直鎖状又は分岐状で、少なくとも一部の水素基が塩素基で置換されていてもよいアルキレン基であり、n'は1〜6の整数であり、かつn'の平均は3以下である)で置換されていてもよい]で表される化合物であり、
前記その他のエチレン性不飽和結合含有化合物(B)は、分子内に少なくとも一個のエチレン性不飽和結合を有するが酸性基を有しない不飽和化合物(B-1)、及び分子内にエチレン性不飽和結合と酸性基とを各々少なくとも一個有する不飽和化合物(B-2)のいずれか又はこれらの混合物であり、
前記塩基性含窒素化合物(C)は、(ポリ)エーテル基を少なくとも一つ有するアミン系界面活性剤(C-1)、四級アンモニウム塩基を含有するカチオン性界面活性剤(C-2)、及び炭素数7〜30の長鎖炭化水素基を少なくとも一つ有するアミン(C-3)からなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載のリン酸基含有ビニル系重合体含有組成物の製造方法において、予め前記リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート(A)に前記塩基性含窒素化合物(C)を混合して組成物(A+C)を調製し、前記組成物(A+C)と前記その他のエチレン性不飽和結合含有化合物(B)とを反応させることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のリン酸基含有ビニル系重合体含有組成物の製造方法において、前記リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート(A)が、式(1a):
【化2】

(ただしR1、R2、n及びその平均は式(1)と同じである)により表されるリン酸モノエステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート、式(1b):
【化3】

(ただしR1a及びR1bはそれぞれ独立に水素基又はメチル基であり、R2a及びR2bはそれぞれ独立に炭素数が2〜4で、直鎖状又は分岐状で、少なくとも一部の水素基が塩素基で置換されていてもよいアルキレン基であり、n1及びn2はそれぞれ独立に1〜6の整数であり、かつ前記n1及びn2の各平均は3以下である)により表されるリン酸ジエステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート、式(1c):
【化4】

(ただしR1、R2、n及びその平均は式(1)と同じである)により表されるピロリン酸モノエステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート、及び式(1d):
【化5】

(ただしR1c及びR1dはそれぞれ独立に水素基又はメチル基であり、R2c及びR2dはそれぞれ独立に炭素数が2〜4で、直鎖状又は分岐状で、少なくとも一部の水素基が塩素基で置換されていてもよいアルキレン基であり、n3及びn4はそれぞれ独立に1〜6の整数であり、かつ前記n3及びn4の各平均は3以下である)により表されるピロリン酸ジエステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートからなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のリン酸基含有ビニル系重合体含有組成物の製造方法において、
前記(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤(C-1)が、式(2):
【化6】

[ただしR3は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R4は炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R5は-(R5aO)kH基(R5aは炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である)、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、又は水素基であり、f及びkはそれぞれ独立に1〜30の整数である]により表される第一の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤、及び式(3):
【化7】

[ただしR6は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R7は-(R7aO)sH基(R7aは炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である)、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、又は水素基であり、R8は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R9は炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R10は-(R10aO)tH基(R10aは炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である)、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、又は水素基であり、r、s及びtはそれぞれ独立に1〜30の整数である]により表される第二の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤のいずれか又はこれらの混合物であり、
前記カチオン性界面活性剤(C-2)が、式(4):
【化8】

(ただしR11及びR14はそれぞれ独立に炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R12及びR13はそれぞれ独立に炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、前記R11〜R14にはいずれも水酸基、エステル結合及びアミノ基からなる群から選ばれた少なくとも一種が結合していてもよく、Y-は対イオンである)により表される第一のカチオン性界面活性剤、式(5):
【化9】

(ただしR15は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、Y-は対イオンである)により表される第二のカチオン性界面活性剤、式(6):
【化10】

(ただしR16は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、R17及びR18はそれぞれ独立に炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、R19は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、炭素数6〜30のアリーレン基又は炭素数7〜30のアリーレンアルキル基であり、前記R16〜R19にはいずれも水酸基、エステル結合及びアミノ基からなる群から選ばれた少なくとも一種が結合していてもよい)により表される第三のカチオン性界面活性剤、及び式(7):
【化11】

(ただしR20は炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基である)により表される第四のカチオン性界面活性剤からなる群から選ばれた少なくとも一種であり、
前記長鎖炭化水素基含有アミン(C-3)が、式(8):
【化12】

(ただしR21は炭素数7〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基であり、R22及びR23はそれぞれ独立に水素基、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、前記R21〜R23にはいずれも水酸基及びエステル結合のいずれか又は両方が結合していてもよい)により表される第一の長鎖炭化水素基含有アミン、及び式(9):
【化13】

[ただしR24は炭素数7〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基であり、R25〜R27はそれぞれ独立に水素基、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、前記R24〜R27にはいずれも水酸基及びエステル結合のいずれか又は両方が結合していてもよく、R28は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である]により表される第二の長鎖炭化水素基含有アミンのいずれか又はこれらの混合物である
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のリン酸基含有ビニル系重合体含有組成物の製造方法において、前記酸性基非含有不飽和化合物(B-1)が(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N, N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、スチレン、少なくとも一部の水素基がメチル基で置換されたスチレン、ジビニルベンゼン、脂肪酸ビニルエステル、ハロゲン化ビニル、少なくとも一部の水素基がフッ素基で置換された(メタ)アクリル酸エステル、少なくとも一部の水素基がフッ素基で置換された(メタ)アクリル酸、及び少なくとも一部の水素基がフッ素基で置換されたアルキル基を含有するビニルからなる群から選ばれた少なくとも一種であり、
前記酸性基含有不飽和化合物(B-2)が、ターシャリーブチルアクリルアミドスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、p-スチレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸ブチル-4-スルホン酸、(メタ)アクリロオキシベンゼンスルホン酸、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸及びその無水物、フマル酸、イタコン酸、及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のリン酸基含有ビニル系重合体含有組成物の製造方法において、前記第一の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤が式(2a):
【化14】

(ただしR3aは炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、f及びkは式(2)と同じである)により表される化合物であり、前記第二の(ポリ)エーテル基含有アミン系界面活性剤が式(3a):
【化15】

(ただしR6aは炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、r、s及びtは式(3)と同じである)により表される化合物であり、前記第一のカチオン性界面活性剤が式(4a):
【化16】

(ただしR11及びY-は式(4)と同じである)により表されるトリメチル型カチオン性界面活性剤、式(4b):
【化17】

(ただしR11及びY-は式(4)と同じであり、R14aは炭素数2〜30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、又は炭素数8〜30のアリールアルキル基である)により表されるジアルキル型カチオン性界面活性剤、式(4c):
【化18】

(ただしR11及びY-は式(4)と同じである)により表されるベンジル型カチオン性界面活性剤、及び式(4d):
【化19】

(ただしR11a,R14bはそれぞれ独立に炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、Y-は式(4)と同じである)により表されるヒドロキシエステル型カチオン性界面活性剤のいずれか又はこれらの組合せであり、前記第三のカチオン性界面活性剤が式(6a):
【化20】

(ただしR16は式(6)と同じである)により表される化合物であり、
前記第一の長鎖炭化水素基含有アミンが、式(8a):
【化21】

(ただしR21aは炭素数10〜25の直鎖状もしくは分岐状の飽和アルキル基である)により表される化合物であり、前記第二の長鎖炭化水素基含有アミンが、式(9a):
【化22】

(ただしR24aは炭素数10〜25の直鎖状もしくは分岐状の飽和アルキル基、R28aは炭素数2〜5の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である)により表される化合物である
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のリン酸基含有ビニル系重合体含有組成物の製造方法において、前記リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート(A)1モルに対する前記塩基性含窒素化合物(C)の配合割合を0.5〜2モルとすることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれかに記載のリン酸基含有ビニル系重合体含有組成物の製造方法において、前記リン酸エステル化(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート含有組成物(A+C)と、前記その他のエチレン性不飽和結合含有化合物(B)との質量比(A+C)/(B)が、(5/95)〜(60/40)であることを特徴とする方法。

【公開番号】特開2011−168700(P2011−168700A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34028(P2010−34028)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(592187833)ユニケミカル株式会社 (23)
【Fターム(参考)】