説明

リーンバーンICエンジン用排気装置

リーンバーン内燃機関(12)用の排気装置(10)は、一酸化窒素(NO)を酸化するための接触酸化成分を含む触媒を含む第一基材モノリス(16)に続いて、下流に、入口流路及び出口流路を有するウォールフローフィルタである第二基材モノリス(18)を含み、前記入口流路が、NO吸着触媒(20)を含み、前記出口流路が、窒素系還元体による窒素酸化物(NO)の選択的接触還元用の触媒(22)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーンバーン内燃機関用の、より詳しくは、ディーゼル(圧縮点火)エンジン用の排気装置に関し、この装置は、NO吸収触媒(NAC)及び窒素系還元剤を使用する窒素酸化物(NO)の選択的接触還元(SCR)用の触媒を含む。
【背景技術】
【0002】
NACは、例えば米国特許第5,473,887号(ここにその全文を参考として含める)から公知であり、リーン排ガス(ラムダ>1)から窒素酸化物(NO)を吸着し、排ガス中の酸素濃度が低下した時にNOを脱着するように設計されている。脱着されたNOは、NAC自体の、またはNACの下流に位置する、例えばロジウムのような触媒成分によって促進された好適な還元剤、例えばディーゼル燃料でNに還元することができる。実際には、NACの計算された残留NO吸着容量、例えば通常エンジン作動よりリッチ(但し尚、化学量論的な、またはラムダ=1の組成のリーン側)、化学量論的、もしくは化学量論のリッチ側(ラムダ<1)に応じて、酸素濃度を所望のレドックス組成に間欠的に調節する。酸素濃度は、多くの手段、例えばスロットル操作すること、排気ストロークの際にエンジンシリンダー中に追加の炭化水素燃料を注入すること、またはエンジンマニホルドの下流にある排ガス中に炭化水素燃料を直接注入することにより、調節することができる。ディーゼルエンジンにおけるより高度化されたコモンレール燃料噴射装置を使用し、非常に正確な量の燃料を計量し、排ガス組成を調節することもできる。
【0003】
典型的なNAC処方物は、接触酸化成分、例えば白金、NO貯蔵成分、例えばバリウム、及び還元触媒、例えばロジウムを包含する。この処方物に関して、リーン排ガスに由来するNO貯蔵に一般的に与えられる一つの機構は、
[式1]
NO+1/2O→NO (1)及び
[式2]
BaO+NO+1/2O→Ba(NO (2)
であり、式中、反応(1)で、一酸化窒素(nitric oxide)は、白金上の活性酸化箇所上で、酸素と反応し、NOを形成する。反応(2)では、貯蔵材料により、NOが無機硝酸塩の形態で吸着される。
【0004】
低酸素濃度及び/または高温では、硝酸塩種が熱力学的に不安定になり、下記の反応(3)により分解し、NOまたはNOを生じる。続いて、好適な還元剤の存在下で、これらの窒素酸化物は、一酸化炭素、水素及び炭化水素により、Nに還元され、この反応は、還元触媒上で起こる(反応(4)参照)ことができる。
[式3]
Ba(NO→BaO+2NO+3/2O または
Ba(NO→BaO+2NO+1/2O (3)及び
[式4]
NO+CO→1/2N+CO(及び他の反応) (4)
【0005】
上記の反応(1)〜(4)では、反応性バリウム種が、酸化物として与えられている。しかし、空気の存在下で、バリウムの大部分は炭酸塩または場合により水酸化物の形態にあると理解されている。従って、当業者は、上記の反応スキームを、酸化物以外のバリウム種に適用することができる。同様に、当業者は、この反応スキームを、バリウム以外のNO吸着成分、例えば他のアルカリ土類金属またはアルカリ金属に適用することができる。
【0006】
環境に対する関心が高まり、燃料価格が高騰するにつれて、益々多くのディーゼルエンジンが自動車及び軽量商業車用に導入されている。排ガス規制規則は、現在、「煤」または粒子状物質(「PM」)、ならびにCO、炭化水素(「HC」)及びNOxも厳格に規制している。PMの規制に関して、流れる排ガスからPMを除去するのに、フィルタまたはトラップを必要とすることが明らかになっている。フィルタの一形態は、ウォールフローフィルタと呼ばれ、その構造は、当業者には良く知られている。
【0007】
実用的なウォールフローフィルタは、一般的に、通常はPM燃焼温度を下げるための触媒及び/またはNO/PM反応のため、排ガス中のNOからNOの転化を触媒することができる酸化触媒で触媒作用を持たせている。
【0008】
WO 01/12320には、例えば開放上流流路の上流末端における実質的にガス不透過性区域上に白金族金属を含む酸化触媒、及びその酸化触媒の下流にある、煤を捕獲するためのガス透過性フィルタ区域を含む、燃焼機関の排気装置用のウォールフローフィルタが開示されている。フィルタの下流流路は、吸着触媒(NAC)及び所望によりNAC下流の選択的接触還元(SCR)触媒を包含することができる。
【0009】
WO 2004/022935には、窒素酸化物(NO)吸着剤、NO特異性反応物、例えばアンモニアによるNOの選択的接触還元(SCR)に触媒作用する触媒、SCR触媒の上流にある排ガス中にNO特異性反応物またはその前駆物質、例えば尿素を導入するための第一手段、及び第一導入手段を経由する排ガス中へのNO特異性反応物またはその前駆物質の導入を制御するための手段を含むリーンバーン内燃機関用排気装置であって、SCR触媒が、NO吸収剤の上流に、及び所望によりNO吸収剤と共に配置され、制御手段が、SCR触媒が活性である時にのみ、第一導入手段を経由して、NO特異性反応物またはその前駆物質を導入するように制御され、それによって、NO特異性反応物の大気中への排出が実質的に防止される、排気装置が開示されている。
【0010】
US 7062904には、フィルタ素子の入口側にNO吸着剤/触媒を、かつフィルタ素子の出口側にSCR触媒を塗布したフィルタが開示されている。吸着剤/触媒は、好ましくはNO中の吸着しないNO対NOの比を高める。この記載から、この触媒は、NO吸着剤と組み合わせることができるか、またはNO吸着剤から分離し、その上流に配置できる、すなわちNO吸着剤と組み合わせること、及びNO吸着剤の上流に配置することの両方は不可能であることが明らかである。
【0011】
DE 10 2005 005 663A1には、ウォールフローフィルタが、入口セル上にNOトラップまたはNO吸着触媒(NAC)を塗布し、出口セル上にSCR触媒を塗布できることが開示されている。この設計が商業化されていることは明らかではない。
【0012】
DE 10 2005 005 663A1に開示されているウォールフローフィルタの問題点は、NAC再生工程に続いてアンモニア放出の増加につながることがあり、冷間始動放出物、例えば新ヨーロッパ走行サイクル(The New European Drive Cycle (NEDC))の第一ECEサイクルからの冷間始動の放出物、の処理性能が劣ることである。
【発明の概要】
【0013】
ここで我々は、先行技術に関連する問題を軽減または克服する、小型の四元転化装置、すなわち炭化水素、一酸化炭素、粒子状物質及び窒素酸化物を処理できる装置を開発した。
【0014】
第一の態様によれば、本発明は、一酸化窒素(NO)を酸化するための触媒を含む第一基材モノリスに続いて、下流に、入口流路及び出口流路を有するウォールフローフィルタである第二基材モノリスを含むリーンバーン内燃機関用の排気装置であって、該入口流路が、接触酸化成分(触媒酸化成分、catalytic oxidation component)を含むNO吸着触媒(NAC)を含み、該出口流路が、窒素系還元剤による窒素酸化物(NO)の選択的接触還元(SCR)用の触媒を含む、排気装置が提供される。
【0015】
接触酸化成分を含むNACとSCR成分とを、所望により浄化(clean-up)触媒とともに、以下に説明するようにウォールフローフィルタ上で組み合わせることにより、この装置は、全体として、HC、CO、PM及びNOを、先行技術の装置より効率的に処理する。我々は、この理由の一つが、NAC機能上で発生した熱が、ウォールフローフィルタから上流に配置された別の基材モノリス上にNACがある場合よりも、ウォールフローフィルタをより高温に維持できるためであると考えている。この効果の有益性は、NO中における受動的なPM転化が高温により促進され、より少ないエネルギーでウォールフローフィルタを酸素中におけるPM燃焼に必要な温度に上昇させることができるので、活性なPM燃焼が低燃費で行われることである。温度に達した後は、ウォールフローフィルタ上のNAC及びSCR触媒が、好ましいNO転化活性の温度範囲に維持される、すなわち、ウォールフローフィルタの比較的高い熱容量が排気装置中の極端な温度をならすので、全体的なNO転化にも有益性を与える。これは、走行サイクル全体を通して、特にECEにおいて、及び現実的な走行条件において、典型的には運転者が足をアクセルから引き上げた時に、排ガス温度が変動し、排ガス温度が低下する、軽負荷ディーゼルエンジン車両には特に有利である。
【0016】
実際には、NACは、エンジン管理手段により発生する濃縮された(enriched)排ガスと間欠的に接触させることにより、及び/または還元剤をエンジン下流の排ガス中に導入することにより、再生される。そのような濃縮は、例えばロジウムまたはパラジウムのような存在する還元触媒上での吸着されたNOの脱着及びNOの還元を促進する。しかし、濃縮された排ガスは、NACの酸化触媒成分上でNOからアンモニア(NH)も発生させ、そのNHが、下流にあるSCR触媒上で吸着され、リーン排ガス条件でNACを通過したNOのNO還元に使用される。
【0017】
一実施態様では、ウォールフローフィルタの入口流路が、NACの下流に配置されたSCR触媒を含む。SCR触媒は、ウォールフローフィルタ上に別個のコーティングとして存在するか、またはSCR触媒がウォールフローフィルタと一体的である、例えばSCR触媒を塩溶液として未使用ウォールフローフィルタの材料中に含浸させるか、またはSCR触媒を基材モノリスの構造を形成する成分と組み合わせて、次いで、フロースルーモノリスに押し出し、続いて乾燥させ、焼成し、流路の交互の末端をチェッカー盤のパターンで、基材モノリスの一端を閉鎖し、閉鎖されていない流路を交互に、同様に、反対側の末端で閉鎖することができる。この後者の配置には、乾燥及び焼成に続く押出物の気孔率が、ウォールフローフィルタとして機能するのに十分である、すなわち、基材モノリスの気孔率が少なくとも40%、例えば少なくとも45%、例えば50%または少なくとも55%または70%までであることが必要である。押出型SCRフロースルー基材に由来するウォールフローフィルタは、2008年1月23日提出された「触媒作用を付与したフィルタ」と題する英国特許出願第0801161.1号に記載されている。
【0018】
コーティングの場合、入口セルの全てをそのようにコーティングする必要は無いが、今のところ、各セルをコートするのが好ましい。各コーティングの幾何学的比率は、約50:50が好都合であるが、他の比率も使用できる。入口セル及び出口セルのどちらかまたは両方に、必要であれば、他の触媒機能性を取り入れることができる。特に、以下に記載するように、浄化触媒、例えばアルミナ触媒上の装填量が比較的低い白金、例えば<5gft−3Pt、をフィルタの出口セル上に、またはフィルタの下流に配置された別の基材上に塗布することができる。
【0019】
典型的には「ウォッシュコート」と呼ばれる好適なコーティング製剤は、壁構造内の壁表面または細孔間の相互接続部における閉塞を回避するか、または低減させるように設計される。その結果、当業者には良く知られているゾーンコーティング技術(例えばEP 1064094参照)を使用して、ウォールフローフィルタの一端から流路中に導入された触媒、例えばSCR触媒は、フィルタの細孔構造を通って移動し、壁構造中の細孔内に止まるか、またはウォールフローフィルタの対向する「末端」の流路表面に現れることもできる。これによって、適切なウォッシュコート製剤を採用することにより、SCR触媒ウォッシュコートをウォールフローフィルタ中に、下流フィルタ側から、すなわち、ウォールフローフィルタの反対側から導入することにより、入口フィルタ側を対象とした流路の下流末端をSCR触媒でゾーンコーティングすることができる。続いて、NACコーティングを入口セルの上流区域に塗布することができる。コーティングの重なり部分は、あっても、無くてもよい。重なり部分がある場合、NACコーティングがSCRコーティングの上に重なる。
【0020】
実施態様によれば、ウォールフローフィルタは、入口末端から出口末端まで伸びる長さを含み、その際、NACは、上流区域末端がウォールフローフィルタ入口末端により規定された、ウォールフローフィルタ長さの30〜70%の実質的に一様な長さの第一区域に配置され、SCR触媒は、下流末端がウォールフローフィルタ出口末端により限定された、ウォールフローフィルタ長さの30〜70%の実質的に一様な長さの第二区域に配置されることができ、第一区域及び第二区域は重なることができる。
【0021】
別の実施態様では、WO 02/068099に記載されているように、NAC及びSCR触媒を同じ触媒中に組み合わせる。
【0022】
ウォールフローフィルタは、用途に応じてどのような好適なセル密度でも有することができる。ディーゼル排気装置に使用するための典型的なセル密度は、100〜400セル/平方インチである。ウォールフローフィルタ自体は、例えばコージーライト、炭化ケイ素またはチタン酸アルミニウム等のどのような好適な材料からでも製造することができる。
【0023】
一実施態様では、NO酸化触媒は、例えば好適な耐火性酸化物担体上に担持された白金または白金とパラジウムの両方を含む酸化触媒である。あるいは、この触媒は、NACでもよい。所望により、そのようなNO酸化触媒成分は、エンジンの近く、例えば排気マニホルド中、または排気マニホルドとターボチャージャとの間に取り付けられる。ウォールフローフィルタは、NO酸化触媒のすぐ下流にある、例えば同じ缶またはケーシング中に配置するか、またはウォールフローフィルタは、さらに下流、例えば車両上の床下位置に配置することができる。酸化触媒の場合、NO酸化は、フィルタ上の受動的PM燃焼を支援するのに十分である。酸化触媒及びNO酸化触媒のNAC実施態様の両方が、フィルタ中のNO貯蔵を妨害する恐れがある全体的なHC及びCO転化の改良に貢献し、NOをNOにも転化し、フィルタ上にあるNAC上に硝酸塩としてNOをより効率的に吸着させる。図4A及びBを比較することにより、SCRを使用するNO還元用のNHの多くが上流NAC上で発生することが分かる。
【0024】
上流NO酸化触媒のさらなる有益性は、ウォールフローフィルタが一般的に第一基材モノリスよりも高い熱容量を有するので、例えばMVEG-Aサイクル(または新ヨーロッパ走行サイクル(NEDC)全体にわたって冷間始動汚染物転化を改良することである。第一基材モノリスをエンジンのより近くに配置して熱移動を最大限にすることに加えて、第一基材モノリスの熱容量を選択し、例えば金属モノリスまたはより小さな基材を使用して熱移動を改良することにより、NO酸化触媒の急速な活性を達成することもできる。
【0025】
さらに、上流NO酸化触媒の使用により、NO酸化触媒とフィルタとの間に配置された熱電対を使用し、正確な条件に適合していることを確認することができるので、比較的高い温度における活性フィルタ再生制御を改良するのに役立ち、不十分な制御は、フィルタの過熱を引き起こし、過剰の熱的エージングと、それに続く触媒活性の経時低下を引き起こすことがある。
【0026】
第一基材モノリスは、フロースルー基材モノリスまたは部分フィルタ、例えばEP 1057519またはWO 01/080978に開示されているフィルタでよい。
【0027】
好ましい実施態様では、ウォールフローフィルタの出口流路は、アンモニア及び/または炭化水素及び一酸化炭素を転化するための触媒を含んでいる。これには、リーン運転の際の、あるいは能動的または受動的フィルタ再生の際に通過したアンモニアもしくは炭化水素または一酸化炭素放出物を転化できるという利点がある。一実施態様では、浄化触媒を、下流末端でウォールフローフィルタ出口末端により規定された、実質的に一様な長さの区域に配置する。あるいは、浄化触媒を、SCR触媒上にある別個の層中に配置することができる。
【0028】
特別な実施態様では、SCR触媒を、第二区域の上流末端が第一区域の下流末端により規定された、ウォールフローフィルタ長さの30〜65%の実質的に一様な長さの第二区域に配置し、浄化触媒を、第三区域の上流末端が第二区域の下流末端により、及び下流末端ではウォールフローフィルタの出口末端により規定された、ウォールフローフィルタ長さの5〜40%の実質的に一様な長さの第三区域に配置する。
【0029】
実施態様により、本発明で使用する浄化触媒は、アルミナ触媒上の比較的低い装填量で担持された白金である。
【0030】
本発明で使用するNAC触媒は、少なくとも一種のアルカリ土類金属、アルカリ金属及び希土類金属からなる群から選択することができ、該または各金属は、所望により耐火性酸化物上に担持される。
【0031】
本発明で使用するSCR触媒は、耐火性酸化物上に担持された、遷移金属/ゼオライト、及びCu、Hf、La、Au、In、V、ランタニド及びVIII族遷移金属、例えばFeの少なくとも一種からなる群から選択することができる。好適な耐火性酸化物は、Al、TiO、CeO、SiO、ZrO、及びそれらの2種類以上を含む混合酸化物を含む。非ゼオライト触媒は、酸化タングステンも包含することができる。
【0032】
第二の態様によれば、第一流路及び第二流路を有し、第一流路が、接触酸化成分を含むNO吸収剤触媒(NAC)を含み、該第二流路が、窒素系還元剤による窒素酸化物(NO)の選択的接触還元(SCR)用の触媒を含み、該第二流路が、アンモニア及び/または炭化水素及び一酸化炭素を転化するための浄化触媒を含む、ウォールフローフィルタが提供される。
【0033】
無論、本発明の第二態様によるウォールフローフィルタは、本発明の第一態様で使用するのに好適である。従って、本発明の第一態様に関して上述したウォールフローフィルタの特徴は、本発明の第二態様に等しく適用される。
【0034】
好ましくは、浄化触媒は、一端で、SCR触媒を含む流路の入口末端により規定された、実質的に一様な長さの区域に配置される。
【0035】
第一実施態様では、浄化触媒は、SCR触媒を覆う別の層中に配置し、その際、SCR触媒は、ウォールフローフィルタ上に別個のコーティングとして存在するか、またはSCR触媒がウォールフローフィルタと一体的である、例えばSCR触媒を塩溶液として未使用ウォールフローフィルタの材料中に含浸させるか、またはSCR触媒を基材モノリスの構造を形成する成分と組み合わせて、次いで、フロースルーモノリスに押し出し、続いて乾燥させ、焼成し、流路の交互の末端をチェッカー盤のパターンで、基材モノリスの一端を閉鎖し、閉鎖されていない流路を交互に、同様に、反対側の末端で閉鎖することができる。
【0036】
本発明の第二態様の第二実施態様によれば、ウォールフローフィルタは、第一末端から第二末端まで伸びる長さを含み、その際、NACは、上流区域末端がウォールフローフィルタの第一末端により規定された、ウォールフローフィルタ長さの30〜70%の実質的に一様な長さの第一区域に配置され、SCR触媒は、第二区域の上流末端が第一区域の下流末端により規定された、ウォールフローフィルタ長さの30〜65%の実質的に一様な長さの第二区域に配置され、浄化触媒は、第三区域の上流末端が第二区域の下流末端により、及び下流末端ではウォールフローフィルタの第二末端により規定された、ウォールフローフィルタ長さの5〜40%の実質的に一様な長さの第三区域に配置される。
【0037】
この排気装置は、リーンバーン内燃機関、特に、例えば軽負荷ディーゼル(関連規則により規定される)車両のようなリーンバーンガソリン及びディーゼル用途を包含する車両から出る排出物の処理に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本発明をより深く理解できるようにするために、添付の図面を参照する。
【図1】図1は、本発明の第一態様による排気装置を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の第二態様によるウォールフローフィルタを示す概略図である。
【図3】図3は、ローリングロードエンジンダイナモメータで走行する軽負荷ディーゼル車両に取り付けた本発明の第一態様による装置に関する、NEDCサイクルの反復ECEサイクル全体にわたるNO転化を示すグラフである。ここで、NO酸化触媒は、NAC(図中で「NSC」または「NO吸着触媒」と表記)対ウォールフローフィルタ上のSCR触媒を、<10gft−3Pt/Pdで通常の触媒作用を付与した煤フィルタ触媒に置き換えた類似の装置である。
【図4A】図4Aは、図3に示す、比較用装置におけるNACとウォールフローフィルタとの間における排ガス中に存在するNHを示すグラフである。
【図4B】図4Bは、図3に示す、比較用装置におけるウォールフローフィルタの下流における排ガス中に存在するNHを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1に、軽負荷ディーゼルエンジン12及びエンジンから排出された排ガスを大気15中に搬送するための導管を含む排気装置14を含む装置10を示すが、導管中には、NACでコーティングされた金属基材モノリス16及び流動方向に続く炭化ケイ素ウォールフローフィルタ18が配置されている。ウォールフローフィルタの入口流路は、入口末端から、ウォールフローフィルタの全長の約50%にNAC組成物20でコーティングされており、ウォールフローフィルタの全長の残りの約50%には、出口末端からSCR触媒がコーティングされている。アルミナ上に比較的低い装填量のPtを含む浄化触媒は、ウォールフローフィルタ18の下流に配置されている。
【0040】
図2は、簡単にするために、従来のセラミックウォールフローフィルタ中にある単一の入口流路28及び隣接する出口流路29を示す。流路のガス透過性壁を30で示し、ガスの意図する流動方向を矢印により示す。入口流路30の入口末端には、NACコーティング32が堆積しており、SCR触媒34は出口流路29に堆積している。浄化触媒コーティング36は、出口流路29の出口末端からSCR触媒コーティング34に伸びている。
【0041】
図3は、2種類の装置に関するMVEG(ECE)サイクル数とNO転化効率の関係を示すグラフであり、第一の「NSC+FWC/CSF」と表記する装置は比較用装置であり、そこではNAC触媒(または「NO吸着触媒」(NSC))の後にウォールフローフィルタが続いており、そのウォールフローフィルタは、入口末端から全長の50%にNAC(「FWC」または「四元触媒」と表記)でコーティングされ、出口末端から出口流路の50%まで通常の比較的低い装填量(アルミナ系耐火性担体上に<10gft−3Pt/Pd)の触媒作用を付与した煤フィルタ(CFS)組成物でコーティングされている。本発明の装置は、CSFを、SCR触媒コーティング(「SCRF」と表記)を含むフィルタで置き換えた以外は、同等である。この装置を、予めプログラム化された相手先ブランド製造業者(OEM)の規格により間欠的にNACを再生するように形成されたEuro IV軽負荷ディーゼルエンジン搭載の乗用車に取り付ける。この車両を、ローリングロードエンジンダイナモメータを使用するEUDC(MVEG−A)エミッションサイクルのECE部分全体にわたって反復的に走行させた。NO転化効率の改良は、図3から明らかである。
【0042】
図4A及び4Bは、上記の図3に関して説明した比較用装置の排気装置における2箇所で試験した排ガス中に存在するアンモニアの量を示すグラフである。第一の試験箇所は、上流NACとウォールフローフィルタとの間(図4A)であり、第二の試験箇所は、ウォールフローフィルタの下流、すなわち、CSF出口区域の下流であった。図4Aから、間欠的NAC再生工程中にある量のアンモニアが発生することが分かる。しかし、図4Bから、類似量のアンモニアが存在することが分かる。我々は、これらの結果は、CSF区域におけるPt装填量が大量のNHを発生するには不十分であるため、アンモニアの大部分は上流のNACで発生することを示すと解釈している。
【0043】
誤解を避けるために、ここで参照する文書の全内容を、ここに参考として含める。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーンバーン内燃機関用の排気装置であって、
一酸化窒素(NO)を酸化するための触媒を含む第一基材モノリスと、前記第一基材モノリスに続いて、下流に、入口流路及び出口流路を有するウォールフローフィルタである第二基材モノリスとを備え、
前記入口流路が接触酸化成分を含むNO吸着触媒(NAC)を含み、かつ前記出口流路が窒素系還元剤による窒素酸化物(NO)の選択的接触還元(SCR)用の触媒を含む、排気装置。
【請求項2】
前記ウォールフローフィルタの前記入口流路が、前記NACの下流に配置されたSCR触媒を含む、請求項1に記載の排気装置。
【請求項3】
前記ウォールフローフィルタが、入口末端から出口末端まで伸びる長さを含み、
前記NACは、上流区域末端が前記ウォールフローフィルタ入口末端により規定された、前記ウォールフローフィルタ長さの30〜70%の実質的に一様な長さの第一区域に配置される、請求項2に記載の排気装置。
【請求項4】
前記SCR触媒は、下流末端が前記ウォールフローフィルタ出口末端により規定された、前記ウォールフローフィルタ長さの30〜70%の実質的に一様な長さの第二区域に配置される、請求項3に記載の排気装置。
【請求項5】
前記第一区域及び前記第二区域が重なっている、請求項4に記載の排気装置。
【請求項6】
前記NAC及び前記SCR触媒が同じ触媒中に組み合わされている、請求項1に記載の排気装置。
【請求項7】
前記NO酸化触媒が酸化触媒である、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項8】
前記NO酸化触媒がNACである、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項9】
前記第一基材モノリスがフロースルー基材モノリスである、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項10】
前記第一基材モノリスが部分フィルタである、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項11】
前記出口流路が、アンモニア及び/または炭化水素及び一酸化炭素を転化するための触媒を含む、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項12】
前記浄化触媒が、下流末端でウォールフローフィルタ出口末端によって規定された、実質的に一様な長さの区域に配置される、請求項11に記載の排気装置。
【請求項13】
前記浄化触媒が、前記SCR触媒を覆う別の層中に配置される、請求項10に記載の排気装置。
【請求項14】
請求項3に従属する場合、
前記SCR触媒は、第二区域の上流末端が前記第一区域の下流末端により規定された、前記ウォールフローフィルタ長さの30〜65%の実質的に一様な長さの第二区域に配置され、
前記浄化触媒は、第三区域の上流末端が前記第二区域の下流末端により、及び下流末端では前記ウォールフローフィルタの前記出口末端により規定された、前記ウォールフローフィルタ長さの5〜40%の実質的に一様な長さの第三区域に配置されている、請求項11または12に記載の排気装置。
【請求項15】
前記浄化触媒が、アルミナ上の比較的低い装填量の白金である、請求項11〜14のいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項16】
前記NAC触媒が、少なくとも一種のアルカリ土類金属、アルカリ金属及び希土類金属からなる群から選択され、
前記または各金属が、所望により耐火性酸化物上に担持される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項17】
前記SCR触媒が、耐火性酸化物上に担持された、遷移金属/ゼオライト、及びCu、Hf、La、Au、In、V、ランタニド及びVIII族遷移金属の少なくとも一種からなる群から選択される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項18】
前記耐火性酸化物が、Al、TiO、CeO、SiO、ZrO、及びそれらの2種類以上を含む混合酸化物から選択される、請求項17に記載の排気装置。
【請求項19】
第一流路及び第二流路を有するウォールフローフィルタであって、
前記第一流路が、接触酸化成分を含むNO吸収触媒(NAC)を含み、
前記第二流路が、窒素系還元剤による窒素酸化物(NO)の選択的接触還元(SCR)用の触媒を含み、
前記第二流路が、アンモニア及び/または炭化水素及び一酸化炭素を転化するための浄化触媒を含む、ウォールフローフィルタ。
【請求項20】
前記浄化触媒が、一端において前記SCR触媒を含む前記流路の入口末端により規定された、実質的に一様な長さの区域に配置される、請求項19に記載のウォールフローフィルタ。
【請求項21】
前記浄化触媒が、前記SCR触媒を覆う別の層中に配置される、請求項20に記載のウォールフローフィルタ。
【請求項22】
前記ウォールフローフィルタが、第一末端から第二末端まで伸びる長さを含み、
前記NACは、上流区域末端が前記ウォールフローフィルタの前記第一末端より規定された、前記ウォールフローフィルタ長さの30〜70%の実質的に一様な長さの第一区域に配置され、
前記SCR触媒は、第二区域の上流末端が前記第一区域の下流末端により規定された、前記ウォールフローフィルタ長さの30〜65%の実質的に一様な長さの第二区域に配置され、
前記浄化触媒は、第三区域の上流末端が前記第二区域の下流末端により、及び下流末端では前記ウォールフローフィルタの前記第二末端により規定された、前記ウォールフローフィルタ長さの5〜40%の実質的に一様な長さの第三区域に配置されている、請求項20に記載のウォールフローフィルタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate


【公表番号】特表2011−527403(P2011−527403A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517237(P2011−517237)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【国際出願番号】PCT/GB2009/050794
【国際公開番号】WO2010/004320
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(590004718)ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー (152)
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】