レジストを回収可能なレジスト剥離除去方法及びそれを用いる半導体製造装置
【課題】本発明は、フォトンコストの高いレーザ光を使用することなく、安価に、しかもウェハ基板に損傷を与えることなく、レジスト膜を剥離除去することができる方法を提供することを目的とする。
【解決手段】上記目的を達成するため、本発明は、ウェハ基板上に形成されたレジスト膜を剥離除去するにあたり、レジスト膜を透過可能であって、ウェハ基板に吸収可能であるレーザ光を選択する一方、レジスト膜上に上記レーザ光を透過可能な液体膜を形成し、該液体膜を介して上記選択されたレーザ光をレジスト膜に照射して上記レジスト表面で実質的にアブレーションを起こさせることなく、レジスト膜を透過させて上記ウェハ基板とレジスト膜との界面でウェハ表面に損傷を与えない程度の熱を発生させる一方、上記レジスト膜表面と液体との界面で上記液体膜を局所的に沸騰・蒸発させ、上記レジスト膜に衝撃を与えて剥離させる。
【解決手段】上記目的を達成するため、本発明は、ウェハ基板上に形成されたレジスト膜を剥離除去するにあたり、レジスト膜を透過可能であって、ウェハ基板に吸収可能であるレーザ光を選択する一方、レジスト膜上に上記レーザ光を透過可能な液体膜を形成し、該液体膜を介して上記選択されたレーザ光をレジスト膜に照射して上記レジスト表面で実質的にアブレーションを起こさせることなく、レジスト膜を透過させて上記ウェハ基板とレジスト膜との界面でウェハ表面に損傷を与えない程度の熱を発生させる一方、上記レジスト膜表面と液体との界面で上記液体膜を局所的に沸騰・蒸発させ、上記レジスト膜に衝撃を与えて剥離させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハ基板等に塗布されたレジスト膜を回収可能に剥離除去する方法及びそれを用いる半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスの中枢であるフォトリソグラフィ工程は一般にウェハ基板上へのi)フォトレジスト塗布、ii)露光、iii)現像、iv)エッチング、v)使用済みレジスト除去の5工程を経て行っている。半導体デバイス製造ではこれらの工程を20〜30回繰り返している。
【0003】
フォトレジスト材料は環化−ビスアジド系、DNQ(ジアゾナフトキノン)−ノボラック樹脂系、PMMA(ポリメチルメタクリエート)系等さまざまな種類が存在する。これらは半導体ウェハ基板の性質、微細化条件、エッチング条件にあわせて設定使用されている。上記工程中、v)使用済みのフォトレジストの除去にはウェット方式とドライ方式が用いられる。ウェット方式ではフォトレジストは有機物であることから硫酸などの酸化性の酸で処理できるが、高温高濃度条件下で処理する為半導体ウェハ基板の性質や下地膜の状態によっては使用できない場合がある。そこで各フォトレジストにあわせた市販のレジスト剥離液が用いられる。この液は基本的に有機アルカリ系の混液でありエチレンジアミンやピロカテコールなどが含まれているが、詳細な化学組成は明らかにされていない。
【0004】
レジストの除去はコスト面から主にこのウェット方式により処理されているが、デバイス製造では上述したようにかかるレジスト剥離除去が20〜30回繰り返されるため、大量の化学廃液が発生する。そのため、環境負荷低減が要求される現代においてはウェット処理以外の手法が望まれている。
【0005】
一方、ドライ方式ではプラズマ、UV、オゾン等を用いた処理であり、反応生成物はCO2とH2Oであることから環境負荷の面においては優位な点はあるが、ドライ方式のみではフォトレジストの残渣までの完全除去は困難であり、ウェット処理との併用は避けられない状況にある。また省エネ・生産性向上という面においてはまだまだ課題が残っている。
【0006】
そこで、短波長のレーザを用いて、光解離を伴ったアブレーションによりレジスト膜を除去することが試みられている(特許文献1、2参照)。当該除去方法では、大量の化学廃液が発生しないため環境負荷が低減されている。
【特許文献1】特開2004−140239号公報
【特許文献2】特開2004−097881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、レジスト膜のアブレーションによる除去方法(特許文献1及び2)においては、レジスト膜を構成する有機物の結合手を切断することができる短波長のレーザ光が必要となるが、短波長のレーザ光はフォトンコストが高いため経済的ではない。また、レジスト膜が短波長のレーザ光の照射によるアブレーションにより分解するため、レジストの再使用は困難であり、しかもレーザ光分解したレジスト膜を含む洗浄液は廃液として処理しなければならないという問題点がある。なお、ここで、アブレーションとはレーザ光をレンズで集光などして、金属、無機化合物、高分子など様々な物質にある一定の強度(閾値)以上で照射すると、それらの物質表面から様々な粒子が飛び出し、物質表面がエッチングされる現象をいい、有機高分子であるレジスト膜では光解離が起こる。
【0008】
そこで、本発明は、第1に、フォトンコストの高いレーザ光を使用することなく、安価に、しかもウェハ基板に損傷を与えることなく、レジスト膜を剥離除去することができる方法を提供することを目的とする。第2に、本発明は、レジストがアブレーションを起こすことなくレジスト膜をウェハ面から剥離させ、そのアブレーションを起こしていないレジスト膜を洗浄液から容易に分離回収することができ、廃液処理問題を解消することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、フォトンコストの安い長波長のレーザ光を用いると、ノボラック系レジストにおいてはレジスト表面でアブレーションを起こさず、当該レジストを透過するが、ウェハ基板のレーザ光吸収により、レジスト膜下のウェハ基板に損傷を与えてしまうという問題がある。そこで、ウェハ基板に損傷を与えない程度の閾値に低減すると、長波長のレーザ光では、レジスト膜とウェハ基板の界面で発生する熱は僅かとなって、その熱応力だけではレジスト膜をウェハ基板から剥離除去することは困難であった。
しかしながら、レジスト表面上に水などのレーザ光が透過する液体膜の壁を存在させ、その状態でウェハ基板にレーザ光を照射すれば、照射したレーザ光のエネルギーによりウェハ基板が加熱され、さらにはその熱拡散により、上記ウェハ基板に付着しているレジストと液体界面では、液体自身の局所的な沸騰・蒸発によりウェハと液体を反対方向に押しのける力の反作用(レジスト側への力)によりレジスト膜が衝撃を受けレジスト膜をウェハ基板から剥離することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
したがって、本発明は、ウェハ基板を含む基板上に形成されたレジスト膜を剥離除去するにあたり、レジスト膜を透過可能であってウェハ基板に吸収可能なレーザ光を選択する一方、レジスト膜上にレーザ光を透過可能な液体膜を形成し、該液体膜を介して上記選択されたレーザ光をレジスト膜に照射して上記レジスト表面で実質的にアブレーションを起こさせることなく、レジスト膜を透過させて上記ウェハ基板とレジスト膜との界面でウェハ表面に損傷を与えない程度の熱を発生させる一方、上記レジスト膜表面と液体との界面で上記液体膜を局所的に沸騰・蒸発させ、上記レジスト膜に衝撃を与えて剥離させることを特徴とするレジスト膜剥離除去方法にある。
【0011】
本発明においては、上記レジスト膜に対してアブレーションを起こさないレーザ光を選択することが第1条件である。したがって、レーザ光のレジスト膜の透過率は重要であり、レジスト膜との透過率の関係は20%以上である必要がある。例えば、ノボラック系ポジ型レジストのUV透過率は、図12に示すように300nm未満では極端に低いが、400nmを超えると上昇し、500nm付近から80%を超えることになる。したがって、レジスト膜との透過効果との関係を見て選択する波長が決定される。レーザ光の場合、長波長側のフォトンコストが安くなる傾向になる。
【0012】
上記レーザ光照射によりレジスト膜の剥離が起こるが、電気的または機械的振動をレーザ光照射時及び/又は照射後レジスト膜に付与することにより剥離効率を向上させることが見出されており、併用することにより照射するレーザ光の照射エネルギーを低減させることが可能である。かかる振動はレーザ照射時はレジスト膜上に形成する液体膜を介してまたはレーザ照射後はレジスト膜上に存在する洗浄液を介して付与するのが適当であり、超音波振動装置を用い、機械的振動を付与することができる。上記超音波振動の強度は上記レーザ光によるレジスト膜の剥離を補助するものであるから、レーザ光の照射エネルギー量を考慮して調整するのが好ましい。他方、上記レジスト膜を透過するレーザ光の照射エネルギーは照射時間とレーザ光のパルス幅によって決まる。したがって、上記レジスト表面で実質的にアブレーションが起こらないでかつ、ウェハ基板に対して損傷閾値以下のエネルギー量となるフェムト秒からミリ秒のパルス幅の範囲でレーザ光を選択する。
【0013】
本発明方法においては、上記レーザ光による剥離効果の蓄積が見られるので、照射回数を多くすればするほどレーザ光の照射エネルギーを低減設定することができる。
【0014】
本発明において、上記レジスト膜上に形成される液体膜が、レーザ光を透過可能であって、局所加熱により沸騰、蒸発可能である必要がある。上記液体膜はレーザ光の照射によってレジスト膜の剥離増加を発揮するので、従来のように、レジスト膜を溶解する必要がなく、水、水溶液或いは水分散液からなることができる。液体膜が形成されやすいように表面張力を降下させる界面活性剤等を添加してもよい。上記レジスト膜上に形成される液体膜の膜厚はレーザ光照射エネルギー強度、レーザ光照射回数、上記振動強度などの剥離効果を考慮して決定されるのがよい。また、上記レジスト膜上に形成される液体膜の温度を通常液温より高くまたは低く設定する方が剥離効果を向上させる場合がある。
【0015】
本発明方法は、レーザ光の多重照射、レジスト膜への振動付与によるレーザ光エネルギーの低減効果を考慮すると、両者の条件下で行うのが最も効率がよい。したがって、本発明は、ウェハ基板上に形成されたレジスト膜を剥離除去するにあたり、レジスト膜を透過可能であってウェハ基板に吸収可能なレーザ光を選択し、そのエネルギー量をウェハ基板に対して損傷閾値のほぼ半数以下のエネルギー量に設定する一方、レジスト膜上に液体膜を形成し、該液体膜を介して上記選択されたレーザ光をレジスト膜に少なくとも2回以上照射して上記レジスト表面で実質的にアブレーションを起こさせることなく、レジスト膜を透過させて上記ウェハ基板とレジスト膜との界面でウェハ表面に損傷を与えない程度の熱を発生させる一方、上記レジスト膜表面と液体との界面で上記液体膜を局所的に沸騰・蒸発させる方法であって、上記レーザ光照射時及び/又はレーザ光照射後上記レジスト膜に電気的または機械的振動を与えて剥離させることを特徴とするレジスト膜剥離除去方法を提供するものである。なお、レーザ光のレジスト膜に対する透過率、レーザ光のパルス幅は上記1回照射の条件範囲であれば使用可能である。
【0016】
本発明方法は、半導体製造設備のレジスト膜剥離設備に適用することができる。したがって、本発明は、ウェハ基板上にレジスト膜を塗布、露光、除去を繰り返し、半導体基板を形成する半導体製造設備であって、レジスト膜除去工程にレーザ照射設備と、洗浄設備と、乾燥設備とを含み、上記レーザ照射設備がウェハ基板のレジスト膜上に液体膜を形成するための液体膜形成手段と、上記液体膜を介してウェハ基板上のレジスト膜にレーザ光を多重照射可能なレーザ照射装置とを含み、上記レーザ照射装置が上記液体膜が形成されたレジスト表面で実質的にアブレーションを起こさせることなく、上記レジスト膜に衝撃を与えて剥離させることを特徴とするレジスト膜剥離除去設備を含む半導体製造装置を提供するものでもある。
本発明装置において、上記液体膜形成手段は沸騰可能な液体を収容し、レジスト膜を形成したウェハ基板を浸漬させる液体膜形成槽であるか、またはウェハ基板上のレジスト膜に液滴を散布又は噴霧する手段から構成することができる。前者の場合、上記液体膜形成槽及び/又は洗浄設備が超音波洗浄装置を設けるのが好ましく、上記液体膜形成槽が超音波洗浄装置を備えると、洗浄設備を兼ねることができる。なお、上記液体膜形成槽は上記機械的振動を付与する超音波洗浄装置に代え、電気的振動を与える、高周波電流や電界操作による剥離設備とすることもできる。また、本発明においてはレジスト膜が光解離されてないので、上記洗浄設備が洗浄液と分離して実質的にアブレーションを起こしていない剥離レジスト膜を回収する手段を備え、これを回収するようにすることができる。
【0017】
本発明において、「レジスト膜の剥離」とは、レジスト膜をレーザ光により蒸発除去するアブレーションと明確に区別されるものであり、レジスト膜を光解離させることなく形状を保ったまま物理的にウェハ基板から剥がすことをいう。
例えば、Siウェハ上に塗布されたノボラックレジストに紫外から赤外までのレーザ光をそれぞれ照射した場合について説明すると、
波長266nmの短波長の光ではノボラックレジストの透過率がほぼ0のため、照射するレーザ光のエネルギーはレジスト膜に吸収される。また、波長266nmのレーザ光のフォトンエネルギーは約105(kcal/mol)で、ノボラックレジストを構成している分子間の結合(例えば、C−C(80 kcal/mol)、C−O(88 kcal/mol)、C−H(98 kcal/mol))を光解離させることができる。従って、レーザ光のエネルギーを受け取った部分のレジスト材料は光解離を伴ったアブレーション現象(蒸発)により選択的に除去される。レジスト材料はある程度の厚みがあるため、レーザ光を照射している部分の選択的な除去はその厚みが無くなるまで続く。すべてレジスト材料が除去されれば、レーザ光は基板であるSiウェハに到達する。Siウェハの波長266nm光に対する反射率は約80%以上と高いため、レジストが除去される照射エネルギーではSiウェハが損傷することはない。以上のことから、フォトンコストが高い波長266nmではノボラックレジストはアブレーション現象によって除去されており、剥離というメカニズムにより除去されている訳ではない。
【0018】
一方、フォトンコストが安価な波長1064nmでは、ノボラックレジストの透過率がほぼ90%以上で透明なため、基本的にレーザ光とノボラックレジスト間での光の相互作用は起こりにくい。そのため、照射されたレーザ光はSiウェハ基板とレジストとの界面に到達する。しかし、Siウェハの波長1064nm光に対する反射率は約20%程度と低いため、照射されたレーザ光のほとんどがSiウェハに吸収されることになる。レーザ光とSiウェハの相互作用により、レーザ光の強度が弱い場合は熱エネルギーとして拡散する。しかし、ウェハとレジスト界面での熱応力により透明なノボラックレジストに変化が起こる高強度の1064nm光では、Siウェハへ容易に損傷が発生する。このことから、波長1064nm光ではノボラックレジストが光学的に透明であることと、Siウェハが波長1064nmのレーザ光を良く吸収する理由から、一部レジストとSiウェハ界面での熱応力で僅かに界面が剥離する場合もあるが、Siウェハへ容易に損傷が発生し、レジスト剥離に利用することは困難である。
ここで、ノボラック系樹脂とは、酸触媒下フェノール類とホルムアルデヒドとの縮合重合反応により形成されたフェノール樹脂の一種である。ノボラック樹脂自身熱硬化性を有さないため、ノボラック系樹脂に例えば硬化剤としてジアゾナフトキノンを混練し加熱し架橋硬化させる。ノボラック系レジストの紫外線透過率を図12に示す。本発明に係るレジスト剥離除去方法においては、レジスト膜をある程度透過しなければならないため、透過率20%以上であることが好ましい。そのためには、レーザ波長はパルス幅がナノ秒では300nm以上であることが必要である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るレジスト膜剥離除去方法によれば、水等の液体を使用し化学薬品を使用しないため、環境に負荷を掛けることなくレジスト膜を除去回収することができる。また、レジストとSiウェハ界面での熱応力に加えて、ウェハ基板に付着しているレジストと液体界面で液体自身の局所的な沸騰・蒸発によりウェハと液体を反対方向に押しのける力の反作用を利用してレーザ光を効率よく用いることができ、それによりレーザ光の強度を抑えることができるため、レジスト膜下のウェハ基板に損傷を与えることがない。さらに本発明に係る剥離除去では、長波長の光を用いることができるため、フォトンコストが低く、短波長の光を用いるアブレーション除去よりも経済的である。また、超音波洗浄など物理的にウハとレジストを振動させる機構と組み合わせれば、ウェハ基板に対して損傷閾値以下の極めて低い完全に剥離しないエネルギー量で照射し、うまく剥離できなかった局所的な残存レジストも完全に除去が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係るレジスト膜剥離除去装置の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。しかし、本実施の形態に係るレジスト膜剥離除去方法等は、例示するものであって、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。なお、各図において、共通する部分については同一の符号を付し重複した説明を省略する。各構成要素の配置個数、配置位置等は限定的でなく、レジスト膜剥離除去装置の使用目的、用途、所望の性能等により適宜設定することができる。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態に係るレジスト膜剥離除去装置1の一例を示す概略図である。レジスト膜剥離除去装置1は、レジスト膜除去の対象となるウェハ2を処理する処理チャンバ3と、ウェハ2を搬送するための複数のコンベア4と、処理チャンバ3横のレーザハウジング5内に収容されたレーザ手段6と、レーザ手段6からのレーザ光を反射させてウェハ2に照射させるガルバノミラー7と、ガルバノミラー7を駆動させるためのガルバノミラー駆動装置8と、レーザ照射前においては剥離のためレーザ照射後においては洗浄のためにウェハ2に水を供給する給水装置9と、処理チャンバ3に溜まった水を排出するための排水管10と、洗浄されたウェハ基板2を乾燥させるための乾燥装置11と、レーザ手段6、ガルバノミラー駆動装置8、乾燥装置11、コンベア4及び給水装置9をそれぞれ制御可能な制御装置(不図示)と、を備える。上記レーザ手段6は、所定波長、所定強度のレーザ光を、伝送経路内のガルバノミラー7を経由して、ウェハ基板2上のレジスト膜に照射する。レーザ手段6から出射された光は、ウェハ基板2と平行な方向に進み、ガルバノミラー7により略直角に曲げられウェハ基板2に照射される。ガルバノミラー7は、レーザ伝送経路に沿ってウェハ2の表面と平行な方向に移動可能である。また、レジスト膜剥離除去装置1は、ウェハ基板2に超音波振動を与える超音波洗浄手段をさらに備えていても良い。以下、本発明のレジスト膜剥離除去装置1の主な構成要素に関して詳細に説明する。
【0022】
〔レジスト膜の剥離に用いられる沸騰可能な液体〕
レジスト膜の剥離に用いられる沸騰・蒸発可能な液体は、レーザ手段6から照射されたレーザ光のSiウェハでのエネルギー吸収によりウェハ基板2とレジスト界面での熱応力に加えて、ウェハ基板に付着しているレジストと液体界面で液体自身の局所的な沸騰・蒸発によりウェハと液体を反対方向に押しのける力の反作用を利用してレジスト膜に衝撃を与えレジスト膜を剥離するためのものである。また、当該液体は、レーザ手段6から照射された光が当該液体を介してウェハ基板に吸収されなければならないため、レーザ手段6からの光を透過する液体であることが必要である。したがって、このようにSiウェハの加熱により沸騰・蒸発可能であってレーザ光を透過することができれば如何なる液体を使用しても良いが、当該液体は、水、水溶液或いは水分散液であることが好ましい。
【0023】
レジスト膜剥離除去装置1に、上記沸騰・蒸発可能な液体の液体槽(容器)を設け、その中に浸漬した状態で上記レーザ光を照射してもよい。
〔基板〕
本発明は、ウェハ基板に代表されるレジスト膜が形成される広範囲の基板に対して有効であり、ウェハ基板を例に説明すれば、レーザ光がレジスト膜を透過してレジスト膜下のウェハ基板に吸収され、それによりウェハ基板が加熱され、ウェハ基板付近の液体が局所的に沸騰・蒸発し、沸騰・蒸発した液体がレジスト膜に衝撃を与えてウェハ基板からレジスト膜を剥離させるという原理に基づくものである。したがって、ウェハ基板としては、レーザ手段から照射された光を吸収するSi等の半導体基板が適用できる。本明細書において、基板の具体例としてウェハ基板を挙げているが、本発明に係る剥離作用を受けうる限り如何なる基板を用いてもよい。
【0024】
〔レーザ手段〕
レーザ手段6は、レーザ光をウェハ基板2に照射することができ、これによりレジスト膜を当該ウェハ基板から剥離除去するものである。
【0025】
レーザ手段6として、如何なるレーザ手段を用いても良いが、単結晶のYAG、YVO4、YLF、YAlO3、GdVO4または多結晶セラミックのYAG、Y2O3、YVO4、YAlO3、GdVO4に、ドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種または複数種添加されているものを媒質とする固体レーザ、若しくはArレーザ、Krレーザ、CO2レーザ等の気体レーザが挙げられる。レーザ手段6は、連続発振を行うレーザであっても良いし、またパルス発振を行うレーザであってもよい。レーザ手段6として特にNd:YAGレーザを用いることが好ましい。これは、大ビーム径、大出力のレーザ光線を発するものを安価に製造することができるからである。レジスト膜の局所を選択的に処理するために、ファイバーレーザーを使用すると良い場合がある。さらに、電気光変換効率が50%以上で経済的な半導体レーザを直接して使用する場合もある。
【0026】
レーザ手段6の発する光は、レジスト膜を透過することが必要である。ここで、光が透過するとは、その光の透過率が20%以上、好ましくは50%以上、更に好ましくは80〜100%の範囲にあることをいい、そのためには例えばレジスト膜としてノボラック系樹脂を使用した場合では、当該レジスト膜を透過する光の波長は300nm〜10.6μmの範囲にあり、500nm以上で80%以上の透過率が得られる。
【0027】
また、レジスト膜を透過するレーザ光のパルス幅は、フェムト秒からミリ秒であることが好ましい。具体的には、当該パルス幅は、100フェムト秒〜500ミリ秒である。当該パルス幅がミリ秒を超えると液体の局所的な沸騰・蒸発が起こりにくくなりからであり、また照射する波長にもよるが100フェムト秒以下であると、照射される光の電界強度が大きくアブレーションによる除去が支配的となるためレジスト膜の剥離現象が生じないからである。
【0028】
また、上記レジスト膜に照射されるレーザ光のエネルギー量が損傷閾値以下であることが好ましい。当該エネルギー量が損傷閾値以上であると、レーザ発振状態のばらつきにより部分的にSiウェハに損傷が生じる。より好ましくは、レーザ照射条件の影響によるレーザ損傷が完全に無視でき、多重照射が可能な50%以下である。
【0029】
〔超音波洗浄手段〕
レジスト膜剥離除去装置1は、さらに超音波洗浄手段を備えていても良い。超音波洗浄手段は、下方に開放された有底筒状のケースを備え、このケース内の中心部に上下方向に振動する超音波振動子が配置され、この振動子の下側には下端をケースから突出させた棒状の振動伝達部材が配置されていてもよい。超音波振動子は上下一対のセラミック振動板の間に電極を挟んだもので、さらにその振動板の上下に振動伝達部材が重ねられてサンドイッチ状態にされ、これらはボルトで互いの層が強固に密着するように接合されている。こうしてセラミック振動板の振動が振動伝達部材に伝達されるようになっている。洗浄工程に付されたウェハ基板に超音波洗浄手段を直接接触させることにより振動を与えても良いし、ウェハ基板が浸漬された液体を介してウェハ基板に振動を与えても良い。また、コンベア4に当該超音波洗浄手段を当接させて振動を与えても良い。
【0030】
〔ガルバノミラー及びその駆動装置〕
以下に、ガルバノミラーについて詳細に説明する。ガルバノミラーとは、磁界中に配置された可動コイルに電流を流すことにより発生する回転トルクを利用したミラーであって、可動コイルと一体に回転する軸にミラーを設けて構成されるものである。このような構成のミラーは、微調整が可能であるため、正確にレーザ光をウェハ基板に照射することができる。また、ガルバノミラーを制御装置に接続することによりガルバノミラーの方向等を自動制御することができるため好適に用いられる。ガルバノミラーは、レーザハウジング5に収容されたレーザ手段6から照射されるレーザ光の進行方向に対して下方に45°傾斜した状態で、その進行方向に対して左右に首振り運動をすることができ、当該首振り運動により、レーザ光照射位置を、コンベア4の進行方向に対して垂直な方向に変位させることができる。
さらに、ガルバノミラーの駆動装置は、レーザ手段から水平方向に照射されるレーザ光の径路に沿ってガルバノミラーを移動させることができる。これらのガルバノミラー及びその駆動装置の可動手段により、レーザ手段から出射された光をウェハ基板の全ての領域に照射することができる。これらの可動手段はそれぞれ制御装置に接続され、それぞれ独立に駆動させることができる。
【0031】
(レジスト膜剥離除去方法)
続いて、本発明に係るレジスト膜剥離除去方法を詳細に説明する。本発明は、レーザ光がレジスト膜を透過してレジスト膜下のウェハ基板に吸収され、それによりウェハ基板が加熱されて生じるレジストとSiウェハ界面での熱応力に加えて、ウェハ基板に付着しているレジストと液体界面で液体自身の局所的な沸騰・蒸発によりウェハと液体を反対方向に押しのける力の反作用を利用して、レジスト膜に衝撃を与えてウェハ基板から剥離させることに基づくものである。そのためこのような作用を受けうる限り、レジスト膜若しくはウェハ基板は如何なる材料により構成されていても良い。ここでは、レジスト膜としてノボラック系樹脂からなるレジストを、ウェハ基板としてSiウェハ基板を使用した場合について説明する。
【0032】
1.浸漬工程
まず、レジスト膜除去に供されるレジスト膜等が形成されたウェハ基板を、レーザ光のエネルギーによる急激な膨張・拡散によりレジスト膜に衝撃を与えうる液体、例えば水に浸漬する。当該基板は上記液体に浸漬された状態であっても良いし、基板上に上記液体が塗布された状態にあってもよい。当該液体は、レジストとSiウェハ界面での熱応力に加えて、ウェハ基板に付着しているレジストと液体界面で液体自身の局所的な沸騰・蒸発によりウェハと液体を反対方向に押しのける力の反作用を利用して、レジスト膜に衝撃を与える限り如何なる液体でも良いが、環境負荷の観点からこの環境負荷の少ない水、純水を使用することが好ましい。しかし、上記の作用を発揮しうる限り、この水には他の有機物、無機物、イオン等が溶解していても良いし、水以外の他の液体、特に低沸点の液体であっても良い。
【0033】
2.照射工程
続いて、レジスト膜がコートされたウェハ基板を例えば水に浸漬した状態で、又はウェハ基板上に形成されたレジスト膜上に水を塗布し、液体膜を形成した状態で、例えばNd:YAGレーザ手段からのレーザ光をレジスト膜を介してウェハ基板に照射する。ウェハ基板にレーザ光を照射することにより、ウェハ基板上のレジスト膜は部分的に剥離する。ここで、レジスト膜から水面までの距離は特に制限はない。レジスト膜から水面までの距離が大きくなるとエネルギーの損失により剥離できる面積が減少するが、その場合は照射するレーザ光のエネルギーを大きくすれば水面までの距離に関係なく照射ビーム径と同等の剥離面積が得られる。レーザ手段としては、光エネルギーが照射位置で上記剥離現象を生じ得る強度となるレーザ光を発振できればよく、固体レーザ、エキシマレーザ等の気体レーザ、あるいは半導体レーザなどレーザの発振形式を問わず、上記したようなレーザ手段を用いてもよい。
【0034】
3.超音波洗浄工程
続いて、レジスト膜の一部が剥離されたウェハ基板を超音波洗浄工程に付し、上記照射工程では完全には除去されなかったレジスト膜を完全に取り除く。ここで、超音波発生手段は、ウェハ基板を浸漬する容器と物理的に連結されており、上記超音波発生手段を作用させることにより、容器及び該容器に満たされた水を介して、不完全に剥離されたレジスト膜に振動を与え、当該レジスト膜を完全に剥離させることができる。超音波発生手段は、上記レジスト膜に振動を与えることができる限り、如何なる部位に取り付けても良い。
本発明において、ウェハ基板上のレジスト膜を、レーザ光照射により沸騰・蒸発可能な液体で覆い、ウェハとレジスト界面での熱応力に加えて、ウェハ基板に付着しているレジストと液体界面で液体自身の局所的な沸騰・蒸発によりウェハと液体を反対方向に押しのける力の反作用を利用して、レジスト膜に衝撃を与えて剥離させるため、剥離したレジストは大きな破片として存在する。そのため、レーザ光を照射して処理された後の排水をろ過等することによりレジスト膜を回収することができる。
なお、上記液体膜は静止状態でも流動状態でもよく、剥離したレジストを除去回収するために液体膜を流動させるようにすることが便利な場合もある。
【0035】
(半導体装置の製造方法)
続いて、本発明に係るレジスト膜剥離除去方法を用いた半導体装置の製造方法について説明する。
まず、レジスト材料を溶媒に溶かしたレジスト膜形成用塗布液を半導体基板上に回転塗布しこれをベーキングすることによりレジスト膜を形成する。その後所望のようにパターン開口されたマスクを介してそのレジストに光、電子線などを照射しパターン転写する。そして、そのレジストを現像してレジストパターンを形成し、レジストパターンをエッチングマスクとして半導体基板をエッチングして加工する。その後、所望のようにエッチング加工された半導体基板を、上記と同様に例えば水に浸漬し、レジスト膜が水に浸漬された状態で、レーザ光をレジスト膜に照射する。レーザ光を照射することにより、半導体基板上のレジスト膜は部分的に剥離され、さらに超音波洗浄工程に付し、レジスト膜を完全に取り除くことで、所望のように加工され所定の機能を備える半導体装置を作製することができる。
【実施例1】
【0036】
ノボラックレジストが塗布されたSiウェハ基板を純水を入れた水槽中に設置し、レジスト表面に対して垂直に、パルス幅5〜8nsのNd:YAGレーザーの基本波(1064nm)、第二高調波(532nm)、及び第三高調波(355nm)を焦点距離200mmのレンズを使用してそれぞれ単一照射した。レジストの有無はノマルスキー顕微鏡、及びXPSによる残留カーボン量の測定によって確認した。
図2aは、ノボラックレジストを塗布したSiウェハを大気中に配置しこれに1064nm光を照射した場合のSiウェハ基板を示している。図2bは、図2aに示したSiウェハ基板の拡大図である。大気中においてノボラックレジストが塗布されたSiウェハ基板に1064nmのレーザ光を照射すると、レーザ光のエネルギー吸収により発生するウェハとレジスト界面での熱応力で僅かに剥離が生じたが、同時にSiウェハにも損傷が発生した。
図3aは、ノボラックレジストを塗布したSiウェハを大気中に配置しこれに532nm光を照射した場合のSiウェハ基板を示している。また、図3bは、図3aに示したSiウェハ基板の拡大図である。532nmのレーザ光を照射した場合も1064nm光を照射した場合と同様、レジスト剥離とウェハ損傷が同時に起こった。
図2cは、本発明に係るレジスト膜剥離除去方法を用い、1064nmのレーザ光が照射されたSiウェハ基板の表面を示している。さらに、図3cは、本発明に係るレジスト膜剥離除去方法を用い、532nmのレーザ光が照射されたSiウェハ基板の表面を示している。図2c及び図3cに示すように、本発明に係る方法によれば、Si基板に損傷を与えることなく、レジスト膜を除去することができた。これは、水中においてレーザ光を照射するため、レジストとSiウェハ界面での熱応力に加えて、ウェハ基板に付着しているレジストと液体界面で液体自身の局所的な沸騰・蒸発によりウェハと液体を反対方向に押しのける力の反作用を利用してレーザ光からの光を効率よく用いることができ、それによりレーザ光の強度を抑えることができるためである。XPSの残留カーボン量の測定でもレジストの剥離を確認することができた。
続いて、レジスト表面からの純水の深さを5、10mmと変えて、532nm光をノボラックレジストを塗布したSiウェハ基板にそれぞれ照射した。図4は、当該深さを5mmとし、図5は当該深さを10mmとして532nm光を照射した場合のSiウェハ基板の表面を示している。
大気中に設置して照射したときのレジスト剥離とウェハの損傷がほぼ同時に起こるレーザーエネルギーの閾値を1とした場合、深さが5mmの場合は約30%、10mmでも約30%それぞれ低減することができた(図6)。さらに50%低減させたレーザーエネルギーでは、同一箇所に2発照射すれば剥離できることが分かった(図6)。これは、多重照射すればレーザーエネルギーを大幅に低減できることを示している。このように、レジストとSiウェハ界面での熱応力に加えて、ウェハ基板に付着しているレジストと液体界面で液体自身の局所的な沸騰・蒸発によりウェハと液体を反対方向に押しのける力の反作用を利用すれば、剥離に必要なレーザーエネルギーを大幅に低減でき、Siウェハに損傷を発生させずに従来では困難であった剥離が可能となった。
また、レジスト表面からの純水の深さを5、10mm、15mmと変えて、1064nm光をノボラックレジストを塗布したSiウェハにそれぞれ照射した。図7は、当該深さを5mmとし、図8は当該深さを10mmとして1064nm光を照射した場合のSiウェハ基板の表面を示している。
大気中に設置して照射したときのレジスト剥離とウェハの損傷がほぼ同時に起こるレーザーエネルギーの閾値を1とした場合、深さが5mmの場合は約20%、10mmで約20%、15mmでも20%それぞれ低減することができた(図9)。532nm光の結果と同様に、本発明ではフォトンコストが極めて安価な1064nm光でもSiウェハに損傷を発生させずに従来では困難であった剥離が可能となった。
続いて、水深による剥離状況の違いについて検討した。0.5J/cm2の1064nm光を純水の深さ5、10mmでノボラックレジストを塗布したSiウェハにそれぞれ照射した場合、水深が深くなるほど剥離される領域が低減した。48.4mJ/cm2の532nm光を同様に照射した場合も同様の結果が得られることが分かった。しかしながら、水深が深い場合はレーザ光の強度を大きくすれば剥離面積の増加は実現できることから、剥離メカニズムについては水深による影響は無いと考えられる。
続いて、超音波洗浄の効果について検討した。ノボラックレジストを塗布したSiウェハにレーザ光を照射した場合、レーザ光のビームパターンによっては剥離できていない部分も存在する場合もある(図10)。そこで、超音波洗浄機(周波数28kHz、出力60W)を用いて同じ純水中で処理したところ、完全に剥離できていなかった部分をきれいに剥離させることができた(図11)。また剥離したレジストは破片で存在するために、洗浄工程において回収できる。このように、超音波洗浄など物理的にウェハとレジストを振動させる機構を組み合わせれば、剥離のレーザーエネルギーを低減でき、さらに局所的に剥離が不完全な部分も除去が可能となる。
【0037】
なお、照射波長が355nmでは、レジストへ透過率は約40%程度ある。そのため、レジストとSiウェハ界面での熱応力による極めて僅かな剥離に加えて、フォトンエネルギーも高いことからアブレーションによる除去の両方が生じる。しかしながら、照射するフォトエネルギーが大きいことからアブレーションによる除去が支配的となり、図13a及び図13bに示すように、Siウエハーへの損傷を与えずにレジストを除去することができる。以上のようにSiウェハ上に塗布されたノボラックレジストでは、レジストの透過率、照射波長のフォトンエネルギーからパルス幅ナノ秒の355nmではアブレーションによる除去が支配的であるが、本発明で重要なレジストとSiウェハ界面での熱応力による極めて僅かな剥離現象が生じる領域ともなる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態に係るレジスト膜除去装置の概略図である。
【図2a】図2aは、1064nm光を用いて大気中でレジスト膜が剥離除去されたSiウェハ基板の図面代用写真である。
【図2b】図2bは、図2aに示したSiウェハ基板の拡大図面代用写真である。
【図2c】図2cは、1064nmのレーザ光を用いて水中で剥離除去されたSiウェハ基板の図面代用写真である。
【図3a】図3aは、532nm光を用いて大気中でレジスト膜が剥離除去されたSiウェハ基板の図面代用写真である。
【図3b】図3bは、図3aに示したSiウェハ基板の拡大図面代用写真である。
【図3c】図3cは、532nmのレーザ光を用いて水中で剥離除去されたSiウェハ基板の図面代用写真である。
【図4】深さを5mmとして532nm光を照射した場合のSiウェハ基板の図面代用写真である。
【図5】深さを10mmとして532nm光を照射した場合のSiウェハ基板の図面代用写真である。
【図6】レジスト表面からの純水の深さを5、10mmと変えて、532nm光をSiウェハ基板にそれぞれ照射した場合のレーザエネルギーの相対値を比較したグラフである。
【図7】深さを5mmとして1064nm光を照射した場合のSiウェハ基板の図面代用写真である。
【図8】深さを10mmとして1064nm光を照射した場合のSiウェハ基板の図面代用写真である。
【図9】レジスト表面からの純水の深さを5、10mmと変えて、1064nm光をSiウェハ基板にそれぞれ照射した場合のレーザエネルギーの相対値を比較したグラフである。
【図10】超音波洗浄前のSiウェハ基板の図面代用写真である。
【図11】超音波洗浄を2分間行った後のSiウェハ基板の図面代用写真である。
【図12】ノボラック系ポジ型レジストに照射した光の波長に対する、当該レジストを透過する光の透過率を示したグラフである。
【図13a】図13aは、355nm光を用いて大気中でレジスト膜が剥離除去されたSiウェハ基板の図面代用写真である。
【図13b】図13bは、Siウェハ基板の拡大図面代用写真である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハ基板等に塗布されたレジスト膜を回収可能に剥離除去する方法及びそれを用いる半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスの中枢であるフォトリソグラフィ工程は一般にウェハ基板上へのi)フォトレジスト塗布、ii)露光、iii)現像、iv)エッチング、v)使用済みレジスト除去の5工程を経て行っている。半導体デバイス製造ではこれらの工程を20〜30回繰り返している。
【0003】
フォトレジスト材料は環化−ビスアジド系、DNQ(ジアゾナフトキノン)−ノボラック樹脂系、PMMA(ポリメチルメタクリエート)系等さまざまな種類が存在する。これらは半導体ウェハ基板の性質、微細化条件、エッチング条件にあわせて設定使用されている。上記工程中、v)使用済みのフォトレジストの除去にはウェット方式とドライ方式が用いられる。ウェット方式ではフォトレジストは有機物であることから硫酸などの酸化性の酸で処理できるが、高温高濃度条件下で処理する為半導体ウェハ基板の性質や下地膜の状態によっては使用できない場合がある。そこで各フォトレジストにあわせた市販のレジスト剥離液が用いられる。この液は基本的に有機アルカリ系の混液でありエチレンジアミンやピロカテコールなどが含まれているが、詳細な化学組成は明らかにされていない。
【0004】
レジストの除去はコスト面から主にこのウェット方式により処理されているが、デバイス製造では上述したようにかかるレジスト剥離除去が20〜30回繰り返されるため、大量の化学廃液が発生する。そのため、環境負荷低減が要求される現代においてはウェット処理以外の手法が望まれている。
【0005】
一方、ドライ方式ではプラズマ、UV、オゾン等を用いた処理であり、反応生成物はCO2とH2Oであることから環境負荷の面においては優位な点はあるが、ドライ方式のみではフォトレジストの残渣までの完全除去は困難であり、ウェット処理との併用は避けられない状況にある。また省エネ・生産性向上という面においてはまだまだ課題が残っている。
【0006】
そこで、短波長のレーザを用いて、光解離を伴ったアブレーションによりレジスト膜を除去することが試みられている(特許文献1、2参照)。当該除去方法では、大量の化学廃液が発生しないため環境負荷が低減されている。
【特許文献1】特開2004−140239号公報
【特許文献2】特開2004−097881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、レジスト膜のアブレーションによる除去方法(特許文献1及び2)においては、レジスト膜を構成する有機物の結合手を切断することができる短波長のレーザ光が必要となるが、短波長のレーザ光はフォトンコストが高いため経済的ではない。また、レジスト膜が短波長のレーザ光の照射によるアブレーションにより分解するため、レジストの再使用は困難であり、しかもレーザ光分解したレジスト膜を含む洗浄液は廃液として処理しなければならないという問題点がある。なお、ここで、アブレーションとはレーザ光をレンズで集光などして、金属、無機化合物、高分子など様々な物質にある一定の強度(閾値)以上で照射すると、それらの物質表面から様々な粒子が飛び出し、物質表面がエッチングされる現象をいい、有機高分子であるレジスト膜では光解離が起こる。
【0008】
そこで、本発明は、第1に、フォトンコストの高いレーザ光を使用することなく、安価に、しかもウェハ基板に損傷を与えることなく、レジスト膜を剥離除去することができる方法を提供することを目的とする。第2に、本発明は、レジストがアブレーションを起こすことなくレジスト膜をウェハ面から剥離させ、そのアブレーションを起こしていないレジスト膜を洗浄液から容易に分離回収することができ、廃液処理問題を解消することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、フォトンコストの安い長波長のレーザ光を用いると、ノボラック系レジストにおいてはレジスト表面でアブレーションを起こさず、当該レジストを透過するが、ウェハ基板のレーザ光吸収により、レジスト膜下のウェハ基板に損傷を与えてしまうという問題がある。そこで、ウェハ基板に損傷を与えない程度の閾値に低減すると、長波長のレーザ光では、レジスト膜とウェハ基板の界面で発生する熱は僅かとなって、その熱応力だけではレジスト膜をウェハ基板から剥離除去することは困難であった。
しかしながら、レジスト表面上に水などのレーザ光が透過する液体膜の壁を存在させ、その状態でウェハ基板にレーザ光を照射すれば、照射したレーザ光のエネルギーによりウェハ基板が加熱され、さらにはその熱拡散により、上記ウェハ基板に付着しているレジストと液体界面では、液体自身の局所的な沸騰・蒸発によりウェハと液体を反対方向に押しのける力の反作用(レジスト側への力)によりレジスト膜が衝撃を受けレジスト膜をウェハ基板から剥離することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
したがって、本発明は、ウェハ基板を含む基板上に形成されたレジスト膜を剥離除去するにあたり、レジスト膜を透過可能であってウェハ基板に吸収可能なレーザ光を選択する一方、レジスト膜上にレーザ光を透過可能な液体膜を形成し、該液体膜を介して上記選択されたレーザ光をレジスト膜に照射して上記レジスト表面で実質的にアブレーションを起こさせることなく、レジスト膜を透過させて上記ウェハ基板とレジスト膜との界面でウェハ表面に損傷を与えない程度の熱を発生させる一方、上記レジスト膜表面と液体との界面で上記液体膜を局所的に沸騰・蒸発させ、上記レジスト膜に衝撃を与えて剥離させることを特徴とするレジスト膜剥離除去方法にある。
【0011】
本発明においては、上記レジスト膜に対してアブレーションを起こさないレーザ光を選択することが第1条件である。したがって、レーザ光のレジスト膜の透過率は重要であり、レジスト膜との透過率の関係は20%以上である必要がある。例えば、ノボラック系ポジ型レジストのUV透過率は、図12に示すように300nm未満では極端に低いが、400nmを超えると上昇し、500nm付近から80%を超えることになる。したがって、レジスト膜との透過効果との関係を見て選択する波長が決定される。レーザ光の場合、長波長側のフォトンコストが安くなる傾向になる。
【0012】
上記レーザ光照射によりレジスト膜の剥離が起こるが、電気的または機械的振動をレーザ光照射時及び/又は照射後レジスト膜に付与することにより剥離効率を向上させることが見出されており、併用することにより照射するレーザ光の照射エネルギーを低減させることが可能である。かかる振動はレーザ照射時はレジスト膜上に形成する液体膜を介してまたはレーザ照射後はレジスト膜上に存在する洗浄液を介して付与するのが適当であり、超音波振動装置を用い、機械的振動を付与することができる。上記超音波振動の強度は上記レーザ光によるレジスト膜の剥離を補助するものであるから、レーザ光の照射エネルギー量を考慮して調整するのが好ましい。他方、上記レジスト膜を透過するレーザ光の照射エネルギーは照射時間とレーザ光のパルス幅によって決まる。したがって、上記レジスト表面で実質的にアブレーションが起こらないでかつ、ウェハ基板に対して損傷閾値以下のエネルギー量となるフェムト秒からミリ秒のパルス幅の範囲でレーザ光を選択する。
【0013】
本発明方法においては、上記レーザ光による剥離効果の蓄積が見られるので、照射回数を多くすればするほどレーザ光の照射エネルギーを低減設定することができる。
【0014】
本発明において、上記レジスト膜上に形成される液体膜が、レーザ光を透過可能であって、局所加熱により沸騰、蒸発可能である必要がある。上記液体膜はレーザ光の照射によってレジスト膜の剥離増加を発揮するので、従来のように、レジスト膜を溶解する必要がなく、水、水溶液或いは水分散液からなることができる。液体膜が形成されやすいように表面張力を降下させる界面活性剤等を添加してもよい。上記レジスト膜上に形成される液体膜の膜厚はレーザ光照射エネルギー強度、レーザ光照射回数、上記振動強度などの剥離効果を考慮して決定されるのがよい。また、上記レジスト膜上に形成される液体膜の温度を通常液温より高くまたは低く設定する方が剥離効果を向上させる場合がある。
【0015】
本発明方法は、レーザ光の多重照射、レジスト膜への振動付与によるレーザ光エネルギーの低減効果を考慮すると、両者の条件下で行うのが最も効率がよい。したがって、本発明は、ウェハ基板上に形成されたレジスト膜を剥離除去するにあたり、レジスト膜を透過可能であってウェハ基板に吸収可能なレーザ光を選択し、そのエネルギー量をウェハ基板に対して損傷閾値のほぼ半数以下のエネルギー量に設定する一方、レジスト膜上に液体膜を形成し、該液体膜を介して上記選択されたレーザ光をレジスト膜に少なくとも2回以上照射して上記レジスト表面で実質的にアブレーションを起こさせることなく、レジスト膜を透過させて上記ウェハ基板とレジスト膜との界面でウェハ表面に損傷を与えない程度の熱を発生させる一方、上記レジスト膜表面と液体との界面で上記液体膜を局所的に沸騰・蒸発させる方法であって、上記レーザ光照射時及び/又はレーザ光照射後上記レジスト膜に電気的または機械的振動を与えて剥離させることを特徴とするレジスト膜剥離除去方法を提供するものである。なお、レーザ光のレジスト膜に対する透過率、レーザ光のパルス幅は上記1回照射の条件範囲であれば使用可能である。
【0016】
本発明方法は、半導体製造設備のレジスト膜剥離設備に適用することができる。したがって、本発明は、ウェハ基板上にレジスト膜を塗布、露光、除去を繰り返し、半導体基板を形成する半導体製造設備であって、レジスト膜除去工程にレーザ照射設備と、洗浄設備と、乾燥設備とを含み、上記レーザ照射設備がウェハ基板のレジスト膜上に液体膜を形成するための液体膜形成手段と、上記液体膜を介してウェハ基板上のレジスト膜にレーザ光を多重照射可能なレーザ照射装置とを含み、上記レーザ照射装置が上記液体膜が形成されたレジスト表面で実質的にアブレーションを起こさせることなく、上記レジスト膜に衝撃を与えて剥離させることを特徴とするレジスト膜剥離除去設備を含む半導体製造装置を提供するものでもある。
本発明装置において、上記液体膜形成手段は沸騰可能な液体を収容し、レジスト膜を形成したウェハ基板を浸漬させる液体膜形成槽であるか、またはウェハ基板上のレジスト膜に液滴を散布又は噴霧する手段から構成することができる。前者の場合、上記液体膜形成槽及び/又は洗浄設備が超音波洗浄装置を設けるのが好ましく、上記液体膜形成槽が超音波洗浄装置を備えると、洗浄設備を兼ねることができる。なお、上記液体膜形成槽は上記機械的振動を付与する超音波洗浄装置に代え、電気的振動を与える、高周波電流や電界操作による剥離設備とすることもできる。また、本発明においてはレジスト膜が光解離されてないので、上記洗浄設備が洗浄液と分離して実質的にアブレーションを起こしていない剥離レジスト膜を回収する手段を備え、これを回収するようにすることができる。
【0017】
本発明において、「レジスト膜の剥離」とは、レジスト膜をレーザ光により蒸発除去するアブレーションと明確に区別されるものであり、レジスト膜を光解離させることなく形状を保ったまま物理的にウェハ基板から剥がすことをいう。
例えば、Siウェハ上に塗布されたノボラックレジストに紫外から赤外までのレーザ光をそれぞれ照射した場合について説明すると、
波長266nmの短波長の光ではノボラックレジストの透過率がほぼ0のため、照射するレーザ光のエネルギーはレジスト膜に吸収される。また、波長266nmのレーザ光のフォトンエネルギーは約105(kcal/mol)で、ノボラックレジストを構成している分子間の結合(例えば、C−C(80 kcal/mol)、C−O(88 kcal/mol)、C−H(98 kcal/mol))を光解離させることができる。従って、レーザ光のエネルギーを受け取った部分のレジスト材料は光解離を伴ったアブレーション現象(蒸発)により選択的に除去される。レジスト材料はある程度の厚みがあるため、レーザ光を照射している部分の選択的な除去はその厚みが無くなるまで続く。すべてレジスト材料が除去されれば、レーザ光は基板であるSiウェハに到達する。Siウェハの波長266nm光に対する反射率は約80%以上と高いため、レジストが除去される照射エネルギーではSiウェハが損傷することはない。以上のことから、フォトンコストが高い波長266nmではノボラックレジストはアブレーション現象によって除去されており、剥離というメカニズムにより除去されている訳ではない。
【0018】
一方、フォトンコストが安価な波長1064nmでは、ノボラックレジストの透過率がほぼ90%以上で透明なため、基本的にレーザ光とノボラックレジスト間での光の相互作用は起こりにくい。そのため、照射されたレーザ光はSiウェハ基板とレジストとの界面に到達する。しかし、Siウェハの波長1064nm光に対する反射率は約20%程度と低いため、照射されたレーザ光のほとんどがSiウェハに吸収されることになる。レーザ光とSiウェハの相互作用により、レーザ光の強度が弱い場合は熱エネルギーとして拡散する。しかし、ウェハとレジスト界面での熱応力により透明なノボラックレジストに変化が起こる高強度の1064nm光では、Siウェハへ容易に損傷が発生する。このことから、波長1064nm光ではノボラックレジストが光学的に透明であることと、Siウェハが波長1064nmのレーザ光を良く吸収する理由から、一部レジストとSiウェハ界面での熱応力で僅かに界面が剥離する場合もあるが、Siウェハへ容易に損傷が発生し、レジスト剥離に利用することは困難である。
ここで、ノボラック系樹脂とは、酸触媒下フェノール類とホルムアルデヒドとの縮合重合反応により形成されたフェノール樹脂の一種である。ノボラック樹脂自身熱硬化性を有さないため、ノボラック系樹脂に例えば硬化剤としてジアゾナフトキノンを混練し加熱し架橋硬化させる。ノボラック系レジストの紫外線透過率を図12に示す。本発明に係るレジスト剥離除去方法においては、レジスト膜をある程度透過しなければならないため、透過率20%以上であることが好ましい。そのためには、レーザ波長はパルス幅がナノ秒では300nm以上であることが必要である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るレジスト膜剥離除去方法によれば、水等の液体を使用し化学薬品を使用しないため、環境に負荷を掛けることなくレジスト膜を除去回収することができる。また、レジストとSiウェハ界面での熱応力に加えて、ウェハ基板に付着しているレジストと液体界面で液体自身の局所的な沸騰・蒸発によりウェハと液体を反対方向に押しのける力の反作用を利用してレーザ光を効率よく用いることができ、それによりレーザ光の強度を抑えることができるため、レジスト膜下のウェハ基板に損傷を与えることがない。さらに本発明に係る剥離除去では、長波長の光を用いることができるため、フォトンコストが低く、短波長の光を用いるアブレーション除去よりも経済的である。また、超音波洗浄など物理的にウハとレジストを振動させる機構と組み合わせれば、ウェハ基板に対して損傷閾値以下の極めて低い完全に剥離しないエネルギー量で照射し、うまく剥離できなかった局所的な残存レジストも完全に除去が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係るレジスト膜剥離除去装置の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。しかし、本実施の形態に係るレジスト膜剥離除去方法等は、例示するものであって、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。なお、各図において、共通する部分については同一の符号を付し重複した説明を省略する。各構成要素の配置個数、配置位置等は限定的でなく、レジスト膜剥離除去装置の使用目的、用途、所望の性能等により適宜設定することができる。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態に係るレジスト膜剥離除去装置1の一例を示す概略図である。レジスト膜剥離除去装置1は、レジスト膜除去の対象となるウェハ2を処理する処理チャンバ3と、ウェハ2を搬送するための複数のコンベア4と、処理チャンバ3横のレーザハウジング5内に収容されたレーザ手段6と、レーザ手段6からのレーザ光を反射させてウェハ2に照射させるガルバノミラー7と、ガルバノミラー7を駆動させるためのガルバノミラー駆動装置8と、レーザ照射前においては剥離のためレーザ照射後においては洗浄のためにウェハ2に水を供給する給水装置9と、処理チャンバ3に溜まった水を排出するための排水管10と、洗浄されたウェハ基板2を乾燥させるための乾燥装置11と、レーザ手段6、ガルバノミラー駆動装置8、乾燥装置11、コンベア4及び給水装置9をそれぞれ制御可能な制御装置(不図示)と、を備える。上記レーザ手段6は、所定波長、所定強度のレーザ光を、伝送経路内のガルバノミラー7を経由して、ウェハ基板2上のレジスト膜に照射する。レーザ手段6から出射された光は、ウェハ基板2と平行な方向に進み、ガルバノミラー7により略直角に曲げられウェハ基板2に照射される。ガルバノミラー7は、レーザ伝送経路に沿ってウェハ2の表面と平行な方向に移動可能である。また、レジスト膜剥離除去装置1は、ウェハ基板2に超音波振動を与える超音波洗浄手段をさらに備えていても良い。以下、本発明のレジスト膜剥離除去装置1の主な構成要素に関して詳細に説明する。
【0022】
〔レジスト膜の剥離に用いられる沸騰可能な液体〕
レジスト膜の剥離に用いられる沸騰・蒸発可能な液体は、レーザ手段6から照射されたレーザ光のSiウェハでのエネルギー吸収によりウェハ基板2とレジスト界面での熱応力に加えて、ウェハ基板に付着しているレジストと液体界面で液体自身の局所的な沸騰・蒸発によりウェハと液体を反対方向に押しのける力の反作用を利用してレジスト膜に衝撃を与えレジスト膜を剥離するためのものである。また、当該液体は、レーザ手段6から照射された光が当該液体を介してウェハ基板に吸収されなければならないため、レーザ手段6からの光を透過する液体であることが必要である。したがって、このようにSiウェハの加熱により沸騰・蒸発可能であってレーザ光を透過することができれば如何なる液体を使用しても良いが、当該液体は、水、水溶液或いは水分散液であることが好ましい。
【0023】
レジスト膜剥離除去装置1に、上記沸騰・蒸発可能な液体の液体槽(容器)を設け、その中に浸漬した状態で上記レーザ光を照射してもよい。
〔基板〕
本発明は、ウェハ基板に代表されるレジスト膜が形成される広範囲の基板に対して有効であり、ウェハ基板を例に説明すれば、レーザ光がレジスト膜を透過してレジスト膜下のウェハ基板に吸収され、それによりウェハ基板が加熱され、ウェハ基板付近の液体が局所的に沸騰・蒸発し、沸騰・蒸発した液体がレジスト膜に衝撃を与えてウェハ基板からレジスト膜を剥離させるという原理に基づくものである。したがって、ウェハ基板としては、レーザ手段から照射された光を吸収するSi等の半導体基板が適用できる。本明細書において、基板の具体例としてウェハ基板を挙げているが、本発明に係る剥離作用を受けうる限り如何なる基板を用いてもよい。
【0024】
〔レーザ手段〕
レーザ手段6は、レーザ光をウェハ基板2に照射することができ、これによりレジスト膜を当該ウェハ基板から剥離除去するものである。
【0025】
レーザ手段6として、如何なるレーザ手段を用いても良いが、単結晶のYAG、YVO4、YLF、YAlO3、GdVO4または多結晶セラミックのYAG、Y2O3、YVO4、YAlO3、GdVO4に、ドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種または複数種添加されているものを媒質とする固体レーザ、若しくはArレーザ、Krレーザ、CO2レーザ等の気体レーザが挙げられる。レーザ手段6は、連続発振を行うレーザであっても良いし、またパルス発振を行うレーザであってもよい。レーザ手段6として特にNd:YAGレーザを用いることが好ましい。これは、大ビーム径、大出力のレーザ光線を発するものを安価に製造することができるからである。レジスト膜の局所を選択的に処理するために、ファイバーレーザーを使用すると良い場合がある。さらに、電気光変換効率が50%以上で経済的な半導体レーザを直接して使用する場合もある。
【0026】
レーザ手段6の発する光は、レジスト膜を透過することが必要である。ここで、光が透過するとは、その光の透過率が20%以上、好ましくは50%以上、更に好ましくは80〜100%の範囲にあることをいい、そのためには例えばレジスト膜としてノボラック系樹脂を使用した場合では、当該レジスト膜を透過する光の波長は300nm〜10.6μmの範囲にあり、500nm以上で80%以上の透過率が得られる。
【0027】
また、レジスト膜を透過するレーザ光のパルス幅は、フェムト秒からミリ秒であることが好ましい。具体的には、当該パルス幅は、100フェムト秒〜500ミリ秒である。当該パルス幅がミリ秒を超えると液体の局所的な沸騰・蒸発が起こりにくくなりからであり、また照射する波長にもよるが100フェムト秒以下であると、照射される光の電界強度が大きくアブレーションによる除去が支配的となるためレジスト膜の剥離現象が生じないからである。
【0028】
また、上記レジスト膜に照射されるレーザ光のエネルギー量が損傷閾値以下であることが好ましい。当該エネルギー量が損傷閾値以上であると、レーザ発振状態のばらつきにより部分的にSiウェハに損傷が生じる。より好ましくは、レーザ照射条件の影響によるレーザ損傷が完全に無視でき、多重照射が可能な50%以下である。
【0029】
〔超音波洗浄手段〕
レジスト膜剥離除去装置1は、さらに超音波洗浄手段を備えていても良い。超音波洗浄手段は、下方に開放された有底筒状のケースを備え、このケース内の中心部に上下方向に振動する超音波振動子が配置され、この振動子の下側には下端をケースから突出させた棒状の振動伝達部材が配置されていてもよい。超音波振動子は上下一対のセラミック振動板の間に電極を挟んだもので、さらにその振動板の上下に振動伝達部材が重ねられてサンドイッチ状態にされ、これらはボルトで互いの層が強固に密着するように接合されている。こうしてセラミック振動板の振動が振動伝達部材に伝達されるようになっている。洗浄工程に付されたウェハ基板に超音波洗浄手段を直接接触させることにより振動を与えても良いし、ウェハ基板が浸漬された液体を介してウェハ基板に振動を与えても良い。また、コンベア4に当該超音波洗浄手段を当接させて振動を与えても良い。
【0030】
〔ガルバノミラー及びその駆動装置〕
以下に、ガルバノミラーについて詳細に説明する。ガルバノミラーとは、磁界中に配置された可動コイルに電流を流すことにより発生する回転トルクを利用したミラーであって、可動コイルと一体に回転する軸にミラーを設けて構成されるものである。このような構成のミラーは、微調整が可能であるため、正確にレーザ光をウェハ基板に照射することができる。また、ガルバノミラーを制御装置に接続することによりガルバノミラーの方向等を自動制御することができるため好適に用いられる。ガルバノミラーは、レーザハウジング5に収容されたレーザ手段6から照射されるレーザ光の進行方向に対して下方に45°傾斜した状態で、その進行方向に対して左右に首振り運動をすることができ、当該首振り運動により、レーザ光照射位置を、コンベア4の進行方向に対して垂直な方向に変位させることができる。
さらに、ガルバノミラーの駆動装置は、レーザ手段から水平方向に照射されるレーザ光の径路に沿ってガルバノミラーを移動させることができる。これらのガルバノミラー及びその駆動装置の可動手段により、レーザ手段から出射された光をウェハ基板の全ての領域に照射することができる。これらの可動手段はそれぞれ制御装置に接続され、それぞれ独立に駆動させることができる。
【0031】
(レジスト膜剥離除去方法)
続いて、本発明に係るレジスト膜剥離除去方法を詳細に説明する。本発明は、レーザ光がレジスト膜を透過してレジスト膜下のウェハ基板に吸収され、それによりウェハ基板が加熱されて生じるレジストとSiウェハ界面での熱応力に加えて、ウェハ基板に付着しているレジストと液体界面で液体自身の局所的な沸騰・蒸発によりウェハと液体を反対方向に押しのける力の反作用を利用して、レジスト膜に衝撃を与えてウェハ基板から剥離させることに基づくものである。そのためこのような作用を受けうる限り、レジスト膜若しくはウェハ基板は如何なる材料により構成されていても良い。ここでは、レジスト膜としてノボラック系樹脂からなるレジストを、ウェハ基板としてSiウェハ基板を使用した場合について説明する。
【0032】
1.浸漬工程
まず、レジスト膜除去に供されるレジスト膜等が形成されたウェハ基板を、レーザ光のエネルギーによる急激な膨張・拡散によりレジスト膜に衝撃を与えうる液体、例えば水に浸漬する。当該基板は上記液体に浸漬された状態であっても良いし、基板上に上記液体が塗布された状態にあってもよい。当該液体は、レジストとSiウェハ界面での熱応力に加えて、ウェハ基板に付着しているレジストと液体界面で液体自身の局所的な沸騰・蒸発によりウェハと液体を反対方向に押しのける力の反作用を利用して、レジスト膜に衝撃を与える限り如何なる液体でも良いが、環境負荷の観点からこの環境負荷の少ない水、純水を使用することが好ましい。しかし、上記の作用を発揮しうる限り、この水には他の有機物、無機物、イオン等が溶解していても良いし、水以外の他の液体、特に低沸点の液体であっても良い。
【0033】
2.照射工程
続いて、レジスト膜がコートされたウェハ基板を例えば水に浸漬した状態で、又はウェハ基板上に形成されたレジスト膜上に水を塗布し、液体膜を形成した状態で、例えばNd:YAGレーザ手段からのレーザ光をレジスト膜を介してウェハ基板に照射する。ウェハ基板にレーザ光を照射することにより、ウェハ基板上のレジスト膜は部分的に剥離する。ここで、レジスト膜から水面までの距離は特に制限はない。レジスト膜から水面までの距離が大きくなるとエネルギーの損失により剥離できる面積が減少するが、その場合は照射するレーザ光のエネルギーを大きくすれば水面までの距離に関係なく照射ビーム径と同等の剥離面積が得られる。レーザ手段としては、光エネルギーが照射位置で上記剥離現象を生じ得る強度となるレーザ光を発振できればよく、固体レーザ、エキシマレーザ等の気体レーザ、あるいは半導体レーザなどレーザの発振形式を問わず、上記したようなレーザ手段を用いてもよい。
【0034】
3.超音波洗浄工程
続いて、レジスト膜の一部が剥離されたウェハ基板を超音波洗浄工程に付し、上記照射工程では完全には除去されなかったレジスト膜を完全に取り除く。ここで、超音波発生手段は、ウェハ基板を浸漬する容器と物理的に連結されており、上記超音波発生手段を作用させることにより、容器及び該容器に満たされた水を介して、不完全に剥離されたレジスト膜に振動を与え、当該レジスト膜を完全に剥離させることができる。超音波発生手段は、上記レジスト膜に振動を与えることができる限り、如何なる部位に取り付けても良い。
本発明において、ウェハ基板上のレジスト膜を、レーザ光照射により沸騰・蒸発可能な液体で覆い、ウェハとレジスト界面での熱応力に加えて、ウェハ基板に付着しているレジストと液体界面で液体自身の局所的な沸騰・蒸発によりウェハと液体を反対方向に押しのける力の反作用を利用して、レジスト膜に衝撃を与えて剥離させるため、剥離したレジストは大きな破片として存在する。そのため、レーザ光を照射して処理された後の排水をろ過等することによりレジスト膜を回収することができる。
なお、上記液体膜は静止状態でも流動状態でもよく、剥離したレジストを除去回収するために液体膜を流動させるようにすることが便利な場合もある。
【0035】
(半導体装置の製造方法)
続いて、本発明に係るレジスト膜剥離除去方法を用いた半導体装置の製造方法について説明する。
まず、レジスト材料を溶媒に溶かしたレジスト膜形成用塗布液を半導体基板上に回転塗布しこれをベーキングすることによりレジスト膜を形成する。その後所望のようにパターン開口されたマスクを介してそのレジストに光、電子線などを照射しパターン転写する。そして、そのレジストを現像してレジストパターンを形成し、レジストパターンをエッチングマスクとして半導体基板をエッチングして加工する。その後、所望のようにエッチング加工された半導体基板を、上記と同様に例えば水に浸漬し、レジスト膜が水に浸漬された状態で、レーザ光をレジスト膜に照射する。レーザ光を照射することにより、半導体基板上のレジスト膜は部分的に剥離され、さらに超音波洗浄工程に付し、レジスト膜を完全に取り除くことで、所望のように加工され所定の機能を備える半導体装置を作製することができる。
【実施例1】
【0036】
ノボラックレジストが塗布されたSiウェハ基板を純水を入れた水槽中に設置し、レジスト表面に対して垂直に、パルス幅5〜8nsのNd:YAGレーザーの基本波(1064nm)、第二高調波(532nm)、及び第三高調波(355nm)を焦点距離200mmのレンズを使用してそれぞれ単一照射した。レジストの有無はノマルスキー顕微鏡、及びXPSによる残留カーボン量の測定によって確認した。
図2aは、ノボラックレジストを塗布したSiウェハを大気中に配置しこれに1064nm光を照射した場合のSiウェハ基板を示している。図2bは、図2aに示したSiウェハ基板の拡大図である。大気中においてノボラックレジストが塗布されたSiウェハ基板に1064nmのレーザ光を照射すると、レーザ光のエネルギー吸収により発生するウェハとレジスト界面での熱応力で僅かに剥離が生じたが、同時にSiウェハにも損傷が発生した。
図3aは、ノボラックレジストを塗布したSiウェハを大気中に配置しこれに532nm光を照射した場合のSiウェハ基板を示している。また、図3bは、図3aに示したSiウェハ基板の拡大図である。532nmのレーザ光を照射した場合も1064nm光を照射した場合と同様、レジスト剥離とウェハ損傷が同時に起こった。
図2cは、本発明に係るレジスト膜剥離除去方法を用い、1064nmのレーザ光が照射されたSiウェハ基板の表面を示している。さらに、図3cは、本発明に係るレジスト膜剥離除去方法を用い、532nmのレーザ光が照射されたSiウェハ基板の表面を示している。図2c及び図3cに示すように、本発明に係る方法によれば、Si基板に損傷を与えることなく、レジスト膜を除去することができた。これは、水中においてレーザ光を照射するため、レジストとSiウェハ界面での熱応力に加えて、ウェハ基板に付着しているレジストと液体界面で液体自身の局所的な沸騰・蒸発によりウェハと液体を反対方向に押しのける力の反作用を利用してレーザ光からの光を効率よく用いることができ、それによりレーザ光の強度を抑えることができるためである。XPSの残留カーボン量の測定でもレジストの剥離を確認することができた。
続いて、レジスト表面からの純水の深さを5、10mmと変えて、532nm光をノボラックレジストを塗布したSiウェハ基板にそれぞれ照射した。図4は、当該深さを5mmとし、図5は当該深さを10mmとして532nm光を照射した場合のSiウェハ基板の表面を示している。
大気中に設置して照射したときのレジスト剥離とウェハの損傷がほぼ同時に起こるレーザーエネルギーの閾値を1とした場合、深さが5mmの場合は約30%、10mmでも約30%それぞれ低減することができた(図6)。さらに50%低減させたレーザーエネルギーでは、同一箇所に2発照射すれば剥離できることが分かった(図6)。これは、多重照射すればレーザーエネルギーを大幅に低減できることを示している。このように、レジストとSiウェハ界面での熱応力に加えて、ウェハ基板に付着しているレジストと液体界面で液体自身の局所的な沸騰・蒸発によりウェハと液体を反対方向に押しのける力の反作用を利用すれば、剥離に必要なレーザーエネルギーを大幅に低減でき、Siウェハに損傷を発生させずに従来では困難であった剥離が可能となった。
また、レジスト表面からの純水の深さを5、10mm、15mmと変えて、1064nm光をノボラックレジストを塗布したSiウェハにそれぞれ照射した。図7は、当該深さを5mmとし、図8は当該深さを10mmとして1064nm光を照射した場合のSiウェハ基板の表面を示している。
大気中に設置して照射したときのレジスト剥離とウェハの損傷がほぼ同時に起こるレーザーエネルギーの閾値を1とした場合、深さが5mmの場合は約20%、10mmで約20%、15mmでも20%それぞれ低減することができた(図9)。532nm光の結果と同様に、本発明ではフォトンコストが極めて安価な1064nm光でもSiウェハに損傷を発生させずに従来では困難であった剥離が可能となった。
続いて、水深による剥離状況の違いについて検討した。0.5J/cm2の1064nm光を純水の深さ5、10mmでノボラックレジストを塗布したSiウェハにそれぞれ照射した場合、水深が深くなるほど剥離される領域が低減した。48.4mJ/cm2の532nm光を同様に照射した場合も同様の結果が得られることが分かった。しかしながら、水深が深い場合はレーザ光の強度を大きくすれば剥離面積の増加は実現できることから、剥離メカニズムについては水深による影響は無いと考えられる。
続いて、超音波洗浄の効果について検討した。ノボラックレジストを塗布したSiウェハにレーザ光を照射した場合、レーザ光のビームパターンによっては剥離できていない部分も存在する場合もある(図10)。そこで、超音波洗浄機(周波数28kHz、出力60W)を用いて同じ純水中で処理したところ、完全に剥離できていなかった部分をきれいに剥離させることができた(図11)。また剥離したレジストは破片で存在するために、洗浄工程において回収できる。このように、超音波洗浄など物理的にウェハとレジストを振動させる機構を組み合わせれば、剥離のレーザーエネルギーを低減でき、さらに局所的に剥離が不完全な部分も除去が可能となる。
【0037】
なお、照射波長が355nmでは、レジストへ透過率は約40%程度ある。そのため、レジストとSiウェハ界面での熱応力による極めて僅かな剥離に加えて、フォトンエネルギーも高いことからアブレーションによる除去の両方が生じる。しかしながら、照射するフォトエネルギーが大きいことからアブレーションによる除去が支配的となり、図13a及び図13bに示すように、Siウエハーへの損傷を与えずにレジストを除去することができる。以上のようにSiウェハ上に塗布されたノボラックレジストでは、レジストの透過率、照射波長のフォトンエネルギーからパルス幅ナノ秒の355nmではアブレーションによる除去が支配的であるが、本発明で重要なレジストとSiウェハ界面での熱応力による極めて僅かな剥離現象が生じる領域ともなる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態に係るレジスト膜除去装置の概略図である。
【図2a】図2aは、1064nm光を用いて大気中でレジスト膜が剥離除去されたSiウェハ基板の図面代用写真である。
【図2b】図2bは、図2aに示したSiウェハ基板の拡大図面代用写真である。
【図2c】図2cは、1064nmのレーザ光を用いて水中で剥離除去されたSiウェハ基板の図面代用写真である。
【図3a】図3aは、532nm光を用いて大気中でレジスト膜が剥離除去されたSiウェハ基板の図面代用写真である。
【図3b】図3bは、図3aに示したSiウェハ基板の拡大図面代用写真である。
【図3c】図3cは、532nmのレーザ光を用いて水中で剥離除去されたSiウェハ基板の図面代用写真である。
【図4】深さを5mmとして532nm光を照射した場合のSiウェハ基板の図面代用写真である。
【図5】深さを10mmとして532nm光を照射した場合のSiウェハ基板の図面代用写真である。
【図6】レジスト表面からの純水の深さを5、10mmと変えて、532nm光をSiウェハ基板にそれぞれ照射した場合のレーザエネルギーの相対値を比較したグラフである。
【図7】深さを5mmとして1064nm光を照射した場合のSiウェハ基板の図面代用写真である。
【図8】深さを10mmとして1064nm光を照射した場合のSiウェハ基板の図面代用写真である。
【図9】レジスト表面からの純水の深さを5、10mmと変えて、1064nm光をSiウェハ基板にそれぞれ照射した場合のレーザエネルギーの相対値を比較したグラフである。
【図10】超音波洗浄前のSiウェハ基板の図面代用写真である。
【図11】超音波洗浄を2分間行った後のSiウェハ基板の図面代用写真である。
【図12】ノボラック系ポジ型レジストに照射した光の波長に対する、当該レジストを透過する光の透過率を示したグラフである。
【図13a】図13aは、355nm光を用いて大気中でレジスト膜が剥離除去されたSiウェハ基板の図面代用写真である。
【図13b】図13bは、Siウェハ基板の拡大図面代用写真である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハ基板上に形成されたレジスト膜を剥離除去するにあたり、レジスト膜を透過可能であって、ウェハ基板に吸収可能であるレーザ光を選択する一方、レジスト膜上に上記レーザ光を透過可能な液体膜を形成し、該液体膜を介して上記選択されたレーザ光をレジスト膜に照射して上記レジスト表面で実質的にアブレーションを起こさせることなく、レジスト膜を透過させて上記ウェハ基板とレジスト膜との界面でウェハ表面に損傷を与えない程度の熱を発生させる一方、上記レジスト膜表面と液体との界面で上記液体膜を局所的に沸騰・蒸発させ、上記レジスト膜に衝撃を与えて剥離させることを特徴とするレジスト膜剥離除去方法。
【請求項2】
上記レジスト膜に対してレーザ光の透過率を20%以上で、上記レジスト表面で実質的にアブレーションが起こらないレーザ光の波長を選択する請求項1記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項3】
上記レジスト膜に対してレーザ光の波長を上記レジスト表面で実質的にアブレーションが起こらないでかつ、300nm以上の範囲から選択する請求項1記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項4】
上記レーザ光照射時及び/又は照射後レジスト膜に電気的または機械的振動を付与する請求項1記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項5】
上記レジスト膜に対する振動を超音波振動によりレーザ照射時はレジスト膜上に形成する液体膜を介してまたはレーザ照射後はレジスト膜上に存在する洗浄液を介して付与する請求項4記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項6】
上記超音波振動の強度を上記レーザ光エネルギー量を考慮して調整する請求項5記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項7】
上記レジスト膜を透過するレーザ光のパルス幅を、上記レジスト表面で実質的にアブレーションが起こらないでかつ、ウェハ基板に対して損傷閾値以下のエネルギー量となるフェムト秒からミリ秒の範囲で選択する請求項1記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項8】
上記レーザ光のエネルギー量を照射回数を考慮して低減設定し、上記液体膜を介して上記設定されたレーザ光をレジスト膜に多重照射する請求項1記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項9】
上記レジスト膜上に形成される液体膜が、レーザ光を透過可能であって、基板の局所加熱により沸騰、蒸発可能である請求項1記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項10】
上記液体膜が水、水溶液或いは水分散液からなる請求項9記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項11】
上記レジスト膜上に液体膜を形成し、その膜厚をレーザ光照射エネルギー強度、レーザ光照射回数、上記レジスト膜への振動強度を考慮して調整する請求項9記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項12】
上記レジスト膜上に形成される液体膜の温度を通常液温より高くまたは低く設定する請求項9記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項13】
ウェハ基板上に形成されたレジスト膜を剥離除去するにあたり、レジスト膜を透過可能であってウェハ基板に吸収可能なレーザ光を選択し、そのエネルギー量をウェハ基板に対する損傷閾値のほぼ半数以下のエネルギー量に設定する一方、レジスト膜上にレーザ光を透過可能な液体膜を形成し、該液体膜を介して上記選択されたレーザ光をレジスト膜に少なくとも2回以上照射して上記レジスト表面で実質的にアブレーションを起こさせることなく、レジスト膜を透過させて上記ウェハ基板とレジスト膜との界面でウェハ表面に損傷を与えない程度の熱を発生させる一方、上記レジスト膜表面と液体との界面で上記液体膜を局所的に沸騰・蒸発させる方法であって、上記レーザ光照射時及び/又はレーザ光照射後上記レジスト膜に電気的または機械的振動を与えて剥離させることを特徴とするレジスト膜剥離除去方法。
【請求項14】
上記レジスト膜に対してレーザ光の波長を上記レジスト表面で実質的にアブレーションが起こらないでかつ、400nm以上の範囲から選択する請求項13記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項15】
上記レジスト膜上に形成される液体膜が、レーザ光を透過可能であって、局所加熱により沸騰、蒸発可能である水、水溶液或いは水分散液からなる請求項13記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項16】
上記レジスト膜に対する振動を超音波振動によりレーザ照射時はレジスト膜上に形成する液体膜を介してまたはレーザ照射後はレジスト膜上に存在する洗浄液を介して付与する請求項13記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項17】
上記超音波振動の強度を上記レーザ光エネルギー量を考慮して調整する請求項16記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項18】
上記レジスト膜上に液体膜を形成し、その膜厚をレーザ光照射エネルギー強度、レーザ光照射回数、上記機械的振動強度を考慮して調整する請求項13記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項19】
上記レジスト膜上に形成される液体膜の温度を通常液温より高くまたは低く設定する請求項13記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項20】
ウェハ基板上にレジスト膜を塗布、露光、除去を繰り返し、半導体基板を形成する半導体製造設備であって、レジスト膜除去工程にレーザ照射設備と、洗浄設備と、乾燥設備とを含み、上記レーザ照射設備がウェハ基板のレジスト膜上に液体膜を形成するための液体膜形成手段と、上記液体膜を介してウェハ基板上のレジスト膜にレーザ光を多重照射可能なレーザ照射装置とを含み、上記レーザ照射装置が上記液体膜が形成されたレジスト表面で実質的にアブレーションを起こさせることなく、上記レジスト膜に衝撃を与えて剥離させることを特徴とするレジスト膜剥離除去設備を含む半導体製造装置。
【請求項21】
上記液体膜形成手段が沸騰可能な液体を収容し、レジスト膜を形成したウェハ基板を浸漬させる液体膜形成槽である請求項20記載のレジスト膜剥離除去設備を含む半導体製造装置。
【請求項22】
上記液体膜形成手段がウェハ基板上のレジスト膜に液滴を散布又は噴霧する手段からなる請求項20記載のレジスト膜剥離除去設備を含む半導体製造装置。
【請求項23】
上記液体膜形成槽及び/又は洗浄設備が超音波洗浄装置を備える請求項21記載のレジスト膜剥離除去設備を含む半導体製造装置。
【請求項24】
上記液体膜形成槽が超音波洗浄装置を備え、洗浄設備を兼ねる請求項21記載のレジスト膜剥離除去設備を含む半導体製造装置。
【請求項25】
上記液体膜形成槽が電気的レジスト膜剥離装置を備える請求項20に記載のレジスト膜剥離除去設備を含む半導体製造装置。
【請求項26】
上記レーザ照射装置が、上記レジスト表面で実質的にアブレーションが起こらないでかつ、300nm以上の固体レーザ、ガスレーザ、半導体レーザおよびファイバーレーザの一つからなり、レジスト膜全面に照射可能である請求項20記載のレジスト膜剥離除去設備を含む半導体製造装置。
【請求項27】
上記液体膜形成装置が槽内の液体を加熱又は冷却する手段を備える請求項20記載のレジスト膜剥離除去設備を含む半導体製造装置。
【請求項28】
上記洗浄設備が洗浄液と分離して実質的にアブレーションを起こしていない剥離レジスト膜を回収する手段を備える請求項20記載のレジスト膜剥離除去設備を含む半導体製造装置。
【請求項1】
ウェハ基板上に形成されたレジスト膜を剥離除去するにあたり、レジスト膜を透過可能であって、ウェハ基板に吸収可能であるレーザ光を選択する一方、レジスト膜上に上記レーザ光を透過可能な液体膜を形成し、該液体膜を介して上記選択されたレーザ光をレジスト膜に照射して上記レジスト表面で実質的にアブレーションを起こさせることなく、レジスト膜を透過させて上記ウェハ基板とレジスト膜との界面でウェハ表面に損傷を与えない程度の熱を発生させる一方、上記レジスト膜表面と液体との界面で上記液体膜を局所的に沸騰・蒸発させ、上記レジスト膜に衝撃を与えて剥離させることを特徴とするレジスト膜剥離除去方法。
【請求項2】
上記レジスト膜に対してレーザ光の透過率を20%以上で、上記レジスト表面で実質的にアブレーションが起こらないレーザ光の波長を選択する請求項1記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項3】
上記レジスト膜に対してレーザ光の波長を上記レジスト表面で実質的にアブレーションが起こらないでかつ、300nm以上の範囲から選択する請求項1記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項4】
上記レーザ光照射時及び/又は照射後レジスト膜に電気的または機械的振動を付与する請求項1記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項5】
上記レジスト膜に対する振動を超音波振動によりレーザ照射時はレジスト膜上に形成する液体膜を介してまたはレーザ照射後はレジスト膜上に存在する洗浄液を介して付与する請求項4記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項6】
上記超音波振動の強度を上記レーザ光エネルギー量を考慮して調整する請求項5記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項7】
上記レジスト膜を透過するレーザ光のパルス幅を、上記レジスト表面で実質的にアブレーションが起こらないでかつ、ウェハ基板に対して損傷閾値以下のエネルギー量となるフェムト秒からミリ秒の範囲で選択する請求項1記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項8】
上記レーザ光のエネルギー量を照射回数を考慮して低減設定し、上記液体膜を介して上記設定されたレーザ光をレジスト膜に多重照射する請求項1記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項9】
上記レジスト膜上に形成される液体膜が、レーザ光を透過可能であって、基板の局所加熱により沸騰、蒸発可能である請求項1記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項10】
上記液体膜が水、水溶液或いは水分散液からなる請求項9記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項11】
上記レジスト膜上に液体膜を形成し、その膜厚をレーザ光照射エネルギー強度、レーザ光照射回数、上記レジスト膜への振動強度を考慮して調整する請求項9記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項12】
上記レジスト膜上に形成される液体膜の温度を通常液温より高くまたは低く設定する請求項9記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項13】
ウェハ基板上に形成されたレジスト膜を剥離除去するにあたり、レジスト膜を透過可能であってウェハ基板に吸収可能なレーザ光を選択し、そのエネルギー量をウェハ基板に対する損傷閾値のほぼ半数以下のエネルギー量に設定する一方、レジスト膜上にレーザ光を透過可能な液体膜を形成し、該液体膜を介して上記選択されたレーザ光をレジスト膜に少なくとも2回以上照射して上記レジスト表面で実質的にアブレーションを起こさせることなく、レジスト膜を透過させて上記ウェハ基板とレジスト膜との界面でウェハ表面に損傷を与えない程度の熱を発生させる一方、上記レジスト膜表面と液体との界面で上記液体膜を局所的に沸騰・蒸発させる方法であって、上記レーザ光照射時及び/又はレーザ光照射後上記レジスト膜に電気的または機械的振動を与えて剥離させることを特徴とするレジスト膜剥離除去方法。
【請求項14】
上記レジスト膜に対してレーザ光の波長を上記レジスト表面で実質的にアブレーションが起こらないでかつ、400nm以上の範囲から選択する請求項13記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項15】
上記レジスト膜上に形成される液体膜が、レーザ光を透過可能であって、局所加熱により沸騰、蒸発可能である水、水溶液或いは水分散液からなる請求項13記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項16】
上記レジスト膜に対する振動を超音波振動によりレーザ照射時はレジスト膜上に形成する液体膜を介してまたはレーザ照射後はレジスト膜上に存在する洗浄液を介して付与する請求項13記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項17】
上記超音波振動の強度を上記レーザ光エネルギー量を考慮して調整する請求項16記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項18】
上記レジスト膜上に液体膜を形成し、その膜厚をレーザ光照射エネルギー強度、レーザ光照射回数、上記機械的振動強度を考慮して調整する請求項13記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項19】
上記レジスト膜上に形成される液体膜の温度を通常液温より高くまたは低く設定する請求項13記載のレジスト膜剥離除去方法。
【請求項20】
ウェハ基板上にレジスト膜を塗布、露光、除去を繰り返し、半導体基板を形成する半導体製造設備であって、レジスト膜除去工程にレーザ照射設備と、洗浄設備と、乾燥設備とを含み、上記レーザ照射設備がウェハ基板のレジスト膜上に液体膜を形成するための液体膜形成手段と、上記液体膜を介してウェハ基板上のレジスト膜にレーザ光を多重照射可能なレーザ照射装置とを含み、上記レーザ照射装置が上記液体膜が形成されたレジスト表面で実質的にアブレーションを起こさせることなく、上記レジスト膜に衝撃を与えて剥離させることを特徴とするレジスト膜剥離除去設備を含む半導体製造装置。
【請求項21】
上記液体膜形成手段が沸騰可能な液体を収容し、レジスト膜を形成したウェハ基板を浸漬させる液体膜形成槽である請求項20記載のレジスト膜剥離除去設備を含む半導体製造装置。
【請求項22】
上記液体膜形成手段がウェハ基板上のレジスト膜に液滴を散布又は噴霧する手段からなる請求項20記載のレジスト膜剥離除去設備を含む半導体製造装置。
【請求項23】
上記液体膜形成槽及び/又は洗浄設備が超音波洗浄装置を備える請求項21記載のレジスト膜剥離除去設備を含む半導体製造装置。
【請求項24】
上記液体膜形成槽が超音波洗浄装置を備え、洗浄設備を兼ねる請求項21記載のレジスト膜剥離除去設備を含む半導体製造装置。
【請求項25】
上記液体膜形成槽が電気的レジスト膜剥離装置を備える請求項20に記載のレジスト膜剥離除去設備を含む半導体製造装置。
【請求項26】
上記レーザ照射装置が、上記レジスト表面で実質的にアブレーションが起こらないでかつ、300nm以上の固体レーザ、ガスレーザ、半導体レーザおよびファイバーレーザの一つからなり、レジスト膜全面に照射可能である請求項20記載のレジスト膜剥離除去設備を含む半導体製造装置。
【請求項27】
上記液体膜形成装置が槽内の液体を加熱又は冷却する手段を備える請求項20記載のレジスト膜剥離除去設備を含む半導体製造装置。
【請求項28】
上記洗浄設備が洗浄液と分離して実質的にアブレーションを起こしていない剥離レジスト膜を回収する手段を備える請求項20記載のレジスト膜剥離除去設備を含む半導体製造装置。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13a】
【図13b】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13a】
【図13b】
【公開番号】特開2008−42017(P2008−42017A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−215979(P2006−215979)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(505342081)
【出願人】(591108455)有限会社岡本光学加工所 (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(505342081)
【出願人】(591108455)有限会社岡本光学加工所 (8)
【Fターム(参考)】
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