説明

レジストパターンの表面処理方法およびそれを用いたレジストパターン形成方法、ならびにそれらに用いる被覆層形成用組成物

【課題】フォトレジストパターンの耐熱性を向上させる、レジストパターンの表面処理方法およびそれを用いたパターン形成方法の提供。
【解決手段】現像済みフォトレジストパターン表面に酸素を含む雰囲気下でプラズマ処理を施し、前記フォトレジストパターン表面にオキサゾリン骨格などを含む架橋性基を含有するポリマーを含む被覆層形成用組成物を接触させることを含んでなる、現像済みフォトレジストパターンの処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像済レジストパターンの表面処理方法、およびそれを用いたレジストパターンの形成方法、ならびにそれらに用いる被覆層形成用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LSIなどの半導体集積回路や、FPDの表示面の製造、カラーフィルター、サーマルヘッドなどの回路基板の製造等を初めとする幅広い分野において、微細素子の形成あるいは微細加工を行うために、従来からフォトリソグラフィー技術が利用されている。一般にフォトリソグラフィーによって形成されたレジストパターンは、エッチングマスクなどとして利用されるが、耐熱性が要求されることがある。
【0003】
すなわち、レジストパターンをマスクとしてめっき処理を施し、めっきのパターンを基板表面に施したり、レジストパターンをマスクとして金属蒸着を施して金属配線を基板表面に形成させることがあるが、このような場合にはレジストパターンの温度が高くなる場合がある。通常、これらの処理においてはレジストパターンの温度は場合によっては100℃を超えることがあるが、一般的なレジストではこのような高温に付されるとレジストパターンの形状が維持されないことがある。このような熱によるレジストパターンの変形は熱ダレと呼ばれることがある。レジストパターンの形状が維持できないとレジストパターンをマスクとして実施した転写プロセスの線幅のばらつきや形状のばらつきを引き起こしデバイスの特性に悪影響を及ぼす。
【0004】
このような現象を防ぐために、現像済レジスト表面を処理して耐熱性を改良する試みがなされている。例えば、レジストパターンを形成させる際に、レジスト組成物中に架橋性基を含むポリマーを配合する、レジスト樹脂そのものに架橋性基を付加させる、レジスト組成物に架橋剤または硬化剤を添加するなどのレジスト組成物の改良が検討されている(特許文献1〜4)。また、レジスト組成物に二種の感光性成分を含ませ、第一の感光性成分を用いて形成されたレジストパターンを第二の感光性成分でさらに硬化させる方法や、加熱による硬化と同時に、紫外線照射による硬化を行う方法、レジストを多層構成にすることによって耐熱性を改良する方法(特許文献5〜7)なども検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−233395号公報
【特許文献2】特開2007−256943号公報
【特許文献3】特開2010−020291号公報
【特許文献4】特開平6−043637号公報
【特許文献5】特開平11−352702号公報
【特許文献6】特開平6−186755号公報
【特許文献7】特開2002−064054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、いずれの方法も製造工程が複雑化する、添加する成分によってレジストの解像度が低下するなどの問題があり、また耐熱性にもさらなる改良の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による現像済みフォトレジストパターンの表面処理方法は、
現像済みフォトレジストパターン表面に酸素を含む雰囲気下でプラズマ処理を施し、
前記フォトレジストパターン表面に、レジストパターンの表面に存在する官能基と反応して結合し得る架橋性基を有するポリマーと溶媒とを含んでなる被覆層形成用組成物を接触させる
ことを含んでなることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明によるパターン形成方法は、
基板にフォトレジスト組成物を塗布してフォトレジスト組成物層を形成させ、
前記フォトレジスト組成物層を露光し、
露光済みのフォトレジスト組成物層を現像液により現像してフォトレジストパターンを形成させ、
前記フォトレジストパターン表面に酸素を含む雰囲気下でプラズマ処理を施し、
次いで前記フォトレジストパターン表面に、レジストパターンの表面に存在する官能基と反応して結合し得る架橋性基を有するポリマーと溶媒とを含んでなる被覆層形成用組成物を接触させる
ことを含んでなることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明による被覆層形成用組成物は、酸素を含む雰囲気下にプラズマ処理された現像済みフォトレジストパターン表面に接触させてレジストパターン表面に耐熱性被覆層を形成させるためのものであって、前記レジストパターンの表面に存在する官能基と反応して結合し得る架橋性基を有するポリマーと、溶媒とを含んでなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法によれば、フォトレジストパターンの耐熱性を向上させることができ、それによってフォトレジストパターンのめっき耐性や金属蒸着耐性を向上させることができる。さらには、めっき耐性の向上によって、めっき処理液へのレジスト溶出が少なくなるため、メッキ処理液の長寿命化も達成される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例、および比較例におけるレジストパターンの断面形状の電子顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0013】
レジストパターンの表面処理方法
本発明によるレジストパターンの表面処理方法は、まず現像済レジストパターンに酸素を含む雰囲気下でプラズマ処理を施す。ここで、表面処理を施すレジストパターンは特に限定されず、任意の方法で形成されたものを用いることができる(詳細後述)。
【0014】
プラズマ処理とは、放電によってプラズマ状態を引き起こし、生成する反応性に富んだ電子やイオンを目的物と反応させるものである。本発明においては、このプラズマ処理を酸素を含む雰囲気下で行う。
【0015】
このようなプラズマ処理を行うためのプラズマ発生装置としては、低圧高周波プラズマ発生装置のほか、酸素プラズマを発生させうる大気圧放電プラズマなどの装置を用いることが可能である。
【0016】
また、放電の際の雰囲気は、酸素を含むことが必要である。具体的には雰囲気が酸素を10モル%以上含むことが好ましく、50モル%以上含むことがより好ましい。プラズマ処理によって酸素ガスは消費されるので、雰囲気中に酸素ガスを流入させることもできる。このような場合には、一般的に酸素流量が1〜1,000sccmであることが好ましく、10〜200sccmであることがより好ましい。雰囲気には酸素以外の気体が含まれてもよいがプラズマ処理によってレジスト表面の親水性向上を妨げる気体の含有率が少ないことが好ましい。
【0017】
放電の際の雰囲気の圧力は、1〜1,000Paであることが好ましく、5〜500Paであることがより好ましい。また、放電の際、基板の温度は、−80〜100℃であることが好ましく、−20〜60℃であることがより好ましい。
【0018】
放電の際のアンテナ出力は 10〜5,000Wであることが好ましく、100〜2,000Wであることがより好ましい。
【0019】
このようなプラズマ処理は、例えばNE−5000型プラズマエッチング装置(商品名、株式会社アルバック製)により行うことができる。
【0020】
このようなプラズマ処理を行うことで、レジストパターン表面が改質されて、表面に存在する官能基、特にカルボキシ基(−COOH)または水酸基(−OH)の密度が増えると考えられる。これによって表面の親水性が向上し、後述する架橋性基を含有するポリマー(以下、単に「ポリマー」ということがある)との反応が促進されると考えられる。すなわち、レジストパターン表面に架橋性基を含有するポリマーを接触させることによって、レジストパターン表面に存在する官能基と、ポリマーに含まれる架橋性基とが反応し、レジストパターン表面に被覆層が形成されるのである。この被覆層は、レジストパターンが加熱された際に熱ダレと呼ばれるような変形を防ぐ耐熱性被膜や、表面をめっき処理する際のメッキ液へのレジストの溶出を抑制する保護膜、として機能するものである。
【0021】
プラズマ処理を施した後のレジストパターンに、引き続いてポリマーと溶媒とを含む被覆層形成用組成物を接触させる。ここで、架橋性基とは、レジストパターンの表面に存在する官能基と反応して結合する基をいう。そしてレジストパターンの表面に存在する官能基はプラズマ処理により生成または増加するいずれであってもよい。しかし、一般にはプラズマ処理によってカルボキシ基または水酸基が増加するので、架橋性基はカルボキシ基または水酸基と反応可能なものが好ましい。
【0022】
カルボキシ基とはほとんどの塩基性基が反応し得るので、カルボキシ基と反応可能である架橋性基としては塩基性基を挙げることができる。より具体的には、オキサゾリン骨格、ピロリドン骨格、ジアリルアミン骨格、またはアミン基を含む架橋性基が好ましく、オキサゾリン骨格を含むものがより好ましい。一方、水酸基はエポキシ基、オキセタン基、またはイソシアネート基と反応性が高く、これらを架橋基として含むことが好ましい。これらの架橋性基は、ポリマーの側鎖に存在しても、主鎖中に存在してもよい。
【0023】
架橋性基がポリマーの側鎖に存在する場合、ポリマー主鎖は、いずれのものであってもよい。例えばポリエチレン構造、ポリエステル構造、ポリアミド構造、ポリシラン構造、ポリシロキサン構造など、任意の構造を採用することができる。また、オキサゾリン骨格や環状アミンなどが主鎖中に組み込まれていてもよい。このようなポリマーの具体的な例を挙げると、以下のようなものが挙げられる。
【化1】

ここでnは重合度を表す数である。
なお、ポリマーはこれらに限定されるものではなく、たとえばここにあげたポリマーの水素を炭素数1〜10程度のアルキル基に置換したり、アルキレン基の炭層数を変更したりすることもできる。
【0024】
このようなポリマーのうち、代表的なものは架橋性基を含有する重合性モノマーを重合することにより製造することができる。重合性モノマーは任意のものを用いることができるが、不飽和結合の開裂によって付加重合するものが好ましい。これは、付加重合による重合反応は、モノマーに含まれる架橋性基との反応がほとんど起こらないからである。また、このようなモノマーは任意の置換基を含むことができるが、架橋性基との反応を避けるために、酸基、とくにカルボキシ基を含まないものであることが好ましい。例えば、ビニルオキサゾリン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、アリルアミン、ジアリルアミンなどが挙げられるが、これらに限定されず、任意の置換基を有したものを用いることができる。より具体的には、下記のような重合性モノマーを用いることができる。
【化2】

【0025】
また、架橋性基を含有する重合性モノマーを重合するとき、架橋性基を含まない重合性モノマーを併用してコポリマーとすることもできる。このようなモノマーとしては、ビニルアルコール、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0026】
これらの架橋性基を含有するポリマーの分子量は特に限定されないが、重量平均分子量で500〜1,000,000であることが好ましく、1,000〜500,000であることがより好ましい。ここで重量平均分子量とは、ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定されたものをいう。
【0027】
本発明において用いられる被覆層形成用組成物は、このようなポリマーを水などの溶媒に溶解させたものである。この時被覆層形成用組成物中のポリマー濃度は、ポリマーとレジストパターン表面との間に形成される架橋をより高い密度にするという観点からみると高いことが好ましい。一方で濃度が高すぎるとレジストパターンの溶解のような問題が起こることがある。このため、被覆層形成用組成物のポリマー含有率は、被覆層形成用組成物の全重量を基準として一般に0.05〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%である。
【0028】
また、本発明において用いられる被覆層形成用組成物は、前記したポリマーのほかに溶媒として水を含んでなる。用いられる水としては、蒸留、イオン交換処理、フィルター処理、各種吸着処理等により、有機不純物、金属イオン等が除去されたもの、特に純水が好ましい。
【0029】
本発明において用いられる被覆層形成用組成物は、必要に応じて、pH調整剤を添加してpHを調整することができる。このようなpH調整剤としては、酸、または塩基が用いられる。これらの酸または塩基は、各成分の溶解性を改良する効果を有する場合もある。用いられる酸または塩基は本発明の効果を損なわない範囲で任意に選択できるが、例えば塩酸、硫酸、硝酸、スルホン酸、アミン類、アンモニウム塩が挙げられる。本発明においては、ポリマーが架橋性基を含むために塩基性であることが多い。このためpH調整のために添加剤として酸を用いることが好ましい。ここで、酸としてカルボン酸を用いると、ポリマーに含まれる架橋性基と反応してしまい、現像済レジストパターンに適用してもレジスト表面に存在するカルボキシ基との反応が進行しない可能性があるのでカルボン酸を用いないことが好ましい。したがって、酸としては塩酸、硫酸、硝酸、またはスルホン酸を用いることが好ましい。
【0030】
これらの酸等を用いて被覆層形成用組成物のpHを調整する場合には、組成物安定性と反応速度の観点から、2〜10とすることが好ましく、3〜9とすることがより好ましい。
【0031】
本発明において用いられる被覆層形成用組成物は、さらに界面活性剤を含むことができる。界面活性剤は、被覆層形成用組成物によるレジスト表面の濡れ性を改良し、また表面張力を調整することによって、パターン倒れやパターン剥離を改良することができるので、用いることが好ましい。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、双性界面活性剤などのいずれも用いることができる。これらのうちノニオン性界面活性剤は組成物の安定性を改良する効果があるので好ましい。これらの界面活性剤は、必要に応じて2種類以上を組み合わせて用いることもできる。界面活性剤を用いる場合には、その含有量は被覆層形成用組成物の全重量を基準として0.005〜1重量%であることが好ましく、0.01〜0.5重量%であることがより好ましい。
【0032】
また、被覆層形成用組成物には、熱酸発生剤を添加することもできる。この熱酸発生剤は例えば揮発性アミンと酸の塩からなるものであり、組成物を塗布、乾燥した後、加熱することでアミンを揮発させ、レジストパターン表面の酸濃度を増加させる機能を有するものである。熱酸発生剤を含む被覆層形成用組成物をレジストパターンに適用すると、レジスト表面のカルボキシル基が塩基によってブロックされている場合には、加熱により発生した酸によって塩基が脱離する。そして遊離したカルボキシル基と架橋性基、例えばオキサゾリン基との反応が促進される。すなわち、熱酸発生剤を添加することで、レジストパターン表面と架橋性基を含有するポリマーとの間の架橋反応をより促進させることができる。このような熱酸発生剤の具体的な例としてp−トルエンスルホン酸とトリエチルアミンからなる塩が挙げられる。
【0033】
また、被覆層形成用組成物には水以外の有機溶媒を共溶媒として用いることもできる。有機溶剤はリンス液の表面張力を調整する作用を有し、またレジスト表面への濡れ性を改良することができる場合がある。また、用いられるポリマーの水に対する溶解性が低い場合に、溶解性を改良することもできる。このような場合に用いることのできる有機溶媒は、水に可溶な有機溶媒から選ばれる。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、およびt−ブチルアルコール等のアルコール類、エチレングリコールおよびジエチレングリコール等のグリコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート、アルキルセロソルブアセテート、プロピレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、ブチルカルビトール、カルビトールアセテート、テトラヒドロフラン等の溶媒が挙げられる。
【0034】
しかしながら、これらの有機溶媒はパターンを構成するレジストを溶解したり、変性させることがあるため、使用する場合には少量に限定される。具体的には、有機溶媒の含有量は被覆層形成用組成物の全重量を基準として通常15%以下であり、好ましくは7%以下である。
【0035】
本発明において用いられる被覆層形成用組成物は、さらに殺菌剤、抗菌剤、防腐剤、および/または防カビ剤を含んでもよい。これらの薬剤はバクテリアまたは菌類が経時したリンス液中で繁殖するのを防ぐために用いられる。これらの例には、フェノキシエタノール、イソチアゾロン等のアルコールが包含される。日本曹達株式会社から市販されているベストサイド(商品名)は特に有効な防腐剤、防カビ剤、および殺菌剤である。典型的には、これらの薬剤は被覆層形成用組成物の性能には影響を与えないものであり、通常被覆層形成用組成物の全重量を基準として1重量%以下、好ましくは0.1重量%未満、また好ましくは0.001重量%以上の含有量とされる。
【0036】
このように調製された被覆層形成用組成物は、プラズマ処理されたレジストパターンに接触させられる。接触させる方法は、特に限定されず、レジストパターンを被覆層形成用組成物中に浸漬したり、スピンコート、スプレーコート、スリットコートなどの塗布方法によって被覆層形成用組成物をレジスト表面に塗布したりしてもよい。
【0037】
被覆層形成用組成物をレジスト表面に接触させる時間は、被覆層形成用組成物に含まれるポリマーの種類や濃度、接触時の温度などによって変化するが、一般に1〜600秒、好ましくは5〜300秒である。
【0038】
レジストパターンは、被覆層形成用組成物に接触させられた後、洗浄されてもよい。このような洗浄によってレジスト表面に残存する過剰のポリマーを除去することができる。このような洗浄がなされない場合、残存したポリマーの塩基性によってレジストパターンが溶解してしまうことがあるので注意が必要である。洗浄は、一般に水によって行われるが、必要に応じて界面活性剤や有機溶媒を含んだ水を用いることもできる。
【0039】
被覆層形成用組成物接触後、必要に応じて洗浄されたレジストパターンは、さらに加熱されてもよい。この加熱によってレジストパターン表面とポリマーとの反応が促進され、より堅牢なレジストパターンを形成させることができる。このような加熱処理における加熱温度は、40〜120℃であることが好ましく、60〜100℃であることがより好ましい。また、加熱時間は10〜300秒、好ましくは30〜120秒である。
【0040】
このような方法によりレジストパターンの表面を処理することによって、レジストパターンの耐熱性を改良することができる。
【0041】
パターン形成方法
次に、本発明によるパターンの形成方法について説明する。本発明によるパターン形成方法は、リソグラフィー技術によってレジストパターンを形成させ、引き続いて前記のレジストパターンの表面処理方法によって処理するものである。
【0042】
まず、必要に応じて前処理された、シリコン基板、ガラス基板等の基板の表面に、フォトレジスト組成物をスピンコート法など従来から公知の塗布法により塗布して、フォトレジスト組成物層を形成させる。フォトレジスト組成物の塗布に先立ち、レジスト下層に反射防止膜が塗布形成されてもよい。このような反射防止膜により断面形状および露光マージンを改善することができる。
【0043】
本発明のパターン形成方法には、従来知られている何れのフォトレジスト組成物を用いることもできる。本発明のパターン形成方法に用いることができるフォトレジスト組成物の代表的なものを例示すると、ポジ型では、例えば、キノンジアジド系感光剤とアルカリ可溶性樹脂とからなるもの、化学増幅型フォトレジスト組成物などが、ネガ型では、例えば、ポリケイ皮酸ビニル等の感光性基を有する高分子化合物を含むもの、芳香族アジド化合物を含有するもの或いは環化ゴムとビスアジド化合物からなるようなアジド化合物を含有するもの、ジアゾ樹脂を含むもの、付加重合性不飽和化合物を含む光重合性組成物、化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物などが挙げられる。
【0044】
ここでキノンジアジド系感光剤とアルカリ可溶性樹脂とからなるポジ型フォトレジスト組成物において用いられるキノンジアジド系感光剤の例としては、1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸、これらのスルホン酸のエステル或いはアミドなどが、またアルカリ可溶性樹脂の例としては、ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、アクリル酸或はメタクリル酸の共重合体などが挙げられる。ノボラック樹脂としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、キシレノール等のフェノール類の1種又は2種以上と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等のアルデヒド類の1種以上から製造されるものが好ましいものとして挙げられる。
【0045】
また、化学増幅型のフォトレジスト組成物は、ポジ型およびネガ型のいずれであっても本発明のパターン形成方法に用いることができる。化学増幅型フォトレジストは、放射線照射により酸を発生させ、この酸の触媒作用による化学変化により放射線照射部分の現像液に対する溶解性を変化させてパターンを形成するもので、例えば、放射線照射により酸を発生させる酸発生化合物と、酸の存在下に分解しフェノール性水酸基或いはカルボキシル基のようなアルカリ可溶性基が生成される酸感応性基含有樹脂からなるもの、アルカリ可溶樹脂と架橋剤、酸発生剤からなるものが挙げられる。
【0046】
基板上に形成されたフォトレジスト組成物層は、例えばホットプレート上でプリベークされてフォトレジスト組成物中の溶剤が除去され、厚さが通常0.5〜2.5ミクロン程度のフォトレジスト膜とされる。プリベーク温度は、用いる溶剤或いはフォトレジスト組成物により異なるが、通常20〜200℃、好ましくは50〜150℃程度の温度で行われる。
【0047】
フォトレジスト膜はその後、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、超高圧水銀ランプ、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、軟X線照射装置、電子線描画装置など公知の照射装置を用い、必要に応じマスクを介して露光が行われる。
【0048】
露光後、必要に応じベーキングを行った後、例えばパドル現像などの方法で現像が行われ、レジストパターンが形成される。レジストの現像は、通常アルカリ性現像液を用いて行われる。アルカリ性現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)などの水溶液或いは水性溶液が用いられる。現像処理後、必要に応じて洗浄される。
【0049】
本発明によるパターン形成方法においては、このようにして得られた現像済みレジストパターンを前記したフォトレジストの表面処理方法を適用して、レジストパターンの表面を処理する。表面処理方法の適用は、レジストパターンの現像直後であってもよいし、現像後のレジストパターンを一時的に保存などしてからであってもよい。
【0050】
本発明を諸例を用いて説明すると以下の通りである。
【0051】
実施例1
シリコン基板上にi線露光に対応したポジ型レジスト組成物(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製AZ40XT−11D(商品名))をスピンコーターで2600rpmの条件で塗布し、125℃/360秒の条件でベーク処理して、膜厚が25〜27μmのレジスト膜を有する基板を準備した。得られた基板をi線露光装置(Suss Microtec社製MA200e型(商品名))を用いて、350〜400mJの条件で露光し、105℃で75秒間加熱した。引き続き23℃の2.38%TMAH水溶液で120秒間現像し、脱イオン水でリンス処理することによってラインパターンを有する現像済みレジスト基板を作製した。ここで得られたラインパターンを走査型電子顕微鏡によって観察したところ、その断面形状は矩形であった。さらに現像済みレジスト基板を、酸素流量100sccm、アンテナ出力1000Wの条件で20秒間酸素プラズマ処理した後に、ポリマーP8を0.5重量%の濃度で水に溶解させた被覆層形成用組成物に20秒間浸漬し、さらに脱イオン水で洗浄し、乾燥した。
【0052】
次いで得られたレジスト基板の耐熱性を評価した。得られたレジスト基板を、120℃/120秒間加熱して、ラインパターンの断面形状を走査型電子顕微鏡によって観察した。この結果、加熱によるラインパターンの断面形状の変化はほとんどなく、矩形が保たれていた。
【0053】
実施例2〜13および比較例1〜4
酸素プラズマ処理の有無、被覆層形成用組成物による処理の有無、ポリマーの種類、被覆層形成用組成物のポリマー濃度、共溶媒の有無、浸漬時間を変更して実施例1を繰り返した。変更した条件および得られた結果は表1に示す通りであった。なお、用いたポリマーの構造は下記に示されるものであり、それらの重量平均分子量は表1に示す通りであった。ここで、ポリアクリル酸(PA)は、便宜的に架橋性基を含有するポリマーの欄に記載してあるが、架橋性基を含有しないポリマーである。また、共溶媒を用いた場合、その配合比は主たる溶媒である水と共溶媒との合計重量に対して、共溶媒の含有量が5重量%となるようにした。
【化3】

【0054】
また、耐熱性評価にあたって、電子顕微鏡で観察されたレジスト断面形状は、以下の通りに分類した。
I: 初期形状(図1(I))
A: 初期形状Iから変形がほとんど無い(図1(A))
B: 初期形状Iから軽微な変形が認められた(図1(B))
C: 初期状態Iに対して熱ダレによる顕著な変形が認められた(図1(C))
【0055】
【表1】

*THF: テトラヒドロフラン
【0056】
実施例14および比較例5〜7
レジスト組成物をKrF露光に対応したレジスト組成物(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製DX6270P(商品名))に変更して実施例1を繰り返した(実施例14)。また、酸素プラズマ処理の有無、被覆層形成用組成物による処理の有無を変更して実施例14を繰り返した(比較例4〜6)。なお、耐熱性評価の際の加熱温度は180℃とした。変更した条件および得られた結果は表2に示す通りであった。
【0057】
【表2】

【0058】
実施例15および比較例8〜10
レジスト組成物をArF露光に対応したレジスト組成物(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製AX1120P(商品名))に変更して実施例1を繰り返した(実施例15)。また、酸素プラズマ処理の有無、被覆層形成用組成物による処理の有無を変更して実施例15を繰り返した(比較例8〜10)。変更した条件および得られた結果は表3に示す通りであった。
【0059】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像済みフォトレジストパターン表面に酸素を含む雰囲気下でプラズマ処理を施し、
前記フォトレジストパターン表面に、レジストパターンの表面に存在する官能基と反応して結合し得る架橋性基を有するポリマーと溶媒とを含んでなる被覆層形成用組成物を接触させる
ことを含んでなることを特徴とする、現像済みフォトレジストパターンの表面処理方法。
【請求項2】
前記プラズマ処理が、10%以上の濃度の酸素を含む雰囲気下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記官能基がカルボキシ基または水酸基である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマーに含まれる架橋性基が、オキサゾリン骨格、ピロリドン骨格、ジアリルアミン骨格、またはアミン基を含むものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマーに含まれる架橋性基が、エポキシ基、オキセタン基、またはイソシアネート基を含むものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記被覆層形成用組成物が、溶媒として水を含んでなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記被覆用形成用組成物が、溶媒としてさらに有機溶媒を含んでなる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記被覆用形成用組成物のpHが2〜10である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記フォトレジストパターン表面に前記被覆層形成用組成物を接触させた後、加熱することを含んでなる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
基板にフォトレジスト組成物を塗布してフォトレジスト組成物層を形成させ、
前記フォトレジスト組成物層を露光し、
露光済みのフォトレジスト組成物層を現像液により現像してフォトレジストパターンを形成させ、
前記フォトレジストパターン表面に酸素を含む雰囲気下でプラズマ処理を施し、
次いで前記フォトレジストパターン表面に、レジストパターンの表面に存在する官能基と反応して結合し得る架橋性基を有するポリマーと溶媒とを含んでなる被覆層形成用組成物を接触させる
ことを含んでなることを特徴とする、パターン形成方法。
【請求項11】
酸素を含む雰囲気下にプラズマ処理された現像済みフォトレジストパターン表面に接触させてレジストパターン表面に耐熱性被覆層を形成させるための被覆層形成用組成物であって、前記レジストパターンの表面に存在する官能基と反応して結合し得る架橋性基を有するポリマーと、溶媒とを含んでなることを特徴とする、被覆層形成用組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2013−83812(P2013−83812A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223927(P2011−223927)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(312001188)AZエレクトロニックマテリアルズIP株式会社 (14)
【Fターム(参考)】