説明

レジスト下層膜形成組成物及びそれを用いたレジストパターンの形成方法

【課題】ドライエッチング速度の選択比が大きく、しかもArFエキシマレーザーのような短波長でのk値及び屈折率nが所望の値を示すレジスト下層膜を形成するための組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物は、ポリマー及び溶剤を含み、該ポリマーが1,1−シクロアルキルジカルボン酸とジグリシジル化合物との反応により生成される構造を有するものである。前記ポリマーにおいて、1,1−シクロアルキルジカルボン酸の酸基を除く部分が、エステル結合を介して該ポリマーの主鎖に導入されている。例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルが付加した脂環式構造、或いは脂肪族構造を有するテトラカルボン酸二無水物誘導体はエステル結合を介して線状ポリマーの主鎖に導入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置を製造する過程のリソグラフィー工程において所望の形状のレジストパターンを得るために、基板とその上に形成されるレジスト膜との間にレジスト下層膜を形成するのに有用な組成物に関する。また、液浸露光装置を用いるリソグラフィー工程に適した、レジスト下層膜を形成するための組成物に関する。レジスト膜を露光する際に、そのレジスト膜に及ぼす反射波の影響を前記レジスト下層膜が抑制する場合、そのレジスト下層膜を反射防止膜と称することができる。
【背景技術】
【0002】
波長193nmのArFエキシマレーザーを光源に用いる、リソグラフィー工程に用いられる反射防止膜を形成するための組成物が知られている(特許文献1参照)。特許文献1には、側鎖にベンゼン環、ラクトン環、ヒドロキシアルキル基をそれぞれ独立に有する、共重合体であるアクリル樹脂を含む組成物が開示されている。
ビスフェノールS、ビスフェノールA、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸、フェノールノボラック、及び酢酸からなる群より選ばれた化合物を含有するポリマーを含む反射防止コーティング組成物が開示されている(特許文献2参照)。
【0003】
その他、ポリマー主鎖に水酸基を持つアルキルジカルボン酸とジエポキシ化合物との縮合体を用いることを特徴とした反射防止膜組成物が知られている(特許文献3参照)。しかしながら、炭素数3乃至4の環状化合物で同一炭素に2つのカルボン酸を持つジカルボン酸が導入されたポリマーは記載も示唆もされていない。
【特許文献1】国際公開第03/017002号パンフレット
【特許文献2】特表2004−533637号公報
【特許文献3】国際公開第07/148627号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液浸リソグラフィー工程を採用する場合、液浸露光装置の投影レンズの開口数(NA)が大きいほど、入射波の反射を制御するため、減衰係数(k値)が高いレジスト下層膜は望ましくなく、むしろk値が低い方が有効と考えられている。k値を低く設定するに当たっては透明性の高いモノマーをポリマーへ共重合することが有効である。露光波長である193nmにおいて透明性の高いモノマーはノルボルネンに代表される炭素数の多い脂肪族炭化水素化合物が知られるが、この様なモノマーを反射防止膜組成物として用いると、ドライエッチング速度が低下する不具合が生じる問題がある。一方、良好なリソグラフィー特性を得るには、芳香族化合物のような剛直性の高い骨格をポリマー構造内に導入することが有効であるが、193nmにおける透明性を得るには、この様な剛直性の高い芳香族化合物を導入することは光学定数の設計上難しい。
【0005】
レジスト下層膜には、レジスト膜よりドライエッチング速度が大きい(ドライエッチング速度の選択比が大きい)ことが求められる。また、薄膜で十分に反射防止性能が得られ、ドライエッチング時に速やかに除去されることが求められる。しかしながら、アクリル樹脂又はメタクリル樹脂であるポリマーを含む組成物から形成されるレジスト下層膜は、ドライエッチング速度に関して必ずしも満足できるものではない。アクリル樹脂又はメタクリル樹脂の主鎖を構成する炭素原子同士の結合(C−C結合)は、ドライエッチングによりその結合が容易に分断されないためと考えられる。
【0006】
本発明は、k値を希釈するために透明性の高いモノマーを含む一方、ドライエッチング
速度の選択比が大きく、しかも、ArFエキシマレーザー(波長193nm)のような短波長でのk値及び屈折率nが所望の値を示すレジスト下層膜を形成するためのリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物を得ることを目的とする。
レジスト下層膜に含まれるポリマーは、薬液節約プロセスであるRRC処理に用いられる溶剤、例えばPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)やPGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)とPGMEAの混合溶剤への高い溶解性があるほど望ましい。その理由はRRC処理、レジスト下層膜塗布時にRRC処理溶剤とレジスト下層膜組成物との間にミキシングが起こるが、レジスト下層膜のRRC処理溶剤への溶解性が低い場合は樹脂成分の析出が起こり、レジスト下層膜塗布後に生じる欠陥の原因となるためである。前記RRC処理とは基板にレジスト下層膜を塗布する前に基板洗浄や基板とのなじみを良くするために、PGMEA、PGMEAとPGME等の混合溶媒を基板と接触させる処理であって、レジスト下層膜形成組成物の塗布前に行われる。このとき、レジスト下層膜に用いられているポリマー成分がこれらの溶剤への溶解性が低い場合には、膜中で溶解成分と未溶解成分の分離が起こり、塗布された下層膜に欠陥を生ずるため、好ましくない。該欠陥として、例えば下層膜中に粒状のポリマーの析出が生じる。
また、本発明は、レジスト下層膜上のレジストパターンが所望の形状となる、レジスト下層膜を形成するためのリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物を得ることを目的とする。本発明のその組成物は、形成されるレジスト下層膜がその上に塗布されるレジストの溶剤に不溶であること、及び形成されるレジスト下層膜とレジスト膜との間にインターミキシングがないことが条件である。
そして、本発明は、該リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物を用いたレジストパターンの形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、ポリマー及び溶剤を含むリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物において、該ポリマーとして1,1−シクロアルキルジカルボン酸とジグリシジル化合物との縮合体を用いることによって、k値を希釈するための透明性の高いモノマーを含み、またドライエッチング速度の選択比が大きく、さらにArFエキシマレーザー(波長193nm)のような短波長でのk値及び屈折率nが所望の値を示すリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、第1観点として、ポリマー及び溶剤を含み、該ポリマーが1,1−シクロアルキルジカルボン酸とジグリシジル化合物との反応により生成される構造を有するものであることを特徴とするリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物、
第2観点として、1,1−シクロアルキルジカルボン酸の酸基を除く部分がエステル結合を介して前記ポリマーの主鎖に導入されている、第1観点に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物、
第3観点として、前記ポリマーが、下記式(1):
【化1】

(式中、
1、A2、A3、A4、A5及びA6は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を表し、
Qは2つの炭素原子間の2価の有機基を表し、及び
nは1又は2の整数を表す。)で表される繰り返し単位の構造を有する第1観点に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物、
第4観点として、前記式(1)において、Qが下記式(2):
【化2】

(式中、
1は炭素原子数1乃至10のアルキレン基、炭素原子数3乃至10の脂環式炭化水素を
有する2価の有機基、フェニレン基、ナフチレン基又はアントリレン基を表し、前記フェニレン基、ナフチレン基及びアントリレン基は、それぞれ、炭素原子数1乃至6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよく、
1及びn2はそれぞれ独立に0又は1の数を表す。)
で表される2価の有機基を表す第3観点に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物、
第5観点として、前記式(1)において、Qが下記式(3):
【化3】

[式中、X1は下記式(4)又は下記式(5)
【化4】

(式中、
3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数3乃至6のアルケニル基、ベンジル基又はフェニル基を表し、前記フェニル基は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよく、R3とR4は互いに結合して炭素原子数3乃至6の環を形成していてもよい。)で表される基を表す]で表される2価の有機基を表す第3観
点に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物、
第6観点として、前記式(1)において、Qが下記式(6):
【化5】

(式中、
5は炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数3乃至6のアルケニル基、ベンジ
ル基又はフェニル基を表し、前記フェニル基は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基で置換されていてもよい。)で表される2価の有機基を表す第3観点に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物、
第7観点として、前記ポリマーが、下記式(7)で表される少なくとも一種の1,1−シクロアルキルジカルボン酸と下記式(8)で表される少なくとも一種のジグリシジル化合物との重合によって得られる生成物である、第3観点に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物
【化6】

(式(7)及び式(8)中、
nは1又は2の整数を表し、
1、A2、A3、A4、A5及びA6は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を表し、
Qは第3観点において定義された通りである。)、
第8観点として、前記式(8)において、Qが下記式(9):
【化7】

(式中、
1は炭素原子数1乃至10のアルキレン基、炭素原子数3乃至10の脂環式炭化水素を
有する2価の有機基、フェニレン基、ナフチレン基又はアントリレン基を表し、前記フェニレン基、ナフチレン基及びアントリレン基は、それぞれ、炭素原子数1乃至6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよく、
1及びn2はそれぞれ独立に0又は1の数を表す。)
で表される2価の有機基を表す第7観点に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物、
第9観点として、前記式(8)で表される化合物が、下記式(10):
【化8】

(式中、Yは炭素原子数1乃至6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基又は炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基を表し、mは0乃至4の整数を表し、mが2乃至4の場合前記Yは同一であっても異なっていてもよい。)
で表される第7観点又は第8観点に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物、
第10観点として、前記式(8)において、Qが下記式(11):
【化9】

(式中、
5は炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数3乃至6のアルケニル基、ベンジル
基又はフェニル基を表し、前記フェニル基は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基で置換されていてもよい
。)
で表される2価の有機基を表す第7観点に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物、
第11観点として、さらに架橋性化合物を含む第1観点乃至第10観点のいずれか一つに記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物、
第12観点として、さらに架橋反応を促進させる化合物を含む第11観点に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物、
第13観点として、前記架橋性化合物が、メチロール基又はアルコキシメチル基で置換された窒素原子を分子内に2乃至4個有する含窒素化合物である第11観点に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物、
第14観点として、前記架橋反応を促進させる化合物が、スルホン酸化合物である第12観点に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物、
第15観点として、前記架橋反応を促進させる化合物が、酸発生剤とスルホン酸化合物との組み合わせである第12観点に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物、
第16観点として、第1観点乃至第15観点のいずれか一つに記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し焼成してレジスト下層膜を形成する工程、前記レジスト下層膜上にレジスト膜を形成する工程、前記レジスト下層膜と前記レジスト膜で被覆された半導体基板を露光する工程、露光後に前記レジスト膜を現像する工程、を含む半導体装置の製造に用いるレジストパターンの形成方法、
第17観点として、前記露光が、ArFエキシマレーザー(波長193nm)を用いて行われる、第16観点に記載のレジストパターンの形成方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、1,1−シクロアルキルジカルボン酸とジグリシジル化合物との反応により生成される構造を有するポリマーを含む。例えば前記式(1)に示す繰り返しの単位構造を有するポリマーを含む。そのため、k値の希釈効率が高い一方で酸素含有量を低下させることなく、レジスト膜に対するドライエッチング速度の選択比が大きいレジスト下層膜が得られる。本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれるポリマーの主鎖は、C−C結合よりもドライエッチングで分断されやすいC−O結合(エステル結合)を有するため、ポリマーがアクリル樹脂又はメタクリル樹脂であるレジスト下層膜形成組成物よりも、ドライエッチング速度を高くすることができる。
【0010】
本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれるポリマーの原料化合物の1つである1,1−シクロアルキルジカルボン酸は、ジグリシジル化合物と容易に縮合反応してポリマー化が可能である。得られたポリマーは酸素含有率が高く、エステル結合を主鎖に持つため高いドライエッチング速度を持つことができる。また、193nmでの透明性が高いことから、吸光部位と組合せることで、導入量をコントロールすることにより所望の比較的低い値(例えば0.3以下で0を超える値)、屈折率nが1.6を超える値を示すレジスト下層膜が得られる。したがって、本発明のレジスト下層膜形成組成物は、投影レンズの開口数(NA)が大きい液浸露光装置を用いる液浸リソグラフィー工程に適用できる。また、いわゆるドライリソグラフィー工程にも適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物は、ポリマー及び溶剤を含み、該ポリマーは1,1−シクロアルキルジカルボン酸とジグリシジル化合物との反応により生成される。
【0012】
本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物に含まれる前記ポリマーは線状ポリマーである。該線状ポリマーの主鎖はエステル結合−C(=O)−O−又は−O−C(=O)を有するものであり、該主鎖に1,1−シクロアルキルジカルボン酸の酸基を除く
部分がエステル結合を介して導入される。本発明における線状ポリマーとは、必ずしも直線状を意味せず、またオリゴマーを排除するものではない。
【0013】
前記式(1)で表される繰り返し単位の構造を有するポリマーにおいて、A1、A2、A3、A4、A5及びA6は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を表す。Qは2つの炭素原子間の2価の有機基を表す。nは整数で1又は2を表す。
【0014】
前記式(1)において、Qは前記式(2)で表される2価の有機基を表す。
式(2)において、Q1は炭素原子数1乃至10のアルキレン基、炭素原子数3乃至1
0の脂環式炭化水素を有する2価の有機基、フェニレン基、ナフチレン基又はアントリレン基を表す。前記フェニレン基、ナフチレン基及びアントリレン基は、それぞれ、炭素原子数1乃至6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい。
【0015】
前記式(1)において、Qは前記式(3)で表される2価の有機基を表す。
式(3)において、X1は前記式(4)又は前記式(5)表される置換基を表す。
式(4)及び式(5)において、R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数3乃至6のアルケニル基、ベンジル基又はフェニル基を表す。前記フェニル基は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい。またR3とR4は互いに結合して炭素原子数3乃至6の環を形成していてもよい。
【0016】
前記式(1)で表される繰り返しの単位の構造は、Qが前記式(3)で表される単位構造に加えてQが前記式(2)で表される単位構造をさらに有していてもよい。
【0017】
前記式(1)において、Qは前記式(6)で表される2価の有機基を表す。
式(3)において、R5は炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数3乃至6のア
ルケニル基、ベンジル基又はフェニル基を表す。前記フェニル基は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基で置換されていてもよい。
【0018】
前記式(1)で表される繰り返しの単位の構造は、Qが前記式(6)で表される単位構造に加えてQが前記式(2)で表される単位構造をさらに有していてもよい。
【0019】
本発明において、アルキル基は、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、シクロヘキシル基である。炭素原子数1乃至10のアルキレン基は、例えばメチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ペンチレン基、n−オクチレン基、2−メチルプロピレン基、1,4−ジメチルブチレン基、シクロペンチレン基、シクロブチレン基、シクロヘキシレン基、2−メチルシクロヘキシレン基である。炭素原子数3乃至10の脂環式炭化水素は、例えばシクロヘキサン環である。炭素原子数1乃至6のアルコキシ基は、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソプロポキシ基、シクロヘキシルオキシ基である。炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基は、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−ペンチルチオ基、イソプロピルチオ基及びシクロヘキシルチオ基である。アルケニル基は、例えば2−プロペニル基、3−ブテニル基である。上記アルキル基、アルキレン基、アルコキシ基及びアルキルチオ基は、直鎖状に限定されず、分岐構造又は環状構造でもよい。ハロゲン原子は、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子である。
【0020】
前記ポリマーは、前記式(7)で表される少なくとも一種の1,1−シクロアルキルジカルボン酸と下記式(8)で表される少なくとも一種のジグリシジル化合物との重合によって得られる生成物である。
式(7)及び式(8)において、nは整数で1又は2を表す。A1、A2、A3、A4、A5及びA6は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を表し、Qは前記2価の有機基を表す。
【0021】
すなわち、式(7)で表される少なくとも一種の1,1−シクロアルキルジカルボン酸と下記式(8)で表される少なくとも一種のジグリシジル化合物を、適切なモル比になるよう、有機溶剤へ溶解させ、エポキシ基を活性化させる触媒の存在のもと、重合させることによって、前記式(1)で表される繰り返し単位の構造を有するポリマーが得られる。エポキシ基を活性化させる触媒とは、例えば、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイドのような第4級ホスホニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリドのような第4級アンモニウム塩であり、該触媒は式(7)で表される化合物及び式(8)で表される化合物の全質量に対して0.1乃至10質量%の範囲から適量を選択して用いることができる。重合反応させる温度及び時間は、80乃至160℃、2乃至50時間の範囲から、最適な条件を選択することができる。
【0022】
前記式(7)で表される化合物は、該式(7)においてnは1又は2の整数を表す脂環式ジカルボン酸である。
前記式(7)で表される化合物は、その具体例として下記式(13)及び下記式(14)で表される化合物が挙げられる。
【化10】

【0023】
前記式(8)において、Qは前記式(9)で表される2価の有機基を表す。
式(9)において、Q1は炭素原子数1乃至10のアルキレン基、炭素原子数3乃至1
0の脂環式炭化水素を有する2価の有機基、フェニレン基、ナフチレン基又はアントリレン基を表す。前記フェニレン基、ナフチレン基及びアントリレン基は、それぞれ、炭素原子数1乃至6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい。
【0024】
前記式(8)で表される化合物は、例えば前記式(10)で表される化合物である。
式(10)において、Yは炭素原子数1乃至6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基又は炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基を表す。mは0乃至4の整数を表し、mが2乃至4の場合前記Yは同一であっても異なっていてもよい。
【0025】
前記式(8)において、Qは前記式(11)で表される2価の有機基を表す。
式(11)において、R5は炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数3乃至6の
アルケニル基、ベンジル基又はフェニル基を表す。前記フェニル基は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基で置換されていてもよい。
【0026】
前記式(8)で表される化合物は、その具体例として下記式(15)乃至(22)で表される化合物が挙げられる。
【化11】

【0027】
前記式(1)で表される繰り返し単位構造の繰り返し単位数は、例えば10ないし10,000の範囲である。
【0028】
本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれるポリマーの繰り返し単位構造を、下記式(23)乃至(28)に例示する。
【化12】

【0029】
前記式(23)で表される繰り返し単位構造を有するポリマーは、式(7)で表される
化合物と式(8)で表される化合物との具体例である式(13)で表される化合物及び式(15)を重合させて得られる。式(24)で表される繰り返しの単位構造を有するポリマーは、式(7)で表される化合物と式(8)で表される2種類の化合物(式(14)で表される化合物及び式(15)で表される化合物)を重合させて得られる。式(25)で表される繰り返しの単位構造を有するポリマーは、式(7)で表される化合物と式(8)で表される2種類の化合物(式(13)で表される化合物及び式(20)で表される化合物)を重合させて得られる。式(26)で表される繰り返し単位構造を有するポリマーは、式(7)で表される化合物と式(8)で表される2種類の化合物(式(14)で表される化合物及び式(20)で表される化合物)を重合させて得られる。
【0030】
式(23)(24)、(25)及び式(26)のaで表される単位構造とbで表される単位構造のモル比は1:1である。式(27)及び式(28)のaで表される単位構造と、b’で表される単位構造及びb’’で表される単位構造のモル比は、a:(b’+b’’)=1:1の関係を満たす。
【0031】
式(27)及び式(28)に関する前記モル比a:(b’+b’’)=1:1において、b’とb”のいずれか一方は0でもよく、b’とb”のモル比は、b’:b”=(1−x):x(ただし0≦x≦1)のように表せる。b’’は波長193nmの吸収に寄与するユニットである。したがって、b’とb”の比率を変化させることで、波長193nmでのk値が目的の値になるように制御することができ、b’’の比率を下げることで波長193nmでのk値を下げることができる。
【0032】
本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれる溶剤は、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、メチルエチルケトン、乳酸エチル、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、これらの溶剤から選択された2種以上の混合物である。そして、本発明のレジスト下層膜形成組成物に対する溶剤の割合は、例えば50質量%以上99.5質量%以下である。
【0033】
本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれるポリマーは、当該レジスト下層膜形成組成物に対し例えば0.5質量%以上30質量%以下の割合とすることができる。
【0034】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、ポリマー及び溶剤の他に、架橋性化合物(架橋剤)を含んでもよく、さらに架橋反応を促進させる化合物を含んでもよい。溶剤を除いた成分を固形分と定義すると、その固形分はポリマー及び、必要に応じて添加される架橋性化合物、架橋反応を促進させる化合物などの添加物を含む。固形分中のポリマーの割合は、例えば70質量%以上98質量%以下である。添加物を含まない場合、固形分中のポリマーの割合は100質量%とすることができる。
【0035】
架橋性化合物は、例えばメチロール基又はアルコキシメチル基で置換された窒素原子を分子内に2乃至4個有する含窒素化合物であり、本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれるポリマーに対し例えば1質量%以上30質量%以下の割合で添加することができる。架橋性化合物の具体例として、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン、1,3,4,6−テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6−テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3−テトラキス(ブトキシメチル)尿素及び1,1,3,3−テトラキス(メトキシメチル)尿素が挙げられる。
【0036】
架橋反応を促進させる化合物は、例えばスルホン酸化合物であり、熱酸発生剤とスルホ
ン酸化合物との組み合わせでもよい。本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれるポリマーに対し、例えば0.1質量%以上10質量%以下の割合で、架橋反応を促進させる化合物を添加することができる。スルホン酸化合物の具体例として、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウム−p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、5−スルホサリチル酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸及びピリジニウム−1−ナフタレンスルホン酸が挙げられる。熱酸発生剤の具体例として、4−アセトキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルベンジルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、3−ベンジルベンゾチアゾリウムヘキサフルオロアンチモネート、2,4,4,6−テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシラート、2−ニトロベンジルトシラートが挙げられる。
【0037】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、界面活性剤及び/又は接着補助剤を含んでもよい。界面活性剤は、基板に対する塗布性を向上させるための添加物である。ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤のような公知の界面活性剤を用いることができ、本発明のレジスト下層膜形成組成物に対し例えば0.01質量%以上0.5質量%以下の割合で添加することができる。接着補助剤は、基板又はレジスト膜とレジスト下層膜との密着性を向上させることを目的とし、露光後に現像を行う際にレジスト膜の剥離を抑制する添加物である。接着補助剤として、例えばクロロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン類、シラン類、複素環状化合物を用いることができ、本発明のレジスト下層膜形成組成物に対し例えば0.1質量%以上2質量%以下の割合で添加することができる。
【0038】
本発明の半導体装置の製造に用いるレジストパターンの形成方法は、本発明の上記リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し焼成してレジスト下層膜を形成する工程、前記レジスト下層膜上にレジスト膜を形成する工程、前記レジスト下層膜と前記レジスト膜で被覆された半導体基板を露光する工程、露光後に前記レジスト膜を現像する工程を含む。
【0039】
本発明のレジストパターンの形成方法において行われる露光は、ArFエキシマレーザーを用いる。ArFエキシマレーザーにかえて、EUV(波長13.5nm)又は電子線を用いてもよい。“EUV”は極端紫外線の略称である。レジスト膜を形成するためのレジストは、ポジ型、ネガ型いずれでもよい。ArFエキシマレーザー、EUV又は電子線に感光する化学増幅型レジストを用いることができる。
【0040】
本発明のレジストパターンの形成方法で用いられる半導体基板は、代表的にはシリコンウェハーであるが、SOI(Silicon on Insulator)基板、又は砒化ガリウム(GaAs)、リン化インジウム(InP)、リン化ガリウム(GaP)などの化合物半導体ウェハーを用いてもよい。酸化珪素膜、窒素含有酸化珪素膜(SiON膜)、炭素含有酸化珪素膜(SiOC膜)などの絶縁膜が形成された半導体基板を用いてもよく、その場合、当該絶縁膜上にレジスト下層膜形成組成物を塗布する。
以下、本発明について合成例及び実施例によって具体的に説明する。ただし、本発明は下記合成例及び実施例の記載に限定されるものではない。
【実施例】
【0041】
<合成例1>
モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業(株)製)10.00g、1,1−シクロプロパンジカルボン酸4.84g及びエチルトリフニルホスホニウムブロマイ
ド0.69gをプロピレングリコールモノメチルエーテル23.31gに溶解した後、130℃で4時間反応させ、ポリマーを含有する溶液を得た。GPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量4,700であった。
【0042】
<合成例2>
モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業(株)製)10.00g、1,1−シクロブタンジカルボン酸5.28g及びエチルトリフニルホスホニウムブロマイド0.69gをプロピレングリコールモノメチルエーテル23.54gに溶解した後、130℃で4時間反応させ、ポリマーを含有する溶液を得た。GPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量6,900であった。
【0043】
<合成例3>
モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業(株)製)10.00g、モノアリルイソシアヌル酸(四国化成工業(株)製)1.23g、1,1−シクロプロパンジカルボン酸3.79g及びエチルトリフニルホスホニウムブロマイド0.68gをプロピレングリコールモノメチルエーテル23.52gに溶解した後、130℃で4時間反応させ、ポリマーを含有する溶液を得た。GPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量7,900であった。
【0044】
<合成例4>
モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業(株)製)10.00g、モノアリルイソシアヌル酸(四国化成工業(株)製)1.23g、1,1−シクロブタンジカルボン酸4.21g及びエチルトリフニルホスホニウムブロマイド0.68gをプロピレングリコールモノメチルエーテル24.16gに溶解した後、130℃で4時間反応させ、ポリマーを含有する溶液を得た。GPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量8,900であった。
【0045】
<合成例5>
モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業(株)製)10.00g、グルタル酸4.81g及びエチルトリフニルホスホニウムブロマイド0.68gをプロピレングリコールモノメチルエーテル23.23gに溶解した後、130℃で4時間反応させ、ポリマーを含有する溶液を得た。GPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量19,000であった。
【0046】
<実施例1>
上記合成例1で得られた高分子化合物2gを有する溶液10gにテトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)製、商品名:パウダーリンク1174)0.5gとピリジニウム−p−トルエンスルホン酸0.05gを混合し、プロピレングリコールモノメチルエーテル35.4g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート18.6gに溶解させ溶液とした。その後、得られた溶液を孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過し、更に、孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物溶液を調製した。
【0047】
<実施例2>
上記合成例2で得られた高分子化合物2gを有する溶液10gにテトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)製、商品名:パウダーリンク1174)0.5gとピリジニウム−p−トルエンスルホン酸0.05gを混合し、プロピレングリコールモノメチルエーテル35.4g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート18.6gに溶解させ溶液とした。その後、得られた溶液を孔径0.1
0μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過し、更に、孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物溶液を調製した。
【0048】
<実施例3>
上記合成例3で得られた高分子化合物2gを有する溶液10gにテトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)製、商品名:パウダーリンク1174)0.5gとピリジニウム−p−トルエンスルホン酸0.05gを混合し、プロピレングリコールモノメチルエーテル35.4g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート18.6gに溶解させ溶液とした。その後、得られた溶液を孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過し、更に、孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物溶液を調製した。
【0049】
<実施例4>
上記合成例4で得た高分子化合物2gを有する溶液10gにテトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)製、商品名:パウダーリンク1174)0.5gとピリジニウム−p−トルエンスルホン酸0.05gを混合し、プロピレングリコールモノメチルエーテル35.4g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート18.6gに溶解させ溶液とした。その後、得られた溶液を孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過し、更に、孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物溶液を調製した。
【0050】
<比較例1>
下記式(29)で表される共重合体をポリマーとして含み、さらに添加物として下記式(30)で表される架橋剤及びピリジニウム−p−トルエンスルホン酸を含むレジスト下層膜形成組成物溶液を用意した。
【化13】

【化14】

【0051】
<比較例2>
上記合成例5で得た高分子化合物2gを有する溶液10gにテトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)製、商品名:パウダーリンク1174)0.5gとピリジニウム−p−トルエンスルホン酸0.05gを混合し、プロピレングリコールモノメチルエーテル35.4g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート18.6gに溶解させ溶液とした。その後、得られた溶液を孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過し、更に、孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物溶液を調製した。
【0052】
〔レジスト溶剤への溶出試験〕
本発明の実施例1乃至実施例4で調製されたレジスト下層膜形成組成物溶液を、スピナーを用いてシリコンウェハー上に塗布(スピンコート)した。ホットプレート上で205℃で1分間加熱し、レジスト下層膜(膜厚0.10μm)を形成した。このレジスト下層膜を、レジスト溶液の溶剤である乳酸エチル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルに浸漬し、その溶剤に不溶であることを確認した。
【0053】
〔レジストとのインターミキシング試験〕
本発明の実施例1乃至実施例4で調製されたレジスト下層膜形成組成物溶液を、スピナーを用いてシリコンウェハー上に塗布した。ホットプレート上で、205℃で1分間加熱し、レジスト下層膜(膜厚0.10μm)を形成した。
このレジスト下層膜の上層に、市販のレジスト溶液(例えば、JSR社製、商品名:AR2772JN)を、スピナーを用いて塗布した。ホットプレート上で、110℃で1.5分間加熱することによりレジスト膜を形成し、露光装置を用いて露光した後、露光後加熱(PEB:Post Exposure Bake)を110℃で1.5分間行った。そのレジスト膜を現像した後、レジスト下層膜の膜厚を測定し、実施例1乃至実施例4で調製されたレジスト下層膜形成組成物溶液から得られたレジスト下層膜とレジスト膜とのインターミキシングが起こらないことを確認した。
【0054】
〔光学パラメーター試験〕
本発明の実施例1乃至実施例4で調製されたレジスト下層膜形成組成物溶液及び比較例1乃至比較例2で示したレジスト下層膜形成組成物溶液を、それぞれスピナーを用いてシリコンウェハー上に塗布した。ホットプレート上で、205℃で1分間加熱し、レジスト下層膜(膜厚0.06μm)を形成した。そして、これら6種類のレジスト下層膜を、分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製、VUV−VASE VU−302)を用い、波長193nmでの屈折率n値及び減衰係数k値を測定した。測定結果を表1に示す。
【0055】
〔ドライエッチング速度の測定〕
本発明の実施例1乃至実施例4で調製されたレジスト下層膜形成組成物溶液及び比較例1乃至比較例2で示したレジスト下層膜形成組成物溶液を、それぞれスピナーを用いてシリコンウェハー上に塗布した。ホットプレート上で、205℃で1分間加熱し、レジスト下層膜を形成した。そして、日本サイエンティフィック社製、RIEシステムES401を用い、ドライエッチングガスとしてCF4を使用した条件下でドライエッチング速度を
測定した。
【0056】
レジスト溶液(住友化学(株)製、商品名:PAR710)を、スピナーを用いてシリコンウェハー上に塗布し、前述と同様の方法によりレジスト膜を形成した。そして日本サイエンティフィック製、RIEシステムES401を用い、ドライエッチングガスとしてCF4を使用した条件下でドライエッチング速度を測定した。
【0057】
実施例1乃至実施例4及び比較例1及び比較例2の各レジスト下層膜形成組成物溶液から得られた6種類のレジスト下層膜と、前記住友化学(株)製レジスト溶液から得られたレジスト膜のドライエッチング速度との比較を行った。レジスト膜のドライエッチング速度に対するレジスト下層膜のドライエッチング速度の比(ドライエッチング速度の選択比)を表1に示す。
【0058】
〔ポリマーのPGMEAへの溶解性試験(RRC試験)〕
実施例1ないし実施例4並びに比較例1及び比較例2に用いたポリマー溶液5gをPGMEA30gと混合し、PGMEAに対する溶解性を評価した。溶解性が悪い場合は目視にて白濁が確認された。目視での溶解性試験結果を表1に示す。
【表1】

【0059】
本発明のレジスト下層膜形成組成物より得られたレジスト下層膜は、少なくとも193nmの光に対して十分に有効な屈折率と減衰係数を有し、各実施例(特に実施例1乃至実施例3)の減衰係数は比較例1及び比較例2よりも低い値を示している。そして、レジスト膜に対して大きなドライエッチング速度の選択比を有し、しかも比較例1及び2よりもドライエッチング速度の選択比が大きい。そのため、レジスト下層膜のドライエッチングによる除去に要する時間を短縮することができる。そして、レジスト下層膜のドライエッ
チングによる除去に伴い、そのレジスト下層膜上のレジスト膜の膜厚が減少する好ましくない現象を抑制することができる。
また、本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれるポリマーについては、RRC処理溶剤に一般的に含まれるPGMEAに対する溶解性が良好であり、これは前記ポリマーに導入されている分岐させたシクロアルキル基構造が溶解性を向上する働きをしているものと考えられる。溶解性が向上した結果としてレジスト下層膜塗布後の欠陥発生リスクの低減を可能にする。
【0060】
〔レジストパターンの形成及び評価〕
シリコンウェハー上に、本発明の実施例1乃至実施例4で調製されたレジスト下層膜形成組成物溶液をそれぞれスピンコートし、205℃で1分間加熱することにより、レジスト下層膜が形成される。そのレジスト下層膜上に、ArFエキシマレーザー用レジスト溶液(JSR(株)製、商品名:AR2772JN)をスピンコートし、110℃で90秒間加熱を行い、ArFエキシマレーザー用露光装置(ASML社製、ASM5500/1100)を用い、所定の条件で露光する。露光後、110℃で90秒間加熱(PEB)を行い、クーリングプレート上で室温まで冷却し、現像及びリンス処理をし、レジストパターンが形成される。
【0061】
目的の線幅を80nmラインアンドスペースとし、最適露光量、最適フォーカス時のレジストパターン寸法を測長SEMにて計測し、レジストパターンの断面形状を断面SEMにて観察して、目的のレジストパターンが形成されていることを確認することができた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー及び溶剤を含み、該ポリマーが1,1−シクロアルキルジカルボン酸とジグリシジル化合物との反応により生成される構造を有するものであることを特徴とするリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項2】
1,1−シクロアルキルジカルボン酸の酸基を除く部分がエステル結合を介して前記ポリマーの主鎖に導入されている、請求項1に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項3】
前記ポリマーが、下記式(1):
【化1】

(式中、
1、A2、A3、A4、A5及びA6は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を表し、
Qは2つの炭素原子間の2価の有機基を表し、及び
nは1又は2の整数を表す。)で表される繰り返し単位の構造を有する請求項1に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項4】
前記式(1)において、Qが下記式(2):
【化2】

(式中、
1は炭素原子数1乃至10のアルキレン基、炭素原子数3乃至10の脂環式炭化水素を
有する2価の有機基、フェニレン基、ナフチレン基又はアントリレン基を表し、前記フェニレン基、ナフチレン基及びアントリレン基は、それぞれ、炭素原子数1乃至6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよく、
1及びn2はそれぞれ独立に0又は1の数を表す。)
で表される2価の有機基を表す請求項3に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項5】
前記式(1)において、Qが下記式(3):
【化3】

[式中、X1は下記式(4)又は下記式(5)
【化4】

(式中、
3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数3乃至6のアルケニル基、ベンジル基又はフェニル基を表し、前記フェニル基は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよく、R3とR4は互いに結合して炭素原子数3乃至6の環を形成していてもよい。)で表される基を表す]で表される2価の有機基を表す請求項3
に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項6】
前記式(1)において、Qが下記式(6):
【化5】

(式中、
5は炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数3乃至6のアルケニル基、ベンジル
基又はフェニル基を表し、前記フェニル基は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基で置換されていてもよい。)で表される2価の有機基を表す請求項3に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項7】
前記ポリマーが、下記式(7)で表される少なくとも一種の1,1−シクロアルキルジカルボン酸と下記式(8)で表される少なくとも一種のジグリシジル化合物との重合によって得られる生成物である、請求項3に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【化6】

(式(7)及び式(8)中、
nは1又は2の整数を表し、
1、A2、A3、A4、A5及びA6は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を表し、
Qは請求項3において定義された通りである。)
【請求項8】
前記式(8)において、Qが下記式(9):
【化7】

(式中、
1は炭素原子数1乃至10のアルキレン基、炭素原子数3乃至10の脂環式炭化水素を
有する2価の有機基、フェニレン基、ナフチレン基又はアントリレン基を表し、前記フェニレン基、ナフチレン基及びアントリレン基は、それぞれ、炭素原子数1乃至6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよく、
1及びn2はそれぞれ独立に0又は1の数を表す。)
で表される2価の有機基を表す請求項7に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項9】
前記式(8)で表される化合物が、下記式(10):
【化8】

(式中、Yは炭素原子数1乃至6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基又は炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基を表し、mは0乃至4の整数を表し、mが2乃至4の場合前記Yは同一であっても異なっていてもよい。)
で表される請求項7又は請求項8に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項10】
前記式(8)において、Qが下記式(11):
【化9】

(式中、
5は炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数3乃至6のアルケニル基、ベンジル
基又はフェニル基を表し、前記フェニル基は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基で置換されていてもよい。)
で表される2価の有機基を表す請求項7に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項11】
さらに架橋性化合物を含む請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項12】
さらに架橋反応を促進させる化合物を含む請求項11に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項13】
前記架橋性化合物が、メチロール基又はアルコキシメチル基で置換された窒素原子を分子内に2乃至4個有する含窒素化合物である請求項11に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項14】
前記架橋反応を促進させる化合物が、スルホン酸化合物である請求項12に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項15】
前記架橋反応を促進させる化合物が、酸発生剤とスルホン酸化合物との組み合わせである請求項12に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物。
【請求項16】
請求項1乃至請求項15のいずれか一項に記載のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し焼成してレジスト下層膜を形成する工程、前記レジスト下層膜上にレジスト膜を形成する工程、前記レジスト下層膜と前記レジスト膜で被覆された半導体基板を露光する工程、露光後に前記レジスト膜を現像する工程、を含む半導体装置の製造に用いるレジストパターンの形成方法。
【請求項17】
前記露光が、ArFエキシマレーザー(波長193nm)を用いて行われる、請求項16に記載のレジストパターンの形成方法。


【公開番号】特開2010−78823(P2010−78823A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246186(P2008−246186)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】