説明

レジスト塗布方法

【課題】より少ない供給量で、レジスト液をウェハ全面に効率よく塗布することができ、レジスト液の消費量を削減することができるレジスト塗布方法を提供する。
【解決手段】略静止したウェハの略中心上に、溶剤を供給する溶剤供給工程S0と、溶剤供給工程S0の後に、ウェハの略中心上であって溶剤の上にレジスト液を供給しつつ、第1の回転数V1でウェハを回転させる第1の工程S1と、第1の工程S1の後に、第1の回転数V1よりも低い第2の回転数V2でウェハを回転させる第2の工程S2と、第2の工程S2の後に、第1の回転数V1よりも低く第2の回転数V2よりも高い第3の回転数V3でウェハを回転させる第3の工程S3とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハ等の基板上にレジストを塗布するレジスト塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおけるフォトリソグラフィ工程では、例えば半導体ウェハ(以下「ウェハ」という。)上にレジスト液を塗布しレジスト膜を形成するレジスト塗布処理、レジスト膜を所定のパターンに露光する露光処理、露光されたレジスト膜を現像する現像処理などが順次行われ、ウェハ上に所定のレジストパターンが形成されている。このレジスト塗布処理では、回転中のウェハの表面上の略中心にノズルからレジスト液を供給し、遠心力によりウェハ上でレジストを拡散させることによってウェハの表面にレジスト液を塗布する、いわゆるスピンコーティング法が用いられている。
【0003】
このスピンコーティング法では、例えばスピンチャックにより真空吸着によってウェハを固定保持した状態で、回転駆動手段によりスピンチャックとともにウェハを回転させ、ウェハの上方に配置されたレジストノズルからウェハ表面の回転中心にレジスト液を滴下する。滴下されたレジスト液は、遠心力によってウェハの径方向外周側に向かって広がり(拡散し)、その後レジスト液の滴下は停止するが、回転を継続してウェハの表面に広がったレジスト液の振り切り乾燥を行っている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−307984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記のレジスト塗布方法を用いて、半導体ウェハ等の基板上に少量のレジスト液を供給してレジストの塗布を行う場合、次のような問題があった。
【0006】
レジスト液を基板上に塗布する場合、レジスト液の塗布に先立ってシンナー等の溶剤でウェハ表面の表面全体を溶剤で濡らす、いわゆるプリウェット処理を行う。プリウェット処理を行うことにより、プリウェット処理が行われたウェハの表面上をレジストがより拡散しやすくなり、結果としてより少量のレジスト液の供給量で均一なレジスト膜を形成することができ、より一層レジスト液の消費量を削減することができるからである。
【0007】
一方、半導体デバイスのパターンの微細化と薄膜化とが要求されることから、そのようなフォトリソグラフィに適応できるレジスト液が種々開発されているが、レジスト液に種々の物性を具備することが要求されることから、レジスト液のコストが従来に増して高騰しつつあり、現状ではレジスト液は極めて高価なものとなっている。このため、レジスト液の消費量をより一層削減しなければならない状況にある。従って、プリウェット処理を行うことによっても、レジスト液の消費量を削減しなくてはならない。
【0008】
ところが、基板にプリウェット処理を行ってからレジスト塗布を行う際、レジスト液が広がる前に、特に基板の周辺部分で溶剤の膜が気化してなくなってしまうという問題があった。溶剤の膜が気化してなくなってしまうと、基板の表面上をレジスト液を拡散させることが難しく、表面全体にレジスト液を塗布するのに、レジスト液を多量に供給しなければならないという問題があった。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、より少ない供給量で、レジスト液をウェハ全面に効率よく塗布することができ、レジスト液の消費量を削減することができるレジスト塗布方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
【0011】
第1の発明に係るレジスト塗布方法は、略静止した基板の略中心上に、溶剤を供給する溶剤供給工程と、前記溶剤供給工程の後に、前記基板の略中心上であって前記溶剤の上にレジスト液を供給しつつ、第1の回転数で前記基板を回転させる第1の工程と、前記第1の工程の後に、前記第1の回転数よりも低い第2の回転数で前記基板を回転させる第2の工程と、前記第2の工程の後に、前記第1の回転数よりも低く前記第2の回転数よりも高い第3の回転数で前記基板を回転させる第3の工程とを有する。
【0012】
第2の発明は、第1の発明に係るレジスト塗布方法において、前記溶剤は、前記基板をプリウェット処理するための溶剤であり、前記第1の工程において、前記溶剤を前記基板の中心側から外周側へ拡散させて前記基板をプリウェット処理することを特徴とする。
【0013】
第3の発明は、第1又は第2の発明に係るレジスト塗布方法において、前記溶剤の粘度は、前記レジストの粘度よりも小さいことを特徴とする。
【0014】
第4の発明は、第1乃至第3のいずれか一つの発明に係るレジスト塗布方法において、前記第1の工程において、供給された前記レジスト液を前記基板の中心側から外周側へ拡散させ、前記第2の工程において、拡散した前記レジスト液の形状を整え、前記第3の工程において、前記基板上のレジスト液を振り切り、乾燥させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、より少ない供給量で、レジスト液をウェハ全面に効率よく塗布することができ、レジスト塗布処理におけるレジスト液の消費量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係るレジスト塗布方法を行うために用いるレジスト塗布装置を備える塗布現像システムの全体構成を示す平面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るレジスト塗布方法を行うために用いるレジスト塗布装置を備える塗布現像システムの全体構成を示す正面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るレジスト塗布方法を行うために用いるレジスト塗布装置を備える塗布現像システムの全体構成を示す背面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るレジスト塗布方法を行うためのレジスト塗布装置ユニットCOTを示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るレジスト塗布方法を行うためのレジスト塗布装置ユニットCOTを示す平面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るレジスト塗布方法を行うためのレジスト塗布ユニットCOTの制御系の構成を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るレジスト塗布方法におけるレジスト塗布装置ユニットの回転制御の状態を、従来のレジスト塗布方法におけるレジスト塗布装置ユニットの回転制御の状態と合わせて示すグラフである。
【図8】本発明の実施の形態に係るレジスト塗布方法を行う際の、ウェハ上のレジスト液の状態を示す平面図である。
【図9】従来のレジスト塗布方法を行う際の、ウェハ上のレジスト液の状態を示す平面図である。
【図10】本発明の実施の形態に係るレジスト塗布方法を行う際の、ウェハ上のレジスト液の状態を模式的に示す断面図である。
【図11】従来のレジスト塗布方法を行う際の、ウェハ上のレジスト液の状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態について図面と共に説明する。
(実施の形態)
図1乃至図3は、本実施の形態に係るレジスト塗布方法を行うために用いるレジスト塗布装置を備える塗布現像システムの全体構成を示す図であって、図1は平面図であり、図2はその正面図、図3はその背面図である。
【0018】
塗布現像処理システム1は、図1に示すように、基板としてウェハWをウェハカセットCRで複数枚、例えば25枚単位で外部からシステムに搬入したり、あるいはシステムから搬出したり、ウェハカセットCRに対してウェハWを搬入・搬出したりするためのカセットステーション10と、塗布現像工程の中で1枚ずつウェハWに所定の処理を施す枚葉式の各種処理ユニットを所定位置に多段配置してなる処理ステーション11と、この処理ステーション11に隣接して設けられる露光装置(図示せず)との間でウェハWを受け渡しするためのインターフェース部12とを一体に接続した構成を有している。
【0019】
カセットステーション10では、図1に示すように、カセット載置台20上の位置決め突起20aの位置に、複数個たとえば4個までのウェハカセットCRが、それぞれのウェハ出入口を処理ステーション11側に向けてX方向に一列に載置され、このカセット配列方向(X方向)およびウェハカセットCR内に収容されたウェハ配列方向(Z方向:垂直方向)に移動可能なウェハ搬送体21が各ウェハカセットCRに選択的にアクセスするようになっている。
【0020】
さらにこのウェハ搬送体21は、θ方向に回転自在に構成されており、後述するように処理ステーション11側の第3の処理ユニット群G3の多段ユニット部に属するアライメントユニットALIMにもアクセスできるようになっている。
【0021】
処理ステーション11には、図1に示すように、ウェハ搬送装置を備えた垂直搬送型の主ウェハ搬送機構22が設けられ、その周りに全ての処理ユニットが1組または複数の組にわたって多段に配置されている。
【0022】
主ウェハ搬送機構22は、図3に示すように、筒状支持体49の内側に、ウェハ搬送装置46を上下方向(Z方向)に昇降自在に装備している。筒状支持体49はモータ(図示せず)の回転軸に接続されており、このモータの回転駆動力によって、回転軸を中心としてウェハ搬送装置46と一体に回転し、それによりウェハ搬送装置46は、θ方向に回転自在となっている。なお筒状支持体49はモータによって回転される別の回転軸(図示せず)に接続するように構成してもよい。
【0023】
ウェハ搬送装置46は、搬送基台47の前後方向に移動自在な複数本の保持部材48を備え、これらの保持部材48によって各処理ユニット間でのウェハWの受け渡しを実現している。
【0024】
また、図1に示すように、この例では、5つの処理ユニット群G1、G2、G3、G4、G5が配置可能な構成であり、第1および第2の処理ユニット群G1、G2の多段ユニットは、システム正面(図1において手前)側に配置され、第3の処理ユニット部G3の多段ユニットはカセットステーション10に隣接して配置され、第4の処理ユニット群G4の多段ユニットはインターフェース部12に隣接して配置され、第5の処理ユニット群G5の多段ユニットは背面側に配置されることが可能である。
【0025】
図2に示すように、第1の処理ユニット群G1では、カップCP内でウェハWをスピンチャックに載せて所定の処理を行う2台のスピンナ型処理ユニット、例えばレジスト塗布装置ユニットCOTおよび現像ユニットDEVが下から順に2段に重ねられている。第2の処理ユニット群G2でも、2台のスピンナ型処理ユニット、例えばレジスト塗布装置ユニットCOTおよび現像ユニットDEVが下から順に2段に重ねられている。これらのレジスト塗布装置ユニットCOTは、レジスト液の排液が機械的にもメンテナンスの上でも面倒であることから、このように下段に配置するのが好ましい。しかし、必要に応じて適宜上段に配置することももちろん可能である。
【0026】
図3に示すように、第3の処理ユニット群G3では、ウェハWを載置台SPに載せて所定の処理を行うオープン型の処理ユニット、例えば冷却処理を行うクーリングユニットCOL、レジストの定着性を高めるためのいわゆる疎水化処理を行うアドヒージョンユニットAD、位置合わせを行うアライメントユニットALIM、エクステンションユニットEXT、露光処理前の加熱処理を行うプリベーキングユニットPREBAKEおよび露光処理後の加熱処理を行うポストベーキングユニットPOBAKEが、下から順に例えば8段に重ねられている。
【0027】
第4の処理ユニット群G4でも、オープン型の処理ユニット、例えばクーリングユニットCOL、エクステンション・クーリングユニットEXTCOL、エクステンションユニットEXT、クーリングユニットCOL、プリベーキングユニットPREBAKEおよびポストベーキングユニットPOBAKEが下から順に、例えば8段に重ねられている。
【0028】
このように処理温度の低いクーリングユニットCOL、エクステンション・クーリングユニットEXTCOLを下段に配置し、処理温度の高いベーキングユニットPREBAKE、ポストベーキングユニットPOBAKEおよびアドヒージョンユニットADを上段に配置することで、ユニット間の熱的な相互干渉を少なくすることができる。もちろん、ランダムな多段配置としてもよい。
【0029】
インターフェース部12は、図1に示すように、奥行方向(X方向)については、処理ステーション11と同じ寸法を有するが、幅方向についてはより小さなサイズに設定されている。そしてこのインターフェース部12の正面部には、可搬性のピックアップカセットCRと、定置型のバッファカセットBRが2段に配置され、他方、背面部には周辺露光装置23が配置され、さらに、中央部には、ウェハ搬送体24が設けられている。このウェハ搬送体24は、X方向、Z方向に移動して両カセットCR、BRおよび周辺露光装置23にアクセスするようになっている。ウェハ搬送体24は、θ方向にも回転自在となるように構成されており、処理ステーション11側の第4の処理ユニット群G4の多段ユニットに属するエクステンションユニットEXTや、さらには隣接する露光装置側のウェハ受け渡し台(図示せず)にもアクセスできるようになっている。
【0030】
また塗布現像処理システム1では、図1に示すように、主ウェハ搬送機構22の背面側にも破線で示した第5の処理ユニット群G5の多段ユニットが配置できるようになっているが、この第5の処理ユニット群G5の多段ユニットは、案内レール25に沿って主ウェハ搬送機構22からみて、側方へシフトできるように構成されている。したがって、この第5の処理ユニット群G5の多段ユニットを図示の如く設けた場合でも、案内レール25に沿ってスライドすることにより、空間部が確保されるので、主ウェハ搬送機構22に対して背後からメンテナンス作業が容易に行えるようになっている。
【0031】
次に、本実施の形態に係るレジスト塗布方法を行うためのレジスト塗布装置ユニットCOTについて説明する。図4及び図5は、レジスト塗布装置ユニットCOTを示す断面図および平面図である。
【0032】
レジスト塗布装置ユニットCOTの中央部には環状のカップCPが配置され、カップCPの内側にはスピンチャック52が配置されている。スピンチャック52は真空吸着によってウェハWを固定保持した状態で駆動モータ54によって回転駆動される。駆動モータ54は、ユニット底板50に設けられた開口50aに昇降移動可能に配置され、たとえばアルミニウムからなるキャップ状のフランジ部材58を介してたとえばエアシリンダよりなる昇降駆動手段60及び昇降ガイド手段62と結合されている。駆動モータ54の側面には例えばSUSよりなる筒状の冷却ジャケット64が取り付けられ、フランジ部材58は、この冷却ジャケット64の上半部を覆うように取り付けられている。
【0033】
レジスト塗布時、フランジ部材58の下端58aは、開口50aの外周付近でユニット底板50に密着し、これによってユニット内部が密閉される。スピンチャック52と主ウェハ搬送機構22の保持部材48との間でウェハWの受け渡しが行われる時は、昇降駆動手段60が駆動モータ54ないしスピンチャック52を上方へ持ち上げることでフランジ部材58の下端がユニット底板50から浮くようになっている。
【0034】
ウェハWの表面にレジスト液を供給するためのレジストノズル86は、レジスト供給管88を介してレジスト供給部(後述する)に接続されている。このレジストノズル86はレジストノズルスキャンアーム92の先端部にノズル保持体100を介して着脱可能に取り付けられている。このレジストノズルスキャンアーム92は、ユニット底板50の上に一方向(Y方向)に敷設されたガイドレール94上で水平移動可能な垂直支持部材96の上端部に取り付けられており、図示しないY方向駆動機構によって垂直支持部材96と一体にY方向に移動するようになっている。
【0035】
またレジストノズルスキャンアーム92は、レジストノズル待機部90でレジストノズル86を選択的に取り付けるためにY方向と直角なX方向にも移動可能であり、図示しないX方向駆動機構によってX方向にも移動するようになっている。
【0036】
さらに、レジストノズル待機部90でレジストノズル86の吐出口が溶媒雰囲気室の口90aに挿入され、中で溶媒の雰囲気に晒されることで、ノズル先端のレジスト液が固化または劣化しないようになっている。また、複数本のレジストノズル86が設けられ、例えばレジスト液の種類に応じてそれらのノズルが使い分けられるようになっている。
【0037】
また、レジストノズルスキャンアーム92の先端部(ノズル保持体100)には、ウェハ表面へのレジスト液の供給に先立ってウェハ表面にウェハ表面を濡らすための溶剤例えばシンナーを供給する溶剤ノズル101が取り付けられている。この溶剤ノズル101は図示しない溶剤供給管を介して後述する溶剤供給部に接続されている。溶剤ノズル101とレジストノズル86はレジストノズルスキャンアーム92のY移動方向に沿う直線上に各々の吐出口が位置するように取り付けられている。
【0038】
さらに、ガイドレール94上には、レジストノズルスキャンアーム92を支持する垂直支持部材96だけでなく、リンスノズルスキャンアーム120を支持しY方向に移動可能な垂直支持部材122も設けられている。Y方向駆動機構(図示せず)によってリンスノズルスキャンアーム120およびリンスノズル124はカップCPの側方に設定されたリンスノズル待機位置(実線の位置)とスピンチャック52に設置されているウェハWの周辺部の真上に設定されたリンス液吐出位置(点線の位置)との間で並進または直線運動するようになっている。
【0039】
図6はレジスト塗布ユニットCOTの制御系の構成を示す図である。
【0040】
制御部130は、レジスト塗布装置ユニットCOT内の各部を制御するもので、例えば駆動モータ54の駆動を制御する他、レジスト供給部131や溶剤供給部132等を制御する。具体的には、制御部130は、駆動モータ54の回転速度を数段階、例えば後述するようにレジスト塗布時に3段階に制御する。また、制御部130は、レジスト供給部131からレジストノズル86へのレジスト液の供給や、溶剤供給部132から溶剤ノズル101への溶剤、例えばシンナーの供給を制御している。
【0041】
次に、図4、図5、図7及び図8を参照し、本実施の形態に係るレジスト塗布方法を行う際の、レジスト塗布装置ユニットCOTにおけるレジスト塗布の動作を説明する。図7は、本実施の形態に係るレジスト塗布方法におけるレジスト塗布装置ユニットの回転制御の状態を、従来のレジスト塗布方法におけるレジスト塗布装置ユニットの回転制御の状態と合わせて示すグラフである。図7(a)は、本実施の形態に係るレジスト塗布方法における回転制御の状態を示すグラフであり、図7(b)は、従来のレジスト塗布方法における回転制御の状態を示すグラフである。図8は、本実施の形態に係るレジスト塗布方法を行う際の、ウェハ上のレジスト液の状態を示す平面図である。なお、図7における各工程の時間の長さは、技術の理解の容易さを優先させるため、必ずしも実際の時間の長さに対応していない。同様に、図7における回転数も、技術の理解の容易さを優先させるため、必ずしも実際の回転数に対応していない。
【0042】
図4に示すように、主ウェハ搬送機構22の保持部材48によってレジスト塗布装置ユニットCOTのカップCPの真上までウェハWが搬送されると、そのウェハWは、例えばエアシリンダよりなる昇降駆動手段60及び昇降ガイド手段62によって上昇してきたスピンチャック52によって真空吸着される。主ウェハ搬送機構22はウェハWをスピンチャック52に真空吸着させた後、保持部材48をレジスト塗布装置ユニットCOT内から引き戻し、レジスト塗布装置ユニットCOTへのウェハWの受け渡しを終了する。
【0043】
次に、スピンチャック52は、ウェハWがカップCP内の定位置になるように、下降し、駆動モータ54によってスピンチャック52の回転駆動が開始される。
【0044】
次に、レジストノズル待機部90からのノズル保持体100の移動が開始される。ノズル保持体100の移動はY方向に沿って行われる。
【0045】
溶剤ノズル101の吐出口がスピンチャック52の中心(ウェハWの中心)上に到達したところで、溶剤、例えばシンナーを回転するウェハWの表面に供給する。ウェハ表面に供給された溶剤は、遠心力によってウェハ中心からのその周囲全域にむらなく広がる。
【0046】
次に、ノズル保持体100は、レジストノズル86の吐出口がスピンチャック52の中心(ウェハWの中心)上に到達するまでY方向に移動され、レジストノズル86の吐出口からレジスト液PRが、回転するウェハWの表面の中心に滴下され、ウェハW表面へのレジスト塗布が行われる。
【0047】
本実施の形態では、制御部130によりウェハWの回転数(即ち、駆動モータ54の回転数)及びノズルからの溶剤又はレジスト液の吐出を制御し、図7(a)に示す、S0乃至S3の工程を実施する。なお、図7(a)に示すS1乃至S3の工程は、本発明における第1の工程乃至第3の工程のそれぞれに相当する。また、図8(a)乃至図8(c)のそれぞれは、図7(a)に示すA、B、Cの時点におけるウェハW上のレジスト液PRの状態を示す。
【0048】
始めに、図7(a)のS0に示す溶剤供給工程を行う。溶剤供給工程は、略静止した基板の略中心上に、溶剤を供給する工程である。具体的には、図7(a)のAの時点で、ウェハWを回転させないか、又は0〜50rpmの回転数の状態で、溶剤ノズル101からウェハWの略中央に溶剤であるシンナーPWを供給する。また、図8(a)は、図7(a)のAの時点におけるウェハWの状態を示す平面図である。
【0049】
図8(a)に示すように、溶剤供給工程S0において、溶剤であるシンナーPWは、基板が略静止しているため、遠心力が働かないか又は働く遠心力が弱く、ウェハWの略中央に留まっている。また、溶剤供給工程S0で供給する溶剤であるシンナーPWの供給量は、後に第1の工程でレジスト液PRがウェハWの径方向外周側に拡散させられるのと略同時又は若干速く、溶剤であるシンナーPWがウェハWの径方向外周側に拡散させられ、ウェハWの表面全体に拡散させられるのに十分な供給量であればよく、例えば0.5mlである。
【0050】
次に、図7(a)のS1に示す第1の工程を行う。第1の工程S1は、溶剤供給工程S0の後に、基板(ウェハW)の略中心上であって溶剤PWの上にレジスト液PRを供給しつつ、第1の回転数V1で基板(ウェハW)を回転させ、溶剤を基板の中心側から外周側へ拡散させて基板(ウェハW)をプリウェット処理し、供給されたレジスト液を基板(ウェハW)の中心側から外周側へ拡散させる工程である。具体的には、図7(a)のS1に示すように、ウェハWを2000〜4000rpm、より好ましくは2500rpmの回転数(第1の回転数V1)まで加速し、回転させながら、例えば2秒間、レジストノズル86からウェハWの略中心上にレジスト液PRを供給してウェハWの径方向外周側に拡散させながら塗布する。また、図8(b)は、図7(a)のBの時点、すなわち第1の工程S1において、ウェハWを第1の回転数V1で回転させながら、ウェハW上にレジスト液PRの供給を開始した直後のウェハWの状態を示す平面図である。
【0051】
図8(b)に示すように、レジスト液PRは、基板(ウェハW)の略中心上であって溶剤であるシンナーPWの上に供給される。また、この後、基板(ウェハW)が第1の回転数V1で回転することにより、溶剤であるシンナーPW及びレジスト液PRに遠心力が働き、溶剤であるシンナーPW及びレジスト液PRが基板(ウェハW)の径方向中央側から外周側へ拡散させられる。
【0052】
ここで、ウェハWの径方向外周側に拡散させられるレジスト液PRの外周は、後述するように、ウェハWの周辺部での溶剤であるシンナーPWの膜が形成されているので、ウェハWの外周まで到達する。すなわち、第1の工程S1においてレジスト液PRをウェハWの全面に拡散させるために供給する供給量は、従来のプリウェット処理を行う場合の供給量の半分程度の量である。具体的には、第1の工程S1で、ウェハWの表面の中心側に供給されるレジスト液の供給量は、例えば0.5mlであり、従来の供給量である1.0mlの半分である。
【0053】
次に、図7(a)のS2に示す第2の工程を行う。第2の工程S2は、第1の工程S1の後に、第1の回転数V1よりも低い第2の回転数V2で基板(ウェハW)を回転させ、拡散したレジスト液PRの形状を整える工程である。具体的には、図7(a)のS2に示すように、ウェハWを50〜2000rpm、より好ましくは100rpmの回転数(第2の回転数V2)に減速し、回転させる。第2の工程S2を行う時間としては、例えば1秒程度が好ましい。また、図8(c)は、第2の工程S2が行われた後のウェハWの状態を示す平面図である。
【0054】
図8(c)に示すように、第1の工程S1において、ウェハWの外周まで到達したレジスト液PRの外周は、第2の工程S2においても、第1の工程S1における場合と略同じ位置にある。また、拡散したレジスト液PRの外周では、レジスト液PRが外周に溜まり厚さが増大することによって、レジスト液PRの形状が整えられる。
【0055】
次に、第3の工程S3を行う。第3の工程S3は、第2の工程S2の後に、第1の回転数V1よりも低く第2の回転数V2よりも高い第3の回転数V3で基板(ウェハW)を回転させ、基板上のレジスト液PRを振り切り、乾燥させる工程である。具体的には、図7(a)に示すように、ウェハWを1000〜2000rpm、より好ましくは1500rpmの回転数(第3の回転数V3)に加速し、回転させながら、例えば30秒間、レジスト液PRの振り切り乾燥を行う。
【0056】
上記したように、第1の工程S1、すなわちレジスト液PRの供給時にウェハWを比較的高回転数である第1の回転数V1で回転させることにより、プリウェット処理と相俟って、ウェハWの表面にマクロ的に均一にレジスト液PRを進展又は拡散させることができる。
【0057】
また、その後の第3の工程S3におけるレジスト液PRの振り切り乾燥時には、第2の工程S2において、すなわちウェハWを第1の回転数V1よりも低い回転数である第2の回転数V2で回転させているので、ウェハWの表面全面にミクロ的にも均一にレジスト液PRを伸展又は拡散させることができるとともに、より少ない供給量で、レジスト液をウェハ全面に効率よく塗布することができ、レジスト塗布処理におけるレジスト液の消費量を削減することができる。
【0058】
次に、本実施の形態に係るレジスト塗布方法において、第3の工程S3であるレジスト液PRの振り切り乾燥時に、ウェハWの表面にミクロ的にも均一にレジスト液PRを伸展又は拡散させることができる作用効果、また、第1の工程S1において、より少ない供給量で、レジスト液をウェハ全面に効率よく塗布することができ、レジスト塗布処理におけるレジスト液の消費量を削減することができる効果について、説明する。
【0059】
始めに、本実施の形態に係るレジスト塗布方法において、第3の工程S3であるレジスト液の振り切り乾燥時に、ウェハWの表面にミクロ的にも均一にレジスト液PRを拡散させることができる作用効果について、説明する。
【0060】
例えば、回路パターン等の下地膜が形成されたウェハWのように、ウェハWの表面上に凹凸の溝が生じている場合を考える。この場合、従来のように振り切り乾燥時にウェハWをレジスト塗布時の回転数(第1の回転数V1)と同じ或いは第1の回転数V1よりも高い回転数で回転させると、例えばウェハWの表面上を遠心力によりウェハWの径方向外周側に拡散するレジスト液が凹凸の溝に十分に入り込まなくなり、凹凸の溝に形成されるレジストの膜厚が、他の位置に形成されたレジストの膜厚と比べて薄くなる。
【0061】
これに対して本実施の形態に係るレジスト塗布方法では、振り切り乾燥時にウェハWをレジスト塗布時の回転数(第1の回転数V1)よりも低い回転数(第2の回転数V2)で回転させているので、ウェハWの表面をウェハWの径方向外周側に拡散するレジスト液PRが凹凸の溝にも均一に入り込み、ウェハWの表面に均一にレジスト液PRを拡散させることができる。
【0062】
よって、本実施の形態に係るレジスト塗布方法によれば、凹凸を有するウェハWの表面にマクロ的にもミクロ的にもレジスト膜を均一に形成することができる。
【0063】
次に、本実施の形態に係るレジスト塗布方法において、第1の工程S1において、より少ない供給量で、レジスト液PRをウェハW全面に効率よく塗布することができ、レジスト液PRの消費量を削減することができる効果について、図7乃至図11を参照し、図7(a)、図8及び図10に示す本実施の形態に係るレジスト塗布方法を、図7(b)、図9及び図11に示す従来のレジスト塗布方法と比較しながら説明する。図9は、従来のレジスト塗布方法を行う際の、ウェハ上のレジスト液の状態を示す平面図である。図10は、本実施の形態に係るレジスト塗布方法を行う際の、ウェハ上のレジスト液の状態を模式的に示す断面図である。図11は、従来のレジスト塗布方法を行う際の、ウェハ上のレジスト液の状態を模式的に示す断面図である。図9(a)乃至図9(d)は、図7(b)におけるA1´、A2´、B´、C´の時点におけるウェハ上のレジスト液の状態を示す。図10(a)乃至図10(c)は、図7(a)におけるA、B、Cの時点におけるウェハ上のレジスト液の状態を示す。図11(a)乃至図11(d)は、図7(b)におけるA1´、A2´、B´、C´の時点におけるウェハ上のレジスト液の状態を示す。
【0064】
始めに、溶剤供給工程S0のAの時点における溶剤であるシンナーPWの状態を説明する。図10(a)は、Aの時点におけるウェハW上の溶剤であるシンナーPWの状態を示す。Aの時点において、溶剤であるシンナーPWは、ウェハWが略静止しているため、遠心力が働かないか又は働く遠心力が弱く、ウェハWの略中央に留まっている。
【0065】
次に、第1の工程S1のBの時点における溶剤であるシンナーPW及びレジスト液PRの状態を説明する。図10(b)は、Bの時点におけるウェハW上のレジスト液PRの状態を示す。Bの時点においては、ウェハWは、回転数が第1の回転数V1に達した直後であり、ウェハW表面の中心上の溶剤であるシンナーPWには、遠心力が働き始め、溶剤であるシンナーPWは、ウェハW表面の径方向中心側から外周側へ拡散し始める。また、ウェハW表面の中心上に溶剤であるシンナーPWの上に供給されるレジスト液PRには、十分な遠心力が働いておらず、レジスト液PRは、ウェハW表面の中心上に溜まっている。
【0066】
その後、第1の工程S1を行うことにより、ウェハW表面の中心上の溶剤であるシンナーPW及びレジスト液PRに十分な遠心力が働き、溶剤であるシンナーPW及びレジスト液PRがウェハWの径方向中心側から外周側へ拡散させられる。図10(c)は、第2の工程S2のCの時点におけるウェハW上のレジスト液PRの状態を示す。第2の工程S2において、第1の回転数V1よりも低い回転数である第2の回転数V2に減速し、第2の回転数V2でウェハWを回転させるため、第2の工程S2においてレジスト液PRに作用する遠心力は、第1の工程S1における遠心力よりも小さくなる。そのため、レジスト液PRは、ウェハWに接する下側では、ウェハWの径方向外周側への拡散が止まった状態にある。
【0067】
溶剤であるシンナーPWは、レジスト液PRよりも基板(ウェハW)に対しての濡れ性が高い。従って、第1の工程S1においては、溶剤であるシンナーPWが、レジスト液PRよりも先にウェハWの径方向外周側へ拡散する。すなわち、基板(ウェハW)の略全面に亘って、レジスト液PRがウェハWの径方向外周側へ拡散するよりも先に、溶剤であるシンナーPWで基板(ウェハW)の表面を濡らすことができる。従って、本実施の形態では、基板(ウェハW)の略中心上であって溶剤であるシンナーPWの上にレジスト液PRを供給することによって、プリウェット処理を行いながらレジスト液PRを拡散させることができる。
【0068】
このようにプリウェット処理工程を独立して行わなくても第1の工程S1を行うことによってプリウェット処理を行うことができるため、予め独立してプリウェット処理工程を行う従来の場合に比べて溶剤であるシンナーPWの気化が抑制され、ウェハWの周辺部までレジスト液PRがより拡散しやすくなり、従来の場合に比べてより少量のレジスト液PRの供給量で均一なレジスト膜を形成することができ、レジスト液PRの消費量を削減することができる。
【0069】
また、本実施の形態において、レジスト液PRよりも粘度が低い溶剤PWを用いることによって、溶剤PWがレジスト液PRよりも先にウェハWの径方向外周側へ拡散する効果を高めることができる。
【0070】
一方、従来のレジスト塗布方法においては、図7(b)に示すように、溶剤供給工程S01と第1の工程S1との間に、プリウェット処理工程S02を有する。プリウェット処理工程は、レジスト液PRの塗布に先立ってシンナー等の溶剤でウェハW表面の表面全体を濡らす、いわゆるプリウェット処理を行う工程である。図7(b)、図9(a)及び図11(a)に示す溶剤供給工程S01を行った後、図7(b)、図9(b)及び図11(b)に示すように、ウェハWを0〜2000rpm、より好ましくは1000rpmの回転数(プリウェット回転数V0)まで加速し、回転させながら、例えば0.1秒間、溶剤ノズル101からウェハWの略中央に溶剤であるシンナーPWを供給してウェハWの径方向外周側に拡散させ、ウェハWの表面が溶剤で濡れた状態にする。プリウェット処理を行うことにより、レジスト液PRがより拡散しやすくなる。
【0071】
プリウェット処理工程S02を行った後、第1の工程S1を行ってレジスト液PRを塗布する場合、図7(b)、図9(b)及び図11(b)に示すように、プリウェット処理工程S02において、溶剤であるシンナーPWをウェハW表面の全面に拡散させ、図7(b)、図9(c)及び図11(c)に示すように、ウェハWの表面上に溶剤であるシンナーPWの膜を作ってからレジスト液PRをウェハW表面の略中心に供給し、図7(b)、図9(d)及び図11(d)に示すように、供給されたレジスト液PRがウェハWの径方向外周側に拡散する。ここで、溶剤として揮発性の高いシンナー等を使用する場合、溶剤であるシンナーPWでウェハW表面の全体を濡らした後レジスト液を塗布して拡散させる際に、溶剤であるシンナーPWがウェハWの周辺部で気化してなくなってしまう。ウェハWの周辺部で溶剤であるシンナーPWの膜がなくなると、ウェハWの径方向中心側から外周側にレジスト液PRが拡散させられる際に、周辺部でのレジスト液PRは溶剤であるシンナーPWの膜で濡れている部分へ広がりやすくなってしまい、乾燥した部分にはレジスト液PRが塗布されにくくなる。従って、図11(d)の点線で囲まれた領域Iに示すように、レジスト液が塗布されない領域が生じたり、レジスト膜の膜厚が一部で薄くなり、膜厚ムラが発生してしまう。このような膜厚ムラを発生させないためには、レジスト液を多量に供給しなければならない。
【0072】
しかしながら、本実施の形態に係るレジスト塗布方法によれば、前述したように、第1の工程でプリウェット処理を略同時に行うことができるという効果だけでなく、第1の工程でプリウェット処理を略同時に行う際に、溶剤であるシンナーPWが揮発する前にレジスト液PRの塗布が行われる。従って、レジスト液PRがウェハW表面の径方向外周側に拡散する際に、ウェハWの周辺部で溶剤であるシンナーPWが気化して乾燥した部分が生じることもなく、レジスト液PRがウェハW表面上を一様に拡散し、膜厚ムラが発生することもない。よって、レジスト液を多量に供給しなくても膜厚ムラを発生させずにレジスト膜を形成することができるという作用効果を有する。
【0073】
従って、本実施の形態に係るレジスト塗布方法によれば、略静止した基板(ウェハ)の略中心上に溶剤を供給する溶剤供給工程S0と、溶剤供給工程S0の後に、プリウェット処理を行うプリウェット処理工程を独立して行わず、基板(ウェハ)の略中心上であって溶剤の上にレジスト液を供給しつつ、第1の回転数で基板(ウェハ)を回転させる第1の工程S1を行うことによって、独立してプリウェット処理を行う際に問題となる、溶剤が基板(ウェハ)上で揮発して基板(ウェハ)の周辺部での乾燥部分が発生し、第1の工程で塗布するレジスト液が、その乾燥部分で塗布されないという現象が発生せず、より少ない供給量で、レジスト液を基板(ウェハ)全面に効率よく塗布することができ、基板(ウェハ)にレジストを塗布する際のレジスト液の消費量を削減することができる。
【0074】
なお、本実施の形態においては、図7(a)に示すように、第1の工程において、ウェハWの回転数を第1の回転数V1まで加速した直後のBの時点において、レジスト液PRをウェハW表面の略中心上に供給するが、レジスト液PRが直接ウェハWの表面を拡散せず、溶剤であるシンナーPWを介してウェハWの表面を拡散すればよい。従って、レジスト液PRは、第1の回転数V1まで加速されるウェハWの回転数が第1の回転数V1に達する前に溶剤であるシンナーPWをウェハW表面の略中心上に供給してもよく、溶剤であるシンナーPWの粘度がレジスト液PRに対して極めて小さい場合には、略静止した状態にあるウェハWが第1の回転数V1まで加速され始める直前にレジスト液PRの供給を開始してもよい。
【実施例】
【0075】
次に、実施例により、本発明に係るレジスト塗布方法をさらに具体的に説明するが、本発明は、実施例により限定されて解釈されるものではない。
【0076】
本実施例では、本発明の実施の形態に示したレジスト塗布装置ユニットCOTを製造し、そのレジスト塗布装置COTを用いて実験を行うことにより、その効果を検証した。
(実施例)
実施例として、表1に示した本発明の実施の形態に係るレジスト塗布方法の処理レシピに基づくレジスト塗布処理を行い、第1の工程S1で供給するレジスト液の供給量を0.7ml、0.6ml、0.5ml、0.45ml、0.4mlと減少させた場合における、塗布されたレジスト膜の膜厚の分布が均一かどうかの評価を行った。膜厚の分布が均一か否かの判定は、目視により確認した。
【0077】
【表1】

(比較例)
また、比較例として、表2に示した従来のレジスト塗布方法の処理レシピに基づくレジスト塗布処理を行い、実施例と同様に、第1の工程S1で供給するレジスト液の供給量を0.7ml、0.6ml、0.5ml、0.45ml、0.4mlと減少させた場合における、塗布されたレジスト膜の膜厚の分布が均一か否かの評価を行った。膜厚の分布が均一か否かの判定は、目視により確認した。
【0078】
【表2】

実施例及び比較例におけるレジスト塗布を行った場合の、塗布されたレジスト膜の膜厚の分布が均一か否かの判定を行った結果を比較して、表3に示す。
【0079】
【表3】

実施例においては、表3に示すように、第1の工程S1で供給するレジスト液の供給量が0.7〜0.45mlの場合には、塗布されたレジスト膜の膜厚の分布を均一にすることができたが、第1の工程S1で供給するレジスト液の供給量が0.4mlの場合には、塗布されたレジスト膜の膜厚の分布を均一にすることはできなかった。
【0080】
一方、比較例においては、表3に示すように、第1の工程S1で供給するレジスト液の供給量が0.7〜0.6mlの場合には、塗布されたレジスト膜の膜厚の分布を均一にすることができたが、第1の工程S1で供給するレジスト液の供給量が0.5〜0.4mlの場合には、塗布されたレジスト膜の膜厚の分布を均一にすることができなかった。
【0081】
以上の結果より、従来ではレジスト膜の膜厚の分布を均一にするような良好なレジスト塗布を行うことができなかったレジスト液の供給量の範囲である0.5ml、0.45mlにおいても、本発明の実施の形態に係るレジスト塗布方法を行うことによって、レジスト膜の膜厚の分布を均一にすることができるような良好なレジスト塗布を行うことができる。すなわち、本発明の実施の形態に係るレジスト塗布方法を行うことによって、より少量のレジスト液の供給量で、レジスト液をウェハ全面に効率よく塗布することができることが、明らかになった。
【0082】
以上、本発明の好ましい実施の形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、上記した実施の形態では、レジスト液の塗布処理を例に採って説明したが、本発明は、レジスト液以外の他の塗布液、例えば反射防止膜、SOG(Spin On Glass)膜、SOD(Spin on Dielectric)膜などを形成する塗布液の塗布処理にも適用することができる。また、上記した実施の形態では、溶剤は、プリウェット処理を行うためのプリウェット溶剤であるが、プリウェット溶剤以外の溶剤であってもよく、例えば、塗布液を単に希釈するための溶剤であってもよく、また、基板と塗布液の基板への濡れ性を変化させるための溶剤であってもよく、基板の表面改質等を目的とした処理を行うための溶剤であってもよい。また、上記した実施の形態では、ウェハに塗布処理を行う例であったが、本発明は、基板がウェハ以外のFPD(フラットパネルディスプレイ)、フォトマスク用のレチクルなどの他の形状を有する基板、又は他の材質よりなる基板の塗布処理にも適用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 塗布現像処理システム
10 カセットステーション
11 処理ステーション
12 インターフェース部
20 カセット載置台
20a 位置決め突起
22 主ウェハ搬送機構
25 案内レール
46 ウェハ搬送装置
47 搬送基台
48 保持部材
49 筒状支持体
50 ユニット底板
52 スピンチャック
54 駆動モータ
58 フランジ部材
60 昇降駆動手段
62 昇降ガイド手段
64 冷却ジャケット
86 レジストノズル
88 レジスト供給管
90 レジストノズル待機部
92 レジストノズルスキャンアーム
94 ガイドレール
96 垂直支持部材
100 ノズル保持体
101 溶剤ノズル
120 リンスノズルスキャンアーム
122 垂直支持部材
124 リンスノズル
130 制御部
131 レジスト供給部
132 溶剤供給部

COT レジスト塗布装置ユニット
CR ウェハカセット
DEV 現像ユニット(現像装置)
G1、G2、G3、G4、G5 処理ユニット群
PR レジスト液
PW シンナー(溶剤)
W ウェハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略静止した基板の略中心上に、溶剤を供給する溶剤供給工程と、
前記溶剤供給工程の後に、前記基板の略中心上であって前記溶剤の上にレジスト液を供給しつつ、第1の回転数で前記基板を回転させる第1の工程と、
前記第1の工程の後に、前記第1の回転数よりも低い第2の回転数で前記基板を回転させる第2の工程と、
前記第2の工程の後に、前記第1の回転数よりも低く前記第2の回転数よりも高い第3の回転数で前記基板を回転させる第3の工程と
を有するレジスト塗布方法。
【請求項2】
前記溶剤は、前記基板をプリウェット処理するための溶剤であり、
前記第1の工程において、前記溶剤を前記基板の中心側から外周側へ拡散させて前記基板をプリウェット処理することを特徴とする請求項1に記載のレジスト塗布方法。
【請求項3】
前記溶剤の粘度は、前記レジストの粘度よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載のレジスト塗布方法。
【請求項4】
前記第1の工程において、供給された前記レジスト液を前記基板の中心側から外周側へ拡散させ、
前記第2の工程において、拡散した前記レジスト液の形状を整え、
前記第3の工程において、前記基板上のレジスト液を振り切り、乾燥させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のレジスト塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−207788(P2010−207788A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60241(P2009−60241)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】