説明

レジスト用共重合体の製造方法。

【課題】所望の組成と性能を有する共重合体の製造法を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも1種のアセタール基を有する(メタ)アクリル系単量体から導かれる構成単位と、該単量体と共重合可能な少なくとも1種の他の(メタ)アクリル系単量体から導かれる構成単位とを含有するレジスト用重合体の製造方法であって、前記単量体原料中に含まれるハロゲン化合物の総量が、前記全単量体量に対して200ppm以下である単量体を重合原料として用いるレジスト用共重合体の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト用共重合体の製造方法、特に、エキシマレーザー又は電子線リソグラフィーを使用する微細加工に好適なレジスト用重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子、液晶素子等の製造工程において形成されるレジストパターンは、リソグラフィー技術の進歩により急速に微細化が進んでいる。微細化の手法としては、照射光の短波長化がある。具体的には、従来のg線(波長:438nm)、i線(波長:365nm)に代表される紫外線から、より短波長のDUV(Deep Ultra Violet)へと照射光が短波長化してきている。
【0003】
さらに、最近では、KrFエキシマレーザー(波長:248nm)リソグラフィー技術が導入され、さらなる短波長化を図ったArFエキシマレーザー(波長:193nm)リソグラフィー技術及びEUVエキシマレーザー(波長:13nm)リソグラフィー技術が研究されている。さらに、これらの液浸リソグラフィー技術も研究されている。また、これらとは異なるタイプのリソグラフィー技術として、電子線リソグラフィー技術についても精力的に研究されている。
【0004】
該短波長の照射光又は電子線を用いたレジストパターンの形成に用いられる高解像度のレジスト組成物として、光酸発生剤を含有する化学増幅型レジスト組成物が提唱され、現在、該化学増幅型レジスト組成物の改良及び開発が進められており、これに伴い、ArFエキシマレーザーリソグラフィーにおいて用いられる化学増幅型レジスト用重合体として、波長193nmの光に対して透明なアクリル系重合体が注目されている。
【0005】
このようなアクリル系重合体として、例えば、レジスト組成物に好適であり、且つ、熱安定性の良好な重合体として、アセタール骨格を有する(メタ)アクリル系単量体を構成単位とする重合体が開示されている。さらに、かかる重合体の製造方法として、上記アセタール骨格を有する単量体と他の単量体とを、ラジカル重合により製造することも開示されている(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、上記したようなアセタール骨格を有する単量体と他の単量体を、単にラジカル重合するという従来の製造方法では、重合反応中に、アセタール基の一部が分解し、カルボキシル基が生成するため、所望の組成の共重合体が得られないという問題があった。さらに、これらをレジスト用共重合体として用いる場合は、所望のレジスト性能を得ることができないという問題があった。
【0007】
一方で、レジスト性能を向上させるため、重合原料として用いる単量体に含まれるオリゴマーを低減したり(特許文献2、3)、重合後に残存する未反応の単量体を低減したり(特許文献4、5)する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−45924号公報
【特許文献2】特開2004−143281号公報
【特許文献3】特開2004−323704号公報
【特許文献4】特開2005−68342号公報
【特許文献5】特開2007−51299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献2〜3に記載のオリゴマーの低減は、重合中のアセタール基の分解を抑制するものではない。同様に、上記特許文献4〜5も重合中のアセタール基の分解を抑制するものではなく、また、これら文献に記載のように洗浄を強化すると、分解したアセタール基が洗浄液に溶解してしまうため、所望の組成の共重合体が得られないという問題も生じてしまう。これら提案されている技術は、アセタール基の分解による問題やその解決策を示唆するものではない。
【0010】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、アセタール基含有(メタ)アクリル系重合体の製造中に、アセタール基の分解を抑制することを目的とする。さらに、これによって、得られる共重合体の組成及びレジスト用共重合体として用いる際に、所望の性能を有する共重合体の製造法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の要旨は、少なくとも1種のアセタール基を有する(メタ)アクリル系単量体から導かれる構成単位と、該単量体と共重合可能な少なくとも1種の他の(メタ)アクリル系単量体から導かれる構成単位とを含有するレジスト用重合体の製造方法であって、前記単量体原料中に含まれるハロゲン化合物の総量が、前記全単量体量に対して200ppm以下である単量体を重合原料として用いるレジスト用共重合体の製造方法を提供することにある。
【0012】
上記方法によれば、重合反応中に、アセタール基の一部が分解することを防ぐことが可能となり、所望の組成のレジスト用共重合体を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
上記製造法によれば、アセタール基の分解が抑制されるため、所望の組成の共重合体が得られ、レジスト用共重合体として用いる際に、所望の性能や品質を有するアセタール基含有(メタ)アクリル系共重合体を得ることができる。
【0014】
また、上記製造方法によれば、重合処理後の工程において、溶剤等に対する相溶性に影響するアセタール基を有する(メタ)アクリル系単量体の分解物の生成が抑制されるため、重合処理後の工程においても操作性の良好なレジスト用共重合体を得ることができる。
【0015】
また、上記製造方法によれば、アセタール基の分解が抑制されるため、より高感度/高解像度なレジスト用共重合体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(用語の説明)
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリル系単量体」とは、アクリル系単量体又はメタクリル系単量体を意味する。
【0017】
(アセタール基を有する(メタ)アクリル系単量体)
上記アセタール基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、特に限定されず、一分子中にアセタール基を1個以上有していればよく、例えば、下記の式で表されるようなものが挙げられる。
【0018】
【化1】

【化2】

【0019】
上記アセタール基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、2−プロペン酸−2−メチル−1,4−ブタンジイルビス(オキシエチリデン)エステルが挙げられる。
上記重合体における、上記アセタール基を有する(メタ)アクリル系単量体から導かれる構成単位の含有量は、特に制限されないが、全単量体の合計の仕込み量(100モル%)中、1〜30モル%の範囲で用いられることが好ましく、より好ましくは、5〜15モル%の範囲である。上記アセタール基を有する(メタ)アクリル系単量体から導かれる構成単位の含有量が1モル%以上又は5モル%以上であれば、ラインエッジラフネスが小さく、ディフェクトが少なくなる傾向にあり、また、この含有量が30モル%以下又は15モル%以下であれば、ディフェクトが少なく、有機溶媒への溶解性が良好になる傾向がある。
【0020】
(共重合可能な他の(メタ)アクリル系単量体)
上記アセタール基を有する(メタ)アクリル系単量体と共重合可能な他の(メタ)アクリル系単量体としては、特に限定されないが、基板密着性付与等の観点からラクトン骨格を有する(メタ)アクリル系単量体、レジストパターン形成等の観点から酸不安定基を有する(メタ)アクリル系単量体、あるいは、レジスト溶媒への溶解性向上やエッチング耐性付与等の観点から親水性基を有する(メタ)アクリル系単量体等が挙げられ、これらを任意に組み合わせることができる。
【0021】
(ラクトン骨格を有する(メタ)アクリル系単量体)
ラクトン骨格としては、例えば、4〜20員環程度のラクトン骨格が挙げられる。ラクトン骨格は、ラクトン環のみの単環であってもよく、ラクトン環に脂肪族又は芳香族の炭素環又は複素環が縮合していてもよい。
上記ラクトン骨格を有する(メタ)アクリル系単量体としては、基板等への密着性に優れる点から、レジスト用共重合体として供する場合は、置換あるいは無置換のδ−バレロラクトン環を有する(メタ)アクリル酸エステル、置換あるいは無置換のγ−ブチロラクトン環を有する(メタ)アクリル系単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、無置換のγ−ブチロラクトン環を有する(メタ)アクリル系単量体が特に好ましい。
【0022】
上記ラクトン骨格を有する(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、β−メタクリロイルオキシ−β−メチル−δ−バレロラクトン、4,4−ジメチル−2−メチレン−γ−ブチロラクトン、β−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、β−メタクリロイルオキシ−β−メチル−γ−ブチロラクトン、α−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、2−(1−メタクリロイルオキシ)エチル−4−ブタノリド、メタクリル酸パントイルラクトン等が挙げられる。また、類似構造を持つ単量体として、メタクリロイルオキシコハク酸無水物等も挙げられる。
上記ラクトン骨格を有する(メタ)アクリル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を必要に応じて組み合わせて用いてもよい。
【0023】
上記重合体における、上記ラクトン骨格を有する(メタ)アクリル系単量体から導かれる構成単位の含有量は、特に限定されないが、レジスト用共重合体として供する場合は、全単量体の合計の仕込み量(100モル%)中、20モル%以上が好ましく、30モル%以上がより好ましい。また、上記含有量の上限値としては、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。
上記ラクトン骨格を有する単量体から導かれる構成単位の含有量が20モル%以上又は30モル%以上であれば、基板等との密着性が良好になる傾向があり、また、この含有量が60モル%以下又は55モル%以下又は50モル%以下であれば、感度や解像度が向上し、ディフェクトが少なくなる傾向がある。
【0024】
(酸不安定基を有する(メタ)アクリル系単量体)
酸不安定基とは、酸の作用によって脱離する構造を有する基であり、酸不安定基を含む構成単位は、酸により分解してアルカリ可溶性基と酸不安定基由来の残基となる。このような酸不安定基は、重合体をレジスト用重合体として供した場合、酸によってアルカリに可溶となり、レジストパターン形成を可能とする作用を奏する。
【0025】
上記酸不安定基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、特に限定されないが、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有し、かつ酸の作用により脱離可能な基を有している(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。このような脂環式炭化水素基を有する単量体は、ドライエッチング耐性に優れる傾向にあるため好ましい。該脂環式炭化水素基は、(メタ)アクリル酸エステルのエステル結合を構成する酸素原子と直接結合していてもよく、アルキレン基等の連結基を介して結合していてもよい。
【0026】
上記酸不安定基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、メタクリル酸2−エチル−2−アダマンチル等が挙げられる。
また、上記酸不安定基を有する(メタ)アクリル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を必要に応じて組み合わせて用いてもよい。
【0027】
上記重合体における、上記酸不安定基を有する(メタ)アクリル系単量体から導かれる構成単位の含有量は、特に制限されないが、全単量体の合計の仕込み量(100モル%)中、20モル%以上が好ましく、25モル%以上がより好ましい。また、上記含有量の上限値としては、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。
上記含有量が、20モル%以上又は25モル%以上であれば、感度や解像度が向上する傾向にあり、また、この含有量が、60モル%以下又は55モル%以下又は50モル%以下であれば、解像性が向上する傾向にある。
【0028】
(親水性基を有する(メタ)アクリル系単量体)
「親水性基」としては、特に限定されないが、−C(CF−OH、ヒドロキシ基、シアノ基、メトキシ基、カルボキシ基及びアミノ基の少なくとも1種が挙げられる。
上記親水性基を有する(メタ)アクリル系単量体は、例えば、末端ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリ酸エステル、単量体の親水性基上にアルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基等の置換基を有する誘導体、環式炭化水素基を有する単量体((メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸1−イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンチル、(メタ)アクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−エチル−2−アダマンチル等。)が置換基としてヒドロキシ基、カルボキシ基等の親水性基を有する単量体が挙げられる。環式炭化水素基を有する単量体は、ドライエッチング耐性に優れる傾向にあるため好ましい。
【0029】
上記親水性基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸3−ヒドロキシアダマンチル、(メタ)アクリル酸2−シアノ−5−ノルボルネン等が挙げられ、基板等に対する密着性の点から、1−メタクリロイルオキシ−3−ヒドロキシアダマンタン、2−シアノ−5−ノルボルネンメタクリレート等が好ましい。
上記親水性基を有する(メタ)アクリル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を必要に応じて組み合わせて用いてもよい。
【0030】
上記重合体における、上記親水性基を有する(メタ)アクリル系単量体から導かれる構成単位の含有量は、レジストパターン矩形性の点から、全単量体の合計の仕込み量(100モル%)中、5〜30モル%が好ましく、10〜25モル%がより好ましい。上記含有量が5モル%以上又は10モル%以上であれば、レジストパターンが良好となる傾向があり、上記含有量が20モル%以下又は25モル%以上であれば、マイクロゲル、ディフェクトが少ない傾向にある。
【0031】
(ハロゲン化合物)
上記他の(メタ)アクリル系単量体は、その製造過程において、臭化水素酸等のハロゲン化合物を使用して製造される場合があり、不純物として、合成原料由来のハロゲン化合物を含みうる。
上記ハロゲン化合物を使用して製造される単量体材料としては、ラクトン骨格を有する(メタ)アクリル系単量体、酸不安定基を有する(メタ)アクリル系単量体、親水性基を有する(メタ)アクリル系単量体、それぞれの誘導体が挙げられる。例えば、ラクトン骨格であれば、ハロゲン化ラクトン、酸不安定基であれば、ハロゲン化メチルアダマンチル、親水性基であれば、ハロゲン化ヒドロキシエチルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
例えば、上記ハロゲン化合物を使用して製造されるラクトン骨格を有する(メタ)アクリル系単量体のとして、臭化ラクトンとメタクリル酸を使用して製造されるα−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0032】
なお、上記単量体中に含まれるハロゲン化合物によってアセタール基の分解が生じるメカニズムの一例として、α−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン(α−GBLMA)等中に含まれる残臭化ラクトン等のブロモ体により酸が発生し、結果として、アセタールの分解が引き起こされる場合や、アセタールの分解によって生じる酸によってさらにアセタールの分解が引き起こされる場合等が考えられるが、これらの理論に限定されるわけではない。
【0033】
重合原料として用いる単量体に含まれる上記ハロゲン化合物量の総量は、全単量体量に対して200ppm以下、更には150ppm以下であることが好ましい。上記ハロゲン化合物量が200ppm以下又は150ppm以下であれば、アセタール基の分解を抑制することができる。
【0034】
(重合方法)
重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合方法が挙げられる。これらのうち、光線透過率を低下させないために、重合反応終了後に残存する単量体を除去する必要がある点、重合体の分子量を比較的低くする必要がある点から、溶液重合法が好ましい。
【0035】
溶液重合法においては、単量体及び重合開始剤の重合容器への供給は、連続供給であってもよく、あるいは、間欠供給であってもよい。溶液重合法としては、製造ロットの違いによる平均分子量、分子量分布等のばらつきが小さく、再現性のある重合体が簡便に得られる点から、単量体及び重合開始剤を重合容器内に滴下する滴下重合法が好ましい。
【0036】
滴下重合法においては、重合容器内を所定の重合温度まで加熱した後、単量体及び重合開始剤を、それぞれ独立に、又は任意の組み合わせで、重合容器内に滴下できる。
単量体は、単量体のみで滴下してもよく、あるいは、単量体を溶媒(以下、「滴下溶媒」とも記す。)に溶解させた単量体溶液として滴下してもよい。
【0037】
溶媒(以下、「仕込み溶媒」とも記す。)をあらかじめ重合容器に仕込んでもよく、あるいは、仕込み溶媒をあらかじめ重合容器に仕込まなくてもよい。仕込み溶媒をあらかじめ重合容器に仕込まない場合、単量体又は重合開始剤は、仕込み溶媒がない状態で重合容器中に滴下される。
上記重合開始剤は、単量体に直接に溶解させてもよく、あるいは、単量体溶液に溶解させてもよく、滴下溶媒のみに溶解させてもよい。
【0038】
また、上記単量体及び重合開始剤は、同じ貯槽内で混合した後、重合容器中に滴下してもよく、あるいは、それぞれ独立した貯槽から重合容器中に滴下してもよく、あるいは、それぞれ独立した貯槽から重合容器に供給する直前で混合し、重合容器中に滴下してもよい。
【0039】
また、単量体及び重合開始剤は、一方を先に滴下した後、遅れて他方を滴下してもよく、あるいは、両方を同じタイミングで滴下してもよい。滴下速度は、滴下終了まで一定であってもよく、あるいは、単量体又は重合開始剤の消費速度に応じて、多段階に変化させてもよい。
【0040】
また、上記単量体及び重合開始剤の滴下は、連続的に行ってもよく、あるいは、間欠的に行ってもよい。
【0041】
上記したような各種の重合条件や方法を適宜選択することにより、所望の組成の共重合体、例えば、均一な組成の共重合体を得ることができ、また、所望の分子量の共重合体、例えば、分子量分布の狭い共重合体を得ることができる。
【0042】
重合温度は、特に制限されないが、通常、50〜150℃の範囲で行うのが好ましい。また、重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。
【0043】
上記溶媒としては、例えば、下記のものが挙げられる。
エーテル類:鎖状エーテル(プロピレングリコールモノメチルエーテル等。)、環状エーテル(テトラヒドロフラン(以下、「THF」と記す。)等。)等。
エステル類:乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」と記す。)、γ−ブチロラクトン等。
ケトン類:メチルエチルケトン等。
脂環式炭化水素:シクロヘキサン等。
有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を必要に応じて併用してもよい。
【0044】
上記重合開始剤としては、熱により効率的にラジカルを発生するものが好ましい。該重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物(2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2´−アゾビスイソブチレート、2,2´−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等。)、有機過酸化物(2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等。)等が挙げられる。
【0045】
(レジスト用組成物)
上記レジスト用共重合体を溶媒に溶解して、レジスト用組成物として用いることができる。また、化学増幅型レジスト組成物として用いる場合は、さらに光酸発生剤を含むものである。
【0046】
上記製造方法によれば、所望の組成の共重合体を得ることができるため、レジスト用共重合体として用いる場合は、所望の性能を得ることが可能となる。
【0047】
溶媒としては、上記重合体の製造に用いた溶媒と同様のものが挙げられる。溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を必要に応じて併用してもよい。
【0048】
光酸発生剤は、化学増幅型レジスト組成物の光酸発生剤として使用可能なものの中から任意に選択できる。光酸発生剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を必要に応じて併用してもよい。
【0049】
光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、キノンジアジド化合物、ジアゾメタン化合物等が挙げられる。
光酸発生剤の量は、重合体100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。
【0050】
化学増幅型レジスト組成物は、含窒素化合物を含んでいてもよい。含窒素化合物を含むことにより、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等がさらに向上する。つまり、レジストパターンの断面形状が矩形により近くなり、また、レジスト膜に光を照射し、ついでベーク(PEB)した後、次の現像処理までの間に数時間放置されることが半導体素子の量産ラインではあるが、そのような放置(経時)したときにレジストパターン断面形状の劣化の発生がより抑制される。
【0051】
上記含窒素化合物としては、アミンが好ましく、第2級低級脂肪族アミン、第3級低級脂肪族アミンがより好ましい。
上記含窒素化合物の含有量は、重合体100質量部に対して、0.01〜2質量部が好ましい。
【0052】
化学増幅型レジスト組成物は、有機カルボン酸、リンのオキソ酸またはその誘導体(以下、これらをまとめて酸化合物と記す。)を含んでいてもよい。酸化合物を含むことにより、含窒素化合物の配合による感度劣化を抑えることができ、また、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等がさらに向上する。
【0053】
上記有機カルボン酸としては、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸等が挙げられる。
上記リンのオキソ酸またはその誘導体としては、リン酸またはその誘導体、ホスホン酸またはその誘導体、ホスフィン酸またはその誘導体等が挙げられる。
上記酸化合物の含有量は、重合体100質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましい。
【0054】
上記本発明のレジスト組成物は、必要に応じて、界面活性剤、その他のクエンチャー、増感剤、ハレーション防止剤、保存安定剤、消泡剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。該添加剤は、当該分野で公知のものであればいずれも使用可能である。また、これら添加剤の量は、特に限定されず、適宜決めることができる。
【0055】
(パターンが形成された基板の製造方法)
また、上記レジスト組成物と光酸発生剤とを含む組成物を、被加工基板上に塗布しレジスト膜を形成し、該レジスト膜に250nm以下の波長の光を照射して潜像を形成し、該潜像が形成されたレジスト膜を現像液で現像処理することにより、パターンが形成された基板を製造することができる。
【0056】
上記製造方法によれば、微細なパターンが形成された基板を安定して供給することができるので、これにより半導体基板等の生産性や信頼性の向上を図ることができる。
【0057】
上記製造方法の一例として、まず、所望の微細パターンを形成しようとするシリコンウエハー等の被加工基板の表面に、上記レジスト組成物をスピンコート等により塗布し、該レジスト組成物が塗布された被加工基板を、ベーキング処理(PAB)等で乾燥することにより、基板上にレジスト膜を形成することができる。
【0058】
ついで、レジスト膜に、フォトマスクを介して、450nm以下、好ましくは250nm以下の波長の光を照射して潜像を形成する(露光)。照射光としては、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUVエキシマレーザーが好ましく、ArFエキシマレーザーが特に好ましい。また、電子線を照射してもよい。
【0059】
また、該レジスト膜と露光装置の最終レンズとの間に、純水、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン、パーフルオロトリアルキルアミン等の高屈折率液体を介在させた状態で光を照射する液浸露光を行ってもよい。
【0060】
露光後、適宜熱処理(PEB)し、レジスト膜にアルカリ現像液を接触させ、露光部分を現像液に溶解させ、除去する(現像)。アルカリ現像液としては、公知のものが挙げられる。
現像後、基板を純水等で適宜リンス処理する。このようにして被加工基板上にレジストパターンが形成される。
【0061】
レジストパターンが形成された基板は、適宜熱処理(PEB)してレジストを強化し、レジストのない部分を選択的にエッチングする。
エッチング後、レジストを剥離剤によって除去することによって、微細パターンが形成された基板が得られる。
【0062】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、各実施例、比較例中「部」とあるのは、特に断りがない限り、「重量部」を意味する。
また、共重合体の物性の測定は、以下の方法を用いて行った。
【0063】
・単量体中のハロゲン化合物量(ppm)の算出
下記フラスコ燃焼処理イオンクロマトグラフ法により求めた。
単量体約50mgを包み込んだろ紙を燃焼フラスコ活栓側の白金治具に固定し、ろ紙に点火後、酸素で満たされた15mLの吸収液(0.3%過酸化水素水溶液)入りフラスコ内で完全燃焼させた。発生ガスを吸収液に吸収させた後、その吸収液をそのままイオンクロマトグラフにてハロゲン(臭素)イオン定量分析を行った。燃焼させた単量体量とハロゲン(臭素)イオン定量値から、各単量体量(α−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン(α−GBLMA)、2−メタクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン(MAdMA)、2−シアノ−5−ノルボルネンメタクリレート(CNNMA)及び2−プロペン酸−2−メチル−1,4−ブタンジイルビス(オキシエチリデン)エステル(BDADMA))中のハロゲン化合物(臭素化合物)量を算出した。結果を表1に示す。
なお、α−GBLMA(Lot.A、Lot.B)以外の単量体からはハロゲン化合物(臭素化合物)は検出されなかった。
【0064】
【表1】

【0065】
・重合原料として用いる単量体α−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン(α−GBLMA)の精製方法
上記α−GBLMA Lot.A(以下、α−GBLMA−A)に対して、常法の減圧蒸留装置を用い、以下の条件にて単蒸留精製を行った。α−GBLMA−Aをフラスコに入れ、恒温槽に浸漬した後、減圧下で恒温槽の設定温度を40℃として室温から加熱を開始した。40℃に到達した時点で温度保持し、初留分(蒸留液の約30wt%)をカットした。ついで、設定温度を60℃として精留品の採取を開始し、α−GBLMA−Aの精製品(以下、α−GBLMA−A精製)を得た。
また、α−GBLMA Lot.B(以下、α−GBLMA−B)に対して、同様の処理を行い、α−GBLMA−Bの精製品(以下、α−GBLMA−B精製)を得た。
得られたα−GBLMA−A精製及びα−GBLMA−B精製について、上記同様の手法を用いて、単量体中のハロゲン化合物量(ppm)を算出した結果を表2に示す。
【0066】
【表2】

【0067】
・重合体中の各単量体の共重合組成、および、アセタール分解度(モル%)の測定
下記1H−NMRの測定により求めた。
日本電子(株)製、JNM−GX270型 超伝導FT−NMRを用いて、約5質量%の本発明の重合体(P)の溶液(重水素化ジメチルスルホキシド溶液)を直径5mmφのサンプル管に入れ、観測周波数270MHz、シングルパルスモードにて、H 64回の積算を行った。溶媒に用いる重水素化ジメチルスルホキシドは、水分によるアセタール分解を防止するため、試料調製直前にアンプル瓶を開封し使用した。測定温度は60℃で行った。
なお、アセタール分解度は、BDADMA(モル%)を100とした場合の、メタクリル酸量(モル%)の比率を表す。
【0068】
・再沈工程における重合体の操作性の評価
重合溶液をメタノール中に滴下し、共重合体を析出させる再沈処理工程での操作性について、目視で判別し、微粒子状に析出した共重合体が得られ、滴下釜中溶液を攪拌する攪拌翼に固着物もなかった場合を○、粘着性ある水飴状に共重合体が析出し、滴下釜中溶液を攪拌する攪拌翼にも析出した共重合体が固着していた場合を×として評価した。
なお、アセタール基が分解されるとメタクリル酸が生成共重合体中に含まれるメタクリル酸が、再沈溶媒(メタノール)への相溶性を低下させるため、再沈処理工程での操作性に影響すると考えられる。
【0069】
(実施例1)
窒素導入口、攪拌機、コンデンサー及び温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、PGMEA72.3部を入れ、攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。α−GBLMA−A精製(ハロゲン化合物含有量130ppm)25.4部(全単量体の合計仕込み量に対して31.8モル%)、2−メタクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン(MAdMA)35.0部(全単量体の合計仕込み量に対して31.8モル%)、2−シアノ−5−ノルボルネンメタクリレート(CNNMA)26.3部(全単量体の合計仕込み量に対して27.3モル%)、2−プロペン酸−2−メチル−1,4−ブタンジイルビス(オキシエチリデン)エステル(BDADMA)13.4部(全単量体の合計仕込み量に対して9.1モル%)、PGMEA129.9部、ジメチル−2,2´−アゾビスイソブチレート(和光純薬工業社製、V−601(商品名))24.5部を混合した単量体溶液を一定速度で4時間かけてフラスコ中に滴下し、その後、80℃の温度を3時間保持した。次いで、得られた反応溶液を約7倍量のメタノール中に撹拌しながら滴下し、白色の析出物の沈殿を得た。得られた沈殿を濾別し、再び約7倍量のメタノール中に投入した。これを濾別、回収し、減圧下60℃で約40時間乾燥し、共重合体Aの粉末を得た。
【0070】
(実施例2)
α−GBLMA−B精製(ハロゲン化合物含有量40ppm)を用いた他は、(実施例1)と同様の方法で共重合体を得た(共重合体B)。
【0071】
(比較例1)
α−GBLMA−A(ハロゲン化合物含有量420ppm)を用いた他は、(実施例1)と同様の方法で共重合体を得た(共重合体C)。
【0072】
(比較例2)
α−GBLMA−B(ハロゲン化合物含有量320ppm)を用いた他は、(実施例1)と同様の方法で共重合体を得た(共重合体D)。
【0073】
以上の結果を、以下の表3にまとめた。
【0074】
【表3】

【0075】
全単量体材料中のハロゲン化合物(臭素化合物)の量が、単量体全量に対して200ppm以下となる重合原料として用いた場合(実施例1及び2)では、アセタール基を有するアクリル系単量体(BDADMA)の分解が抑制され、また、再沈工程における重合体の操作性も良好であることが確認された。
一方、全単量体材料中のハロゲン化合物(臭素化合物)の量が、単量体全量に対して200ppmを越える単量体を重合原料として用いた場合(比較例1及び2)では、BDADMAの分解が促進し、分解生成物であるメタクリル酸量が増大していることが確認され、再沈工程における重合体の操作性にも劣ることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、所望の組成と性能を有するレジスト用共重合体を供給できるため、レジスト材料等の半導体製造分野において好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のアセタール基を有する(メタ)アクリル系単量体から導かれる構成単位と、該単量体と共重合可能な少なくとも1種の他の(メタ)アクリル系単量体から導かれる構成単位とを含有するレジスト用重合体の製造方法であって、前記単量体原料中に含まれるハロゲン化合物の総量が、前記全単量体量に対して200ppm以下である単量体を重合原料として用いるレジスト用共重合体の製造方法。
【請求項2】
前記ハロゲン化合物が臭素化合物である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記他の(メタ)アクリル系単量体が、製造過程においてハロゲン化合物を使用して製造される単量体である請求項1に記載のレジスト用共重合体の製造方法。

【公開番号】特開2010−248292(P2010−248292A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96303(P2009−96303)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】