説明

レドームのボアサイトエラー試験装置及びレドームのボアサイトエラー試験方法

【課題】レドームのボアサイトエラーをより容易に測定すること。
【解決手段】試験装置1は、電波を発生する電波発生装置11と、電波を受信するアンテナBを覆うレドームAが取り付けられ、電波に対するレドームAの角度を変更できるようにレドームAを支持するレドーム支持装置20と、アンテナBが取り付けられ、レドームAとは別にアンテナBの走査角度を変更できるようにアンテナBを支持するアンテナ支持装置30と、アンテナBが受信した電波を信号として取得する制御解析装置40と、を備える。さらに、試験装置1は、電波発生装置11からの電波を反射すると共に球面波である電波を平面波に変換し、平面波をアンテナBへと導くコンパクトレンジ12をさらに備えることが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レドームのボアサイトエラーを試験する試験装置及び試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電波を発射し、探査対象物で反射された電波を受信することで、探査対象物の有無や位置を探査するレーダー装置がある。航空機や飛翔体に搭載されるレーダー装置は、電波を送受するアンテナがレドームと呼ばれるカバーに覆われて構成される。このようなレーダー装置では、電波がレドームを透過する際に、ビームパターンが偏位してボアサイトエラーが生じることがある。ボアサイトエラーは、レドームの形状や材料の特性によって変化する。
【0003】
レーダー装置は、レドームのボアサイトエラーが小さい方が好ましく、ボアサイトエラーがより小さくなるようにレドームが設計される。そして、より高い精度を要求されるレーダー装置では、さらに、アンテナが受信した電波のビームパターンを、あらかじめ計測されたレドームのボアサイトエラーに基づいて補正することもある。これにより、レーダー装置は、探査対象物をより精度良く探査できる。このように、レーダー装置は、レドームが設計される際に、レドームのボアサイトエラーが把握されていると好ましい。また、アンテナが受信した電波のビームパターンを補正するようなレーダー装置も、レドームのボアサイトエラーがあらかじめ把握されていると好ましい。例えば、非特許文献1の第7章には、レドームのボアサイトエラーを計測するための試験方法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J. D. Walton(ed.), "Radome Engineering Handbook," Marcel Dekker Inc., 1970
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に開示されている試験方法では、ナルシーカーと呼ばれる装置が用いられる。ナルシーカーは、電波を発射する電波発生装置を備え、前記電波発生装置が鉛直方向及び水平方向に移動できるように設けられている。ナルシーカーを用いた場合、ナルシーカーの電波発生装置の動きを制御でき、かつ、電波を受信するアンテナから信号を取得できる制御解析装置としてのコンピュータが必要になる。しかしながら、ナルシーカーとアンテナとは離れて配置されている。よって、非特許文献1に開示されている技術では、制御解析装置とナルシーカーとを電気的に接続する配線と、制御解析装置とアンテナとを電気的に接続する配線とのうち、少なくとも一方の長さが増大する。
【0006】
実際の試験では、試験装置同士を電気的に接続する作業や、試験装置同士の電気的な接続を確認する作業が必要になる。制御解析装置とナルシーカーとを電気的に接続する配線と、制御解析装置とアンテナとを電気的に接続する配線とのうち、少なくとも一方の長さが増大すると、これらの作業に要する労力が増大する。特に、試験装置に不具合が生じた場合には、ユーザーは、制御解析装置とナルシーカーとアンテナとを行き来することとなる。よって、試験装置同士の電気的な接続を確認する作業に要する手間が特に増大する。また、球面波を平面波に変換するコンパクトレンジを用いない試験の場合、ナルシーカーとアンテナとの間の距離は例えば50m以上離れるため、これらの作業に要する労力がさらに増大する。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、レドームのボアサイトエラーをより容易に測定できるレドームのボアサイトエラー試験装置及びレドームのボアサイトエラー試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るレドームのボアサイトエラー試験装置は、電波を発生する電波発生装置と、前記電波発生装置が発生した電波を受信するアンテナを覆うためのレドームが取り付けられ、前記アンテナに到達した電波に対する前記レドームの角度を変更できるように前記レドームを支持するレドーム支持装置と、前記アンテナが取り付けられ、前記レドームとは別に前記アンテナの走査角度を変更できるように前記アンテナを支持するアンテナ支持装置と、前記アンテナが受信した電波を信号として取得し、前記信号に基づいてビームパターンを算出する解析装置と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るレドームのボアサイトエラー試験装置は、電波発生装置の動作を制御する必要がない。よって、解析装置は、電波発生装置と電気的に接続されなくてもよい。解析装置と電気的に接続される各装置は、すべて一箇所にまとめられて配置されることができる。よって、本発明に係るレドームのボアサイトエラー試験装置は、解析装置と各装置を電気的に接続する配線の長さを低減できる。上述したように、実際の試験では、解析装置と各装置とを電気的に接続する作業や、解析装置と各装置との電気的な接続を確認する作業が必要になる。これらの作業に要する労力は、解析装置と各装置とを電気的に接続する配線の長さが長くなるほど増大する。しかしながら、本発明のレドームのボアサイトエラー試験装置は、解析装置と各装置とを電気的に接続する配線の長さを低減できる。よって、レドームのボアサイトエラー試験装置は、より容易なレドームのボアサイトエラー試験を実現できる。
【0010】
本発明の好ましい態様としては、前記電波発生装置からの前記電波を反射すると共に球面波である前記電波を平面波に変換し、前記平面波を前記アンテナへと導くコンパクトレンジをさらに備えることが望ましい。
【0011】
本発明の好ましい態様としては、前記解析装置は、前記アンテナが前記レドームに覆われていない際に前記アンテナに到達した第1電波のビームパターンと、前記アンテナが前記レドームに覆われている際に前記アンテナに到達した第2電波のビームパターンと、の差である偏位量を算出し、前記アンテナが前記第1電波を受信した際の前記アンテナの走査角度と、前記偏位量が所定値以下になる際の前記アンテナの走査角度と、の差をボアサイトエラーとして算出することが望ましい。
【0012】
本発明の好ましい態様としては、前記アンテナは、前記アンテナに到達した電波を少なくとも2箇所で受信し、前記解析装置は、前記アンテナの異なる箇所で受信した前記電波の差信号で前記第1電波のビームパターン及び前記第2電波のビームパターンを算出し、前記第1電波のビームパターンのナル点の角度と、前記第2電波のビームパターンのナル点の角度と、の差に基づいて前記偏位量を算出することが望ましい。
【0013】
本発明の好ましい態様としては、前記解析装置は、前記アンテナが受信した前記電波の和信号で前記第1電波のビームパターン及び前記第2電波のビームパターンを算出し、前記第1電波のビームパターンのピーク点の角度と、前記第2電波のビームパターンのピーク点の角度と、の差に基づいて前記偏位量を算出することが望ましい。
【0014】
本発明の好ましい態様としては、前記アンテナ支持装置は、前記アンテナを回動させるアンテナ回動手段を有し、前記レドームのボアサイトエラー試験装置は、前記偏位量が所定値以下になるように、前記アンテナ回動手段の動作を制御するアンテナ回動手段制御装置をさらに備えることが望ましい。
【0015】
本発明の好ましい態様としては、前記レドーム支持装置は、前記レドームを回動させるレドーム回動手段を有し、前記レドームのボアサイトエラー試験装置は、前記レドーム回動手段の動作を制御するレドーム回動手段制御装置をさらに備え、前記解析装置は、前記レドーム回動手段制御装置が前記レドームを回動させて前記電波に対する前記レドームの角度を変更すると、その角度での前記ボアサイトエラーを算出することが望ましい。
【0016】
本発明の好ましい態様としては、前記アンテナ支持装置は、アンテナ第1軸と、前記アンテナ第1軸に直交するアンテナ第2軸と、前記アンテナ第2軸に直交するアンテナ第3軸と、のうちの少なくとも1つを中心に前記アンテナが回動できるように、前記アンテナを支持することが望ましい。
【0017】
本発明の好ましい態様としては、前記レドーム支持装置は、レドーム第1軸と、前記レドーム第1軸に直交するレドーム第2軸と、前記レドーム第2軸に直交するレドーム第3軸と、のうちの少なくとも1つを中心に前記レドームが回動できるように、前記レドームを支持することが望ましい。
【0018】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るレドームのボアサイトエラー試験方法は、アンテナがレドームに覆われていない際に前記アンテナに到達した到達した第1電波のビームパターンを算出し、前記アンテナが前記レドームに覆われている際に前記アンテナに到達した第2電波のビームパターンを算出し、前記第1電波のビームパターンと、前記第2電波のビームパターンとの差である偏位量が所定値以下になるように前記アンテナの走査角度を調節し、前記第1電波を受信した際の前記アンテナの走査角度と、前記偏位量が所定値以下になる際の前記アンテナの走査角度との差をボアサイトエラーとして算出することを特徴とする。
【0019】
本発明に係るレドームのボアサイトエラー試験方法を用いれば、電波発生装置の機械的な動作を制御する必要がない。よって、解析装置は、電波発生装置と電気的に接続されない。解析装置と電気的に接続される各装置は、すべて一箇所にまとめられて配置されることができる。よって、本発明に係るレドームのボアサイトエラー試験方法を用いれば、解析装置と各装置を電気的に接続する配線の長さを低減できる。よって、レドームのボアサイトエラー試験方法を用いれば、より容易なレドームのボアサイトエラー試験を実現できる。
【0020】
本発明の好ましい態様としては、前記電波に対する前記レドームの角度を変化させ、前記レドームの角度別に前記ボアサイトエラーを算出することが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、レドームのボアサイトエラーをより容易に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、試験装置の全体を示す斜視図である。
【図2】図2は、レドーム支持装置及びアンテナ支持装置を示す斜視図である。
【図3】図3は、制御解析装置が有する機能を示すブロック図である。
【図4】図4は、アンテナの基準角度を決定するための手順を示すフローチャートである。
【図5】図5は、ボアサイトエラーを計測するための手順を示すフローチャートである。
【図6】図6は、算出されたビームパターンの一例を示すグラフである。
【図7】図7は、レドームによって偏位したビームパターンを示すグラフである。
【図8】図8は、レドームの各方位角でのボアサイトエラーを示すグラフである。
【図9】図9は、レドームの各仰俯角でのボアサイトエラーを示すグラフである。
【図10】図10は、他のアンテナで受信した電波のビームパターンを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施の形態により、本発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものまたは実質的に同一のものが含まれる。以下、レドームのボアサイトエラー試験装置を単に試験装置という。
【0024】
(実施形態1)
図1は、試験装置の全体を示す斜視図である。本実施形態の試験装置1は、電波発生装置11と、コンパクトレンジ12と、レドーム支持装置20と、アンテナ支持装置30と、制御解析装置40とを含んで構成される。電波発生装置11は、アンプ装置で増幅された電波を送信アンテナから発生する。電波発生装置11から発生された電波は、例えば、Xバンド(8〜12.5GHz)を中心としたいわゆるマイクロ波帯の電波である。コンパクトレンジ12は、電波を反射すると共に、球面波である電波を平面波に変換する。電波発生装置11は、コンパクトレンジ12に対向して設けられて、コンパクトレンジ12に向かって電波を発信する。レドーム支持装置20及びアンテナ支持装置30は、コンパクトレンジ12と対向して設けられて、コンパクトレンジ12が反射した電波が導かれる。
【0025】
図2は、レドーム支持装置及びアンテナ支持装置を示す斜視図である。図2に示すレドーム第1軸としてのX軸及びアンテナ第1軸としてのX’軸は、それぞれレドーム第2軸及びアンテナ第2軸としてのY軸に直交する。Y軸は、アンテナ第3軸としてのZ軸に直交する。本実施形態では、X軸は水平方向に沿い、Y軸は鉛直方向に沿う。レドーム支持装置20は、レドーム第1支持体21と、レドーム第2支持体22と、レドーム回動手段と、台座25とを備える。レドーム回動手段には、レドーム第1モータ23と、レドーム第2モータ24とが含まれる。レドーム第1支持体21は、円形の開口21bが形成された板状のレドーム取付部21aを含む。レドーム第1支持体21は、レドーム取付部21aにレドームAが取り付けられる。レドーム第1支持体21は、X軸を中心にレドーム第2支持体22に対して回動できるように、レドーム第2支持体22に連結される。
【0026】
レドーム第2支持体22は、例えば、略コの字型の部材である。レドーム第2支持体22は、レドーム第1支持体21を台座25に支持する。レドーム第1モータ23は、ロータがステータに対してX軸を中心に回転する。レドーム第1モータ23は、レドーム第1支持体21とレドーム第2支持体22とのうちの一方にステータが取り付けられ、他方(レドーム第1支持体21とレドーム第2支持体22とのうちステータが取り付けられていない方)にロータが取り付けられる。これにより、レドーム第1モータ23は、レドーム第1支持体21をレドーム第2支持体22に支持すると共に、レドーム第1支持体21をレドーム第2支持体22に対してX軸を中心に回動させる。
【0027】
レドーム第2モータ24は、ロータがステータに対してY軸を中心に回転する。レドーム第2モータ24は、台座25とレドーム第2支持体22とのうちの一方にステータが取り付けられ、他方(台座25とレドーム第2支持体22とのうちステータが取り付けられていない方)にロータが取り付けられる。これにより、レドーム第2モータ24は、レドーム第2支持体22を台座25に支持すると共に、レドーム第2支持体22を台座25に対してY軸を中心に回動させる。台座25は、天板部25bから同一方向に2つの脚部25aが延設されることで、略コの字型に形成される。台座25は、フレーム、テーブル、床、地面などに設置される。本実施形態では、台座25は、フレームに設置されるものとする。台座25は、フレームに対して回動しない。
【0028】
アンテナ支持装置30は、アンテナ第1支持体31と、アンテナ第2支持体32と、アンテナ第3支持体33と、アンテナ回動手段とを備える。アンテナ回動手段には、アンテナ第1モータ34と、アンテナ第2モータ35と、アンテナ第3モータ36とが含まれる。アンテナ第1支持体31は、アンテナBが取り付けられる。アンテナBは、レドームAに覆われるように、レドームAの内部に配置される。アンテナ第1支持体31やアンテナ第2支持体32は、レドーム第1支持体21の開口21bからレドームAの内部に入ってアンテナBを支持する。アンテナ第2支持体32は、Z軸を中心にアンテナ第1支持体31とアンテナ第2支持体32とが互いに回動できるように、アンテナ第1支持体31に連結される。アンテナ第3支持体33は、X軸を中心にアンテナ第2支持体32とアンテナ第3支持体33とが互いに回動できるように、アンテナ第2支持体32に連結される。
【0029】
アンテナ第1モータ34は、ロータがステータに対してZ軸を中心に回転する。アンテナ第1モータ34は、アンテナ第1支持体31とアンテナ第2支持体32とのうちの一方にステータが取り付けられ、他方(アンテナ第1支持体31とアンテナ第2支持体32とのうちステータが取り付けられていない方)にロータが取り付けられる。これにより、アンテナ第1モータ34は、アンテナ第1支持体31をアンテナ第2支持体32に支持すると共に、アンテナ第1支持体31をアンテナ第2支持体32に対してZ軸を中心に回動させる。
【0030】
アンテナ第2モータ35は、ロータがステータに対してX’軸を中心に回転する。アンテナ第2モータ35は、アンテナ第2支持体32とアンテナ第3支持体33とのうちの一方にステータが取り付けられ、他方(アンテナ第2支持体32とアンテナ第3支持体33とのうちステータが取り付けられていない方)にロータが取り付けられる。これにより、アンテナ第2モータ35は、アンテナ第2支持体32をアンテナ第3支持体33に支持すると共に、アンテナ第2支持体32をアンテナ第3支持体33に対してX’軸を中心に回動させる。
【0031】
アンテナ第3モータ36は、ロータがステータに対してY軸を中心に回転する。アンテナ第3モータ36は、アンテナ第3支持体33とフレームとのうちの一方にステータが取り付けられ、他方(アンテナ第3支持体33とフレームとのうちステータが取り付けられていない方)にロータが取り付けられる。これにより、アンテナ第3モータ36は、アンテナ第3支持体33をフレームに支持すると共に、アンテナ第3支持体33をフレームに対してY軸を中心に回動させる。本実施形態では、アンテナ第3モータ36は、レドーム第2モータ24と同一のY軸を中心にロータが回転するが、アンテナ第3モータ36は、レドーム第2モータ24とは異なる軸を中心にロータが回転してもよい。但し、この場合、アンテナ第3モータ36のロータの回転軸と、レドーム第2モータ24のロータの回転軸とは、互いに平行である。
【0032】
以上により、レドーム支持装置20は、X軸とY軸とを中心に回動できるようにレドームAを支持する。本実施形態では、X軸は水平面に平行であるため、レドームAがX軸を中心に回動した際に変化する角度を仰俯角という。また、レドームAがY軸を中心に回動した際に変化する角度を方位角という。アンテナ支持装置30は、X軸とY軸とZ軸とを中心に回動できるようにアンテナBを支持する。アンテナ支持装置30は、レドーム支持装置20とは別に各部が可動する。これにより、レドームAとアンテナBとは、別々に動く。
【0033】
ここで、台座25は、レドーム第2モータ24のロータの回転軸と、アンテナ第3モータ36のロータの回転軸とを同一にするための部材である。具体的には、アンテナ第3モータ36が台座25の2つの脚部25aの間に配置されることで、レドーム第2モータ24のロータの回転軸とアンテナ第3モータ36のロータの回転軸とが一致する。よって、レドーム第2モータ24のロータの回転軸と、アンテナ第3モータ36のロータの回転軸とを一致できるのであれば、台座25の形状や有無は限定されない。例えば、台座25の形状は、レドーム第2モータ24と鉛直方向で隣接してアンテナ第3モータ36を設置するためのスペースを確保できる形状であればよい。
【0034】
また、例えば、レドーム第2モータ24またはアンテナ第3モータ36が、Y軸方向に貫通する孔(空洞)を有する中空モータであってもよい。例えば、アンテナ第3モータ36が中空モータである場合、レドーム第2モータ24は、アンテナ第3モータ36よりもフレーム側に配置される。そして、レドーム第2モータ24のロータは、アンテナ第3モータ36の空洞部を貫通してレドーム第2支持体22に連結される。この場合であっても、試験装置1は、レドーム第2モータ24のロータの回転軸と、アンテナ第3モータ36のロータの回転軸とを一致できる。但し、レドーム第2モータ24のロータの回転軸と、アンテナ第3モータ36のロータの回転軸とは、必ずしも一致しなくてもよく、試験によっては、あえてそれぞれの回転軸を異ならせることもある。
【0035】
図3は、制御解析装置が有する機能を示すブロック図である。図1及び図2に示す制御解析装置40は、解析装置の機能と、レドーム回動手段制御装置の機能と、アンテナ回動手段制御装置の機能とを実現する。解析装置の機能は、アンテナBが受信した電波を信号として取得し、その信号に基づいてビームパターンを算出する機能である。レドーム回動手段制御装置の機能は、図2に示すレドーム第1モータ23の動作と、レドーム第2モータ24の動作とを制御する機能である。アンテナ回動手段制御装置の機能は、図2に示すアンテナ第1モータ34の動作と、アンテナ第2モータ35の動作と、アンテナ第3モータ36の動作とを制御する機能である。
【0036】
制御解析装置40は、コンピュータを含んで構成される。制御解析装置40は、1つの装置が図3に示す各機能を実現してもよいし、図3に示す各機能をそれぞれ別個に実現する複数の装置が電気的に接続されることで各機能を実現してもよい。図3に示すように、制御解析装置40は、処理部41と、記憶部46とを備える。記憶部46は、処理部41が実行する手順を示すプログラムや、処理部41によって生成された情報を記憶する。
【0037】
制御解析装置40は、自身(制御解析装置40)の入出力部(I/O:Input/Output)に、図1及び図2に示すアンテナBと、ユーザーによる入力を受け付ける入力装置48と、試験に必要な情報や試験結果に関する画像を表示する表示装置49と、図2に示すレドーム第1モータ23と、レドーム第2モータ24と、アンテナ第1モータ34と、アンテナ第2モータ35と、アンテナ第3モータ36とが電気的に接続される。処理部41は、これらの装置から情報を取得したり、これらの装置の動作を制御したりする。
【0038】
具体的な処理部41の機能を説明する。処理部41は、情報取得部42と、モータ制御部43と、演算判定部44と、表示装置制御部45とを含む。情報取得部42は、図2に示すアンテナBが受信した電波を信号としてアンテナBから取得する。また、情報取得部42は、ユーザーが入力装置48に入力した指令や情報を入力装置48から信号として取得する。モータ制御部43は、レドーム第1モータ23と、レドーム第2モータ24と、アンテナ第1モータ34と、アンテナ第2モータ35と、アンテナ第3モータ36とに、それぞれの動作を制御するための信号を送信する。モータ制御部43は、これらの各モータのロータの回転角度や、回転方向を調節する。
【0039】
演算判定部44は、情報取得部42がアンテナBから受信した信号を用いて所定の演算を行う。また、演算判定部44は、この他にもプログラムを実行するために必要な諸々の演算を行う。また、演算判定部44は、次に制御解析装置40が実行する手順を複数の手順の中から選択する。表示装置制御部45は、表示装置49に表示させる画像を生成したり、表示装置49の動作を制御するための信号を表示装置49に送信して表示装置49に画像を表示させたりする。
【0040】
図4は、アンテナの基準角度を決定するための手順を示すフローチャートである。図5は、ボアサイトエラーを計測するための手順を示すフローチャートである。図6は、算出されたビームパターンの一例を示すグラフである。制御解析装置40は、まず、図4に示す一連の手順を実行してアンテナの基準角度を記憶し、次に、図5に示す一連の手順を実行してボアサイトエラーを計測する。なお、以下の説明では、図4及び図5に示す一連の手順のすべてを制御解析装置40が実行する場合を説明するが、図4に示す一連の手順のうち、少なくとも一部をユーザーが手動で行ってもよい。
【0041】
制御解析装置40が図4に示す一連の手順を実行する際、図2に示すレドームAは、レドーム取付部21aから取り外されている。なお、レドームAは、必ずしもレドーム取付部21aから取り外される必要はなく、例えば、Y軸を中心にコンパクトレンジ12とは反対側に回動されてもよい。図2に示すアンテナBは、アンテナ第1支持体31に取り付けられている。図4に示すステップST101で、図3に示す情報取得部42は、アンテナBから信号を取得する。この時、情報取得部42が取得する信号は、レドームAを透過せずにアンテナBに到達した第1電波の信号である。次に、図4に示すステップST102で、図3に示す演算判定部44は、図6に示すようなビームパターンを算出する。図2に示す本実施形態のアンテナBは、アンテナBに到達した電波を少なくとも2箇所で受信するモノパルスアンテナである。実際には、アンテナBは、それぞれ電波を受信する部分を4つ備える。
【0042】
これにより、アンテナBは、電波を四象限で別々に受信できる。よって、本実施形態で情報取得部42が取得する電波の信号は差信号となる。また、演算判定部44が算出するビームパターンは、図6に示すように差パターンになる。なお、アンテナBは、モノパルスアンテナに限定されない。アンテナBは、例えば、電波を受信する部分をそれぞれ1つずつ有したアンテナを複数含んで構成されてもよい。複数のアンテナが離れて配置されることにより、情報取得部42は、アンテナBに到達した電波の差信号を受信できる。この場合でも、演算判定部44は、図6に示すような差パターンのビームパターンを算出できる。
【0043】
次に、ステップST103で、図3に示すモータ制御部43は、ステップST102で算出したビームパターンのナル点での出力値(縦軸)が最小となるように、図2に示すアンテナ第1モータ34からアンテナ第3モータ36の各モータの動作を制御して、アンテナBの方位角と、仰腑角と、ロール角とを調節する。前記最小値とは、アンテナBが平面波に向かって真正面を向いている際に算出されるビームパターンのナル点での出力値である。ナル点とは、図6に示すように、概ね線対称となるビームパターンの走査角度(横軸)方向中央に形成される谷底の点、すなわち出力が極小を示す点である。方位角とは、アンテナ第3モータ36によってアンテナBが回動する角度である。仰俯角とは、アンテナ第2モータ35によってアンテナBが回動する角度である。ロール角とは、アンテナ第1モータ34によってアンテナBが回動する角度である。
【0044】
本実施形態では、モータ制御部43がステップST103で駆動させるモータは、アンテナ第1モータ34と、アンテナ第2モータ35と、アンテナ第3モータ36との3つである。よって、制御解析装置40がステップST103で調節するアンテナBの走査角度は、方位角と、仰俯角と、ロール角との3つである。しかしながら、ロール角を変化させても、ビームパターンのナル点での出力値の変化量は僅かである。よって、ステップST103でモータ制御部43は、アンテナ第2モータ35及びアンテナ第3モータ36のみの動作を制御してもよい。但し、より高精度を求める場合、モータ制御部43は、アンテナ第1モータ34の動作を制御する方が好ましい。
【0045】
ビームパターンのナル点での出力値(縦軸)が最小となるようにアンテナBの方位角と、アンテナBの仰腑角と、アンテナBのロール角とを調節する方法の一例を以下に説明する。以下、アンテナBの方位角と、アンテナBの仰腑角と、アンテナBのロール角とを、アンテナBの各走査角度という。まず、演算判定部44は、アンテナBの各走査角度をモータ制御部43が変化させる前後で、1つずつ合計2つのビームパタームパターンを算出する。この時のアンテナBの各走査角度の変化量は、あらかじめ設定された値である。この変化量が細かいほど、モータ制御部43は、ビームパターンのナル点での出力値(縦軸)が最小となるようにアンテナBの各走査角度をより精度よく調節できる。そして、演算判定部44は、その2つのビームパターンのナル点の角度(横軸での位置)の変化量や、その2つのビームパターンのナル点での出力値の変化量に基づいて、アンテナBを回動させる方向及び角度を算出する。
【0046】
そして、モータ制御部43は、演算判定部44が算出した方向及び角度に基づいて、アンテナ第1モータ34からアンテナ第3モータ36の各モータを駆動して、アンテナBの各走査角度を調節する。この場合、モータ制御部43は、演算判定部44が今回算出したナル点での出力値の変化量よりも、演算判定部44が次回算出するナル点での出力値の変化量が小さくなるように、アンテナ第1モータ34からアンテナ第3モータ36の各モータの動作を制御する。そして、ナル点での出力値の変化量が0となった場合に、ビームパターンのナル点での出力値(縦軸)が最小となったと判定し、モータ制御部43は、アンテナBの各走査角度の調節を終了する。
【0047】
次に、ステップST104で、記憶部46は、現在のアンテナBの各走査角度、すなわち現在の方位角と、仰俯角と、ロール角とをそれぞれ基準角度(0°)として記憶する。以上の手順を実行することにより、制御解析装置40は基準角度を探索すると共に、基準角度を記憶する。基準角度は、図5に示す一連の手順で制御解析装置40によって用いられる。ここで、基準角度は、本実施形態では制御解析装置40によって自動で探索されるが、例えば、ユーザーによって探索されてもよい。この場合、図3に示す表示装置制御部45は、表示装置49にビームパターンを表示する。アンテナBの各走査角度が変化すると、表示装置49に表示されるビームパターンも変化する。ユーザーは、表示装置49に表示されるビームパターンを目視しつつ、アンテナ第1モータ34からアンテナ第3モータ36の各モータを駆動させる指令を入力装置48に入力する。
【0048】
このようにして、ユーザーは、ビームパターンのナル点での出力値(縦軸)が最小となるように、アンテナBの各走査角度を調節する。そして、ビームパターンのナル点での出力値(縦軸)が最小となった場合、ユーザーは、アンテナBの各走査角度の調整が完了した旨の指令を入力装置48に入力する。図3に示す情報取得部42がこの指令を信号として取得すると、記憶部46は、現在のアンテナBの各走査角度を基準角度として記憶する。この場合であっても、記憶部46は、基準角度を記憶できる。
【0049】
次に、図5に示すボアサイトエラーを計測するための一連の手順を説明する。制御解析装置40が図5に示す一連の手順を実行する際、図2に示すレドームAは、レドーム取付部21aに取り付けられている。また、図2に示すアンテナBは、アンテナ第1支持体31に取り付けられている。図5に示すステップST201で、図3に示すモータ制御部43は、図2に示すレドーム第1モータ23及びレドーム第2モータ24の動作を制御して、レドームAの方位角と、レドームAの仰俯角とを、それぞれ初期角度にする。レドームAの方位角は、レドーム第2モータ24によってレドームAが回動する角度である。レドームAの仰俯角は、レドーム第1モータ23によってアンテナBが回動する角度である。初期角度は、1つの角度に限定されないが、例えば、図1に示すレドームAの中心軸がコンパクトレンジ12に向く角度である。
【0050】
また、ステップST201で、モータ制御部43は、図2に示すアンテナ第1モータ34からアンテナ第3モータ36の各モータの動作を制御して、アンテナBの各走査角度をそれぞれ初期角度にする。初期角度は限定されないが、例えば、図4に示すステップST104で記憶部46が記憶した基準角度である。次に、ステップST202で、図3に示す情報取得部42は、アンテナBから信号を取得する。この時、情報取得部42が取得する信号は、レドームAを透過してアンテナBに到達した第2電波の信号である。次に、図5に示すステップST203で、図3に示す演算判定部44は、ビームパターンを算出する。
【0051】
図7は、レドームによって偏位したビームパターンを示すグラフである。次に、ステップST204で、演算判定部44は、ステップST203で算出した図7に示すビームパターンのナル点の角度と基準角度(0°)との差が所定値以下であるか否かを判定する。前記所定値は、ビームパターンのナル点の角度と基準角度(0°)との差に起因して生じるレーダー装置の誤差が許容できる値となる角度である。理論的には、前記所定値は0°が好ましい。但し、実際には、レドームAの存在によってビームパターンのナル点の角度と基準角度(0°)との間に差が生じる傾向がある。よって、本実施形態では、ビームパターンのナル点の角度と基準角度(0°)との差が所定値以下となった場合、ビームパターンのナル点の角度と基準角度(0°)とが一致したものして取り扱う。
【0052】
ビームパターンのナル点の角度と基準角度(0°)との差が所定値以下ではない場合(ステップST204、No)、ステップST205で、図3に示すモータ制御部43は、ビームパターンのナル点の角度が基準角度(0°)になるように、図2に示すアンテナ第1モータ34からアンテナ第3モータ36の各モータの動作を制御する。すなわち、モータ制御部43は、アンテナBの方位角と、仰腑角と、ロール角とを調節する。まず、演算判定部44は、例えば、ナル点の角度が基準角度から偏位した方向とその偏位量とに基づいて、アンテナBを回動させる方向及び角度を算出する。そして、モータ制御部43は、演算判定部44が算出した方向に、演算判定部44が算出した角度分、アンテナBを回動させる。
【0053】
次に、制御解析装置40は、ステップST202に戻り、ステップST204でビームパターンのナル点の角度と基準角度(0°)との差が所定値以下になるまで、ステップST202からステップST205までの各手順を実行する。本実施形態では、モータ制御部43は、演算判定部44が算出した方向に、演算判定部44が算出した角度分、アンテナBを回動させる。但し、モータ制御部43は、あらかじめ定められた方向に、あらかじめ定められた角度分、アンテナBを回動させてもよい。この場合であっても、ステップST202からステップST205の各手順を繰り返し実行することで、制御解析装置40は、ビームパターンのナル点の角度と基準角度(0°)との差を所定値以下にできる。但し、演算判定部44が、アンテナBを回動させる方向及び角度を算出した方が、制御解析装置40は、ビームパターンのナル点の角度と基準角度(0°)との差をより迅速に所定値以下にしやすくなる。
【0054】
ビームパターンのナル点の角度と基準角度(0°)との差が所定値以下になると(ステップST204、Yes)、ステップST206で、演算判定部44は、ボアサイトエラーを算出する。具体的には、演算判定部44は、現在のアンテナBの各走査角度から基準角度を減算することでボアサイトエラーを算出する。本実施形態では、演算判定部44は、アンテナBの方位角から方位角方向の基準角度を減算することで、ボアサイトエラーBSEazを算出する。また、演算判定部44は、アンテナBの仰俯角から仰俯角方向の基準角度を減算することで、ボアサイトエラーBSEelを算出する。また、演算判定部44は、アンテナBのロール角からロール角方向の基準角度を減算することで、ボアサイトエラーBSErlを算出する。演算判定部44は、以上、3つのボアサイトエラーを算出する。
【0055】
次に、ステップST207で、記憶部46は、現在のレドームAの各角度と、ステップST206で算出した各ボアサイトエラーとをそれぞれ対応付けて記憶する。すなわち、記憶部46は、アンテナBの現在の方位角及びボアサイトエラーBSEazのペアと、アンテナBの現在の仰俯角及びボアサイトエラーBSEelのペアと、アンテナBの現在のロール角及びボアサイトエラーBSErlのペアとを記憶する。次に、ステップST208で、演算判定部44は、レドームAのすべての角度でボアサイトエラーの算出が完了したか否かを判定する。ここでいうレドームAのすべての角度とは、ユーザーがあらかじめ設定した角度である。
【0056】
レドームAのすべての角度でボアサイトエラーの算出が完了していない場合(ステップST208、No)、ステップST209で、モータ制御部43は、図2に示すレドーム第1モータ23とレドーム第2モータ24とのうちの少なくとも1つを駆動させる。そして、モータ制御部43は、ユーザーによってあらかじめ設定された他の角度となるように、レドームAの角度を調節する。次に、制御解析装置40は、ステップST201に戻り、ステップST208でレドームAのすべての角度でボアサイトエラーの算出が完了したと判定されるまで、ステップST201からステップST209までの各手順を実行する。
【0057】
図8は、レドームの各方位角でのボアサイトエラーを示すグラフである。図9は、レドームの各仰俯角でのボアサイトエラーを示すグラフである。レドームAのすべての角度でボアサイトエラーの算出が完了した場合(ステップST208、Yes)、ステップST210で、表示装置制御部45は、記憶部46に記憶されている試験結果を表示装置49に表示させる。試験結果とは、レドームAの各角度とボアサイトエラーとの関係である。具体的には、表示装置制御部45は、図8に示すように、レドームAの各方位角でのボアサイトエラーBSEazを表示したり、図9に示すレドームAの各仰俯角でのボアサイトエラーBSEelを表示したりする。なお、図8及び図9に示すグラフでは、縦軸がボアサイトエラーの大きさであり、横軸がレドームAの角度を示す。図5に示すステップST210を実行すると、制御解析装置40は、一連の手順の実行を終了する。
【0058】
以上の手順を実行することにより、試験装置1は、レドームAの各角度でのボアサイトエラーを試験できる。本実施形態の試験装置1は、図1に示す電波発生装置11の動作を制御する必要がない。よって、制御解析装置40は、図1に示すように、電波発生装置11と電気的に接続されない。制御解析装置40と電気的に接続される装置であるレドーム第1モータ23と、レドーム第2モータ24と、アンテナ第1モータ34と、アンテナ第2モータ35と、アンテナ第3モータ36と、アンテナBとは、すべてがまとめられて配置されている。よって、試験装置1は、制御解析装置40と各装置を電気的に接続する配線の長さを低減できる。
【0059】
上述したように、実際の試験では、制御解析装置40と各装置とを電気的に接続する作業や、制御解析装置40と各装置との電気的な接続を確認する作業が必要になる。これらの作業に要する労力は、制御解析装置40と各装置とを電気的に接続する配線の長さが長くなるほど増大する。しかしながら、本実施形態の試験装置1は、制御解析装置40と各装置とを電気的に接続する配線の長さを低減できる。よって、試験装置1は、レドームのボアサイトエラーをより容易に測定できる。
【0060】
本実施形態では、試験装置1は、図1に示すコンパクトレンジ12を備えるものとして説明したが、試験装置1は、コンパクトレンジ12を含まなくてもよい。但し、この場合、電波発生装置11と、アンテナBとの距離が所定距離以上離れて配置される必要がある。所定距離とは、電波発生装置11から発生された球面波を平面波として取り扱いしてもよい距離である。試験装置1は、上述のように電波発生装置11と電気的に接続されない。よって、コンパクトレンジ12が省略されて電波発生装置11とアンテナBとの距離が増大したとしても、試験装置1は、配線の長さが増大しない。よって、試験装置1は、容易なレドームのボアサイトエラー試験を実現できる。
【0061】
一方、本実施形態の試験装置1は、コンパクトレンジ12を用いた試験にも好適である。以下にその理由を説明する。コンパクトレンジ12は、曲面を含んだ形状をしている。よって、コンパクトレンジ12に導かれる電波のコンパクトレンジ12への入射角度が変化すると、平面で反射した場合よりも、反射した電波の進行方向の変化が大きい。よって、電波発生装置11側が動くと、コンパクトレンジ12で反射した電波の進行方向が変化するおそれがある。よって、この場合、コンパクトレンジ12への電波の入射角度が変化しても、コンパクトレンジ12で反射した電波の進行方向が変化しないように電波発生装置11の動きを調節する必要がある。また、コンパクトレンジ12への電波の入射角度が変化すると、コンパクトレンジ12が、球面波を正しく平面波に変換できないおそれもある。
【0062】
しかしながら、本実施形態の試験装置1は、電波発生装置11が動かずに、アンテナBが動く。よって、コンパクトレンジ12への電波の入射角度は変化しないため、コンパクトレンジ12で反射した電波の進行方向が変化するおそれを低減できる。このように、試験装置1は、コンパクトレンジ12で反射した電波の進行方向が変化しないように電波発生装置11の動きを調節する必要がない。よって、試験装置1は、レドームのボアサイトエラーをより容易に測定できる。また、試験装置1は、コンパクトレンジ12への電波の入射角度が変化しないため、コンパクトレンジ12が球面波を正しく平面波に変換できないおそれも低減できる。
【0063】
図2に示す本実施形態のレドーム支持装置20は、X軸と、Y軸との2つの軸を中心に、レドームAが回動できるようにレドームAを支持する。但し、レドーム支持装置20は、Y軸に直交するレドーム第3軸を中心にレドームAが回動するように、レドームAを支持してもよい。なお、試験装置1は、レドームAのロール角と、アンテナBのロール角とのうちの少なくとも一方が変化すれば、レドームAのアンテナBに対する相対的なロール角の変化に起因するボアサイトエラーの試験を実現できる。よって、レドーム支持装置20がレドーム第3軸を中心にレドームAが回動できるようにレドームAを支持する場合、アンテナ支持装置30は、Z軸を中心にアンテナBが回動できるようにアンテナBを支持する必要はない。
【0064】
また、レドーム支持装置20は、X軸と、Y軸と、レドーム第3軸とのうち、少なくとも1つを中心にレドームAが回動できるようにレドームAを支持できればよい。また、アンテナ支持装置30は、X軸と、Y軸と、Z軸とのうち、少なくとも1つを中心にアンテナBが回動できるようにアンテナBを支持できればよい。それぞれ1つの軸を中心にレドームAとアンテナBとが回動する場合、演算判定部44は、レドームAの各角度別に、ボアサイトエラーをその都度算出すればよい。但し、それぞれ1つの軸のみを中心にレドームAとアンテナBとが回動する場合、ユーザーは、レドーム支持装置20やアンテナ支持装置30の姿勢を変えたり、レドーム支持装置20へのレドームAの取り付け角度を変えたり、アンテナ支持装置30へのアンテナBの取り付け角度を変えたりする必要がある。試験装置1は、レドームAとアンテナBとがそれぞれ複数の軸を中心に回動できるように支持されることで、ユーザーに要するこれらの作業を低減できる。
【0065】
図10は、他のアンテナで受信した電波のビームパターンを示すグラフである。ここで、図3に示す演算判定部44は、図10に示すようにアンテナBが受信した電波の和信号でビームパターンを算出してもよい。例えば、アンテナBがモノパルスアンテナではない場合、情報取得部42は、電波の差信号をアンテナBから取得できない。このような場合、演算判定部44は、図10に示すようなビームパターン(和パターン)を算出する。この場合、レドームAを透過せずにアンテナBに到達した電波と、レドームAを透過してアンテナBに到達した電波とでは、ビームパターンのピーク点、すなわち出力値が最大となる角度が偏位する。モータ制御部43は、この偏位量を0となるように、アンテナBの各走査角度を調節する。この場合であっても、試験装置1は、アンテナBがモノパルスアンテナである場合と同様に、レドームAのボアサイトエラーをより容易に測定できる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上のように、本発明に係るレドームのボアサイトエラー試験装置及びレドームのボアサイトエラー試験方法は、レドームに起因するボアサイトエラーの測定に有用であり、特に、レドームのボアサイトエラーをより容易に測定することに適している。
【符号の説明】
【0067】
1 試験装置
11 電波発生装置
12 コンパクトレンジ
20 レドーム支持装置
21 レドーム第1支持体
21a レドーム取付部
21b 開口
22 レドーム第2支持体
23 レドーム第1モータ
24 レドーム第2モータ
25 台座
25a 脚部
25b 天板部
30 アンテナ支持装置
31 アンテナ第1支持体
32 アンテナ第2支持体
33 アンテナ第3支持体
34 アンテナ第1モータ
35 アンテナ第2モータ
36 アンテナ第3モータ
40 制御解析装置
41 処理部
42 情報取得部
43 モータ制御部
44 演算判定部
45 表示装置制御部
46 記憶部
48 入力装置
49 表示装置
A レドーム
B アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を発生する電波発生装置と、
前記電波発生装置が発生した電波を受信するアンテナを覆うためのレドームが取り付けられ、前記アンテナに到達した電波に対する前記レドームの角度を変更できるように前記レドームを支持するレドーム支持装置と、
前記アンテナが取り付けられ、前記レドームとは別に前記アンテナの走査角度を変更できるように前記アンテナを支持するアンテナ支持装置と、
前記アンテナが受信した電波を信号として取得し、前記信号に基づいてビームパターンを算出する解析装置と、
を備えることを特徴とするレドームのボアサイトエラー試験装置。
【請求項2】
前記電波発生装置からの前記電波を反射すると共に球面波である前記電波を平面波に変換し、前記平面波を前記アンテナへと導くコンパクトレンジをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のレドームのボアサイトエラー試験装置。
【請求項3】
前記解析装置は、
前記アンテナが前記レドームに覆われていない際に前記アンテナに到達した第1電波のビームパターンと、前記アンテナが前記レドームに覆われている際に前記アンテナに到達した第2電波のビームパターンと、の差である偏位量を算出し、
前記アンテナが前記第1電波を受信した際の前記アンテナの走査角度と、前記偏位量が所定値以下になる際の前記アンテナの走査角度と、の差をボアサイトエラーとして算出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレドームのボアサイトエラー試験装置。
【請求項4】
前記アンテナは、前記アンテナに到達した電波を少なくとも2箇所で受信し、
前記解析装置は、
前記アンテナの異なる箇所で受信した前記電波の差信号で前記第1電波のビームパターン及び前記第2電波のビームパターンを算出し、
前記第1電波のビームパターンのナル点の角度と、前記第2電波のビームパターンのナル点の角度と、の差に基づいて前記偏位量を算出することを特徴とする請求項3に記載のレドームのボアサイトエラー試験装置。
【請求項5】
前記解析装置は、
前記アンテナが受信した前記電波の和信号で前記第1電波のビームパターン及び前記第2電波のビームパターンを算出し、
前記第1電波のビームパターンのピーク点の角度と、前記第2電波のビームパターンのピーク点の角度と、の差に基づいて前記偏位量を算出することを特徴とする請求項3に記載のレドームのボアサイトエラー試験装置。
【請求項6】
前記アンテナ支持装置は、前記アンテナを回動させるアンテナ回動手段を有し、
前記レドームのボアサイトエラー試験装置は、前記偏位量が所定値以下になるように、前記アンテナ回動手段の動作を制御するアンテナ回動手段制御装置をさらに備えることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか一項に記載のレドームのボアサイトエラー試験装置。
【請求項7】
前記レドーム支持装置は、前記レドームを回動させるレドーム回動手段を有し、
前記レドームのボアサイトエラー試験装置は、前記レドーム回動手段の動作を制御するレドーム回動手段制御装置をさらに備え、
前記解析装置は、前記レドーム回動手段制御装置が前記レドームを回動させて前記電波に対する前記レドームの角度を変更すると、その角度での前記ボアサイトエラーを算出することを特徴とする請求項3から請求項6のいずれか一項に記載のレドームのボアサイトエラー試験装置。
【請求項8】
前記アンテナ支持装置は、
アンテナ第1軸と、前記アンテナ第1軸に直交するアンテナ第2軸と、前記アンテナ第2軸に直交するアンテナ第3軸と、のうちの少なくとも1つを中心に前記アンテナが回動できるように、前記アンテナを支持することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のレドームのボアサイトエラー試験装置。
【請求項9】
前記レドーム支持装置は、
レドーム第1軸と、前記レドーム第1軸に直交するレドーム第2軸と、前記レドーム第2軸に直交するレドーム第3軸と、のうちの少なくとも1つを中心に前記レドームが回動できるように、前記レドームを支持することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のレドームのボアサイトエラー試験装置。
【請求項10】
アンテナがレドームに覆われていない際に前記アンテナに到達した到達した第1電波のビームパターンを算出し、
前記アンテナが前記レドームに覆われている際に前記アンテナに到達した第2電波のビームパターンを算出し、
前記第1電波のビームパターンと、前記第2電波のビームパターンとの差である偏位量が所定値以下になるように前記アンテナの走査角度を調節し、
前記第1電波を受信した際の前記アンテナの走査角度と、前記偏位量が所定値以下になる際の前記アンテナの走査角度との差をボアサイトエラーとして算出することを特徴とするレドームのボアサイトエラー試験方法。
【請求項11】
前記電波に対する前記レドームの角度を変化させ、
前記レドームの角度別に前記ボアサイトエラーを算出することを特徴とする請求項10に記載のレドームのボアサイトエラー試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−122892(P2011−122892A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279736(P2009−279736)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】