説明

レベルシフト回路

【課題】レベルシフト回路のデータレートの変化時に発生するスキューを抑制する。
【解決手段】一つの実施形態によれば、レベルシフト回路には第1及び第2のレベルシフタが設けられる。第1のレベルシフタは、第1乃至4のトランジスタが設けられ、レベルシフトされた第1の出力信号を出力する。第2のレベルシフタは、第5乃至8のトランジスタが設けられ、レベルシフトされた第1の出力信号とは逆位相の第2の出力信号を出力する。第1の入力信号が入力される第1のトランジスタと差動対をなす第2のトランジスタに、第1の入力信号とは逆位相のハイレベルの第2の入力信号が入力されると第3及び4のトランジスタも同時にオンする。第2の入力信号が入力される第5のトランジスタと差動対をなす第6のトランジスタに、ハイレベルの第1の入力信号が入力されると第7及び8のトランジスタも同時にオンする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、レベルシフト回路に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などから構成され、論理回路や順序回路を備える半導体集積回路(LSI)には、異なる高電位側電源間で、信号レベルをレベルシフトするレベルシフト回路が設けられる。レベルシフト回路には、低電圧で差動入力信号が入力される、例えばLVDS(Low Voltage Differential Signaling)に準拠した差動レベルシフト回路がある。
【0003】
近年、差動レベルシフト回路はデータレートが高速化されている。高速化された差動レベルシフト回路では、データレートが変化するとスキュー(Skew)が増大するという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6288580号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、データレートの変化時に発生するスキューを抑制することができるレベルシフト回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの実施形態によれば、レベルシフト回路は、第1の電圧レベルを有する第1の入力信号と第1の電圧レベルを有して第1の電圧レベルとは逆位相の第2の入力信号が入力され、第2の電圧レベルを有してレベルシフトされた第1の出力信号を出力する第1のレベルシフタと、第1及び第2の入力信号が入力され、第2の電圧レベルを有して第1の出力信号とは逆位相のレベルシフトされた第2の出力信号を出力する第2のレベルシフタとを有する。第1のレベルシフタは、第1乃至4のトランジスタが設けられる。第1のトランジスタは、ゲートに第1の入力信号が入力される。第2のトランジスタは、第1のトランジスタとは差動対をなし、ゲートに第2の入力信号が入力され、ドレイン側から第1の出力信号を出力する。第3のトランジスタは、ゲートに第2の入力信号が入力され、ドレインが第1のトランジスタのドレインに接続され、ソースが第1のトランジスタのソースに接続される。第4のトランジスタは、ゲートに第2の入力信号が入力され、ドレインが第2のトランジスタのドレインに接続され、ソースが第2のトランジスタのソースに接続される。第2のレベルシフタは、第5乃至8のトランジスタが設けられる。第5のトランジスタは、ゲートに第2の入力信号が入力される。第6のトランジスタは、第5のトランジスタとは差動対をなし、ゲートに第1の入力信号が入力され、ドレイン側から第2の出力信号を出力する。第7のトランジスタは、ゲートに第1の入力信号が入力され、ドレインが第5のトランジスタのドレインに接続され、ソースが第5のトランジスタのソースに接続される。第8のトランジスタは、ゲートに第1の入力信号が入力され、ドレインが第6のトランジスタのドレインに接続され、ソースが第6のトランジスタのソースに接続される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第一の実施形態に係るLVDSドライバの構成を示すブロック図である。
【図2】第一の実施形態に係るレベルシフト回路部の構成を示す回路図である。
【図3】第一の実施形態に係る比較例のLVDSドライバに使用されるレベルシフト回路を示す回路図である。
【図4】第一の実施形態に係るデータレートとスキューの関係を説明する図である。
【図5】第一の実施形態に係るレベルシフト回路で発生するスキューを説明する図である。
【図6】第一の実施形態に係るレベルシフト回路の平均消費電流を説明する図である。
【図7】変形例のレベルシフト回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0009】
(第一の実施形態)
まず、本発明の第一の実施形態に係るレベルシフト回路について、図面を参照して説明する。図1はLVDSドライバの構成を示すブロック図である。図2はレベルシフト回路部の構成を示す回路図、図2(a)は第1のレベルシフタを示す回路図、図2(b)は第2のレベルシフタを示す回路図である。図3は比較例のLVDSドライバに使用されるレベルシフト回路を示す回路図である。本実施形態では、データレートの変化時に発生するスキュー(Skew)を抑制するために、レベルシフト回路に差動段と相対向する中間段部を構成する2つのトランジスタを設けている。
【0010】
図1に示すように、LVDSドライバ90には、差動信号発生部1、レベルシフト回路2、バッファ3、バッファ4、及び主ドライバ5が設けられる。LVDSドライバ90は、例えばLCD(liquid crystal display)などに適用される。LVDS(low voltage differential signaling)は、高速インターフェースの一種であり、信号振幅の小さな差動伝送方式である。
【0011】
差動信号発生部1には、第1の高電位側電源VDD1が供給される。レベルシフト回路2、バッファ3、バッファ4、及び主ドライバ5には、第1の高電位側電源VDD1とは電圧値が異なる第2の高電位側電源VDD2が供給される。ここでは、例えば第1の高電位側電源VDD1電圧は1.1Vに、第2の高電位側電源VDD2電圧は3.3Vにそれぞれ設定される。
【0012】
差動信号発生部1には、インバータ1乃至4、及びタイミング調整部TG1が設けられる。差動信号発生部1は、例えばシステムLSIチップのコアから出力されるPRBS(pseudo random bit sequence 擬似ランダムビット列)データである入力信号Svinが入力され、第1の差動信号と第1の差動信号とは逆位相の第2の差動信号を生成する。入力信号Svinは、例えば数十Mbps以上の高速データ信号である。
【0013】
インバータINV1は、入力信号Svinが入力され、入力信号Svinを反転した信号をノードN1から出力する。インバータINV2は、ノードN1の信号が入力され、ノードN1の信号を反転した信号をノードN2から出力する。インバータINV3は、ノードN2の信号が入力され、ノードN2の信号を反転した信号をノードN3から出力する。
【0014】
タイミング調整部TG1は、インバータINV1とインバータINV4の間に設けられる。タイミング調整部TG1はタイミングを調整し、例えばノードN1の信号を所定時間遅延させてノードN2の信号とは逆位相の信号をノードN4から出力する。タイミング調整部TG1には、遅延回路としてのインバータやバッファ、或いは遅延素子などが使用される。インバータINV4は、ノードN4の信号が入力され、ノードN4の信号を反転した信号をノードN5から出力する。ノードN5の信号は、ノードN3の信号とは逆位相の信号である。
【0015】
レベルシフト回路2は、差動信号発生部1とバッファ3及び4の間に設けられる。レベルシフト回路2には、第1のレベルシフタLS1と第2のレベルシフタLS2が設けられる。第1のレベルシフタLS1は、ノードN3の信号である入力信号Sinpが入力ポートINAに入力され、ノードN5の信号である入力信号Sinnが入力ポートINBに入力され、出力側のノードN6からレベルシフトされた信号Sout1を出力する。第2のレベルシフタLS2は、ノードN5の信号である入力信号Sinnが入力ポートINAに入力され、ノードN3の信号である入力信号Sinpが入力ポートINBに入力され、出力側のノードN8からレベルシフトされ、信号Sout1とは逆位相の信号Sout2を出力する。
【0016】
図2(a)に示すように、第1のレベルシフタLS1には、Pch MOSトランジスタPMT1、Pch MOSトランジスタPMT2、Nch MOSトランジスタNMT1、Nch MOSトランジスタNMT2、及び中間段部11が設けられる。
【0017】
Pch MOSトランジスタPMT1は、ソースが第2の高電位側電源VDD2に接続され、ゲートがドレイン及びノードN11に接続される。Pch MOSトランジスタPMT2は、ソースが第2の高電位側電源VDD2に接続され、ゲートがPch MOSトランジスタPMT1のゲートに接続され、ドレインがノードN6に接続される。Pch MOSトランジスタPMT1及びPMT2はカレントミラー回路を構成する。
【0018】
Nch MOSトランジスタNMT1は、ドレインがノードN11に接続され、ゲートに入力信号Sinpが入力され、ソースが低電位側電源(接地電位)VSSに接続される。Nch MOSトランジスタNMT2は、ドレインがノードN6に接続され、ゲートに入力信号Sinnが入力され、ソースが低電位側電源(接地電位)VSSに接続される。Nch MOSトランジスタNMT1とNch MOSトランジスタNMT2は差動対を構成する。
【0019】
中間段部11には、Nch MOSトランジスタNMT3とNch MOSトランジスタNMT4が設けられる。
【0020】
Nch MOSトランジスタNMT3は、ドレインがノードN11及びNch MOSトランジスタNMT1のドレインに接続され、ゲートに入力信号Sinnが入力され、ソースが低電位側電源(接地電位)VSSに接続される。Nch MOSトランジスタNMT4は、ドレインがノードN6及びNch MOSトランジスタNMT2のドレインに接続され、ゲートに入力信号Sinnが入力され、ソースが低電位側電源(接地電位)VSSに接続される。
【0021】
中間段部11を構成するNch MOSトランジスタNMT3及びNMT4は、入力信号Sinnがハイレベルのとき、Nch MOSトランジスタNMT2とともにオンしてノードN11及びN6を低電位側電源(接地電位)VSSに設定する役目をする。中間段部11は、入力信号Svinのデータレートが変化したとき、レベルシフト回路2から出力される出力信号Sout1のスキュー(Skew)を抑制する動作をする。Nch MOSトランジスタNMT2のドレイン側(ノードN6)から、レベルシフトされ、スキュー(Skew)が抑制された出力信号Sout1が出力される。
【0022】
図2(b)に示すように、第2のレベルシフタLS2には、Pch MOSトランジスタPMT3、Pch MOSトランジスタPMT4、Nch MOSトランジスタNMT5、Nch MOSトランジスタNMT6、及び中間段部12が設けられる。第2のレベルシフタLS2は、第1のレベルシフタLS1とは入力信号が逆に入力されるが、回路構成は第1のレベルシフタLS1と同様である。
【0023】
Pch MOSトランジスタPMT3は、ソースが第2の高電位側電源VDD2に接続され、ゲートがドレイン及びノードN13に接続される。Pch MOSトランジスタPMT4は、ソースが第2の高電位側電源VDD2に接続され、ゲートがPch MOSトランジスタPMT3のゲートに接続され、ドレインがノードN8に接続される。Pch MOSトランジスタPMT3及びPMT4はカレントミラー回路を構成する。
【0024】
Nch MOSトランジスタNMT5は、ドレインがノードN13に接続され、ゲートに入力信号Sinnが入力され、ソースが低電位側電源(接地電位)VSSに接続される。Nch MOSトランジスタNMT6は、ドレインがノードN8に接続され、ゲートに入力信号Sinpが入力され、ソースが低電位側電源(接地電位)VSSに接続される。Nch MOSトランジスタNMT5とNch MOSトランジスタNMT6は差動対を構成する。
【0025】
中間段部12には、Nch MOSトランジスタNMT7とNch MOSトランジスタNMT8が設けられる。
【0026】
Nch MOSトランジスタNMT7は、ドレインがノードN13及びNch MOSトランジスタNMT5のドレインに接続され、ゲートに入力信号Sinpが入力され、ソースが低電位側電源(接地電位)VSSに接続される。Nch MOSトランジスタNMT8は、ドレインがノードN8及びNch MOSトランジスタNMT6のドレインに接続され、ゲートに入力信号Sinpが入力され、ソースが低電位側電源(接地電位)VSSに接続される。
【0027】
中間段部12を構成するNch MOSトランジスタNMT7及びNMT8は、入力信号Sinpがハイレベルのとき、Nch MOSトランジスタNMT6とともにオンしてノードN13及びN8を低電位側電源(接地電位)VSSに設定する役目をする。中間段部12は、入力信号Svinのデータレートが変化したとき、レベルシフト回路2から出力される出力信号Sout2のスキュー(Skew)を抑制する動作をする。Nch MOSトランジスタNMT6のドレイン側(ノードN8)から、レベルシフトされ、スキュー(Skew)が抑制された出力信号Sout2が出力される。
【0028】
カレントミラー回路を構成するPch MOSトランジスタPMT1乃至4と、差動対を構成するNch MOSトランジスタNMT1、2、5、6と、中間段を構成するNch MOSトランジスタNMT3、4、7、8との関係は、レベルシフト回路2の平均消費電流とデータレートの変化時に発生するスキュー(Skew)の関係を考慮して設計する必要がある。
【0029】
データレートの変化時に発生するスキュー(Skew)を小さくするには、中間段のトランジスタを差動対のトランジスタよりもゲート長(Lg)を小さくする、或いはゲート幅(Wg)を大きくする。一方、レベルシフト回路2の平均消費電流の増加を抑制するには、中間段のトランジスタを差動対のトランジスタよりもゲート長(Lg)を大きくする、或いはゲート幅(Wg)を小さくする。
【0030】
ここでは、カレントミラー回路を構成するトランジスタ(Pch MOSトランジスタPMT1乃至4)のゲート長をLg1、差動対を構成するトランジスタ(Nch MOSトランジスタNMT1、2、5、6)のゲート長をLg2、中間段を構成するトランジスタ(Nch MOSトランジスタNMT3、4、7、8)のゲート長をLg3、カレントミラー回路を構成するトランジスタのゲート幅をWg1、差動対を構成するトランジスタのゲート長Wg2、中間段中間段を構成するトランジスタ(Nch MOSトランジスタNMT3、4、7、8)のゲート幅をWg3とすると、
Lg1≧Lg2>Lg3・・・・・・・・・・・・・・・・・・・式(1)
Wg1≧Wg2>Wg3・・・・・・・・・・・・・・・・・・式(2)
(Wg1/Lg1)≧(Wg2/Lg2)>(Wg3/Lg3) ・・・・・・・・・式(3)
に設定している。
【0031】
即ち、式(1)のように中間段を構成するトランジスタのゲート長(Lg)をカレントミラー回路を構成するトランジスタ及び差動対を構成するトランジスタのゲート長(Lg)よりも小さくすることにより、カレントミラー回路を構成するトランジスタ及び差動対を構成するトランジスタよりもスイッチング速度を向上することができる。したがって、データレートの変化時に発生するスキュー(Skew)を大幅に抑制することができる。
【0032】
例えば、カレントミラー回路を構成するトランジスタ及び差動対を構成するトランジスタのゲート長(Lg)を90nmに、中間段を構成するトランジスタのゲート長(Lg)を65nmに、それぞれ設定している。
【0033】
また、レベルシフト回路2の平均消費電流の増加を抑制するために、式(3)のように中間段を構成するトランジスタのゲート幅(Wg)/ゲート長(Lg)をカレントミラー回路を構成するトランジスタ及び差動対を構成するトランジスタのゲート幅(Wg)/ゲート長(Lg)よりも小さくすることにより、中間段で発生する平均消費電流を大幅に抑制することができる。
【0034】
第1のバッファ3は、第1のレベルシフタLS1と主ドライバ5の間に設けられる。第1のバッファ3は、出力信号Sout1が入力され、出力信号Sout1をドライブした信号をノードN7側から出力する。第2のバッファ4は、第2のレベルシフタLS2と主ドライバ5の間に設けられる。第2のバッファ4は、出力信号Sout2が入力され、出力信号Sout2をドライブした信号をノードN9側から出力する。
【0035】
主ドライバ5は、ノードN7の信号が入力ポートINAに入力され、ノードN9の信号が入力ポートINBに入力される。主ドライバ5は、レベルシフトされ、ドライブされた出力信号Svoutpを出力し、レベルシフトされ、ドライブされ、出力信号Svoutpとは逆位相の出力信号Svoutnを出力する。
【0036】
比較例のLVDSドライバでは、レベルシフト回路の構成を本実施例とは別構成にしている。
【0037】
図3(a)、(b)に示すように、比較例のレベルシフト回路は、第1のレベルシフタLS11と第2のレベルシフタLS12が設けられる。図3(a)に示すように、第1のレベルシフタLS11は本実施形態の第1のレベルシフタLS1から中間段部11を削除したものである。図3(b)に示すように、第2のレベルシフタLS12は本実施形態の第2のレベルシフタLS2から中間段部12を削除したものである。
【0038】
次に、レベルシフト回路の動作について図4を参照して説明する。図4はデータレートとスキューの関係を説明する図である。
【0039】
入力側(PRBS)の入力信号Sinp、Sinnが1.1Vp−pで、レベルシフトされた出力信号Sout1、Sout2が3.3Vp−pで、データレート(DR)がα(Mbps)で、データレート(DR)がn倍(n>0、例えば・・・・1/4、1/3、1/2、・・・、2、3、4・・・・)に変化したとき、スキュー(Skew)が発生する。
【0040】
図4に示すように、スキュー(Skew)は、
Skew(P−N=0)=PD RISE−PD FALL・・・・・・・・・・式(4)
Skew(P−N=0)≒β×(1/DR)・・・・・・・・・・・・・・式(5)
で表せる。ここで、PD RISEとは入力信号Sinpに対する出力信号Sout1の立ち上がりでの遅延時間(秒)である。PD FALLとは入力信号Sinpに対する出力信号Sout1の立ち下がりでの遅延時間(秒)である。
【0041】
βはスキュー(Skew)の係数であり、レベルシフト回路の構成に依存するパラメータである。スキュー(Skew)はβの値が大きいほど大きくなり、βの値を小さくすることにより抑制することができる。ここでは、入力信号Sinpについて説明しているが、入力信号Sinnについても同様であり、入力信号Sinnについては説明を省略する。
【0042】
本実施形態のレベルシフト回路2では、スキュー(Skew)を抑制するために中間段部11、12を設けているので、本実施形態のレベルシフト回路2のスキュー(Skew)の係数をβ1、比較例のレベルシフト回路のスキュー(Skew)の係数をβ2とすると、
β1<<β2・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・式(6)
で表される。
【0043】
次に、レベルシフト回路のスキューと平均消費電流について図6及び図7を参照して説明する。ここでは、データレートは、1000Mbpsから200Mbpsに変化した場合であり、nの値は5である。
【0044】
図5はレベルシフト回路で発生するスキューを説明する図である。図5に示すように、本実施形態のスキュー(0.26ps)は、カレントミラー回路及び差動対を構成するトランジスタの形状を同一にしている比較例1のスキュー(5.6ps)に対して(1/21)であり、中間段部11及び12を設けているので比較例1よりも非常に小さな値となる。
【0045】
また、本実施形態のスキュー(0.26ps)は、本実施形態に対してカレントミラー回路を構成するトランジスタの(Wg/Lg)を2倍、差動対を構成するトランジスタの(Wg/Lg)を10倍にした比較例2のスキュー(1.5ps)に対して(1/5.5)である。つまり、単にカレントミラー回路と差動対を構成するトランジスタを大きくするだけではスキューを大幅に抑制することができない。本実施形態では中間段部11、12を構成する比較的形状の小さなトランジスタを追加するだけでスキューを大幅に抑制している。
【0046】
図6はレベルシフト回路の平均消費電流を説明する図である。図6に示すように、本実施形態の平均消費電流(0.54mA)は、カレントミラー回路及び差動対を構成するトランジスタの形状を同一にしている比較例1の平均消費電流(0.41mA)に対して、中間段部11、12で平均消費電流が流れるが増加分が少なく1.25倍しか増加していない。
【0047】
また、本実施形態の平均消費電流(0.54mA)は、本実施形態に対してカレントミラー回路を構成するトランジスタの(Wg/Lg)を2倍、差動対を構成するトランジスタの(Wg/Lg)を10倍にした比較例2の平均消費電流(3.74mA)に対して(1/6.9)である。つまり、中間段部11、12を構成する比較的形状の小さなトランジスタを追加するだけでスキューを大幅に抑制しながら、平均消費電流の増加を抑制することができる。
【0048】
上述したように、本実施形態のレベルシフト回路では、第1のレベルシフタLS1と第2のレベルシフタLS2が設けられる。第1のレベルシフタLS1には、Pch MOSトランジスタPMT1、Pch MOSトランジスタPMT2、Nch MOSトランジスタNMT1、Nch MOSトランジスタNMT2、及び中間段部11が設けられる。中間段部11には、Nch MOSトランジスタNMT3、NMT4が設けられる。第2のレベルシフタLS2には、Pch MOSトランジスタPMT3、Pch MOSトランジスタPMT4、Nch MOSトランジスタNMT5、Nch MOSトランジスタNMT6、及び中間段部12が設けられる。中間段部12には、Nch MOSトランジスタNMT7、NMT8が設けられる。第1のレベルシフタLS1は、入力ポートINAに入力信号Sinpが入力され、入力ポートINBに入力信号Sinpの逆位相の入力信号Sinnが入力され、レベルシフトされた出力信号Sout1を出力する。Nch MOSトランジスタNMT3、NMT4は、入力信号Sinnがハイレベルのとき、Nch MOSトランジスタNMT2とともにオンする。第2のレベルシフタLS2は、入力ポートINAに入力信号Sinnが入力され、入力ポートINBに入力信号Sinpが入力され、レベルシフトされた出力信号Sout1の逆位相の出力信号Sout2を出力する。Nch MOSトランジスタNMT7、NMT8は、入力信号Sinpがハイレベルのとき、Nch MOSトランジスタNMT6とともにオンする。
【0049】
このため、データレートが変化したときに中間段部11及び12が動作してスキュー(Skew)を大幅に抑制することができる。また、中間段部11及び12を構成するトランジスタの(Wg/Lg)をカレントミラー回路や差動対を構成するトランジスタの(Wg/Lg)よりも小さくしているのでレベルシフト回路2の平均消費電流の増加を抑制することができる。
【0050】
なお、本実施の形態ではレベルシフタLS1の差動対をNch MOSトランジスタNMT1及びNMT2から構成し、レベルシフタLS1のカレントミラー回路をPch MOSトランジスタPMT1及びPMT2から構成し、レベルシフタLS2の差動対をNch MOSトランジスタNMT5及びNMT6から構成し、レベルシフタLS2のカレントミラー回路をPch MOSトランジスタPMT3及びPMT4から構成しているが必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、図7に示すように、レベルシフト回路LS21(比較例)にPch MOSトランジスタPMT11及びPMT12から構成される差動対、Pch MOSトランジスタPMT13及びPMT14から構成される中間段部21、Nch MOSトランジスタNMT11及びNMT12から構成されるカレントミラー回路を設けてもよい。
【0051】
また、差動対をなすNch MOSトランジスタNMT1及びNMT2と低電位側電源(接地電位)VSSの間に電流源を設けてもよい。
【0052】
また、レベルシフト回路をNch MOSトランジスタ及びPch MOSトランジスタから構成(CMOS構成)しているが必ずしもこれに限定されるものではない。BiCMOSやバイポーラトランジスタなどから構成してもよい。また、カレントミラー回路の代わりに抵抗を用いてもよい。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1 差動信号発生部
2 レベルシフト回路
3、4 バッファ
5 主ドライバ
11、12、21 中間段部
90 LVDSドライバ
INA、INB 入力ポート
INV1〜4 インバータ
LS1、LS2、LS11、LS12、LS21 レベルシフタ
N1〜9、N11、N13、N21、N22 ノード
NMT1〜8、NMT11、NMT12 Nch MOSトランジスタ
PMT1〜4、PMT11〜14 Pch MOSトランジスタ
Sinn、Sinp、Svin 入力信号
Sout1、Sout2、Svoutp、Svoutn 出力信号
TG1 タイミング調整部
VDD 高電位側電源
VSS 低電位側電源(接地電位)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電圧レベルを有する第1の入力信号と前記第1の電圧レベルを有して前記第1の電圧レベルとは逆位相の第2の入力信号が入力され、第2の電圧レベルを有してレベルシフトされた第1の出力信号を出力する第1のレベルシフタと、前記第1及び第2の入力信号が入力され、前記第2の電圧レベルを有して前記第1の出力信号とは逆位相のレベルシフトされた第2の出力信号を出力する第2のレベルシフタとを有するレベルシフト回路であって、
前記第1のレベルシフタは、
ゲートに前記第1の入力信号が入力される第1のトランジスタと、
前記第1のトランジスタとは差動対をなし、ゲートに前記第2の入力信号が入力され、ドレイン側から前記第1の出力信号を出力する第2のトランジスタと、
ゲートに前記第2の入力信号が入力され、ドレインが前記第1のトランジスタのドレインに接続され、ソースが前記第1のトランジスタのソースに接続される第3のトランジスタと、
ゲートに前記第2の入力信号が入力され、ドレインが前記第2のトランジスタのドレインに接続され、ソースが前記第2のトランジスタのソースに接続される第4のトランジスタと
を具備し、
前記第2のレベルシフタは、
ゲートに前記第2の入力信号が入力される第5のトランジスタと、
前記第5のトランジスタとは差動対をなし、ゲートに前記第1の入力信号が入力され、ドレイン側から前記第2の出力信号を出力する第6のトランジスタと、
ゲートに前記第1の入力信号が入力され、ドレインが前記第5のトランジスタのドレインに接続され、ソースが前記第5のトランジスタのソースに接続される第7のトランジスタと、
ゲートに前記第1の入力信号が入力され、ドレインが前記第6のトランジスタのドレインに接続され、ソースが前記第6のトランジスタのソースに接続される第8のトランジスタと
を具備することを特徴とするレベルシフト回路。
【請求項2】
前記第3及び第4のトランジスタの(ゲート幅/ゲート長)は前記第1及び第2のトランジスタの(ゲート幅/ゲート長)よりも小さく、前記第7及び第8のトランジスタの(ゲート幅/ゲート長)は、前記第5及び第6のトランジスタの(ゲート幅/ゲート長)よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のレベルシフト回路。
【請求項3】
前記第1乃至8のトランジスタはNch MOSトランジスタであることを特徴とする請求項2に記載のレベルシフト回路。
【請求項4】
高電位側電源と前記第1及び第3のトランジスタの間に設けられ、ゲートがドレインに接続される第1のPch MOSトランジスタと、
前記高電位側電源と前記第2及び第4のトランジスタの間に設けられ、ゲートが第1のPch MOSトランジスタのゲートに接続され、前記第1のPch MOSトランジスタとカレントミラー回路を構成する第2のPch MOSトランジスタと、
前記高電位側電源と前記第5及び第7のトランジスタの間に設けられ、ゲートがドレインに接続される第3のPch MOSトランジスタと、
前記高電位側電源と前記第6及び第8のトランジスタの間に設けられ、ゲートが第3のPch MOSトランジスタのゲートに接続され、前記第3のPch MOSトランジスタとカレントミラー回路を構成する第4のPch MOSトランジスタと、
を更に具備することを特徴とする請求項3に記載のレベルシフト回路。
【請求項5】
前記第1乃至8のトランジスタはPch MOSトランジスタであることを特徴とする請求項2に記載のレベルシフト回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−195911(P2012−195911A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60340(P2011−60340)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】