説明

レリーフ画像印刷版の前露光方法

【課題】感光性樹脂組成物における溶解酸素を抑制する/取り除く様々な方法が提案されているが、当該技術分野において、特にCTP(computer−to−plate)プロセスで、溶解酸素を取り除く改良された方法の提供。
【解決手段】像様露光の前に感光層から酸素を取り除くために像様露光前に感光性印刷要素を選択的に前露光する方法である。本発明は、CTPプロセスで使用でき、フレキソレリーフ画像印刷要素を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像様露光前に感光性印刷要素を選択的に前露光する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキソ印刷は、厚紙、袋、ラベル、若しくは本等に印刷するためにゴム又は感光性ポリマーの版に弾性レリーフ画像を使用する直接輪転印刷方法である。フレキソ印刷は、新聞製造や、包装材の装飾的な印刷に広く使用される。感光性印刷版、及び円柱状印刷スリーブは、早くて安価な処理、及び印刷機の長時間運転の要求を満たすように開発されている。
【0003】
技術が成熟するにつれて、フレキソ版を用いて印刷された物の品質は著しく向上してきているが、版にレリーフ画像を作製するプロセスに関しては物理的制限がある。特に、抜き文字(open Reverse text)やシャドーを維持しながら、フレキソ印刷版を使用して、微細なドット、線、更にはテキスト等の小さな図形要素を印刷するのは非常に難しい。画像の最も明るい領域(一般的にハイライトと言われる)において、画像の濃度は、連続階調画像のハーフトーンスクリーン表示におけるドットの全領域で表される。振幅変調(AM)スクリーニングは、一定の周期的に並んだ格子上に位置する複数のハーフトーンのドットが非常に小さく縮むことを伴い、ハイライトの濃度がドット領域で表される。周波数変調(FM)スクリーニングは、ハーフトーンドットの大きさが、概して、いくつかの固定値で維持され、ランダム又は擬似ランダムに配置されたドットの数が画像の濃度を表す。どちらの場合も、ハイライト領域を適切に表すために、非常に小さなドットを印刷する必要がある。
【0004】
フレキソ版に小さなドットを維持することは、製版プロセスの特性上非常に難しい。例えば、特許文献1及び2に記載されるように、感光性ポリマーを被覆した一体型紫外線不透明マスク層を使用するデジタルフレキソ印刷要素がいくつか挙げられ、その主題を本明細書中に参照することによりその全体を援用する。画像形成前(又は画像形成後)工程において、感光性ポリマーを硬化させる紫外光に背面露光することにより、最適な印刷に必要なレリーフの深度に版のフロアを設定する。この工程の後に、レーザー(例えば、赤外線レーザー等)でマスク層の選択的なアブレーションが続き、非アブレーション領域において、紫外(UV)光に不透明な画像マスクを形成する。次に、印刷要素を画像形成UV照射に露光して現像し、例えば、溶媒を使用して又は熱とブロッティングとでUV照射に露光されなかった領域を除去して、レリーフ画像を露呈させる。マスクと紫外線照射の組み合わせで、概して円錐形のドットレリーフを作製する。これらのドットのうちの最も小さいドットは、処理中に取り除かれる傾向があり、これは印刷中にこれらの領域にインクが移らないことを意味する(ドットは、版及び/又は印刷機上に「保たれ」ない。)。又は、ドットが処理で取り除かれなかったとしても、印刷機で損傷しやすい。例えば、印刷中に小さなドットが、しばしば折り重なる及び/又は部分的に取れることで、インクが過剰に移る、又はインクが全く移らない原因となる。
【0005】
フレキソレリーフ画像印刷版の作製に使用される固体の光硬化要素は、一般的に、支持層、及び1つ以上の光硬化層を含み、更に保護カバーシートを含むこともある。保護カバーシートは、画像形成が行われるまで、版若しくは光硬化要素を損傷から保護することができるプラスチック、又は他の除去可能な材料から形成される。光硬化要素は、任意で、保護カバーシートと光硬化層との間に置かれるスリップフィルムを含んでもよく、版を汚染から保護し、取扱容易性を向上させ、且つインク受容層として機能する。
【0006】
版及びスリーブを含むフレキソ印刷要素を製造するための感光性印刷媒体の使用は、概して次の通りである。感光性印刷材料を支持層上に置いて印刷要素を形成するが、押出し、ロールコーティング、加熱処理、溶媒キャスト等の様々な方法で感光性印刷材料を支持層上に置いてもよい。これらの技術は、当業者によって容易に実施可能である。
【0007】
支持層は、紙、セルロースフィルム、プラスチック、若しくは金属等の透明又は不透明な材料から形成できる。好適な基板材料としては、スチール、銅、又はアルミニウムのシート、版、若しくはフォイル;紙;又はポリエステル、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリアミド等の合成ポリマー材料からなるフィルム又はシート等が挙げられる。支持シートは、任意で、光硬化層により確実に付着させ、且つ基板の反射率を制御するための接着層を含んでいてもよい。
【0008】
感光層は、ポリマー、開始剤、反応性希釈剤、フィラー、染料等の様々な公知の感光性材料を含むことができる。好適な感光性組成物は、エラストマー化合物、少なくとも1つの末端エチレン基を有するエチレン性不飽和化合物、及び光開始剤を含む。そのような材料は、多数の特許及び公開公報に記載されており、当業者に公知である。
【0009】
本発明の感光性材料は、架橋(硬化)するものであり、よって少なくともある化学線波長領域で硬化する。ここで使用するように、化学線は、露出部分に化学変化を生じさせることができる放射線である。化学線は、例えば、増幅光(例えば、レーザー)及び非増幅光、特に、紫外及び近紫外波長領域の増幅光及び非増幅光を含む。化学線波長領域は、好ましくは約320nm〜約450nm、より好ましくは約350nm〜約415nmである。
【0010】
樹脂の選択した一部を化学線に露光することで、所望の画像が印刷版に形成される。感光性樹脂の選択露光は、例えば、従来は感光層表面にネガ等の画像担持マスクを使用して感光性樹脂の前側から行われていた。化学線に不透明なマスク領域では、マスク直下の感光層内でフリーラジカル重合の開始が防がれる。画像担持マスクの透明領域では、感光層に化学線を侵入させるため、フリーラジカル重合が開始され、これらの領域を処理溶媒に不溶にする。または、レーザー照射、又は他のデジタル制御された化学線源(即ち、デジタル製版)に感光層の選択した部分を露光することによりフリーラジカル重合を開始させ、これらの領域を処理溶媒に不溶にしてもよい。
【0011】
デジタルダイレクト製版(digital direct−write plate making)、又はCTP(computer to plate)プロセスの場合、デジタルファイルは様々なテキスト及び図形要素を含む。デジタルプレートセッティング(Digital platesetting)は、印刷機上の紙にインクを移すための媒体として使用される印刷版にデジタルデータを解釈し、且つ画像化する。印刷機は、オフセット、フレキソ、及びグラビア等の多様な印刷版プロセスを含む。CTPプロセスにおいて、デジタル制御された化学光(actinic light)が、電子データファイルに保存した画像に応じて版全体を選択的に走査する。版の画像領域は、化学光により直接硬化され、非画像形成領域は硬化されずに残り、版処理工程で取り除かれる。
【0012】
一般的に、ワークステーションは画像データを受領する。例えば、ワークステーションは、MICROSOFT WINDOWS(登録商標)、又はLinuxオペレーティング・システムを操作するパソコンなどのプログラム可能な汎用コンピュータであってもよい。画像データは、ラスターイメージプロセッサ(RIP)でラスタ画像に変換される。「RIP化」とは、装置が印刷できる方法で画像ファイルを構成するプロセスである。例えば、装置が1インチあたりのドット数(DPI)の解像度を支えれば、ファイルはその解像度に「RIP」される。RIPは、プラグイン内蔵ラスタライズ機能をハードウエア、独立ハードウエア装置、及び/又は適切なコンピュータ上で実行するソフトウエアモジュールに用いてもよい。RIPは、画像データをハーフトーンデータに変換し、ハーフトーンデータは、画像処理装置に送られる。画像処理装置は、ハードウエア、ソフトウエア、又は両者で実行される。画像処理装置が、ハーフトーンデータを走査し、得られたハーフトーンデータは、ハーフトーンデータに応じてフレキソ印刷版を調製する出力装置に送られる。画像処理装置は、オンザフライでハーフトーンデータを処理し、より好ましくは、ワークステーションがメモリを画像形成装置に出力する前に、メモリを組み込むか、又は割り当ててハーフトーンデータを保存する。
【0013】
その後、樹脂の未露光、即ち未硬化部分を選択的に取り除くために現像工程が行われる。現像は、一例として、当該技術分野で公知のように適切な溶媒での洗浄又はサーマルブロッティングを含むが、これらに限定されない。得られた表面は、印刷される画像を再生するレリーフパターンを有する。そして、印刷要素は、印刷機に載せられ、印刷が始まる。
【0014】
感光性ポリマー樹脂層で被覆されたフレキソ版等の印刷版は、CTP露光システム等の装置内で、変調及びラスタライズされた1つの又は複数のレーザービーム、若しくは照射及び再画像形成された空間光変調器アレイによって形成されたライトアレイを使用して、一般的にデジタル方式で画像化されるか、又はパターン化される。フレキソ版は、概して、無酸素環境下で製造されず、且つ分子酸素を厳密に排除する方法では被覆、又は包装されない。そのように、酸素は感光性ポリマー中に分散される。酸素は、フレキソ印刷版に最も一般に使用されるラジカル硬化型化学的性質の強力な阻害剤であることが当業者に知られている。もし、酸素がそのようなフレキソ版から取り除かれる場合、版が大気に触れると徐々に雰囲気酸素が樹脂に拡散する。
【0015】
露光及び現像されたフレキソ版の第3次元、特に、パターン化された外観の側壁勾配が、露光された画質の重要な決定要因である。そのような版上の単一のドットには、広い基底と狭い平らな上部が好ましい。これは、従来の露光された紫外線に感応する感光性ポリマー樹脂を用いて、まず始めに版を「バンプ処理する(bumping)」、即ち、紫外線で版全体を均一にフラッド照射(flooding)して、樹脂全体に溶解した酸素を測光的に(photometrically)消費し、次に、パターン化した光で露光して版に選択した外観を重合させることで達成する。そして、露光された版が現像されて、版の基板に付着した重合樹脂の残像が残る。バンプ露光プロセスは、厚いフレキソ樹脂において数秒間で測定された時定数で、未露光版における化学反応を開始する。バンプ露光直後、雰囲気酸素が表面から版の裏へ拡散し始める。これによって、基板(版の底部)よりも表面(版の上部)により近い樹脂において、より高い酸素濃度となるため、表面付近だけで感光性重合の抑制がより大きくなる。よって、パターン化露光が行われる場合、ドットの底部は上部よりも重合化されるため、より広い底部とより狭い上部となる。
【0016】
フレキソCTPシステムを成功させるには、バンプ露光照度及びバンプ露光からパターン形成露光までの経過時間を調整する前露光システムで、樹脂の断面を通して酸素濃度を調整する必要がある。
【0017】
感光性樹脂組成物は、光に対して露光する際に、概してラジカル重合により硬化する。硬化反応は、樹脂組成物に拡散された酸素によって抑制されるが、これは、酸素がラジカル・スカベンジャーとして機能するためである。従って、溶解酸素が露光前に感光性樹脂組成物から取り除かれることが非常に好ましい。感光性樹脂組成物から溶解酸素を取り除くための様々な技術が提案されている。例えば、不活性ガスを拡散させて溶解酸素と置換するために、感光性樹脂組成物を露光前に一晩中不活性ガス(例えば、二酸化炭素、又は窒素)雰囲気下に置いてもよい。この方法の欠点は、長時間かかり、必要な装置のための広いスペースを必要とすることである。
【0018】
また、印刷要素をメイン像様露光する前に、感光性樹脂印刷要素に対して、弱いブランケット「前露光」を行って、溶解酸素を消費してもよい。この前露光工程は、また「バンプ」露光とも言われる。バンプ露光は、版領域全体に対して行われ、版(又は他の印刷要素)の感光性重合を抑制する酸素を表面上減らす短く低い照射量での版の照射である。この予め感度を与える工程(pre−sensitization step)を行わないと、異常に長く、不便な露光時間なしには、完成した版に微細な外観(即ち、ハイライトドット、微細なライン、単独のドット等)が保たれない。しかしながら、予め感度を与える工程が過剰に行われると、シャドートーンが埋まる傾向があり、印刷した全域が著しく縮小される。これは、非常に高感度及び小さな露出寛容度を有する版の処方を悪化させる。この方法の他の欠点は、バンプ露光が、溶解酸素だけが急冷されるような露光時間、照射光密度等の特定の条件を必要とすることである。
【0019】
バンプ露光とメイン露光との間の経過時間が増えるに連れて、予め感度を与える効果もまた低下する。印刷版の従来の露光において、バンプ露光とメイン露光との間の経過時間が、一般的に約10秒又は約20秒よりも長く、メイン露光前に版に酸素をいくらか再導入できる。これによって、完成した版が許容範囲の深さのシャドーを有する。一方で、予め感度を与える工程の直後にメイン露光が行われると、CTPプロセスで想定されるように、従来の露光技術と比較して、シャドートーンが埋まる傾向が更に悪化する。
【0020】
感光層を有する印刷版及び他の基板のインラインバンプ及び露光システムが特許文献3に開示され、本明細書中に参照によりその全体を援用する。特許文献3に記載のシステムは、感光層中の溶解酸素を消費するために、照明帯を用いて感光性材料をバンプ露光するための線状照明源を含む。しかしながら、このシステムは、他の先行技術のシステムと同様に感光性表面全体にブランケット前露光(blanket pre−exposure)を提供する。最適な画質のために、プレートセッターは、版の表面層にある程度の酸素を戻すために一般的に2秒〜100秒待たねばならないが、感光性ポリマー樹脂の中間層に雰囲気酸素を拡散させるほど長くない。これは、時間遅延を生じさせることで印刷プロセスを長くするため不利である。
【0021】
レリーフ画像印刷版を改良する他の試みとしては、特定の版の処方、又はこれとバンプ露光との組み合わせが挙げられる。
【0022】
例えば、特許文献4は、ポリマーバインダー、ラジカル重合性モノマー、増感染料、重合開始剤を含む感光性樹脂組成物であって、予備(バンプ)露光が増感染料だけを励起する光で行われ、メイン露光が光重合開始剤を励起する光で行われる感光性樹脂組成物を開示し、本明細書中に参照によりその全体を援用する。この場合、予備露光が増感染料だけを励起する光で行われ、メイン露光が光重合開始剤を励起する光で行われる。
【0023】
特許文献5は、少なくとも1つの水溶性ポリマー、光重合開始剤、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−アルキルオキシメチルアクリルアミド、又はN−アルキルオキシメチルメタクリルアミドと、メラミン誘導体との縮合反応生成物を含む光重合組成物を開示し、本明細書中に参照によりその全体を援用する。発明者等によると、組成物は、前露光の調整の必要が不用であり、化学的に且つ熱的に安定な版を製造する。
【0024】
特許文献6は、雰囲気酸素の効果を抑制するために、パラフィン又は同様の油性物質を含む光硬化性混合物を開示し、本明細書中に参照によりその全体を援用する。ポリマー中でのその溶解性が低いため、パラフィンが重合開始時に浮き、露光工程が一旦進行すると、空気の再侵入を防ぐ透明な表面層を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】米国特許第5,925,500号明細書(Yang等)
【特許文献2】米国特許第6,238,837号明細書(Fan)
【特許文献3】米国特許第6,903,809号明細書(Donahue等)
【特許文献4】米国特許第5,330,882号明細書(Kawaguchi等)
【特許文献5】米国特許第4,540,649号明細書(Sakurai)
【特許文献6】米国特許第5,645,974号明細書(Ohta等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
感光性樹脂組成物における溶解酸素を抑制する/取り除く様々な方法が提案されているが、当該技術分野において、特にCTP(computer−to−plate)プロセスで、溶解酸素を取り除く改良された方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の発明者等は、感光層における酸素の悪影響を克服するために、感光性印刷要素の様々な改良された像様露光プロセスを見出した。
本発明の第1実施形態によると、感光層は化学線に選択的に露光されるが、前記化学線は、感光層、特に微細な外観が現像される領域の酸素を急冷するために十分な強度ではあるが、感光層を硬化する強度ではない。よって、微細な外観領域等の感光層の特定の領域に予め感度が与えられ(pre−sensitized)、一方では、シャドー領域等の他の領域に予め感度が与えられないか、又はより少ない程度に予め感度が与えられる。
【0028】
本発明の発明者等は、微細な外観領域において、予め感度を与える照射(pre−sensitization radiation)は溶解酸素を急冷し、これらの微細な外観の露光及び現像を抑制するが、予め感度を与える照射がシャドーを埋めるシャドー領域では、感度の付与が最小限にされるか、又は避けられることを見出した。よって、このプロセスは、先行技術の欠点、即ち、シャドー領域の酸素急冷はシャドードットを埋める及び抜き文字(Reverse text)を生じさせることなく予め感度を与えるという目的を達成する。
【0029】
本発明の目的は、像様露光工程の前に感光層から酸素を取り除くためにフレキソ印刷要素を前露光する改良された手段を提供することである。
【0030】
本発明の他の目的は、デジタル製版プロセスで使用できるフレキソ印刷要素を前露光する改良された手段を提供することである。
【0031】
そのため、感光層に選択的に予め感度を与える様々な方法が本明細書に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明の上記説明及び他の特徴は、添付の図面と併せて読むと、発明を実施するための形態でより明らかとなる。
【図1】図1は、一般的なハーフトーンスクリーンの格子パターンを示す。
【図2】図2A、2B及び2Cは、ハーフトーンセル部分が本発明によるスクリーンティントバンプ(screen tint bump)で露光されたハイライト、ミッドトーン、及びシャドーハーフトーンセルの拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の発明者等は、画像に一致し、且つレジスターされる(registered)スクリーンティントを使用して感光性基板に(好ましくは)選択的にバンプ露光する場合に改良されたレリーフ画像印刷要素が得られることを見出した。一実施形態において、印刷要素はCTP装置で処理される。
【0034】
メイン露光を一定にしたままバンプ露光を増加させるとシャドートーンが低下する。これは、バンプ露光量を増やすと、シャドートーンが埋まることを示す。よって、より良好な印刷面、即ち、シャドートーンの埋まりを減らし、印刷面により鮮明度を与えるために、発明者等は、従来技術で行われているような印刷面全体を前露光する代わりに、印刷要素を選択的に前露光するプロセスを開発した。
【0035】
例えば、米国特許第5,455,416号明細書(Zertani等)に開示されるような像様露光される印刷要素に“予め感度を与える(pre−sensitizing)”前露光装置が挙げられ、本明細書中に参照によりその全体を援用する。米国特許第5,455,416号明細書に開示される前露光装置は、印刷フォームの有効幅に非常に均一な露光強度を与えるといわれており、発光ダイオード(LED)モジュール又はLEDアレイの露光強度を無限に変えることができる。前露光装置は非常に低く、且つ非常に均一な強度の光で機能する。
【0036】
本発明の実施に際して、予め感度を与える(又はバンプ露光)工程は、主に微細な外観の領域にバンプを形成するために選択的に使用され、殆ど又は完全に予め感度が与えられないシャドートーン及び抜き文字(Reverse text)領域を残すことで、シャドートーンの埋まりを少なくする。当業者が理解するように、「シャドー」は、ミッドトーン(画線率が約30%〜約70%のドットで形成されるトーン)、及びハイライト(ミッドトーン及びシャドーと比べて画像の最も明るい部分)と比べて、ハーフトーン画像の最も暗い領域を示す。
【0037】
第一実施形態において、バンプ露光工程は、所望の最終画像に応じた不透明度のレベルを変えるために提供されるフィルム又はネガを介して行われる。不連続に隆起した外観が形成されるフィルムの領域はほぼ透明であり、現像除去されるフィルム領域は化学線に対してほぼ不透明である。前記領域は、ほぼ透明からほぼ不透明に及ぶ。これは、微細な外観の領域に適切に予め感度を与えることができる一方で、シャドー及び抜き文字領域におけるバンプ露光を大幅に減らすため効果的な結果が得られる。
【0038】
他の実施形態において、バンプ露光工程は、レーザー系CTP装置を使用して行われる。その様な装置においてビーム強度及び位置は高度に制御され、特にマルチビーム装置においてレーザービームで好適に予め感度を与えることは有利である。一実施形態において、CTP装置は印刷要素に画像をデジタル処理で投影する。パターンそのものは、コンピュータで形成されるドット又は線画の形体をとりうる。
【0039】
更なる実施形態において、感光性ポリマーは、マイクロミラーデバイス、例えば、Basys Print社製のもの、又はLEDアレイを使用して、選択的に前露光しうる。Basys Print社の装置は、スクリーンティントバンプ露光(screen tint bump)を低い化学線量で投影して、版に選択的に予め感度を与え、その直後に、メインのより高い化学線照射量で所望の画像の全体露光が続く。最初のスクリーンティントバンプ露光は、次のメイン画像形成工程でハーフトーンドットが画像形成される位置と良好なレジスター(即ち、位置合わせ)に用いられる。
【0040】
使用される方法(フィルム、レーザー、マイクロミラー、LEDアレイ等)に関わらず、本発明の原理は、特に微細な外観を現像する必要がある領域において不要な酸素を取り除くために、感光性ポリマーに選択的に予め感度を与えることである。よって、予め感度を与えるための感光性ポリマーに達する化学線の相対強度及び位置は制御されているため、微細な外観が現像されるべき領域に大量の予め感度を与える放射が達する一方で、シャドー領域には予め感度を与える放射が、殆ど又は全く作用しない。予め感度を与える露光のすぐ後に、先行技術で開示されるような様々な方法によって行うことができるメイン画像露光が続く。バンプ露光とメイン露光との間にタイムラグは必要ないため、版露光シーケンスにおける時間を省く。
【0041】
本発明は、特にデジタル製版に適している。シャドードットの上及び周りの領域におけるバンプ露光を避けながら、ハイライトドットの上及び周りの印刷版領域に感度付与前露光(即ち、バンプ露光)が行われる。この場合、バンプ露光量が、ハーフトーン画像ファイルと同じラインスクリーン、スクリーン角度、及びレジストレーションのスクリーンティントの形状で供給される。よって、バンプ露光は、版の領域全体で同じでなく、版において前露光される領域とされない領域がある。
【0042】
そのため、本発明は、次の工程を含むレリーフ画像印刷版の製造方法を対象とする:
基板上に形成された感光層を含むデジタル感光性印刷要素を準備する工程、
前記感光性印刷要素を準備する工程が、前記感光層表面を選択的に硬化して前記感光層表面に硬化及び未硬化領域を形成することで所望の画像が前記感光層表面に形成可能であり、形成される前記画像がデジタル画像ファイルに含まれる;
画像と同じラインスクリーン、スクリーン角度、及びレジストレーションで所望の画像のスクリーンティントを含むスクリーンティントバンプデータファイルを準備する工程;
前記スクリーンティントバンプデータファイルを実行することで化学線の選択的な前露光量を供給し、前記スクリーンティントバンプデータファイルに従って、前記感光層表面をスクリーンティント処理して前記化学線に前記感光層表面の一部を選択的に前露光する工程;
前記印刷要素上にデジタル処理で画像を提供し、デジタル画像ファイルに従って化学線に前記感光層表面を選択的に像様露光して前記感光層表面に硬化及び未硬化領域を形成する工程;並びに
前記感光層の未硬化部分を選択的に取り除いて、前記レリーフ画像を露呈する工程。
【0043】
「ハーフトーン」とは、連続階調画像を撮影する又は走査して、画像をハーフトーンドットに変換する方法、及びフィルム、紙、印刷版、又は最終印刷物にハーフトーン化して現す写真又は連続階調画像を示す。「ハーフトーンスクリーン」とは、光をドットに分割する格子線を含むフィルム又はガラス片を示す。従来のハーフトーンスクリーンは、図1に示すように格子パターンにレイアウトされる様々な大きさのドットからなる。写真のハイライト領域は、小さなドットからなり、シャドー領域は、大部分が黒で白い小さな領域を伴う。
【0044】
前露光量は、ハーフトーンと同じラインスクリーンでスクリーンドットとして供給され、ハーフトーンドットとレジスターされる。図2A〜2Cに示す図は、ハイライト、ミッドトーン、及びシャドーハーフトーンセルの拡大図を示す。本発明の独創的なスクリーンティントバンプ露光によって露光される各ハーフトーンセル部分は点で描いた円の内側の領域で表される。
【0045】
容易に分かるように、画像形成されるハイライトドットは、スクリーンティントバンプドットによって完全に取り囲まれることで、次の像様露光の前にハイライトドットに適切に感度を与える。更に、シャドー領域において、スクリーンティントバンプドットは、シャドードットと全く重複しない。これは、シャドー及びハイライトドットの中央点が異なり重複しない中央点を有するため可能である。
【0046】
版の画像形成速度は、ハイライトドットの前露光によって向上し、且つ階調範囲は、シャドー領域における前露光を避けることによって拡大する。
【0047】
本発明のこの特徴は、スクリーンティントのlpiが画像形成スクリーンとレジスターされる限り、ラインスクリーンの解像度、特に、65(lpi)〜300(lpi)で有効である。更に、本発明のこの特徴は、画素分解能、一般的に500dpi〜3,000dpiで有効である。スクリーンドットの形状としては制限なく使用でき、円形、四角形、楕円形、及びこれら1つ以上の組み合わせ等が挙げられるが、これらに制限されない。
【0048】
スクリーンティントバンプドットは、円形、四角形、多角形、楕円形、又はこれら1つ以上の組み合わせ等であってもよい。
【0049】
スクリーンティントバンプ角度が画像ファイルスクリーンの角度と一致する限り、スクリーンティントバンプ露光はまた、任意のスクリーン角度で有効である。
【0050】
スクリーンティントバンプ露光の「ドットの割合」は、わずか5%から少なくとも約80%まで変更できる。好ましい範囲は、約10%〜約60%である。
【0051】
スクリーンティントバンプ露光の最適な強度は、先行技術で実施したバンプ露光方法によって経験的に決められる。一般的に、金属で支持され、且つ不透明な基板に対して、最適な強度は、処理後の版に残された膜をもたらすために必要である最小バンプエネルギーの約60%〜約99%である。重合したフロアが通常対象とする包装の印刷に更に一般的に使用される版に対して、最適なバンプ露光のフルエンスは、微細なドット間の適切な溝を維持しながらハイライトドットを保持するのに必要とされる強化を提供する量である。
【0052】
本発明は、また、化学線波長(actinic wavelength)で有効であり、光は、単色、マルチプルライン、又は広帯域であってもよい。バンプ露光の光質(即ち、波長、干渉性、彩度等)は、メイン露光に使用される光質と同じ、又は異なりうる。更に、スクリーンティントバンプ露光のエネルギーは、短回、又は複数回で照射されうる。スクリーンティントバンプ露光に使用される化学線は、プレートセッター装置の特定の設計に応じて画像形成露光に使用されるのと同じ光源から生じてもよく、又は別のエネルギー源でもよい。
【0053】
バンプ露光とメイン露光との間の遅延時間は、マイクロ秒から約60秒の範囲でありうる。好適な実施形態において、遅延時間は、約10秒未満である。
【0054】
本発明のこの態様は、大きさ、ラインスクリーン、レジストレーション、及びスクリーン角度に関して画像形成されるデジタルファイルに一致するようなスクリーンティントバンプデジタルファイルが作製されることが利点である。スクリーンティントバンプドットに対する大きさ、及び形状もまた事前に選択される。このスクリーンティントバンプファイルが保存され、全ての同様の画像ファイルと普遍的に再使用されることが可能である。スクリーンティントバンプファイルは、プレートセッターのコンピュータサーバー上に、既に分かれて準備ができた状態で置かれている。
【0055】
版に画像形成するために、まず始めに、スクリーンティントバンプデータファイルを使用して、プレートセッターが、版又は版の一部をバンプ露光し、そして、これを画像ファイルを使用してメイン露光する。その後、版が通常の方法で処理される。
【0056】
本発明のスクリーンティントバンプファイルの使用により、デジタル露光されたレリーフ画像印刷版の階調範囲(即ち、シャドー/抜き文字領域の微細なドット保持及び開放性)が改良され、同時に画像形成速度が向上する。
【0057】
デジタル画像形成レリーフ印刷版は、一般的に、全く前露光しないか、又は基本的に均一なブランケット露光を使用して前露光される。前露光光エネルギーは、時々、版全体に1回「フラッシュ」露光されるか、又は表面を走査する。どちらの場合も、シャドー領域として画像形成することになっている版の領域においても、印刷版表面領域全体が基本的に同じエネルギー照射量を受ける。時々、抜け深度(reverse depth)を改良するために、バンプ露光とメイン像様露光との間に遅延時間を使用する。しかしながら、これは、製版を遅くする傾向があり、シャドー領域を空ける点で一部分にだけ有効である。
【0058】
スクリーンティントバンプ露光を使用することで、前述の実施形態と同じ好適なバンプ露光を提供するが、スクリーンティントバンプデータファイルを保存し、且つ他の同様の画像ファイルに再使用可能になるよう利点を提供する。その一方では、逆像を使用する場合は、各画像ファイルが、個別に固有のパンプ露光ファイルを必要とするので、上記の通り、実行するための個別の重要なソフトウエアコードを必要とし、且つプレートセッターサーバーに非常に負担をかけて計算して、算出して各固有のバンプ露光画像ファイルを分ける。
【0059】
本発明は、シャドー領域においてバンプ露光を取り除くのでより深い深いシャドー、バンプ露光工程とメイン露光工程との間に遅延時間が必要ないのでより高い生産性、いったん設定すると同じスクリーンティントバンプファイルが全ての同様の画像ファイルに使用できるのでデジタルワークフローにおける実施容易性等の様々な利点を提供する。
【0060】
よって、前述の記載から明らかになるように、上記目的が、上記の記載から明らかであるように、効果的に達成されることが理解され、且つ本発明の精神及び範囲から逸脱することなく上記構成に所定の変更を加えることができるので、上記記載に含まれる又は添付の図面に示される全ての事柄は限定的な意味としてではなく例示として解釈されることを意図したものである。
【0061】
また、以下の請求項は、本明細書に記載された本発明の包括的且つ詳細な特徴の全てを網羅することを意図しており、言語として本発明の範囲の全記述はそれらに該当することも明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レリーフ画像印刷版の製造方法であって、
基板上に形成された感光層を含む感光性印刷要素を準備する工程、
前記感光性印刷要素を準備する工程が、前記感光層表面を選択的に硬化して前記感光層表面に硬化及び未硬化領域を形成することで所望の画像が前記感光層表面に形成可能であり、形成される前記画像がデジタル画像ファイルに含まれる;
ラインスクリーン、スクリーン角度、及びレジストレーションにおいて画像ファイルと一致するスクリーンティントを含むスクリーンティントバンプデータファイルを準備する工程;
前記スクリーンティントバンプデータファイルを実行することで化学線の選択的な前露光量を供給し、前記スクリーンティントバンプデータファイルに従って、前記感光層表面をスクリーンティント処理して前記化学線に前記感光層表面の一部を選択的に前露光する工程;
前記印刷要素上にデジタル処理で画像を提供し、デジタル画像ファイルに従って化学線に前記感光層表面を選択的に像様露光して前記感光層表面に硬化及び未硬化領域を形成する工程;並びに
前記感光層の未硬化部分を選択的に取り除いて、前記レリーフ画像を露呈する工程
を含むことを特徴とするレリーフ画像印刷版の製造方法。
【請求項2】
形成される画像が、ハイライトドット、ミットトーンドット、及びシャドードットを含むハーフトーンドットを含み、且つスクリーンティントが、形成される画像のハーフトーンドットとレジスターされるスクリーンドットを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
スクリーンティント処理工程が、次の画像形成工程中にハイライトドットが配置される感光層表面の位置にスクリーンティントドットを位置決めし、且つシャドードットの周りにスクリーンティントドットを位置決めしない工程を含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
スクリーンドットの形状が、円形、四角形、多角形、楕円形、及びこれら1つ以上の組み合わせからなる群から選択される請求項2に記載の方法。
【請求項5】
スクリーンティントが、約10%〜約60%のドットの割合を有する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前露光工程中に使用される化学線源が、単色、マルチプルライン、及び広帯域の化学線源からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
化学線源が、短回照射、又は複数回照射として供給される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前露光工程と像様露光工程との間に遅延時間が設けられる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
遅延時間が、マイクロ秒から60秒である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
スクリーンティントバンプファイルが保存され同様のデジタル画像ファイルに再使用される請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前露光工程中に使用される化学線源、及び像様露光工程中に使用される化学線源が、同じエネルギー源である請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前露光工程中に使用される化学線源、及び像様露光工程中に使用される化学線源が、個別のエネルギー源である請求項1に記載の方法。

【図2】
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【図1】
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【公表番号】特表2010−537224(P2010−537224A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519906(P2010−519906)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/007824
【国際公開番号】WO2009/020496
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Linux
【出願人】(506314391)マクダーミッド プリンティング ソリューションズ, エルエルシー (23)
【Fターム(参考)】