説明

レンズ装置および撮像装置

【課題】比較的簡単な構成で、通常撮影および至近距離での拡大撮影においてフォーカシングと変倍とを操作性良く行えるようにしたレンズ装置および撮像装置を提供する。
【解決手段】レンズ装置1は、物体側のフォーカス系L1〜L3と、該フォーカス系よりも像側に配置され、フォーカス系とアフォーカルに接続された変倍系L5〜L7と、フォーカス機構3,4と、ズーム機構7,8とを有する。フォーカス機構とズーム機構は互いに独立にフォーカシングおよび変倍を行わせる。レンズ装置1は、広角端と望遠端との間での変倍が可能な第1のモードと、第1のモードよりも高倍率での変倍が可能であって該第1のモードよりも短い特定物体距離で拡大撮影が可能な第2のモードとを有する。ズーム機構は、第1のモードでの変倍と第2のモードでの変倍とを連続的に行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高倍率での撮像が可能なレンズ装置および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ、交換レンズ等の撮影用の光学機器としてはズーム機能を有することが多いが、汎用的な光学機器では数百倍といった高倍率の拡大映像までは得ることはできない。
【0003】
一方、材料や物質の表面を拡大観察する目的のために、極近接(マクロ)撮影用ズーム・レンズ系を備えた撮影装置が特許文献1にて提案されている。
【0004】
特許文献1にて開示された極近接撮影用ズーム・レンズ系では、前方(物体側)から正の合焦系、負の変倍系および正の補正系からなる三系を備え、極近接撮影時には該三系をその背後(像側)に設けられた結像系に対して一体的に前方に変位させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平1−15843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1にて開示された極近接撮影用ズーム・レンズ系においては、通常撮影時および極近接撮像時において変倍系と補正系とを互いに独立に移動させる構造だけでなく、極近接撮像時に正の合焦系、負の変倍系および正の補正系の三系を一体的に前方へ変位させる構造が必要であり、装置の構造が複雑化するという問題がある。
【0007】
本発明は、比較的簡単な構成で、通常撮影および至近距離での拡大撮影においてフォーカシングと変倍とを操作性良く行えるようにしたレンズ装置および撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一側面としてのレンズ装置は、物体側に配置されるフォーカス系と、該フォーカス系よりも像側に配置され、フォーカス系とアフォーカルに接続された変倍系と、フォーカス系を移動させてフォーカシングを行わせるフォーカス機構と、変倍系を移動させて変倍を行わせるズーム機構とを有し、フォーカス機構によるフォーカシングとズーム機構による変倍とが互いに独立に行われる構成を有することを特徴とする。
【0009】
また、上記レンズ装置において、広角端と望遠端との間での変倍が可能な第1のモードと、第1のモードよりも高倍率での変倍が可能であって且つ該第1のモードよりも短い物体距離で拡大撮影が可能な第2のモードとを設けてもよい。
【0010】
さらに、ズーム機構を、第1のモードでの変倍と第2のモードでの変倍とを連続的に操作可能に構成してもよい。さらに第1のモードおよび第2のモードのそれぞれにおいて、フォーカス系が移動することなく同一物体距離に対する合焦状態が維持されたまま変倍が行われるようにしてもよい。
【0011】
なお、上記レンズ装置には、フォーカス系よりも物体側において複数の発光体がフォーカス系の光軸回り方向に配置された照明ユニットを設けてもよい。
【0012】
また、上記レンズ装置と、該レンズ装置により形成された被写体像を光電変換する撮像素子とを有する撮像装置も本発明の他の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フォーカス系と変倍系とをアフォーカルに接続したので、フォーカス機構によるフォーカシングとズーム機構による変倍とを独立して操作可能な操作性の良いレンズ装置を比較的簡単な構成で実現することができる。特に、本発明は、無限遠での通常撮影および至近距離での拡大撮影においてフォーカシングと変倍とを独立して操作可能な操作性の良いレンズ装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例であるレンズ装置の構成を示す断面図。
【図2】実施例のレンズ装置におけるカメラモードとマクロモードでのレンズユニットの配置を示す断面図。
【図3】実施例のレンズ装置におけるフォーカスカム曲線を示す図。
【図4】実施例のレンズ装置における変倍カム曲線を示す図。
【図5】実施例のレンズ装置に設けられた照明ユニットの正面図。
【図6】実施例のレンズ装置における照明ユニットの点灯制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0016】
図1には、本発明の実施例である交換レンズ装置1を、光軸を含む平面で切ったときの断面を示している。図1の上段には、後述するカメラモードでの広角端状態での断面を示している。図1の中段には、後述するマクロモードの低倍率モードでの最小倍率端状態での断面を示している。さらに、図1の下段には、マクロモードの高倍率モードでの最大倍率端状態での断面を示している。
【0017】
交換レンズ装置1はその後端部(像側の端部)に設けられたマウント部20が、カメラ本体100の前面(被写体側の面)に設けられたマウント部102にバヨネット結合することで、カメラ本体100に取り外し可能に装着される。
【0018】
交換レンズ装置1内には、カメラ本体100の内部に配置された撮像素子101上に被写体像を形成するための撮影光学系が設けられている。撮像素子101は、CCDセンサやCMOSセンサ等の光電変換素子により構成され、その撮像面が撮影光学系の像面に位置するように配置されている。交換レンズ装置1とカメラ本体100とにより撮像装置が構成される。
【0019】
撮影光学系は、被写体側(物体側)から像側に順に、負の第1レンズユニット(第1フォーカスレンズユニット)L1と、正の第2レンズユニット(第2フォーカスレンズユニット)L2と、負の第3レンズユニットL3と、正の第4レンズユニットL4と、負の第5レンズユニットと、正の第6レンズユニットと、負の第7レンズユニットとにより構成されている。
【0020】
また、第1レンズユニット(第1フォーカスレンズユニット)L1、第2レンズユニット(第2フォーカスレンズユニット)L2および第3レンズユニット(第3フォーカスレンズユニット)L3は、光軸方向にそれぞれ移動してフォーカシングを行うフォーカス系を構成する。第4レンズユニットL4は、フォーカシングおよび変倍に際して光軸方向において不動(固定)のレンズユニットであり、フォーカス系と変倍系とをアフォーカルに接続する。第5レンズユニット(第1変倍レンズユニット)L5、第6レンズユニット(第2変倍レンズユニット)L6および第7レンズユニット(第3変倍レンズユニット)L7は、光軸方向にそれぞれ移動して変倍を行う変倍系を構成する。ここでいうフォーカス系と変倍系とをアフォーカルに接続するとは、フォーカス系と変倍系とを無焦点(または無焦点系)で接続することを意味するものとする。
【0021】
なお、第4レンズユニットL4を構成する正の物体側レンズコンポーネントと正の像側レンズコンポーネントの間には、光量を調節するための可変絞りAPが配置されている。
【0022】
また、固定鏡筒2は、交換レンズ装置1の本体を構成し、上記撮影光学系を収容する。固定鏡筒2の外周前部には、フォーカス操作環3が回転可能に取り付けられている。そして、このフォーカス操作環3は、連結ピン6を介して、固定鏡筒2の内側に配置されたフォーカスカム環4に連結され、フォーカスカム環4と光軸回りで一体回転可能である。フォーカスカム環4の内側には、固定鏡筒2に固定されたフォーカス案内筒5が配置されている。
【0023】
このようなフォーカスカム環4には、第1フォーカスカム溝部4a、第2フォーカスカム溝部4bおよび第3フォーカスカム溝部4cが形成されている。
【0024】
また、第1レンズユニットL1、第2レンズユニットL2および第3レンズユニットL3はそれぞれ、第1レンズ保持枠11、第2レンズ保持枠12および第3レンズ保持枠13によって保持されている。第1レンズ保持枠11、第2レンズ保持枠12および第3レンズ保持枠13にはそれぞれ、第1カムフォロア11a,第2カムフォロア12aおよび第3カムフォロア13aが設けられている。そして、第1カムフォロア11aは、フォーカスカム環4に形成された第1フォーカスカム溝部4aに係合し、第2カムフォロア12aは第2フォーカスカム溝部4bに係合し、第3カムフォロア13aは第3フォーカスカム溝部4cにそれぞれ係合している。
【0025】
さらに、フォーカス案内筒5には、光軸方向に延び、第1カムフォロア11a、第2カムフォロア12aおよび第3カムフォロア13aが係合する直進ガイド溝部(符号は付さず)が形成されている。フォーカスカム環4が回転操作されると、第1、第2および第3カムフォロア11a,12a,13aは直進ガイド溝部によって光軸方向にガイドされながら(光軸周りでの回転が阻止されながら)、第1、第2および第3フォーカスカム溝部4a,4b,4cのリフトによって光軸方向に移動される。
【0026】
ここで、第1、第2および第3フォーカスカム溝部4a,4b,4cのカム形状を図3に示す。図3において、横軸はフォーカスカム環4の回転角度を示し、縦軸は第1、第2および第3フォーカスカム溝部4a,4b,4cのリフト量に相当する第1、第2および第3レンズユニットL1,L2,L3の光軸方向移動量(位置)を示している。この図から分かるように、第1、第2および第3フォーカスカム溝部4a,4b,4cは互いに異なるカム形状を有し、フォーカスカム環4の同じ回転量によって第1レンズユニットL1、第2レンズユニットL2および第3レンズユニットL3を互いに異なる移動量、光軸方向に移動させる。なお、フォーカス機構は、フォーカス系を光軸方向に移動させる機構であり、その構成は特に限定されないが、例えば、本実施例では、フォーカスカム環4と、フォーカス系の各レンズユニットL1,L2,L3と、各フォーカスカム溝部4a,4b,4cとから構成されている。
【0027】
また、固定鏡筒2の外周後部には、ズーム操作環7が回転可能に取り付けられている。ズーム操作環7は、連結ピン10を介して、固定鏡筒2の内側に配置されたズームカム環8に連結されており、ズームカム環8と光軸回りで一体回転が可能である。ズームカム環8の内側には、固定鏡筒2に固定されたズーム案内筒9が配置されている。
【0028】
そして、このようなズームカム環8には、第1ズームカム溝部8a、第2ズームカム溝部8bおよび第3ズームカム溝部8cが形成されている。
【0029】
また、第5レンズユニットL5、第6レンズユニットL6および第7レンズユニットL7はそれぞれ、第5レンズ保持枠15、第6レンズ保持枠16および第7レンズ保持枠17によって保持されている。これら第5レンズ保持枠15、第6レンズ保持枠16および第7レンズ保持枠18にはそれぞれ、第5カムフォロア15a,第6カムフォロア16aおよび第7カムフォロア17aが設けられている。第5カムフォロア15aは、ズームカム環8に形成された第5ズームカム溝部8aに係合し、第6カムフォロア16aは第6ズームカム溝部8bに係合し、第7カムフォロア17aは第7ズームカム溝部8cにそれぞれ係合している。
【0030】
さらに、ズーム案内筒9には、光軸方向に延び、第5カムフォロア15a、第6カムフォロア16aおよび第7カムフォロア17aが係合する直進ガイド溝部(符号は付さず)が形成されている。ズームカム環7が回転操作されると、第5、第6および第7カムフォロア15a,16a,17aは直進ガイド溝部によって光軸方向にガイドされながら(光軸周りでの回転が阻止されながら)、第5、第6および第7ズームカム溝部8a,8b,8cのリフトによって光軸方向に移動される。
【0031】
ここで、第5、第6および第7ズームカム溝部8a,8b,8cのカム形状を図4に示す。図4において、横軸はズームカム環8の回転角度を示し、縦軸は第5、第6および第7ズームカム溝部8a,8b,8cのリフト量に相当する第5、第6および第7レンズユニットL5,L6,L7の光軸方向移動量(位置)を示している。この図から分かるように、第5、第6および第7ズームカム溝部8a,8b,8cは互いに異なるカム形状を有し、ズームカム環8の同じ回転量によって第5レンズユニットL5、第6レンズユニットL6および第7レンズユニットL7を互いに異なる移動量、光軸方向に移動させる。なお、ズーム機構は、変倍系を光軸方向に移動させる機構であり、その構成は特に限定されないが、例えば、本実施例では、ズームカム環8と、変倍系の各レンズユニットL5,L6,L7と、各ズームカム溝部8a,8b,8cとから構成されている。
【0032】
そして、フォーカス機構はフォーカス操作環4の回転操作に応じてフォーカス系のみを光軸方向に移動させ、ズーム機構はズーム操作環8の回転操作に応じて変倍系のみを光軸方向に移動させる。つまり、フォーカス機構とズーム機構はそれぞれ、フォーカス系および変倍系を互いに独立に移動させる、つまりはフォーカシングと変倍とを互いに独立に行わせる機構である。
【0033】
即ち、本実施例では、フォーカス系と変倍系との光学的な接続をアフォーカル接続とすることで、フォーカス機構によるフォーカス系の操作と、ズーム機構による変倍系の操作とが互いに独立して操作可能となる。具体的には、本実施例の交換レンズ装置1では、図1および図2に示すように、フォーカス系を構成するレンズユニットL1〜L3と、変倍系を構成するレンズユニットL5〜L7とが、不動(固定)のレンズユニットL4を介してアフォーカル、即ち、無焦点(または無焦点系)で接続している。これにより、被写体側(物体側)からフォーカス系を介して変倍系に入射する光成分は、平行光(平行光束又は平行光線)となる。また、本実施例の交換レンズ装置1における倍率は、フォーカス系の焦点距離と変倍系の焦点距離との比で決まるようにしている。このため、レンズユニットL4から変倍系に入射する光線に対し、ズーム機構の操作、即ち、変倍系を構成するレンズユニットL5〜L7の光軸方向への独立操作によって連続的に倍率を可変できる仕組みとなっている。したがって、フォーカス機構を通じて同一物体距離に対する合焦状態が維持されたままで、ズーム機構の独立操作によって連続的に変倍を行うことができる。
【0034】
なお、本実施例では、フォーカス操作環4およびズーム操作環8を通じた手動操作によってフォーカシングと変倍とが行われる場合について説明しているが、交換レンズ装置1又はカメラ本体100に設けられたフォーカススイッチやズームスイッチの操作に応じてフォーカスモータやズームモータが駆動され、フォーカシングと変倍とが電動で行われるようにしてもよい。
【0035】
また、本実施例の交換レンズ装置1は、広角端と望遠端との間で変倍が可能であり、至近距離から無限遠距離に対して合焦可能な第1のモードとしてのカメラモード(通常撮影モード)と、カメラモード(望遠端倍率[例えば、8倍])よりも高倍率(例えば、20〜200倍)での変倍が可能であり、かつカメラモード(至近距離)よりも短い物体距離に対して合焦した状態で拡大撮影が可能な第2のモードとしてのマクロモード(拡大撮影モード又は顕微鏡モード)とを有する。
【0036】
そして、ズーム機構は、カメラモードでの変倍とマクロモードでの変倍とを連続的に行わせるように構成されている。
【0037】
また、本実施例の交換レンズ装置1は、カメラモードおよびマクロモードのそれぞれにおいて、フォーカス系を移動させることなく同一物体距離(カメラモードでは至近距離から無限遠距離までの物体距離、マクロモードでは該至近距離よりも短い物体距離)に対する合焦状態を維持したまま変倍を行うことができる。さらに、マクロモードでは、低倍率モード(例えば、20〜80倍)と高倍率モード(例えば、50〜200倍)を選択することができる。以下の説明において、合焦する物体距離を合焦距離という。
【0038】
図2には、カメラモードにおける広角端および望遠端でのレンズ配置を示す。なお、このレンズ配置は、合焦距離が無限遠であるときのものである。また、図2には、マクロモードの低倍率モードと高倍率モードのそれぞれにおける最小倍率端と最高倍率端でのレンズ配置を示している。低倍率モードのレンズ配置は合焦距離が35mmのときのものを、高倍率モードのレンズ配置は合焦距離が55mmのときのものをそれぞれ示している。
【0039】
また、カメラモードにおいては、ズーム操作環7の回転操作によるズームカム環8の回転に応じて、第5〜第7レンズユニットL5〜L7が光軸方向に移動し、広角端から望遠端までの間で変倍が行われる。また、フォーカス操作環3の回転操作によるフォーカスカム環4の回転に応じて、第1〜第3レンズユニットL1〜L3が光軸方向に移動し、至近端から無限遠端までの間でフォーカシングが行われる。カメラモードでのズームでは、交換レンズ装置1の光軸方向全長は変化しない。
【0040】
一方、マクロモードの低倍率モードと高倍率モードにおいても、ズーム操作環7の回転操作によるズームカム環8の回転に応じて、第5〜第7レンズユニットL5〜L7が光軸方向に移動し、最小倍率端と最大倍率端との間で変倍が行われる。ズームカム環8に形成された第5〜第7ズームカム溝部8a〜8cは、カメラモードとマクロモードでの第5〜第7レンズユニットL5〜L7での移動を連続的に行わせるように形成されている。言い換えれば、第5〜第7ズームカム溝部8a〜8cはそれぞれ、カメラモードでの変倍の延長上でマクロモードでの変倍ができるように連続したカム形状を有する。これにより、カメラモードからマクロモードへの移行(およびその逆の移行)をシームレスで行うことが可能となり、該移行のための操作を簡単とすることができる。
【0041】
なお、マクロモードにおける低倍率モード(L)と高倍率モード(H)は、フォーカス系のレンズ位置の変更によって切り替えられる。
【0042】
また、マクロモードにおいて、フォーカス操作環3の回転操作によるフォーカスカム環4の回転に応じて、第1〜第3レンズユニットL1〜L3が光軸方向に移動し、上記至近端よりも短い物体距離に対してフォーカシングが行われる。ただし、マクロモードでは、第1レンズユニットL1が、カメラモードでの光軸方向位置よりも物体側に突出し、その分、カメラモードに比べて交換レンズ装置1の光軸方向全長が長くなる。しかし、至近端よりも短い物体距離に対して合焦した後は、変倍が行われても、第1〜第3レンズユニットL1〜L3が移動することなく、その物体距離(同一物体距離)に対する合焦状態が維持される。
【0043】
このように、本実施例では、ズーム操作環7の回転操作によってカメラモードとマクロモードとの間の切り替えを行うことができる。したがって、カメラモードでの風景撮影や人物撮影等の通常撮影から、マクロモードでの接写拡大撮影(マクロ撮影)までを容易に行うことができる。
【0044】
また、本実施例では、マクロモードにおける最大倍率端においても、被写体とレンズ前端との距離であるワークディスタンスがある程度広くとれる。しかも、マクロモードでの焦点深度(被写界深度)をある程度深く確保している。これにより、最大倍率端においても立体物を容易に観察することができる。
【0045】
以上説明したように、本実施例によれば、拡大アダプタ等の装着による大型化を伴うことなく、カメラモードとマクロモードでのズーム撮影およびこれらモード間の移行を容易に行うことができる。
【0046】
なお、図1の上段および図5に示すように、本実施例の交換レンズ装置1における最も被写体側の部分(前端部)、具体的には第1レンズ保持枠11における第1レンズユニットL1よりも被写体側(物体側)の部分には、光軸回りにリング状に配置された複数のLED(発光体)30を備えた照明ユニット31が取り付けられている。LED30からの光は、マクロモードで被写体を拡大接写する場合に該被写体を照明するのに使用される。照明ユニット31を交換レンズ装置1の前端部に設けることで、LED30からの光がけられることなく、被写体を明るく照明することができる。なお、照明ユニット31に対する電源供給は、マウント部102,20に設けられた不図示の電気接点を介してカメラ本体100から行われる。
【0047】
また、複数のLED(発光素子)30には、R(赤)、G(緑)、B(青)のLEDと、これらR,G,BのLEDの間に配置されたW(白)のLEDとを含む。ただし、これは例であり、複数色のLEDの配置はこれ以外のものであってもよい。
【0048】
交換レンズ装置1に設けられたLED選択スイッチ(図示せず)の操作により、任意の色のLEDを選択的に発光させることができる。これにより、被写体を色によって部分的に際立たせて撮像することができる。例えば、マクロモードでの被写体が人間の皮膚である場合は、R色のLEDを発光させることで、皮下の組織を際立たせることができる。
【0049】
なお、図1では、LED30を交換レンズ装置1の周方向に一列に並べて配置した場合を示しているが、LEDを交換レンズ装置1の周方向に複数列で並ぶように配置してもよい。
【0050】
ここで、LEDを交換レンズ装置1の周方向に2列に並べる場合においては、例えば、内側の列のLEDの照射方向をレンズの法線方向に平行とすれば、深いところからの反射光による映像を撮像することができる。また、外側の列のLEDの照射方向をレンズの法線方向に対して斜めとすることで、被写体の表面からの反射光による映像を撮像することができる。特に、外側の列のLEDからの光により表面上の影を撮像することができ、立体感のある映像が得られる。このように、発光させるLEDの列と色を選択することで、所望の映像を撮像することができる。
【0051】
また、マクロモードでの最大倍率を選択したときに照度が不足気味であれば、全ての列のW色のLEDを選択して点灯させることで、狭い視野内の被写体に対して十分な照度を与えることができる。
【0052】
なお、マクロモードにおいて、CPU等により構成される不図示の照明制御部(制御手段)が、ズーム操作環7の操作(つまりは変倍により得られる倍率)に応じて発光するLEDを選択する(変更する)ようにしてもよい。例えば、倍率が高くなるほど照明光量を増加させて被写体を明るく照らすように、発光するLEDの数を増やしてもよい。なお、LEDへの印加電圧を変えることで、照明光量を変えることも可能である。また、照明制御部が、変倍の倍率に応じて発光色(照明色)を切り替えることにより、皮下血管等の皮膚の下の組織の映像も明瞭に撮像できるようにしてもよい。照明制御部は、フォーカス操作環4の操作に応じて、照明光量および発光色のうち少なくとも一方を変更するようにしてもよい。
【0053】
以下、図6のフローチャートを用いて、本実施例における照明ユニット31(LED30)の点灯制御の例について説明する。
【0054】
まず、ステップS61では、照明制御部は、カメラ本体100に設けられた撮像スイッチ(図示せず)が操作されたか否か、即ち、使用者による撮像指示があったか否かを判定する。撮像指示がない場合はステップS61での判定を繰り返し、撮像指示があった場合はステップS62に進む。
【0055】
ステップS62では、照明制御部は、ズーム操作環7が操作されたか否か、即ち、使用者によるズーム指示があったか否かを判定する。ズーム指示がない場合はステップS62での判定を繰り返し、ズーム指示があった場合はステップS63に進む。
【0056】
ステップS63では、照明制御部は、予め不図示のメモリにズーム指示に対応する照明条件が保存されているか否かを判定する。ズーム指示に対応する照明条件とは、例えば、カメラモードからマクロモードに切り替わったときにLED30を点灯したり、低倍率のズーム指示がなされた場合に発光させるLED30を制限して照明光量を小さくしたりするという条件である。このような照明条件が保存されていない場合は本処理を終了し、保存されている場合はステップS64に進む。
【0057】
ステップS64では、照明制御部は、上記照明条件に従って照明ユニット31(LED30)を点灯したり、その発光光量(照明光量)を調節したりする。
【0058】
そして、次のステップS65では、照明制御部は、ステップS62で得られたズーム指示がマクロモードでのズーム指示であるか否かを判定する。マクロモードでのズーム指示でない場合は本処理を終了し、マクロモードでのズーム指示である場合はステップS66に進む。
【0059】
ステップS66では、照明制御部は、LED選択スイッチからの選択指示があるか否かを判定する。選択指示がない場合は本処理を終了し、選択指示がある場合はステップS67に進む。
【0060】
ステップS67では、照明制御部は、LED選択スイッチからの選択指示に対応する色又は数のLED30を点灯させる。そして、本処理を終了する。
【0061】
また、マクロモードでは、固定鏡筒2の前端部に、外光が撮影光学系に入射することを防ぐための接写フード35が取り外し可能に装着できる。この場合、接写フード35の内側にLED30が配置される。接写フード35の先端を、被写体又は被写体が配置された面に当接させることで、容易に被写体と第1レンズユニットL1との間の距離を一定に維持したり、交換レンズ装置1の光軸方向や光軸に直交する方向での振れを防止したりすることができる。
【0062】
なお、上記実施例では、カメラ本体に対して着脱可能な交換レンズ装置について説明したが、本発明は、レンズ装置が一体に設けられた撮像装置にも適用することができる。
【0063】
以上説明した実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【0064】
例えば、上記実施例では物体側から像側に7つのレンズユニットを含むレンズ装置について説明したが、本発明は、7つ以外の数のレンズユニットを含むレンズ装置にも適用することができる。したがって、上記実施例で説明したフォーカス系および変倍系のレンズ構成は、例に過ぎず、他のレンズ構成を採用してもよい。さらに、各レンズユニットが有する屈折力の正負も上記実施例にて説明したものに限られるわけではなく、適宜選択することができる。
【0065】
また、本発明の交換レンズ装置において、フォーカス系および変倍系を交換可能としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
通常撮影時および拡大撮影時にフォーカシングおよび変倍を行えるレンズ装置および撮像装置を提供できる。
【符号の説明】
【0067】
1 交換レンズ装置
2 固定鏡筒
3 フォーカス操作環
4 フォーカスカム環
7 ズーム操作環
8 ズームカム環
L1〜L7 レンズユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側に配置されたフォーカス系と、
該フォーカス系よりも像側に配置され、前記フォーカス系とアフォーカルに接続された変倍系と、
前記フォーカス系を移動させてフォーカシングを行わせるフォーカス機構と、
前記変倍系を移動させて変倍を行わせるズーム機構とを有し、
前記フォーカス機構によるフォーカシングと前記ズーム機構による変倍とが互いに独立に行われることを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
物体側に配置されたフォーカス系と、
該フォーカス系よりも像側に配置され、前記フォーカス系とアフォーカルに接続された変倍系と、
前記フォーカス系を移動させてフォーカシングを行わせるフォーカス機構と、
前記変倍系を移動させて変倍を行わせるズーム機構とを有し、
前記フォーカス機構によるフォーカシングと前記ズーム機構による変倍とが互いに独立に行われ、
広角端と望遠端との間での変倍が可能な第1のモードと、前記第1のモードよりも高倍率での変倍が可能であって且つ該第1のモードよりも短い物体距離で拡大撮影が可能な第2のモードとを有することを特徴とするレンズ装置。
【請求項3】
物体側に配置されたフォーカス系と、
該フォーカス系よりも像側に配置され、前記フォーカス系とアフォーカルに接続された変倍系と、
前記フォーカス系を移動させてフォーカシングを行わせるフォーカス機構と、
前記変倍系を移動させて変倍を行わせるズーム機構とを有し、
前記フォーカス機構によるフォーカシングと前記ズーム機構による変倍とが互いに独立に行われ、
広角端と望遠端との間での変倍が可能な第1のモードと、前記第1のモードよりも高倍率での変倍が可能であって且つ該第1のモードよりも短い物体距離で拡大撮影が可能な第2のモードとを有し、
前記ズーム機構は、前記第1のモードでの変倍と前記第2のモードでの変倍とを連続的に操作可能に構成されていることを特徴とするレンズ装置。
【請求項4】
物体側に配置されたフォーカス系と、
該フォーカス系よりも像側に配置され、前記フォーカス系とアフォーカルに接続された変倍系と、
前記フォーカス系を移動させてフォーカシングを行わせるフォーカス機構と、
前記変倍系を移動させて変倍を行わせるズーム機構とを有し、
前記フォーカス機構によるフォーカシングと前記ズーム機構による変倍とが互いに独立に行われ、
広角端と望遠端との間での変倍が可能な第1のモードと、前記第1のモードよりも高倍率での変倍が可能であって且つ該第1のモードよりも短い物体距離で拡大撮影が可能な第2のモードとを有し、
前記第1のモードおよび前記第2のモードのそれぞれにおいて、前記フォーカス系が移動することなく同一物体距離に対する合焦状態が維持されたまま変倍が行われることを特徴とするレンズ装置。
【請求項5】
物体側に配置されたフォーカス系と、
該フォーカス系よりも像側に配置され、前記フォーカス系とアフォーカルに接続された変倍系と、
前記フォーカス系を移動させてフォーカシングを行わせるフォーカス機構と、
前記変倍系を移動させて変倍を行わせるズーム機構とを有し、
前記フォーカス機構によるフォーカシングと前記ズーム機構による変倍とが互いに独立に行われ、
広角端と望遠端との間での変倍が可能な第1のモードと、前記第1のモードよりも高倍率での変倍が可能であって且つ該第1のモードよりも短い物体距離で拡大撮影が可能な第2のモードとを有し、
前記ズーム機構は、前記第1のモードでの変倍と前記第2のモードでの変倍とを連続的に操作可能であり、
前記第1のモードおよび前記第2のモードのそれぞれにおいて、前記フォーカス系が移動することなく同一物体距離に対する合焦状態が維持されたまま変倍が行われることを特徴とするレンズ装置。
【請求項6】
前記フォーカス系と前記変倍系は、前記フォーカス機構と前記ズーム機構との接続部に配置されたレンズによってアフォーカルに接続されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項7】
前記フォーカス系は、前記物体側から前記像側に順に、負の第1フォーカスレンズユニット、正の第2フォーカスレンズユニットおよび負の第3フォーカスレンズユニットにより構成され、
前記フォーカス系と前記変倍系は、正のレンズユニットによりアフォーカルに接続されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項8】
前記変倍系は、前記物体側から前記像側に順に、負の第1変倍レンズユニット、正の第2変倍レンズユニットおよび負の第3変倍レンズユニットにより構成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項9】
前記フォーカス系と前記変倍系とは、無焦点で光学的に接続されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項10】
前記フォーカス系よりも前記物体側において前記フォーカス系の光軸回り方向に配置された複数の発光体を含む照明ユニットを有することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項11】
前記フォーカス機構又は前記ズーム機構の操作に応じて前記照明ユニットを点灯制御する制御手段を有することを特徴とする請求項10に記載のレンズ装置。
【請求項12】
前記変倍によって得られる倍率に応じて前記照明ユニットの照明光量および照明色のうち少なくとも一方を変更する制御手段を有することを特徴とする請求項10に記載のレンズ装置。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項に記載のレンズ装置と、
該レンズ装置により形成された被写体像を光電変換する撮像素子とを有することを特徴とする撮像装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−37758(P2012−37758A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178557(P2010−178557)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】