説明

レーザレーダ装置

【課題】距離の異なる複数の検出対象を同時に検出することができ、低コストで精度の高い測距を行なうことのできるレーザレーダ装置を提供する。
【解決手段】光源と、前記光源より出射された光を走査する光走査部と、前記光走査部より出射された光が検出対象に照射されることにより、前記検出対象において反射された光を受光する受光部と、を有し、前記検出対象と前記受光部との間には、複数の貫通孔を有する多孔部材が設置されていることを特徴とするレーザレーダ装置を提供することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走行路に存在する先行車両や障害物の判別、または、道路の車線区分を示す白線やキャッツアイ等のレーンマーカの検出のために、車両等に搭載される走査型レーザレーダを用いた物体種別判別装置が一般的に用いられている。レーザレーダ装置は、車両等の前方にレーザ光を出射し、出射されたレーザ光が先行車両や障害物等において反射され、この反射光を受光することにより、車両等の前方に存在している先行車両や障害物等を検出することができる。
【0003】
一般的な走査型レーザレーダ装置の動作原理について図1に基づき説明する。図1に示されるように、このレーザレーダ装置は、送光部910、受光部920、制御部となるECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)930等を有している。尚、送光部910及び受光部920は、自動車等の車両の前方に存在している検出対象である物体等を検出することができるように、車両の前方に設置されている。
【0004】
送光部910は、パルス状のレーザ光を出射する半導体レーザダイオード(LD:laser diode)911、光スキャナ912、LD911からの光を光スキャナ912に導くための入力光学系913、光スキャナ912を通過した光ビームについて、路面対する傾斜角等を制御するための出力光学系914等を備えている。LD911は、LD駆動回路915を介してEUC930に接続されており、EUC930からのLD駆動信号によりレーザ光を出射する。光スキャナ912は、光スキャナ駆動回路916を介しECU930と接続されており、EUC930からの光スキャナ駆動信号に基づき所定の固定周波数でLD911から出射された光ビームを水平方向に繰り返し走査する。光スキャナ912における光ビームの走査角は走査角モニタ917によって検出され、走査角信号としてECU930側に出力され、光スキャナ駆動信号にフィードバックすることにより走査角度及び走査周波数を制御する。
【0005】
受光部920は、受光レンズ921及び受光素子922等を有しており、車両前方の物体から反射されたレーザ光は受光レンズ921及び不図示のミラー素子等を介し受光素子922に入射する。受光素子922は、フォトダイオード等により形成されており、反射光における光強度に対応する電圧値の電気信号を出力する。受光素子922より出力された電気信号は、増幅器941において増幅され、コンパレータ942に出力される。コンパレータ942では増幅器941からの出力電圧の値を基準電圧V0と比較し、出力電圧の値がV0よりも大きくなったときに、所定の受光信号を時間計測回路943に出力する。
【0006】
時間計測回路943には、ECU930からLD駆動回路915へ出力されるLD駆動信号も入力しており、レーザ光を出射した時刻と、反射光を受光した時刻の時間差を計測時間データとして、ECU930に出力する。この計測時間データに基づいて、ECU930において、物体までの距離を容易に算出することができる。尚、本実施の形態においては、LD911、光スキャナ912、入力光学系913、出力光学系914、走査角モニタ917を光照射部950と記載する場合がある。
【0007】
このような構造の走査型レーザレーダ装置において、送光部910に用いられる光スキャナ912としては、ポリゴンミラーやガルバノミラー等を用いたものがあり、例えば、図2に示すように、ポリゴンミラー等の走査ミラー961を有する光スキャナ912の脇にLD911及びコリメートレンズ等の入力光学系913を配置したものがある。この光スキャナ912においては、LD911から出射されたレーザ光は入力光学系913を介し、光スキャナ912の走査ミラー961におけるミラー面に照射される。走査ミラー961は回転軸962を中心に回転しており、光スキャナ912の走査ミラー961におけるミラー面に照射された光は反射され、水平方向において広範囲にレーザビームを出射し走査することができる。これにより、広範囲な領域において距離測定が可能となる。
【0008】
この走査型レーザレーダ装置より出射された光が、検出対象物等となる検出対象970に照射されると、検出対象970において反射され散乱光が発生する。この検出対象970から反射された散乱光の一部は、受光レンズ921により集光され、受光素子922に入射し、光の検出がなされる。
【0009】
ここで、検出対象970が遠い位置に存在している場合、検出対象970において散乱した光のうち、受光レンズ921に入射する光の光量が微弱になる。このため、微弱な光量の光も検出することができるように、特許文献1では、受光素子922として受光感度の高いアバランシェフォトダイオード(APD:avalanche photodiode)を用いた構造のものが開示されている。APDは、一般的にPIN型フォトダイオード(PD:Photodiode、以下、「PD」と記載する)よりも低ノイズで、高い受光感度を有する素子である。また、印加するバイアス電圧によって、受光感度を任意に設定することが可能であり、具体的には、バイアス電圧を高くすれば高感度に、バイアス電圧を低くすれば低感度に設定することが可能である。よって、APDにおいてバイアス電圧を高く設定することにより、微弱な反射光を高精度に検出することが可能となる。
【0010】
また、図3に示すように、走査型レーザレーダ装置より検出対象970に照射され、検出対象970において反射された散乱光は全方位に散乱する。この為、図3(a)に示すように、走査型レーザレーダ装置から遠い距離に検出対象970fが存在している場合における受光レンズ921に入射する散乱光Ifの光強度と、図3(b)に示すように、走査型レーザレーダ装置より近い距離に検出対象970nが存在している場合における受光レンズ921に入射する散乱光Inの光強度との関係は、(Inの光強度)>>(Ifの光強度)となる。
【0011】
よって、図4に示すように、走査型レーザレーダ装置に対し、近い距離Xnに存在している検出対象970nの散乱光Inの光強度による出力信号Vnが高くなり、遠い距離Xfに存在している検出対象970fの散乱光Ifの光強度による出力信号Vfが低くなるため、出力信号Vfに出力信号Vnが重なり、各々の時間差を検出することが困難となり、時間分解能が低下し、測距精度が低下してしまう。尚、cは光速であり、c/(2Xn)は、近い距離Xnに検出対象970nが存在している場合において、光が出射された後、受光素子922において検出されるまでの時間であり、c/(2Xf)は、遠い距離Xfに検出対象970fが存在している場合において、光が出射された後、受光素子922において検出されるまでの時間である。
【0012】
このため、特許文献2に開示されている装置では、受光素子922として、PDとAPDとの双方が設けられている。この場合、受光レンズ921に入射した散乱光を分岐し、近い距離からの散乱光はPDにより検出し、遠い距離からの散乱光はAPDにより検出することにより、相互に出力信号に漏れ込むことを低減し、時間分解能を向上させ、測距精度を向上させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、特許文献2に開示されている装置では、受光レンズに入射した散乱光を2分岐させているため、各々の受光素子に入射する光量の絶対量が低下し、出力信号電圧をある一定量確保するために、バイアス電圧を高く設定する必要があり、これに伴い、ショットノイズが増加するという問題がある。
【0014】
また、PDとAPDとの2つの受光素子を必要とするため、各々の受光素子における集光レンズ、アンプ、A/D変換器等が必要となり、レーザレーダ装置の複雑化及び高コスト化を招くといった問題もある。
【0015】
よって、本発明は、近い距離に存在している検出対象と遠い距離に存在している検出対象とを同時に検出することができるレーザレーダ装置であって、低コストで精度の高い測距を行なうことのできるレーザレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、光源と、前記光源より出射された光を走査する光走査部と、前記光走査部より出射された光が検出対象に照射されることにより、前記検出対象において反射された光を受光する受光部と、を有し、前記検出対象と前記受光部との間には、複数の貫通孔を有する多孔部材が設置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、近い距離に存在している検出対象と遠い距離に存在している検出対象とを同時に検出することができるレーザレーダ装置であって、低コストで精度の高い測距を行なうことのできるレーザレーダ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】走査型レーザレーダ装置の構成図
【図2】走査型レーザレーダ装置の要部の構造図
【図3】検出対象までの距離が異なる場合の説明図
【図4】検出対象までの距離が異なる場合の図1に示すレーザレーダ装置の出力信号図
【図5】第1の実施の形態における走査型レーザレーダ装置の構成図
【図6】第1の実施の形態における多孔部材の斜視図
【図7】第1の実施の形態における多孔部材の平面図
【図8】第1の実施の形態における走査型レーザレーダ装置の説明図(1)
【図9】第1の実施の形態における走査型レーザレーダ装置の説明図(2)
【図10】第1の実施の形態における走査型レーザレーダ装置の説明図(3)
【図11】第1の実施の形態における多孔部材の説明図
【図12】第1の実施の形態における走査型レーザレーダ装置の入射角度θと透過光強度Iとの相関図
【図13】検出対象までの距離が異なる場合の第1の実施の形態におけるレーザレーダ装置の出力信号図
【図14】第2の実施の形態における多孔部材の説明図
【図15】第2の実施の形態における多孔部材の第1の変形例の説明図
【図16】第2の実施の形態における多孔部材の第1の変形例の斜視図
【図17】第2の実施の形態における第1の変形例の多孔部材を用いたレーザレーダ装置の入射角度θと透過光強度Iとの相関図
【図18】第2の実施の形態における多孔部材の第2の変形例の説明図
【図19】第2の実施の形態における多孔部材の第3の変形例の説明図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための形態について、以下に説明する。尚、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0020】
〔第1の実施の形態〕
本実施の形態におけるレーザレーダ装置について、図5に基づき説明する。本実施の形態におけるレーザレーダ装置は、送光部110、受光部120、制御部となるECU130等を有している。尚、送光部110及び受光部120は、自動車等の車両の前方に存在している検出対象となる物体等を検出することができるように、車両の前方に設置されている。
【0021】
送光部110は、パルス状のレーザ光を出射する半導体レーザダイオードにより形成されている光源111、光スキャナ113、光源111からの光を光スキャナ113に導くためのコリメータレンズ等の入力光学系112、光スキャナ113を通過した光ビームについて、路面に対する傾斜角等を制御するための出力光学系114等を備えている。光源111は、LD駆動回路115を介してEUC130に接続されており、EUC130からのLD駆動信号によりレーザ光を出射する。光スキャナ113は、ポリゴンミラーやガルバノミラー等を有するものであり、光スキャナ駆動回路116を介しECU130と接続されており、EUC130からの光スキャナ駆動信号に基づき所定の固定周波数で光源111から出射された光ビームを水平方向に繰り返し走査する。光スキャナ113における光ビームの走査角は走査角モニタ117によって検出され、走査各信号としてECU130側に出力され、光スキャナ駆動信号にフィードバックすることにより走査角度及び走査周波数が制御される。
【0022】
受光部120は、受光レンズ121、受光素子122及び多孔部材160等を有しており、車両前方の物体から反射されたレーザ光は、多孔部材160、受光レンズ121及び不図示のミラー素子等を介し受光素子122に入射する。受光素子122は、フォトダイオード等により形成されており、反射光における光強度に対応する電圧値の電気信号を出力する。受光素子122より出力された電気信号は、増幅器141において増幅され、コンパレータ142に出力される。コンパレータ142では増幅器141からの出力電圧の値を基準電圧V0と比較し、出力電圧の値がV0よりも大きくなったときに、所定の受光信号を時間計測回路143に出力する。
【0023】
時間計測回路143には、ECU130からLD駆動回路115へ出力されるLD駆動信号も入力しており、レーザ光を出射した時刻と、反射光を受光した時刻の時間差を計測時間データとして、ECU130に出力する。この計測時間データに基づいて、ECU130において、物体までの距離を容易に算出することができる。尚、本実施の形態においては、LD111、光スキャナ112、入力光学系113、出力光学系114、走査角モニタ117を光照射部150と記載する場合がある。
【0024】
本実施の形態におけるレーザレーダ装置では、図6及び図7に示すように、多孔部材160は、平行平板状の基板161に表面から裏面に貫通する複数の円形状の貫通孔162が形成されており、貫通孔162の側壁部分162aは遮光壁となっており、貫通孔162の側壁部分162aに入射した光は遮光される。本実施の形態では、貫通孔162は、基板161に対して略垂直方向に貫通するように形成されている。尚、多孔部材160に入射する光の角度は、基板161面の法線方向に対する角度である。また、多孔部材160の貫通孔162の側壁部分162aにおいて、入射した散乱光が反射又は散乱することなく光を吸収するように、散乱光が貫通孔162の側壁部分162aは、黒色等で着色されていることが好ましい。具体的には、光を吸収する材料として、例えば、カーボン等の黒色の材料により多孔部材160を形成したものや、貫通孔162の側壁部分162aを含む多孔部材160の全体を黒く塗装したものであってもよい。更に、貫通孔160の形状は楕円等の形状であってもよい。尚、本実施の形態における多孔部材160においては、貫通孔162は2次元状に略等間隔に形成されている。図6は、多孔部材160の斜視図であり、図7は多孔部材160の平面図である。
【0025】
次に、本実施の形態におけるレーザレーダ装置の機能について説明する。
【0026】
図8に示すように、本実施の形態におけるレーザレーダ装置から、遠い距離Xfの位置に、検出対象170fが存在している場合には、図8(a)に示すように、検出対象170fに照射され散乱された散乱光Ifは、略平行光となる。よって、図8(b)に示すように、多孔部材160に対し散乱光の入射角度θが略0°となるため、多孔部材160に照射された散乱光Ifの多くは、貫通孔162を通り、受光レンズ121に入射する。
【0027】
また、図9に示すように、本実施の形態におけるレーザレーダ装置から、近い距離Xnの位置に、検出対象170nが存在している場合には、図9(a)に示すように、検出対象170nに照射され散乱された散乱光Inは、図9(b)に示すように、入射角度θが略θn°となる角度で多孔部材160に入射する。よって、多孔部材160に照射された散乱光Inの多くは、貫通孔162における側壁部分162aにおいて遮られ、僅かな光量の光のみが、受光レンズ121に入射する。
【0028】
また、図10に示すように、本実施の形態におけるレーザレーダ装置から、距離Xnよりも長く、距離Xfよりも短い中程度の距離Xmの位置に、検出対象170mが存在している場合には、図10(a)に示すように、検出対象170mに照射され散乱された散乱光Imは、図10(b)に示すように、入射角度θが略θm°となる角度で多孔部材160に入射する。よって、多孔部材160に照射された散乱光Imの一部は、貫通孔162における側壁部分162aにおいて遮られるものの、残りの散乱光は貫通孔162を通り、受光レンズ121に入射する。このように、散乱光If、Im、Inにおける光強度は、In>Im>Ifの関係にあり、散乱光If、Im、Inにおける入射角度θは、0<θm<θnの関係にある。
【0029】
次に、図11に基づき、より詳細に多孔部材160について説明する。図11は、直径がdの貫通孔162が複数設けられている多孔部材160において、1つの貫通孔162に散乱光が入射角度θで入射する場合を示すものである。尚、図11(a)は、多孔部材160の貫通孔162の断面図であり、図11(b)は、多孔部材160の貫通孔162の平面図である。多孔部材160の厚さ、即ち、基板161の厚さをtとすると、多孔部材160を通った光の透過光強度Iは、数1に示す式で表わされる。尚、数1に示す式は、透過光強度Iが、θ=0°の場合が1となるものである。
【0030】
【数1】

例えば、多孔部材160の厚さtを2mm、貫通孔162における直径dを0.2mmとした場合における散乱光の入射角度θと透過光強度Iとの関係を図12に示す。図12に示されるように、多孔部材160では、散乱光の入射角度θが大きくなるに従い透過光強度Iの値が低下する。従って、検出対象170が本実施の形態におけるレーザレーダ装置から遠い距離に存在している場合には、散乱光の入射角度θは略0°となるため、透過光強度Iは、殆ど低下することはない。しかしながら、検出対象170が本実施の形態におけるレーザレーダ装置から近い距離に存在している場合には、散乱光の入射角度θは大きくなるため、透過光強度Iは弱くなる。
【0031】
図13は、本実施の形態におけるレーザレーダ装置より遠い距離と近い距離に検出対象が各々存在している場合において、受光素子122であるAPDにより検出される出力信号を示す。多孔部材160が設けられていないレーザレーダ装置においては、図4に示されるように、近い距離Xnに存在している検出対象970nの散乱光Inの光強度が強いため出力信号Vnが高く、遠い距離Xfに存在している検出対象970fの散乱光Ifの光強度が弱いため出力信号Vfが低い。よって、出力信号Vfと出力信号Vnとが重なり、各々の時間差を検出することが困難となるり、時間分解能が低下し、測距精度が低下する。しかしながら、本実施の形態におけるレーザレーダ装置では、図13に示されるように、近い距離Xnに存在している検出対象170nの散乱光は多孔部材160により弱められるため受光素子122における出力信号Vが低くなるため、近い距離Xnに存在している検出対象170nの散乱光による出力信号と遠い距離Xfに存在している検出対象170fの散乱光による出力信号とが重なることはない。従って、各々の出力信号の時間差を検出することができるため、時間分解能の低下を防ぎ、測距精度を向上させることができる。尚、cは光速であり、c/(2Xn)は、近い距離Xnに検出対象170nが存在している場合において、光が出射された後、受光素子122において検出されるまでの時間であり、c/(2Xf)は、遠い距離Xfに検出対象170fが存在している場合において、光が出射された後、受光素子122において検出されるまでの時間である。
【0032】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、多孔部材に形成される貫通孔の位置及び形状が第1の実施の形態とは異なるものである。図14は、本実施の形態における多孔部材260を示すものである。この多孔部材260は、基板261に形成された円形状の貫通孔262をより高い密度で配置した構造のものである。これにより、入射した散乱光が貫通孔262の形成されていない領域で遮光されることをできるだけ抑制することができ、全体の透過光強度を高くすることができる。従って、ショットノイズを相対的に低下させることができ、遠くの検出対象の測距も可能となる。
【0033】
(第1の変形例)
次に、本実施の形態における第1の変形例について説明する。本実施の形態における第1の変形例は、図15及び図16に示すように、基板271に四角形状の貫通孔272を2次元状に設けた構造の多孔部材270を有するものである。このように貫通孔272を四角形状で形成することにより、より一層、透過光強度を高くすることができ、遠くの検出対象の測距も可能となる。尚、図15は、この多孔部材270の平面図であり、図16は斜視図である。
【0034】
また、図17は、この多孔部材270における入射角度θと多孔部材270を透過する透過光強度Iとの関係を示すものである。図17に示すように、X軸及びY軸方向において入射角θを変化させた場合(貫通孔272の辺に平行方向に入射角θを変化させた場合)と、貫通孔272の対角方向に平行方向に入射角θを変化させた場合(貫通孔272の対角線に平行方向に入射角θを変化させた場合)とでは、透過光強度Iにおける入射角度θの依存性が異なる。言い換えるならば、透過光強度Iにおける入射角度θの依存性が、散乱光を入射させる方向によって異なるものである。
【0035】
(第2の変形例)
次に、本実施の形態における第2の変形例について説明する。本実施の形態における第2の変形例は、図18に示すように、基板281に六角形状の貫通孔282を2次元状に設けた構造の多孔部材280を有するものである。即ち、多孔部材280における複数の貫通孔282をハニカム状に形成したものである。このような形状で形成することにより、散乱光が入射する方向によって、入射角度θに対する透過光強度Iの依存性が変化することを、できるだけ抑制することができる。また、ハニカム状に形成し、六角形の貫通孔282をできるだけ密に配置することにより、透過光強度を高くすることができる。尚、第1の変形例では、貫通孔272の形状が四角形の場合について説明し、第2の変形例では、貫通孔282の形状が六角形の場合について説明したが、貫通孔の形状は三角形であってもよい。
【0036】
(第3の変形例)
また、本実施の形態は、図19に示すように、基板291に貫通孔292の一方の方向を他方の方向よりも長く形成した構造の多孔部材290であってもよい。尚、一方の方向と他方の方向は直交するものとする。このように、他方の方向であるY軸方向に対し一方の方向であるX軸方向に長い貫通孔292を形成することにより、XZ面に対する散乱光の入射角度θに対してのみ依存性を持たせることができる。車道に略平行な方向がX軸方向となるように、このような多孔部材290を設置することにより、道路の表面のアスファルト等で散乱する強い散乱光の強度のみを低減させることができる。
【0037】
尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
【0038】
以上、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。
【符号の説明】
【0039】
110 送光部
111 光源
112 入力光学系
113 光スキャナ
114 出力光学系
115 LD駆動回路
116 光スキャナ駆動回路
117 走査角モニタ
120 受光部
121 受光レンズ
122 受光素子
130 ECU
141 増幅器
142 コンパレータ
143 時間計測回路
150 光照射部
160 多孔部材
161 基板
162 貫通孔
162a 側壁部分
170 検出対象
【先行技術文献】
【特許文献】
【0040】
【特許文献1】特許第3621817号公報
【特許文献2】特開2008−20204号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源より出射された光を走査する光走査部と、
前記光走査部より出射された光が検出対象に照射されることにより、前記検出対象において反射された光を受光する受光部と、
を有し、
前記検出対象と前記受光部との間には、複数の貫通孔を有する多孔部材が設置されていることを特徴とするレーザレーダ装置。
【請求項2】
前記多孔部材には、前記貫通孔が2次元的に形成されているものであることを特徴とする請求項1に記載のレーザレーダ装置。
【請求項3】
前記貫通孔の形状は、円形、楕円形、三角形、四角形、六角形のいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載のレーザレーダ装置。
【請求項4】
前記貫通孔の形状は、一方の長さよりも他方の長さが長く形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のレーザレーダ装置。
【請求項5】
前記貫通孔における側壁部分は光を吸収するものであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のレーザレーダ装置。
【請求項6】
前記多孔部材は、光を吸収する材料により形成されているものであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のレーザレーダ装置。
【請求項7】
前記光源より出射された光は、パルス波であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のレーザレーダ装置。
【請求項8】
前記光ビームが検出対象に照射した後、前記検出対象において反射された光を前記受光部において受光するまでの時間に基づき前記検出対象までの距離を測定するものであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のレーザレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−104746(P2013−104746A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247884(P2011−247884)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】