説明

レーザー加工装置

【課題】環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着されるウエハの中心をチャックテーブルの中心と一致させて載置することができるレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】ウエハの大きさと同一または僅かに小さいウエハ保持領域と保持領域の外側周囲にレーザ光線緩衝溝が形成されているチャックテーブルとレーザ光線照射手段とを具備するレーザ加工装置であって、環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着されたウエハと環状のフレームの中心との変位量を検出する変位量検出機構と、ウエハと環状のフレームの中心とのズレに基づいて加工送り手段および割り出し送り手段とウエハ搬送手段を制御する制御手段とを具備し、制御手段は搬送されるウエハの中心がチャックテーブルの中心位置と一致するようにウエハ着脱位置に位置付けられているチャックテーブルとウエハ搬送手段によって搬送されるウエハの搬送位置とを相対的に変位せしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の所定の領域にレーザー光線を照射して所定のレーザー加工を施すレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハをストリートに沿って切断することにより回路が形成された領域を分割して個々のデバイスを製造している。また、サファイヤ基板の表面に窒化ガリウム系化合物半導体等が積層された光デバイスウエーハもストリートに沿って切断することにより個々の発光ダイオード、レーザーダイオード等の光デバイスに分割され、電気機器に広く利用されている。
【0003】
このような半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のウエーハの分割方法として、ウエーハ内部に集光点を合わせてウエーハに対して透過性を有する波長(例えば1064nm)のパルスレーザー光線をストリートに沿って照射し、ウエーハの内部にストリートに沿って変質層を連続的に形成し、この変質層が形成されることによって強度が低下したストリートに沿って外力を加えることにより、ウエーハを分割する方法も提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【0004】
また、上述したウエーハの分割方法として、ウエーハに形成されたストリートに沿ってウエーハに対して吸収性を有する波長(例えば355nm)のパルスレーザー光線を照射することによりレーザー加工溝を形成し、このレーザー加工溝に沿ってメカニカルブレーキング装置によって割断する方法が提案されている。(例えば、特許文献2参照。)
【0005】
また、近時においては、IC、LSI等の回路の処理能力を向上するために、シリコンウエーハの如き半導体基板の表面にSiOF、BSG(SiOB)等の無機物系の膜やポリイミド系、パリレン系等のポリマー膜である有機物系の膜からなる低誘電率絶縁体被膜(Low−k膜)を積層せしめた形態の半導体ウエーハが実用化されている。しかるに、Low−k膜は、雲母のように多層(5〜15層)に積層されているとともに非常に脆いことから、切削ブレードによりストリートに沿って切削すると、Low−k膜が剥離し、この剥離が回路にまで達し半導体チップに致命的な損傷を与えるという問題がある。
【0006】
上述した問題を解消するために、半導体ウエーハのストリートに形成されているLow−k膜にレーザー光線を照射してLow−k膜を除去し、Low−k膜が除去されたストリートを切削ブレードにより切削する加工装置が提案されている。(例えば、特許文献3参照。)
【0007】
半導体ウエーハにレーザー加工を施すためには、半導体ウエーハをチャックテーブル上に保持した状態でレーザー光線照射手段からレーザー光線を照射しつつ、チャックテーブルとレーザー光線照射手段を加工送り方向に相対移動せしめる。しかるに、半導体ウエーハの外周縁を越えてレーザー光線が照射されると、半導体ウエーハを保持しているチャックテーブルにレーザー光線が照射され、チャックテーブルのウエーハ保持領域が損傷され表面精度が低下するという問題がある。また、半導体ウエーハをストリートに沿って分割する際には、半導体ウエーハを環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着した状態でストリートに沿ってレーザー光線を照射する。しかるに、上述したように半導体ウエーハの外周縁を越えてレーザー光線が照射されると、ダイシングテープが加熱されて溶融しチャックテーブルのウエーハ保持領域に付着する。この付着したダイシングテープによってウエーハ保持領域に形成された負圧を作用させるための吸引孔が目詰まりしたり、ウエーハ保持領域の表面精度が低下するという問題がある。このため、ウエーハ保持領域に付着したダイシングテープを砥石によって削ぎ落とすことが必要となり、場合によってはチャックテーブルを交換しなければならない。
【0008】
上述した問題を解消するために、ウエーハを保持するウエーハ保持領域をウエーハと相似形で僅かに小さく形成し、該ウエーハ保持領域の外側周囲にレーザー光線緩衝溝を形成したレーザー加工装置のチャックテーブルが提案されている。(例えば、特許文献4参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3408805号
【特許文献2】特開2004−9139号公報
【特許文献3】特開2003−320466号公報
【特許文献4】特開2005−262249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
而して、環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着されるウエーハは、環状のフレームの中央領域に許容範囲を持って貼着されるので、環状のフレームの中心とウエーハの中心が必ずしも一致しない。一方、環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着されるウエーハをウエーハ着脱位置に位置付けられたチャックテーブルに搬送する搬送手段は、環状のフレームの中心をチャックテーブルの中心に一致させるように搬送する。従って、環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着されたウエーハの中心と環状のフレームの中心が一致していない場合には、チャックテーブルの中心とウエーハの中心が一致せず、ウエーハがチャックテーブルのウエーハ保持領域からズレた位置に載置される。この結果、ウエーハが載置されていないウエーハ保持領域にレーザー光線が照射され、ダイシングテープが加熱されて溶融しチャックテーブルのウエーハ保持領域に付着するという問題を解消することができない。
【0011】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着されるウエーハの中心をチャックテーブルの中心と一致させて載置することができるレーザー加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、ウエーハの大きさと同一または僅かに小さいウエーハ保持領域と該ウエーハ保持領域の外側周囲にレーザー光線緩衝溝が形成されているチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハにレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルをウエーハ着脱位置と該レーザー光線照射手段による加工領域との間を加工送り方向(X軸方向)に移動せしめる加工送り手段と、X軸方向と直交する割り出し送り方向(Y軸方向)に移動せしめる割り出し送り手段と、環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着されたウエーハを収容しカセットテーブル上に載置されるカセットと、該カセットに収容された環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着されたウエーハを搬出するウエーハ搬出手段と、該ウエーハ搬出手段によって搬出された環状のフレームの中心位置合わせを実施するための位置合わせ手段と、該位置合わせ手段に搬出された環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着されたウエーハをウエーハ着脱位置に位置付けられたチャックテーブルに搬送するウエーハ搬送手段と、を具備するレーザー加工装置において、
該位置合わせ手段において中心位置合わせされた環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着されたウエーハの中心と環状のフレームの中心との変位量を検出する変位量検出機構と、
該変位量検出機構によって検出されたウエーハの中心と環状のフレームの中心との変位量に基づいて該加工送り手段および該割り出し送り手段と該ウエーハ搬送手段とを制御する制御手段と、を具備し、
該制御手段は、該ウエーハ搬送手段によって搬送される環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着されたウエーハの中心が該チャックテーブルの中心位置と一致するように該ウエーハ着脱位置に位置付けられている該チャックテーブルと該ウエーハ搬送手段によって搬送される環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着されたウエーハの搬送位置とを相対的に変位せしめる、
ことを特徴とするレーザー加工装置が提供される。
【0013】
上記制御手段は、ウエーハ着脱位置に位置付けられているチャックテーブルの中心位置がウエーハ搬送手段によって搬送される環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着されたウエーハの中心と一致するように該加工送り手段および該割り出し送り手段を制御する。
また、上記変位量検出機構は、上記位置合わせ手段において中心位置合わせされた環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着されたウエーハの全体を撮像する撮像手段と、該撮像手段によって撮像された画像情報に基づいてウエーハの中心と環状のフレームの中心とのX軸方向およびY軸方向の変位量を求める制御手段とからなっている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるレーザー加工装置は、位置合わせ手段において中心位置合わせされた環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着されたウエーハの中心と環状のフレームの中心との変位量を検出する変位量検出機構と、該変位量検出機構によって検出されたウエーハの中心と環状のフレームの中心とのズレに基づいて加工送り手段および割り出し送り手段とウエーハ搬送手段を制御する制御手段とを具備し、制御手段はウエーハ搬送手段によって搬送される環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着されたウエーハの中心がチャックテーブルの中心位置と一致するようにウエーハ着脱位置に位置付けられているチャックテーブルとウエーハ搬送手段によって搬送される環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着されたウエーハの搬送位置とを相対的に変位せしめるので、環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着されたウエーハの中心が環状のフレームの中心とズレていても、ウエーハの中心をチャックテーブルの中心に位置付けることができる。従って、レーザー光線照射手段によるレーザー光線照射時にウエーハをオーバーランしてレーザー光線が照射されると、ウエーハの外周縁より外側のダイシングテープに照射されるが、レーザー光線がダイシングテープに照射される領域にはチャックテーブルのウエーハ保持領域が存在しないので、レーザー光線が照射されることによりダイシングテープが溶融してもウエーハ保持領域に付着することはない。なお、ダイシングテープに照射されたレーザー光線は、ダイシングテープを透過してレーザー光線緩衝溝の底面に照射されるが、レーザー光線緩衝溝の底面は集光点から十分に離れておりレーザーが拡散しているため、加工できる程のエネルギー密度は無くチャックテーブルを損傷することはない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図。
【図2】図1に示すレーザー加工装置の要部斜視図。
【図3】図1に示すレーザー加工装置に装備されるチャックテーブルの要部斜視図。
【図4】図3に示すチャックテーブルの断面図。
【図5】図1に示すレーザー加工装置に装備されるレーザー光線照射手段の構成を簡略に示すブロック図。
【図6】図5に示すレーザー光線照射手段から照射されるレーザー光線の集光スポット径を説明するための簡略図。
【図7】ウエーハとしての半導体ウエーハの斜視図。
【図8】図7に示す半導体ウエーハの拡大断面図。
【図9】図7に示す半導体ウエーハを環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着した状態を示す斜視図。
【図10】図1に示すレーザー加工装置に装備される制御手段のブロック構成図。
【図11】図1に示すレーザー加工装置に装備される変位量検出機構によって実施する変位量検出工程の説明図。
【図12】図1に示すレーザー加工装置によって実施するチャックテーブル位置補正工程の説明図。
【図13】図1に示すレーザー加工装置によって実施するレーザー光線照射工程の説明図。
【図14】図13に示すレーザー光線照射工程においてレーザー光線が被加工物をオーバーランして照射された場合の一実施形態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1に示されたレーザー加工装置は、略直方体状の装置ハウジング1を具備している。この装置ハウジング1内には、図2に示す静止基台2と、該静止基台2に矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動可能に配設され被加工物であるウエーハを保持するチャックテーブルを備えたチャックテーブル機構3と、静止基台2にX軸方向と直交する矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット支持機構4と、該レーザー光線照射ユニット支持機構4に図において上下方向である矢印Zで示す集光点位置調整方向(Z軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット5とを具備している。
【0018】
上記チャックテーブル機構3は、静止基台2上にX軸方向に沿って平行に配設された一対の案内レール31、31と、該案内レール31、31上にX軸方向に移動可能に配設された第一の滑動ブロック32と、該第1の滑動ブロック32上にY軸方向に移動可能に配設された第2の滑動ブロック33と、該第2の滑動ブロック33上に円筒部材34によって支持された支持テーブル35と、被加工物であるウエーハを保持するチャックテーブル36を具備している。このチャックテーブル36はステンレス鋼等の金属材によって形成されており、図3および図4に示すように被加工物を保持するウエーハ保持領域360を備えている。ウエーハ保持領域360には上方が開放された嵌合穴361が形成されており、この嵌合穴361にポーラスセラミックス等の多孔性材料によって形成された吸着チャック362が嵌合される。上記嵌合穴361の底面には中央部に円形状の吸引溝363が形成されているとともに、該吸引溝363の外側に環状の吸引溝364が形成されている。そして、吸引溝363および364は、吸引通路365を通して図示しない吸引手段に連通されている。なお、上記ウエーハ保持領域360は、後述するウエーハの大きさと同一またはウエーハの外径より僅かに(2〜3mm)小さく形成されている。このようにウエーハ保持領域360を備えたチャックテーブル36には、ウエーハ保持領域360の外側周囲に環状の緩衝溝366が形成されている。この環状のレーザー光線緩衝溝366は、深さが5〜10mmで、幅が20〜30mmでよい。なお、レーザー光線緩衝溝366の底面にはレーザー光線を吸収するアルマイト等のレーザー光線吸収部材367が配設されている。このように構成されたチャックテーブル36は、ウエーハ保持領域360上に被加工物である例えば円盤状の半導体ウエーハを載置し、図示しない吸引手段を作動することによって吸引保持するようになっている。また、チャックテーブル36は、図2に示す円筒部材34内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられる。図示の実施形態におけるチャックテーブル36は、被加工物である後述するウエーハを貼着したダイシングテープが装着されたダイシングフレームを固定するためのクランプ368を備えている。
【0019】
図2を参照して説明を続けると、上記第1の滑動ブロック32は、その下面に上記一対の案内レール31、31と嵌合する一対の被案内溝321、321が設けられているとともに、その上面にY軸方向に沿って平行に形成された一対の案内レール322、322が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック32は、被案内溝321、321が一対の案内レール31、31に嵌合することにより、一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第1の滑動ブロック32を一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動させるための加工送り手段37を具備している。加工送り手段37は、上記一対の案内レール31と31の間に平行に配設された雄ネジロッド371と、該雄ネジロッド371を回転駆動するためのパルスモータ372等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド371は、その一端が上記静止基台2に固定された軸受ブロック373に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ372の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド371は、第1の滑動ブロック32の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ372によって雄ネジロッド371を正転および逆転駆動することにより、第一の滑動ブロック32は案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動せしめられる。このように第一の滑動ブロック32を案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動せしめ加工送り手段37は、チャックテーブル36を図1および図2に示すウエーハ着脱位置とレーザー光線照射ユニット5による加工領域との間をX軸方向に移動せしめる。
【0020】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記チャックテーブル36の加工送り量を検出するための加工送り量検出手段374を備えている。加工送り量検出手段374は、案内レール31に沿って配設されたリニアスケール374aと、第1の滑動ブロック32に配設され第1の滑動ブロック32とともにリニアスケール374aに沿って移動する読み取りヘッド374bとからなっている。この加工送り量検出手段374の読み取りヘッド374bは、図示に実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量を検出する。なお、上記加工送り手段37の駆動源としてパルスモータ372を用いた場合には、パルスモータ372に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量を検出することができる。また、上記加工送り手段37の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量を検出することができる。
【0021】
上記第2の滑動ブロック33は、その下面に上記第1の滑動ブロック32の上面に設けられた一対の案内レール322、322と嵌合する一対の被案内溝331、331が設けられており、この被案内溝331、331を一対の案内レール322、322に嵌合することにより、Y軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第2の滑動ブロック33を第1の滑動ブロック32に設けられた一対の案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動させるための第1の割り出し送り手段38を具備している。第1の割り出し送り手段38は、上記一対の案内レール322と322の間に平行に配設された雄ネジロッド381と、該雄ネジロッド381を回転駆動するためのパルスモータ382等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド381は、その一端が上記第1の滑動ブロック32の上面に固定された軸受ブロック383に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ382の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド381は、第2の滑動ブロック33の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ382によって雄ネジロッド381を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック33は案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0022】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記第2の滑動ブロック33の割り出し送り量を検出するための割り出し送り量検出手段384を備えている。割り出し送り量検出手段384は、案内レール322に沿って配設されたリニアスケール384aと、第2の滑動ブロック33に配設されリニアスケール384aに沿って移動する読み取りヘッド384bとからなっている。この割り出し送り量検出手段384の読み取りヘッド384bは、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、レーザー光線照射ユニット5の割り出し送り量を検出する。なお、上記第1の割り出し送り手段38の駆動源としてパルスモータ382を用いた場合には、パルスモータ382に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、レーザー光線照射ユニット5の割り出し送り量を検出することができる。また、上記第2の割り出し送り手段38の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、第2の滑動ブロック33即ちチャックテーブル36の割り出し送り量を検出することができる。
【0023】
上記レーザー光線照射ユニット支持機構4は、静止基台2上に矢印Yで示す割り出し送り方向に沿って平行に配設された一対の案内レール41、41と、該案内レール41、41上にY軸方向に移動可能に配設された可動支持基台42を具備している。この可動支持基台42は、案内レール41、41上に移動可能に配設された移動支持部421と、該移動支持部421に取り付けられた装着部422とからなっている。装着部422は、一側面にZ軸方向に延びる一対の案内レール423、423が平行に設けられている。図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット支持機構4は、可動支持基台42を一対の案内レール41、41に沿ってY軸方向に移動させるための第2の割り出し送り手段43を具備している。第2の割り出し送り手段43は、上記一対の案内レール41、41の間に平行に配設された雄ネジロッド431と、該雄ネジロッド431を回転駆動するためのパルスモータ432等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド431は、その一端が上記静止基台2に固定された図示しない軸受ブロックに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ432の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド431は、可動支持基台42を構成する移動支持部421の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された雌ネジ穴に螺合されている。このため、パルスモータ432によって雄ネジロッド431を正転および逆転駆動することにより、可動支持基台42は案内レール41、41に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0024】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51と、該ユニットホルダ51に取り付けられたレーザー光線照射手段52を具備している。ユニットホルダ51は、上記装着部422に設けられた一対の案内レール423、423に摺動可能に嵌合する一対の被案内溝511、511が設けられており、この被案内溝511、511を上記案内レール423、423に嵌合することにより、Z軸方向に移動可能に支持される。
【0025】
図示のレーザー光線照射手段52は、上記ユニットホルダ51に固定され実質上水平に延出する円筒形状のケーシング521を含んでいる。ケーシング521内には図5に示すようにパルスレーザー光線発振手段522と伝送光学系523とが配設されている。パルスレーザー光線発振手段522は、YAGレーザー発振器或いはYVO4レーザー発振器からなるパルスレーザー光線発振器522aと、これに付設された繰り返し周波数設定手段522bとから構成されている。伝送光学系523は、ビームスプリッタの如き適宜の光学要素を含んでいる。上記ケーシング521の先端部には、それ自体は周知の形態でよい組レンズから構成される集光レンズ(図示せず)を収容した集光器524が装着されている。
【0026】
上記パルスレーザー光線発振手段522から発振されたレーザー光線は、伝送光学系523を介して集光器524に至り、集光器524から上記チャックテーブル36に保持される被加工物に所定の集光スポット径Dで照射される。この集光スポット径Dは、図6に示すようにガウス分布を示すパルスレーザー光線が集光器524の集光レンズ524aを通して照射される場合、D(μm)=4×λ×f/(π×W)、ここでλはパルスレーザー光線の波長(μm)、Wは対物レンズ524aに入射されるパルスレーザー光線の直径(mm)、fは集光レンズ524aの焦点距離(mm)、で規定される。
【0027】
図2に戻って説明を続けると、上記レーザー光線照射手段52を構成するケーシング521の前端部には、上記レーザー光線照射手段52によってレーザー加工すべき加工領域を検出する撮像手段6が配設されている。撮像手段6は、図示の実施形態においては可視光線によって撮像する通常の撮像素子(CCD)の外に、被加工物に赤外線を照射する赤外線照明手段と、該赤外線照明手段によって照射された赤外線を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を後述する制御手段に送る。
【0028】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51を一対の案内レール423、423に沿ってZ軸方向に移動させるための移動手段53を具備している。移動手段53は、一対の案内レール423、423の間に配設された雄ネジロッド(図示せず)と、該雄ネジロッドを回転駆動するためのパルスモータ532等の駆動源を含んでおり、パルスモータ532によって図示しない雄ネジロッドを正転および逆転駆動することにより、ユニットホルダ51およびレーザビーム照射手段52を案内レール423、423に沿ってZ軸方向に移動せしめる。なお、図示の実施形態においてはパルスモータ532を正転駆動することによりレーザビーム照射手段52を上方に移動し、パルスモータ532を逆転駆動することによりレーザビーム照射手段52を下方に移動するようになっている。
【0029】
図1に戻って説明を続けると、図示のレーザー加工装置は、被加工物であるウエーハを収容するカセットが載置されるカセット載置部8aを備えている。カセット載置部8aには図示しない昇降手段によって上下に移動可能にカセットテーブル8が配設されており、このカセットテーブル8上にカセット9が載置される。カセット9に収容されるウエーハは、図示の実施形態においては図7および図8に示すように半導体ウエーハ10からなっている。半導体ウエーハ10は、シリコンウエーハからなる半導体基板11の表面11aに格子状に配列された複数のストリート111によって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイス112が形成されている。なお、この半導体ウエーハ10は、半導体基板11の表面に低誘電率絶縁体被膜113が積層して形成されている。
【0030】
上記のように構成された半導体ウエーハ10は、図9に示すように環状のフレームFに装着された塩化ビニール等の合成樹脂シートからなるダイシングテープTに表面11aを上側にして裏面が貼着される(フレーム支持工程)。このようにしてフレーム支持工程が実施された半導体ウエーハ10は、環状のフレームFにダイシングテープTを介して支持された状態でカセット9に収容される。
【0031】
上記装置ハウジング1には仮置き領域13aが設定されており、この仮置き領域13aに上記環状のフレームFに装着されたダイシングテープTに貼着された半導体ウエーハ10を一時仮置きするとともに環状のフレームFの中心位置合わせを実施するための位置合わせ手段13が配設されている。この位置合わせ手段13は、上記カセット9からの半導体ウエーハ10の搬出方向に延びる位置規制板131と、該位置規制板131と平行に配設され位置規制板131に対して進退可能に構成された摺動板132とからなっている。従って、位置規制板131と摺動板132との間に環状のフレームFにダイシングテープTを介して支持された半導体ウエーハ10を載置し、摺動板132を位置規制板131に向けて移動することにより、半導体ウエーハ10をダイシングテープTを介して支持する環状のフレームFは位置規制板131と摺動板132との間に位置決めされる。
【0032】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記カセットテーブル8上に載置されたカセット9に収容されている環状のフレームFにダイシングテープTを介して支持された半導体ウエーハ10を位置合わせ手段13に搬出するウエーハ搬出手段14と、位置合わせ手段13に搬出された半導体ウエーハ10を上記図1および図2に示すウエーハ着脱位置に位置付けられているチャックテーブル36上に搬送する第1のウエーハ搬送手段15と、チャックテーブル36上でレーザー加工された半導体ウエーハ10を洗浄する洗浄手段16と、チャックテーブル36上でレーザー加工された半導体ウエーハ10を洗浄手段16へ搬送する第2のウエーハ搬送手段17を具備している。また、図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、撮像手段6によって撮像された画像等を表示する表示手段18を具備している。
【0033】
図1を参照して説明を続けると、図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記位置合わせ手段13に搬出された環状のフレームFに装着されたダイシングテープTに貼着されている半導体ウエーハ10の中心と環状のフレームFの中心との変位量を検出する変位量検出機構20を具備している。この変位量検出機構20は、位置合わせ手段13に搬出された環状のフレームFに装着されたダイシングテープTに貼着されている半導体ウエーハ10を撮像する撮像手段201と、該撮像手段201によって撮像された画像情報に基づいて半導体ウエーハ10の中心と環状のフレームFの中心との変位量を求める後述する制御手段とからなっている。撮像手段201は、可視光線によって撮像する撮像素子(CCD)を備え、位置合わせ手段13に載置され中心位置決めされた環状のフレームFの中心軸線上に配設され、環状のフレームFに装着されたダイシングテープTに貼着されている半導体ウエーハ10の全体を撮像することができる。この撮像手段201は、撮像した画像信号を後述する制御手段に送る。
【0034】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、図10に示す制御手段30を具備している。図10に示す制御手段30は、コンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理を実行する中央処理装置(CPU)301と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)302と、中央処理装置(CPU)301による演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)303と、カウンター304と、入力インターフェース305および出力インターフェース306とを備えている。上記リードオンリメモリ(ROM)302には、上記レーザー光線照射手段52を制御するための加工プログラムや上記位置合わせ手段13に環状のフレームFが載置された状態における環状のフレームFの座標値、ウエーハ着脱位置に位置付けられたチャックテーブル36の座標値等が格納されている。このように構成された制御手段30の入力インターフェース306には、上記加工送り量検出手段374の読み取りヘッド374b、割り出し送り量検出手段384の読み取りヘッド384b、撮像手段6、上記変位量検出機構20を構成する撮像手段201等からの検出信号が入力される。そして、制御手段30の出力インターフェース307からは、上記パルスモータ372、パルスモータ382、パルスモータ432、パルスモータ532、レーザー光線照射手段52、位置合わせ手段13、ウエーハ搬出手段14、第1のウエーハ搬送手段15、洗浄手段16、第2のウエーハ搬送手段17、表示手段18等に制御信号を出力する。
【0035】
次に、上述したレーザー加工装置を用いて被加工物をレーザー加工する手順について説明する。
制御手段30は、カセットテーブル8の図示しない昇降手段を作動してカセットテーブル8上に載置されたカセット9の所定位置に収容されている半導体ウエーハ10(環状のフレームFに装着されたダイシングテープTに貼着されている)を搬出位置に位置付ける。そして、制御手段30は、搬出手段14を作動して搬出位置に位置付けられた半導体ウエーハ10を位置合わせ手段13上に搬出する。位置合わせ手段13に半導体ウエーハ10が搬送されると、制御手段30は位置合わせ手段13の摺動板132を作動して半導体ウエーハ10をダイシングテープTを介して支持している環状のフレームFの位置決めを行う。このようにして位置決めされた環状のフレームFは、図11に示す座標値に位置付けられたことになる。このようにして位置付けられた環状のフレームFの中心Pの座標値を(x0,y0)とする。
【0036】
上述したように、位置合わせ手段13に搬出された半導体ウエーハ10をダイシングテープTを介して支持している環状のフレームFが位置決めされ、その中心Pが(x0,y0)の座標値に位置付けられたならば、制御手段30は撮像手段201を作動して環状のフレームFに装着されたダイシングテープTに貼着されている半導体ウエーハ10の全体を撮像する。制御手段30は、撮像手段201からの画像信号に基づいて半導体ウエーハ10の外周縁における任意の3点(A,B,C)を選定し、直線A−Bの中心位置からの垂線と直線B−Cの中心位置からの垂線との交点(P1)を半導体ウエーハ10の中心として求める。そして、制御手段30は、半導体ウエーハ10の中心P1の環状のフレームFの中心PからのX軸方向およびY軸方向の変位量(dx,dy)を求め、この変位量(dx,dy)をランダムアクセスメモリ(RAM)303に格納する(変位量検出工程)。従って、半導体ウエーハ10の全体を撮像する撮像手段201と該撮像手段201からの画像信号に基づいて半導体ウエーハ10の中心P1を求める制御手段30は、環状のフレームFに装着されたダイシングテープTに貼着されている半導体ウエーハ10の中心と環状のフレーム11の中心とのズレを検出する変位量検出機構20として機能する。
【0037】
一方、図1および図2に示すウエーハ着脱位置に位置付けられているチャックテーブル36は、図12に示すようにその中心P0が例えばx100,y100の座標値に位置付けられるように設定されている。この座標値(x100,y100)は、上記位置合わせ手段13において位置決めされた半導体ウエーハ10をダイシングテープTを介して支持している環状のフレームFが第1のウエーハ搬送手段15によって搬送される環状のフレームFの中心Pと一致するように設定されている。しかるに、上述したように環状のフレームFに装着されたダイシングテープTに貼着されている半導体ウエーハ10の中心P1が環状のフレームFの中心PからX軸方向およびY軸方向に変位していると、位置合わせ手段13において位置決めされた半導体ウエーハ10をダイシングテープTを介して支持している環状のフレームFが第1のウエーハ搬送手段15によってチャックテーブル36に搬送された状態においては、チャックテーブル36と環状のフレームFに装着されたダイシングテープTに貼着されている半導体ウエーハ10の中心P1が一致しない。即ち、半導体ウエーハ10の中心P1は、チャックテーブル36の中心P0(x100,y100)からX軸方向およびY軸方向にdxおよびdyだけ変位して位置付けられることになる。
【0038】
そこで、本発明においては、環状のフレームFに装着されたダイシングテープTに貼着されている半導体ウエーハ10の中心P1と環状のフレームFの中心PとのX軸方向の変位量(dx)およびY軸方向の変位量(dy)に対応して、図12に示すようにウエーハ着脱位置に位置付けられているチャックテーブル36の位置を2点鎖線で示すように補正する。なお、環状のフレームFに装着されたダイシングテープTに貼着されている半導体ウエーハ10を搬送する第1のウエーハ搬送手段15は、位置合わせ手段13に位置付けられた半導体ウエーハ10を180度変換した状態でチャックテーブル36に搬送する。従って、制御手段30は、加工送り手段37および第1の割り出し送り手段38を作動してチャックテーブル36をその中心P0が(x:100−dx,y:100−dy)の座標値になるように位置付ける(チャックテーブル位置補正工程)。このようにチャックテーブル位置補正工程を実施することにより、位置合わせ手段13において位置決めされ第1のウエーハ搬送手段15によってチャックテーブル36に搬送される環状のフレームFに装着されたダイシングテープTに貼着されている半導体ウエーハ10の中心P1は、チャックテーブル36の中心P0に位置付けられることになる。
【0039】
以上のようにして、チャックテーブル位置補正工程を実施したならば、制御手段30は第1のウエーハ搬送手段15を作動して、位置合わせ手段13において位置決めされ上記変位量検出工程が実施された環状のフレームFに装着されたダイシングテープTに貼着されている半導体ウエーハ10を上記チャックテーブル位置補正工程が実施されたチャックテーブル36に搬送する。このようにしてチャックテーブル位置補正工程が実施されたチャックテーブル36に搬送された環状のフレームFに装着されたダイシングテープTに貼着されている半導体ウエーハ10は、その中心P1がチャックテーブル36の中心P0に位置付けられる。次に、制御手段30は図示しない吸引手段を作動し、半導体ウエーハ20をダイシングテープTを介してチャックテーブル36のウエーハ保持領域360上に吸引保持せしめる。このとき、ウエーハ保持領域360は上述したように半導体ウエーハ10の大きさと同一またはがウエーハの外径より僅かに(2〜3mm)小さく形成されているので、半導体ウエーハ10はウエーハ保持領域360と合致または外周部がウエーハ保持領域360の外周縁から外方に僅かにはみ出して環状の緩衝溝366の上方に位置付けられる。なお、ダイシングフレームFはチャックテーブル36に配設されたクランプ368によって固定される。なお、クランプ368は、ダイシングフレームFに対してX軸方向およびY軸方向に数mmの許容値をもって固定できるように構成されている。このようにしてチャックテーブル36上に環状のフレームFに装着されたダイシングテープTに貼着されている半導体ウエーハ10を吸引保持したならば、制御手段30は加工送り手段37を作動してチャックテーブル36をレーザー光線照射ユニット5に配設された撮像手段6の直下に位置付ける。
【0040】
チャックテーブル36が撮像手段6の直下に位置付けられたならば、制御手段30は撮像手段6を作動して半導体ウエーハ10を撮像し、半導体ウエーハ10のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、制御手段30は、半導体ウエーハ10の所定方向に形成されているストリート111と、ストリート111に沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射ユニット5の集光器524との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、レーザー光線照射位置のアライメントを遂行する。また、制御手段30は、半導体ウエーハ10に形成されている上記所定方向に対して直角な方向に延びるストリート111に対しても、同様にレーザー光線照射位置のアライメントを実行する。
【0041】
上述したようにチャックテーブル36上に保持されている半導体ウエーハ10に形成されているストリート111を検出し、レーザビーム照射位置のアライメントを実施したならば、制御手段30は加工送り手段37および第1の割り出し送り手段38を作動してチャックテーブル36を移動し、所定方向(図13の(a)において左右方向)に延びる所定のストリート111をレーザー光線照射手段52の集光器524の直下に位置付ける。そして、更に図13の(a)で示すようにストリート111の一端(図13の(a)において左端)を集光器524の直下に位置付ける。次に、制御手段30は、レーザー光線照射手段52を作動して集光器524からストリート111に形成された低誘電率絶縁体被膜113にレーザー光線LBを照射しつつ、加工送り手段37を作動してチャックテーブル36を矢印X1で示す加工送り方向に所定の加工送り速度で移動せしめる。このとき、集光器524から照射されるレーザー光線LBの集光点Pは、低誘電率絶縁体被膜113の表面に合わされている。そして、図13の(b)で示すようにストリート111の他端(図13の(b)において右端)まで移動したら、制御手段30はレーザー光線照射手段52を制御してレーザー光線LBの照射を停止する。この結果、ストリート111に形成された低誘電率絶縁体被膜113が除去される(レーザー光線照射工程)。
【0042】
上述したレーザー光線照射工程においては、反応時間の遅れや誤差等により図14に示すようにレーザー光線照射手段52の集光器524から照射されるレーザー光線LBが半導体ウエーハ10をオーバーランして照射される場合がある。このとき、チャックテーブル36に保持された環状のフレームFに装着されたダイシングテープTに貼着されている半導体ウエーハ10は、上述したように中心P1がチャックテーブル36の中心P0に位置付けられているので、チャックテーブル36のウエーハ保持領域361を全て覆っている。従って、半導体ウエーハ10をオーバーランして照射されるレーザー光線LBは、図14に示すように半導体ウエーハ10の外周縁より外側のダイシングテープTに照射されるが、レーザー光線LBがダイシングテープTに照射される領域にはチャックテーブル36のウエーハ保持領域361が存在しないので、レーザー光線LBが照射されることによりダイシングテープTが溶融してもウエーハ保持領域360に付着することはない。なお、ダイシングテープTに照射されたレーザー光線LBは、ダイシングテープTを透過してレーザー光線緩衝溝366の底面に照射されるが、レーザー光線緩衝溝366の底面は集光点Pから十分に離れておりレーザー光線が拡散しているため、加工できる程のエネルギー密度は無くチャックテーブル36を損傷することはない。また、図示の実施形態においてはレーザー光線緩衝溝366の底面にはレーザー光線吸収部材367が配設されているので、チャックテーブル36の損傷を確実に防止することができる。
【0043】
なお、上記レーザー光線照射工程における加工条件は、図示の実施形態においては次のように設定されている。
光源 :YAGレーザーまたはYVO4レーザー
波長 :355nm
出力 :0.5W
繰り返し周波数:50kHz
パルス幅 :10nsec
集光スポット径:φ9.2μm
加工送り速度 :100mm/秒
【0044】
上述したように図13の(a)に示すように所定のストリート111に対してレーザー光線照射工程を実施したならば、制御手段30は第1の割り出し送り手段38を作動してチャックテーブル36をストリート111と直行する方向にストリートの間隔分だけ割り出し送りし、上記レーザー光線照射工程を実施する。この割り出し送りとレーザー光線照射工程を繰り返し実行することにより、半導体ウエーハ20の所定方向に延びる全てのストリート111に形成された低誘電率絶縁体被膜113が除去される。以上のようにして、半導体ウエーハ10の所定方向に延びるストリート111に対してレーザー光線照射工程を実施したならば、制御手段30は図示しないパルスモータを作動してチャックテーブル36従って半導体ウエーハ10を90度回動し、上述した所定方向に延びるストリート111と直行する方向に延びるストリート111に対して上述したレーザー光線照射工程を実施する。この結果、半導体ウエーハ20の全てのストリート111に形成された低誘電率絶縁体被膜113が除去される。
【0045】
以上のようにして、半導体ウエーハ10の全てのストリート111に形成されている低誘電率絶縁体被膜113を除去したならば、制御手段30は加工送り手段37を作動して半導体ウエーハ10を保持しているチャックテーブル36を最初に半導体ウエーハ10を吸引保持した位置に戻し、図示しない吸引手段による半導体ウエーハ20の吸引保持を解除する。次に、制御手段30は第2のウエーハ搬送手段17を作動して、チャックテーブル36上のレーザー加工された半導体ウエーハ10を洗浄手段16に搬送する。次に、制御手段10は、洗浄手段16を作動してレーザー加工された半導体ウエーハ10を洗浄し乾燥する。
【0046】
上述したようにレーザー加工された半導体ウエーハ10の洗浄および乾燥作業を実施したならば、制御手段30は第1の搬送手段15を作動して洗浄された半導体ウエーハ10を位置合わせ手段13に搬送する。次に、制御手段30は、搬出手段14を作動して位置合わせ手段13に搬送された半導体ウエーハ10をカセット19の所定位置に収納せしめる。
【0047】
以上、上述した実施形態においては半導体ウエーハのストリートに形成された低誘電率絶縁体被膜を除去するためのレーザー加工を実施した例を示したが、本発明によるレーザー加工装置は半導体ウエーハのストリートに沿って半導体ウエーハに対して透過性を有する例えば波長が1064nmのパルスレーザー光線を照射し、半導体ウエーハの内部に連続した変質層を形成するレーザー加工等に適用することができる。また、本発明によるレーザー加工装置は、半導体ウエーハのストリートに沿って半導体ウエーハに対して吸収性を有する例えば波長が355nmのパルスレーザー光線を照射し、半導体ウエーハにレーザー加工溝を形成するレーザー加工等に適用することができる。
【0048】
以上、本発明を図示の実施形態に基づいて説明したが本発明は実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で種々の変形は可能である。例えば上述した実施形態においては、変位量検出機構によって検出されたウエーハの中心と環状のフレームの中心との変位量に基づいてウエーハ着脱位置に位置付けられているチャックテーブルの中心位置がウエーハ搬送手段によって搬送される環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着されたウエーハの中心と一致するように該加工送り手段および該割り出し送り手段を制御する例を示したが、変位量検出機構によって検出されたウエーハの中心と環状のフレームの中心との変位量に基づいてウエーハ搬送手段によって搬送される環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着されたウエーハの搬送位置をX軸方向およびY軸方向に制御してもよい。
【符号の説明】
【0049】
2:静止基台
3:チャックテーブル機構
31、31:一対の案内レール
32:第1の滑動ブロック
33:第2の滑動ブロック
36:チャックテーブル
360:ウエーハ保持領域
366:環状の緩衝溝
37:加工送り手段
38:第1の割り出し送り手段
4:レーザー光線照射ユニット支持機構
41、41:一対の案内レール
42:可動支持基台
43:第2の割り出し送り手段
5:レーザー光線照射ユニット
51:ユニットホルダ
52:レーザー光線照射手段
524:集光器
6:撮像手段
8:カセットテーブル
9:カセット
10:半導体ウエーハ
13:位置合わせ手段
14:ウエーハ搬出手段
15:第1のウエーハ搬送手段
16:洗浄手段
17:ウエーハ搬送手段
18:表示手段
20:変位量検出機構
201:撮像手段
30:制御手段
F:環状のフレーム
T:ダイシングテープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハの大きさと同一または僅かに小さいウエーハ保持領域と該ウエーハ保持領域の外側周囲にレーザー光線緩衝溝が形成されているチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハにレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルをウエーハ着脱位置と該レーザー光線照射手段による加工領域との間を加工送り方向(X軸方向)に移動せしめる加工送り手段と、X軸方向と直交する割り出し送り方向(Y軸方向)に移動せしめる割り出し送り手段と、環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着されたウエーハを収容しカセットテーブル上に載置されるカセットと、該カセットに収容された環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着されたウエーハを搬出するウエーハ搬出手段と、該ウエーハ搬出手段によって搬出された環状のフレームの中心位置合わせを実施するための位置合わせ手段と、該位置合わせ手段に搬出された環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着されたウエーハをウエーハ着脱位置に位置付けられたチャックテーブルに搬送するウエーハ搬送手段と、を具備するレーザー加工装置において、
該位置合わせ手段において中心位置合わせされた環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着されたウエーハの中心と環状のフレームの中心との変位量を検出する変位量検出機構と、
該変位量検出機構によって検出されたウエーハの中心と環状のフレームの中心との変位量に基づいて該加工送り手段および該割り出し送り手段と該ウエーハ搬送手段とを制御する制御手段と、を具備し、
該制御手段は、該ウエーハ搬送手段によって搬送される環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着されたウエーハの中心が該チャックテーブルの中心位置と一致するように該ウエーハ着脱位置に位置付けられている該チャックテーブルと該ウエーハ搬送手段によって搬送される環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着されたウエーハの搬送位置とを相対的に変位せしめる、
ことを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項2】
該制御手段は、該ウエーハ着脱位置に位置付けられている該チャックテーブルの中心位置が該ウエーハ搬送手段によって搬送される環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着されたウエーハの中心と一致するように該加工送り手段および該割り出し送り手段を制御する、請求項1記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
該変位量検出機構は、該位置合わせ手段において中心位置合わせされた環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着されたウエーハの全体を撮像する撮像手段と、該撮像手段によって撮像された画像情報に基づいてウエーハの中心と環状のフレームの中心とのX軸方向およびY軸方向の変位量を求める制御手段とからなっている、請求項1又は2記載のレーザー加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−54715(P2011−54715A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201564(P2009−201564)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】