説明

レーザー加工装置

【課題】従来よりもコストを低減することができるレーザー加工装置を提供する。
【解決手段】保持手段2に保持されたワークにレーザービームを照射して加工を施す加工手段3を有するレーザー加工装置1において、保持手段3は複数の保持テーブル2a〜2dから構成され、加工手段3はレーザービームを発振する発振部4と各保持テーブルに対応して複数配設されレーザービームを保持テーブルに保持されたワークへ導く光学装置5a〜5dと発振部4から発振されたレーザービームを各光学装置へ分配する接続部6とを含み、光学装置はレーザービームを任意のタイミングで遮断するシャッター部51とレーザービームを保持テーブルに保持されたワーク表面への集光する集光部52とを有する。発振部6から複数の光学装置へとレーザービームを分配するため、出力を有効に活用することができ、一つの加工点当たりのコストを従来よりも低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種ワークに対してレーザービームを照射して加工を施すレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、表面に格子状に配列されたストリート(切断ライン)によって区画された複数の領域にIC、LSI等の回路が形成されて構成される略円板形状の半導体ワークを、ストリートに沿って切断することによって回路ごとに分割して個々の半導体チップを製造している。半導体ワークのストリートに沿った切断は、通常、ダイサーと称されている切削装置によって行われている。また、レーザー加工装置を使用し、レーザービームを照射して切断する加工方法も行われている(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−223542号公報
【特許文献2】特開2005−028423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、レーザービームを発振するレーザー発振器は、レーザー加工装置の中で最も高価なものであり、レーザー発振器のコストによりレーザー加工装置一台当たりのコストを低減することができないという問題があった。また、レーザー発振器の中には、出力が高いために、一台のレーザー加工装置に対してのみでは有効に出力を活用できない場合があるという状況にあった。
【0005】
本発明は、これらの事実に鑑みてなされたものであって、その主な技術的課題は、従来よりもコストを低減することができるレーザー加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ワークを保持する保持手段と、保持手段に保持されたワークにレーザービームを照射して加工を施す加工手段とを有するレーザー加工装置に関するもので、保持手段は複数の保持テーブルから構成され、加工手段はレーザービームを発振する発振部と各保持テーブルに対応して複数配設されレーザービームを保持テーブルに保持されたワークへ導く光学装置と発振部から発振されたレーザービームを各光学装置へ分配する接続部とを含み、光学装置はレーザービームを任意のタイミングで遮断するシャッター部とレーザービームを保持テーブルに保持されたワーク表面への集光する集光部とを有する。
【0007】
上記レーザー加工装置は、発振部が第一の発振器と第二の発振器とを含む場合は、接続部は第一の発振器と光学装置とを光学的に接続すると共に第二の発振器と光学装置とを光学的に接続し、レーザー発振源を第一の発振器または第二の発振器のいずれかに選択的に切り替える切り替え手段を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るレーザー加工装置は、発振部から複数の光学装置へとレーザービームを分配する構成とし、出力が高い1つの発振部に対して複数の加工点を接続する形式にしたため、発振部の出力を有効に活用することができ、1つの加工点当たりのコストを従来よりも低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】レーザー加工装置の第1の実施形態を示す説明図である。
【図2】レーザー加工装置の第2の実施形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)第1の実施形態
図1に示すレーザー加工装置1は、加工対象の被加工物(ワーク)を保持する4つの保持テーブル2a、2b、2c、2dからなる保持手段2と、保持手段2に保持されたワークにレーザービームを照射して加工を施す加工手段3とから構成されている。
【0011】
各保持テーブル2a、2b、2c、2dは、上面が保持面20となっており、例えば保持面20が図示しない吸引源に連通することにより、保持面20においてワークを吸引保持することができる構成となっている。
【0012】
加工手段3は、レーザービームを発振する単一の発振器からなる発振部4と、発振部4において発振されたレーザービームを各保持テーブル2a、2b、2c、2dに保持されたワークに導く4つの光学装置5a、5b、5c、5dと、発振部4から発振されたレーザービームを各光学装置5a、5b、5c、5dへ分配する接続部6とから構成されている。光学装置の数は、保持テーブルの数と同数となっている。
【0013】
光学装置5a〜5dは、接続部6を通じて伝播されたレーザービームを保持テーブル2a〜2dのそれぞれに保持されたワークに向けて出射するヘッド50と、出射されたレーザービームの光路上と光路からはずれた位置との間を選択的に移動可能であり任意のタイミングでレーザービームを遮断できるシャッター51と、当該光路上におけるシャッター51の下方に位置しワークに対するレーザービームの集光を行う集光部52とを備えている。
【0014】
接続部6は、1つの発振部と複数の光学装置5a、5b、5c、5dとを光学的に並列に接続しており、接続のための媒体としては、例えば光ファイバを使用することができる。
【0015】
保持テーブル2aと光学装置5a、保持テーブル2bと光学装置5b、保持テーブル2cと光学装置5c、保持テーブル2dと光学装置5dは、水平方向に相対移動可能な関係となっており、各ワークの任意の位置にレーザービームを照射することができる構成となっている。
【0016】
次に、保持テーブル2a〜2dに保持されたそれぞれのワークW1、W2、W3、W4にレーザービームを照射する場合におけるレーザー加工装置1の動作について説明する。なお、加工対象のワークWは特に限定はされないが、例えばシリコンウェーハ、ガリウム砒素、シリコンカーバイド等の半導体ウェーハや、チップ実装用としてウェーハの裏面に設けられるDAF(Die Attach Film)等の粘着部材、半導体製品のパッケージ、セラミックス、ガラス、サファイア系の無機材料基板、液晶ディスプレイドライバー等の各種電子部品、さらには、ミクロンオーダーの加工位置精度が要求される各種加工材料が挙げられる。また、ワークW1〜W4は、それぞれが異なる材料により形成されたものであってもよいし、すべてが同じものであってもよい。以下では、ワークW1〜W4が、加工すべきストリートが直線状に形成されたワークであり、そのストリートに沿って加工する場合について説明する。
【0017】
各ワークに対するレーザー加工にあたっては、レーザービームの集光点の鉛直方向の位置を調整することにより、ワークWの表面側に溝を形成したり、ワークWの内部に改質層を形成したりすることができる。なお、改質層とは、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲とは異なる状態になった領域であり、例えば、溶融処理領域、クラック領域や絶縁破壊領域、屈折率変化領域等があり、これらが混在した領域もある。
【0018】
最初に、各ワークW1〜W4の加工すべき位置を図示しない撮像手段により撮像して検出し、レーザービームを照射しようとするストリートの延長線上にヘッド50を位置させる。そして、各光学装置では、レーザービームを遮断しない位置にシャッター51を位置させるとともにワークWの表面または内部に焦点を合わせ、その状態で、各保持テーブル2a〜2dと光学装置5a〜5dとを水平方向に相対移動させることにより、ストリートに沿ってワークW1〜W4にレーザービームを照射する。
【0019】
各光学装置のそれぞれのシャッター51を独立して駆動できる構成とすれば、光学装置5a〜5dのうち、ある光学装置についてはレーザービームの照射を行い、他の光学装置についてはレーザービームの照射を行わないようにする制御も可能である。また、各光学装置を構成するそれぞれの集光レンズ52の鉛直方向の鉛直方向の集光位置を制御し、各ワークごとに異なる加工を施すことも可能である。
【0020】
ここで照射するレーザービームは、発振部4から発振され接続部6において分配されて各光学装置5a〜5dに導かれたものである。接続部6においてレーザービームが分配されたことにより、各光学装置のヘッド50からのレーザービームの出力は、発振部4における出力よりは小さくなっているが、発振部4における出力は、各ワークの加工に必要な出力と比較して十分大きいため、分配後のレーザービームの出力は、各ワークの加工のための出力として十分である。したがって、1つの発振部の出力を複数の光学装置において有効に活用することができるため、1つの加工点当たりのコストを従来よりも低減することができる。
【0021】
(2)第2の実施形態
図2に示すレーザー加工装置10について、図1に示したレーザー加工装置1と同様に構成される部位については共通の符号を付して説明する。また、図1に示したレーザー加工装置1と同様に構成される部位についての詳細な説明は省略する。
【0022】
レーザー加工装置10は、加工対象の被加工物(ワーク)を保持する4つの複数の保持テーブル2a、2b、2c、2dと、複数の保持テーブル2に保持されたワークにレーザービームを照射して加工を施す加工手段7とから構成されている。
【0023】
加工手段7は、レーザービームを発振する発振部8と、発振部8において発振されたレーザービームを各保持テーブル2a、2b、2c、2dに保持されたワークに導く4つの光学装置5a、5b、5c、5dと、発振部8から発振されたレーザービームを各光学装置5a、5b、5c、5dへ分配する接続部9とから構成されている。光学装置の数は、保持テーブルの数と同数となっている。発振部8は、第一の発振器80及び第二の発振器81を備えている。そして、加工手段7には、第一の発振器80及び第二の発振器81のいずれかを発振源として選択的に切り替える切り替え手段82を備えている。
【0024】
接続部9は、第一の発振器80と複数の光学装置5a、5b、5c、5dとを光学的に並列に接続しているとともに、第二の発振器81と複数の光学装置5a、5b、5c、5dとを光学的に並列に接続している。接続のための媒体としては、例えば光ファイバを使用することができる。
【0025】
保持テーブル2aと光学装置5a、保持テーブル2bと光学装置5b、保持テーブル2cと光学装置5c、保持テーブル2dと光学装置5dは、水平方向に相対移動可能な関係となっており、各ワークの任意の位置にレーザービームを照射することができる構成となっている。
【0026】
次に、保持テーブル2a〜2dに保持されたそれぞれのワークW1、W2、W3、W4にレーザービームを照射する場合におけるレーザー加工装置10の動作について説明する。以下では、加工すべきストリートが直線状に形成されたワークをストリートに沿って加工する場合について説明する。
【0027】
最初に、各ワークW1〜W4の加工すべき位置を図示しない撮像手段により撮像して検出し、レーザービームを照射しようとするストリートの延長線上にヘッド50を位置させる。一方、切り替え手段82は、発振器80、81のいずれか一方からレーザービームが発振されるように選択する。例えば第二の発振器81を選択する。
【0028】
そして、各光学装置では、レーザービームを遮断しない位置にシャッター51を位置させ、ワークWの表面または内部に焦点を合わせ、その状態で、各保持テーブル2a〜2dと光学装置5a〜5dとを水平方向に相対移動させることにより、ストリートに沿ってワークW1〜W4に対し、第二の発振器81から発振したレーザービームを照射する。
【0029】
ここで照射するレーザービームは、発振部4から発振され接続部9において分配されて各光学装置5a〜5dに導かれたものであり、接続部9においてレーザービームが分配されたことにより、各光学装置のヘッド50からのレーザービームの出力は、発振部4における出力よりは小さくなっているが、発振部4における出力は、各ワークの加工に必要な出力と比較して十分大きいため、分配後のレーザービームの出力は、各ワークの加工のための出力として十分である。したがって、1つの発振部の出力を複数の光学装置において有効に活用することができるため、1つの加工点当たりのコストを従来よりも低減することができる。
【0030】
このようにしてレーザー加工を行う過程において、例えば第二の発振器81が故障するなど、第二の発振器81が使用不可能となった場合は、切り替え手段82が発振源を第一の発振器80に切り替えることにより、第一の発振器80から発振されるレーザービームによってレーザー加工を続行することができる。また、第一の発振器80が使用不可能となった場合は、切り替え手段82が発振源を第二の発振器81に切り替えることにより、第二の発振器81から発振されるレーザービームによってレーザー加工を続行することができる。
【0031】
また、例えば第一の発振器80を発振源とするレーザービームと第二の発振器81を発振源とするレーザービームとを切り替え手段82によって適宜のタイミングで切り替えながら使い分けることもできる。例えば、第一の発振源80を発振源とするレーザービームによってワークの表面に溝を形成した後、切り替え手段82によって発振源を切り替え、第二の発振源81を発振源とするレーザービームによって、溝を形成して部分に対してさらに深い溝を形成してストリートを切断することなども可能である。
【0032】
第2の実施形態における切り替え手段は、接続部9に設けてもよい。この場合は、例えば、接続部9を構成する光ファイバーに対して光ファイバー切り替えスイッチを介在させることにより、第一の発振器80及び第二の発振器81のいずれかから発振されたレーザービームが光学装置5a〜5dに導かれるようにする。
【0033】
以上説明した第1の実施形態及び第2の実施形態におけるレーザー加工装置では、保持手段2が4つの保持テーブル2a〜2dにより構成され、これら保持テーブル2a〜2dに対して光学装置を4つ備えた構成としたが、保持テーブル及び光学装置は、同数かつ複数であれば、加工のためのレーザービームの適正な出力を確保できる範囲でいくつ備えていてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1、10:レーザー加工装置
2 保持手段 2a、2b、2c、2d:保持テーブル 20:保持面
3:加工手段
4:発振部
5a、5b、5c、5d:光学装置 50:ヘッド 51:シャッター 52:集光部
6:接続部
7:加工手段
8:発振部 80:第一の発振器 81:第二の発振器 82:切り替え手段
9:接続部
W1、W2、W3、W4:ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持する保持手段と、
該保持手段に保持されたワークにレーザービームを照射して加工を施す加工手段と、
を有するレーザー加工装置であって、
該保持手段は、複数の保持テーブルから構成され、
該加工手段は、レーザービームを発振する発振部と、各該保持テーブルに対応して複数配設され該レーザービームを該保持テーブルに保持されたワークへ導く光学装置と、該発振部から発振されたレーザービームを各光学装置へ分配する接続部と、を含み、
該光学装置は、該レーザービームを任意のタイミングで遮断するシャッター部と、該レーザービームを該保持テーブルに保持されたワーク表面への集光する集光部と、を有するレーザー加工装置。
【請求項2】
前記発振部は、第一の発振器と第二の発振器とを含み、
前記接続部は、該第一の発振器と前記光学装置とを光学的に接続すると共に該第二の発振器と該光学装置とを光学的に接続し、
レーザー発振源を該第一の発振器または該第二の発振器のいずれかに選択的に切り替える切り替え手段を有する
請求項1に記載のレーザー加工装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−45585(P2012−45585A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190559(P2010−190559)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】