説明

レーザ加工機及びレーザ加工機用のチェック弁

【課題】開弁圧を安定した低い値に設定することができ、加工ヘッドの移動・停止時に慣性により開弁するようなことがなく、耐久性の高い、密閉光路用のチェック弁及びレーザ加工機を得ること。
【解決手段】密閉光路に供給されたパージガスを大気圧より高い一定圧に保ちながら前記密閉光路外へ排出するチェック弁において、通気孔2bを設けた板状の弁座2と、該弁座2の通気孔2bを塞ぐように該弁座2に片持ち梁状に固定され、前記通気孔2bからのパージガスの圧力を受けて略全長に亘って撓んで開弁して該パージガスを前記密閉光路外へ排出し、前記密閉光路内のパージガスの圧力が前記一定圧以下になると、自身の弾性により閉弁する弾性薄板から成る弁体3と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工機の密閉光路内の加圧されたパージガスを外部に排出し、密閉光路内が高圧になり過ぎないようにするチェック弁及び該チェック弁を備えるレーザ加工機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のパージガス用のチェック弁として、ガス流路及び弁座が形成されたケーシングと、バネにより前記弁座に押圧される可動ブロックとから成るものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、内容物の逆流を防止する逆流防止具が設けられた容器であって、前記逆流防止具は、内容物の吐出流路の内壁面から内側に突出して設けられた弁座部と、該弁座部に接合された一箇所の接合部を中心に回動することにより、該弁座部の内側開口を開閉する弁体とを備え、前記弁体及び容器が、ポリオレフィン系樹脂から成るものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平03−151185号公報(第2、3頁、第2図)
【特許文献2】特開2003−160154号公報(第2、3頁、図2〜図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術によれば、可動ブロックがバネにより弁座に押圧されているので、チェック弁のクラッキング圧(開弁圧)が高く、パージガスの圧力による開弁の応答性が悪い、という問題があった。また、バネ力を弱くしてクラッキング圧を低くすると、レーザ加工機の加工ヘッドの移動・停止時に、慣性により可動ブロックが踊って開弁し、パージガスが外部へ流失したり、外部の粉塵が密閉光路内に侵入してしまう、という問題があった。
【0006】
また、上記特許文献2に記載された技術によれば、弁座部に接合された一箇所の接合部を中心に回動して弁座部の内側開口を開閉するポリオレフィン系樹脂から成る弁体を用いるので、この弁体をパージガス用のチェック弁に用いると、安定したクラッキング圧が得られず、また、一箇所の接合部が繰り返し回動され、長期の使用により接合部が疲労破壊してしまう、という問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、クラッキング圧を安定した低い値に設定することができ、加工ヘッドの移動・停止時に慣性により開弁するようなことがなく、耐久性の高い、密閉光路用のチェック弁及びレーザ加工機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、密閉光路に供給されたパージガスを大気圧より高い一定圧に保ちながら前記密閉光路外へ排出するチェック弁において、通気孔を設けた板状の弁座と、該弁座の通気孔を塞ぐように該弁座に片持ち梁状に固定され、前記通気孔からのパージガスの圧力を受けて略全長に亘って撓んで開弁して該パージガスを前記密閉光路外へ排出し、前記密閉光路内のパージガスの圧力が前記一定圧以下になると、自身の弾性により閉弁する弾性薄板から成る弁体と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、クラッキング圧を安定した低い値に設定することができ、加工ヘッドの移動・停止時に慣性により開弁するようなことがなく、耐久性の高い、密閉光路用のチェック弁及びレーザ加工機が得られる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明にかかる密閉光路用のチェック弁及びレーザ加工機の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態
図1は、本発明にかかるチェック弁の実施の形態を示す分解斜視図であり、図2は、断面図であり、図3は、斜視図であり、図4は、本発明にかかるレーザ加工機の実施の形態を示す平面図であり、図5は、側面図である。
【0012】
図1〜図3に示すように、実施の形態のチェック弁100は、フランジ1、弁座2、弁体3、ルーバーケース4、ルーバー5、フィルタ6及びパッキン7を備えている。フランジ1は、長方形の金属板製で通気口1bが設けられている。弁座2は、正方形のシリコンゴム板製で通気口2bが設けられている。
【0013】
弁体3は、長方形の一側が半円形に形成されたポリカーボネート薄板製である。弁体3の材料は、軽量な弾性薄板であれば、ナイロン、アクリル、PP又はPE等の樹脂や、バネ鋼板等であってもよい。ルーバーケース4は、通気口が設けられた正方形のフランジ部4aに筒部4bの一端を固着し、筒部4bの他端に内フランジ部4cを固着して形成されている。ルーバーケース4の内フランジ4cには、ルーバー5が嵌め込まれ、ルーバー5内にはフィルタ6が嵌め込まれている。
【0014】
フランジ1と弁座2と弁体3とを重ね、2組の、皿ネジ12、金属ワッシャ8、ミガキ座金9、バネ座金10及び六角ナット11により締結する。弁体3を覆うようにルーバーケース4を弁座2上に重ね、フランジ1と弁座2とルーバーケース4のフランジ部4aとを、4組の、皿ネジ12、ミガキ座金9、バネ座金10及び六角ナット11により締結し、実施の形態のチェック弁100を組立てる。
【0015】
チェック弁100は、長方形のスポンジゴム板製で通気口7bが設けられたパッキン7を挟んで後述のレーザ加工機の密閉光路に取付けられる。
【0016】
次に、図4及び図5を参照し、実施の形態のレーザ加工機200について説明する。レーザ加工機200は、レーザビーム22を出力するレーザ発振器21を備えている。
【0017】
レーザ発振器21から発振されたレーザビーム22は、第1ベンドミラー23aにより水平方向に偏向された後、第2ベンドミラー23bにより垂直下方に偏向され、加工レンズ24により集光される。加工レンズ24により集光されたレーザビーム22をワーク25へ照射してレーザ加工が行なわれる。
【0018】
レーザ加工機200は、図示しない直線駆動機構により、第1ベンドミラー23a、第2ベンドミラー23b及び加工レンズ24を保持する図示しないガントリーが図4のY方向へ移動する。
【0019】
一方、X方向へは、ガントリー構造中の第1ベンドミラー23aが固定され、第2ベンドミラー23b及び加工レンズ24が一体的に図5のX方向へ移動する。一点鎖線で示すベンドミラー等の位置をX、Y各軸のストロークエンドとすると、図4の斜線部で示す範囲のX−Y平面をレーザ加工することができる。
【0020】
レーザビーム22が伝送される密閉光路20の一部には、伸縮自在の光路部材として、具体的には、Y軸光路ジャバラ27aとX軸光路ジャバラ27bとを備えている。レーザ発振器21とY軸光路ジャバラ27a間は、実施の形態のチェック弁100が取付けられた固定ダクト33により接続されている。
【0021】
Y軸光路ジャバラ27aとX軸光路ジャバラ27bとは、ベンドブロック34を介して接続され、X軸光路ジャバラ27bは、加工ヘッド部26に接続されている。また、図示はしないが、Y軸光路ジャバラ27a及びX軸光路ジャバラ27bは、ガイドローラやガイドレールにより案内され、移動方向を規制されるようになっている。
【0022】
レーザ発振器21から加工レンズ24に至るレーザビーム22の密閉光路20は、固定ダクト33、Y軸光路ジャバラ27a、ベンドブロッ34、X軸光路ジャバラ27b、加工ヘッド部26及び第1ベンドミラー23a、第2ベンドミラー23bにより、密閉されている。
【0023】
固定ダクト33には、パージガス供給口39が設けられ、パージガス供給口39には、パージガス供給装置43が接続されている。加工ヘッド26には、実施の形態のチェック弁100が取付けられている。
【0024】
次に、実施の形態のレーザ加工機200及びチェック弁100の作用について説明する。X、Y軸光路ジャバラ27b、27aや、その接続部等を、完全な気密構造とするのは事実上困難であり、密閉光路20内と外気との僅かな差圧により外気や粉塵が密閉光路20内に微量でも侵入する可能性がある。
【0025】
そのため、パージガス供給装置43により、清浄なパージガスをパージガス供給口39より流入させ、密閉光路20内の圧力を必ず大気圧より高い状態にし、外気や粉塵の密閉光路20内への侵入を阻止する。密閉光路20内の保持圧力は、2〜5mmAq程度でよく、パージガス供給口39からパージガスを供給し、チェック弁100、100から排気させるようにする。
【0026】
レーザ加工実施中に加工ヘッド部26が移動し、X軸光路ジャバラ27bや、Y軸光路ジャバラ27aが伸長して密閉光路20の容積が増大するときは、容積増大分のパージガスをパージバス供給装置43から密閉光路20内に供給し、密閉光路20の圧力が負圧にならないようにする。
【0027】
X軸光路ジャバラ27bや、Y軸光路ジャバラ27aが収縮して密閉光路20の容積が減少するときは、チェック弁100、100からパージガスを排出して圧力が高くなり過ぎないようにし、密閉光路20のパージガスの圧力を、常時、ほぼ一定圧に保持する。
【0028】
チェック弁100の弁体3の半円形でない他側は、フランジ1に、柔らかい弾性体であるシリコンゴム板製の弁座2を介して、片持ち梁状に固定支持(回動不能)され、フランジ1及び弁座2の通気口1b、2bから2〜5mmAq程度のクラッキング圧(開弁圧;等分布荷重)を受け、固定支持の片持ち梁の撓み曲線に従って略全長に亘り一様に撓んで開弁し、パージガスを密閉光路の外へ排出する。
【0029】
加工ヘッド部26が移動し、X、Y軸光路ジャバラ27b、27aが伸長するときは、密閉光路20の体積が膨張して密閉光路内がクラッキング圧(一定圧)以下になると、弁体3は自身の弾性により即座に閉じ、柔らかいシリコンゴム板製の弁座2を押し付けて変形させ、弁座2に喰い込むように密着し、密閉光路20内への外気及び粉塵の侵入を阻止する。また、チェック弁100は、弁体3の下流側のルーバー5にフィルタ6を装着しているので、フィルタ6によっても粉塵の侵入を阻止することができる。
【0030】
以上説明したように、実施の形態のチェック弁100は、ポリカーボネート板製等の軽量な弾性薄板を弁体3とし、弁座2に固定支持したので、クラッキング圧を安定した低い値に設定することができ、加工ヘッド部26の移動・停止時に慣性により開弁するようなことがなく、弁体3が圧力を受けて略全長に亘って一様に撓むので、疲労破壊するようなことがなく、耐久性が高い。
【0031】
また、弁座2にシリコンゴム板を用いているので、弁体3が弁座2に喰い込むように変形させ、チェック弁100の閉弁時の封止性が高い。また、弁体3の板厚を変更するだけで所望のクラッキング圧に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明にかかるチェック弁の実施の形態を示す分解斜視図である。
【図2】実施の形態のチェック弁を示す断面図である。
【図3】実施の形態のチェック弁を示す斜視図である。
【図4】本発明にかかるレーザ加工機の実施の形態を示す平面図である。
【図5】実施の形態のレーザ加工機を示す側面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 フランジ
2 弁座
3 弁体
4 ルーバーケース
5 ルーバー
6 フィルタ
7 パッキン
100 チェック弁
20 密閉光路
21 レーザ発振器
22 レーザビーム
25 ワーク
26 加工ヘッド部
27a Y軸光路ジャバラ
27b X軸光路ジャバラ
43 パージガス供給装置
200 レーザ加工機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉光路に供給されたパージガスを大気圧より高い一定圧に保ちながら前記密閉光路外へ排出するチェック弁において、
通気孔を設けた板状の弁座と、
該弁座の通気孔を塞ぐように該弁座に片持ち梁状に固定され、前記通気孔からのパージガスの圧力を受けて略全長に亘って撓んで開弁して該パージガスを前記密閉光路外へ排出し、前記密閉光路内のパージガスの圧力が前記一定圧以下になると、自身の弾性により閉弁する弾性薄板から成る弁体と、
を備えることを特徴とするチェック弁。
【請求項2】
前記弁座は、前記弁体の閉弁時に該弁体が押し付けられて変形する弾性材料により形成されていることを特徴とする請求項1に記載のチェック弁。
【請求項3】
前記弁体の下流側に、大気中の粉塵を捕捉するフィルタを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のチェック弁。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載のチェック弁を、パージガスが供給されてレーザ発振器からのレーザビームを加工ヘッドまで伝送する密閉光路に備えることを特徴とするレーザ加工機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−207224(P2008−207224A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−47711(P2007−47711)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】