説明

レーザ形状認識センサ及び計測装置

【課題】測定対象物より後方の物体での反射光をカメラが受像しないようにする。
【解決手段】測定対象物1に線状のレーザ光5aを照射し、測定対象物1での反射光をカメラ4で受像することで、その形状を撮像するレーザ形状認識センサである。測定対象物1にレーザ光5aを扇状に照射するレーザ光源5と、このレーザ光源5から照射されたレーザ光5aの測定対象物1での反射光を、抽出したい波長のみを通過させるフィルター6を介して受像するカメラ4を有する。レーザ光源5のレーザ光5aの照射範囲5bをカメラ4の素子列方向の視野4aがカバーでき、かつ、カメラ4の高さ方向の検出範囲4bは測定対象物1より後方はカバーしないように、レーザ光5aの光軸に対して角度θをつけてカメラ4を、同一の筐体7内に組み込む。
【効果】正確で安定に形状を計測することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を照射して測定対象物の形状を認識するセンサ、及びこのレーザ形状認識センサを使用した計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像処理にて大型の測定対象物の形状を撮像する場合、測定対象物が約700℃以上の 熱間材のような自発光体の場合は、自発光を使用してその形状を撮像することができる。
【0003】
しかしながら、測定対象物が自発光体でない場合は、測定対象物に照明をあてて撮像する必要がある。例えば、図5は、測定対象物1の外周が識別できるように、測定対象物1の下方に配置した下部光源2から照明をあてて、その形状を撮像するものである(下部光源方式:非特許文献1)。また、図6は、測定対象物1の上部に配置した上部光源3から照明をあてて測定対象物1を受像し易い明るさにして、その形状を撮像するものである(上部光源方式:非特許文献2)。図5、図6中の2a又は3aは下部光源2又は上部光源3の照射範囲、4はカメラ、4aはカメラの幅方向視野を示す。
【0004】
一方、レーザ光を用いて測定対象物の形状を撮像する場合は、レーザ光源から照射したレーザ光を測定対象物で反射させ、この反射光をカメラで受像することにより行う。この場合、図7に示すように、レーザ光源5から扇状に照射されたレーザ光5aの照射範囲5bをカメラ4の幅方向視野4aがカバーできるように、レーザ光源5とカメラ4の相対位置が考慮されている。
【0005】
従って、指向性の高いレーザ光5aが測定対象物1より後方の物体で反射した場合、この後方の物体で反射した反射光をカメラ4が受像するので、正確な形状を計測することができない場合があった。図7中の5aaは測定対象物1での反射部、5abは後方の物体での反射部を示す。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「熱間圧延環境に耐えるオンライン寸法・形状測定技術」川崎製鉄技報31(1999)4.201-204
【非特許文献2】「ぶりき原板の表面自動検査装置」JFE技報No.12(2006年5月)p.13-16
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする問題点は、従来は、指向性の高いレーザ光が測定対象物より後方の物体で反射した場合、この後方の物体で反射した反射光をカメラが受像するので、正確な形状を計測できない場合があったという点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のレーザ形状認識センサは、
測定対象物より後方の物体での反射光をカメラが受像しないようにするために、
測定対象物に扇状のレーザ光を照射し、測定対象物での反射光をカメラで受像することで、その形状を撮像するレーザ形状認識センサであって、
測定対象物にレーザ光を扇状に照射するレーザ光源と、
このレーザ光源から照射されたレーザ光の測定対象物での反射光を、抽出したい波長のみを通過させるフィルターと、
このフィルターを介して前記レーザ光の測定対象物での反射光を受像すべく、前記レーザ光の照射範囲をカバーできる素子列方向の視野を有するカメラを備え、
前記カメラは、前記レーザ光源と同一の筐体内に、レーザ光の光軸に対して角度をつけて組み込んだことを最も主要な特徴としている。
【0009】
本発明のレーザ形状認識センサは、レーザ光の光軸に対して角度をつけてカメラを配置しているので、カメラの高さ方向の検出範囲は、レーザ光とカメラの素子列方向の視野が重なり合う範囲だけとなる。従って、カメラの高さ方向の検出範囲が最適になるように前記角度を設定すれば、測定対象物より後方の物体での反射光をカメラが受像することが無い。
【0010】
加えて、本発明のレーザ形状認識センサは、レーザ光を扇状にして測定対象物に照射するレーザ光源を筐体内に内蔵するので、自発光体の場合には、光量の変化、局部的な暗部の影響を受けず安定した撮像が可能になる。
【0011】
また、自発光体でない場合も、外部照明が不要である。特に遠距離で測定範囲が大きい大型対象物を撮像する場合も、従来は大型の外部照明が必要となるが、本発明の場合、外部照明は不要である。なお、レーザ光の波長は、測定対象物の温度、色により適正な波長を選定する。またレーザ光の出力は、測定距離、範囲等により適正な出力を選定する。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、カメラの高さ方向の検出範囲が最適になるように、レーザ光の光軸に対するカメラの角度を設定すれば、測定対象物より後方の物体での反射光をカメラが受像することが無くなるので、正確な形状を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のレーザ形状認識センサの測定原理を説明する図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図2】本発明のレーザ形状認識センサの内部構造を説明する図である。
【図3】本発明のレーザ形状認識センサを使用して測定対象物の幅を計測する本発明装置の説明図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図4】本発明のレーザ形状認識センサを使用して測定対象物の幅を計測する本発明装置のX’−Y’面における説明図である。
【図5】下部光源式の画像処理にて大型の測定対象物の形状を撮像する場合の測定イメージを示した図である。
【図6】上部光源式の画像処理にて大型の測定対象物の形状を撮像する場合の測定イメージを示した図である。
【図7】レーザ光を用いて測定対象物の形状を撮像する場合の測定イメージを示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明では、測定対象物より後方の物体での反射光をカメラが受像しないようにするという目的を、カメラの高さ方向の検出範囲が測定対象物のみカバーするように、レーザ光の光軸に対して角度をつけてカメラを配置することで実現した。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図4を用いて説明する。
先ず、本発明のレーザ形状認識センサを図1及び図2を用いて説明する。図1は測定原理を説明する図、図2は内部構造を説明する図である。
【0016】
本発明のレーザ形状認識センサは、例えばレーザ光源5、カメラ4、レンズ8、フィルター6を、同一の筐体7内に組み込んでいる(図1、図2参照)。
【0017】
このように、筐体7の内部に、レーザ光源5、カメラ4、レンズ8、フィルター6を組み込むことで、レーザ光5aによる照明効果、フィルター6によるレーザ反射光の抽出、カメラ4の高さ方向の検出範囲4cの限定が可能になる。なお、レーザ光源5、カメラ4、レンズ8、フィルター6を個別に設置すると、光学系の屈折等で安定した受像領域を確保することが難しくなる。
【0018】
前記筐体7内への組み込みに際し、カメラ4を構成するラインセンサ素子4aの素子列方向の視野(測定対象物の幅方向の視野)4bが、レーザ光源5のレーザ光5aの照射範囲5bをカバーできるように(図1(a)参照)、例えばレーザ光源5と、図1(a)の紙面左右方向の略同一位置に配置している。
【0019】
加えて、カメラ4とレーザ光源5を図1(a)の紙面前後方向に配置し、かつ、レーザ光5aの光軸に対し角度θをつけてカメラ4を配置している(図1(b)参照)。このような配置の場合、前記角度θを最適値に設定することで、測定対象物より後方はカメラ4で検出しないよう、高さ方向の検出範囲4cを決定することができる。
【0020】
すなわち、前記角度θと、レーザ光5aの光軸とレンズ8の焦点間の距離Lの関係から、カメラ4の高さ方向の検出範囲4cを限定することが可能となる。高さ方向の検出範囲4cを大きくとる場合、前記角度θを小さくすることになるが、前記角度θが小さすぎて、前記距離Lが小さくなり、カメラ4とレーザ光源5が干渉する時は、レーザ光源5の位置をカメラ4の横方向にシフトさせればよい。
【0021】
ところで、前記フィルター6は、抽出したい波長の反射光のみを通過させるものであるが、例えば測定対象物が自発光体の場合は、赤外線領域をカメラ4のダイナミックレンジ内まで抑え込み、反射光を減衰無く通過させるものとすれば、自発光と反射光の双方で形状を認識させることが可能になる。また、カメラ4の光量を変化させる機能が必要でなく、受像レベルの急激な変化にも対応できる。
【0022】
一方、測定対象物が自発光体でない場合は、レーザ波長のみを透過させるものとすれば、外来光の影響を除去し、反射光のみを受像させることが出来ることから、精度の高い計測を実現できる。
【0023】
なお、図2中の9はセンサの制御処理部、10は受光ガラス、11は投光ガラスを示す。
【0024】
上記構成の本発明のレーザ形状認識センサを使用すれば、 移動中の熱間材(自発光体)の形状の計測や、 移動中の自発光体でない物体の形状の計測、及び速度監視を、高精度に行うことができる。
【0025】
上記構成の本発明のレーザ形状認識センサを構成するカメラ4を2台使用して測定対象物1の幅を計測する本発明装置を、図3及び図4を用いて説明する。
【0026】
2台のカメラ4A、4Bを、正面方向から見た図3(a)の、X軸方向に軸間距離L1を隔てて配置し、これら2台のカメラ4A、4Bの間にレーザ光源5を設置する。これら2台のカメラ4A、4Bは、図3(a)の下方に配置された測定対象物1の幅方向全域を撮像できるように配置し、レーザ光源5は、照射する扇状のレーザ光5aで前記測定対象物1の幅方向全域を照射できるような位置に設置する。
【0027】
また、前記両カメラ4A、4Bは、高さ方向の検出範囲内に測定対象物1が位置するように、側面方向から見て(図3(b))、レーザ光源5から照射されるレーザ光5aの光軸に対してθの角度をつけて設置している。なお、説明を省略したが、前記両カメラ4A、4Bにはレンズ8、フィルター6が設けられていることは言うまでもない。
【0028】
2台のカメラ4A、4Bとレーザ光源5を前記の配置構成とした本発明の計測装置を用いて、図3の上方から測定対象物1の幅を測定する方法について説明する。なお、測定対象物1の、図3(a)の紙面左側端面(以下、A端面という。)の座標を計測する場合について説明するが、図3(a)の紙面右側端面(以下、B端面という。)の座標を計測する場合も同様に行えることは言うまでもない。
【0029】
図3に示すX−Y面上において、図3(a)の紙面左側のカメラ4Aで測定対象物1の幅方向両端を撮像する際の、X軸と測定対象物1のA端面を撮像する線とのなす紙面右側のカメラ4B側の角度をθ1とする。
【0030】
一方、図3(a)の紙面右側のカメラ4Bで測定対象物1の幅方向両端を撮像する際の、X軸と測定対象物1のA端面を撮像する線とのなす紙面左側のカメラ4A側の角度をθ2とする。
【0031】
また、図3(b)、図4に示すX’−Y’面上の、X’軸に直交するカメラ4A、4B軸の交点S1、S2(図3(a)参照)と、測定対象物1の上面との距離をy1、測定対象物1のA端面とY軸間の距離をx1とする。
【0032】
一方、図3、図4に示すX’−Y’面上において、前記交点S1、S2と、測定対象物1の図3(b)に示す上面と前記レーザ光5aの光軸との交点間の距離をy1’、 測定対象物1のA端面とY’軸間の距離をx1’とする。
【0033】
前記X’−Y’面上における、測定対象物1のA端面の座標(x1’、y1’)は、前記A端面の検出角(θ1、θ2)と、両カメラ4A、4Bの軸間距離L1を用いて、下記数式1で求めることができる。なお、測定対象物1の、B端面の座標(x2’、y2’)も同様に求めることができる。
【0034】
【数1】

【0035】
図4のY'軸は、Z−Y座標(図3(b)参照)のY軸と角度θを成しており、X’軸はZ軸を交点にもち、X軸と平行に配置される。また、図3のY軸上のレーザ光源5から出力される扇状のレーザ光5aの面はX−Y面上を照射するように配置されているので、測定対象物1のA端面の座標(x1、y1)は、下記数式2により求めることができる。なお、測定対象物1のB端面の座標(x2、y2)も同様に求めることができる。
【0036】
【数2】

【0037】
これらから、測定対象物1の幅寸法は、x2−x1、または、{(x2−x1)2+(y2−y1)21/2で求めることができる。また、捩れ量は、y1−y2で求めることができる。
【0038】
以上の演算は、前記角度θ、θ1、θ2、軸間距離L1を取り込んだ演算装置(図示省略)によって行われる。
【0039】
本発明は上記の例に限らず、各請求項に記載された技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0040】
例えば、図2の例に加えて、レーザ光5aの光軸に対するカメラ4の角度θを調整する機構や、レーザ光源5とレンズ8の焦点間の距離Lを調整する機構を設けても良い。この場合、異なる測定対象物の計測に際しても、同じ形状認識センサを使用できる。
【0041】
また、図3、図4の例では、2台のカメラ4A、4Bはレーザ光源5の両側に配置したものを示しているが、それぞれのカメラ4A、4Bでレーザ光5aを照射する測定対象物1の両端を撮像できるのであれば、レーザ光源5の両側に配置しなくても良い。また、カメラ4を構成する素子は複数本のライセンサ素子でも使用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 測定対象物
4、4A、4B カメラ
4a 素子列方向(測定対象物の幅方向)の視野
4b 高さ方向の検出範囲
5 レーザ光源
5a レーザ光
5b 照射範囲
6 フィルター
7 筐体
8 レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に扇状のレーザ光を照射し、測定対象物での反射光をカメラで受像することで、測定対象物の形状を撮像するレーザ形状認識センサであって、
測定対象物にレーザ光を扇状に照射するレーザ光源と、
このレーザ光源から照射されたレーザ光の測定対象物での反射光を、抽出したい波長のみを通過させるフィルターと、
このフィルターを介して前記レーザ光の測定対象物での反射光を受像すべく、前記レーザ光の照射範囲をカバーできる素子列方向の視野を有するカメラを備え、
前記カメラは、前記レーザ光源と同一の筐体内に、レーザ光の光軸に対して角度をつけて組み込んだことを特徴とするレーザ形状認識センサ。
【請求項2】
測定対象物に扇状のレーザ光を照射し、測定対象物の端面からの反射光をカメラで受像した際の角度を用いて、測定対象物の形状を計測する装置であって、
測定対象物にレーザ光を扇状に照射するレーザ光源と、
このレーザ光源から照射されたレーザ光の測定対象物での反射光を、抽出したい波長のみを通過させるフィルターと、
このフィルターを介して前記レーザ光の測定対象物の端面からの反射光を受像すべく、前記レーザ光の照射範囲をカバーできる素子列方向の視野を有し、軸間距離L1を隔てて配置された2台のカメラと、
これら2台のカメラを、前記レーザ光源と同一の筐体内に組み込んだ際の、レーザ光の光軸に対する角度θと、前記カメラで受像した際の角度θ1、θ2と、両カメラの軸間距離L1から測定対象物の端面座標を求める演算装置を備えたことを特徴とするレーザ形状計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−191253(P2011−191253A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59353(P2010−59353)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000176682)三波工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】