説明

レーザ溶接方法及びレーザ溶接装置

【課題】板材の突合せ溶接を行う際、切削加工装置や切削加工工程を必要とせず、コストが安く、溶接時間の短縮が可能なレーザ溶接方法及びレーザ溶接装置を得る。
【解決手段】対向する一対の板材6の少なくとも一方の被溶接部の板材6の端面からのレーザ12の照射位置を変えて、被溶接部にレーザ12を複数回照射し、被溶接部を一時的に溶解させる第一の照射工程と、一対の板材6の被溶接部の間隔が許容ギャップ内となるように調整するギャップ調整工程と、被溶接部にレーザ12を照射して前記板材6の溶接を行う第二の照射工程とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はレーザ光を使用したレーザ溶接に係り、特に一対の板材の突合せ溶接を行うレーザ溶接方法及びレーザ溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼製造ラインでは、鋼板のシート(薄板材)は、圧延、冷延、めっき等の処理を施した上で、製品コイルとして巻き取られる。この時、連続的に鋼板に上記処理を行うため、シートとシートの溶接が必要となる。例えば、薄板材を突合せてレーザ溶接する場合があり、このような場合に、シャーリング機等で切断した薄板材であるワークの端面をそのまま突合せると、溶接長さが長い場合には突合せた板材の間にギャップが生じやすい。この時、薄板になると正常な溶接をするのに許容できる間隔が狭くなるため、板材同士が接合されなかったり、溶接部に穴が開いたりするなどの不具合が生じる。そのため、従来のレーザ溶接方法とそのレーザ溶接システムにおいては、突合せ精度を良くして板材の間隔を許容ギャップ以下にするため、レーザで溶接するのに先立ち、研削手段にて被溶接板材の両端面を研削加工した後、被溶接板材の端面間の隙間を調整し、レーザ光線で溶接する方法が採られていた(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−249305号公報(第11頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のレーザ溶接方法とそのレーザ溶接システムでは、研削加工を行う装置が必要であり、その設置スペース、コスト、メンテナンスも必要であった。更に、板厚0.1mmの薄板材の溶接となれば、溶接板材の端面の突合せ精度が必要なため、数μm単位の加工精度が必要となり、加工時間もかかるという問題点があった。
【0005】
この発明は、上述のような問題を解決するためになされたもので、切削加工装置や切削加工工程を必要とせず、コストが安く、溶接時間の短縮が可能なレーザ溶接方法及びレーザ溶接装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るレーザ溶接方法及びレーザ溶接装置では、対向する一対の板材の少なくとも一方の被溶接部の板材の端面からのレーザの照射位置を変えて、被溶接部にレーザを複数回照射し、被溶接部を一時的に溶解させる第一の照射工程と、一対の板材の被溶接部の間隔が許容ギャップ内となるように調整するギャップ調整工程と、被溶接部にレーザを照射して前記板材の溶接を行う第二の照射工程とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るレーザ溶接方法及びレーザ溶接装置では、溶接に先立って被溶接部にレーザを照射して一時的に溶解させるに際し、被溶接部の板材の端面からのレーザの照射位置を変えてレーザを複数回照射した上で、その後突合せ溶接を行うので、切削加工装置や研削加工工程が必要無く、コスト低減と溶接工程の時間短縮が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1を示すレーザ溶接装置の構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1を示す板材のシャー切断時の状態を示した模式図である。
【図3】この発明の実施の形態1を示す板材のシャー切断後の状態を示した模式図である。
【図4】この発明の実施の形態1を示す板材を突合せた際のギャップ量Gを示した模式図である。
【図5】この発明の実施の形態1を示す板材の両端部へのレーザ照射状態を示した模式図である。
【図6】この発明の実施の形態1を示す板材の両端面形状が球状に加工された状態を示した模式図である。
【図7】この発明の実施の形態1を示す突合せ溶接におけるアルゴンガスによる溶接部のシールド状態を示した模式図である。
【図8】この発明の実施の形態1を示す板材の端面形状が球状に加工されるモデルを示した模式図である。
【図9】この発明の実施の形態1を示す板厚0.1mmの突合せ溶接における許容ギャップと溶け代の関係を示した模式図である。
【図10】この発明の実施の形態1を示す板材の突合せ溶接における最大許容ギャップと板厚の関係を示した模式図である。
【図11】この発明の実施の形態1を示すレーザ照射による板材端面の形状の変化を示した模式図である。
【図12】この発明の実施の形態2を示すシャー切断後の板材端面の形状を示した模式図である。
【図13】この発明の実施の形態2を示す板材端面におけるレーザ照射位置及びレーザ照射後の端面形状を示した模式図である。
【図14】この発明の実施の形態2を示す板材を突合せた際のギャップGを示した模式図である。
【図15】この発明の実施の形態3を示すレーザ溶接装置の構成図である。
【図16】この発明の実施の形態3を示すレーザ突合せ溶接方法のフローチャートである。
【図17】この発明の実施の形態4を示すレーザ溶接装置の構成図である。
【図18】この発明の実施の形態4を示すレーザ突合せ溶接方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明を実施するための実施の形態1における板材の突合せレーザ溶接方法を用いるレーザ溶接装置の構成図である。この装置は、被溶接板材である先行板材6aと後行板材6bを保持固定するクランプ装置1a、1bを備えている。また、このクランプ装置1a、1bには、板材を保持したクランプ装置を動かして板材の対向する端部にある被溶接部の間隔を調整する調整手段を備えている。また、板材をレーザで加工する加工ヘッド2と、その加工ヘッド2にレーザビームを供給するレーザ光発振器3と、突合せ溶接前に被溶接板材にせん断加工を施すシャー切断機4と、加工ヘッド2とシャー切断機4を搭載し被溶接部に沿って板幅方向に移動するキャリッジ(搬送手段)5と、板材6を送り出すワーク供給装置7とを備えている。なお、ここでは図示していないが、これらを制御するNC(Numerical Control)制御装置があっても良い。
【0010】
次に、この溶接装置を用いた溶接法方法について説明する。図2に示すように、先行板材6aとワーク供給装置7により送り出された後行板材6bとをクランプ装置1a、1bで固定する。シャー切断機4は、上下移動可能な上刃8と、板材6を支える下刃9とから構成されており、上刃8を降下させることで板材6を切断する。この時、対象となる板厚により、上刃8を左右に移動させることで、クリアランス10を調整できるようになっている。
【0011】
その後、シャー切断機4により切断された板材6を保持しながら、クランプ1a、1bの間隔を調整する。通常の突合せ溶接を行う場合ならば、図3に示す板材6a、6bの両端部6a、6bを突合せる。しかし、図4に示すように、シャー切断された板材6の切断精度が悪い場合、板材6を突合せた際に、ある一部分は突き当たるが、ある一部分ではギャップGが空いた状態となり、このまま溶接を行うと溶接不良を起こすこととなる。
【0012】
この発明では、先ず、図3のようにギャップGをある程度空けた状態で、板材間の間隔をクランプ1a、1bの調整手段で調整する。この時のギャップ調整は、板材の被溶接部のギャップを測定して、いずれの場所においても後述する溶接許容ギャップを越えた状態となるように調整しても良いし、ある程度大雑把に広めの間隔を設定しても良い。つまり、レーザ照射の際いずれの場所においても溶接されなければよいのである。その後、被溶接板材の溶接開始点の真上に加工ヘッド2がくるように、キャリッジ5を走行させる。なお、板材6の直下には、11aを軸にして回転が可能な円柱状のバックロール11bがあり、これは、加工ヘッド2が搭載されているキャリッジ5の下部に取り付けられている。
【0013】
その後、図5に示すように、レーザ12を照射させながらキャリッジ5を走行させ、被溶接部である板材端部を一時的に溶解させる。この時、板材表面に照射されているレーザ12のスポット径は、ギャップGより大きい方が良い。そのため、加工ヘッド2を上下させることで、ビームの焦点位置を変化させ、スポット径の大きさが変更できることが望ましい。また、スポット径が小さく、板材の両端面を1回で溶解させることができない場合でも、キャリッジを往復させることで、端面を1回ずつ、一時的に溶解させることも可能である。レーザビーム照射中はシールドガス、ここではアルゴンガスを、加工ヘッド2等に取り付けられたノズル先端から吹付けることで、溶融金属の酸化を防止すると良い。
【0014】
図6にはレーザビームを照射した後の板材の状態を示す。板材6の両端面が一部溶解し球状の形状となる。この時、板材6の端面が球状となると、ギャップGはレーザビーム照射前よりも大きくなる。次にクランプ1a、1bを移動させギャップGを調整し、板材6を突合せる。その後、突合せ部に沿ってレーザビームを照射することで溶接不良のない、良好な溶接が可能となる。この突合せ状態において、ギャップが必ずしもゼロとなる必要は無く、多少ギャップが空いている状態でも、板材6の両端面が部分的に板厚の増加した形状となるため、ギャップ裕度が広くなり、溶接が可能となる。すなわち、板材間の間隔を狭めた後の被溶接部の間隔が、いずれの場所でも後述する溶接可能な許容ギャップ内であればよい。
【0015】
図7は板材の端面を球状に加工した後の突合せ溶接時の状態を示した図である。球状化処理を行った板材を突合せ、例えばレーザ出力:2.0kW、溶接速度:13m/min、ビームスポット径:0.6mmで溶接を行う。その際、溶接中に溶融金属に酸素が溶解すると表面張力が低下し、溶融金属の自重と表面張力とのつりあいのバランスが崩れ、溶融ビードが不安定になる。その結果、溶接部のビードの垂れ下がりや溶け落ちが生じる。これを防ぐために、加工ヘッド2の先端にあるノズルからシールドガス(アルゴンガス)13aを溶接部に吹きつけ、溶融金属の酸化を抑制するとよい。さらに、溶接時に板材の裏からノズル14により、シールドガス(アルゴンガス)13bを当てるバックシールドを行うことで、加工ヘッド2の先端にあるノズルのみからのシールドよりも強力となり、安定した溶接が可能となる。また、シールドガスとして、アルゴンの代わりに熱伝導率の高いヘリウムを使用しても良い。
【0016】
なお、溶接中のレーザビームが照射されている板材6の直下にバックロール11bが無い場合、クランプ状態にある板材6の板厚が薄い程、剛性が小さくなり、板材が垂れてしまい、突合せ溶接が不可能となる。このバックロール11bはレーザビームが照射されている部分の板材を下から持ち上げ、クランプと挟み、固定することで、板材の両端面の目違いを防ぐ役目がある。バックロール11bはキャリッジ5に取り付けられているため、キャリッジ5の走行に沿って、随時、レーザビーム照射部の直下に位置し、溶接を安定にすることができる。なお、一度目のレーザビーム照射と二度目のレーザビーム照射による溶接の際に、バックロール11bが板材の両端面の球状となる部分に当たらないようにする必要がある。
【0017】
以下に板材の突合せ溶接における最大許容ギャップについて、簡単なモデルを用いた理論値と実験値の比較を行い詳細に説明する。使用したモデルを図8に示す。これは、板厚hの突合せ溶接においてGのギャップがある状態で板材の端面からTだけ溶かした時、端面に半径rの半球状の溶融金属が生じるモデルである。ある板厚hと溶け代Tの値を決定することで半径rとθ(=π−濡れ角)が一義的に決まるので、図8(b)の溶融金属がブリッジを形成する(両方の半球状の溶融金属が接する)と仮定すると、Gが求められる。次に、溶け代Tを変化させていき最大許容ギャップGmaxを求める。以下に計算手法を示す。まず、図8より以下の3つの関係式が導かれる。
【0018】
【数1】

【0019】
【数2】

【0020】
【数3】

【0021】
上記の連立方程式からギャップGを半径rとθで表すため、先ず(2)式より(4)式が導かれ、これに(1)式を代入すると(5)式となる。さらに(3)式に(5)式を代入すると(6)式が得られる。
【0022】
【数4】

【0023】
【数5】

【0024】
【数6】

【0025】
このように許容ギャップGが半径rとθで表せる。次に、板厚0.1mmとして溶け代を0.01mmから0.10mmまで変化させた時の許容ギャップを図9に示す。溶け代が0.04mmの時に許容ギャップが0.021mmと最大になる。さらに、ビームスポット径を0.6mmとし、板厚を0.4mm、1.6mmの時の最大許容ギャップGmaxを求め、実験値と比較した結果を図10に示す。この図より、板厚が増加するとギャップが広くなっても溶接が可能となることがわかる。
【0026】
さて、この結果より、図11(a)に示すように、例えば板厚hが0.5mmの場合、突合せ状態でギャップが100μmまで空いていたとしても、不良なく溶接が可能である。しかし、本発明の方法により、例えば、レーザ出力:1.5kW、溶接速度:12m/min、ビームスポット径:1mmで板材の端面から溶け代Tを860μmとすることで、図11(b)のような端面に半径390μmの半球状化した板材が得られる。これは、端部が膨らんで板厚が増加したと見なす事ができるので、ここで、図11(c)のように半球状の断面積と同等の四角状の端面を考えると、板厚hは0.62mmの端部と考えることができ、もう片方の板材にも同様の処理を施すことで、板材間のギャップ裕度の拡大が期待でき、突合せ状態でギャップが130μmまで許容できることになる。
【0027】
なお、ここでは最初のレーザ照射による端面の球状化の際、先行板材と後行板材の両方の端部にレーザを照射しているが、最初のギャップ量が小さい時は、一方の板材だけにレーザ照射をしてもよい。
【0028】
このように構成されたレーザ溶接方法及びレーザ溶接装置によれば、溶接に先立って被溶接部にレーザビームを照射して一時的に溶解させ、その後突合せ溶接を行うので、切削加工装置や研削加工工程が必要無くなり、コスト低減と溶接工程の時間短縮が可能となる。更に、端面の球状化により端部の板厚が増加したと見なせるので、板材間のギャップ裕度の拡大が期待でき、突合せ精度が多少悪くても溶接可能となる。
【0029】
また、板材の両端面を球状にする際や溶接の際に、加工ヘッドや板材の裏面からシールドガスを吹き付け、レーザビームを照射するようにすれば、溶融金属の酸化を防止する事ができる。その結果、溶解した金属の表面張力の低下を防いで自重による垂れ下がりを防止し、球状を保つことができるので、端部の板厚増加による溶接の裕度の拡大が期待でき、突合せ精度が多少悪くても溶接可能となる。その際、シールドガスとしてヘリウムガスを用いると、溶接ビードの冷却を促し、溶融金属の自重の増加やその変形を抑制することができるので、より安定した溶接が可能となる。
【0030】
さらに、バックロールを備えていれば、薄板材の垂れ下がりを防止でき、薄板材の両端面の目違いを防ぐ事が可能である。また、バックロールはキャリッジに取り付けられているため、キャリッジの走行に沿って、随時、レーザビーム照射部の直下に位置するので、溶接を安定にすることができるという効果も併せ持つ。
【0031】
実施の形態2.
ここでは、実際の薄板材を用い、突合せ溶接を行う前に板材端部にレーザを照射させた際の板材の形状変化について説明する。板材の鋼板としては、普通鋼、高張力鋼、高炭素鋼、電磁鋼板、ステンレス鋼などがある。一例として図12に溶接に使用する薄板材の形状を示す。板厚hが0.1mm、板幅Wが100mmであり、シャー切断による板端面の凹凸量は約50μmである。つまり、シャー切断後の板材をそのまま突合わせた場合、板中央部に約100μmものギャップが空くことになる。図9に示したように板厚0.1mmの突合せ溶接において、溶接可能な許容ギャップは21μmであり、シャー切断板材では溶接不可能となる。
【0032】
次に、図13(a)にシャー切断後の板材に端面の球状化を行うためのレーザビーム照射状態を示す。この時の溶接条件は例えば、レーザ出力:300W、溶接速度:5m/min、ビームスポット径R:0.6mm、ビーム照射位置L:0.1mmである。板材端面の球状化処理は、板材をどの程度、溶解させるかにより球状化する大きさが異なり、特に、ビーム照射位置L(溶け代Tと関連)は大きく影響する。今回、図12に示した板材では、板端面の凹凸量が板幅方向(溶接方向)のX=0mm付近で32μm、X=100mm付近で16μmと、16μmの差がある。このような場合、一度のレーザ照射で球状化処理を行う方法以外にも、途中でビーム照射位置Lを変化させる方法もある。また、X=0mmからX軸プラス方向、X=100mmからX軸マイナス方向と2回に分けてレーザ照射を行うと、より凹凸が減少することも考えられる。なお、この際は、X軸プラス方向へのビーム照射は板材が最も凹んでいるX=40mm付近までで、その後はレーザをオフにして、キャリッジを走行させ、ビーム照射位置Lを変化後、X軸マイナス方向へのビーム照射はレーザが照射されていない部分X=100mmからX=40mmの間として球状化処理を行えばよい。
【0033】
図13(b)には、X軸プラス方向へおよそX=60mmまでのレーザ照射を行った結果を示す。この結果から凸部の最大は+4.0μm、凹部の最大は−5.7μmであり、凹凸量は9.7μmとなった。このように、レーザ照射前の凹凸量の50μmと比べ、凹凸が減少するという効果が見られる。なお、同様の処理を繰返す、つまり、複数回レーザを照射することも可能である。
【0034】
このように、板材を突合せた時の当初のギャップG(図14(a)参照)は約100μmあったが、斜線部へのレーザ照射(照射位置は適宜変更してもよい)により、図14(b)のように板材間のギャップGは9.7×2=19.4μmとなり、板厚0.1mmの突合せ許容ギャップ内であるため、その後の突合せ溶接は可能となる。
【0035】
なお、ギャップが減少するのは、突合せ溶接を行う前にレーザを被溶接板材の両端面に照射することで端面が一部溶解し、表面張力の影響により球状の形状をした被溶接板材が得られるためであり、その際、板材の角部は中央部よりも溶解量が大きく、相対的に球状半径が大きくなり後退量が増える(Y軸の値が小さくなる)ためと考えられる。なお、その後の突合せ溶接後のビート形状を見て中央部と角部の溶接部の肉厚を比較すると本方法の使用が分かる場合がある。
【0036】
このように、レーザ溶接前の板材端部へのレーザ照射には、ギャップ裕度の向上と共に凹凸量の減少という効果もあるため、溶接が容易となり、研削装置や研削工程が不要になるため、コストが低減でき、溶接工程の時間短縮が可能となる。
【0037】
実施の形態3.
ここでは実施の形態1、2のレーザ溶接方法を用いるレーザ溶接装置例について述べる。図15は撮像装置16を加工ヘッド2に取り付けた状態を示した図である。ハーフミラー15と撮像装置16をレーザ光と同軸にセットすることで、溶接前の板材の突合せ状態を確認したり、突合せ部のレーザ照射位置を容易に合わせたりすることができる。また、画像処理装置17とNC制御装置19も備えている。
【0038】
レーザ照射による端面の球状化後、突合せ溶接をするためには、クランプ装置1a、1bを接近させて、溶接可能な突合せ位置までギャップGを調整する必要があるが、薄板材の場合は、目違いを生じさせずにギャップGを狭めて突合せることは困難である。そのため、キャリッジ5を再度、溶接線方向に移動させながら、図15のように、加工ヘッド2に取り付けられている撮像装置16の映像を画像処理装置17を用いて、両板材間の最も狭いギャップ量を計測し、その後、NC制御装置19の指示によりこの最小ギャップ量だけクランプを移動させれば、目違いを生じさせずに突合わせることができる。
【0039】
このように構成されたレーザ溶接装置のNC制御装置19動作指示について図16を用いて説明する。この図は、撮像装置16を用いたレーザ突合せ溶接の動作手順の概要を示したフローチャートである。ステップ111のスタートに引き続き、ステップ112で先行板材6aの終端部分をクランプし、後行板材6bをワーク供給装置により、レーザ溶接加工機へ供給する。ステップ113で後行板材6bをクランプし、ステップ114でクランプされた板材をシャー切断機4にて切断する。ステップ115では、溶接許容ギャップを越えるようにギャップ調整を行い、加工ヘッド2に取り付けられた撮像装置16により、レーザ照射の位置決めを行う。ステップ116で、レーザを照射し、板材の端面の球状化加工を行う。その後、キャリッジ5を移動させて撮像装置16の映像を画像処理装置17によって画像処理し、突合せギャップを計測する(ステップ117)。その際の最小ギャップ分だけクランプを移動させてギャップ調整を行い(ステップ118)、ステップ119でレーザを照射し溶接を行い、ステップ120で溶接工程が終了する。
【0040】
なお、ここでは、測定された最小ギャップ分だけクランプを移動させているが、これにより最小ギャップの所の板材が突き当てられて接触している。そのため、それ以上移動させると目違いが生じることになる。良好な溶接が可能となるには、板材間の間隔を狭めた後の被溶接部の間隔が、いずれの場所でも溶接可能な許容ギャップ内であればよいため、必ずしも測定された最小ギャップ分だけクランプを移動させる必要は無く、最小ギャップ分よりも若干移動量を小さくしても良い。
【0041】
このように構成されたレーザ溶接装置によれば、NC制御装置の指示により溶接に先立って被溶接部にレーザビームを照射して一時的に溶解させ、その後ギャップを調整して突合せ溶接を行うので、切削加工装置や研削加工工程が必要無くなり、コスト低減と溶接工程の時間短縮が可能となる。また、溶接位置とギャップを正確に測定できるので、目違いを生じさせることなく突合せる事ができ、安定な溶接を行う事ができる。
【0042】
実施の形態4.
ここでは実施の形態1、2のレーザ溶接方法を用いた他のレーザ溶接装置例について述べる。実施の形態3の溶接装置は、撮像装置16を用いていたが、ここでは2次元レーザ変位センサを用いる場合について述べる。図17は2次元レーザ変位センサ18を加工ヘッド2のレーザ照射方向の後ろ側に取り付けた状態を示した図である。また、検査装置20とNC制御装置19も備えている。
【0043】
レーザビームによって両板材の端部を球状に加工する際、2次元レーザ変位センサ18は、加工ヘッド2のレーザ照射方向の後ろ側に取り付けられているため、板材の端面球状化加工の直後に、ギャップGが測定できる。この2次元レーザ変位センサ18からの最小ギャップ量を検査装置20で読み取り、NC制御装置19の指示により最小ギャップ量分だけクランプを移動させればよい。
【0044】
このように構成されたレーザ溶接装置のNC制御装置19動作指示について図18を用いて説明する。この図は、2次元レーザ変位センサ18を用いたレーザ突合せ溶接の動作手順の概要を示したフローチャートである。ステップ211のスタートに引き続き、ステップ212で先行板材6aの終端部分をクランプし、後行板材6bをワーク供給装置により、レーザ溶接加工機へ供給する。ステップ213で後行板材6bをクランプし、ステップ214でクランプされた板材をシャー切断機4にて切断する。ステップ215では、溶接許容ギャップを越えるようにギャップ調整を行い、加工ヘッド2に取り付けられたCCDカメラあるいは、2次元レーザ変位センサ18と検査装置20により、レーザ照射の位置決めを行う。ステップ216で、レーザを照射し、板材の端面の球状化加工を行う。その際、加工ヘッド2のレーザ照射方向の後ろ側に取り付けられた、2次元レーザ変位センサ18にて、突合せギャップを計測する(ステップ217)。その際の最小ギャップ相当分だけクランプを移動させ(ステップ218)、ステップ219でレーザを照射し溶接を行い、ステップ220で溶接工程が終了する。
【0045】
なお、ここでは、2次元レーザ変位センサ18は、加工ヘッド2に取り付けられているが、レーザ照射方向の後ろ側にあればよいので、キャリッジ5に直接取り付けられていても良い。
【0046】
このように構成されたレーザ溶接装置によれば、端面の球状化と同時にギャップを測定するので、時間短縮ができる。また、ギャップを正確に測定できるので、目違いを生じさせることなく突合せる事ができ、安定な溶接を行う事ができる。
【符号の説明】
【0047】
1a クランプ装置、1b クランプ装置、2 加工ヘッド、3 レーザ光発振器、4 シャー切断機、5 キャリッジ、6 板材、6a 先行板材、6b 後行板材、6a 端部、6b 端部、7 ワーク供給装置、8 上刃、9 下刃、10 クリアランス、11a バックロール軸、11b バックロール、12 レーザ、13a シールドガス、13b シールドガス、14 ノズル、15 ハーフミラー、16 撮像装置、17 画像処理装置、18 2次元レーザ変位センサ、19 NC制御装置、20 検査装置、G ギャップ、Gmax 最大許容ギャップ、h 板厚、ha 板厚、L 板材端面からのレーザビーム照射位置、R レーザビームのスポット径、T 溶け代、W 板幅、X X軸、Y Y軸、r レーザビーム照射後の板端面に生じる半球状の半径、θ π―濡れ角。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一対の板材の少なくとも一方の被溶接部の板材の端面からのレーザの照射位置を変えて、前記被溶接部にレーザを複数回照射し、前記被溶接部を一時的に溶解させる第一の照射工程と、
前記一対の板材の被溶接部の間隔が溶接許容ギャップ内となるように調整するギャップ調整工程と、
前記被溶接部にレーザを照射して前記板材の溶接を行う第二の照射工程と
を備えたレーザ溶接方法。
【請求項2】
第一の照射工程は、被溶接部の板材の一端側と他端側からそれぞれ前記被溶接部の間隔が最も広い部分に向かって前記被溶接部にレーザを照射する請求項1記載のレーザ溶接方法。
【請求項3】
被溶接部を対向させて保持された一対の板材の少なくとも一方の被溶接部の前記板材の端面から照射位置を変えて複数回レーザ照射して、前記被溶接部を一時的に溶解させた後に前記板材の被溶接部にレーザ照射して前記板材の溶接を行う加工ヘッドと、
前記一対の板材の溶接前に被溶接部の間隔を調整するギャップ調整手段と、を備えたレーザ溶接装置。
【請求項4】
ギャップ測定手段は、加工ヘッドのレーザと同軸に付けられた撮像装置、又は、前記加工ヘッドのレーザ照射方向の後ろ側に取り付けられたレーザ変位センサである請求項3記載のレーザ溶接装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2012−115909(P2012−115909A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−32998(P2012−32998)
【出願日】平成24年2月17日(2012.2.17)
【分割の表示】特願2008−49560(P2008−49560)の分割
【原出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】