レーザ溶接装置、レーザ溶接方法
【課題】貫通痕が少ないレーザ溶接方法およびそのための装置を提供する。
【解決手段】加工用パターンの開始時点k1では、ワークW1およびW2を貫通する程度の入熱量h1となるようにレーザ光を照射し、その後の区間k2はワークW1およびW2を貫通しない程度の入熱量h2となるようにレーザ光を照射する。
【解決手段】加工用パターンの開始時点k1では、ワークW1およびW2を貫通する程度の入熱量h1となるようにレーザ光を照射し、その後の区間k2はワークW1およびW2を貫通しない程度の入熱量h2となるようにレーザ光を照射する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ溶接装置、レーザ溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボットを利用した溶接にもレーザ溶接が用いられるようになってきている。このような溶接技術として、ロボットアーム(マニュピレータ)の先端にレーザ光を照射するためのレーザ照射装置を取り付け、ロボットアーム移動させつつ、さらにレーザ照射装置からのレーザ光照射方向をも変えることで、レーザ光を移動させながらあらかじめ決められた溶接点を溶接する技術がある(たとえば特許文献1参照)。このような溶接をワークとレーザ照射装置の間がこれまでよりも離れていることからリモート溶接と称されている。
【特許文献1】特開平10−18471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このようなリモート溶接における特有の問題が明らかになってきた。その一つが、レーザ照射による溶接ビード形成時の貫通痕やブローホールである。
【0004】
従来のリモート溶接においては、湯お説を確実に行わせるために、レーザ光が被溶接部材を貫通する程度の強度で、溶接のための加工用パターンの最初から最後まで一定のレーザ光出力強度で溶接されていた。このため、被溶接部材の裏面(レーザが突き抜けた側)では、貫通痕が生じ、また、最悪の場合には肉が失われてはブローホールとなってしまうなどの問題があった。
【0005】
そこで本発明の目的は、ブローホールの発生を防止し、また被溶接部材裏面に生じる貫通痕を極力少なくすることができるレーザ溶接装置およびレーザ溶接方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、レーザ光の照射方向を変更する反射鏡を備えたレーザ照射手段と、前記レーザ照射手段を移動させる移動手段と、前記レーザ照射手段をあらかじめ教示された移動経路に従って移動させるように前記移動手段を制御するとともに、前記レーザ光があらかじめ決められた加工用パターンを描くように前記反射鏡の動きを制御する加工用制御手段と、前記レーザ照射手段から射出されたレーザ光による溶接点における入熱量を前記加工用パターンを描く前記レーザ光の照射位置に応じて変更するレーザ光制御手段と、を有すること特徴とするレーザ溶接装置である。
【0007】
また上記課題を解決するための本発明は、レーザ光の照射方向を変更する反射鏡を備えたレーザ照射手段と、前記レーザ照射手段を移動させる移動手段と、を備えたレーザ溶接装置の制御方法であって、前記移動手段により前記レーザ照射手段をあらかじめ教示された移動経路に沿って移動させるとともに、前記レーザ照射手段から照射される前記レーザ光があらかじめ決められた加工用パターンを描くように前記反射鏡の動きを制御し、かつ前記加工用パターンを描く前記レーザ光の照射位置に応じて溶接点における入熱量を変更すること特徴とするレーザ溶接方法である。
【発明の効果】
【0008】
以上のように構成された本発明によれば、加工用パターンの開始時点では、レーザ光が被溶接部材を貫通する程度の第1の入熱量となるようにレーザ光を照射し、その後はレーザ光が被溶接部材を貫通しない程度の第2の入熱量となるようにレーザ光を照射することとしたので、第1の入熱量によって接合強度を得るために必要な溶融池を形成し、その後は貫通しない程度の第2の入熱量としても被溶接部材を接合するために十分な溶融池が形成されるため十分な接合強度が得られつつ、必要以上の熱が加えられることがないので、ブローホールの発生を防ぐことができる。また、これにより、被溶接部材の裏面(レーザ光が突き抜ける側)における貫通痕は、溶接開始の最初の部分にできるだけであるので、これまでより裏面の溶接痕を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付した図面を参照して本発明を適用した実施形態について詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明が適用されるレーザ溶接システムの概略構成図であり、図2はこのレーザ溶接システム内のレーザ照射装置の内部構造図であり、図3はこのレーザ溶接システム内のレーザ発振器の内部構造図である。
【0011】
図1に示すレーザ溶接システムは、加工対象物としての被溶接物であるワークWに、ワークW上に位置されるレーザ照射装置3からレーザ光100を照射することによって、直接ワークWに触れることなくワークWの溶接を行うものである。
【0012】
図示するレーザ溶接システムは、ロボット1(移動手段)と、ロボット1のアーム2の先端に取り付けられ、レーザ光100を照射するレーザ照射装置3(レーザ照射手段)と、レーザ光を発生させるレーザ発振器5と、レーザ発振器5からレーザ照射装置3までレーザ光を導く光ファイバーケーブル6と、ロボット1およびレーザ照射装置3の動作を制御するロボット制御装置7(加工用制御手段およびレーザ光制御手段)と、ロボット制御装置7に各種の指示を送るティーチボックス8とから構成される。また、このシステムは、後述する教示データおよび加工用パターンデータをCADシステム9から取得することができるようになっている。なお、このCADシステム9は、常時接続されている必要はない。
【0013】
ロボット1は一般的な多軸ロボットであり、教示作業によって与えられた経路データに従ってアーム2が駆動され、レーザ照射装置3を3次元のさまざまな位置および方向に移動させることができる。レーザ発振器5にはYAGレーザが用いられ、レーザ発振器5で発生されたレーザ光は光ファイバーケーブル6によってレーザ照射装置3に導かれる。
【0014】
レーザ照射装置3は導かれたレーザ光を内蔵した反射ミラー11(反射鏡)で反射し、ワークWの加工打点(以下、溶接点と称する)に対して強力なレーザ光100を走査する。走査されたレーザ光100は溶接点上に照射され、レーザ照射装置3が走査した形状に従って溶接点の溶接(溶接ビードの形成)が行われる。
【0015】
ロボット制御装置7はロボット1の姿勢を認識しながらロボット1の動作を制御するとともに、レーザ光の照射方向を変更し走査するためにレーザ照射装置3の制御(反射ミラー11の制御)も行っている。この反射ミラー11の制御は、後述する容易あらかじめ決められた加工用パターンを描くように行われる。また、ロボット制御装置7はレーザ発振器5からのレーザ出力のON、OFFも制御している。
【0016】
レーザ照射装置3は、入力されたレーザ光および可視レーザ光(可視光)の照射方向を自在に変更できるように構成されている。すなわち、レーザ照射装置3は、図2に示すように、光ファイバーケーブル6によって導かれたレーザ光100を、溶接点に向けて照射するための反射ミラー11(反射鏡)と、反射ミラー11を回動させるモータ16および17およびレンズ群12とを有している。
【0017】
反射ミラー11は、鏡面を通る垂直な軸線をZ軸とし、Z軸と直交するX軸およびY軸をそれぞれ中心として独立に回動自在に支持されている。モータ16およびモータ17は、それぞれのモータの回動位置の合成によって、反射ミラー11の向きを3次元方向に変える。したがって、反射ミラー11は、光ファイバーケーブル6から入射されるレーザ光を3次元方向に放射自在に取り付けられている。反射ミラー11を3次元方向に回動させることによって、ワークW上に設定されている溶接点に所定の形状となる走査パターン(加工用パターン)を描かせることができる。
【0018】
また、この反射ミラー11の移動速度(回動速度)によって入熱量の調節も行うことができる。すなわち、反射ミラー11の移動によって加工用パターンを描くレーザ光の移動速度を遅くすれば、溶接点では単位時間当たりのレーザ光の入射量が多くなり、溶接点における入熱量が高くなる。一方、これを速くすれば、単位時間当たりのレーザ光の入射量が少なくなって、溶接点における入熱量は低くなる。
【0019】
反射ミラー11の移動速度の変更によるレーザ光強度の変更は、ロボット制御装置7からの指示によって行われる。このレーザ光強度の変更指示は、あらかじめ加工用パターンの位置に応じて行われる(詳細後述)。
【0020】
レンズ群12は、光ファイバーケーブル6の端部から放射されたレーザ光を平行光にするためのコリメートレンズ121と平行光となったレーザ光100をワークW上で集光させるための集光レンズ122から構成される。そして、集光レンズ122の位置を変えることでレーザ照射装置3は溶接点から反射ミラー11までの距離に応じてレーザ光が商店を結ぶ位置を変更する。なお、このような焦点位置の変更(集光レンズ位置の変更動作)は、ロボットによる移動経路の教示と共にあらかじめ教示される。
【0021】
レーザ発振器5内部は、図3に示すように、YAGレーザの発振源501の他に、半導体レーザなどによる可視レーザ光発振源502が備えられている。可視レーザ光発振源502は、たとえば、レーザ照射位置の確認などに使用される。可視光を出すか溶接用のレーザ光を出すかは、レーザ発振器5内部の切り替えミラー503によって切り替えられている。すなわち、切り替えミラー503が実線の位置のときは、YAGレーザ光が光ファイバーケーブル6へ出力され、点線の位置のときには可視レーザ光が光ファイバーケーブル6へ出力される。
【0022】
この切り替えミラー503の切り替えはロボット制御装置7からの指示または手動によって行われる。
【0023】
また、レーザ発振器5から出力されるレーザ光の強度は、ロボット制御装置7からの指示によって変更される。このレーザ光強度の変更指示は、あらかじめ加工用パターンの位置に応じて行われる(詳細後述)。
【0024】
図4は、本実施形態に係るレーザ溶接システムの制御系のブロック図である。
【0025】
ロボット制御装置7は、教示データ記憶部21(教示データ記憶手段)、ロボット制御部22、加工用パターン記憶部23(加工用パターン記憶手段)、加工用パターン生成部24、レーザ光走査制御部25(加工用制御手段およびレーザ光制御手段)を備えている。
【0026】
教示データ記憶部21は、あらかじめCADシステムを利用したシミュレーションによる教示作業によって教示されたロボット1の動作経路、動作速度、およびワークWの溶接点を記憶している。溶接点は、ワークWの溶接箇所を示し3次元座標によって表されている。なお、教示データはシミュレーションによって教示されたデータではなく、実機を使用した教示データであってもよい。
【0027】
ロボット制御部22は、教示データに基づいて、ロボット1の各軸モータの回転量を制御し、レーザ照射装置3があらかじめ定められた動作経路で移動して、所定の位置、たとえば、ワークWに設定されている溶接点上の決められた位置で順次停止するように制御する。
【0028】
ロボット制御部22は、ロボット1の各軸モータの回転量(エンコーダ値)に基づいてロボット1の姿勢を認識することもできるようになっている。したがって、ロボット制御部22は、ロボット1の姿勢を認識する姿勢認識部としても機能することになる。また、ロボット制御部22は、認識されているロボットの姿勢に基づいて、レーザ照射装置3がワークWのある溶接点に対してレーザ光を照射可能な位置にあるか否かを判断する機能をも備えている。
【0029】
加工用パターン記憶部23は、レーザ照射装置3により走査されるレーザ光100の加工時の走査パターン(加工用パターン)、および加工用パターンの位置におけるレーザ光強度を記憶している。
【0030】
加工用パターン記憶部23に記憶しておく加工用パターンは任意の大きさの任意の形状でよい。本実施形態では、たとえば、図5に示すS字形状の加工用パターンを記憶してある。このようなS字形状の加工用パターンは、その縦(溶接長さ)が何mm、横(溶接幅)が何mmというように、その大きさが加工用パターンの形状の縦と横の大きさとして規定されている。なお、本実施形態では加工用パターンをS字形状として説明するが、図6のような棒形状であっても、図7のようなC字形状であってもよい。なお、加工用パターンはCADで作成されるため、加工用パターン記憶部23にはCADからのデータが記憶されることになる。
【0031】
ここで、加工用パターンの表現方法を説明しておく。加工用パターンは、加工用パターンに定めた溶接点中心座標とその溶接点中心座標からのオフセット量で規定された複数の点列座標で構成し、溶接点中心座標と点列座標は、ワークWと同一の座標系の座標で表している。
【0032】
たとえば、加工用パターンが図5に示すようなS字形状である場合、S字形状の溶接長さと溶接幅は図のように規定されている。S字形状の重心(加工用パターンの中心位置となる)を溶接点中心座標(Wxcnt、Wycnt,Wzcnt)とし、この溶接点中心座標を原点として、ワークWと同一の座標系(Wx、Wy,Wz)が規定されている。そして、S字形状を構成する80の点列座標(Wxcnt+Wx(0)、Wycnt+Wy(0),Wzcnt+Wz(0))から(Wxcnt+Wx(79)、Wycnt+Wy(79),Wzcnt+Wz(79))は、溶接点中心座標からのオフセット量(図示点線で示すベクトル量)として定義されている。このベクトルで示されるオフセット量は、S字形状を構成する各点が溶接点中心座標からどの程度離れているのかを示している。なお、オフセット量は、2次元のオフセット量として規定することもできるし、3次元のオフセット量として規定することもできる。
【0033】
加工用パターンが図6に示すような棒形状である場合、その棒形状の重心を溶接点中心座標(Wxcnt、Wycnt,Wzcnt)とし、この溶接点中心座標を原点として、ワークWと同一の座標系(Wx、Wy,Wz)が規定されている。そして、棒形状を構成する30の点列座標(Wxcnt+Wx(0)、Wycnt+Wy(0),Wzcnt+Wz(0))から(Wxcnt+Wx(29)、Wycnt+Wy(29),Wzcnt+Wz(29))は、溶接点中心座標からのオフセット量(図示点線で示すベクトル量)として定義されている。
【0034】
さらに、加工用パターンが図7に示すようなC字形状である場合、そのC字形状の重心を溶接点中心座標(Wxcnt、Wycnt,Wzcnt)とし、この溶接点中心座標を原点として、ワークWと同一の座標系(Wx、Wy,Wz)が規定されている。そして、C字形状を構成する80の点列座標(Wxcnt+Wx(0)、Wycnt+Wy(0),Wzcnt+Wz(0))から(Wxcnt+Wx(79)、Wycnt+Wy(79),Wzcnt+Wz(79))は、溶接点中心座標からのオフセット量(図示点線で示すベクトル量)として定義されている。
【0035】
加工用パターン記憶部23に記憶させる加工用パターンも溶接点と同様にCADシステム9(図1参照)によって作成されるが、溶接点と加工用パターンとは、CADシステム9によって個別に独立して教示させる。つまり、溶接点と加工用パターンとは全く別のデータとして扱えるようになっている。そのため、教示データ記憶部21と加工用パターン記憶部23とは別々に設けている。
【0036】
加工用パターン生成部24は、加工用パターン記憶部23に記憶されている加工用パターンの形状から、記憶されているままの大きさの形状、または、ティーチボックス8が有している指示部26によって指示された大きさの形状を生成するものである。
【0037】
指示部26は、任意にワークWの溶接点上に描かれる加工用パターンの大きさを指示するものであって、たとえば、加工用パターンであるS形状の縦方向を、教示データ記憶部21に記憶されているS形状の3倍に、そして横方向を1.5倍にと言うように、溶接点に要求されるたとえば溶接強度に応じて指示する。なお、加工用パターンの大きさは、指示部26からの指示に代えて、レーザ溶接を行う場合に読み込むプログラム内にあらかじめ埋め込むようにしてもよい。また、この指示部26による指示は動作教示の際に1度指示すればそれが記憶されて、レーザ溶接中においては、記憶された大きさとして囲うようパターンが描かれることになる。
【0038】
レーザ光走査制御部25は、ワークWと同一の座標系の座標で表されている、加工用パターンの溶接点中心座標およびその溶接点中心座標からのオフセット量で規定された複数の点列座標を、ロボット1の座標系の座標に変換する機能を有している。そしてレーザ光走査制御部25は、加工用パターン生成部24によって生成された大きさの加工用パターンを入力するとともに、ロボット制御部22が認識しているロボット1の姿勢をも考慮して、溶接点上に描く加工用パターン形状の点列座標(80ポイント程度)を算出し、その点列座標に基づいてレーザ照射装置3の反射ミラー11を回動させる。
【0039】
さらに、このレーザ光走査制御部25は、溶接点上に描かれるレーザ光の照射位置(加工用パターン上の位置)に応じてレーザ光による溶接点への入熱量を制御する。
【0040】
次に、このように構成されたシステムの作用を説明する。
【0041】
図8は、加工用パターンの位置に応じた入熱量の制御を説明するための図面であり、(a)は溶接点(加工用パターン)の断面を模式的に示した図面であり、(b)は加工用パターンの位置に応じた入熱量の変化を示すグラフである。なお、図8(a)においては、直線的なパターンの断面として示したが、これはあくまでも加工用パターンの断面を説明するための図であって加工用パターンがS字やC字など曲線的な場合であっても同様である。
【0042】
本実施形態では、図示するように、加工用パターンの描き始めの位置(区間k1)で、被溶接部材である重ねられた2枚のワークW1およびW2を、レーザ光が貫通する程度の入熱量(第1の入熱量h1)とし、その後位置(区間k2)をレーザ光がワークWIおよびW2を貫通しない入熱量(第2の入熱量h2)となるようにしている。ここで入熱量とは、レーザ光の照射によって発生する単位時間当たりの熱量である。
【0043】
このような入熱量の制御は、まず、加工用パターンの描き始めの位置で、ワークW1およびW2を貫通する程度の第1の入熱量h1とする。この段階で、レーザ光の照射点においてはワークW1およびW2が完全に固着するために十分な溶融池101が形成される。そしてこのような溶融池101部分の形成に伴い、加工用パターンに沿ってレーザ光を進行させる方向を含めて溶融池101の周辺が加熱されることになる。この加熱領域はさほど大きい範囲のもではないが加工用パターンとして溶接ビードを形成してゆくためには十分な大きさである。
【0044】
その後、入熱量を低くして第2の入熱量h2にして引き続き加工用パターンに沿ってレーザ光を進行させる。この段階では、前記のように加工用パターンに沿ってレーザ光を進行させる部分k2もある程度加熱されているため、2枚のワークを貫通することがない程度に入熱量を低くしても、ワークW1とW2の合わせ面の位置まで溶融して、これらを接合するために十分な溶接ビードが形成される。
【0045】
これにより、十分な接合強度が得られるとともに、被溶接部材の裏面(レーザ光が突き抜ける側)における貫通痕を少なくすることができるのである。
【0046】
ここで、本実施形態の参考のために、加工用パターンの全長にわたり、すべて貫通する程度の入熱量となるようにレーザ光を照射した場合について説明する。
【0047】
図9(a)は加工用パターンの全長にわたり被溶接部材を貫通する程度の同じ入熱量でレーザ溶接を行った場合の断面を模式的に示した図面であり、(b)は加工用パターンの全長にわたり貫通しない程度の同じ入熱量でレーザ溶接を行った場合の断面を模式的に示した図面である。
【0048】
図9(a)に示したものの場合、加工パターンの全長にわたり被溶接部材を貫通する程度の同じ入熱量でレーザ溶接を行ったため、ワークW1およびW2をつけぬけたレーザ光によって、裏面側に大きな貫通痕が残ってしまう。また、溶接点が加熱され過ぎて、ブローホールBHが空いてしまうこともある。
【0049】
図9(b)に示したものの場合、加工パターンの全長にわたり被溶接部材を貫通しない程度の同じ入熱量でレーザ溶接を行ったため、裏面に貫通痕はできないものの、始めから入熱量が少ないため、ワークW1とW2の接合面に十分な溶融池ができずに、接合不良が起こる可能性がある。
【0050】
このように、入熱量を加工用パターンの全長にわたり一定とした場合には、さまざまな不具合の可能性があるが、先に説明したとおり本実施形態のように加工用パターンの途中で入熱量を変化させることで、十分な接合強度が得られかつ、裏面の貫通痕を最小限に抑えることができるのである。
【0051】
次に入熱量を変える制御について説明する。
【0052】
第1の入熱量から第2の入熱量へ変化させる際の変化の度合いは、ワークの厚さに応じて変えることが好ましい。
【0053】
たとえば、ワークW1側からレーザ光を照射する(以下同様)ものとして、2枚のワークW1およびW2の厚さが、W1の方がW2より薄い場合(W1<W2)には、第1の入熱量を100%としたとき、第2の入熱量は、その40〜50%となるようにすればよい。これは、ワークW1およびW2を重ね合わせた場合に第1の入熱量がワークW1およびW2を貫通する程度とすれば、第2の入熱量をその40〜50%にすれば、レーザ照射による溶融池の深さはワークW1およびW2の合計厚さの約半分の位置、すなわち、ワークW1を抜けてワークW2に確実に到達し、かつワークW2を貫通することのない位置となる。なお、ワークの厚さがW1<W2の場合に、第2の入熱量は、溶融池の深さがワークW1を抜けてワークW2に確実に到達し、かつワークW2を貫通することのないような値であればよく、第1の入熱量に対して50%を越えるような値(例60%、70%、80%など)であってもよいが、約50%にすれば第1の入熱量に対して、反射ミラー11の回動速度を倍にしたり、レーザ強度を半分にするなどにより実行可能であり、最も制御しやすい。
【0054】
また、たとえば、ワークW1の方が厚い場合(W1>W2)、この場合は溶融池の深さが、確実にワークW1を抜けてワークW2に到達するために、W1の厚さ/(W1の厚さ+W2)程度を上限として、下限はこれから10%引いた程度とするとよい。具体例としては、ワークW1=0.8mm、W2=0.6mmとした場合には、第1の入熱量を100%としたとき、第2の入熱量は、0.8/(0.8+0.6)=約57%となるので、47〜57%となるようにすればよい。これにより、溶融池の深さは、第1の入熱量ではワークW1およびW2を貫通し、第2の入熱量ではW1を多少抜けて位置でとまりW2を貫通することはない。ここで、第2の入熱量の下限値を、2枚のワークの合計厚さに対するワークW1の厚さに応じた値よりさらに低くするのは、第1の入熱量を2枚のワークが完全に貫通する程度に設定するため(ただし必要以上に強くすることはない)、これを単純にワークW1の厚さに応じて減じただけでは、第2の入熱量として高すぎてしまい、第2の入熱量でも2枚のワークが貫通してしまうおそれがあるためである。そこで、第2の入熱量の好ましい値としては2枚のワークの合計厚さに対するワークW1の厚さに応じた値より低くするのが好ましいのである。
【0055】
なお、これらはあくまでも一例であるから、第1の入熱量および第2の入熱量は被溶接部材の素材や厚さに応じて、第1の入熱量は貫通する程度、第2の入熱量は被溶接部材全部は貫通しないがレーザ光照射側のワークのみ貫通する程度に設定すればよい。
【0056】
これら入熱量の制御は、反射ミラー11を回動させる速度を変えること、またはレーザ発振器5から出力されるレーザ光の強度を変えること、およびそれら両方を組み合わせることで行うことができる。
【0057】
たとえば、第1の入熱量を100%として第2の入熱量を50%とする場合は、第1の入熱量となるようにレーザ光を照射しているときの反射ミラー11の回動速度に対して、第2の入熱量となるようにレーザ光を照射しているときの反射ミラー11の回動速度を倍にすればよい。同様に、たとえば第1の入熱量を100%として第2の入熱量を25%とする場合は、第1の入熱量のときの反射ミラー11の回動速度に対して、第2の入熱量のときの反射ミラー11の回動速度を、約4倍にすればよい。
【0058】
また、第1の入熱量を100%として第2の入熱量を50%とする場合、第1の入熱量となるようにレーザ光を照射しているときのレーザ発振器5からのレーザ出力の強度に対して、第2の入熱量となるようにするためにはレーザ発振器5からのレーザ出力の強度を半分にすればよい。同様に、たとえば第1の入熱量を100%として第2の入熱量を25%とする場合は、第1の入熱量のときのレーザ出力強度に対して、第2の入熱量のときのレーザ出力強度を、約4分の1にすればよい。
【0059】
さらに、これらを組み合わせる場合には、第1の入熱量を100%として第2の入熱量を50%とする場合は、第1の入熱量のときの反射ミラー11の回動速度に対して、第2の入熱量のときの反射ミラー11の回動速度を25%増しにして、同時に第1の入熱量のときのレーザ出力強度に対して、第2の入熱量のときのレーザ出力強度を、約75%程度に減じればよい。特に、このような組み合わせは、たとえばレーザ発信器での出力調整が段階的にしかできない場合(たとえば、出力100%、75%、50%、25%)に、レーザ発信器で段階的にレーザ照射強度を落とし、さらに反射ミラー11の速度調整で、微妙な入熱量お調整を行うなどに適している。
【0060】
このようにして、反射ミラー11の回動速度、レーザ発振器5から出力されるレーザ出力強度などをさまざまに組み合わせた多様な入熱量の制御が可能である。
【0061】
次に加工用パターンの長さ方向に対してどの程度の位置で入熱量を変化させるかについて説明する。
【0062】
入熱量を変化させる位置は、基本的に十分な溶接強度を得られるようにすることを第1の目的として、次に、裏面(レーザ光が突き抜ける側)における貫通痕を極力少なくなることができるように設定する。
【0063】
このため、入熱量を変化させる位置は、被溶接部材の素材や厚さ、加工用溶接パターンの長さなどによって異なる。したがって、実際には実験により求めなくてはならないが、たとえば、被溶接部材が鋼板の場合、第1の入熱量とする範囲を加工用パターンの全長に対して、照射開始点から10分の1〜3分の1程度あればよい。
【0064】
また、加工用パターンが長い場合には、第2の入熱量とした後、途中で再び第1の入熱量にして、途中でもう一度レーザ光を貫通させて、その後また第2の入熱量にするなどという制御を繰り返し行うことで十分な溶接強度を得られるようにしてもよい。
【0065】
図10および図11は、加工用パターンに対する入熱量の変化例を示す図面である。
【0066】
たとえば、図10(a)に示すC字形状の加工用パターンPの場合は、図10に示すように照射開始点から10分の1程度(区間k1)まで第1の入熱量h1として、その後はすべての位置(区間k2)を第2の入熱量h2とする。
【0067】
また、たとえば、図11(a)に示すS字形状の加工用パターンPの場合は、加工用パターンが長いので、図11(b)に示すように照射開始点から10分の1程度(区間k1)まで第1の入熱量h1として、その後の位置(区間k2)は第2の入熱量h2とするが、中間位置Pmより少し前で再び第1の入熱量(区間k3)とする。しかしここで気をつけなければならないのは、再度第1の入熱量とする位置が溶接開始点の第1の入熱量h1とした位置に近い場合、入熱量が多くなりすぎるため、加工用パターンの形状によっては、再度第1の入熱量とする位置を調整する必要がある。図示したS字形状の場合には、中間位置Pmがレーザ照射開始点に近いため、それよりも少し離れた中間位置Pmの少し前で再度第1の入熱量h1にして、中間位置Pmでは区間k4の第2の入熱量h2となるようにしている。その後は最後まで第2の入熱量h2でレーザ照射を続ける。
【0068】
このような入熱量の制御は、たとえば、加工用パターンを描くときの点列座標の位置(ポイント)ごとに、反射ミラー11の回動速度および/またはレーザ出力強度をあらかじめ教示しておいて、レーザ溶接時に、その教示された反射ミラー11の回動速度および/またはレーザ出力強度となるように制御することになる。
【0069】
次に、本実施形態におけるレーザ溶接時のロボット制御装置の動作処理手順を説明する。図12は、ロボット制御装置の動作処理手順を示すフローチャートである。
【0070】
レーザ溶接時の基本動作は、ロボットを教示された位置で停止させ、その場所でレーザ照射装置3が照射可能な1つの溶接点に対してレーザ溶接を行い、次の溶接点をレーザ溶接する場合にはさらにロボットを次の位置に移動させてレーザ溶接を行うという動作を繰り返し、1点ずつ順次レーザ溶接を行い、すべての溶接点に対するレーザ溶接を完了するというものである。
【0071】
ロボット制御部22は、まず、レーザ溶接用の教示データを読み込む(S1)。教示データは、たとえば、ロボット停止位置、動作速度、溶接点中心座標、加工用パターン、反射ミラー回動速度、溶接幅、溶接長さ、レーザ出力強度、その他制御に必要な動作指令などが記述されている。ロボットは、これに従って動作する。
【0072】
次に、ロボット制御部22は、加工用パターン記憶部23に記憶されている加工用パターンのデータを読み込むように指令する(S2)。
【0073】
ロボット制御部22は、教示データに従ってロボット1を動作させ、レーザ照射装置3を教示データに記述されている動作速度で移動させ、ロボット停止位置で位置決めする。同時に、レーザ照射装置3の反射ミラー11をワークWの溶接点に向けて位置決めする(S3:ロボット動作、位置決め)。詳細には、溶接点中心座標にレーザ光が照射されるような向きに反射ミラー11の向きを調整する。レーザ照射装置3はこの位置から、特定の溶接点に対してレーザ光を照射することができる。
【0074】
次に、ロボット制御部22は、加工用パターン生成部24に対して、読み込んだ加工用パターンに従ってワークWの溶接点に加工用パターンを描くために必要な座標点を算出させる(S4)。加工用パターン生成部24は、この指示によりワークWの座標系で記述された、読み込んだ加工用パターンの基本形状である溶接点中心座標、溶接幅、溶接長さを取得して、加工用パターンの80点ある基本となる各点の座標を算出する(S5)。
【0075】
続いて加工用パターン生成部24は算出された80点の基本点座標を、読み込んだ教示データに記述されている「溶接幅」、「溶接長さ」に基づいて縦方向(溶接長さ方向)および横(溶接幅)方向にシフトさせて、実際に描かせる大きさの加工用パターンの座標点を生成するバイアス処理を行う。そして、ロボット制御部22は、レーザ光走査制御部25に対して、生成された加工用パターンの80点の座標を、ワークの座標系からロボットの座標系に換算するように指示する(S6)。
【0076】
次に、ロボット制御部22は、現在認識しているロボット1の姿勢を入力し、現在のロボット1の姿勢でターゲットとしているワークWの溶接点上に、要求されている大きさの加工用パターンを描くための反射ミラー11の回動の仕方(回動開始から終了までの加工パターンの各点(80点)に到達する各時刻における反射ミラー11の角度)を算出する(S7)。このとき、入熱量を反射ミラーの回動速度で制御する場合には、第1の入熱量の部分と第2の入熱量の部分とで、それぞれの位置に到達する各時刻における反射ミラー11の角度を求めることになる。一方、レーザ発信器によるレーザ出力強度の制御はここで算出された反射ミラー回動位置の各時刻から入熱量を変える時刻を指定して、その時刻になればレーザ出力を変えるように指示を入力しておく。
【0077】
以上の演算が終了したら、ロボット制御制御部22は、教示データに従ってレーザ光(YAGレーザ光)を出力するようにレーザ発振器5に対して指令する。そしてレーザ発振器5がONされると、反射ミラー11に向けてレーザ光が照射され、反射ミラー11は上記算出された回動の仕方で回動させるようにレーザ光走査制御部25へ指示する(S8)。
【0078】
以後、レーザ光走査制御部25は、反射ミラー11の回動が終了(加工用パターンの照射が終了)するまで反射ミラー11の回動を続け、回動が終了位置にきたなら、ロボット制御制御部22に対して終了信号を出力する。これを受けたロボット制御制御部22は、レーザ発振器5からのYAGレーザの出力指令を消してレーザ光の出力を停止させる(S9:レーザ照射終了処理)。これで一つの溶接点位置におけるレーザ溶接を終了する。
【0079】
以上の処理によって、1箇所の溶接点への加工用パターンの照射が終了する。そして複数の溶接点を溶接する際には、上記の処理を指定された溶接点の数だけ順次実行する。
【0080】
これによりワークW上の複数の溶接点位置に、それぞれ決まった加工用パターンによる、レーザ光の突き抜けによる貫通痕の少ない溶接ビードが形成される。
【0081】
次に実際に溶接した結果について説明する。
【0082】
本実施形態に基づいて、レーザ溶接を行った溶接サンプル(第1サンプル)と、電気スポット溶接を行った溶接サンプル(第1サンプル)を、それぞれ同じようにたがね判定した。
【0083】
第1および第2サンプルはともに、W1の厚さを0.8mm、W2の厚さを=0.65mmである。第1サンプルについてはW1がレーザ照射側のワークであり、加工用パターンは直径約10mmのC字形状パターンとした。第1入熱量はこのパターンの約1/5程度の部分とした。第2の入熱量は第1の入熱量に対して約70〜80%程度となるように反射ミラーの速度を調整した。
【0084】
一方、第2サンプルの電気スポット溶接は直径約10mm程度となるようにしたスポット溶接である。
【0085】
たがね判定の結果、どじらのサンプルもワーク母材そのものに破断が生じた。つまり、溶接部分における接合はがれはなく、十分な接合強度が得られているということである。
【0086】
また、第1サンプルにおいては、裏面側(レーザ光が突き抜ける側)において、若干の貫通痕が見られるもののブローホールはなく、表面のあれも少なかった。これはまた、別に行った加工用パターン全長にわたり貫通するように同じ入熱量でレーザ溶接を行った場合と比較して、貫通痕の大きさが非常に少ないものであった。
【0087】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。たとえば、上述した実施形態では、ロボット1によってレーザ照射装置3を溶接店付近まで動かし、そこで、レーザ照射装置3を停止させた上で、反射ミラー11を回動させて加工用パターンを描くようにレーザ光を照射したが、これに代えて、レーザ照射装置3を常に移動させた状態で、その移動速度を加味して反射ミラー11を回動させることで、加工用パターンを描くようにレーザ光を照射してもよい。このようにすることで複数の溶接点がある場合に、レーザ照射装置3を停止させない分、全体の溶接時間を短縮することができる。
【0088】
そのほか、本発明はさまざまな変形形態が可能なことはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、レーザ溶接に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明が適用されるレーザ溶接システムの概略構成図である。
【図2】図1に記載されているレーザ照射装置の内部構造図である。
【図3】図1に記載されているレーザ発振器の内部構造図である。
【図4】実施形態に係るレーザ溶接システムの制御系を示すブロック図である。
【図5】実施形態で使用する加工用パターンの形状の一例を示す図である。
【図6】実施形態で使用する加工用パターンの他の形状の一例を示す図である。
【図7】実施形態で使用する加工用パターンの他の形状の一例を示す図である。
【図8】加工用パターンの位置に応じた入熱量の制御を説明するための図面である。
【図9】加工用パターンの全長にわたり同じ入熱量でレーザ溶接を行った場合の断面を模式的に示した図面である。
【図10】実施形態に係る加工用パターンに対する入熱量の変化例を示す図面である。
【図11】実施形態に係る他の加工用パターンに対する入熱量の変化例を示す図面である。
【図12】実施形態に係る溶接手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0091】
1…ロボット、
2…アーム、
3…レーザ照射装置、
5…レーザ発振器、
6…光ファイバーケーブル、
7…ロボット制御装置、
8…ティーチボックス、
9…CADシステム、
11…反射ミラー、
12…レンズ群、
21…教示データ記憶部、
22…ロボット制御部、
23…エリア内溶接データ記憶部、
23…加工用パターン記憶部、
24…加工用パターン生成部、
25…レーザ光走査制御部、
26…指示部、
100…レーザ光、
121…コリメートレンズ、
122…集光レンズ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ溶接装置、レーザ溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボットを利用した溶接にもレーザ溶接が用いられるようになってきている。このような溶接技術として、ロボットアーム(マニュピレータ)の先端にレーザ光を照射するためのレーザ照射装置を取り付け、ロボットアーム移動させつつ、さらにレーザ照射装置からのレーザ光照射方向をも変えることで、レーザ光を移動させながらあらかじめ決められた溶接点を溶接する技術がある(たとえば特許文献1参照)。このような溶接をワークとレーザ照射装置の間がこれまでよりも離れていることからリモート溶接と称されている。
【特許文献1】特開平10−18471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このようなリモート溶接における特有の問題が明らかになってきた。その一つが、レーザ照射による溶接ビード形成時の貫通痕やブローホールである。
【0004】
従来のリモート溶接においては、湯お説を確実に行わせるために、レーザ光が被溶接部材を貫通する程度の強度で、溶接のための加工用パターンの最初から最後まで一定のレーザ光出力強度で溶接されていた。このため、被溶接部材の裏面(レーザが突き抜けた側)では、貫通痕が生じ、また、最悪の場合には肉が失われてはブローホールとなってしまうなどの問題があった。
【0005】
そこで本発明の目的は、ブローホールの発生を防止し、また被溶接部材裏面に生じる貫通痕を極力少なくすることができるレーザ溶接装置およびレーザ溶接方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、レーザ光の照射方向を変更する反射鏡を備えたレーザ照射手段と、前記レーザ照射手段を移動させる移動手段と、前記レーザ照射手段をあらかじめ教示された移動経路に従って移動させるように前記移動手段を制御するとともに、前記レーザ光があらかじめ決められた加工用パターンを描くように前記反射鏡の動きを制御する加工用制御手段と、前記レーザ照射手段から射出されたレーザ光による溶接点における入熱量を前記加工用パターンを描く前記レーザ光の照射位置に応じて変更するレーザ光制御手段と、を有すること特徴とするレーザ溶接装置である。
【0007】
また上記課題を解決するための本発明は、レーザ光の照射方向を変更する反射鏡を備えたレーザ照射手段と、前記レーザ照射手段を移動させる移動手段と、を備えたレーザ溶接装置の制御方法であって、前記移動手段により前記レーザ照射手段をあらかじめ教示された移動経路に沿って移動させるとともに、前記レーザ照射手段から照射される前記レーザ光があらかじめ決められた加工用パターンを描くように前記反射鏡の動きを制御し、かつ前記加工用パターンを描く前記レーザ光の照射位置に応じて溶接点における入熱量を変更すること特徴とするレーザ溶接方法である。
【発明の効果】
【0008】
以上のように構成された本発明によれば、加工用パターンの開始時点では、レーザ光が被溶接部材を貫通する程度の第1の入熱量となるようにレーザ光を照射し、その後はレーザ光が被溶接部材を貫通しない程度の第2の入熱量となるようにレーザ光を照射することとしたので、第1の入熱量によって接合強度を得るために必要な溶融池を形成し、その後は貫通しない程度の第2の入熱量としても被溶接部材を接合するために十分な溶融池が形成されるため十分な接合強度が得られつつ、必要以上の熱が加えられることがないので、ブローホールの発生を防ぐことができる。また、これにより、被溶接部材の裏面(レーザ光が突き抜ける側)における貫通痕は、溶接開始の最初の部分にできるだけであるので、これまでより裏面の溶接痕を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付した図面を参照して本発明を適用した実施形態について詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明が適用されるレーザ溶接システムの概略構成図であり、図2はこのレーザ溶接システム内のレーザ照射装置の内部構造図であり、図3はこのレーザ溶接システム内のレーザ発振器の内部構造図である。
【0011】
図1に示すレーザ溶接システムは、加工対象物としての被溶接物であるワークWに、ワークW上に位置されるレーザ照射装置3からレーザ光100を照射することによって、直接ワークWに触れることなくワークWの溶接を行うものである。
【0012】
図示するレーザ溶接システムは、ロボット1(移動手段)と、ロボット1のアーム2の先端に取り付けられ、レーザ光100を照射するレーザ照射装置3(レーザ照射手段)と、レーザ光を発生させるレーザ発振器5と、レーザ発振器5からレーザ照射装置3までレーザ光を導く光ファイバーケーブル6と、ロボット1およびレーザ照射装置3の動作を制御するロボット制御装置7(加工用制御手段およびレーザ光制御手段)と、ロボット制御装置7に各種の指示を送るティーチボックス8とから構成される。また、このシステムは、後述する教示データおよび加工用パターンデータをCADシステム9から取得することができるようになっている。なお、このCADシステム9は、常時接続されている必要はない。
【0013】
ロボット1は一般的な多軸ロボットであり、教示作業によって与えられた経路データに従ってアーム2が駆動され、レーザ照射装置3を3次元のさまざまな位置および方向に移動させることができる。レーザ発振器5にはYAGレーザが用いられ、レーザ発振器5で発生されたレーザ光は光ファイバーケーブル6によってレーザ照射装置3に導かれる。
【0014】
レーザ照射装置3は導かれたレーザ光を内蔵した反射ミラー11(反射鏡)で反射し、ワークWの加工打点(以下、溶接点と称する)に対して強力なレーザ光100を走査する。走査されたレーザ光100は溶接点上に照射され、レーザ照射装置3が走査した形状に従って溶接点の溶接(溶接ビードの形成)が行われる。
【0015】
ロボット制御装置7はロボット1の姿勢を認識しながらロボット1の動作を制御するとともに、レーザ光の照射方向を変更し走査するためにレーザ照射装置3の制御(反射ミラー11の制御)も行っている。この反射ミラー11の制御は、後述する容易あらかじめ決められた加工用パターンを描くように行われる。また、ロボット制御装置7はレーザ発振器5からのレーザ出力のON、OFFも制御している。
【0016】
レーザ照射装置3は、入力されたレーザ光および可視レーザ光(可視光)の照射方向を自在に変更できるように構成されている。すなわち、レーザ照射装置3は、図2に示すように、光ファイバーケーブル6によって導かれたレーザ光100を、溶接点に向けて照射するための反射ミラー11(反射鏡)と、反射ミラー11を回動させるモータ16および17およびレンズ群12とを有している。
【0017】
反射ミラー11は、鏡面を通る垂直な軸線をZ軸とし、Z軸と直交するX軸およびY軸をそれぞれ中心として独立に回動自在に支持されている。モータ16およびモータ17は、それぞれのモータの回動位置の合成によって、反射ミラー11の向きを3次元方向に変える。したがって、反射ミラー11は、光ファイバーケーブル6から入射されるレーザ光を3次元方向に放射自在に取り付けられている。反射ミラー11を3次元方向に回動させることによって、ワークW上に設定されている溶接点に所定の形状となる走査パターン(加工用パターン)を描かせることができる。
【0018】
また、この反射ミラー11の移動速度(回動速度)によって入熱量の調節も行うことができる。すなわち、反射ミラー11の移動によって加工用パターンを描くレーザ光の移動速度を遅くすれば、溶接点では単位時間当たりのレーザ光の入射量が多くなり、溶接点における入熱量が高くなる。一方、これを速くすれば、単位時間当たりのレーザ光の入射量が少なくなって、溶接点における入熱量は低くなる。
【0019】
反射ミラー11の移動速度の変更によるレーザ光強度の変更は、ロボット制御装置7からの指示によって行われる。このレーザ光強度の変更指示は、あらかじめ加工用パターンの位置に応じて行われる(詳細後述)。
【0020】
レンズ群12は、光ファイバーケーブル6の端部から放射されたレーザ光を平行光にするためのコリメートレンズ121と平行光となったレーザ光100をワークW上で集光させるための集光レンズ122から構成される。そして、集光レンズ122の位置を変えることでレーザ照射装置3は溶接点から反射ミラー11までの距離に応じてレーザ光が商店を結ぶ位置を変更する。なお、このような焦点位置の変更(集光レンズ位置の変更動作)は、ロボットによる移動経路の教示と共にあらかじめ教示される。
【0021】
レーザ発振器5内部は、図3に示すように、YAGレーザの発振源501の他に、半導体レーザなどによる可視レーザ光発振源502が備えられている。可視レーザ光発振源502は、たとえば、レーザ照射位置の確認などに使用される。可視光を出すか溶接用のレーザ光を出すかは、レーザ発振器5内部の切り替えミラー503によって切り替えられている。すなわち、切り替えミラー503が実線の位置のときは、YAGレーザ光が光ファイバーケーブル6へ出力され、点線の位置のときには可視レーザ光が光ファイバーケーブル6へ出力される。
【0022】
この切り替えミラー503の切り替えはロボット制御装置7からの指示または手動によって行われる。
【0023】
また、レーザ発振器5から出力されるレーザ光の強度は、ロボット制御装置7からの指示によって変更される。このレーザ光強度の変更指示は、あらかじめ加工用パターンの位置に応じて行われる(詳細後述)。
【0024】
図4は、本実施形態に係るレーザ溶接システムの制御系のブロック図である。
【0025】
ロボット制御装置7は、教示データ記憶部21(教示データ記憶手段)、ロボット制御部22、加工用パターン記憶部23(加工用パターン記憶手段)、加工用パターン生成部24、レーザ光走査制御部25(加工用制御手段およびレーザ光制御手段)を備えている。
【0026】
教示データ記憶部21は、あらかじめCADシステムを利用したシミュレーションによる教示作業によって教示されたロボット1の動作経路、動作速度、およびワークWの溶接点を記憶している。溶接点は、ワークWの溶接箇所を示し3次元座標によって表されている。なお、教示データはシミュレーションによって教示されたデータではなく、実機を使用した教示データであってもよい。
【0027】
ロボット制御部22は、教示データに基づいて、ロボット1の各軸モータの回転量を制御し、レーザ照射装置3があらかじめ定められた動作経路で移動して、所定の位置、たとえば、ワークWに設定されている溶接点上の決められた位置で順次停止するように制御する。
【0028】
ロボット制御部22は、ロボット1の各軸モータの回転量(エンコーダ値)に基づいてロボット1の姿勢を認識することもできるようになっている。したがって、ロボット制御部22は、ロボット1の姿勢を認識する姿勢認識部としても機能することになる。また、ロボット制御部22は、認識されているロボットの姿勢に基づいて、レーザ照射装置3がワークWのある溶接点に対してレーザ光を照射可能な位置にあるか否かを判断する機能をも備えている。
【0029】
加工用パターン記憶部23は、レーザ照射装置3により走査されるレーザ光100の加工時の走査パターン(加工用パターン)、および加工用パターンの位置におけるレーザ光強度を記憶している。
【0030】
加工用パターン記憶部23に記憶しておく加工用パターンは任意の大きさの任意の形状でよい。本実施形態では、たとえば、図5に示すS字形状の加工用パターンを記憶してある。このようなS字形状の加工用パターンは、その縦(溶接長さ)が何mm、横(溶接幅)が何mmというように、その大きさが加工用パターンの形状の縦と横の大きさとして規定されている。なお、本実施形態では加工用パターンをS字形状として説明するが、図6のような棒形状であっても、図7のようなC字形状であってもよい。なお、加工用パターンはCADで作成されるため、加工用パターン記憶部23にはCADからのデータが記憶されることになる。
【0031】
ここで、加工用パターンの表現方法を説明しておく。加工用パターンは、加工用パターンに定めた溶接点中心座標とその溶接点中心座標からのオフセット量で規定された複数の点列座標で構成し、溶接点中心座標と点列座標は、ワークWと同一の座標系の座標で表している。
【0032】
たとえば、加工用パターンが図5に示すようなS字形状である場合、S字形状の溶接長さと溶接幅は図のように規定されている。S字形状の重心(加工用パターンの中心位置となる)を溶接点中心座標(Wxcnt、Wycnt,Wzcnt)とし、この溶接点中心座標を原点として、ワークWと同一の座標系(Wx、Wy,Wz)が規定されている。そして、S字形状を構成する80の点列座標(Wxcnt+Wx(0)、Wycnt+Wy(0),Wzcnt+Wz(0))から(Wxcnt+Wx(79)、Wycnt+Wy(79),Wzcnt+Wz(79))は、溶接点中心座標からのオフセット量(図示点線で示すベクトル量)として定義されている。このベクトルで示されるオフセット量は、S字形状を構成する各点が溶接点中心座標からどの程度離れているのかを示している。なお、オフセット量は、2次元のオフセット量として規定することもできるし、3次元のオフセット量として規定することもできる。
【0033】
加工用パターンが図6に示すような棒形状である場合、その棒形状の重心を溶接点中心座標(Wxcnt、Wycnt,Wzcnt)とし、この溶接点中心座標を原点として、ワークWと同一の座標系(Wx、Wy,Wz)が規定されている。そして、棒形状を構成する30の点列座標(Wxcnt+Wx(0)、Wycnt+Wy(0),Wzcnt+Wz(0))から(Wxcnt+Wx(29)、Wycnt+Wy(29),Wzcnt+Wz(29))は、溶接点中心座標からのオフセット量(図示点線で示すベクトル量)として定義されている。
【0034】
さらに、加工用パターンが図7に示すようなC字形状である場合、そのC字形状の重心を溶接点中心座標(Wxcnt、Wycnt,Wzcnt)とし、この溶接点中心座標を原点として、ワークWと同一の座標系(Wx、Wy,Wz)が規定されている。そして、C字形状を構成する80の点列座標(Wxcnt+Wx(0)、Wycnt+Wy(0),Wzcnt+Wz(0))から(Wxcnt+Wx(79)、Wycnt+Wy(79),Wzcnt+Wz(79))は、溶接点中心座標からのオフセット量(図示点線で示すベクトル量)として定義されている。
【0035】
加工用パターン記憶部23に記憶させる加工用パターンも溶接点と同様にCADシステム9(図1参照)によって作成されるが、溶接点と加工用パターンとは、CADシステム9によって個別に独立して教示させる。つまり、溶接点と加工用パターンとは全く別のデータとして扱えるようになっている。そのため、教示データ記憶部21と加工用パターン記憶部23とは別々に設けている。
【0036】
加工用パターン生成部24は、加工用パターン記憶部23に記憶されている加工用パターンの形状から、記憶されているままの大きさの形状、または、ティーチボックス8が有している指示部26によって指示された大きさの形状を生成するものである。
【0037】
指示部26は、任意にワークWの溶接点上に描かれる加工用パターンの大きさを指示するものであって、たとえば、加工用パターンであるS形状の縦方向を、教示データ記憶部21に記憶されているS形状の3倍に、そして横方向を1.5倍にと言うように、溶接点に要求されるたとえば溶接強度に応じて指示する。なお、加工用パターンの大きさは、指示部26からの指示に代えて、レーザ溶接を行う場合に読み込むプログラム内にあらかじめ埋め込むようにしてもよい。また、この指示部26による指示は動作教示の際に1度指示すればそれが記憶されて、レーザ溶接中においては、記憶された大きさとして囲うようパターンが描かれることになる。
【0038】
レーザ光走査制御部25は、ワークWと同一の座標系の座標で表されている、加工用パターンの溶接点中心座標およびその溶接点中心座標からのオフセット量で規定された複数の点列座標を、ロボット1の座標系の座標に変換する機能を有している。そしてレーザ光走査制御部25は、加工用パターン生成部24によって生成された大きさの加工用パターンを入力するとともに、ロボット制御部22が認識しているロボット1の姿勢をも考慮して、溶接点上に描く加工用パターン形状の点列座標(80ポイント程度)を算出し、その点列座標に基づいてレーザ照射装置3の反射ミラー11を回動させる。
【0039】
さらに、このレーザ光走査制御部25は、溶接点上に描かれるレーザ光の照射位置(加工用パターン上の位置)に応じてレーザ光による溶接点への入熱量を制御する。
【0040】
次に、このように構成されたシステムの作用を説明する。
【0041】
図8は、加工用パターンの位置に応じた入熱量の制御を説明するための図面であり、(a)は溶接点(加工用パターン)の断面を模式的に示した図面であり、(b)は加工用パターンの位置に応じた入熱量の変化を示すグラフである。なお、図8(a)においては、直線的なパターンの断面として示したが、これはあくまでも加工用パターンの断面を説明するための図であって加工用パターンがS字やC字など曲線的な場合であっても同様である。
【0042】
本実施形態では、図示するように、加工用パターンの描き始めの位置(区間k1)で、被溶接部材である重ねられた2枚のワークW1およびW2を、レーザ光が貫通する程度の入熱量(第1の入熱量h1)とし、その後位置(区間k2)をレーザ光がワークWIおよびW2を貫通しない入熱量(第2の入熱量h2)となるようにしている。ここで入熱量とは、レーザ光の照射によって発生する単位時間当たりの熱量である。
【0043】
このような入熱量の制御は、まず、加工用パターンの描き始めの位置で、ワークW1およびW2を貫通する程度の第1の入熱量h1とする。この段階で、レーザ光の照射点においてはワークW1およびW2が完全に固着するために十分な溶融池101が形成される。そしてこのような溶融池101部分の形成に伴い、加工用パターンに沿ってレーザ光を進行させる方向を含めて溶融池101の周辺が加熱されることになる。この加熱領域はさほど大きい範囲のもではないが加工用パターンとして溶接ビードを形成してゆくためには十分な大きさである。
【0044】
その後、入熱量を低くして第2の入熱量h2にして引き続き加工用パターンに沿ってレーザ光を進行させる。この段階では、前記のように加工用パターンに沿ってレーザ光を進行させる部分k2もある程度加熱されているため、2枚のワークを貫通することがない程度に入熱量を低くしても、ワークW1とW2の合わせ面の位置まで溶融して、これらを接合するために十分な溶接ビードが形成される。
【0045】
これにより、十分な接合強度が得られるとともに、被溶接部材の裏面(レーザ光が突き抜ける側)における貫通痕を少なくすることができるのである。
【0046】
ここで、本実施形態の参考のために、加工用パターンの全長にわたり、すべて貫通する程度の入熱量となるようにレーザ光を照射した場合について説明する。
【0047】
図9(a)は加工用パターンの全長にわたり被溶接部材を貫通する程度の同じ入熱量でレーザ溶接を行った場合の断面を模式的に示した図面であり、(b)は加工用パターンの全長にわたり貫通しない程度の同じ入熱量でレーザ溶接を行った場合の断面を模式的に示した図面である。
【0048】
図9(a)に示したものの場合、加工パターンの全長にわたり被溶接部材を貫通する程度の同じ入熱量でレーザ溶接を行ったため、ワークW1およびW2をつけぬけたレーザ光によって、裏面側に大きな貫通痕が残ってしまう。また、溶接点が加熱され過ぎて、ブローホールBHが空いてしまうこともある。
【0049】
図9(b)に示したものの場合、加工パターンの全長にわたり被溶接部材を貫通しない程度の同じ入熱量でレーザ溶接を行ったため、裏面に貫通痕はできないものの、始めから入熱量が少ないため、ワークW1とW2の接合面に十分な溶融池ができずに、接合不良が起こる可能性がある。
【0050】
このように、入熱量を加工用パターンの全長にわたり一定とした場合には、さまざまな不具合の可能性があるが、先に説明したとおり本実施形態のように加工用パターンの途中で入熱量を変化させることで、十分な接合強度が得られかつ、裏面の貫通痕を最小限に抑えることができるのである。
【0051】
次に入熱量を変える制御について説明する。
【0052】
第1の入熱量から第2の入熱量へ変化させる際の変化の度合いは、ワークの厚さに応じて変えることが好ましい。
【0053】
たとえば、ワークW1側からレーザ光を照射する(以下同様)ものとして、2枚のワークW1およびW2の厚さが、W1の方がW2より薄い場合(W1<W2)には、第1の入熱量を100%としたとき、第2の入熱量は、その40〜50%となるようにすればよい。これは、ワークW1およびW2を重ね合わせた場合に第1の入熱量がワークW1およびW2を貫通する程度とすれば、第2の入熱量をその40〜50%にすれば、レーザ照射による溶融池の深さはワークW1およびW2の合計厚さの約半分の位置、すなわち、ワークW1を抜けてワークW2に確実に到達し、かつワークW2を貫通することのない位置となる。なお、ワークの厚さがW1<W2の場合に、第2の入熱量は、溶融池の深さがワークW1を抜けてワークW2に確実に到達し、かつワークW2を貫通することのないような値であればよく、第1の入熱量に対して50%を越えるような値(例60%、70%、80%など)であってもよいが、約50%にすれば第1の入熱量に対して、反射ミラー11の回動速度を倍にしたり、レーザ強度を半分にするなどにより実行可能であり、最も制御しやすい。
【0054】
また、たとえば、ワークW1の方が厚い場合(W1>W2)、この場合は溶融池の深さが、確実にワークW1を抜けてワークW2に到達するために、W1の厚さ/(W1の厚さ+W2)程度を上限として、下限はこれから10%引いた程度とするとよい。具体例としては、ワークW1=0.8mm、W2=0.6mmとした場合には、第1の入熱量を100%としたとき、第2の入熱量は、0.8/(0.8+0.6)=約57%となるので、47〜57%となるようにすればよい。これにより、溶融池の深さは、第1の入熱量ではワークW1およびW2を貫通し、第2の入熱量ではW1を多少抜けて位置でとまりW2を貫通することはない。ここで、第2の入熱量の下限値を、2枚のワークの合計厚さに対するワークW1の厚さに応じた値よりさらに低くするのは、第1の入熱量を2枚のワークが完全に貫通する程度に設定するため(ただし必要以上に強くすることはない)、これを単純にワークW1の厚さに応じて減じただけでは、第2の入熱量として高すぎてしまい、第2の入熱量でも2枚のワークが貫通してしまうおそれがあるためである。そこで、第2の入熱量の好ましい値としては2枚のワークの合計厚さに対するワークW1の厚さに応じた値より低くするのが好ましいのである。
【0055】
なお、これらはあくまでも一例であるから、第1の入熱量および第2の入熱量は被溶接部材の素材や厚さに応じて、第1の入熱量は貫通する程度、第2の入熱量は被溶接部材全部は貫通しないがレーザ光照射側のワークのみ貫通する程度に設定すればよい。
【0056】
これら入熱量の制御は、反射ミラー11を回動させる速度を変えること、またはレーザ発振器5から出力されるレーザ光の強度を変えること、およびそれら両方を組み合わせることで行うことができる。
【0057】
たとえば、第1の入熱量を100%として第2の入熱量を50%とする場合は、第1の入熱量となるようにレーザ光を照射しているときの反射ミラー11の回動速度に対して、第2の入熱量となるようにレーザ光を照射しているときの反射ミラー11の回動速度を倍にすればよい。同様に、たとえば第1の入熱量を100%として第2の入熱量を25%とする場合は、第1の入熱量のときの反射ミラー11の回動速度に対して、第2の入熱量のときの反射ミラー11の回動速度を、約4倍にすればよい。
【0058】
また、第1の入熱量を100%として第2の入熱量を50%とする場合、第1の入熱量となるようにレーザ光を照射しているときのレーザ発振器5からのレーザ出力の強度に対して、第2の入熱量となるようにするためにはレーザ発振器5からのレーザ出力の強度を半分にすればよい。同様に、たとえば第1の入熱量を100%として第2の入熱量を25%とする場合は、第1の入熱量のときのレーザ出力強度に対して、第2の入熱量のときのレーザ出力強度を、約4分の1にすればよい。
【0059】
さらに、これらを組み合わせる場合には、第1の入熱量を100%として第2の入熱量を50%とする場合は、第1の入熱量のときの反射ミラー11の回動速度に対して、第2の入熱量のときの反射ミラー11の回動速度を25%増しにして、同時に第1の入熱量のときのレーザ出力強度に対して、第2の入熱量のときのレーザ出力強度を、約75%程度に減じればよい。特に、このような組み合わせは、たとえばレーザ発信器での出力調整が段階的にしかできない場合(たとえば、出力100%、75%、50%、25%)に、レーザ発信器で段階的にレーザ照射強度を落とし、さらに反射ミラー11の速度調整で、微妙な入熱量お調整を行うなどに適している。
【0060】
このようにして、反射ミラー11の回動速度、レーザ発振器5から出力されるレーザ出力強度などをさまざまに組み合わせた多様な入熱量の制御が可能である。
【0061】
次に加工用パターンの長さ方向に対してどの程度の位置で入熱量を変化させるかについて説明する。
【0062】
入熱量を変化させる位置は、基本的に十分な溶接強度を得られるようにすることを第1の目的として、次に、裏面(レーザ光が突き抜ける側)における貫通痕を極力少なくなることができるように設定する。
【0063】
このため、入熱量を変化させる位置は、被溶接部材の素材や厚さ、加工用溶接パターンの長さなどによって異なる。したがって、実際には実験により求めなくてはならないが、たとえば、被溶接部材が鋼板の場合、第1の入熱量とする範囲を加工用パターンの全長に対して、照射開始点から10分の1〜3分の1程度あればよい。
【0064】
また、加工用パターンが長い場合には、第2の入熱量とした後、途中で再び第1の入熱量にして、途中でもう一度レーザ光を貫通させて、その後また第2の入熱量にするなどという制御を繰り返し行うことで十分な溶接強度を得られるようにしてもよい。
【0065】
図10および図11は、加工用パターンに対する入熱量の変化例を示す図面である。
【0066】
たとえば、図10(a)に示すC字形状の加工用パターンPの場合は、図10に示すように照射開始点から10分の1程度(区間k1)まで第1の入熱量h1として、その後はすべての位置(区間k2)を第2の入熱量h2とする。
【0067】
また、たとえば、図11(a)に示すS字形状の加工用パターンPの場合は、加工用パターンが長いので、図11(b)に示すように照射開始点から10分の1程度(区間k1)まで第1の入熱量h1として、その後の位置(区間k2)は第2の入熱量h2とするが、中間位置Pmより少し前で再び第1の入熱量(区間k3)とする。しかしここで気をつけなければならないのは、再度第1の入熱量とする位置が溶接開始点の第1の入熱量h1とした位置に近い場合、入熱量が多くなりすぎるため、加工用パターンの形状によっては、再度第1の入熱量とする位置を調整する必要がある。図示したS字形状の場合には、中間位置Pmがレーザ照射開始点に近いため、それよりも少し離れた中間位置Pmの少し前で再度第1の入熱量h1にして、中間位置Pmでは区間k4の第2の入熱量h2となるようにしている。その後は最後まで第2の入熱量h2でレーザ照射を続ける。
【0068】
このような入熱量の制御は、たとえば、加工用パターンを描くときの点列座標の位置(ポイント)ごとに、反射ミラー11の回動速度および/またはレーザ出力強度をあらかじめ教示しておいて、レーザ溶接時に、その教示された反射ミラー11の回動速度および/またはレーザ出力強度となるように制御することになる。
【0069】
次に、本実施形態におけるレーザ溶接時のロボット制御装置の動作処理手順を説明する。図12は、ロボット制御装置の動作処理手順を示すフローチャートである。
【0070】
レーザ溶接時の基本動作は、ロボットを教示された位置で停止させ、その場所でレーザ照射装置3が照射可能な1つの溶接点に対してレーザ溶接を行い、次の溶接点をレーザ溶接する場合にはさらにロボットを次の位置に移動させてレーザ溶接を行うという動作を繰り返し、1点ずつ順次レーザ溶接を行い、すべての溶接点に対するレーザ溶接を完了するというものである。
【0071】
ロボット制御部22は、まず、レーザ溶接用の教示データを読み込む(S1)。教示データは、たとえば、ロボット停止位置、動作速度、溶接点中心座標、加工用パターン、反射ミラー回動速度、溶接幅、溶接長さ、レーザ出力強度、その他制御に必要な動作指令などが記述されている。ロボットは、これに従って動作する。
【0072】
次に、ロボット制御部22は、加工用パターン記憶部23に記憶されている加工用パターンのデータを読み込むように指令する(S2)。
【0073】
ロボット制御部22は、教示データに従ってロボット1を動作させ、レーザ照射装置3を教示データに記述されている動作速度で移動させ、ロボット停止位置で位置決めする。同時に、レーザ照射装置3の反射ミラー11をワークWの溶接点に向けて位置決めする(S3:ロボット動作、位置決め)。詳細には、溶接点中心座標にレーザ光が照射されるような向きに反射ミラー11の向きを調整する。レーザ照射装置3はこの位置から、特定の溶接点に対してレーザ光を照射することができる。
【0074】
次に、ロボット制御部22は、加工用パターン生成部24に対して、読み込んだ加工用パターンに従ってワークWの溶接点に加工用パターンを描くために必要な座標点を算出させる(S4)。加工用パターン生成部24は、この指示によりワークWの座標系で記述された、読み込んだ加工用パターンの基本形状である溶接点中心座標、溶接幅、溶接長さを取得して、加工用パターンの80点ある基本となる各点の座標を算出する(S5)。
【0075】
続いて加工用パターン生成部24は算出された80点の基本点座標を、読み込んだ教示データに記述されている「溶接幅」、「溶接長さ」に基づいて縦方向(溶接長さ方向)および横(溶接幅)方向にシフトさせて、実際に描かせる大きさの加工用パターンの座標点を生成するバイアス処理を行う。そして、ロボット制御部22は、レーザ光走査制御部25に対して、生成された加工用パターンの80点の座標を、ワークの座標系からロボットの座標系に換算するように指示する(S6)。
【0076】
次に、ロボット制御部22は、現在認識しているロボット1の姿勢を入力し、現在のロボット1の姿勢でターゲットとしているワークWの溶接点上に、要求されている大きさの加工用パターンを描くための反射ミラー11の回動の仕方(回動開始から終了までの加工パターンの各点(80点)に到達する各時刻における反射ミラー11の角度)を算出する(S7)。このとき、入熱量を反射ミラーの回動速度で制御する場合には、第1の入熱量の部分と第2の入熱量の部分とで、それぞれの位置に到達する各時刻における反射ミラー11の角度を求めることになる。一方、レーザ発信器によるレーザ出力強度の制御はここで算出された反射ミラー回動位置の各時刻から入熱量を変える時刻を指定して、その時刻になればレーザ出力を変えるように指示を入力しておく。
【0077】
以上の演算が終了したら、ロボット制御制御部22は、教示データに従ってレーザ光(YAGレーザ光)を出力するようにレーザ発振器5に対して指令する。そしてレーザ発振器5がONされると、反射ミラー11に向けてレーザ光が照射され、反射ミラー11は上記算出された回動の仕方で回動させるようにレーザ光走査制御部25へ指示する(S8)。
【0078】
以後、レーザ光走査制御部25は、反射ミラー11の回動が終了(加工用パターンの照射が終了)するまで反射ミラー11の回動を続け、回動が終了位置にきたなら、ロボット制御制御部22に対して終了信号を出力する。これを受けたロボット制御制御部22は、レーザ発振器5からのYAGレーザの出力指令を消してレーザ光の出力を停止させる(S9:レーザ照射終了処理)。これで一つの溶接点位置におけるレーザ溶接を終了する。
【0079】
以上の処理によって、1箇所の溶接点への加工用パターンの照射が終了する。そして複数の溶接点を溶接する際には、上記の処理を指定された溶接点の数だけ順次実行する。
【0080】
これによりワークW上の複数の溶接点位置に、それぞれ決まった加工用パターンによる、レーザ光の突き抜けによる貫通痕の少ない溶接ビードが形成される。
【0081】
次に実際に溶接した結果について説明する。
【0082】
本実施形態に基づいて、レーザ溶接を行った溶接サンプル(第1サンプル)と、電気スポット溶接を行った溶接サンプル(第1サンプル)を、それぞれ同じようにたがね判定した。
【0083】
第1および第2サンプルはともに、W1の厚さを0.8mm、W2の厚さを=0.65mmである。第1サンプルについてはW1がレーザ照射側のワークであり、加工用パターンは直径約10mmのC字形状パターンとした。第1入熱量はこのパターンの約1/5程度の部分とした。第2の入熱量は第1の入熱量に対して約70〜80%程度となるように反射ミラーの速度を調整した。
【0084】
一方、第2サンプルの電気スポット溶接は直径約10mm程度となるようにしたスポット溶接である。
【0085】
たがね判定の結果、どじらのサンプルもワーク母材そのものに破断が生じた。つまり、溶接部分における接合はがれはなく、十分な接合強度が得られているということである。
【0086】
また、第1サンプルにおいては、裏面側(レーザ光が突き抜ける側)において、若干の貫通痕が見られるもののブローホールはなく、表面のあれも少なかった。これはまた、別に行った加工用パターン全長にわたり貫通するように同じ入熱量でレーザ溶接を行った場合と比較して、貫通痕の大きさが非常に少ないものであった。
【0087】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。たとえば、上述した実施形態では、ロボット1によってレーザ照射装置3を溶接店付近まで動かし、そこで、レーザ照射装置3を停止させた上で、反射ミラー11を回動させて加工用パターンを描くようにレーザ光を照射したが、これに代えて、レーザ照射装置3を常に移動させた状態で、その移動速度を加味して反射ミラー11を回動させることで、加工用パターンを描くようにレーザ光を照射してもよい。このようにすることで複数の溶接点がある場合に、レーザ照射装置3を停止させない分、全体の溶接時間を短縮することができる。
【0088】
そのほか、本発明はさまざまな変形形態が可能なことはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、レーザ溶接に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明が適用されるレーザ溶接システムの概略構成図である。
【図2】図1に記載されているレーザ照射装置の内部構造図である。
【図3】図1に記載されているレーザ発振器の内部構造図である。
【図4】実施形態に係るレーザ溶接システムの制御系を示すブロック図である。
【図5】実施形態で使用する加工用パターンの形状の一例を示す図である。
【図6】実施形態で使用する加工用パターンの他の形状の一例を示す図である。
【図7】実施形態で使用する加工用パターンの他の形状の一例を示す図である。
【図8】加工用パターンの位置に応じた入熱量の制御を説明するための図面である。
【図9】加工用パターンの全長にわたり同じ入熱量でレーザ溶接を行った場合の断面を模式的に示した図面である。
【図10】実施形態に係る加工用パターンに対する入熱量の変化例を示す図面である。
【図11】実施形態に係る他の加工用パターンに対する入熱量の変化例を示す図面である。
【図12】実施形態に係る溶接手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0091】
1…ロボット、
2…アーム、
3…レーザ照射装置、
5…レーザ発振器、
6…光ファイバーケーブル、
7…ロボット制御装置、
8…ティーチボックス、
9…CADシステム、
11…反射ミラー、
12…レンズ群、
21…教示データ記憶部、
22…ロボット制御部、
23…エリア内溶接データ記憶部、
23…加工用パターン記憶部、
24…加工用パターン生成部、
25…レーザ光走査制御部、
26…指示部、
100…レーザ光、
121…コリメートレンズ、
122…集光レンズ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光の照射方向を変更する反射鏡を備えたレーザ照射手段と、
前記レーザ照射手段を移動させる移動手段と、
前記レーザ照射手段をあらかじめ教示された移動経路に従って移動させるように前記移動手段を制御するとともに、前記レーザ光があらかじめ決められた加工用パターンを描くように前記反射鏡の動きを制御する加工用制御手段と、
前記レーザ照射手段から射出されたレーザ光による溶接点における入熱量を前記加工用パターンを描く前記レーザ光の照射位置に応じて変更するレーザ光制御手段と、
を有すること特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項2】
前記レーザ光制御手段は、前記入熱量を、前記加工用パターンの描き始めはレーザ光が被溶接部材を貫通する第1の入熱量にし、その後前記第1の入熱量より低くレーザ光が被溶接部材を貫通しない第2の入熱量にすることを特徴とする請求項1記載のレーザ溶接装置。
【請求項3】
前記レーザ光制御手段は、前記第2の入熱量にした後、再度前記第1の入熱量にまで高くし、その後また前記第2の入熱量にすることを繰り返すようにすることを特徴とする請求項2記載のレーザ溶接装置。
【請求項4】
前記レーザ光制御手段は、前記レーザ光の照射位置が、前記加工用パターンの描き始めの位置に近い位置となったときにはレーザ光が被溶接部材を貫通しない前記第2の入熱量にすることを特徴とする請求項3記載のレーザ溶接装置。
【請求項5】
前記レーザ光制御手段は、前記レーザ光を発生させるレーザ発振器の出力を変更することで前記入熱量を変更することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のレーザ溶接装置。
【請求項6】
前記レーザ光制御手段は、前記レーザ光が前記加工用パターンを描く速度を変更することで前記入熱量を変更することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のレーザ溶接装置。
【請求項7】
前記レーザ光制御手段は、前記レーザ光を発生させるレーザ発振器の出力を変更するとともに前記レーザ光が前記加工用パターンを描く速度を変更することで前記入熱量を変更することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のレーザ溶接装置。
【請求項8】
レーザ光の照射方向を変更する反射鏡を備えたレーザ照射手段と、
前記レーザ照射手段を移動させる移動手段と、を備えたレーザ溶接装置の制御方法であって、
前記移動手段により前記レーザ照射手段をあらかじめ教示された移動経路に沿って移動させるとともに、前記レーザ照射手段から照射される前記レーザ光があらかじめ決められた加工用パターンを描くように前記反射鏡の動きを制御し、かつ前記加工用パターンを描く前記レーザ光の照射位置に応じて溶接点における入熱量を変更すること特徴とするレーザ溶接方法。
【請求項9】
前記レーザ光の強度は、前記加工用パターンの描き始めはレーザ光が被溶接部材を貫通する第1の入熱量にし、その後第1の入熱量より低くレーザ光が被溶接部材を貫通しない第2の入熱量にすることを特徴とする請求項8記載のレーザ溶接方法。
【請求項10】
前記レーザ光の強度を前記第2の入熱量にした後、再度前記第1の入熱量にまで高くし、その後また前記第2の入熱量にすることを繰り返すようにすることを特徴とする請求項9記載のレーザ溶接方法。
【請求項11】
前記レーザ光の照射位置が、前記加工用パターンの描き始めの位置に近い位置となったときにはレーザ光が被溶接部材を貫通しない前記第2の入熱量にすることを特徴とする請求項10記載のレーザ溶接方法。
【請求項1】
レーザ光の照射方向を変更する反射鏡を備えたレーザ照射手段と、
前記レーザ照射手段を移動させる移動手段と、
前記レーザ照射手段をあらかじめ教示された移動経路に従って移動させるように前記移動手段を制御するとともに、前記レーザ光があらかじめ決められた加工用パターンを描くように前記反射鏡の動きを制御する加工用制御手段と、
前記レーザ照射手段から射出されたレーザ光による溶接点における入熱量を前記加工用パターンを描く前記レーザ光の照射位置に応じて変更するレーザ光制御手段と、
を有すること特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項2】
前記レーザ光制御手段は、前記入熱量を、前記加工用パターンの描き始めはレーザ光が被溶接部材を貫通する第1の入熱量にし、その後前記第1の入熱量より低くレーザ光が被溶接部材を貫通しない第2の入熱量にすることを特徴とする請求項1記載のレーザ溶接装置。
【請求項3】
前記レーザ光制御手段は、前記第2の入熱量にした後、再度前記第1の入熱量にまで高くし、その後また前記第2の入熱量にすることを繰り返すようにすることを特徴とする請求項2記載のレーザ溶接装置。
【請求項4】
前記レーザ光制御手段は、前記レーザ光の照射位置が、前記加工用パターンの描き始めの位置に近い位置となったときにはレーザ光が被溶接部材を貫通しない前記第2の入熱量にすることを特徴とする請求項3記載のレーザ溶接装置。
【請求項5】
前記レーザ光制御手段は、前記レーザ光を発生させるレーザ発振器の出力を変更することで前記入熱量を変更することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のレーザ溶接装置。
【請求項6】
前記レーザ光制御手段は、前記レーザ光が前記加工用パターンを描く速度を変更することで前記入熱量を変更することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のレーザ溶接装置。
【請求項7】
前記レーザ光制御手段は、前記レーザ光を発生させるレーザ発振器の出力を変更するとともに前記レーザ光が前記加工用パターンを描く速度を変更することで前記入熱量を変更することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のレーザ溶接装置。
【請求項8】
レーザ光の照射方向を変更する反射鏡を備えたレーザ照射手段と、
前記レーザ照射手段を移動させる移動手段と、を備えたレーザ溶接装置の制御方法であって、
前記移動手段により前記レーザ照射手段をあらかじめ教示された移動経路に沿って移動させるとともに、前記レーザ照射手段から照射される前記レーザ光があらかじめ決められた加工用パターンを描くように前記反射鏡の動きを制御し、かつ前記加工用パターンを描く前記レーザ光の照射位置に応じて溶接点における入熱量を変更すること特徴とするレーザ溶接方法。
【請求項9】
前記レーザ光の強度は、前記加工用パターンの描き始めはレーザ光が被溶接部材を貫通する第1の入熱量にし、その後第1の入熱量より低くレーザ光が被溶接部材を貫通しない第2の入熱量にすることを特徴とする請求項8記載のレーザ溶接方法。
【請求項10】
前記レーザ光の強度を前記第2の入熱量にした後、再度前記第1の入熱量にまで高くし、その後また前記第2の入熱量にすることを繰り返すようにすることを特徴とする請求項9記載のレーザ溶接方法。
【請求項11】
前記レーザ光の照射位置が、前記加工用パターンの描き始めの位置に近い位置となったときにはレーザ光が被溶接部材を貫通しない前記第2の入熱量にすることを特徴とする請求項10記載のレーザ溶接方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−200740(P2008−200740A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42416(P2007−42416)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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