説明

レーザ超音波及び赤外線サーモグラフィを使用する非破壊検査

ターゲット材料の内部構造を試験するための検査システムが提供される。この検査システムは、生成レーザ、超音波検出システム、熱画像処理システム、及びプロセッサ/制御モジュールを備える。生成レーザは、ターゲット材料において超音波変位及び熱過渡を誘起するよう動作することができる、パルス・レーザ・ビームを生成する。超音波検出システムは、ターゲット材料における超音波表面変位を検出する。熱画像処理システムは、ターゲット材料における熱過渡を検出する。プロセッサは、ターゲット材料での検出した超音波変位及び熱画像の両方を分析して、ターゲット材料の内部構造についての情報をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非破壊試験に関し、より詳細には、材料の内部構造を検査するための熱画像処理及び超音波試験の使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、航空宇宙産業、自動車産業、及び他の多くの民間産業において、先端複合材料構造体の使用が驚異的に伸びてきている。複合材料により著しい性能の改善がもたらされるが、複合材料は、製造プロセスにおいても、又これらの材料が完成品の中で使用された後にも、厳格な品質管理手順を必要とする。具体的には、非破壊評価(NDE)法は、複合材料の構造的完全性を評価しなければならない。適切に評価するには、表面に近い領域、及び内部深くの領域の両方で、含有物、層間はく離、及び多孔率を検出する能力を必要とする。
【0003】
複合構造体の構造的完全性を評価するための、様々な方法及び装置が提案されてきた。1つのソリューションでは、超音波源を使用して、ターゲット材料内に超音波表面変位を発生させる。次いで、超音波表面変位は、測定され、分析される。超音波源は、ターゲットに向けられたパルス生成レーザ・ビームでもよい。別個の検出レーザからのレーザ光が、超音波表面変位を照射し、加工物の表面によって散乱される。次いで、集光光学装置が、散乱したレーザ・エネルギーを集める。集光光学装置は、干渉計又は他の装置に結合され、散乱したレーザ・エネルギーの分析を通して、複合構造体の構造的完全性についてのデータを得ることができる。レーザ超音波は、製造プロセス時の各部品の検査において、非常に有効であることが示されてきた。
【0004】
通常、レーザ光源は、干渉計に結合された探査レーザ・ビームが表面の変位又は速度を検出している間、表面上の局所的スポットにおいて熱膨張によって音波を生成する。生成レーザを吸収することによる熱膨張により、レーザ超音波検出システムによって復調される変位が生じ、結果として、レーザ超音波信号の最初にパルスが生じる。このエコーは普通、表面エコーと呼ばれている。表面エコーは、サンプルの表面近くの欠陥によって生成されるいかなるエコーをもマスクすることがある。表面エコーの持続時間は、生成レーザ・パルスの持続時間、及び検出システムの周波数帯域幅に依存する。通常、CO2生成レーザ及び検出用の共焦点ファブリ・ペローを用いると、表面エコーは数マイクロ秒まで継続することがある。したがって、その時間中にエコーを生成することになるいかなる欠陥も、マスクされることがある。こうした理由で、レーザ超音波検査は、内部深くの欠陥には感度が高く、表面近くの欠陥には感度が低い。
【0005】
別のNDE法である過渡赤外線(IR)サーモグラフィでは、ポリマー・マトリックス部品内の数mmよりも深い部分の欠陥に対するその感度が低いために、ポリマー・マトリックス複合材料の検査が効率的に行えるようにはならない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の各実施例は、上記確認された必要性及び他の必要性にも実質的に取り組む、システム及び方法を対象とする。本発明の各実施例を、以下の説明及び特許請求の範囲でさらに説明する。本発明の各実施例の利点及び特徴は、この説明、添付図面及び特許請求の範囲から明らかになり得る。
【0007】
本発明の各実施例は、レーザ超音波技法と熱画像処理技法を組み合わせて、上記確認された必要性及び他の必要性にも実質的に取り組む。レーザ超音波発生技法は、過渡的な熱源を提供するのに使用してもよい。したがって、過渡赤外線(IR)サーモグラフィをレーザ超音波と組み合わせて、ポリマー・マトリックス部品(すなわち複合材料)のより完全な非破壊検査を実現してもよい。
【0008】
一実施例では、ターゲット材料の表面近く及び内部深くの構造を検査する検査システムが提供される。この検査システムは、生成レーザ、超音波検出システム、熱画像処理システム、及びプロセッサ/制御モジュールを備える。生成レーザは、ターゲット材料において超音波変位及び熱過渡の両方を誘起するよう動作することができる、パルス・レーザ・ビームを生成する。超音波検出システムは、ターゲット材料における超音波表面変位を検出する。熱画像処理システムは、ターゲット材料における熱過渡を検出する。プロセッサ/制御装置は、ターゲット材料での検出した超音波変位及び熱画像の両方を分析し、その相関をとって、ターゲット材料の表面近く及び内部深くの構造についての情報をもたらす。
【0009】
他の実施例では、ターゲットの内部構造を検査する方法が提供される。この方法は、ターゲット材料における超音波変位及び熱過渡を誘起するステップを含む。これらの超音波変位及び熱過渡は、単一パルス生成レーザ・ビームを使用して生成してもよい。ターゲットの表面に導かれた生成レーザ・ビームによって生じる超音波変位及び熱過渡が、検出され分析されてもよい。生成し分析するステップは、超音波の情報及び熱の情報の両方を同期し、その相関をとって、ターゲットの構造についてのより完全な理解をもたらすステップを含んでもよい。たとえば、超音波変位を分析することにより、複合材料内の内部深くの構造についての情報がもたらされてもよい。熱画像により、複合材料の表面近くの内部構造についての情報がもたらされてもよい。超音波情報と熱情報の相関をとることにより、ターゲットの総合的な内部構造をよりよく理解できるようになる。
【0010】
さらに他の実施例では、複合材料検査システムが提供される。この複合材料検査システムは、複合材料において超音波変位及び熱過渡を誘起するパルス・レーザ・ビームを生成するための生成レーザを備える。複合材料における超音波表面変位を検出するための超音波検出システムが提供される。複合材料における熱過渡を検出するための熱画像処理システムが提供される。制御モジュールは、熱画像処理フレーム取得を、生成レーザ・ビームのパルス速度とマッチさせてもよい。ターゲットの総合的な内部構造についての情報をもたらすために、検出された超音波変位及び熱画像を分析し、その相関をとるためのプロセッサが提供される。
【0011】
本発明及びその利点をより完全に理解するために、次に、添付図面とともになされる以下の説明を参照する。添付図面においては、同じ参照番号は同じ機能を示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の各実施例に従って、生成レーザ・ビーム及び検出レーザ・ビームを使用して、レーザ超音波変位及び熱過渡を生成し検出する様子を示す図である。
【図2】レーザ超音波/熱画像処理システムの基本構成部品を示すブロック図である。
【図3】本発明の各実施例によるレーザ超音波及びIR画像処理システムのブロック図又は機能図である。
【図4】本発明の各実施例により、ターゲットの表面近くの内部構造についての情報を集めるのに使用されるIR画像の処理を示す図である。
【図5】本発明の各実施例により、底部が平坦な穴を有するポリマー板上でパルスCO2レーザ・ビームを走査することによって得られる赤外線の結果を示す図である。
【図6】本発明の1つ又は複数の実施例による論理流れ図である。
【図7】本発明の各実施例により、超音波変位及び熱過渡を生成するよう動作することができる生成レーザのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好ましい実施例を各図に示すが、同じ番号は、様々な図面の同じ部分及び対応する部分を指すのに使用される。
【0014】
本発明の各実施例は、レーザ超音波技法と熱画像処理技法を組み合わせて、ポリマー・マトリックス部品(すなわち複合材料)などの、ただしそれだけに限定されないターゲット材料の、より完全な非破壊検査を実現する。一実施例では、ターゲット材料の内部構造を検査するよう動作することができる、検査システムが提供される。この検査システムは、生成レーザ、超音波検出システム、熱画像処理システム、及びプロセッサ/制御モジュールを備える。生成レーザは、ターゲット材料において超音波変位及び熱過渡の両方を誘起するよう動作することができる、パルス・レーザ・ビームを生成する。超音波検出システムは、ターゲット材料における超音波表面変位を検出する。熱画像処理システムは、ターゲット材料における熱過渡を検出する。プロセッサは、ターゲット材料での検出した超音波変位及び熱画像の両方を分析し、その相関をとって、ターゲット材料の総合的な内部構造についての情報をもたらす。本発明の各実施例では、より速い検査速度、改善されたシステム信頼性、及びより低い運用コストが実現する。
【0015】
図1は、本発明の各実施例に従って、生成レーザ・ビーム及び検出レーザ・ビームを使用して、レーザ超音波変位及び熱過渡を生成し検出する様子を示す。レーザ・ビーム102は、試験用の複合材料などのターゲット106において照射(検出)レーザ・ビーム104が超音波を検出する間に、超音波及び熱過渡を生成する。図に示すように、これらのレーザは、ターゲット106に対して同軸方向に加えてもよい。生成レーザ・ビーム102は、ターゲット106内にさらなる弾性膨張112を引き起こし、その結果、超音波変形又は超音波108が形成される。変形又は超音波108は、ターゲット106の中を伝搬し、検出レーザ・ビーム104を変調、散乱、及び反射して、ターゲット106から離れる方向に導かれた位相変調された光110を生成し、この光は、集められ、処理されて、ターゲット106の内部構造を表す情報が得られる。
【0016】
図2は、超音波レーザ試験及び赤外線(TR)サーモグラフィを実行するための基本的な構成部品のブロック図を示す。生成レーザ210は、生成レーザ・ビーム212を生成し、光学アセンブリ214が、このビームをターゲット216に導く。図に示すように、光学アセンブリ214は、レーザ・ビーム212を走査手順又は試験手順218に沿って移動させる、スキャナ又は他の類似の機構を備える。光学アセンブリ214には、視覚カメラ、デプス・カメラ、IRカメラ、距離検出器、狭帯域カメラ、又は当業者に知られている他の類似の光学センサが含まれ得る。これらの光学センサはそれぞれ、検査を実行する前に、較正を必要とすることがある。この較正は、様々なセンサによって集められた情報を、システムが統合できることを検証する。生成レーザ210は、ターゲット216内に超音波108及び熱過渡を生成する。熱画像処理システム232は、ターゲットの熱画像を取り込む。これらの画像が処理されて、ターゲット216の表面近くの内部構造についての情報がもたらされる。図3以下を参照しながら、このプロセスについてさらに詳細に説明する。
【0017】
超音波108及び熱過渡を生成するさらなる弾性膨張112は、複合材料が生成レーザ・ビームを吸収した結果である。複合材料216は、消散又は破壊することなく、生成レーザ・ビーム212を容易に吸収する。よりハイパワーの生成レーザは、結果として加工物の表面において材料の消散を生じ、潜在的に構成部品を損傷する可能性があるので、信号対雑音比(SNR)の問題を克服するのには必ずしも好ましくはない。他の実施例では、試験される材料によっては、検出信号のSNRを増大させるために何らかの消散が許容されることがある。生成レーザ・ビーム212は、超音波表面変形及び適切な熱過渡を誘起するために、適切なパルスの持続時間、パワー、及び周波数を有する。たとえば、横方向励起大気圧(TEA)COレーザは、パルス幅が100ナノ秒で波長が10.6ミクロンのビームを生成することができる。レーザのパワーは、たとえば0.25ジュールのパルスをターゲットに供給するのに十分な強さでなければならず、繰返し速度400Hzのパルスで動作する100ワットのレーザを必要とすることがある。生成レーザ・ビーム212は、ターゲット表面に熱として吸収され、それにより、消散することなく、さらなる弾性膨張が生じる。
【0018】
パルス・モード又はCWモードで動作している検出レーザ220は、超音波変位を誘起しない。たとえば、Nd:YAGレーザを使用することができる。このレーザのパワーは、たとえば、100ミリジュールで100マイクロ秒のパルスを供給するのに十分な強さでなければならず、1キロワット(KW)のレーザを必要とすることがある。検出レーザ220は、検出レーザ・ビーム222を生成する。検出レーザ220は、フィルタリング機構224を備えるか、又はそれと光学的に結合するかして、検出レーザ・ビーム224から雑音を取り除く。光学アセンブリ214は、検出レーザ・ビーム224を複合材料216の表面に導き、複合材料216は、検出レーザ・ビーム224を散乱及び/又は反射する。結果として生じる位相変調された光は、集光光学装置226によって集められる。ここで図に示すように、散乱及び/又は反射された検出レーザ光は、光学アセンブリ214を通って逆向きに進む。任意選択の光学プロセッサ228及び干渉計230は、位相変調された光を処理して、複合材料216の表面での超音波変位を表す情報を含む信号を生成する。データ処理及び制御システム232は、レーザ超音波システムの構成部品及び熱画像の構成部品の動作を調整して、ターゲットの内部構造についての情報をもたらす。
【0019】
データ処理及び制御システム232は、単一の処理装置でもよく、複数の処理装置でもよい。このような処理装置は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、マイクロコンピュータ、中央処理装置、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ、プログラマブル論理デバイス、状態機械、論理回路、アナログ回路、デジタル回路、及び/又はメモリ内に記憶された動作命令に基づいて信号(アナログ及び/又はデジタル)を処理するいかなる装置でもよい。メモリは、単一の記憶装置でもよく、複数の記憶装置でもよい。このような記憶装置は、読取り専用メモリ、ランダム・アクセス・メモリ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、スタティック・メモリ、ダイナミック・メモリ、フラッシュ・メモリ、キャッシュ・メモリ、及び/又はデジタル情報を記憶するいかなる装置でもよい。これより説明することになる各ステップ及び/又は各機能のうちの少なくともいくつかに対応する動作命令を、メモリが記憶し、データ処理及び制御システム232が実行する。
【0020】
図3は、本発明の各実施例によるレーザ超音波及びIR画像処理システム300のブロック図又は機能図を示す。レーザ超音波及びIR画像処理システム300は、生成レーザ302、制御モジュール304、レーザ超音波検出システム306、熱画像処理システム308、処理モジュール310、及び光学システム312を備える。生成レーザ302は、生成レーザ・ビームを生成し、生成レーザ・ビームは、光学システム312により、複合材料などの、ただしそれだけに限定されない材料で作られたターゲット314に導かれ、前述の通り超音波変位が誘起される。レーザ超音波検出システム306は、検出レーザ・ビームを生成し、検出レーザ・ビームは、光学システム312によりターゲット314に導かれ、ターゲット314の表面における超音波変位により検出レーザ・ビームが位相変調される。検出レーザ・ビームは、ターゲットの表面で散乱する。光学システム312は又、この散乱した位相変調光を集光する。レーザ超音波検出システム306は、超音波変位についての情報を含む信号を生成するために、集光された位相変調光を処理する。この信号は、処理モジュール310に供給される。
【0021】
生成レーザ302は又、ターゲット314のサーモグラフィによる測定のために、熱過渡を生成する。IRカメラなどの熱画像処理システム308は、ターゲット314内の熱過渡の熱画像又はフレームを取得する。画像は、各生成レーザ・パルスについて取得される。追加の画像は、各生成パルスの後に、所定の回数だけ取得してもよい。これら様々な画像が処理されて、レーザ超音波によって検査される領域全体のサーモグラフィ検査が実現する。
【0022】
サーモグラフィによる結果は、レーザ超音波の結果を補完し、このようにして、より完全で、より信頼性の高い検査を実現する。過渡IRサーモグラフィは、ポリマー・マトリックス複合材料などの複合部品の効率的な検査を、単独では実現しない。過渡IRサーモグラフィは、複合部品の上面のみに敏感であるが、それは、ポリマー・マトリックス上で上面の熱伝導性が低いからである。したがって、IRサーモグラフィは、ポリマー・マトリックス部品又は複合部品内の深部の欠陥を検出し識別するのに使用することはできない。
【0023】
レーザ超音波及びIR画像処理システム300は、内部深くの検査システムを実現するレーザ超音波、及びターゲット314の表面近くを検査するための熱画像処理の両方を組み込む。これにより、レーザ超音波検査は表面近くの欠陥に対する感度が低いことがあるという事実に関連した問題に取り組む。これら2つの技法を組み合わせることにより、レーザ超音波又はIRサーモグラフィのいずれかのみを使用していたときよりも、複合部品又は複合材料のより完全な非破壊検査が可能になる。
【0024】
図4は、ターゲット314の内部構造についての情報を収集するためのIR画像の処理を示す。熱画像は、生成レーザ・ビームが発射された後に、毎回又は所定の時間の後に収集されてもよい。生成レーザ・ビームが、ターゲット314Aに向けて発射又はパルス照射されるとき、生成レーザ・ビームは走査経路316に沿って走査されることになる。生成レーザ・ビームが導かれるポイント318は、それぞれ熱過渡320を有することになる。ターゲット314Nは、生成レーザ・ビームを用いてターゲット314を繰り返し照射し、数多くの熱画像を収集することにより、経路316の走査を示す。これらの熱過渡を使用して、ターゲット材料に関連する熱特性を決定してもよい。たとえば、定量的なサーマル・ウォールの厚さは、長時間にわたりターゲットにおいて熱画像を分析することによって決定してもよい。これは、図5に示すように、合成視覚画像の形で提示されてもよい。この処理手法は、赤外線画像を分析する(より具体的には、互いに異なる画像内の、時間の関数としての温度変化が分析される)。相対的な温度変化曲線は、IRカメラの各ポイントでの全てのOR画像から構成される。
【0025】
他の実施例では、裏面の欠陥について材料を検査するための、走査IRサーモグラフィ技法が提供されることがある。これにより、どの時点においてもターゲットのごく一部のみが加熱されるという点で、ターゲットのピーク熱負荷を制限することができる。このようなシステムは、走査レーザを使用して、熱過渡を誘起する。
【0026】
図5は、底部が平坦な穴を有するポリマー板上でパルスCO2レーザ・ビームを走査することによって得られる赤外線の結果を示す。ターゲット502内の欠陥は、グレー・スケールの画像SOVに明瞭に現れている。画像500は、材料502内の様々なポイント504を含む。この画像は、「Synthetic reference thermal imaging method」と題する米国特許第6,367,969号に記載の方法などの画像処理法を使用して生成されてもよく、あらゆる目的でこの特許を参考として組み込む。IR過渡サーモグラフィ分析手法を使用して、ターゲットの厚さを正確に測定し、ターゲットの所望の領域にわたってその断面の厚さを表す視覚符号化された表示を提供してもよい。
【0027】
基本的には、急速に加熱されたターゲットの表面の温度−時間(T−t)応答解析における変曲点でのIR過渡サーモグラフィの使用は、「表側」のIRカメラの観察から得られることが好ましい。この変曲点は、T−t応答において相対的に早期に発生し、横方向の熱損失メカニズムとは本質的に無関係である。(こうした考慮は、たとえば金属を扱うときに特に重要となり得る。金属の熱伝導性率は高いため、金属ターゲットの熱応答はかなり急速であり、したがって、熱データの測定値を得るのに使用できる時間が通常短いからである)。変曲点は、連続したIRカメラの画像フレームから所定の期間にわたって取得された熱データから抽出される。この期間は、評価されているターゲットの厚さの推定値に基づく、予想される特性時間よりも少なくともいくらか長いことが好ましい。
【0028】
熱基準データは、画像処理されるターゲットの各(x,y)の画素位置に対して計算され、次いで、各画素について、時間の関数としてコントラストを決定するために使用される。コンピュータ・システムは、画像処理システムを制御し、IRカメラを用いて取得した表面温度のデータを記録及び分析し、ターゲットの厚さに正確に対応するカラー又はグレーのパターンの統一がとれた画像を生成する。この情報をレーザ超音波データと組み合わせて、ターゲットのより詳細な内部画像を生成してもよい。
【0029】
表面温度のデータの取得は、生成レーザを発射してターゲットの表面の一部を照射し加熱することによって開始される。次いで、熱画像フレームは、各生成レーザ・パルスの後に、ある期間にわたって記録され、記録された画像を使用して、図4の熱過渡320に関連する履歴など、温度−時間(T−t)の履歴を作成する。
【0030】
次いで、取得された画像フレーム内の各画素に対してT−t履歴の熱流分析が実施されて、各分解要素の位置におけるターゲットの厚さを決定する。通常、ターゲットの固体部分を通る過渡熱流の分析には、熱エネルギーの「パルス」が第1の表面でターゲットを貫通し、反対側の表面で反射し、第1の表面に戻るのに要する特性時間を決定することが必要である。この特性時間は2つの表面間の距離に関係しているので、所望のポイントで2つの表面間のターゲットの厚さを決定するのに使用することができる。コントラスト対時間の曲線は、ターゲット表面の各分解要素に対応する各(x,y)の画素位置について決定される。
【0031】
図6は、本発明の各実施例による、複合材料などの、ただしそれだけに限定されない材料を検査するための方法を説明する論理流れ図を示す。工程600は、試験される材料の内部構造を検査し試験するために、レーザ超音波技法、及び熱画像処理技法又は赤外線サーモグラフィ技法の両方を応用する。工程600は、ステップ602で開始し、超音波変位及び熱過渡がターゲット材料内で誘起される。これらは両方とも、レーザ超音波システムと連携する生成レーザ・ビームを使用して行われてもよい。図1〜4を参照して先に述べた通り、この生成レーザ・ビームは、ターゲット材料の表面に導かれると、超音波変位及び熱過渡の両方を生成する。ステップ604で、超音波変位及び熱過渡が検出される。超音波変位は、レーザ超音波システムなどの、ただしそれだけに限定されない超音波システムを使用して検出してもよい。熱過渡は、ターゲット材料の熱画像を取得することによって検出してもよい。前述の通り、熱過渡及び超音波の生成は、同期してもよく、又は相関をとってもよい。この情報を使用して、ステップ606で実行された各分析結果をマッチさせてもよい。ステップ606で、検出された超音波変位及び熱画像が分析される。検出された超音波変位は、ターゲット材料の内部深くの構造に関する情報を提供することになるが、熱過渡の熱画像を処理して、ターゲット材料内の表面近くの構造を決定してもよい。超音波変位及び熱過渡は、同じ生成レーザ・ビームによって開始するので、この情報を使用して、検出された超音波変位及び熱画像の相関を容易にとってもよい。これにより、ステップ608で、ターゲット材料の表面近く及び内部深くの構造の両方について、詳細かつ複合的に理解できるようになる。
【0032】
取得された熱画像にタイム・スタンプを加えることにより、部分的に相関をとってもよい。同様に、熱画像処理取得フレーム速度は、生成レーザ・ビームのパルス速度とマッチさせてもよい。サーモグラフィにより、ターゲット材料の他の表示についての合成画像を決定することが可能になる。これは、熱画像を分析することによって得られた定量的な熱的厚さを決定することを必要とすることがある。定量的なサーマル・ウォールの厚さの変化は、定量的なサーマル・ウォールの厚さの予期せぬ変化が起きるポイントにおいて、ターゲット材料内の表面近くの欠陥を示すことがある。この情報は、コントラストの急激な変化が、定量的なサーマル・ウォールの厚さの不連続性又は変化を示す、コントラスト表示によって視覚化してもよい。
【0033】
生成レーザ・ビームは、Mid−IR超音波生成レーザでもよい。このような生成レーザは、超音波及び熱過渡を生成するための、コンパクトで平均出力の高いMid−IRレーザを実現する。図7に示すように、生成レーザ700は、ポンプ・レーザ・ヘッド702を備え、その中にファイバ・レーザを有し、ファイバは生成レーザ・ヘッド704に結合される。ファイバ・レーザを使用することにより、レーザ・ポンプを生成レーザ・ヘッド704から離れて配置することが可能になる。ポンプ・レーザ・ヘッドは、光ファイバ702を介して生成レーザ・ヘッド704に結合してもよい。
【0034】
ポンプ・レーザ・ヘッド702を生成レーザ・ビーム送出ヘッド704から数m離して配置することにより、総合的なペイロード、及び生成レーザ・ビームを送出し、熱画像を取得するのに使用されるロボット・システムへの安定性要求を低減させる、コンパクトなMid−IR生成レーザ・ヘッドが可能になる。ロボット・システムの検査ヘッド内には、生成レーザ・ビーム送出ヘッド及びIRカメラを含む、コンパクトで軽量なモジュールのみを取り付ける必要がある。これにより、より小さいロボットを使用するMid−IRレーザ光源の導入が可能になる。したがって、携帯用のレーザ超音波システム及びIRサーモグラフィ・システムを使用するインフィールドの複合NDAについての、新規の複合検査の機会が生み出される。これらの手法は、「FIBER LASER TO GENERATE ULTRASOUND」と題する米国特許出願第1号で議論されており、あらゆる目的で本明細書に援用する。
【0035】
要約すれば、本発明の各実施例は、ターゲット材料の内部構造を検査するよう動作することができる検査システムを提供する。この検査システムは、生成レーザ、超音波検出システム、熱画像処理システム、及びプロセッサ/制御モジュールを備える。生成レーザは、ターゲット材料において超音波変位及び熱過渡を誘起するよう動作することができる、パルス・レーザ・ビームを生成する。超音波検出システムは、ターゲット材料における超音波表面変位を検出する。熱画像処理システムは、ターゲット材料における熱過渡を検出する。プロセッサは、ターゲット材料での検出した超音波変位及び熱画像の両方を分析して、ターゲット材料の内部構造についての情報をもたらす。
【0036】
当業者であれば理解するように、用語「実質的に」又は「ほぼ」は、本明細書で使用されることがあるように、その対応する用語に対して産業界で受け入れられている許容度を示す。このように産業界で受け入れられている許容度は、1パーセント未満から20パーセントの範囲にあり、構成部品の数値、集積回路のプロセス変動、温度変動、立上り時間及び立下り時間、並びに/又は熱雑音に対応するが、それだけには限定されない。当業者であればさらに理解するように、用語「動作できるように結合される」は、本明細書で使用されることがあるように、直接結合、及び他の構成部品、要素、回路、又はモジュールを介した間接結合を含み、間接結合においては、介在する構成部品、要素、回路、又はモジュールは、信号の情報を変更せず、その電流レベル、電圧レベル、及び/又はパワー・レベルを調整することがある。当業者であればやはり理解するように、推論結合(inferred coupling)(すなわち、ある要素が別の要素と推論によって結合される)は、「動作できるように結合される」のと同様に、2つの要素間の直接結合及び間接結合を含む。当業者であればさらに理解するように、用語「有利に比較する」は、本明細書で使用されることがあるように、2つ以上の要素、アイテム、信号などの間で比較することにより、所望の関係を提供することを示す。たとえば、所望の関係が、信号1の振幅が信号2よりも大きいというときに、信号1の振幅が信号2の振幅よりも大きいとき、又は信号2の振幅が信号1の振幅よりも小さいときに、有利な比較を実行してもよい。
【0037】
本発明を詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲で定義されている本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更、置換え、及び改変を本発明に加えることができることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットを検査する方法であって、
前記ターゲットにおいて超音波変位及び熱過渡を誘起するように動作することができる、生成レーザ・ビームを生成するステップと、
前記生成レーザ・ビームを前記ターゲットの表面に導くステップであって、前記生成レーザ・ビームは、前記ターゲットにおいて超音波変位及び前記熱過渡を生成するステップと、
前記ターゲットにおいて前記超音波変位及び前記熱過渡を検出するステップと、
前記ターゲットにおいて検出された超音波変位、及び前記ターゲットの熱画像の両方を分析することにより、前記ターゲットについての情報をもたらすステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記ターゲットは複合材料を含み、
検出された超音波変位を分析することにより、前記複合材料の内部深くの構造についての情報をもたらし、
前記ターゲットにおける熱画像を分析することにより、前記複合材料の表面近くの内部構造についての情報をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複合材料の前記内部深くの構造と、前記複合材料の前記表面近くの内部構造についての情報の相関をとるステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記検出された超音波変位と前記熱画像の相関をとるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ターゲットにおいて前記超音波変位及び前記熱過渡を検出するステップは、熱画像処理を前記生成レーザ・ビームのパルス速度とマッチさせるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ターゲットにおいて前記超音波変位及び前記熱過渡を検出するステップは、熱画像処理のフレーム速度を前記生成レーザ・ビームのパルス速度とマッチさせるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記熱画像の視野は、前記生成レーザ・ビームの走査平面を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
定量的なサーマル・ウォールの厚さは、前記ターゲットにおいて熱画像を分析することによって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記定量的なサーマル・ウォールの厚さの予期せぬ変化は、前記ターゲット内の前記予期せぬ変化における欠陥を示す、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ターゲットにおいて熱画像を分析するステップは、赤外線(IR)過渡サーモグラフィを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
検出レーザ・ビームを生成するステップと、
前記検出レーザ・ビームを前記ターゲットの前記表面に導くステップと、
前記ターゲットの前記表面で前記検出レーザ・ビームを散乱させて、超音波表面変位によって位相変調された光を生成するステップと、
前記位相変調された光を集光するステップと、
前記位相変調された光を処理して、前記表面での前記超音波表面変位を表すデータを得るステップと、
前記情報を有する前記データを収集して、前記ターゲット内の構造を分析するステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ターゲットの内部構造を検査するよう動作することができる検査システムであって、
前記ターゲットにおいて超音波変位及び熱過渡を誘起するよう動作することができるパルス・レーザ・ビームを生成するよう動作することができる生成レーザと、
前記ターゲットにおいて前記超音波表面変位を検出するよう動作することができる超音波検出システムと、
前記ターゲットにおいて前記熱過渡を検出するよう動作することができる熱画像処理システムと、
前記ターゲットにおいて検出された超音波変位、及び前記ターゲットの熱画像の両方を分析して、前記ターゲットの前記内部構造についての情報をもたらすよう動作することができるプロセッサとを備える検査システム。
【請求項13】
前記超音波検出システムは、
前記ターゲットにおいて前記超音波表面変位を照射するよう動作することができる検出レーザ・ビームを生成するよう動作することができる検出レーザと、
前記ターゲット表面において散乱された前記検出レーザ・ビームから、超音波表面変位によって位相変調された光を集光するための集光光学装置と、
前記位相変調された光を処理し、少なくとも1つの出力信号を生成する干渉計と、
前記少なくとも1つの出力信号を処理して、前記ターゲットにおける前記超音波表面変位を表すデータを得る処理ユニットとを備える、請求項12に記載の検査システム。
【請求項14】
前記熱画像処理システムは、赤外線(IR)過渡サーモグラフィ・システムを備える、請求項12に記載の検査システム。
【請求項15】
前記IR過渡サーモグラフィ・システムは、前記生成レーザ・ビームによって照射された前記ターゲットの画像フレームを取得するよう動作することができるIR感応性カメラを備える、請求項14に記載の検査システム。
【請求項16】
前記ターゲットの画像フレームは、画素のアレイを含み、経過時間に対応するフレーム番号が割り当てられ、定量的なサーマル・ウォールの厚さは、熱画像の順次フレームを分析することによって決定される、請求項15に記載の検査システム。
【請求項17】
前記処理ユニットは、前記検出された超音波変位と前記熱画像の相関をとる、請求項15に記載の検査システム。
【請求項18】
熱画像処理フレーム取得を前記生成レーザ・ビームのパルス速度とマッチさせるよう動作することができる制御モジュールをさらに備える、請求項15に記載の検査システム。
【請求項19】
前記ターゲットは複合材料を含み、
前記処理ユニットは、
検出された超音波変位を分析して、前記複合材料の内部深くの構造についての情報をもたらし、
前記ターゲットにおける熱画像を分析して、前記複合材料の表面近くの内部構造についての情報をもたらし、
前記複合材料の前記内部深くの構造と、前記複合材料の前記表面近くの内部構造についての情報の相関をとる、請求項15に記載の検査システム。
【請求項20】
複合材料において超音波変位及び熱過渡を誘起するよう動作することができるパルス・レーザ・ビームを生成するよう動作することができる生成レーザと、
前記複合材料において前記超音波表面変位を検出するよう動作することができる超音波検出システムと、
前記複合材料において前記熱過渡を検出するよう動作することができる熱画像処理システムと、
熱画像処理フレーム取得を、前記生成レーザ・ビームのパルス速度とマッチさせるよう動作することができる制御モジュールと、
前記複合材料において検出された超音波変位、及び前記ターゲットの熱画像の両方を分析して、前記ターゲットの前記内部構造についての情報をもたらすよう動作することができるプロセッサとを備える、大面積複合検査システム。
【請求項21】
前記処理ユニットが、
検出された超音波変位を分析して、前記複合材料の内部深くの構造についての情報をもたらし、
前記ターゲットにおける熱画像を分析して、前記複合材料の表面近くの内部構造についての情報をもたらし、
前記複合材料の前記内部深くの構造と、前記複合材料の前記表面近くの内部構造についての情報の相関をとる、請求項20に記載の検査システム。
【請求項22】
前記超音波検出システムは、
前記ターゲットにおいて前記超音波表面変位を照射するよう動作することができる検出レーザ・ビームを生成するよう動作することができる検出レーザと、
前記ターゲット表面において散乱された前記検出レーザ・ビームから、超音波表面変位によって位相変調された光を集光するための集光光学装置と、
前記位相変調された光を処理し、少なくとも1つの出力信号を生成する干渉計と、
前記少なくとも1つの出力信号を処理して、前記ターゲットにおける前記超音波表面変位を表すデータを得る処理ユニットとを備える、請求項20に記載の検査システム。
【請求項23】
前記熱画像処理システムは、赤外線(IR)過渡サーモグラフィ・システムを備える、請求項20に記載の検査システム。
【請求項24】
前記IR過渡サーモグラフィ・システムは、前記生成レーザ・ビームによって照射された前記ターゲットの画像フレームを取得するよう動作することができるIR感応性カメラを備える、請求項23に記載の検査システム。
【請求項25】
画像フレームは、画素のアレイを含み、経過時間に対応するフレーム番号が割り当てられ、定量的なサーマル・ウォールの厚さは、熱画像の順次フレームを分析することによって決定される、請求項20に記載の検査システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−506927(P2011−506927A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536898(P2010−536898)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/025228
【国際公開番号】WO2009/073014
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(598028028)ロッキード マーティン コーポレイション (16)
【氏名又は名称原語表記】Lockheed Martin Corporation
【Fターム(参考)】