レーダ装置、レーダ装置制御方法、レーダ装置制御プログラムおよびレーダ制御装置
【課題】近距離に位置する対象物までの距離や近距離に位置する対象物の移動速度を計測することができるレーダ装置、レーダ装置制御方法、レーダ装置制御プログラムおよびレーダ制御装置を提供すること。
【解決手段】ビート信号の包絡線を検波することにより、ビート信号を補正するための補正データを生成し、生成した補正データに基づいてビート信号を補正し、補正されたビート信号に基づいて距離計測処理および速度計測処理を行う。
【解決手段】ビート信号の包絡線を検波することにより、ビート信号を補正するための補正データを生成し、生成した補正データに基づいてビート信号を補正し、補正されたビート信号に基づいて距離計測処理および速度計測処理を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置、レーダ装置制御方法、レーダ装置制御プログラムおよびレーダ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な分野において、所定の場所に位置する対象物までの距離や、対象物の移動速度を計測するレーダ装置が用いられている。かかるレーダ装置は、対象物に対して電波(送信波)を送信し、かかる送信波と、送信波に対する反射波(以下、レーダ装置が受信する反射波を「受信波」という)との時間差に基づいてビート信号を生成する。そして、レーダ装置は、生成したビート信号に基づいて、対象物までの距離や対象物の移動速度を計測する(図12参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−174548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のレーダ装置には、近距離に位置する対象物までの距離や、近距離に位置する対象物の移動速度を計測することができないという問題があった。かかる問題について、図13−1および図13−2を用いて具体的に説明する。レーダ装置が対象物までの距離等を計測する場合、ビート信号は、図13−1に示すように振幅が一定であり、かつ、周波数が対象物までの距離に比例することが望ましい。しかし、実際には、図13−2に示すように、ビート信号の振幅は、一定にならない。
【0005】
このようなビート信号の振幅が一定にならない原因はいくつか考えられる。例えば、レーダ装置内部のVCO(voltage controlled oscillator:電圧制御発振器)が原因の1つとして考えられる。具体的には、VCOは、所定の制御信号発生器から出力される制御信号(本明細書では、「変調信号」または「モジュレーション信号」と呼ぶこともある)に基づいて周波数変調した送信波を生成する。しかし、VCOは、制御信号に対して周波数特性を有しており、周波数変調をしているにも関わらず、制御信号に同期して振幅についても変動させてしまう場合がある。上述したように、ビート信号は、VCOから出力される信号である送信波と、受信波とに基づいて生成されるため、VCOから出力される信号の振幅が一定でないと、ビート信号の振幅も一定にならない。
【0006】
また、例えば、レーダ装置内部のビート信号を生成するMix(Mixer:ミキサ)が原因の1つとして考えられる。具体的には、Mixは、VCOから出力される信号である送信波と、受信波とを混合することにより、ビート信号を生成する。しかし、Mixは、上記VCOと同様に、制御信号に対して周波数特性を有しており、VCOから出力される信号の振幅が一定であっても、制御信号に同期して振幅を変動させたビート信号を生成してしまう場合がある。なお、上述した2つの原因は、同時に発生することもある。
【0007】
このようなことから、ビート信号の振幅は一定にならず、図13−2に示した波形のようになる。本明細書では、このようなビート信号の振幅変動を「FM−AM雑音」と呼ぶこととする。ここで、図14に、FM−AM雑音が含まれるビート信号を周波数軸で書き表したものを示す。図14に示すように、FM−AM雑音は、VCOの制御信号の繰返し周波数およびその高調波周波数に現れる。したがって、ビート信号に含まれるFM−AM雑音は、近距離に位置する対象物までの距離等を計測する際に用いられる低い周波数帯に出現する。従来のレーダ装置では、このようなFM−AM雑音を除去するために、BPF(Band Pass Filter:バンドパスフィルタ)等を用いて低い周波数帯を一様に除去していた。このため、従来のレーダ装置では、近距離に位置する対象物までの距離等を計測することができなかった。
【0008】
なお、近年では、ビート信号の非直線性を補正する技術が提案されているが(特許文献1参照)、かかる技術を用いたとしても、ビート信号の振幅を一定にすることはできないので、上述した問題を解決することはできなかった。
【0009】
開示の技術は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、近距離に位置する対象物までの距離や近距離に位置する対象物の移動速度を計測することができるレーダ装置、レーダ装置制御方法、レーダ装置制御プログラムおよびレーダ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本願に開示するレーダ装置は、対象物に送信された送信波と前記送信波に対する反射波とに基づいて生成されるビート信号の振幅を補正するための補正データを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶されている補正データに基づいて、前記ビート信号の振幅を補正する補正部と、前記補正部によって補正されたビート信号に基づいて、前記対象物までの距離または前記対象物の移動速度を算出する算出部とを備えたことを要件とする。
【0011】
なお、本願に開示するレーダ装置の構成要素、表現または構成要素の任意の組合せを、方法、装置、システム、コンピュータプログラム、記録媒体、データ構造などに適用したものも、他の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本願に開示したレーダ装置によれば、近距離に位置する対象物までの距離や近距離に位置する対象物の移動速度を計測することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本願に開示するレーダ装置、レーダ装置制御方法、レーダ装置制御プログラムおよびレーダ制御装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により本願に開示するレーダ装置、レーダ装置制御方法、レーダ装置制御プログラムおよびレーダ制御装置が限定されるものではない。
【実施例1】
【0014】
まず、実施例1に係るレーダ装置の概要について説明する。図1は、実施例1に係るレーダ装置による距離測定処理等の概要を説明するための図である。図1に示した2つのビート信号のうち、上段に示したビート信号B1は、レーダ装置によって生成されるビート信号を示している。具体的には、レーダ装置は、対象物に対して送信する送信波と、かかる送信波に対する反射波(受信波)とに基づいてビート信号B1を生成する。図1に示すように、ビート信号B1は、FM−AM雑音が含まれているため、振幅が一定になっていない。
【0015】
実施例1に係るレーダ装置は、このようなビート信号B1の振幅を補正して、図1下段に示したビート信号B2を生成する。具体的には、レーダ装置は、ビート信号B1の包絡線Eを検波し、かかる包絡線Eに基づいてビート信号B1の振幅を補正するための補正データを生成する。続いて、レーダ装置は、生成した補正データを所定の記憶部に記憶させておく。なお、かかる補正データ生成処理は、基本的にレーダ装置の製造時に行われる。
【0016】
そして、レーダ装置は、対象物までの距離や対象物の移動速度等を計測する場合に、所定の記憶部に記憶しておいた補正データに基づいて、ビート信号B1をビート信号B2に補正する。続いて、レーダ装置は、振幅が一定であるビート信号B2を用いて、対象物までの距離を測定する処理(距離測定処理)や、対象物の移動速度を計測する処理(速度計測処理)を行う。すなわち、レーダ装置は、FM−AM雑音が含まれていないビート信号B2を用いて距離測定処理や速度計測処理を行うので、近距離に位置する対象物までの距離等を計測することができる。
【0017】
次に、実施例1に係るレーダ装置の構成について説明する。以下では、補正データ生成処理を行うレーダ装置100の構成と、補正データを用いて距離計測処理や速度計測処理を行うレーダ装置200の構成とを分けて説明する。図2−1は、補正データ生成処理を行うレーダ装置100の構成を示す図である。図2−2は、距離計測処理や速度計測処理を行うレーダ装置200の構成を示す図である。
【0018】
図2−1に示したレーダ装置100は、製造時におけるレーダ装置の状態を示している。かかるレーダ装置100は、図2−2に示したレーダ装置200と比較して、対象物に対して所定の電波を送信するT−ant(送信アンテナ)22と、対象物から反射波を受信するR−ant(受信アンテナ)23との代わりに、導波管10を有する。具体的には、製造時におけるレーダ装置100は、T−ant22およびR−ant23が装着されず、導波管10によってAMP13とAMP15とが接続される。これにより、レーダ装置100は、対象物に対して実際に送信波を送信することなく補正データ生成処理を行うことができる。
【0019】
また、図2−1に示すように、レーダ装置100は、三角波発生器11と、VCO12と、AMP(Amplifier:増幅器)13と、矩形波OSC(矩形波Oscillator:矩形波発振器)14と、AMP15と、Mix16と、BPF17と、Mix18と、LPF(Low Pass Filter:ローパスフィルタ)19と、包絡線検波部20と、MPX(Multiplexer:マルチプレクサ)21と、制御部110と、記憶部120とを有する。
【0020】
三角波発生器11は、後述する送信指示部111の指示に基づいて、VCO12へ変調信号(モジュレーション信号)である三角波を出力する。VCO12は、三角波発生器11から入力された三角波に基づいて、周波数変調した信号をAMP13およびMix16へ出力する。なお、以下では、VCO12から出力される周波数変調された信号を「FM信号」と呼ぶこととする。AMP13は、VCO12から入力されたFM信号を増幅し、増幅したFM信号を導波管10を介してAMP15へ出力する。かかるAMP13から出力される信号が「送信波」に該当する。
【0021】
矩形波OSC14は、AMP15およびMix18へ矩形波を出力する。AMP15は、矩形波OSC14から入力された矩形波に基づいて、AMP13から入力された送信波を増幅およびASK(Amplitude Shift Keying)変調して、増幅およびASK変調後の信号をMix16へ出力する。
【0022】
Mix16は、AMP15から入力された信号とVCO12から入力されたFM信号とを混合した信号を生成し、生成した信号をBPF17へ出力する。Mix16によって生成された信号には、ASK変調された中間周波数(IF:Intermediate Frequency)帯のビート信号や、低周波数(BB:Baseband Frequency)帯の直流ノイズ、高周波帯の搬送波の漏れ信号、搬送波の2倍の周波数帯の変調されたビート信号などが含まれる。
【0023】
BPF17は、Mix16から入力された信号のうち、低周波数帯の直流ノイズと、漏れ信号と、搬送波の2倍の周波数帯のビート信号とを除去して、ASK変調された中間周波数帯のビート信号を通過させる。すなわち、BPF17は、Mix16から入力された信号のうち、中間周波数帯のビート信号をMix18へ出力する。
【0024】
Mix18は、BPF17から入力された中間周波数帯のビート信号と、矩形波OSC14から入力された矩形波とを混合して、ビート信号を中間周波数帯から低周波帯にダウンコンバートし、ダウンコンバート後の信号をLPF19へ出力する。Mix18によってダウンコンバートされた信号には、低周波帯のビート信号や、矩形波OSC14における矩形波クロックと同一の周波数帯の漏れ信号、かかる矩形波クロックの2倍の周波数帯の信号などが含まれる。LPF19は、Mix18から入力された信号のうち、低周波帯のビート信号を通過させて、かかる低周波帯のビート信号を包絡線検波部20およびMPX21へ出力する。
【0025】
包絡線検波部20は、LPF19から入力されたビート信号の包絡線を検波する。図1に示した例を用いて説明すると、包絡線検波部20は、FM−AM雑音が含まれているビート信号B1を入力された場合に、ビート信号B1の包絡線Eを検波する。そして、包絡線検波部20は、検波した包絡線を示す信号(以下、「包絡線信号」という)をMPX21へ出力する。
【0026】
MPX21は、LPF19から入力されたビート信号と、包絡線検波部20から入力された包絡線信号とを制御部110へ出力する。なお、MPX21は、入力された複数の信号から1つの信号を選択して出力するスイッチであってもよい。また、一般に、1チップコンピュータ(制御コンピュータ)にはMPX21が付属しているため、図2−1に示した構成は容易に実現することが可能である。
【0027】
制御部110は、レーダ装置100による補正データ生成処理や、距離計測処理、速度計測処理等を行う。かかる制御部110は、送信指示部111と、A/D(analog to digital)変換部112と、補正データ生成部113と、補正部114と、算出部115とを有する。
【0028】
送信指示部111は、対象物に対して所定の電波を送信するように、三角波発生器11に対して指示する。具体的には、送信指示部111は、所定のタイミングになった場合(例えば、対象物までの距離等を測定するように指示を受け付けた場合など)に、三角波発生器11に対して、所定の振幅や所定の繰り返し周波数の三角波を出力する旨の指示を行う。上述した三角波発生器11は、送信指示部111からの指示を受け付けて三角波出力処理を行う。
【0029】
A/D変換部112は、アナログ信号をデジタル信号へ変換(ADコンバート)する。具体的には、A/D変換部112は、モジュレーション信号に同期して、MPX21から入力された包絡線信号をADコンバートする。そして、A/D変換部112は、ADコンバート後の包絡線信号を補正データ生成部113へ出力する。
【0030】
補正データ生成部113は、A/D変換部112から入力された包絡線信号に基づいて、補正データを生成する。図3を用いて、補正データ生成部113による補正データ生成処理について具体的に説明する。図3は、補正データ生成部113による補正データ生成処理を説明するための図である。
【0031】
図3に示すように、補正データ生成部113は、A/D変換部112によってADコンバートされた包絡線信号Edを取得する。続いて、補正データ生成部113は、補正データを生成するための基準値Sdを決定する。図3に示した例では、補正データ生成部113は、包絡線信号Edの平均値を基準値Sdに決定している。なお、補正データ生成部113は、基準値Sdを桁あふれ等が発生しない使用可能な範囲で、どのような値に決定してもよい。例えば、補正データ生成部113は、包絡線信号Edの最大値を基準値Sdに決定してもよいし、包絡線信号Edの最小値を基準値Sdに決定してもよい。
【0032】
続いて、補正データ生成部113は、包絡線信号Edの値を所定の間隔で測定(サンプリング)する。続いて、補正データ生成部113は、包絡線信号Edを測定した位置(以下、「サンプリング位置」という)ごとに、基準値Sdに対する包絡線信号Edの値の割合を算出する。そして、補正データ生成部113は、算出した割合の逆数を求めて、各サンプリング位置におけるゲインを算出する。このようにして算出されたゲインは、各サンプリング位置における補正データに該当する。なお、図3において、波形Rdは、補正データ生成部113によって算出される補正データを示している。
【0033】
図3に示した例では、補正データ生成部113は、A/D変換部112によって包絡線信号がADコンバートされる1つの区間を、サンプリング数「N」によってサンプリングしている。なお、ここでは、A/D変換部112によって包絡線信号がADコンバートされる1つの区間は、1周期であるものとする。かかる場合に、補正データ生成部113は、サンプリング位置「1」において、基準値Sdに対する包絡線信号Edの値の割合として、「0.8」を算出する。続いて、補正データ生成部113は、割合「0.8」の逆数である「1.25」を算出する。算出した「1.25」がサンプリング位置「1」における補正データに該当する。
【0034】
また、例えば、補正データ生成部113は、サンプリング位置「m」において、基準値Sdに対する包絡線信号Edの値の割合として、「1.6」を算出する。続いて、補正データ生成部113は、割合「1.6」の逆数である「0.625」を算出する。算出した「0.625」がサンプリング位置「m」における補正データに該当する。
【0035】
補正データ生成部113は、このようにして生成した補正データを、記憶部120に記憶させる。このとき、補正データ生成部113は、サンプリング位置に対応付けて、生成した補正データを記憶部120に記憶させる。
【0036】
補正部114および算出部115における処理については、距離計測処理や速度計測処理に関係するため、図2−2に示したレーダ装置200の構成を説明する際に詳細に説明する。
【0037】
なお、上述したレーダ装置100において、包絡線検波部20による包絡線検波処理は、制御部110の所定の処理部が行ってもよい。具体的には、制御部110が、制御コンピュータによってデジタルフィルタ機能を実現するデジタルフィルタ部を有し、デジタルフィルタ部が、ビート信号を濾波して包絡線検波処理を行う。かかる場合、レーダ装置100は、包絡線検波部20を備えることなく、包絡線検波処理を行うことが可能になる。
【0038】
次に、図2−2を用いて、距離計測処理や速度計測処理を行うレーダ装置200の構成について説明する。なお、以下では、図2−1に示した構成部位と同様の機能を有する部位には同一符号を付すこととして、その詳細な説明を省略する。上述したように、レーダ装置200は、出荷時におけるレーダ装置の状態を示しており、レーダ装置100の導波管10が外されて、T−ant22およびR−ant23が装着される。
【0039】
図2−2に示したレーダ装置200において、AMP24は、VCO12から入力されたFM信号を増幅し、増幅したFM信号をT−ant22へ出力する。T−ant22は、AMP24から入力された信号(送信波)を、対象物に対して送信する。R−ant23は、T−ant22によって送信された送信波に対する反射波を対象物から受信し、かかる受信波をAMP25へ出力する。AMP25は、矩形波OSC14から入力された矩形波に基づいて、R−ant23から入力された受信波を増幅およびASK変調をして、増幅およびASK変調後の信号をMix16へ出力する。
【0040】
続いて、距離計測処理や速度計測処理を行うレーダ装置200が有する制御部110について説明する。A/D変換部112は、モジュレーション信号に同期して、MPX21から入力されたビート信号をADコンバートする。そして、A/D変換部112は、ADコンバート後のビート信号を補正部114へ出力する。
【0041】
補正部114は、A/D変換部112からADコンバート後のビート信号を入力された場合に、記憶部120に記憶されている補正データに基づいて、かかるビート信号に含まれるFM−AM雑音を除去する。
【0042】
具体的には、補正部114は、モジュレーション信号に同期することにより、A/D変換部112から入力されたビート信号のうち、補正データ生成部113によって補正データが生成されたサンプリング位置に対応する位置を特定する。続いて、補正部114は、記憶部120から、特定したサンプリング位置に対応する補正データを取得する。そして、補正部114は、特定したサンプリング位置に対応するビート信号の振幅に、取得した補正データを乗算する。
【0043】
図1および図3に示した例を用いて説明する。例えば、A/D変換部112から入力されたビート信号に対して、サンプリング位置「1」に対応するビート信号の振幅を補正する場合、補正部114は、記憶部120からサンプリング位置「1」に対応付けて記憶されている補正データ「1.25」を取得する。続いて、補正部114は、サンプリング位置「1」に対応するビート信号の振幅(図1上段における「1」に対応する振幅)に、補正データ「1.25」を乗算する。これにより、補正部114は、図1下段に示すように、サンプリング位置「1」に対応するビート信号の振幅を補正することができる。
【0044】
また、例えば、A/D変換部112から入力されたビート信号に対して、サンプリング位置「m」に対応するビート信号の振幅を補正する場合、補正部114は、記憶部120からサンプリング位置「m」に対応付けて記憶されている補正データ「0.625」を取得する。続いて、補正部114は、サンプリング位置「m」に対応するビート信号の振幅(図1上段における「m」に対応する振幅)に、補正データ「0.625」を乗算する。これにより、補正部114は、図1下段に示すように、サンプリング位置「m」に対応するビート信号の振幅を補正することができる。
【0045】
このようにして、補正部114は、A/D変換部112から入力されたビート信号の振幅を補正する。これにより、補正部114は、例えば、図1に示したFM−AM雑音が含まれるビート信号B1を入力された場合であっても、ビート信号B1を、図1に示したビート信号B2のように、振幅が一定であるビート信号に補正することができる。
【0046】
算出部115は、補正部114によって補正されたビート信号に基づいて、距離計測処理や速度計測処理を行う。以下に、算出部115による距離計測処理および速度計測処理について、レーダ装置200と対象物Tとの相対速度が0である場合と、レーダ装置200と対象物Tとの相対速度が0でない場合とに分けて説明する。
【0047】
図4−1〜図4−3を用いて、レーダ装置200と対象物Tとの相対速度が0である場合における算出部115による距離計測処理の原理を説明する。なお、ここでは、対象物Tは、レーダ装置200から距離Rの場所に位置するものとする。図4−1は、レーダ装置200から送信された送信波とかかる送信波に対応する受信波の一例を示す図である。なお、図4−1において、横軸は時間を示し、縦軸は周波数を示す。図4−1に示すように、受信波は、T−ant22が送信波を送信した後、距離Rを往復する時間分の遅れが発生する。レーダ装置200は、かかる時間遅れに基づいてビート信号を生成する。図4−2は、図4−1に示した送信波と受信波とに基づいて生成されたビート信号の周波数(ビート周波数)の一例を示す図である。なお、図4−2において、横軸は時間を示し、縦軸はビート周波数を示す。
【0048】
算出部115は、図4−2に示したようなビート周波数を持つビート信号に対して、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier transform)処理を行う。具体的には、算出部115は、ビート周波数を、三角波(送信波)の周波数上昇区間と、三角波(送信波)の周波数下降区間とに分けて、各ビート信号に対して高速フーリエ変換処理を行う。
【0049】
図4−3は、図4−2に示したビート周波数を持つビート信号に対する高速フーリエ変換の結果を示す図である。なお、図4−3において、横軸は周波数を示し、縦軸は電力を示す。図4−3は、ビート周波数の上昇区間における高速フーリエ変換の結果と、下降区間における高速フーリエ変換の結果とを示している。すなわち、レーダ装置200と対象物Tとの相対速度が0である場合、ビート周波数の上昇区間における高速フーリエ変換の結果と、下降区間における高速フーリエ変換の結果とは等しくなる。
【0050】
図4−3に示すように、周波数がfr´である場合に、電力はピークになる。周波数fr´は、対象物Tまでの距離Rに比例した周波数を示す。算出部115は、かかる周波数fr´を用いて、対象物Tまでの距離Rを計測する。具体的には、算出部115は、以下の式(1)により、対象物Tまでの距離Rを計測することができる。
【0051】
【数1】
【0052】
ここで、上記式(1)中の「c」は、光速(電波の速度)を示し、Δfは、三角波の振幅(変調周波数幅)を示し、fmは、三角波の繰り返し周波数(変調幅)を示す。
【0053】
続いて、図5−1〜図5−4を用いて、レーダ装置200と対象物との相対速度が0でない場合における算出部115による距離計測処理および速度計測処理の原理を説明する。なお、ここでは、対象物Tは、レーダ装置200から距離Rの場所に位置し、速度vで移動しているものとし、レーダ装置200は、移動していないものとする。
【0054】
図5−1は、レーダ装置200から送信された送信波とかかる送信波に対応する受信波の一例を示す図である。図5−1に示すように、受信波の周波数は、送信波の周波数と比較して、対象物Tが速度vにより移動しているので、かかる速度に比例した周波数(ドップラ周波数)fd分のシフトがある。図5−2は、図5−1に示した送信波と受信波とに基づいて生成されたビート信号の周波数(ビート周波数)の一例を示す図である。図5−2に示すように、ビート信号の周波数をfrとすると、上昇区間におけるビート信号の周波数fupは、ドップラ周波数成分が減算された「|fr−fd|」となり、下降区間におけるビート信号の周波数fdownは、ドップラ周波数成分が加算された「|fr+fd|」となる。
【0055】
算出部115は、図5−2に示したようなビート周波数を持つビート信号を、三角波(送信波)の周波数上昇区間と、三角波(送信波)の周波数下降区間とに分けて、各ビート信号に対して高速フーリエ変換処理を行う。
【0056】
図5−3は、図5−2に示したビート周波数を持つビート信号の上昇区間における高速フーリエ変換の結果を示す図である。図5−3に示すように、周波数がfup´である場合に、電力はピークになる。図5−4は、図5−2に示したビート周波数を持つビート信号の下降区間における高速フーリエ変換の結果を示す図である。図5−4に示すように、周波数がfdown´である場合に、電力はピークになる。算出部115は、かかる周波数fup´およびfdown´を用いて、対象物Tまでの距離Rおよび対象物Tの移動速度vを計測する。具体的には、算出部115は、以下の式(2)により、対象物Tまでの距離Rを計測することができ、以下の式(3)により、対象物Tの移動速度vを計測することができる。
【0057】
【数2】
【0058】
【数3】
【0059】
ここで、上記式(2)、(3)中の「c」は、光速(電波の速度)を示し、Δfは、三角波の振幅(変調周波数幅)を示し、fmは、三角波の繰り返し周波数(変調幅)を示し、f0は、変調中心周波数を示す。
【0060】
このように、算出部115は、補正部114によって補正されたビート信号に基づいて、距離計測処理および速度計測処理を行うので、近距離に位置する対象物Tまでの距離や、対象物Tの移動速度を計測することができる。
【0061】
なお、上記では、レーダ装置200と対象物Tとの相対速度が0である場合と、レーダ装置200と対象物Tとの相対速度が0でない場合とに分けて、距離計測処理および速度計測処理の原理を説明した。しかし、実際には、レーダ装置200は、対象物Tとの相対速度が0であるか否かを予め検知していないことが多いため、相対速度が0でないものとして、上記式(2)および(3)を用いて、距離計測処理および速度計測処理を行う。すなわち、レーダ装置200と対象物Tとの相対速度が0であるか否かは、上記式(3)を用いた速度計測処理の結果により判明する。
【0062】
次に、レーダ装置100による補正データ生成処理の手順について説明する。図6は、レーダ装置100による補正データ生成処理手順を示すフローチャートである。図6に示すように、レーダ装置100の送信指示部111は、所定のタイミングになった場合に、三角波発生器11に対して、所定の振幅や所定の繰り返し周波数の三角波を送信する旨の指示を行う(ステップS101)。
【0063】
かかる指示を受け付けた三角波発生器11によって三角波がVCO12へ出力された後、レーダ装置100の内部回路(Mix16〜LPF19)は、ビート信号を生成する(ステップS102)。続いて、包絡線検波部20は、生成されたビート信号の包絡線を検波する(ステップS103)。続いて、制御部110のA/D変換部112は、モジュレーション信号に同期して、包絡線検波部20によって検波された包絡線信号とをADコンバートする(ステップS104)。
【0064】
続いて、補正データ生成部113は、A/D変換部112によってADコンバートされた包絡線信号の基準値を決定する(ステップS105)。続いて、補正データ生成部113は、包絡線信号の値を所定のサンプリング間隔で測定し、サンプリング位置ごとに、基準値に対する包絡線信号の値の割合を算出する(ステップS106)。続いて、補正データ生成部113は、算出した割合の逆数を求めることにより、各サンプリング位置における補正データを生成する(ステップS107)。そして、補正データ生成部113は、生成した補正データを、サンプリング位置に対応付けて記憶部120に記憶させる(ステップS108)。
【0065】
次に、レーダ装置200による距離計測処理および速度計測処理の手順について説明する。図7は、レーダ装置200による距離計測処理手順および速度計測処理手順を示すフローチャートである。図7に示すように、レーダ装置200の送信指示部111は、所定のタイミングになった場合に、三角波発生器11に対して、所定の振幅や所定の繰り返し周波数の三角波を送信する旨の指示を行う(ステップS201)。
【0066】
かかる指示を受け付けた三角波発生器11によって三角波がVCO12へ出力された後、T−ant22は、送信波を、対象物に対して送信する(ステップS202)。続いて、R−ant23は、対象物から、T−ant22によって送信された送信波に対する反射波を受信する(ステップS203)。続いて、レーダ装置100の内部回路(Mix16〜LPF19)は、送信波および受信波に基づいて、ビート信号を生成する(ステップS204)。
【0067】
続いて、制御部110のA/D変換部112は、モジュレーション信号に同期して、内部回路によって生成されたビート信号をADコンバートする(ステップS205)。続いて、補正部114は、A/D変換部112によってADコンバートされたビート信号について、補正データ生成部113によって補正データが生成されたサンプリング位置を特定する(ステップS206)。続いて、補正部114は、特定したサンプリング位置に対応する補正データを記憶部120から取得する(ステップS207)。続いて、補正部114は、特定したサンプリング位置に対応するビート信号の振幅に、取得した補正データを乗算する(ステップS208)。
【0068】
続いて、算出部115は、三角波(送信波)の周波数上昇区間におけるビート信号と、三角波(送信波)の周波数下降区間におけるビート信号とに分けて、高速フーリエ変換処理を行う(ステップS209)。続いて、算出部115は、ビート周波数の上昇区間における高速フーリエ変換の結果に基づいて、電力がピークになる周波数(図5−3に示した例では「fup´」)を検出する(ステップS210)。また、算出部115は、ビート周波数の下降区間における高速フーリエ変換の結果に基づいて、電力がピークになる周波数(図5−4に示した例では「fdown´」)を検出する(ステップS211)。続いて、算出部115は、検出した周波数fup´およびfdown´を用いて対象物までの距離および対象物の移動速度を計測する(ステップS212)。具体的には、算出部115は、上記式(2)および(3)により対象物までの距離および対象物の移動速度を計測する。
【0069】
上述してきたように、実施例1に係るレーダ装置は、製造時において、内部回路で生成したビート信号の包絡線を検波し、所定の基準値に対する包絡線の値の割合を算出し、算出した割合の逆数を求めることにより、補正データを生成する。これにより、実施例1に係るレーダ装置は、ビート信号を補正するための補正データを生成することができる。
【0070】
また、実施例1に係るレーダ装置は、出荷後の動作時において、補正データに基づいてビート信号を補正するので、ビート信号のFM−AM雑音を除去することができる。また、実施例1に係るレーダ装置は、FM−AM雑音を除去したビート信号に基づいて、距離計測処理および速度計測処理を行うので、近距離に位置する対象物までの距離や近距離に位置する対象物の移動速度を計測することができる。
【0071】
例えば、実施例1に係るレーダ装置は、自動車に装着されることにより、他の車両(自動車や自転車)や歩行者等までの距離や、相対速度を計測することができる。また、例えば、実施例1に係るレーダ装置は、信号機や道路標識等に装着されることにより、車両や歩行者等までの距離や、車両や歩行者等の移動速度を計測することができる。図8は、実施例1に係るレーダ装置が信号機や道路標識に装着される例を示す図である。図8では、実施例1に係るレーダ装置200に対応するレーダ装置200aおよび200bが信号機や道路標識等に装着されている例を示している。
【実施例2】
【0072】
ところで、上記実施例1では、本願に開示するレーダ装置、レーダ装置制御方法、レーダ装置制御プログラムおよびレーダ制御装置について説明したが、本願に開示するレーダ装置等は、上述した実施例1以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよい。そこで、実施例2では、本願に開示するレーダ装置等に含まれる他の実施例を説明する。
【0073】
[補正データ1]
上記実施例1では、三角波発生器11によって出力される三角波の状態が変化しないことを前提として、レーダ装置100による補正データ生成処理について説明した。しかし、レーダ装置は、異なる状態の三角波を用いる場合がある。そこで、レーダ装置100は、三角波の状態ごとに異なる補正データを生成して、記憶部120に記憶させてもよい。なお、ここでいう「三角波の状態」とは、三角波の振幅および繰り返し周波数を示す。図4−1および図5−1に示した例では、Δfが三角波の振幅を示し、fmが三角波の繰り返し周波数を示している。以下に、三角波の状態ごとに補正データを生成するレーダ装置100による処理について具体的に説明する。
【0074】
レーダ装置100の送信指示部111は、三角波発生器11に対して所定の振幅および所定の繰り返し周波数の三角波を出力するように指示する。そして、補正データ生成部113は、かかる三角波が出力された状態において、上述した補正データ生成処理を行う。続いて、送信指示部111は、三角波発生器11に対して、前述した振幅や繰り返し周波数と異なる振幅や繰り返し周波数の三角波を出力するように指示する。そして、補正データ生成部113は、かかる三角波が出力されている状態において、上述した補正データ生成処理を行う。このようにして、レーダ装置100は、出荷後に三角波発生器11が出力する可能性のある三角波の振幅と繰り返し周波数との組合せごとに、補正データを生成し、生成した補正データを、三角波の振幅と繰り返し周波数との組合せに対応付けて記憶部120に記憶させる。そして、レーダ装置200の補正部114は、三角波発生器11によって出力される三角波の振幅と繰り返し周波数との組合せに対応する補正データに基づいて、ビート信号を補正する。
【0075】
このように、レーダ装置100が、三角波の状態変化に応じて異なる補正データを生成することにより、レーダ装置200は、三角波の状態に応じて適切な補正データを用いてビート信号を補正することができる。これにより、レーダ装置200は、振幅や繰り返し周波数が異なる三角波を用いる場合であっても、近距離に位置する対象物までの距離や近距離に位置する対象物の移動速度を計測することができる。
【0076】
[補正データ2]
また、上記実施例1では、補正データ生成部113が、複数のサンプリング位置に対応付けて、補正データを記憶部120に記憶させる例を示したが、補正データ生成部113は、所定のサンプリング位置に対応する補正データを1つのみ記憶部120に記憶させてもよい。具体的には、補正データ生成部113は、上述したように、サンプリング位置ごとに補正データを算出する。続いて、補正データ生成部113は、複数の補正データのうち、所定の補正データを基準値(以下、「補正データ基準値」という)に決定する。続いて、補正データ生成部113は、サンプリング位置ごとに、補正データ基準値に対する補正データの割合(以下、「補正データ係数」という)を算出する。そして、補正データ生成部113は、補正データ基準値を記憶部120に記憶させるとともに、サンプリング位置ごとに、補正データ係数を記憶部120に記憶させる。
【0077】
例えば、図3に示した例において、補正データ生成部113は、サンプリング位置「1」に対応する補正データ「1.25」を補正データ基準値に決定したものとする。そして、補正データ生成部113は、サンプリング位置「m」に対応する補正データ「0.625」の補正データ係数を算出する場合、補正データ基準値「1.25」に対する補正データ「0.625」の割合「0.5」を算出する。同様にして、補正データ生成部113は、サンプリング位置ごとに、補正データ基準値「1.25」に対する補正データの割合を算出する。そして、補正データ生成部113は、補正データ基準値「1.25」を記憶部120に記憶させるとともに、サンプリング位置に対応付けて補正データ係数を記憶部120に記憶させる。例えば、補正データ生成部113は、サンプリング位置「m」に対応付けて補正データ係数「0.5」を記憶部120に記憶させる。
【0078】
上述したように、補正データ基準値と補正データ係数とを記憶部120に記憶させる場合、補正部114は、記憶部120に記憶されている補正データ基準値に、サンプリング位置に対応する係数を乗算して補正データを算出した後に、ビート信号を補正する。例えば、補正部114は、サンプリング位置「m」におけるビート信号の振幅を補正する場合、記憶部120から、補正データ基準値「1.25」と、サンプリング位置「m」に対応付けて記憶されている補正データ係数「0.5」を取得する。続いて、補正部114は、補正データ基準値「1.25」に補正データ係数「0.5」を乗算することにより、補正データ「0.625」を算出する。そして、補正部114は、算出した補正データ「0.625」を用いて、サンプリング位置「m」におけるビート信号の振幅を補正する。
【0079】
[システム構成1]
また、上記実施例1では、ビート信号を、中間周波数帯のビート信号に変換した後、低周波数帯のビート信号に変換するレーダ装置の構成例を示した。しかし、上述してきた補正データ生成処理や、距離計測処理、速度計測処理を実現するレーダ装置は、上述したレーダ装置100および200に限られない。例えば、高周波(RF:Radio frequency)帯から低周波帯のビート信号に直接変換するレーダ装置であっても、上述してきた補正データ生成処理等を実現することができる。
【0080】
図9は、高周波帯から低周波帯のビート信号に直接変換するレーダ装置300の構成を示す図である。図9に示すように、レーダ装置300は、図2−2に示したレーダ装置200と比較して、Mix16、BPF17、矩形波OSC14およびMix18の代わりに、Mix26を有する。Mix26は、AMP25から入力された変調信号とVCO12から入力された変調信号とを混合して、低周波帯のビート信号を生成し、生成したビート信号をLPF19へ出力する。
【0081】
[システム構成2]
また、上記実施例1では、T−ant22とR−ant23とを有するレーダ装置200の構成例を示したが、本願に開示するレーダ装置は、送信用アンテナと受信用アンテナが、1つの送受信アンテナによって実現されてもよい。
【0082】
図10−1は、送受信アンテナを有するレーダ装置400の構成を示す図である。図10−1に示すように、レーダ装置400は、図2−2に示したレーダ装置200と比較して、T−ant22とR−ant23との代わりに、ant41を有し、矩形波OSC14の代わりに、矩形波OSC42を有する。ant41は、送信用アンテナと受信用アンテナを共用する送受信アンテナである。矩形波OSC42は、図2−2に示した矩形波OSC14と比較して、AMP24に接続される。これは、ant41が、矩形波OSC42から出力される矩形波に基づいて、送信用アンテナまたは受信用アンテナのいずれによって動作するかをスイッチングするためである。
【0083】
なお、図10−1に示したレーダ装置400のように、1個の送受信アンテナを有するレーダ装置が補正データ生成処理を行う場合、レーダ装置には、送信用アンテナと、受信用アンテナとがレーダ装置に接続される。図10−2を用いて具体的に説明する。図10−2は、送受信アンテナを有するレーダ装置500による補正データ生成処理時の構成を示す図である。図10−2に示すように、レーダ装置500は、AMP24にT−ant51が接続され、AMP25にR−ant52が接続される。また、T−ant51とR−ant52とは、導波管50によって接続される。このように、1個の送受信アンテナを有するレーダ装置であっても、T−ant51とR−ant52とが接続されることによって、補正データ生成処理を行うことができる。
【0084】
[検出プログラムを実行するコンピュータ]
また、図2−1および図2−2に示したレーダ装置100および200の構成は、要旨を逸脱しない範囲で種々に変更することができる。例えば、レーダ装置100および200の制御部110の機能をソフトウェアとして実装し、これをコンピュータで実行することにより、レーダ装置100および200と同等の機能を実現することもできる。以下に、制御部110の機能をソフトウェアとして実装したレーダ装置制御プログラム1031を実行するコンピュータの一例を示す。
【0085】
図11は、レーダ装置制御プログラム1031を実行するコンピュータ1000の構成を示す図である。図11に示すように、コンピュータ1000は、各種演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)1010と、各種情報を一時記憶するRAM(Random Access Memory)1020と、ハードディスク装置1030とをバス1040で接続して構成される。
【0086】
そして、ハードディスク装置1030には、図2−1および図2−2に示した制御部110と同様の機能を有するレーダ装置制御プログラム1031と、図2−1および図2−2に示した記憶部120に記憶される各種データに対応する補正データ1032とが記憶される。なお、補正データ1032を、適宜分散させ、ネットワークを介して接続された他のコンピュータに記憶させておくこともできる。
【0087】
そして、CPU1010がレーダ装置制御プログラム1031をハードディスク装置1030から読み出してRAM1020に展開することにより、レーダ装置制御プログラム1031は、レーダ装置制御プロセス1021として機能するようになる。そして、レーダ装置制御プロセス1021は、補正データ1032から読み出した情報等を適宜RAM1020上の自身に割り当てられた領域に展開し、この展開したデータ等に基づいて各種データ処理を実行する。
【0088】
なお、上記のレーダ装置制御プログラム1031は、必ずしもハードディスク装置1030に格納されている必要はなく、CD−ROM等の記憶媒体に記憶されたこのプログラムを、コンピュータ1000が読み出して実行するようにしてもよい。また、公衆回線、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等を介してコンピュータ1000に接続される他のコンピュータ(またはサーバ)等にこのプログラムを記憶させておき、コンピュータ1000がこれらからプログラムを読み出して実行するようにしてもよい。
【0089】
以上の各実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0090】
(付記1)対象物に送信された送信波と前記送信波に対する反射波とに基づいて生成されるビート信号の振幅を補正するための補正データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されている補正データに基づいて、前記ビート信号の振幅を補正する補正部と、
前記補正部によって補正されたビート信号に基づいて、前記対象物までの距離または前記対象物の移動速度を算出する算出部と
を備えたことを特徴とするレーダ装置。
【0091】
(付記2)前記ビート信号の包絡線を検波する包絡線検波部と、
前記包絡線検波部によって検波された包絡線に基づいて、前記補正データを生成する補正データ生成部とをさらに備え、
前記記憶部は、前記補正データ生成部によって生成された補正データを記憶することを特徴とする付記1に記載のレーダ装置。
【0092】
(付記3)前記補正データ生成部は、前記送信波の変調を制御する制御信号の振幅と繰り返し周波数との組合せごとに補正データを生成し、
前記記憶部は、前記補正データ生成部によって生成された補正データを、制御信号の振幅と繰り返し周波数との組合せに対応づけて記憶し、
前記補正部は、前記記憶部から、前記送信波の変調を制御した制御信号の振幅と繰り返し周波数との組合せに対応する補正データを取得し、取得した補正データに基づいて、前記ビート信号の振幅を補正することを特徴とする付記2に記載のレーダ装置。
【0093】
(付記4)対象物に送信された送信波と前記送信波に対する反射波とに基づいて生成されるビート信号の振幅を補正するための補正データを記憶した記憶部に記憶されている補正データに基づいて、前記ビート信号の振幅を補正する補正工程と、
前記補正工程によって補正されたビート信号に基づいて、前記対象物までの距離または前記対象物の移動速度を算出する算出工程と
を含んだことを特徴とするレーダ装置制御方法。
【0094】
(付記5)前記ビート信号の包絡線を検波する包絡線検波工程と、
前記包絡線検波工程によって検波された包絡線に基づいて、前記補正データを生成する補正データ生成工程とをさらに含み、
前記記憶部は、前記補正データ生成工程によって生成された補正データを記憶することを特徴とする付記4に記載のレーダ装置制御方法。
【0095】
(付記6)前記補正データ生成工程は、前記送信波の変調を制御する制御信号の振幅と繰り返し周波数との組合せごとに補正データを生成し、
前記記憶部は、前記補正データ生成部によって生成された補正データを、制御信号の振幅と繰り返し周波数との組合せに対応づけて記憶し、
前記補正工程は、前記記憶部から、前記送信波の変調を制御した制御信号の振幅と繰り返し周波数との組合せに対応する補正データを取得し、取得した補正データに基づいて、前記ビート信号の振幅を補正することを特徴とする付記5に記載のレーダ装置制御方法。
【0096】
(付記7)対象物に送信された送信波と前記送信波に対する反射波とに基づいて生成されるビート信号の振幅を補正するための補正データを記憶した記憶部に記憶されている補正データに基づいて、前記ビート信号の振幅を補正する補正手順と、
前記補正手順によって補正されたビート信号に基づいて、前記対象物までの距離または前記対象物の移動速度を算出する算出手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とするレーダ装置制御プログラム。
【0097】
(付記8)前記ビート信号の包絡線を検波する包絡線検波手順と、
前記包絡線検波手順によって検波された包絡線に基づいて、前記補正データを生成する補正データ生成手順とをさらにコンピュータに実行させ、
前記記憶部は、前記補正データ生成手順によって生成された補正データを記憶することを特徴とする付記7に記載のレーダ装置制御プログラム。
【0098】
(付記9)前記補正データ生成手順は、前記送信波の変調を制御する制御信号の振幅と繰り返し周波数との組合せごとに補正データを生成し、
前記記憶部は、前記補正データ生成部によって生成された補正データを、制御信号の振幅と繰り返し周波数との組合せに対応づけて記憶し、
前記補正手順は、前記記憶部から、前記送信波の変調を制御した制御信号の振幅と繰り返し周波数との組合せに対応する補正データを取得し、取得した補正データに基づいて、前記ビート信号の振幅を補正することを特徴とする付記8に記載のレーダ装置制御プログラム。
【0099】
(付記10)対象物に送信された送信波と前記送信波に対する反射波とに基づいて生成されるビート信号の振幅を補正するための補正データを記憶した記憶部に記憶されている補正データに基づいて、前記ビート信号の振幅を補正する補正部と、
前記補正部によって補正されたビート信号に基づいて、前記対象物までの距離または前記対象物の移動速度を算出する算出部と
を備えたことを特徴とするレーダ制御装置。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】実施例1に係るレーダ装置による距離測定処理等の概要を説明するための図である。
【図2−1】補正データ生成処理を行うレーダ装置の構成を示す図である。
【図2−2】距離計測処理や速度計測処理を行うレーダ装置の構成を示す図である。
【図3】補正データ生成部による補正データ生成処理を説明するための図である。
【図4−1】レーダ装置から送信された送信波とかかる送信波に対応する受信波の一例を示す図である。
【図4−2】図4−1に示した送信波と受信波とに基づいて生成されたビート信号の周波数の一例を示す図である。
【図4−3】図4−2に示したビート周波数を持つビート信号に対する高速フーリエ変換の結果を示す図である。
【図5−1】レーダ装置から送信された送信波とかかる送信波に対応する受信波の一例を示す図である。
【図5−2】図5−1に示した送信波と受信波とに基づいて生成されたビート信号の周波数の一例を示す図である。
【図5−3】図5−2に示したビート周波数を持つビート信号の上昇区間における高速フーリエ変換の結果を示す図である。
【図5−4】図5−2に示したビート周波数を持つビート信号の下降区間における高速フーリエ変換の結果を示す図である。
【図6】レーダ装置による補正データ生成処理手順を示すフローチャートである。
【図7】レーダ装置による距離計測処理手順および速度計測処理手順を示すフローチャートである。
【図8】実施例1に係るレーダ装置が信号機や道路標識に装着される例を示す図である。
【図9】高周波帯から低周波帯のビート信号に直接変換するレーダ装置の構成を示す図である。
【図10−1】送受信アンテナを有するレーダ装置の構成を示す図である。
【図10−2】送受信アンテナを有するレーダ装置による補正データ生成処理時の構成を示す図である。
【図11】レーダ装置制御プログラムを実行するコンピュータの構成を示す図である。
【図12】従来技術を説明するための図である。
【図13−1】従来技術を説明するための図である。
【図13−2】従来技術を説明するための図である。
【図14】従来技術を説明するための図である。
【符号の説明】
【0101】
10 導波管
11 三角波発生器
12 VCO
13、15、24、25 AMP
14 矩形波OSC
16、18、26 Mix
17 BPF
19 LPF
20 包絡線検波部
21 MPX
22 T−ant
23 R−ant
100、200、200a、200b、300 レーダ装置
110 制御部
111 送信指示部
112 A/D変換部
113 補正データ生成部
114 補正部
115 算出部
120 記憶部
1000 コンピュータ
1010 CPU
1020 RAM
1021 レーダ装置制御プロセス
1030 ハードディスク装置
1031 レーダ装置制御プログラム
1032 補正データ
1040 バス
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置、レーダ装置制御方法、レーダ装置制御プログラムおよびレーダ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な分野において、所定の場所に位置する対象物までの距離や、対象物の移動速度を計測するレーダ装置が用いられている。かかるレーダ装置は、対象物に対して電波(送信波)を送信し、かかる送信波と、送信波に対する反射波(以下、レーダ装置が受信する反射波を「受信波」という)との時間差に基づいてビート信号を生成する。そして、レーダ装置は、生成したビート信号に基づいて、対象物までの距離や対象物の移動速度を計測する(図12参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−174548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のレーダ装置には、近距離に位置する対象物までの距離や、近距離に位置する対象物の移動速度を計測することができないという問題があった。かかる問題について、図13−1および図13−2を用いて具体的に説明する。レーダ装置が対象物までの距離等を計測する場合、ビート信号は、図13−1に示すように振幅が一定であり、かつ、周波数が対象物までの距離に比例することが望ましい。しかし、実際には、図13−2に示すように、ビート信号の振幅は、一定にならない。
【0005】
このようなビート信号の振幅が一定にならない原因はいくつか考えられる。例えば、レーダ装置内部のVCO(voltage controlled oscillator:電圧制御発振器)が原因の1つとして考えられる。具体的には、VCOは、所定の制御信号発生器から出力される制御信号(本明細書では、「変調信号」または「モジュレーション信号」と呼ぶこともある)に基づいて周波数変調した送信波を生成する。しかし、VCOは、制御信号に対して周波数特性を有しており、周波数変調をしているにも関わらず、制御信号に同期して振幅についても変動させてしまう場合がある。上述したように、ビート信号は、VCOから出力される信号である送信波と、受信波とに基づいて生成されるため、VCOから出力される信号の振幅が一定でないと、ビート信号の振幅も一定にならない。
【0006】
また、例えば、レーダ装置内部のビート信号を生成するMix(Mixer:ミキサ)が原因の1つとして考えられる。具体的には、Mixは、VCOから出力される信号である送信波と、受信波とを混合することにより、ビート信号を生成する。しかし、Mixは、上記VCOと同様に、制御信号に対して周波数特性を有しており、VCOから出力される信号の振幅が一定であっても、制御信号に同期して振幅を変動させたビート信号を生成してしまう場合がある。なお、上述した2つの原因は、同時に発生することもある。
【0007】
このようなことから、ビート信号の振幅は一定にならず、図13−2に示した波形のようになる。本明細書では、このようなビート信号の振幅変動を「FM−AM雑音」と呼ぶこととする。ここで、図14に、FM−AM雑音が含まれるビート信号を周波数軸で書き表したものを示す。図14に示すように、FM−AM雑音は、VCOの制御信号の繰返し周波数およびその高調波周波数に現れる。したがって、ビート信号に含まれるFM−AM雑音は、近距離に位置する対象物までの距離等を計測する際に用いられる低い周波数帯に出現する。従来のレーダ装置では、このようなFM−AM雑音を除去するために、BPF(Band Pass Filter:バンドパスフィルタ)等を用いて低い周波数帯を一様に除去していた。このため、従来のレーダ装置では、近距離に位置する対象物までの距離等を計測することができなかった。
【0008】
なお、近年では、ビート信号の非直線性を補正する技術が提案されているが(特許文献1参照)、かかる技術を用いたとしても、ビート信号の振幅を一定にすることはできないので、上述した問題を解決することはできなかった。
【0009】
開示の技術は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、近距離に位置する対象物までの距離や近距離に位置する対象物の移動速度を計測することができるレーダ装置、レーダ装置制御方法、レーダ装置制御プログラムおよびレーダ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本願に開示するレーダ装置は、対象物に送信された送信波と前記送信波に対する反射波とに基づいて生成されるビート信号の振幅を補正するための補正データを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶されている補正データに基づいて、前記ビート信号の振幅を補正する補正部と、前記補正部によって補正されたビート信号に基づいて、前記対象物までの距離または前記対象物の移動速度を算出する算出部とを備えたことを要件とする。
【0011】
なお、本願に開示するレーダ装置の構成要素、表現または構成要素の任意の組合せを、方法、装置、システム、コンピュータプログラム、記録媒体、データ構造などに適用したものも、他の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本願に開示したレーダ装置によれば、近距離に位置する対象物までの距離や近距離に位置する対象物の移動速度を計測することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本願に開示するレーダ装置、レーダ装置制御方法、レーダ装置制御プログラムおよびレーダ制御装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により本願に開示するレーダ装置、レーダ装置制御方法、レーダ装置制御プログラムおよびレーダ制御装置が限定されるものではない。
【実施例1】
【0014】
まず、実施例1に係るレーダ装置の概要について説明する。図1は、実施例1に係るレーダ装置による距離測定処理等の概要を説明するための図である。図1に示した2つのビート信号のうち、上段に示したビート信号B1は、レーダ装置によって生成されるビート信号を示している。具体的には、レーダ装置は、対象物に対して送信する送信波と、かかる送信波に対する反射波(受信波)とに基づいてビート信号B1を生成する。図1に示すように、ビート信号B1は、FM−AM雑音が含まれているため、振幅が一定になっていない。
【0015】
実施例1に係るレーダ装置は、このようなビート信号B1の振幅を補正して、図1下段に示したビート信号B2を生成する。具体的には、レーダ装置は、ビート信号B1の包絡線Eを検波し、かかる包絡線Eに基づいてビート信号B1の振幅を補正するための補正データを生成する。続いて、レーダ装置は、生成した補正データを所定の記憶部に記憶させておく。なお、かかる補正データ生成処理は、基本的にレーダ装置の製造時に行われる。
【0016】
そして、レーダ装置は、対象物までの距離や対象物の移動速度等を計測する場合に、所定の記憶部に記憶しておいた補正データに基づいて、ビート信号B1をビート信号B2に補正する。続いて、レーダ装置は、振幅が一定であるビート信号B2を用いて、対象物までの距離を測定する処理(距離測定処理)や、対象物の移動速度を計測する処理(速度計測処理)を行う。すなわち、レーダ装置は、FM−AM雑音が含まれていないビート信号B2を用いて距離測定処理や速度計測処理を行うので、近距離に位置する対象物までの距離等を計測することができる。
【0017】
次に、実施例1に係るレーダ装置の構成について説明する。以下では、補正データ生成処理を行うレーダ装置100の構成と、補正データを用いて距離計測処理や速度計測処理を行うレーダ装置200の構成とを分けて説明する。図2−1は、補正データ生成処理を行うレーダ装置100の構成を示す図である。図2−2は、距離計測処理や速度計測処理を行うレーダ装置200の構成を示す図である。
【0018】
図2−1に示したレーダ装置100は、製造時におけるレーダ装置の状態を示している。かかるレーダ装置100は、図2−2に示したレーダ装置200と比較して、対象物に対して所定の電波を送信するT−ant(送信アンテナ)22と、対象物から反射波を受信するR−ant(受信アンテナ)23との代わりに、導波管10を有する。具体的には、製造時におけるレーダ装置100は、T−ant22およびR−ant23が装着されず、導波管10によってAMP13とAMP15とが接続される。これにより、レーダ装置100は、対象物に対して実際に送信波を送信することなく補正データ生成処理を行うことができる。
【0019】
また、図2−1に示すように、レーダ装置100は、三角波発生器11と、VCO12と、AMP(Amplifier:増幅器)13と、矩形波OSC(矩形波Oscillator:矩形波発振器)14と、AMP15と、Mix16と、BPF17と、Mix18と、LPF(Low Pass Filter:ローパスフィルタ)19と、包絡線検波部20と、MPX(Multiplexer:マルチプレクサ)21と、制御部110と、記憶部120とを有する。
【0020】
三角波発生器11は、後述する送信指示部111の指示に基づいて、VCO12へ変調信号(モジュレーション信号)である三角波を出力する。VCO12は、三角波発生器11から入力された三角波に基づいて、周波数変調した信号をAMP13およびMix16へ出力する。なお、以下では、VCO12から出力される周波数変調された信号を「FM信号」と呼ぶこととする。AMP13は、VCO12から入力されたFM信号を増幅し、増幅したFM信号を導波管10を介してAMP15へ出力する。かかるAMP13から出力される信号が「送信波」に該当する。
【0021】
矩形波OSC14は、AMP15およびMix18へ矩形波を出力する。AMP15は、矩形波OSC14から入力された矩形波に基づいて、AMP13から入力された送信波を増幅およびASK(Amplitude Shift Keying)変調して、増幅およびASK変調後の信号をMix16へ出力する。
【0022】
Mix16は、AMP15から入力された信号とVCO12から入力されたFM信号とを混合した信号を生成し、生成した信号をBPF17へ出力する。Mix16によって生成された信号には、ASK変調された中間周波数(IF:Intermediate Frequency)帯のビート信号や、低周波数(BB:Baseband Frequency)帯の直流ノイズ、高周波帯の搬送波の漏れ信号、搬送波の2倍の周波数帯の変調されたビート信号などが含まれる。
【0023】
BPF17は、Mix16から入力された信号のうち、低周波数帯の直流ノイズと、漏れ信号と、搬送波の2倍の周波数帯のビート信号とを除去して、ASK変調された中間周波数帯のビート信号を通過させる。すなわち、BPF17は、Mix16から入力された信号のうち、中間周波数帯のビート信号をMix18へ出力する。
【0024】
Mix18は、BPF17から入力された中間周波数帯のビート信号と、矩形波OSC14から入力された矩形波とを混合して、ビート信号を中間周波数帯から低周波帯にダウンコンバートし、ダウンコンバート後の信号をLPF19へ出力する。Mix18によってダウンコンバートされた信号には、低周波帯のビート信号や、矩形波OSC14における矩形波クロックと同一の周波数帯の漏れ信号、かかる矩形波クロックの2倍の周波数帯の信号などが含まれる。LPF19は、Mix18から入力された信号のうち、低周波帯のビート信号を通過させて、かかる低周波帯のビート信号を包絡線検波部20およびMPX21へ出力する。
【0025】
包絡線検波部20は、LPF19から入力されたビート信号の包絡線を検波する。図1に示した例を用いて説明すると、包絡線検波部20は、FM−AM雑音が含まれているビート信号B1を入力された場合に、ビート信号B1の包絡線Eを検波する。そして、包絡線検波部20は、検波した包絡線を示す信号(以下、「包絡線信号」という)をMPX21へ出力する。
【0026】
MPX21は、LPF19から入力されたビート信号と、包絡線検波部20から入力された包絡線信号とを制御部110へ出力する。なお、MPX21は、入力された複数の信号から1つの信号を選択して出力するスイッチであってもよい。また、一般に、1チップコンピュータ(制御コンピュータ)にはMPX21が付属しているため、図2−1に示した構成は容易に実現することが可能である。
【0027】
制御部110は、レーダ装置100による補正データ生成処理や、距離計測処理、速度計測処理等を行う。かかる制御部110は、送信指示部111と、A/D(analog to digital)変換部112と、補正データ生成部113と、補正部114と、算出部115とを有する。
【0028】
送信指示部111は、対象物に対して所定の電波を送信するように、三角波発生器11に対して指示する。具体的には、送信指示部111は、所定のタイミングになった場合(例えば、対象物までの距離等を測定するように指示を受け付けた場合など)に、三角波発生器11に対して、所定の振幅や所定の繰り返し周波数の三角波を出力する旨の指示を行う。上述した三角波発生器11は、送信指示部111からの指示を受け付けて三角波出力処理を行う。
【0029】
A/D変換部112は、アナログ信号をデジタル信号へ変換(ADコンバート)する。具体的には、A/D変換部112は、モジュレーション信号に同期して、MPX21から入力された包絡線信号をADコンバートする。そして、A/D変換部112は、ADコンバート後の包絡線信号を補正データ生成部113へ出力する。
【0030】
補正データ生成部113は、A/D変換部112から入力された包絡線信号に基づいて、補正データを生成する。図3を用いて、補正データ生成部113による補正データ生成処理について具体的に説明する。図3は、補正データ生成部113による補正データ生成処理を説明するための図である。
【0031】
図3に示すように、補正データ生成部113は、A/D変換部112によってADコンバートされた包絡線信号Edを取得する。続いて、補正データ生成部113は、補正データを生成するための基準値Sdを決定する。図3に示した例では、補正データ生成部113は、包絡線信号Edの平均値を基準値Sdに決定している。なお、補正データ生成部113は、基準値Sdを桁あふれ等が発生しない使用可能な範囲で、どのような値に決定してもよい。例えば、補正データ生成部113は、包絡線信号Edの最大値を基準値Sdに決定してもよいし、包絡線信号Edの最小値を基準値Sdに決定してもよい。
【0032】
続いて、補正データ生成部113は、包絡線信号Edの値を所定の間隔で測定(サンプリング)する。続いて、補正データ生成部113は、包絡線信号Edを測定した位置(以下、「サンプリング位置」という)ごとに、基準値Sdに対する包絡線信号Edの値の割合を算出する。そして、補正データ生成部113は、算出した割合の逆数を求めて、各サンプリング位置におけるゲインを算出する。このようにして算出されたゲインは、各サンプリング位置における補正データに該当する。なお、図3において、波形Rdは、補正データ生成部113によって算出される補正データを示している。
【0033】
図3に示した例では、補正データ生成部113は、A/D変換部112によって包絡線信号がADコンバートされる1つの区間を、サンプリング数「N」によってサンプリングしている。なお、ここでは、A/D変換部112によって包絡線信号がADコンバートされる1つの区間は、1周期であるものとする。かかる場合に、補正データ生成部113は、サンプリング位置「1」において、基準値Sdに対する包絡線信号Edの値の割合として、「0.8」を算出する。続いて、補正データ生成部113は、割合「0.8」の逆数である「1.25」を算出する。算出した「1.25」がサンプリング位置「1」における補正データに該当する。
【0034】
また、例えば、補正データ生成部113は、サンプリング位置「m」において、基準値Sdに対する包絡線信号Edの値の割合として、「1.6」を算出する。続いて、補正データ生成部113は、割合「1.6」の逆数である「0.625」を算出する。算出した「0.625」がサンプリング位置「m」における補正データに該当する。
【0035】
補正データ生成部113は、このようにして生成した補正データを、記憶部120に記憶させる。このとき、補正データ生成部113は、サンプリング位置に対応付けて、生成した補正データを記憶部120に記憶させる。
【0036】
補正部114および算出部115における処理については、距離計測処理や速度計測処理に関係するため、図2−2に示したレーダ装置200の構成を説明する際に詳細に説明する。
【0037】
なお、上述したレーダ装置100において、包絡線検波部20による包絡線検波処理は、制御部110の所定の処理部が行ってもよい。具体的には、制御部110が、制御コンピュータによってデジタルフィルタ機能を実現するデジタルフィルタ部を有し、デジタルフィルタ部が、ビート信号を濾波して包絡線検波処理を行う。かかる場合、レーダ装置100は、包絡線検波部20を備えることなく、包絡線検波処理を行うことが可能になる。
【0038】
次に、図2−2を用いて、距離計測処理や速度計測処理を行うレーダ装置200の構成について説明する。なお、以下では、図2−1に示した構成部位と同様の機能を有する部位には同一符号を付すこととして、その詳細な説明を省略する。上述したように、レーダ装置200は、出荷時におけるレーダ装置の状態を示しており、レーダ装置100の導波管10が外されて、T−ant22およびR−ant23が装着される。
【0039】
図2−2に示したレーダ装置200において、AMP24は、VCO12から入力されたFM信号を増幅し、増幅したFM信号をT−ant22へ出力する。T−ant22は、AMP24から入力された信号(送信波)を、対象物に対して送信する。R−ant23は、T−ant22によって送信された送信波に対する反射波を対象物から受信し、かかる受信波をAMP25へ出力する。AMP25は、矩形波OSC14から入力された矩形波に基づいて、R−ant23から入力された受信波を増幅およびASK変調をして、増幅およびASK変調後の信号をMix16へ出力する。
【0040】
続いて、距離計測処理や速度計測処理を行うレーダ装置200が有する制御部110について説明する。A/D変換部112は、モジュレーション信号に同期して、MPX21から入力されたビート信号をADコンバートする。そして、A/D変換部112は、ADコンバート後のビート信号を補正部114へ出力する。
【0041】
補正部114は、A/D変換部112からADコンバート後のビート信号を入力された場合に、記憶部120に記憶されている補正データに基づいて、かかるビート信号に含まれるFM−AM雑音を除去する。
【0042】
具体的には、補正部114は、モジュレーション信号に同期することにより、A/D変換部112から入力されたビート信号のうち、補正データ生成部113によって補正データが生成されたサンプリング位置に対応する位置を特定する。続いて、補正部114は、記憶部120から、特定したサンプリング位置に対応する補正データを取得する。そして、補正部114は、特定したサンプリング位置に対応するビート信号の振幅に、取得した補正データを乗算する。
【0043】
図1および図3に示した例を用いて説明する。例えば、A/D変換部112から入力されたビート信号に対して、サンプリング位置「1」に対応するビート信号の振幅を補正する場合、補正部114は、記憶部120からサンプリング位置「1」に対応付けて記憶されている補正データ「1.25」を取得する。続いて、補正部114は、サンプリング位置「1」に対応するビート信号の振幅(図1上段における「1」に対応する振幅)に、補正データ「1.25」を乗算する。これにより、補正部114は、図1下段に示すように、サンプリング位置「1」に対応するビート信号の振幅を補正することができる。
【0044】
また、例えば、A/D変換部112から入力されたビート信号に対して、サンプリング位置「m」に対応するビート信号の振幅を補正する場合、補正部114は、記憶部120からサンプリング位置「m」に対応付けて記憶されている補正データ「0.625」を取得する。続いて、補正部114は、サンプリング位置「m」に対応するビート信号の振幅(図1上段における「m」に対応する振幅)に、補正データ「0.625」を乗算する。これにより、補正部114は、図1下段に示すように、サンプリング位置「m」に対応するビート信号の振幅を補正することができる。
【0045】
このようにして、補正部114は、A/D変換部112から入力されたビート信号の振幅を補正する。これにより、補正部114は、例えば、図1に示したFM−AM雑音が含まれるビート信号B1を入力された場合であっても、ビート信号B1を、図1に示したビート信号B2のように、振幅が一定であるビート信号に補正することができる。
【0046】
算出部115は、補正部114によって補正されたビート信号に基づいて、距離計測処理や速度計測処理を行う。以下に、算出部115による距離計測処理および速度計測処理について、レーダ装置200と対象物Tとの相対速度が0である場合と、レーダ装置200と対象物Tとの相対速度が0でない場合とに分けて説明する。
【0047】
図4−1〜図4−3を用いて、レーダ装置200と対象物Tとの相対速度が0である場合における算出部115による距離計測処理の原理を説明する。なお、ここでは、対象物Tは、レーダ装置200から距離Rの場所に位置するものとする。図4−1は、レーダ装置200から送信された送信波とかかる送信波に対応する受信波の一例を示す図である。なお、図4−1において、横軸は時間を示し、縦軸は周波数を示す。図4−1に示すように、受信波は、T−ant22が送信波を送信した後、距離Rを往復する時間分の遅れが発生する。レーダ装置200は、かかる時間遅れに基づいてビート信号を生成する。図4−2は、図4−1に示した送信波と受信波とに基づいて生成されたビート信号の周波数(ビート周波数)の一例を示す図である。なお、図4−2において、横軸は時間を示し、縦軸はビート周波数を示す。
【0048】
算出部115は、図4−2に示したようなビート周波数を持つビート信号に対して、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier transform)処理を行う。具体的には、算出部115は、ビート周波数を、三角波(送信波)の周波数上昇区間と、三角波(送信波)の周波数下降区間とに分けて、各ビート信号に対して高速フーリエ変換処理を行う。
【0049】
図4−3は、図4−2に示したビート周波数を持つビート信号に対する高速フーリエ変換の結果を示す図である。なお、図4−3において、横軸は周波数を示し、縦軸は電力を示す。図4−3は、ビート周波数の上昇区間における高速フーリエ変換の結果と、下降区間における高速フーリエ変換の結果とを示している。すなわち、レーダ装置200と対象物Tとの相対速度が0である場合、ビート周波数の上昇区間における高速フーリエ変換の結果と、下降区間における高速フーリエ変換の結果とは等しくなる。
【0050】
図4−3に示すように、周波数がfr´である場合に、電力はピークになる。周波数fr´は、対象物Tまでの距離Rに比例した周波数を示す。算出部115は、かかる周波数fr´を用いて、対象物Tまでの距離Rを計測する。具体的には、算出部115は、以下の式(1)により、対象物Tまでの距離Rを計測することができる。
【0051】
【数1】
【0052】
ここで、上記式(1)中の「c」は、光速(電波の速度)を示し、Δfは、三角波の振幅(変調周波数幅)を示し、fmは、三角波の繰り返し周波数(変調幅)を示す。
【0053】
続いて、図5−1〜図5−4を用いて、レーダ装置200と対象物との相対速度が0でない場合における算出部115による距離計測処理および速度計測処理の原理を説明する。なお、ここでは、対象物Tは、レーダ装置200から距離Rの場所に位置し、速度vで移動しているものとし、レーダ装置200は、移動していないものとする。
【0054】
図5−1は、レーダ装置200から送信された送信波とかかる送信波に対応する受信波の一例を示す図である。図5−1に示すように、受信波の周波数は、送信波の周波数と比較して、対象物Tが速度vにより移動しているので、かかる速度に比例した周波数(ドップラ周波数)fd分のシフトがある。図5−2は、図5−1に示した送信波と受信波とに基づいて生成されたビート信号の周波数(ビート周波数)の一例を示す図である。図5−2に示すように、ビート信号の周波数をfrとすると、上昇区間におけるビート信号の周波数fupは、ドップラ周波数成分が減算された「|fr−fd|」となり、下降区間におけるビート信号の周波数fdownは、ドップラ周波数成分が加算された「|fr+fd|」となる。
【0055】
算出部115は、図5−2に示したようなビート周波数を持つビート信号を、三角波(送信波)の周波数上昇区間と、三角波(送信波)の周波数下降区間とに分けて、各ビート信号に対して高速フーリエ変換処理を行う。
【0056】
図5−3は、図5−2に示したビート周波数を持つビート信号の上昇区間における高速フーリエ変換の結果を示す図である。図5−3に示すように、周波数がfup´である場合に、電力はピークになる。図5−4は、図5−2に示したビート周波数を持つビート信号の下降区間における高速フーリエ変換の結果を示す図である。図5−4に示すように、周波数がfdown´である場合に、電力はピークになる。算出部115は、かかる周波数fup´およびfdown´を用いて、対象物Tまでの距離Rおよび対象物Tの移動速度vを計測する。具体的には、算出部115は、以下の式(2)により、対象物Tまでの距離Rを計測することができ、以下の式(3)により、対象物Tの移動速度vを計測することができる。
【0057】
【数2】
【0058】
【数3】
【0059】
ここで、上記式(2)、(3)中の「c」は、光速(電波の速度)を示し、Δfは、三角波の振幅(変調周波数幅)を示し、fmは、三角波の繰り返し周波数(変調幅)を示し、f0は、変調中心周波数を示す。
【0060】
このように、算出部115は、補正部114によって補正されたビート信号に基づいて、距離計測処理および速度計測処理を行うので、近距離に位置する対象物Tまでの距離や、対象物Tの移動速度を計測することができる。
【0061】
なお、上記では、レーダ装置200と対象物Tとの相対速度が0である場合と、レーダ装置200と対象物Tとの相対速度が0でない場合とに分けて、距離計測処理および速度計測処理の原理を説明した。しかし、実際には、レーダ装置200は、対象物Tとの相対速度が0であるか否かを予め検知していないことが多いため、相対速度が0でないものとして、上記式(2)および(3)を用いて、距離計測処理および速度計測処理を行う。すなわち、レーダ装置200と対象物Tとの相対速度が0であるか否かは、上記式(3)を用いた速度計測処理の結果により判明する。
【0062】
次に、レーダ装置100による補正データ生成処理の手順について説明する。図6は、レーダ装置100による補正データ生成処理手順を示すフローチャートである。図6に示すように、レーダ装置100の送信指示部111は、所定のタイミングになった場合に、三角波発生器11に対して、所定の振幅や所定の繰り返し周波数の三角波を送信する旨の指示を行う(ステップS101)。
【0063】
かかる指示を受け付けた三角波発生器11によって三角波がVCO12へ出力された後、レーダ装置100の内部回路(Mix16〜LPF19)は、ビート信号を生成する(ステップS102)。続いて、包絡線検波部20は、生成されたビート信号の包絡線を検波する(ステップS103)。続いて、制御部110のA/D変換部112は、モジュレーション信号に同期して、包絡線検波部20によって検波された包絡線信号とをADコンバートする(ステップS104)。
【0064】
続いて、補正データ生成部113は、A/D変換部112によってADコンバートされた包絡線信号の基準値を決定する(ステップS105)。続いて、補正データ生成部113は、包絡線信号の値を所定のサンプリング間隔で測定し、サンプリング位置ごとに、基準値に対する包絡線信号の値の割合を算出する(ステップS106)。続いて、補正データ生成部113は、算出した割合の逆数を求めることにより、各サンプリング位置における補正データを生成する(ステップS107)。そして、補正データ生成部113は、生成した補正データを、サンプリング位置に対応付けて記憶部120に記憶させる(ステップS108)。
【0065】
次に、レーダ装置200による距離計測処理および速度計測処理の手順について説明する。図7は、レーダ装置200による距離計測処理手順および速度計測処理手順を示すフローチャートである。図7に示すように、レーダ装置200の送信指示部111は、所定のタイミングになった場合に、三角波発生器11に対して、所定の振幅や所定の繰り返し周波数の三角波を送信する旨の指示を行う(ステップS201)。
【0066】
かかる指示を受け付けた三角波発生器11によって三角波がVCO12へ出力された後、T−ant22は、送信波を、対象物に対して送信する(ステップS202)。続いて、R−ant23は、対象物から、T−ant22によって送信された送信波に対する反射波を受信する(ステップS203)。続いて、レーダ装置100の内部回路(Mix16〜LPF19)は、送信波および受信波に基づいて、ビート信号を生成する(ステップS204)。
【0067】
続いて、制御部110のA/D変換部112は、モジュレーション信号に同期して、内部回路によって生成されたビート信号をADコンバートする(ステップS205)。続いて、補正部114は、A/D変換部112によってADコンバートされたビート信号について、補正データ生成部113によって補正データが生成されたサンプリング位置を特定する(ステップS206)。続いて、補正部114は、特定したサンプリング位置に対応する補正データを記憶部120から取得する(ステップS207)。続いて、補正部114は、特定したサンプリング位置に対応するビート信号の振幅に、取得した補正データを乗算する(ステップS208)。
【0068】
続いて、算出部115は、三角波(送信波)の周波数上昇区間におけるビート信号と、三角波(送信波)の周波数下降区間におけるビート信号とに分けて、高速フーリエ変換処理を行う(ステップS209)。続いて、算出部115は、ビート周波数の上昇区間における高速フーリエ変換の結果に基づいて、電力がピークになる周波数(図5−3に示した例では「fup´」)を検出する(ステップS210)。また、算出部115は、ビート周波数の下降区間における高速フーリエ変換の結果に基づいて、電力がピークになる周波数(図5−4に示した例では「fdown´」)を検出する(ステップS211)。続いて、算出部115は、検出した周波数fup´およびfdown´を用いて対象物までの距離および対象物の移動速度を計測する(ステップS212)。具体的には、算出部115は、上記式(2)および(3)により対象物までの距離および対象物の移動速度を計測する。
【0069】
上述してきたように、実施例1に係るレーダ装置は、製造時において、内部回路で生成したビート信号の包絡線を検波し、所定の基準値に対する包絡線の値の割合を算出し、算出した割合の逆数を求めることにより、補正データを生成する。これにより、実施例1に係るレーダ装置は、ビート信号を補正するための補正データを生成することができる。
【0070】
また、実施例1に係るレーダ装置は、出荷後の動作時において、補正データに基づいてビート信号を補正するので、ビート信号のFM−AM雑音を除去することができる。また、実施例1に係るレーダ装置は、FM−AM雑音を除去したビート信号に基づいて、距離計測処理および速度計測処理を行うので、近距離に位置する対象物までの距離や近距離に位置する対象物の移動速度を計測することができる。
【0071】
例えば、実施例1に係るレーダ装置は、自動車に装着されることにより、他の車両(自動車や自転車)や歩行者等までの距離や、相対速度を計測することができる。また、例えば、実施例1に係るレーダ装置は、信号機や道路標識等に装着されることにより、車両や歩行者等までの距離や、車両や歩行者等の移動速度を計測することができる。図8は、実施例1に係るレーダ装置が信号機や道路標識に装着される例を示す図である。図8では、実施例1に係るレーダ装置200に対応するレーダ装置200aおよび200bが信号機や道路標識等に装着されている例を示している。
【実施例2】
【0072】
ところで、上記実施例1では、本願に開示するレーダ装置、レーダ装置制御方法、レーダ装置制御プログラムおよびレーダ制御装置について説明したが、本願に開示するレーダ装置等は、上述した実施例1以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよい。そこで、実施例2では、本願に開示するレーダ装置等に含まれる他の実施例を説明する。
【0073】
[補正データ1]
上記実施例1では、三角波発生器11によって出力される三角波の状態が変化しないことを前提として、レーダ装置100による補正データ生成処理について説明した。しかし、レーダ装置は、異なる状態の三角波を用いる場合がある。そこで、レーダ装置100は、三角波の状態ごとに異なる補正データを生成して、記憶部120に記憶させてもよい。なお、ここでいう「三角波の状態」とは、三角波の振幅および繰り返し周波数を示す。図4−1および図5−1に示した例では、Δfが三角波の振幅を示し、fmが三角波の繰り返し周波数を示している。以下に、三角波の状態ごとに補正データを生成するレーダ装置100による処理について具体的に説明する。
【0074】
レーダ装置100の送信指示部111は、三角波発生器11に対して所定の振幅および所定の繰り返し周波数の三角波を出力するように指示する。そして、補正データ生成部113は、かかる三角波が出力された状態において、上述した補正データ生成処理を行う。続いて、送信指示部111は、三角波発生器11に対して、前述した振幅や繰り返し周波数と異なる振幅や繰り返し周波数の三角波を出力するように指示する。そして、補正データ生成部113は、かかる三角波が出力されている状態において、上述した補正データ生成処理を行う。このようにして、レーダ装置100は、出荷後に三角波発生器11が出力する可能性のある三角波の振幅と繰り返し周波数との組合せごとに、補正データを生成し、生成した補正データを、三角波の振幅と繰り返し周波数との組合せに対応付けて記憶部120に記憶させる。そして、レーダ装置200の補正部114は、三角波発生器11によって出力される三角波の振幅と繰り返し周波数との組合せに対応する補正データに基づいて、ビート信号を補正する。
【0075】
このように、レーダ装置100が、三角波の状態変化に応じて異なる補正データを生成することにより、レーダ装置200は、三角波の状態に応じて適切な補正データを用いてビート信号を補正することができる。これにより、レーダ装置200は、振幅や繰り返し周波数が異なる三角波を用いる場合であっても、近距離に位置する対象物までの距離や近距離に位置する対象物の移動速度を計測することができる。
【0076】
[補正データ2]
また、上記実施例1では、補正データ生成部113が、複数のサンプリング位置に対応付けて、補正データを記憶部120に記憶させる例を示したが、補正データ生成部113は、所定のサンプリング位置に対応する補正データを1つのみ記憶部120に記憶させてもよい。具体的には、補正データ生成部113は、上述したように、サンプリング位置ごとに補正データを算出する。続いて、補正データ生成部113は、複数の補正データのうち、所定の補正データを基準値(以下、「補正データ基準値」という)に決定する。続いて、補正データ生成部113は、サンプリング位置ごとに、補正データ基準値に対する補正データの割合(以下、「補正データ係数」という)を算出する。そして、補正データ生成部113は、補正データ基準値を記憶部120に記憶させるとともに、サンプリング位置ごとに、補正データ係数を記憶部120に記憶させる。
【0077】
例えば、図3に示した例において、補正データ生成部113は、サンプリング位置「1」に対応する補正データ「1.25」を補正データ基準値に決定したものとする。そして、補正データ生成部113は、サンプリング位置「m」に対応する補正データ「0.625」の補正データ係数を算出する場合、補正データ基準値「1.25」に対する補正データ「0.625」の割合「0.5」を算出する。同様にして、補正データ生成部113は、サンプリング位置ごとに、補正データ基準値「1.25」に対する補正データの割合を算出する。そして、補正データ生成部113は、補正データ基準値「1.25」を記憶部120に記憶させるとともに、サンプリング位置に対応付けて補正データ係数を記憶部120に記憶させる。例えば、補正データ生成部113は、サンプリング位置「m」に対応付けて補正データ係数「0.5」を記憶部120に記憶させる。
【0078】
上述したように、補正データ基準値と補正データ係数とを記憶部120に記憶させる場合、補正部114は、記憶部120に記憶されている補正データ基準値に、サンプリング位置に対応する係数を乗算して補正データを算出した後に、ビート信号を補正する。例えば、補正部114は、サンプリング位置「m」におけるビート信号の振幅を補正する場合、記憶部120から、補正データ基準値「1.25」と、サンプリング位置「m」に対応付けて記憶されている補正データ係数「0.5」を取得する。続いて、補正部114は、補正データ基準値「1.25」に補正データ係数「0.5」を乗算することにより、補正データ「0.625」を算出する。そして、補正部114は、算出した補正データ「0.625」を用いて、サンプリング位置「m」におけるビート信号の振幅を補正する。
【0079】
[システム構成1]
また、上記実施例1では、ビート信号を、中間周波数帯のビート信号に変換した後、低周波数帯のビート信号に変換するレーダ装置の構成例を示した。しかし、上述してきた補正データ生成処理や、距離計測処理、速度計測処理を実現するレーダ装置は、上述したレーダ装置100および200に限られない。例えば、高周波(RF:Radio frequency)帯から低周波帯のビート信号に直接変換するレーダ装置であっても、上述してきた補正データ生成処理等を実現することができる。
【0080】
図9は、高周波帯から低周波帯のビート信号に直接変換するレーダ装置300の構成を示す図である。図9に示すように、レーダ装置300は、図2−2に示したレーダ装置200と比較して、Mix16、BPF17、矩形波OSC14およびMix18の代わりに、Mix26を有する。Mix26は、AMP25から入力された変調信号とVCO12から入力された変調信号とを混合して、低周波帯のビート信号を生成し、生成したビート信号をLPF19へ出力する。
【0081】
[システム構成2]
また、上記実施例1では、T−ant22とR−ant23とを有するレーダ装置200の構成例を示したが、本願に開示するレーダ装置は、送信用アンテナと受信用アンテナが、1つの送受信アンテナによって実現されてもよい。
【0082】
図10−1は、送受信アンテナを有するレーダ装置400の構成を示す図である。図10−1に示すように、レーダ装置400は、図2−2に示したレーダ装置200と比較して、T−ant22とR−ant23との代わりに、ant41を有し、矩形波OSC14の代わりに、矩形波OSC42を有する。ant41は、送信用アンテナと受信用アンテナを共用する送受信アンテナである。矩形波OSC42は、図2−2に示した矩形波OSC14と比較して、AMP24に接続される。これは、ant41が、矩形波OSC42から出力される矩形波に基づいて、送信用アンテナまたは受信用アンテナのいずれによって動作するかをスイッチングするためである。
【0083】
なお、図10−1に示したレーダ装置400のように、1個の送受信アンテナを有するレーダ装置が補正データ生成処理を行う場合、レーダ装置には、送信用アンテナと、受信用アンテナとがレーダ装置に接続される。図10−2を用いて具体的に説明する。図10−2は、送受信アンテナを有するレーダ装置500による補正データ生成処理時の構成を示す図である。図10−2に示すように、レーダ装置500は、AMP24にT−ant51が接続され、AMP25にR−ant52が接続される。また、T−ant51とR−ant52とは、導波管50によって接続される。このように、1個の送受信アンテナを有するレーダ装置であっても、T−ant51とR−ant52とが接続されることによって、補正データ生成処理を行うことができる。
【0084】
[検出プログラムを実行するコンピュータ]
また、図2−1および図2−2に示したレーダ装置100および200の構成は、要旨を逸脱しない範囲で種々に変更することができる。例えば、レーダ装置100および200の制御部110の機能をソフトウェアとして実装し、これをコンピュータで実行することにより、レーダ装置100および200と同等の機能を実現することもできる。以下に、制御部110の機能をソフトウェアとして実装したレーダ装置制御プログラム1031を実行するコンピュータの一例を示す。
【0085】
図11は、レーダ装置制御プログラム1031を実行するコンピュータ1000の構成を示す図である。図11に示すように、コンピュータ1000は、各種演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)1010と、各種情報を一時記憶するRAM(Random Access Memory)1020と、ハードディスク装置1030とをバス1040で接続して構成される。
【0086】
そして、ハードディスク装置1030には、図2−1および図2−2に示した制御部110と同様の機能を有するレーダ装置制御プログラム1031と、図2−1および図2−2に示した記憶部120に記憶される各種データに対応する補正データ1032とが記憶される。なお、補正データ1032を、適宜分散させ、ネットワークを介して接続された他のコンピュータに記憶させておくこともできる。
【0087】
そして、CPU1010がレーダ装置制御プログラム1031をハードディスク装置1030から読み出してRAM1020に展開することにより、レーダ装置制御プログラム1031は、レーダ装置制御プロセス1021として機能するようになる。そして、レーダ装置制御プロセス1021は、補正データ1032から読み出した情報等を適宜RAM1020上の自身に割り当てられた領域に展開し、この展開したデータ等に基づいて各種データ処理を実行する。
【0088】
なお、上記のレーダ装置制御プログラム1031は、必ずしもハードディスク装置1030に格納されている必要はなく、CD−ROM等の記憶媒体に記憶されたこのプログラムを、コンピュータ1000が読み出して実行するようにしてもよい。また、公衆回線、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等を介してコンピュータ1000に接続される他のコンピュータ(またはサーバ)等にこのプログラムを記憶させておき、コンピュータ1000がこれらからプログラムを読み出して実行するようにしてもよい。
【0089】
以上の各実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0090】
(付記1)対象物に送信された送信波と前記送信波に対する反射波とに基づいて生成されるビート信号の振幅を補正するための補正データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されている補正データに基づいて、前記ビート信号の振幅を補正する補正部と、
前記補正部によって補正されたビート信号に基づいて、前記対象物までの距離または前記対象物の移動速度を算出する算出部と
を備えたことを特徴とするレーダ装置。
【0091】
(付記2)前記ビート信号の包絡線を検波する包絡線検波部と、
前記包絡線検波部によって検波された包絡線に基づいて、前記補正データを生成する補正データ生成部とをさらに備え、
前記記憶部は、前記補正データ生成部によって生成された補正データを記憶することを特徴とする付記1に記載のレーダ装置。
【0092】
(付記3)前記補正データ生成部は、前記送信波の変調を制御する制御信号の振幅と繰り返し周波数との組合せごとに補正データを生成し、
前記記憶部は、前記補正データ生成部によって生成された補正データを、制御信号の振幅と繰り返し周波数との組合せに対応づけて記憶し、
前記補正部は、前記記憶部から、前記送信波の変調を制御した制御信号の振幅と繰り返し周波数との組合せに対応する補正データを取得し、取得した補正データに基づいて、前記ビート信号の振幅を補正することを特徴とする付記2に記載のレーダ装置。
【0093】
(付記4)対象物に送信された送信波と前記送信波に対する反射波とに基づいて生成されるビート信号の振幅を補正するための補正データを記憶した記憶部に記憶されている補正データに基づいて、前記ビート信号の振幅を補正する補正工程と、
前記補正工程によって補正されたビート信号に基づいて、前記対象物までの距離または前記対象物の移動速度を算出する算出工程と
を含んだことを特徴とするレーダ装置制御方法。
【0094】
(付記5)前記ビート信号の包絡線を検波する包絡線検波工程と、
前記包絡線検波工程によって検波された包絡線に基づいて、前記補正データを生成する補正データ生成工程とをさらに含み、
前記記憶部は、前記補正データ生成工程によって生成された補正データを記憶することを特徴とする付記4に記載のレーダ装置制御方法。
【0095】
(付記6)前記補正データ生成工程は、前記送信波の変調を制御する制御信号の振幅と繰り返し周波数との組合せごとに補正データを生成し、
前記記憶部は、前記補正データ生成部によって生成された補正データを、制御信号の振幅と繰り返し周波数との組合せに対応づけて記憶し、
前記補正工程は、前記記憶部から、前記送信波の変調を制御した制御信号の振幅と繰り返し周波数との組合せに対応する補正データを取得し、取得した補正データに基づいて、前記ビート信号の振幅を補正することを特徴とする付記5に記載のレーダ装置制御方法。
【0096】
(付記7)対象物に送信された送信波と前記送信波に対する反射波とに基づいて生成されるビート信号の振幅を補正するための補正データを記憶した記憶部に記憶されている補正データに基づいて、前記ビート信号の振幅を補正する補正手順と、
前記補正手順によって補正されたビート信号に基づいて、前記対象物までの距離または前記対象物の移動速度を算出する算出手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とするレーダ装置制御プログラム。
【0097】
(付記8)前記ビート信号の包絡線を検波する包絡線検波手順と、
前記包絡線検波手順によって検波された包絡線に基づいて、前記補正データを生成する補正データ生成手順とをさらにコンピュータに実行させ、
前記記憶部は、前記補正データ生成手順によって生成された補正データを記憶することを特徴とする付記7に記載のレーダ装置制御プログラム。
【0098】
(付記9)前記補正データ生成手順は、前記送信波の変調を制御する制御信号の振幅と繰り返し周波数との組合せごとに補正データを生成し、
前記記憶部は、前記補正データ生成部によって生成された補正データを、制御信号の振幅と繰り返し周波数との組合せに対応づけて記憶し、
前記補正手順は、前記記憶部から、前記送信波の変調を制御した制御信号の振幅と繰り返し周波数との組合せに対応する補正データを取得し、取得した補正データに基づいて、前記ビート信号の振幅を補正することを特徴とする付記8に記載のレーダ装置制御プログラム。
【0099】
(付記10)対象物に送信された送信波と前記送信波に対する反射波とに基づいて生成されるビート信号の振幅を補正するための補正データを記憶した記憶部に記憶されている補正データに基づいて、前記ビート信号の振幅を補正する補正部と、
前記補正部によって補正されたビート信号に基づいて、前記対象物までの距離または前記対象物の移動速度を算出する算出部と
を備えたことを特徴とするレーダ制御装置。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】実施例1に係るレーダ装置による距離測定処理等の概要を説明するための図である。
【図2−1】補正データ生成処理を行うレーダ装置の構成を示す図である。
【図2−2】距離計測処理や速度計測処理を行うレーダ装置の構成を示す図である。
【図3】補正データ生成部による補正データ生成処理を説明するための図である。
【図4−1】レーダ装置から送信された送信波とかかる送信波に対応する受信波の一例を示す図である。
【図4−2】図4−1に示した送信波と受信波とに基づいて生成されたビート信号の周波数の一例を示す図である。
【図4−3】図4−2に示したビート周波数を持つビート信号に対する高速フーリエ変換の結果を示す図である。
【図5−1】レーダ装置から送信された送信波とかかる送信波に対応する受信波の一例を示す図である。
【図5−2】図5−1に示した送信波と受信波とに基づいて生成されたビート信号の周波数の一例を示す図である。
【図5−3】図5−2に示したビート周波数を持つビート信号の上昇区間における高速フーリエ変換の結果を示す図である。
【図5−4】図5−2に示したビート周波数を持つビート信号の下降区間における高速フーリエ変換の結果を示す図である。
【図6】レーダ装置による補正データ生成処理手順を示すフローチャートである。
【図7】レーダ装置による距離計測処理手順および速度計測処理手順を示すフローチャートである。
【図8】実施例1に係るレーダ装置が信号機や道路標識に装着される例を示す図である。
【図9】高周波帯から低周波帯のビート信号に直接変換するレーダ装置の構成を示す図である。
【図10−1】送受信アンテナを有するレーダ装置の構成を示す図である。
【図10−2】送受信アンテナを有するレーダ装置による補正データ生成処理時の構成を示す図である。
【図11】レーダ装置制御プログラムを実行するコンピュータの構成を示す図である。
【図12】従来技術を説明するための図である。
【図13−1】従来技術を説明するための図である。
【図13−2】従来技術を説明するための図である。
【図14】従来技術を説明するための図である。
【符号の説明】
【0101】
10 導波管
11 三角波発生器
12 VCO
13、15、24、25 AMP
14 矩形波OSC
16、18、26 Mix
17 BPF
19 LPF
20 包絡線検波部
21 MPX
22 T−ant
23 R−ant
100、200、200a、200b、300 レーダ装置
110 制御部
111 送信指示部
112 A/D変換部
113 補正データ生成部
114 補正部
115 算出部
120 記憶部
1000 コンピュータ
1010 CPU
1020 RAM
1021 レーダ装置制御プロセス
1030 ハードディスク装置
1031 レーダ装置制御プログラム
1032 補正データ
1040 バス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に送信された送信波と前記送信波に対する反射波とに基づいて生成されるビート信号の振幅を補正するための補正データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されている補正データに基づいて、前記ビート信号の振幅を補正する補正部と、
前記補正部によって補正されたビート信号に基づいて、前記対象物までの距離または前記対象物の移動速度を算出する算出部と
を備えたことを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記ビート信号の包絡線を検波する包絡線検波部と、
前記包絡線検波部によって検波された包絡線に基づいて、前記補正データを生成する補正データ生成部とをさらに備え、
前記記憶部は、前記補正データ生成部によって生成された補正データを記憶することを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記補正データ生成部は、前記送信波の変調を制御する制御信号の振幅と繰り返し周波数との組合せごとに補正データを生成し、
前記記憶部は、前記補正データ生成部によって生成された補正データを、制御信号の振幅と繰り返し周波数との組合せに対応づけて記憶し、
前記補正部は、前記記憶部から、前記送信波の変調を制御した制御信号の振幅と繰り返し周波数との組合せに対応する補正データを取得し、取得した補正データに基づいて、前記ビート信号の振幅を補正することを特徴とする請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
対象物に送信された送信波と前記送信波に対する反射波とに基づいて生成されるビート信号の振幅を補正するための補正データを記憶した記憶部に記憶されている補正データに基づいて、前記ビート信号の振幅を補正する補正工程と、
前記補正工程によって補正されたビート信号に基づいて、前記対象物までの距離または前記対象物の移動速度を算出する算出工程と
を含んだことを特徴とするレーダ装置制御方法。
【請求項5】
対象物に送信された送信波と前記送信波に対する反射波とに基づいて生成されるビート信号の振幅を補正するための補正データを記憶した記憶部に記憶されている補正データに基づいて、前記ビート信号の振幅を補正する補正手順と、
前記補正手順によって補正されたビート信号に基づいて、前記対象物までの距離または前記対象物の移動速度を算出する算出手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とするレーダ装置制御プログラム。
【請求項6】
対象物に送信された送信波と前記送信波に対する反射波とに基づいて生成されるビート信号の振幅を補正するための補正データを記憶した記憶部に記憶されている補正データに基づいて、前記ビート信号の振幅を補正する補正部と、
前記補正部によって補正されたビート信号に基づいて、前記対象物までの距離または前記対象物の移動速度を算出する算出部と
を備えたことを特徴とするレーダ制御装置。
【請求項1】
対象物に送信された送信波と前記送信波に対する反射波とに基づいて生成されるビート信号の振幅を補正するための補正データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されている補正データに基づいて、前記ビート信号の振幅を補正する補正部と、
前記補正部によって補正されたビート信号に基づいて、前記対象物までの距離または前記対象物の移動速度を算出する算出部と
を備えたことを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記ビート信号の包絡線を検波する包絡線検波部と、
前記包絡線検波部によって検波された包絡線に基づいて、前記補正データを生成する補正データ生成部とをさらに備え、
前記記憶部は、前記補正データ生成部によって生成された補正データを記憶することを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記補正データ生成部は、前記送信波の変調を制御する制御信号の振幅と繰り返し周波数との組合せごとに補正データを生成し、
前記記憶部は、前記補正データ生成部によって生成された補正データを、制御信号の振幅と繰り返し周波数との組合せに対応づけて記憶し、
前記補正部は、前記記憶部から、前記送信波の変調を制御した制御信号の振幅と繰り返し周波数との組合せに対応する補正データを取得し、取得した補正データに基づいて、前記ビート信号の振幅を補正することを特徴とする請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
対象物に送信された送信波と前記送信波に対する反射波とに基づいて生成されるビート信号の振幅を補正するための補正データを記憶した記憶部に記憶されている補正データに基づいて、前記ビート信号の振幅を補正する補正工程と、
前記補正工程によって補正されたビート信号に基づいて、前記対象物までの距離または前記対象物の移動速度を算出する算出工程と
を含んだことを特徴とするレーダ装置制御方法。
【請求項5】
対象物に送信された送信波と前記送信波に対する反射波とに基づいて生成されるビート信号の振幅を補正するための補正データを記憶した記憶部に記憶されている補正データに基づいて、前記ビート信号の振幅を補正する補正手順と、
前記補正手順によって補正されたビート信号に基づいて、前記対象物までの距離または前記対象物の移動速度を算出する算出手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とするレーダ装置制御プログラム。
【請求項6】
対象物に送信された送信波と前記送信波に対する反射波とに基づいて生成されるビート信号の振幅を補正するための補正データを記憶した記憶部に記憶されている補正データに基づいて、前記ビート信号の振幅を補正する補正部と、
前記補正部によって補正されたビート信号に基づいて、前記対象物までの距離または前記対象物の移動速度を算出する算出部と
を備えたことを特徴とするレーダ制御装置。
【図1】
【図2−1】
【図2−2】
【図3】
【図4−1】
【図4−2】
【図4−3】
【図5−1】
【図5−2】
【図5−3】
【図5−4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10−1】
【図10−2】
【図11】
【図12】
【図13−1】
【図13−2】
【図14】
【図2−1】
【図2−2】
【図3】
【図4−1】
【図4−2】
【図4−3】
【図5−1】
【図5−2】
【図5−3】
【図5−4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10−1】
【図10−2】
【図11】
【図12】
【図13−1】
【図13−2】
【図14】
【公開番号】特開2010−71959(P2010−71959A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243175(P2008−243175)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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