レーダ装置、目標探知方法及びプログラム
【課題】速度分散の大きいウェザクラッタ等を高度に抑圧でき、各受信信号で得たドップラ情報から目標の対レーダ速度を得る。
【解決手段】同一の変調の2以上の単位信号を送信単位である1パルス内に繰り返して配列したレーダ信号を生成する信号生成部と、前記レーダ信号を形成する同一の変調を施した単位信号を参照信号として、前記受信信号に含まれる単位信号の成分を圧縮するパルス圧縮部と、1パルス内でクラッタ成分を抑制するパルス内クラッタ抑圧部と、前記受信信号に消え残る信号成分を抑圧する消え残り信号抑圧部と、探知目標で反射した各距離の受信信号の単位信号をピックアップし、フーリェ変換処理により受信信号をドップラ周波数毎に積分して単位信号列積分値を得る単位信号列積分部と、前記単位信号列積分値を積分するパルス間信号積分部と、前記積分値について、閾値より大きい信号を目標信号として抽出する目標信号抽出部とを有している。
【解決手段】同一の変調の2以上の単位信号を送信単位である1パルス内に繰り返して配列したレーダ信号を生成する信号生成部と、前記レーダ信号を形成する同一の変調を施した単位信号を参照信号として、前記受信信号に含まれる単位信号の成分を圧縮するパルス圧縮部と、1パルス内でクラッタ成分を抑制するパルス内クラッタ抑圧部と、前記受信信号に消え残る信号成分を抑圧する消え残り信号抑圧部と、探知目標で反射した各距離の受信信号の単位信号をピックアップし、フーリェ変換処理により受信信号をドップラ周波数毎に積分して単位信号列積分値を得る単位信号列積分部と、前記単位信号列積分値を積分するパルス間信号積分部と、前記積分値について、閾値より大きい信号を目標信号として抽出する目標信号抽出部とを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッタを抑圧する能力を向上させたレーダ装置、目標探知方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置は、送信信号を目標に照射して目標等で反射された信号を受信し、受信信号に含まれる地上の地物や雨等からの反射信号であるクラッタや電波妨害等によるノイズ成分を抑圧して、目標信号を検出している。そのさい、目標のレーダ反射断面積が小さくなると、目標からの反射信号は小さくなるので、地上の地物や雨等からの反射信号であるクラッタや電波妨害の影響が相対的に大きくなる。このため、レーダ反射断面積の小さい目標を探知することが求められるレーダ装置では、レーダ装置のクラッタ抑圧能力と対電波妨害能力を強化する必要がある。
【0003】
汎用の航空機等を主探知対象とするレーダ装置は、クラッタの抑圧に用いるドップラ情報を送信信号でサンプリングして得ている(特許文献1〜特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−257910号公報
【特許文献2】特開平11−223672号公報
【特許文献3】特開2001−264412号公報
【特許文献4】特許第3006815号公報
【特許文献5】特許第4005007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、既に開発されている前記レーダ装置では、クラッタの抑圧に用いるドップラ情報を、送信パルスの間隔でサンプリングして得ていることに起因して、次の様な課題がある。その課題について説明する。
【0006】
送信パルスの間隔を広く設定する必要のある地上設置型の長距離対空レーダ装置では、ドップラ周波数の周期長に対するサンプリングが粗くなることから、得られるドップラ情報は数m/s〜数十m/s の単位で速度のアンビギュィティ(ambiguity)を持つ。
【0007】
その結果、大きな速度分散を持つウェザクラッタ等を高度に抑圧するのを困難であるという課題がある。また、速度のアンビギュィティが大きいので、ドップラ情報から目標の対レーダ速度を得ることも困難であるという課題がある。
【0008】
さらに、アクティブ電波妨害等を効果的に回避するために送信周波数を送信信号毎に変更すると、ドップラ情報が得られなくなり、クラッタを抑圧する能力が失われるという課題がある。
【0009】
本発明の目的は、パルス内でクラッタ成分を抑圧することにより、上述したパルスドップラ方式の課題を解決したレーダ装置、目標探知方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した様に、前記レーダ装置が有している課題は、クラッタの抑圧に用いるドップラ情報を送信パルスの間隔でサンプリングして得ていることに起因する。
【0011】
従って、これらの課題を解決するに、本発明は、ドップラ情報のサンプリング間隔を稠密にして、受信信号内でドップラ情報を得ることにより、クラッタを抑圧すること意図したものである。
【0012】
そこで、本発明では、送信単位である送信信号の1パルス内に同一の変調を施した単位信号を複数個配列したレーダ信号を、前記送信信号として用いることにより、ドップラ情報を前記単位信号の間隔でサンプリングして得ている。
【0013】
上述した本発明の構成により、クラッタの抑圧に用いるドップラ情報を各送信信号でサンプリングして得ていることに起因する課題を解決している。なお、前記送信信号として、送信信号の1パルス内に同一の変調を施した単位信号を複数個配列したレーダ信号を用いると、目標の距離にアンビギュィティ(ambiguity)が生じるが、これは前記レーダ信号を形成している単位信号の信号長を変更することで対処する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、パルス内でクラッタ成分を抑圧することにより、上述したパルスドップラ方式の課題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るレーダ装置を示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態に用いるレーダ信号供給部の具体例を示す構成図である。
【図3】本発明の実施形態に用いるレーダ信号の具体例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に信号処理部の具体例を示す構成図である。
【図5】本発明の実施形態において受信信号をパルス圧縮処理した信号を示す波形図である。
【図6】本発明の実施形態において、パルス内クラッタ抑圧処理を説明する図である。
【図7】本発明の実施形態において、パルス内クラッタ抑圧処理した信号を示す波形図である。
【図8】本発明の実施形態において、パルス内クラッタ抑圧処理後の信号に消え残るクラッタを抑制処理した後の信号を示す波形図である。
【図9】本発明の実施形態において、目標を探知する方法を示すチャートフローである。
【図10】本発明の実施形態において、孤立大信号を抑圧処理する過程を示すチャートフローである。
【図11】本発明の実施形態において、消え残り信号群を抑圧処理する過程を示すチャートフローである。
【図12】本発明の実施形態において、単位信号列を積分処理する過程を示すチャートフローである。
【図13】本発明の実施形態において、目標信号を抽出する過程を示すチャートフローである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1に示す様に、本発明の実施形態に係るレーダ装置は、レーダ信号を生成するレーダ信号供給部1と、レーダの搬送波を前記レーダ信号供給部1で生成したレーダ信号で変調して増幅する送信部2と、前記送信部2の出力する送信信号を指定された方向に送信し、かつ目標等で反射した受信信号を受信するアンテナ部3と、前記アンテナ部3で受信した前記受信信号を増幅し、前記受信信号から前記搬送波の成分を除く受信部4と、前記受信部4の出力する信号を処理して目標信号を抽出する信号処理部5と、前記信号処理部5で得た目標信号を含むデータを表示するとともに、前記レーダ信号生成部1,送信部2,アンテナ部3,受信部4及び信号処理部5を制御する表示・制御部6とを有している。
【0018】
さらに、本発明の実施形態に係るレーダ装置に用いる前記レーダ信号生成部1と前記信号処理部5との具体例について説明する。
【0019】
前記レーダ信号供給部1は図2に示す様に、信号生成部7と、信号長可変部8とを有している。以下では、信号生成部7及び信号長可変部8とをハードウェアとして構築した例を説明するが、コンピュータにプログラムを実行させることにより、ソフトウェア上で信号生成部7及び信号長可変部8とを実現するようにしてもよい。
【0020】
前記信号生成部7は図3に示す様に、チャープ変調等の変調を同一に施した信号である2以上の単位信号Uを送信単位である1パルスP内に繰り返して配列したレーダ信号S(S1,S2・・・Sn)を生成する機能を有している。図3の例では、前記信号生成部7は、レーダ信号Sを形成する単位信号Uとして、同一の変調を施した三角波形の単位信号を生成しているが、これに限られるものではない。要は、送信単位である1パルス内に同一の変調を施した2以上の単位信号Uを繰り返して配列することにより、ドップラ情報のサンプリングを緻密にして送信信号であるレーダ信号に基づいて取得した受信信号内でドップラ情報を得ることが目的であるから、前記単位信号Uは、同一の変調を施した信号であれば、いずれのものであってもよいものである。
【0021】
さらに、前記信号生成部7は、前記表示・制御部6からの制御の下で、前記レーダ信号S1,S2・・・Snを個々に一定間隔毎に出力する、或いは、例えば連続する2つのレーダ信号S1とレーダ信号S2とを1つのグループとし、次に連続する2つのレーダ信号S3とレーダ信号S4とを1つのグループとして、これらのレーダ信号S1及びS2とレーダ信号S3及びS4とをグループ単位で一定間隔毎に出力する機能を有している。これらの場合、前記レーダ信号S1,S2・・・Snの個々は、送信単位となる。
【0022】
なお、前記信号生成部7は、後述の処理で得られるドップラ情報が速度アンビギュィティを有しないようにするために、単位信号Uの信号長Lを想定する探知目標の最大対レーダ速度で生起するドップラ偏移の周期長の1/2以下とすることが望ましい。また、図3の例では、前記信号生成部7は、連続する2つのレーダ信号S1及びS2,S3及びS4を1つのグループとして出力するようにしたが、これに限られるものではない。前記信号生成部7は、1つのグループに含まれるレーダ信号Sの個数を適宜変更して出力するものである。
【0023】
前記信号長可変部8は、探知目標の距離にアンビギュィティ(ambiguity)が生じるのを回避するために、前記信号生成部7から出力されたレーダ信号Sを形成している個々の単位信号Uの信号長Lを、レーダ信号S1,S2・・・又はSn毎、或いはレーダ信号Sのグループ毎に変更する機能を有している。
【0024】
前記信号処理部5は図4に示す様に、パルス圧縮部8と、パルス内クラッタ抑圧部9と、消え残り信号抑圧部10と、単位信号列積分部11と、パルス間信号積分部12と、目標信号抽出部13と、目標距離確定部14とを有している。以下では、パルス圧縮部8と、パルス内クラッタ抑圧部9と、消え残り信号抑圧部10と、単位信号列積分部11と、パルス間信号積分部12と、目標信号抽出部13と、目標距離確定部14とをハードウェアとして構築した例を説明するが、コンピュータにプログラムを実行させることにより、ソフトウェア上で、パルス圧縮部8と、パルス内クラッタ抑圧部9と、消え残り信号抑圧部10と、単位信号列積分部11と、パルス間信号積分部12と、目標信号抽出部13と、目標距離確定部14とを実現するようにしてもよい。
【0025】
前記パルス圧縮部8は、前記受信部4の出力する受信信号と、前記受信信号を取得するために前記レーダ信号供給部1の出力したレーダ信号Sとを入力として、前記レーダ信号Sを形成する同一の変調を施した単位信号Uを参照信号として、前記受信部4の出力する前記受信信号に含まれる単位信号Uの成分を圧縮する機能を有している。
【0026】
前記パルス圧縮部8は、前記レーダ信号Sとして、例えば図3に示した三角波形の単位信号Uを2以上繰り返して配列したレーダ信号Sを用いた場合、前記レーダ信号Sを形成する同一の変調を施した単位信号Uを参照信号として、前記受信部4からの前記受信信号に含まれる単位信号Uの成分を圧縮することにより、図5に示す様なパルス圧縮後の信号を出力する。図5において、図の横軸は、探知目標で反射した受信信号を前記受信部4で受信した時刻を表し、縦軸はパルス圧縮した信号の振幅値を表している。
【0027】
前記パルス内クラッタ抑圧部9は、前記パルス圧縮部8がパルス圧縮した受信信号(例えば図5に示す信号)について、単位信号Uの相互間で差分を求めるなどの方法により1パルスP内でクラッタ成分を抑制する機能を有している。具体例を用いて説明する。
【0028】
前記パルスクラッタ抑圧部9は図6(a)に示す様に、前記パルス圧縮部8がパルス圧縮した受信信号(例えば図5に示す信号)を元の受信信号R1とし、その元の受信信号R1をコピーし、そのコピーした受信信号を元の受信信号R1に対して単位信号Uの信号長Lだけシフトさせて受信信号R2を得て、元の受信信号R1とコピーした受信信号R2との差分を演算により求め、前記差分による信号R3を得ることにより、1パルスP内でクラッタ成分を抑圧する。図6(a)において、受信信号R2を得る際には、元の受信信号R1のI(In-phase)及びQ(Quadrature)成分をそれぞれコピーする。また、図6(a)に示す○は元の単位信号Uを示しており、*は差分演算処理後の信号を示している。
【0029】
前記パルスクラッタ抑圧部9は図6(a)に示す様に、元の受信信号R1とコピーした受信信号R2とを単位信号Uの信号長Lだけ相互にシフトさせて差分を演算している。ここで、受信信号R1とR2とは1パルス内に2以上の単位信号Uを配列したレーダ信号Sに基づくものである。したがって、受信信号R1にウェブクラッタなどのクラッタが重畳した場合、受信信号R1に単位信号Uの相互間に重畳することとなり、しかも、受信信号R2は受信信号R1をコピーしたものであるから、受信信号R1と受信信号R2とには、前記クラッタが単位信号U間の同一の位置に重畳しているから、差分演算処理をすることにより、前記クラッタが抑圧されることとなる。
【0030】
図6(a)に示す例では、差分演算処理により1パルスP内でクラッタ成分を抑圧する方式について説明したが、これに限られるものではない。別の例を図6(b)に基づいて説明する。
【0031】
図6(b)の例では、前記パルスクラッタ抑圧部9は、前記パルス圧縮部8がMTI−A処理によりパルス圧縮した受信信号を元の受信信号R4とし、その元の受信信号R4をコピーし、その受信信号を元の受信信号R4に対して単位信号Uの信号長Lだけシフトさせて受信信号R5を得て、元の受信信号R4とコピーした受信信号R5との差分を演算により求め、前記差分による信号R6を得ることにより、1パルスP内でクラッタ成分を抑圧する。図6(b)において、受信信号R5を得る際には、元の受信信号R4のI(In-phase)及びQ(Quadrature)成分をそれぞれコピーする。また、図6(b)に示す○は元の単位信号Uを示しており、*は差分演算処理後の信号を示している。
【0032】
図6(b)に示す場合にも図6(a)と同様に、前記パルスクラッタ抑圧部9は、元の受信信号R4とコピーした受信信号R5とを単位信号Uの信号長Lだけ相互にシフトさせて差分を演算している。図6(b)の場合も同様に、受信信号R4にウェブクラッタなどのクラッタが重畳した場合、受信信号R4に単位信号Uの相互間に重畳し、しかも、受信信号R5は受信信号R4をコピーしたものであるから、受信信号R4と受信信号R5とには、前記クラッタが単位信号U間の同一の位置に重畳しているから、差分演算処理をすることにより、前記クラッタが抑圧されることとなる。
【0033】
本発明の実施形態における前記パルスクラッタ抑圧部9は、図6(a)或いは図6(b)に示す方式を用いてクラッタを抑圧するものであるが、このクラッタ抑圧方式自体に特徴がない。既設のレーダ装置では、パルスドップラ方式であるのに対して、本発明の実施形態における前記パルスクラッタ抑圧部9は、図3に示したような1パルスP内に同一の変調を施した2以上の単位信号Uを繰り返して配列したレーダ信号Sを用いることを前提として、1パルスP内でクラッタ成分を抑制することを特徴とするものであり、そのクラッタ成分を抑制する方式としてはいずれのものでも用いることができるものである。
【0034】
前記パルスクラッタ抑圧部9は、前記パルス圧縮部8が例えば図5に示す様なパルス圧縮処理した信号を出力とすると、1パルスP内でクラッタ成分を抑制することにより、図7に示す様なパルス内クラッタ抑圧処理後の信号を出力する。
【0035】
前記消え残り信号抑圧部10は、前記パルス内クラッタ抑圧部9の出力するパルス内クラッタ処理後に受信信号(レーダ信号S)の端部に消え残る信号成分を抑圧する機能を有している。具体的には、前記消え残り信号抑圧部10は、孤立信号抑圧処理と消え残り信号群抑圧処理とを行い、前記パルス内クラッタ抑圧部9の出力するパルス内クラッタ処理後の受信信号(レーダ信号S)の成分値(I(In-phase),Q(Quadrature))について、同信号の振幅値の移動平均値で除して平均振幅値を一定値にする等により、消え残りの信号が大きなノイズ成分になるのを抑圧する機能を有している。
【0036】
前記消え残り信号抑圧部10がパルス内クラッタ処理後に受信信号(レーダ信号S)の端部に消え残る信号成分を抑圧する一例を説明する。
【0037】
先ず、前記消え残り信号抑圧部10は、主に孤立したクラッタ成分の消え残り信号を抑圧する孤立信号抑圧処理を行う。すなわち、前記消え残り信号抑圧部10は、例えば異なる距離の探知目標で反射した各距離の単位信号列の平均振幅値に比して、その単位信号列のうちで設定値以上に大きな振幅値をもつ信号を求め、その振幅値が単位信号列の平均値となるように前記求めた信号の成分値(I,Q)を抑圧する。前記消え残り信号抑圧部10が、図7に示すパルス内クラッタ抑制処理を行った受信信号(レーダ信号S)に前記孤立信号抑圧処理を行った後の受信信号(レーダ信号S)を図8(a)に示す。
【0038】
次に、前記消え残り信号抑圧部10は、雨などの影響によって広域に拡がったクラッタ成分の消え残り信号を抑圧する消え残り信号群抑圧処理を行う。すなわち、前記消え残り信号抑圧部10は、前記孤立信号抑圧処理で求めた信号の成分値(I,Q)を前記振幅値の移動平均値で除算処理し、全信号の平均振幅値を“1”とすることにより、消え残りの信号群が大きなノイズ成分となるのを抑制する。前記消え残り信号抑圧部10が、図8(a)に示す孤立信号抑圧処理を行った受信信号(レーダ信号S)に前記消え残り信号群抑圧処理を行った後の受信信号(レーダ信号S)を図8(b)に示す。図7及び図8(a)(b)において、図5と同様に、横軸は距離相当時間値を示しており、縦軸は振幅値を示している。
【0039】
前記単位信号列積分部11は、前記消え残り信号抑圧部10で得た受信信号(レーダ信号S)について、例えば異なる距離の探知目標で反射した各距離の受信信号を構成する単位信号Uをピックアップして、フーリェ変換処理により前記受信信号をドップラ周波数毎に積分して単位信号列積分値を得るものである。
【0040】
前記パルス間信号積分部12は、前記単位信号列積分部11で得た単位信号列積分値を、同じ信号長Lの単位信号Uによるレーダ信号S(送信信号)で得た受信信号毎に、受信信号間で積分するものである。
【0041】
前記目標信号抽出部13は、前記パルス間信号積分部12で得た積分値について、誤警報確率を一定にする等を行った後、所定の大きさを持つ信号を目標信号として抽出するものである。
【0042】
前記目標信号抽出部13の具体的な1例を説明すると、前記目標信号抽出部13は、前記パルス間信号積分部12で得た積分値に基づいてドップラ周波数成分毎の平均値を求め、その平均値の設定値を超える信号を目標信号として抽出する。前記設定値は、前記平均値×設定倍数で示される閾値を意味している。前記設定倍数は通常4倍くらいとするが、これに限られるものではない。
【0043】
前記目標距離確定部14は、前記目標信号抽出部13で得た目標信号について、単位信号Uの信号長Lの異なるレーダ信号S(送信信号)で得た目標信号が共通して示す距離値を求め、当該目標信号の距離値として確定するものである。
【0044】
次に、本発明の実施形態に係るレーダ装置を用いて、探知目標を検知する場合を図9に基づいて説明する。以下の説明では、レーダ信号供給部1が図3に示すレーダ信号Sを供給することを前提に説明する。なお、レーダ信号Sを形成する単位信号Uはその個数、変調などはいずれのものであってもよい。
【0045】
レーダ信号供給部1の信号生成部7は図3に示す様に、チャープ変調等の変調を同一に施した信号である2以上の単位信号Uを送信単位である1パルスP内に繰り返して配列したレーダ信号S(S1,S2・・・Sn)を生成し、表示・制御部6からの制御の下で、前記レーダ信号S1,S2・・・Snを個々に一定間隔毎に出力する、或いはグループ単位として出力する。前記グループ単位として出力する場合には、例えば、連続する2つのレーダ信号S1とレーダ信号S2とを1つのグループとし、次に連続する2つのレーダ信号S3とレーダ信号S4とを1つのグループとして出力する。
【0046】
前記レーダ信号供給部1の信号長可変部8は、前記信号生成部7からのレーダ信号Sを受け取ると、探知目標の距離にアンビギュィティ(ambiguity)が生じるのを回避するために、前記信号生成部7から出力されたレーダ信号Sを形成している個々の単位信号Uの信号長Lを、レーダ信号S1,S2・・・又はSn毎、或いはレーダ信号Sのグループ毎に変更し、そのレーダ信号Sを送信部2に送信する。
【0047】
前記送信部2は、レーダの搬送波を前記レーダ信号供給部1で生成したレーダ信号Sで変調して増幅し、そのレーダ信号Sをアンテナ部3に出力する。
【0048】
前記アンテナ部3は、前記表示・制御部6の制御の下で、前記送信部2の出力する送信信号を指定された方向に送信し、かつ探知目標等で反射した受信信号を受信し、その受信信号を受信部4に出力する。
【0049】
前記受信部4は、前記アンテナ部3で受信した前記受信信号を増幅し、前記受信信号から前記搬送波の成分を除き、その受信信号を信号処理部5に出力する(図9のステップS1)。
【0050】
前記信号処理部5のパルス圧縮部8は、前記受信部4の出力する受信信号と、前記受信信号を取得するために前記レーダ信号供給部1の出力したレーダ信号Sとを入力として、前記レーダ信号Sを形成する同一の変調を施した単位信号Uを参照信号として、前記受信部4の出力する前記受信信号に含まれる単位信号Uの成分を圧縮し、図5に示す様なパルス圧縮後の信号を出力する(図9のステップS2)。
【0051】
前記パルス内クラッタ抑圧部9は、前記パルス圧縮部8がパルス圧縮した受信信号(例えば図5に示す信号)について、1パルスP内でクラッタ成分を抑制する(図9のステップS3)。
【0052】
具体的に説明すると、前記パルスクラッタ抑圧部9は図6(b)に示す様に、前記パルス圧縮部8がパルス内クラッタ抑圧処理によりパルス圧縮した受信信号を元の受信信号R4とし、その元の受信信号R4をコピーし、その受信信号を元の受信信号R4に対して単位信号Uの信号長Lだけシフトさせて受信信号R5を得て、元の受信信号R4とコピーした受信信号R5との差分を演算により求め、前記差分による信号R6を得ることにより、1パルスP内でクラッタ成分を抑圧し、そのパルス内クラッタ抑圧処理済みの信号を消え残り信号抑圧部10に出力する(図9のステップS3)。
【0053】
前記消え残り信号抑圧部10は、前記パルスクラッタ抑圧部9が出力するパルス内クラッタ抑圧処理済みの信号を受け取ると、先ず、前記受け取った信号に孤立信号抑圧処理を行う。前記孤立信号抑圧処理を図10に基づいて説明する。
【0054】
前記消え残り信号抑圧部10は、例えば異なる距離の探知目標で反射した各距離の単位信号列の平均振幅値に比して異常に大きな振幅値をもつ信号を求め、その振幅値が単位信号列の平均値となるように前記求めた信号の成分値(I,Q)を抑圧する。
【0055】
具体的に説明すると、前記消え残り信号抑圧部10は、パルス内クラッタ抑圧処理済みの受信信号に含まれる単位信号Uの振幅値を算出し(図10のステップS11)、その振幅値をファイルに記録する(図10のステップS12)。
【0056】
次に、前記消え残り信号抑圧部10は、前記振幅値を算出した受信信号に対して1パルスP内で設定した範囲の単位信号Uの振幅値が制御部6から入力されると(図10のステップS13)、その入力された振幅値の平均振幅値を算出する(図10のステップS14)。
【0057】
前記消え残り信号抑圧部10は、ステップS12で記録した振幅値を読み出して(図10のステップS15)、ステップ12での振幅値と、ステップ14で求めた平均振幅値の設定倍とを比較する(図10のステップS16)。
【0058】
前記消え残り信号抑圧部10は、ステップ12での振幅値がステップ14で求めた平均振幅値の設定倍の値より大きければ、ステップ12での振幅値を持つ受信信号を孤立大信号抑圧済信号として出力する(図10のステップS20)。
【0059】
前記消え残り信号抑圧部10は、ステップ12での振幅値がステップ14で求めた平均振幅値の設定倍の値より小さければ、ステップ12で振幅値を求めた受信信号の成分値(I,Q)を読み出し(図10のステップS18)、例えば移動する飛翔体である探知目標の異なり位置で反射した各距離の単位信号列の平均振幅値に比して異常に大きな振幅値をもつ信号を求め、その振幅値が単位信号列の平均値となるように前記求めた信号の成分値(I,Q)を抑圧する。
【0060】
具体的に説明すると、前記消え残り信号抑圧部10は、ステップS18で読み出した受信信号の成分値(I,Q)を次式で平均振幅値となる値にして(図10のステップS19)、これを孤立大信号抑圧済信号として出力する(図10のステップS20)。
AAS×S(I,Q)/AS
ただし、AASはステップS14で求めた平均振幅値、S(I,Q)はステップ18で読み出した受信信号の成分値(I,Q)、ASはステップ18で読み出した受信信号の振幅値である。
【0061】
次に、前記消え残り信号抑圧部10は、主に変調例えばチャフ等により広帯域に拡がったクラッタ成分の消え残り信号を抑圧する消え残り信号群抑圧処理を行い、前記孤立大信号抑圧処理で求めた信号の成分値(I,Q)を前記振幅値の移動平均値で除算処理し、全信号の平均振幅値を“1”とすることにより、消え残りの信号群が大きなノイズ成分となるのを抑制する。前記消え残り信号群抑圧処理を図11に基づいて説明する。
【0062】
具体的に説明すると、前記消え残り信号抑圧部10は、孤立大信号抑圧処理済みの受信信号に含まれる単位信号Uの振幅値を算出し(図11のステップS30)、その振幅値をファイルに記録する(図11のステップS31)。
【0063】
次に、前記消え残り信号抑圧部10は、前記振幅値を算出した受信信号に対して1パルスP内で設定した範囲の単位信号Uの振幅値が制御部6から入力されると(図11のステップS32)、その入力された振幅値の平均振幅値を算出する(図11のステップS33)。
【0064】
前記消え残り信号抑圧部10は、ステップ31で振幅値を求めた受信信号の成分値(I,Q)を読み出し(図11のステップS34)、その成分値をステップS33で求めた平均振幅値で除算し、前記信号の成分値(I,Q)を抑圧し、これを消え残り信号抑圧済み信号として出力する(図11のステップS36)。
【0065】
前記単位信号列積分部11は、前記消え残り信号抑圧部10で得た受信信号(レーダ信号S)について、例えば異なる距離の探知目標で反射した各距離の受信信号を構成する単位信号Uをピックアップして、フーリェ変換処理により前記受信信号をドップラ周波数毎に積分して単位信号列積分値を得る。この処理を図12に基づいて説明する。
【0066】
前記単位信号列積分部11は、前記消え残り信号抑圧部10で得た受信信号(レーダ信号S)について、例えば異なる距離の探知目標で反射した各距離の受信信号を構成する単位信号Uをピックアップし(図12のステップS40)、設定したポイント数の高速フーリェ変換を行うように、不足する信号数の“0”を付加する(図12のステップS41)。
【0067】
前記単位信号列積分部11は、ステップ41で得た信号を高速変換し(図12のステップS42)、フーリェ変換値の振幅値を求め(図12のステップS43)、ステップS43で求めた振幅値を単位信号列積分値として出力する(図12のステップS44)。
【0068】
前記パルス間信号積分部12は、前記単位信号列積分部11で得た単位信号列積分値を、同じ信号長Lの単位信号Uによるレーダ信号S(送信信号)で得た受信信号毎に、受信信号間で積分する。
【0069】
前記目標信号抽出部13は、前記パルス間信号積分部12で得た積分値について、誤警報確率を一定にする等を行った後、所定の大きさを持つ信号を目標信号として抽出する。具体的に説明すると、前記目標信号抽出部13は、前記パルス間信号積分部12で得た積分値に基づいてドップラ周波数成分毎の平均値を求め(図13のステップS50)、その平均値の設定値を乗じて目標信号を抽出する際の閾値とする(図13のステップS51,ステップS52)。前記閾値はドップラ周波数毎のドップラ毎閾値である(図13のステップS52)。
【0070】
前記目標信号抽出部13は、前記パルス間信号積分部12の出力する単位信号列積分値を入力として(図13のステップS53)、その積分値を前記閾値と比較し(図13のステップS54)、その閾値を越える信号を目標信号として抽出する(図55のステップS55)。
【0071】
前記目標距離確定部14は、前記目標信号抽出部13で得た目標信号について、単位信号Uの信号長Lの異なるレーダ信号S(送信信号)で得た目標信号が共通して示す距離値を求め、当該目標信号の距離値として確定する。
【0072】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、異なる距離の探知目標で反射した受信信号をドップラ周波数毎に積分する前に、受信信号を単位信号の変調信号で圧縮した信号について、単位信号間で差分を得る等のパルス内クラッタ抑圧処理でクラッタ成分を抑圧した後、平均信号レベルを一定にする等の消え残り信号抑圧処理により、パルス内クラッタ抑圧で消え残った単位信号成分の振幅を小さくすることで、積分する単位信号列と重なる他の距離の単位信号列がノイズとして働くのを回避できる。
【0073】
さらに、本発明の実施形態によれば、送信信号毎もしくは送信信号のグループ毎に単位信号の信号長を変えることにより、同一目標について複数の可能性ある距離値を得て、共通して可能性のある距離値を求めることで距離のアンビギュィティを除くことができる。
【0074】
以上のように、本発明の実施形態によれば、速度分散の大きいウェザクラッタ等を高度に抑圧でき、各受信信号で得たドップラ情報から目標の対レーダ速度が得られるようにするとともに、送信信号の周波数をパルス毎に変更してもクラッタ抑圧機能が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、捜索レーダ,追尾レーダ,捜索用ソーナーなどの適用できるものである。
【符号の説明】
【0076】
1 レーダ信号供給部
6 信号生成部
7 信号長可変部
8 パルス圧縮部
9 パルス内クラッタ抑圧部
10 消え残り信号抑圧部
13 目標信号抽出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッタを抑圧する能力を向上させたレーダ装置、目標探知方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置は、送信信号を目標に照射して目標等で反射された信号を受信し、受信信号に含まれる地上の地物や雨等からの反射信号であるクラッタや電波妨害等によるノイズ成分を抑圧して、目標信号を検出している。そのさい、目標のレーダ反射断面積が小さくなると、目標からの反射信号は小さくなるので、地上の地物や雨等からの反射信号であるクラッタや電波妨害の影響が相対的に大きくなる。このため、レーダ反射断面積の小さい目標を探知することが求められるレーダ装置では、レーダ装置のクラッタ抑圧能力と対電波妨害能力を強化する必要がある。
【0003】
汎用の航空機等を主探知対象とするレーダ装置は、クラッタの抑圧に用いるドップラ情報を送信信号でサンプリングして得ている(特許文献1〜特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−257910号公報
【特許文献2】特開平11−223672号公報
【特許文献3】特開2001−264412号公報
【特許文献4】特許第3006815号公報
【特許文献5】特許第4005007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、既に開発されている前記レーダ装置では、クラッタの抑圧に用いるドップラ情報を、送信パルスの間隔でサンプリングして得ていることに起因して、次の様な課題がある。その課題について説明する。
【0006】
送信パルスの間隔を広く設定する必要のある地上設置型の長距離対空レーダ装置では、ドップラ周波数の周期長に対するサンプリングが粗くなることから、得られるドップラ情報は数m/s〜数十m/s の単位で速度のアンビギュィティ(ambiguity)を持つ。
【0007】
その結果、大きな速度分散を持つウェザクラッタ等を高度に抑圧するのを困難であるという課題がある。また、速度のアンビギュィティが大きいので、ドップラ情報から目標の対レーダ速度を得ることも困難であるという課題がある。
【0008】
さらに、アクティブ電波妨害等を効果的に回避するために送信周波数を送信信号毎に変更すると、ドップラ情報が得られなくなり、クラッタを抑圧する能力が失われるという課題がある。
【0009】
本発明の目的は、パルス内でクラッタ成分を抑圧することにより、上述したパルスドップラ方式の課題を解決したレーダ装置、目標探知方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した様に、前記レーダ装置が有している課題は、クラッタの抑圧に用いるドップラ情報を送信パルスの間隔でサンプリングして得ていることに起因する。
【0011】
従って、これらの課題を解決するに、本発明は、ドップラ情報のサンプリング間隔を稠密にして、受信信号内でドップラ情報を得ることにより、クラッタを抑圧すること意図したものである。
【0012】
そこで、本発明では、送信単位である送信信号の1パルス内に同一の変調を施した単位信号を複数個配列したレーダ信号を、前記送信信号として用いることにより、ドップラ情報を前記単位信号の間隔でサンプリングして得ている。
【0013】
上述した本発明の構成により、クラッタの抑圧に用いるドップラ情報を各送信信号でサンプリングして得ていることに起因する課題を解決している。なお、前記送信信号として、送信信号の1パルス内に同一の変調を施した単位信号を複数個配列したレーダ信号を用いると、目標の距離にアンビギュィティ(ambiguity)が生じるが、これは前記レーダ信号を形成している単位信号の信号長を変更することで対処する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、パルス内でクラッタ成分を抑圧することにより、上述したパルスドップラ方式の課題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るレーダ装置を示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態に用いるレーダ信号供給部の具体例を示す構成図である。
【図3】本発明の実施形態に用いるレーダ信号の具体例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に信号処理部の具体例を示す構成図である。
【図5】本発明の実施形態において受信信号をパルス圧縮処理した信号を示す波形図である。
【図6】本発明の実施形態において、パルス内クラッタ抑圧処理を説明する図である。
【図7】本発明の実施形態において、パルス内クラッタ抑圧処理した信号を示す波形図である。
【図8】本発明の実施形態において、パルス内クラッタ抑圧処理後の信号に消え残るクラッタを抑制処理した後の信号を示す波形図である。
【図9】本発明の実施形態において、目標を探知する方法を示すチャートフローである。
【図10】本発明の実施形態において、孤立大信号を抑圧処理する過程を示すチャートフローである。
【図11】本発明の実施形態において、消え残り信号群を抑圧処理する過程を示すチャートフローである。
【図12】本発明の実施形態において、単位信号列を積分処理する過程を示すチャートフローである。
【図13】本発明の実施形態において、目標信号を抽出する過程を示すチャートフローである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1に示す様に、本発明の実施形態に係るレーダ装置は、レーダ信号を生成するレーダ信号供給部1と、レーダの搬送波を前記レーダ信号供給部1で生成したレーダ信号で変調して増幅する送信部2と、前記送信部2の出力する送信信号を指定された方向に送信し、かつ目標等で反射した受信信号を受信するアンテナ部3と、前記アンテナ部3で受信した前記受信信号を増幅し、前記受信信号から前記搬送波の成分を除く受信部4と、前記受信部4の出力する信号を処理して目標信号を抽出する信号処理部5と、前記信号処理部5で得た目標信号を含むデータを表示するとともに、前記レーダ信号生成部1,送信部2,アンテナ部3,受信部4及び信号処理部5を制御する表示・制御部6とを有している。
【0018】
さらに、本発明の実施形態に係るレーダ装置に用いる前記レーダ信号生成部1と前記信号処理部5との具体例について説明する。
【0019】
前記レーダ信号供給部1は図2に示す様に、信号生成部7と、信号長可変部8とを有している。以下では、信号生成部7及び信号長可変部8とをハードウェアとして構築した例を説明するが、コンピュータにプログラムを実行させることにより、ソフトウェア上で信号生成部7及び信号長可変部8とを実現するようにしてもよい。
【0020】
前記信号生成部7は図3に示す様に、チャープ変調等の変調を同一に施した信号である2以上の単位信号Uを送信単位である1パルスP内に繰り返して配列したレーダ信号S(S1,S2・・・Sn)を生成する機能を有している。図3の例では、前記信号生成部7は、レーダ信号Sを形成する単位信号Uとして、同一の変調を施した三角波形の単位信号を生成しているが、これに限られるものではない。要は、送信単位である1パルス内に同一の変調を施した2以上の単位信号Uを繰り返して配列することにより、ドップラ情報のサンプリングを緻密にして送信信号であるレーダ信号に基づいて取得した受信信号内でドップラ情報を得ることが目的であるから、前記単位信号Uは、同一の変調を施した信号であれば、いずれのものであってもよいものである。
【0021】
さらに、前記信号生成部7は、前記表示・制御部6からの制御の下で、前記レーダ信号S1,S2・・・Snを個々に一定間隔毎に出力する、或いは、例えば連続する2つのレーダ信号S1とレーダ信号S2とを1つのグループとし、次に連続する2つのレーダ信号S3とレーダ信号S4とを1つのグループとして、これらのレーダ信号S1及びS2とレーダ信号S3及びS4とをグループ単位で一定間隔毎に出力する機能を有している。これらの場合、前記レーダ信号S1,S2・・・Snの個々は、送信単位となる。
【0022】
なお、前記信号生成部7は、後述の処理で得られるドップラ情報が速度アンビギュィティを有しないようにするために、単位信号Uの信号長Lを想定する探知目標の最大対レーダ速度で生起するドップラ偏移の周期長の1/2以下とすることが望ましい。また、図3の例では、前記信号生成部7は、連続する2つのレーダ信号S1及びS2,S3及びS4を1つのグループとして出力するようにしたが、これに限られるものではない。前記信号生成部7は、1つのグループに含まれるレーダ信号Sの個数を適宜変更して出力するものである。
【0023】
前記信号長可変部8は、探知目標の距離にアンビギュィティ(ambiguity)が生じるのを回避するために、前記信号生成部7から出力されたレーダ信号Sを形成している個々の単位信号Uの信号長Lを、レーダ信号S1,S2・・・又はSn毎、或いはレーダ信号Sのグループ毎に変更する機能を有している。
【0024】
前記信号処理部5は図4に示す様に、パルス圧縮部8と、パルス内クラッタ抑圧部9と、消え残り信号抑圧部10と、単位信号列積分部11と、パルス間信号積分部12と、目標信号抽出部13と、目標距離確定部14とを有している。以下では、パルス圧縮部8と、パルス内クラッタ抑圧部9と、消え残り信号抑圧部10と、単位信号列積分部11と、パルス間信号積分部12と、目標信号抽出部13と、目標距離確定部14とをハードウェアとして構築した例を説明するが、コンピュータにプログラムを実行させることにより、ソフトウェア上で、パルス圧縮部8と、パルス内クラッタ抑圧部9と、消え残り信号抑圧部10と、単位信号列積分部11と、パルス間信号積分部12と、目標信号抽出部13と、目標距離確定部14とを実現するようにしてもよい。
【0025】
前記パルス圧縮部8は、前記受信部4の出力する受信信号と、前記受信信号を取得するために前記レーダ信号供給部1の出力したレーダ信号Sとを入力として、前記レーダ信号Sを形成する同一の変調を施した単位信号Uを参照信号として、前記受信部4の出力する前記受信信号に含まれる単位信号Uの成分を圧縮する機能を有している。
【0026】
前記パルス圧縮部8は、前記レーダ信号Sとして、例えば図3に示した三角波形の単位信号Uを2以上繰り返して配列したレーダ信号Sを用いた場合、前記レーダ信号Sを形成する同一の変調を施した単位信号Uを参照信号として、前記受信部4からの前記受信信号に含まれる単位信号Uの成分を圧縮することにより、図5に示す様なパルス圧縮後の信号を出力する。図5において、図の横軸は、探知目標で反射した受信信号を前記受信部4で受信した時刻を表し、縦軸はパルス圧縮した信号の振幅値を表している。
【0027】
前記パルス内クラッタ抑圧部9は、前記パルス圧縮部8がパルス圧縮した受信信号(例えば図5に示す信号)について、単位信号Uの相互間で差分を求めるなどの方法により1パルスP内でクラッタ成分を抑制する機能を有している。具体例を用いて説明する。
【0028】
前記パルスクラッタ抑圧部9は図6(a)に示す様に、前記パルス圧縮部8がパルス圧縮した受信信号(例えば図5に示す信号)を元の受信信号R1とし、その元の受信信号R1をコピーし、そのコピーした受信信号を元の受信信号R1に対して単位信号Uの信号長Lだけシフトさせて受信信号R2を得て、元の受信信号R1とコピーした受信信号R2との差分を演算により求め、前記差分による信号R3を得ることにより、1パルスP内でクラッタ成分を抑圧する。図6(a)において、受信信号R2を得る際には、元の受信信号R1のI(In-phase)及びQ(Quadrature)成分をそれぞれコピーする。また、図6(a)に示す○は元の単位信号Uを示しており、*は差分演算処理後の信号を示している。
【0029】
前記パルスクラッタ抑圧部9は図6(a)に示す様に、元の受信信号R1とコピーした受信信号R2とを単位信号Uの信号長Lだけ相互にシフトさせて差分を演算している。ここで、受信信号R1とR2とは1パルス内に2以上の単位信号Uを配列したレーダ信号Sに基づくものである。したがって、受信信号R1にウェブクラッタなどのクラッタが重畳した場合、受信信号R1に単位信号Uの相互間に重畳することとなり、しかも、受信信号R2は受信信号R1をコピーしたものであるから、受信信号R1と受信信号R2とには、前記クラッタが単位信号U間の同一の位置に重畳しているから、差分演算処理をすることにより、前記クラッタが抑圧されることとなる。
【0030】
図6(a)に示す例では、差分演算処理により1パルスP内でクラッタ成分を抑圧する方式について説明したが、これに限られるものではない。別の例を図6(b)に基づいて説明する。
【0031】
図6(b)の例では、前記パルスクラッタ抑圧部9は、前記パルス圧縮部8がMTI−A処理によりパルス圧縮した受信信号を元の受信信号R4とし、その元の受信信号R4をコピーし、その受信信号を元の受信信号R4に対して単位信号Uの信号長Lだけシフトさせて受信信号R5を得て、元の受信信号R4とコピーした受信信号R5との差分を演算により求め、前記差分による信号R6を得ることにより、1パルスP内でクラッタ成分を抑圧する。図6(b)において、受信信号R5を得る際には、元の受信信号R4のI(In-phase)及びQ(Quadrature)成分をそれぞれコピーする。また、図6(b)に示す○は元の単位信号Uを示しており、*は差分演算処理後の信号を示している。
【0032】
図6(b)に示す場合にも図6(a)と同様に、前記パルスクラッタ抑圧部9は、元の受信信号R4とコピーした受信信号R5とを単位信号Uの信号長Lだけ相互にシフトさせて差分を演算している。図6(b)の場合も同様に、受信信号R4にウェブクラッタなどのクラッタが重畳した場合、受信信号R4に単位信号Uの相互間に重畳し、しかも、受信信号R5は受信信号R4をコピーしたものであるから、受信信号R4と受信信号R5とには、前記クラッタが単位信号U間の同一の位置に重畳しているから、差分演算処理をすることにより、前記クラッタが抑圧されることとなる。
【0033】
本発明の実施形態における前記パルスクラッタ抑圧部9は、図6(a)或いは図6(b)に示す方式を用いてクラッタを抑圧するものであるが、このクラッタ抑圧方式自体に特徴がない。既設のレーダ装置では、パルスドップラ方式であるのに対して、本発明の実施形態における前記パルスクラッタ抑圧部9は、図3に示したような1パルスP内に同一の変調を施した2以上の単位信号Uを繰り返して配列したレーダ信号Sを用いることを前提として、1パルスP内でクラッタ成分を抑制することを特徴とするものであり、そのクラッタ成分を抑制する方式としてはいずれのものでも用いることができるものである。
【0034】
前記パルスクラッタ抑圧部9は、前記パルス圧縮部8が例えば図5に示す様なパルス圧縮処理した信号を出力とすると、1パルスP内でクラッタ成分を抑制することにより、図7に示す様なパルス内クラッタ抑圧処理後の信号を出力する。
【0035】
前記消え残り信号抑圧部10は、前記パルス内クラッタ抑圧部9の出力するパルス内クラッタ処理後に受信信号(レーダ信号S)の端部に消え残る信号成分を抑圧する機能を有している。具体的には、前記消え残り信号抑圧部10は、孤立信号抑圧処理と消え残り信号群抑圧処理とを行い、前記パルス内クラッタ抑圧部9の出力するパルス内クラッタ処理後の受信信号(レーダ信号S)の成分値(I(In-phase),Q(Quadrature))について、同信号の振幅値の移動平均値で除して平均振幅値を一定値にする等により、消え残りの信号が大きなノイズ成分になるのを抑圧する機能を有している。
【0036】
前記消え残り信号抑圧部10がパルス内クラッタ処理後に受信信号(レーダ信号S)の端部に消え残る信号成分を抑圧する一例を説明する。
【0037】
先ず、前記消え残り信号抑圧部10は、主に孤立したクラッタ成分の消え残り信号を抑圧する孤立信号抑圧処理を行う。すなわち、前記消え残り信号抑圧部10は、例えば異なる距離の探知目標で反射した各距離の単位信号列の平均振幅値に比して、その単位信号列のうちで設定値以上に大きな振幅値をもつ信号を求め、その振幅値が単位信号列の平均値となるように前記求めた信号の成分値(I,Q)を抑圧する。前記消え残り信号抑圧部10が、図7に示すパルス内クラッタ抑制処理を行った受信信号(レーダ信号S)に前記孤立信号抑圧処理を行った後の受信信号(レーダ信号S)を図8(a)に示す。
【0038】
次に、前記消え残り信号抑圧部10は、雨などの影響によって広域に拡がったクラッタ成分の消え残り信号を抑圧する消え残り信号群抑圧処理を行う。すなわち、前記消え残り信号抑圧部10は、前記孤立信号抑圧処理で求めた信号の成分値(I,Q)を前記振幅値の移動平均値で除算処理し、全信号の平均振幅値を“1”とすることにより、消え残りの信号群が大きなノイズ成分となるのを抑制する。前記消え残り信号抑圧部10が、図8(a)に示す孤立信号抑圧処理を行った受信信号(レーダ信号S)に前記消え残り信号群抑圧処理を行った後の受信信号(レーダ信号S)を図8(b)に示す。図7及び図8(a)(b)において、図5と同様に、横軸は距離相当時間値を示しており、縦軸は振幅値を示している。
【0039】
前記単位信号列積分部11は、前記消え残り信号抑圧部10で得た受信信号(レーダ信号S)について、例えば異なる距離の探知目標で反射した各距離の受信信号を構成する単位信号Uをピックアップして、フーリェ変換処理により前記受信信号をドップラ周波数毎に積分して単位信号列積分値を得るものである。
【0040】
前記パルス間信号積分部12は、前記単位信号列積分部11で得た単位信号列積分値を、同じ信号長Lの単位信号Uによるレーダ信号S(送信信号)で得た受信信号毎に、受信信号間で積分するものである。
【0041】
前記目標信号抽出部13は、前記パルス間信号積分部12で得た積分値について、誤警報確率を一定にする等を行った後、所定の大きさを持つ信号を目標信号として抽出するものである。
【0042】
前記目標信号抽出部13の具体的な1例を説明すると、前記目標信号抽出部13は、前記パルス間信号積分部12で得た積分値に基づいてドップラ周波数成分毎の平均値を求め、その平均値の設定値を超える信号を目標信号として抽出する。前記設定値は、前記平均値×設定倍数で示される閾値を意味している。前記設定倍数は通常4倍くらいとするが、これに限られるものではない。
【0043】
前記目標距離確定部14は、前記目標信号抽出部13で得た目標信号について、単位信号Uの信号長Lの異なるレーダ信号S(送信信号)で得た目標信号が共通して示す距離値を求め、当該目標信号の距離値として確定するものである。
【0044】
次に、本発明の実施形態に係るレーダ装置を用いて、探知目標を検知する場合を図9に基づいて説明する。以下の説明では、レーダ信号供給部1が図3に示すレーダ信号Sを供給することを前提に説明する。なお、レーダ信号Sを形成する単位信号Uはその個数、変調などはいずれのものであってもよい。
【0045】
レーダ信号供給部1の信号生成部7は図3に示す様に、チャープ変調等の変調を同一に施した信号である2以上の単位信号Uを送信単位である1パルスP内に繰り返して配列したレーダ信号S(S1,S2・・・Sn)を生成し、表示・制御部6からの制御の下で、前記レーダ信号S1,S2・・・Snを個々に一定間隔毎に出力する、或いはグループ単位として出力する。前記グループ単位として出力する場合には、例えば、連続する2つのレーダ信号S1とレーダ信号S2とを1つのグループとし、次に連続する2つのレーダ信号S3とレーダ信号S4とを1つのグループとして出力する。
【0046】
前記レーダ信号供給部1の信号長可変部8は、前記信号生成部7からのレーダ信号Sを受け取ると、探知目標の距離にアンビギュィティ(ambiguity)が生じるのを回避するために、前記信号生成部7から出力されたレーダ信号Sを形成している個々の単位信号Uの信号長Lを、レーダ信号S1,S2・・・又はSn毎、或いはレーダ信号Sのグループ毎に変更し、そのレーダ信号Sを送信部2に送信する。
【0047】
前記送信部2は、レーダの搬送波を前記レーダ信号供給部1で生成したレーダ信号Sで変調して増幅し、そのレーダ信号Sをアンテナ部3に出力する。
【0048】
前記アンテナ部3は、前記表示・制御部6の制御の下で、前記送信部2の出力する送信信号を指定された方向に送信し、かつ探知目標等で反射した受信信号を受信し、その受信信号を受信部4に出力する。
【0049】
前記受信部4は、前記アンテナ部3で受信した前記受信信号を増幅し、前記受信信号から前記搬送波の成分を除き、その受信信号を信号処理部5に出力する(図9のステップS1)。
【0050】
前記信号処理部5のパルス圧縮部8は、前記受信部4の出力する受信信号と、前記受信信号を取得するために前記レーダ信号供給部1の出力したレーダ信号Sとを入力として、前記レーダ信号Sを形成する同一の変調を施した単位信号Uを参照信号として、前記受信部4の出力する前記受信信号に含まれる単位信号Uの成分を圧縮し、図5に示す様なパルス圧縮後の信号を出力する(図9のステップS2)。
【0051】
前記パルス内クラッタ抑圧部9は、前記パルス圧縮部8がパルス圧縮した受信信号(例えば図5に示す信号)について、1パルスP内でクラッタ成分を抑制する(図9のステップS3)。
【0052】
具体的に説明すると、前記パルスクラッタ抑圧部9は図6(b)に示す様に、前記パルス圧縮部8がパルス内クラッタ抑圧処理によりパルス圧縮した受信信号を元の受信信号R4とし、その元の受信信号R4をコピーし、その受信信号を元の受信信号R4に対して単位信号Uの信号長Lだけシフトさせて受信信号R5を得て、元の受信信号R4とコピーした受信信号R5との差分を演算により求め、前記差分による信号R6を得ることにより、1パルスP内でクラッタ成分を抑圧し、そのパルス内クラッタ抑圧処理済みの信号を消え残り信号抑圧部10に出力する(図9のステップS3)。
【0053】
前記消え残り信号抑圧部10は、前記パルスクラッタ抑圧部9が出力するパルス内クラッタ抑圧処理済みの信号を受け取ると、先ず、前記受け取った信号に孤立信号抑圧処理を行う。前記孤立信号抑圧処理を図10に基づいて説明する。
【0054】
前記消え残り信号抑圧部10は、例えば異なる距離の探知目標で反射した各距離の単位信号列の平均振幅値に比して異常に大きな振幅値をもつ信号を求め、その振幅値が単位信号列の平均値となるように前記求めた信号の成分値(I,Q)を抑圧する。
【0055】
具体的に説明すると、前記消え残り信号抑圧部10は、パルス内クラッタ抑圧処理済みの受信信号に含まれる単位信号Uの振幅値を算出し(図10のステップS11)、その振幅値をファイルに記録する(図10のステップS12)。
【0056】
次に、前記消え残り信号抑圧部10は、前記振幅値を算出した受信信号に対して1パルスP内で設定した範囲の単位信号Uの振幅値が制御部6から入力されると(図10のステップS13)、その入力された振幅値の平均振幅値を算出する(図10のステップS14)。
【0057】
前記消え残り信号抑圧部10は、ステップS12で記録した振幅値を読み出して(図10のステップS15)、ステップ12での振幅値と、ステップ14で求めた平均振幅値の設定倍とを比較する(図10のステップS16)。
【0058】
前記消え残り信号抑圧部10は、ステップ12での振幅値がステップ14で求めた平均振幅値の設定倍の値より大きければ、ステップ12での振幅値を持つ受信信号を孤立大信号抑圧済信号として出力する(図10のステップS20)。
【0059】
前記消え残り信号抑圧部10は、ステップ12での振幅値がステップ14で求めた平均振幅値の設定倍の値より小さければ、ステップ12で振幅値を求めた受信信号の成分値(I,Q)を読み出し(図10のステップS18)、例えば移動する飛翔体である探知目標の異なり位置で反射した各距離の単位信号列の平均振幅値に比して異常に大きな振幅値をもつ信号を求め、その振幅値が単位信号列の平均値となるように前記求めた信号の成分値(I,Q)を抑圧する。
【0060】
具体的に説明すると、前記消え残り信号抑圧部10は、ステップS18で読み出した受信信号の成分値(I,Q)を次式で平均振幅値となる値にして(図10のステップS19)、これを孤立大信号抑圧済信号として出力する(図10のステップS20)。
AAS×S(I,Q)/AS
ただし、AASはステップS14で求めた平均振幅値、S(I,Q)はステップ18で読み出した受信信号の成分値(I,Q)、ASはステップ18で読み出した受信信号の振幅値である。
【0061】
次に、前記消え残り信号抑圧部10は、主に変調例えばチャフ等により広帯域に拡がったクラッタ成分の消え残り信号を抑圧する消え残り信号群抑圧処理を行い、前記孤立大信号抑圧処理で求めた信号の成分値(I,Q)を前記振幅値の移動平均値で除算処理し、全信号の平均振幅値を“1”とすることにより、消え残りの信号群が大きなノイズ成分となるのを抑制する。前記消え残り信号群抑圧処理を図11に基づいて説明する。
【0062】
具体的に説明すると、前記消え残り信号抑圧部10は、孤立大信号抑圧処理済みの受信信号に含まれる単位信号Uの振幅値を算出し(図11のステップS30)、その振幅値をファイルに記録する(図11のステップS31)。
【0063】
次に、前記消え残り信号抑圧部10は、前記振幅値を算出した受信信号に対して1パルスP内で設定した範囲の単位信号Uの振幅値が制御部6から入力されると(図11のステップS32)、その入力された振幅値の平均振幅値を算出する(図11のステップS33)。
【0064】
前記消え残り信号抑圧部10は、ステップ31で振幅値を求めた受信信号の成分値(I,Q)を読み出し(図11のステップS34)、その成分値をステップS33で求めた平均振幅値で除算し、前記信号の成分値(I,Q)を抑圧し、これを消え残り信号抑圧済み信号として出力する(図11のステップS36)。
【0065】
前記単位信号列積分部11は、前記消え残り信号抑圧部10で得た受信信号(レーダ信号S)について、例えば異なる距離の探知目標で反射した各距離の受信信号を構成する単位信号Uをピックアップして、フーリェ変換処理により前記受信信号をドップラ周波数毎に積分して単位信号列積分値を得る。この処理を図12に基づいて説明する。
【0066】
前記単位信号列積分部11は、前記消え残り信号抑圧部10で得た受信信号(レーダ信号S)について、例えば異なる距離の探知目標で反射した各距離の受信信号を構成する単位信号Uをピックアップし(図12のステップS40)、設定したポイント数の高速フーリェ変換を行うように、不足する信号数の“0”を付加する(図12のステップS41)。
【0067】
前記単位信号列積分部11は、ステップ41で得た信号を高速変換し(図12のステップS42)、フーリェ変換値の振幅値を求め(図12のステップS43)、ステップS43で求めた振幅値を単位信号列積分値として出力する(図12のステップS44)。
【0068】
前記パルス間信号積分部12は、前記単位信号列積分部11で得た単位信号列積分値を、同じ信号長Lの単位信号Uによるレーダ信号S(送信信号)で得た受信信号毎に、受信信号間で積分する。
【0069】
前記目標信号抽出部13は、前記パルス間信号積分部12で得た積分値について、誤警報確率を一定にする等を行った後、所定の大きさを持つ信号を目標信号として抽出する。具体的に説明すると、前記目標信号抽出部13は、前記パルス間信号積分部12で得た積分値に基づいてドップラ周波数成分毎の平均値を求め(図13のステップS50)、その平均値の設定値を乗じて目標信号を抽出する際の閾値とする(図13のステップS51,ステップS52)。前記閾値はドップラ周波数毎のドップラ毎閾値である(図13のステップS52)。
【0070】
前記目標信号抽出部13は、前記パルス間信号積分部12の出力する単位信号列積分値を入力として(図13のステップS53)、その積分値を前記閾値と比較し(図13のステップS54)、その閾値を越える信号を目標信号として抽出する(図55のステップS55)。
【0071】
前記目標距離確定部14は、前記目標信号抽出部13で得た目標信号について、単位信号Uの信号長Lの異なるレーダ信号S(送信信号)で得た目標信号が共通して示す距離値を求め、当該目標信号の距離値として確定する。
【0072】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、異なる距離の探知目標で反射した受信信号をドップラ周波数毎に積分する前に、受信信号を単位信号の変調信号で圧縮した信号について、単位信号間で差分を得る等のパルス内クラッタ抑圧処理でクラッタ成分を抑圧した後、平均信号レベルを一定にする等の消え残り信号抑圧処理により、パルス内クラッタ抑圧で消え残った単位信号成分の振幅を小さくすることで、積分する単位信号列と重なる他の距離の単位信号列がノイズとして働くのを回避できる。
【0073】
さらに、本発明の実施形態によれば、送信信号毎もしくは送信信号のグループ毎に単位信号の信号長を変えることにより、同一目標について複数の可能性ある距離値を得て、共通して可能性のある距離値を求めることで距離のアンビギュィティを除くことができる。
【0074】
以上のように、本発明の実施形態によれば、速度分散の大きいウェザクラッタ等を高度に抑圧でき、各受信信号で得たドップラ情報から目標の対レーダ速度が得られるようにするとともに、送信信号の周波数をパルス毎に変更してもクラッタ抑圧機能が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、捜索レーダ,追尾レーダ,捜索用ソーナーなどの適用できるものである。
【符号の説明】
【0076】
1 レーダ信号供給部
6 信号生成部
7 信号長可変部
8 パルス圧縮部
9 パルス内クラッタ抑圧部
10 消え残り信号抑圧部
13 目標信号抽出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ信号供給部からの送信信号を探知目標に向けて送信し、前記探知目標で反射した受信信号を信号処理部で信号処理することにより前記目標を探知するレーダ装置であって、
前記レーダ信号供給部は、
同一の変調を施した信号である2以上の単位信号を送信単位である1パルス内に繰り返して配列したレーダ信号を生成する信号生成部を有し、
前記信号処理部は、
前記受信信号と、前記受信信号を取得するために前記レーダ信号供給部の出力したレーダ信号とを入力として、前記レーダ信号を形成する同一の変調を施した単位信号を参照信号として、前記受信信号に含まれる単位信号の成分を圧縮するパルス圧縮部と、
前記パルス圧縮部がパルス圧縮した受信信号について、1パルス内でクラッタ成分を抑制するパルス内クラッタ抑圧部と、
前記パルス内クラッタ抑圧部の出力するパルス内クラッタ処理後に受信信号の端部に消え残る信号成分を抑圧する消え残り信号抑圧部と、
前記消え残り信号抑圧部で得た受信信号について、探知目標の異なり位置で反射した各距離の受信信号を構成する単位信号をピックアップして、フーリェ変換処理により前記受信信号をドップラ周波数毎に積分して単位信号列積分値を得る単位信号列積分部と、
前記単位信号列積分部で得た単位信号列積分値を、同じ信号長の単位信号によるレーダ信号で得た受信信号毎に、受信信号間で積分するパルス間信号積分部と、
前記パルス間信号積分部で得た積分値について、閾値より大きい信号を目標信号として抽出する目標信号抽出部とを有することを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記信号処理部は、さらに、
前記目標信号抽出部で得た目標信号について、単位信号の信号長の異なるレーダ信号で得た目標信号が共通して示す距離値を求め、当該目標信号の距離値として確定する目標距離確定部を有する請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記レーダ信号供給部は、さらに、
前記信号生成部から出力されたレーダ信号を形成している個々の単位信号の信号長を、レーダ信号毎、或いはレーダ信号のグループ毎に変更する信号長可変部を有する請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記消え残り信号抑圧部は、
主に孤立したクラッタ成分の消え残り信号を抑圧する孤立信号抑圧処理を行い、異なる距離の探知目標で反射した各距離の単位信号列の平均振幅値に比して異常に大きな振幅値をもつ信号を求め、その振幅値が単位信号列の平均値となるように前記求めた信号の成分値を抑圧し、
広域に拡がったクラッタ成分の消え残り信号を抑圧する消え残り信号群抑圧処理を行い、前記孤立信号抑圧処理で求めた信号の成分値を前記振幅値の移動平均値で除算処理し、全信号の平均振幅値を“1”とすることにより、消え残りの信号群が大きなノイズ成分となるのを抑制するものである請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記目標信号抽出部は、前記パルス間信号積分部で得た積分値に基づいてドップラ周波数成分毎の平均値を求め、その平均値の数倍の値を超える信号を目標信号として抽出するものである請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項6】
レーダ信号供給部からの送信信号を探知目標に向けて送信し、前記探知目標で反射した受信信号を信号処理部で信号処理することにより前記目標を探知するレーダ装置を用いて、目標を探知する目標探知方法であって、
同一の変調を施した信号である2以上の単位信号を送信単位である1パルス内に繰り返して配列したレーダ信号を前記送信信号として生成し、
前記受信信号と、前記受信信号を取得するために出力したレーダ信号とを入力として、前記レーダ信号を形成する同一の変調を施した単位信号を参照信号として、前記受信信号に含まれる単位信号の成分を圧縮し、
前記パルス圧縮した受信信号について、1パルス内でクラッタ成分を抑制し、
前記パルス内クラッタ処理後に受信信号の端部に消え残る信号成分を抑圧し、
前記消え残り信号抑圧した受信信号について、異なる距離の探知目標で反射した各距離の受信信号を構成する単位信号Uをピックアップして、フーリェ変換処理により前記受信信号をドップラ周波数毎に積分して単位信号列積分値を取得し、
前記取得した単位信号列積分値を、同じ信号長の単位信号によるレーダ信号で得た受信信号毎に、受信信号間で積分し、
前記積分で得た積分値について、閾値より大きい信号を目標信号として抽出することを特徴とする目標探知方法。
【請求項7】
前記抽出した目標信号について、単位信号の信号長の異なるレーダ信号で得た目標信号が共通して示す距離値を求め、当該目標信号の距離値として確定する請求項6に記載の目標探知方法。
【請求項8】
前記レーダ信号を形成している個々の単位信号の信号長を、レーダ信号毎、或いはレーダ信号のグループ毎に変更する請求項6に記載の目標探知方法。
【請求項9】
主に孤立したクラッタ成分の消え残り信号を抑圧する孤立信号抑圧処理を行い、異なる距離の探知目標で反射した各距離の単位信号列の平均振幅値に比して異常に大きな振幅値をもつ信号を求め、その振幅値が単位信号列の平均値となるように前記求めた信号の成分値を抑圧し、
広域に拡がったクラッタ成分の消え残り信号を抑圧する消え残り信号群抑圧処理を行い、前記孤立信号抑圧処理で求めた信号の成分値を前記振幅値の移動平均値で除算処理し、全信号の平均振幅値を“1”とすることにより、消え残りの信号群が大きなノイズ成分となるのを抑制する請求項6に記載の目標探知方法。
【請求項10】
前記積分で得た積分値に基づいてドップラ周波数成分毎の平均値を求め、その平均値の数倍の値を超える信号を目標信号として抽出する請求項6に記載の目標探知方法。
【請求項11】
レーダ信号供給部からの送信信号を探知目標に向けて送信し、異なる距離の探知目標で反射した受信信号を信号処理部で信号処理することにより前記目標を探知するレーダ装置を用いて、目標を探知する制御を行う目標探知プログラムであって、
前記レーダ装置のコンピュータに、
同一の変調を施した信号である2以上の単位信号を送信単位である1パルス内に繰り返して配列したレーダ信号を前記送信信号として生成する機能と、
前記受信信号と、前記受信信号を取得するために出力したレーダ信号とを入力として、前記レーダ信号を形成する同一の変調を施した単位信号を参照信号として、前記受信信号に含まれる単位信号の成分を圧縮する機能と、
前記パルス圧縮した受信信号について、1パルス内でクラッタ成分を抑制する機能と、
前記パルス内クラッタ処理後に受信信号の端部に消え残る信号成分を抑圧する機能と、
前記消え残り信号抑圧した受信信号について、探知目標の異なり位置で反射した各距離の受信信号を構成する単位信号Uをピックアップして、フーリェ変換処理により前記受信信号をドップラ周波数毎に積分して単位信号列積分値を取得する機能と、
前記取得した単位信号列積分値を、同じ信号長の単位信号によるレーダ信号で得た受信信号毎に、受信信号間で積分する機能と、
前記積分で得た積分値について、閾値より大きい信号を目標信号として抽出する機能とを実行させることを特徴とする目標探知プログラム。
【請求項12】
前記コンピュータに、
前記抽出した目標信号について、単位信号の信号長の異なるレーダ信号で得た目標信号が共通して示す距離値を求め、当該目標信号の距離値として確定する機能を実行させる請求項11に記載の目標探知プログラム。
【請求項13】
前記コンピュータに、
前記レーダ信号を形成している個々の単位信号の信号長を、レーダ信号毎、或いはレーダ信号のグループ毎に変更する機能を実行させる請求項11に記載の目標探知プログラム。
【請求項14】
前記コンピュータに、
主に孤立したクラッタ成分の消え残り信号を抑圧する孤立信号抑圧処理を行い、異なる距離の探知目標で反射した各距離の単位信号列の平均振幅値に比して異常に大きな振幅値をもつ信号を求め、その振幅値が単位信号列の平均値となるように前記求めた信号の成分値を抑圧する機能と、
広域に拡がったクラッタ成分の消え残り信号を抑圧する消え残り信号群抑圧処理を行い、前記孤立信号抑圧処理で求めた信号の成分値を前記振幅値の移動平均値で除算処理し、全信号の平均振幅値を“1”とすることにより、消え残りの信号群が大きなノイズ成分となるのを抑制する機能とを実行させる請求項11に記載の目標探知プログラム。
【請求項15】
前記コンピュータに、
前記積分で得た積分値に基づいてドップラ周波数成分毎の平均値を求め、その平均値の数倍の値を超える信号を目標信号として抽出する機能を実行させる請求項11に記載の目標探知プログラム。
【請求項1】
レーダ信号供給部からの送信信号を探知目標に向けて送信し、前記探知目標で反射した受信信号を信号処理部で信号処理することにより前記目標を探知するレーダ装置であって、
前記レーダ信号供給部は、
同一の変調を施した信号である2以上の単位信号を送信単位である1パルス内に繰り返して配列したレーダ信号を生成する信号生成部を有し、
前記信号処理部は、
前記受信信号と、前記受信信号を取得するために前記レーダ信号供給部の出力したレーダ信号とを入力として、前記レーダ信号を形成する同一の変調を施した単位信号を参照信号として、前記受信信号に含まれる単位信号の成分を圧縮するパルス圧縮部と、
前記パルス圧縮部がパルス圧縮した受信信号について、1パルス内でクラッタ成分を抑制するパルス内クラッタ抑圧部と、
前記パルス内クラッタ抑圧部の出力するパルス内クラッタ処理後に受信信号の端部に消え残る信号成分を抑圧する消え残り信号抑圧部と、
前記消え残り信号抑圧部で得た受信信号について、探知目標の異なり位置で反射した各距離の受信信号を構成する単位信号をピックアップして、フーリェ変換処理により前記受信信号をドップラ周波数毎に積分して単位信号列積分値を得る単位信号列積分部と、
前記単位信号列積分部で得た単位信号列積分値を、同じ信号長の単位信号によるレーダ信号で得た受信信号毎に、受信信号間で積分するパルス間信号積分部と、
前記パルス間信号積分部で得た積分値について、閾値より大きい信号を目標信号として抽出する目標信号抽出部とを有することを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記信号処理部は、さらに、
前記目標信号抽出部で得た目標信号について、単位信号の信号長の異なるレーダ信号で得た目標信号が共通して示す距離値を求め、当該目標信号の距離値として確定する目標距離確定部を有する請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記レーダ信号供給部は、さらに、
前記信号生成部から出力されたレーダ信号を形成している個々の単位信号の信号長を、レーダ信号毎、或いはレーダ信号のグループ毎に変更する信号長可変部を有する請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記消え残り信号抑圧部は、
主に孤立したクラッタ成分の消え残り信号を抑圧する孤立信号抑圧処理を行い、異なる距離の探知目標で反射した各距離の単位信号列の平均振幅値に比して異常に大きな振幅値をもつ信号を求め、その振幅値が単位信号列の平均値となるように前記求めた信号の成分値を抑圧し、
広域に拡がったクラッタ成分の消え残り信号を抑圧する消え残り信号群抑圧処理を行い、前記孤立信号抑圧処理で求めた信号の成分値を前記振幅値の移動平均値で除算処理し、全信号の平均振幅値を“1”とすることにより、消え残りの信号群が大きなノイズ成分となるのを抑制するものである請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記目標信号抽出部は、前記パルス間信号積分部で得た積分値に基づいてドップラ周波数成分毎の平均値を求め、その平均値の数倍の値を超える信号を目標信号として抽出するものである請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項6】
レーダ信号供給部からの送信信号を探知目標に向けて送信し、前記探知目標で反射した受信信号を信号処理部で信号処理することにより前記目標を探知するレーダ装置を用いて、目標を探知する目標探知方法であって、
同一の変調を施した信号である2以上の単位信号を送信単位である1パルス内に繰り返して配列したレーダ信号を前記送信信号として生成し、
前記受信信号と、前記受信信号を取得するために出力したレーダ信号とを入力として、前記レーダ信号を形成する同一の変調を施した単位信号を参照信号として、前記受信信号に含まれる単位信号の成分を圧縮し、
前記パルス圧縮した受信信号について、1パルス内でクラッタ成分を抑制し、
前記パルス内クラッタ処理後に受信信号の端部に消え残る信号成分を抑圧し、
前記消え残り信号抑圧した受信信号について、異なる距離の探知目標で反射した各距離の受信信号を構成する単位信号Uをピックアップして、フーリェ変換処理により前記受信信号をドップラ周波数毎に積分して単位信号列積分値を取得し、
前記取得した単位信号列積分値を、同じ信号長の単位信号によるレーダ信号で得た受信信号毎に、受信信号間で積分し、
前記積分で得た積分値について、閾値より大きい信号を目標信号として抽出することを特徴とする目標探知方法。
【請求項7】
前記抽出した目標信号について、単位信号の信号長の異なるレーダ信号で得た目標信号が共通して示す距離値を求め、当該目標信号の距離値として確定する請求項6に記載の目標探知方法。
【請求項8】
前記レーダ信号を形成している個々の単位信号の信号長を、レーダ信号毎、或いはレーダ信号のグループ毎に変更する請求項6に記載の目標探知方法。
【請求項9】
主に孤立したクラッタ成分の消え残り信号を抑圧する孤立信号抑圧処理を行い、異なる距離の探知目標で反射した各距離の単位信号列の平均振幅値に比して異常に大きな振幅値をもつ信号を求め、その振幅値が単位信号列の平均値となるように前記求めた信号の成分値を抑圧し、
広域に拡がったクラッタ成分の消え残り信号を抑圧する消え残り信号群抑圧処理を行い、前記孤立信号抑圧処理で求めた信号の成分値を前記振幅値の移動平均値で除算処理し、全信号の平均振幅値を“1”とすることにより、消え残りの信号群が大きなノイズ成分となるのを抑制する請求項6に記載の目標探知方法。
【請求項10】
前記積分で得た積分値に基づいてドップラ周波数成分毎の平均値を求め、その平均値の数倍の値を超える信号を目標信号として抽出する請求項6に記載の目標探知方法。
【請求項11】
レーダ信号供給部からの送信信号を探知目標に向けて送信し、異なる距離の探知目標で反射した受信信号を信号処理部で信号処理することにより前記目標を探知するレーダ装置を用いて、目標を探知する制御を行う目標探知プログラムであって、
前記レーダ装置のコンピュータに、
同一の変調を施した信号である2以上の単位信号を送信単位である1パルス内に繰り返して配列したレーダ信号を前記送信信号として生成する機能と、
前記受信信号と、前記受信信号を取得するために出力したレーダ信号とを入力として、前記レーダ信号を形成する同一の変調を施した単位信号を参照信号として、前記受信信号に含まれる単位信号の成分を圧縮する機能と、
前記パルス圧縮した受信信号について、1パルス内でクラッタ成分を抑制する機能と、
前記パルス内クラッタ処理後に受信信号の端部に消え残る信号成分を抑圧する機能と、
前記消え残り信号抑圧した受信信号について、探知目標の異なり位置で反射した各距離の受信信号を構成する単位信号Uをピックアップして、フーリェ変換処理により前記受信信号をドップラ周波数毎に積分して単位信号列積分値を取得する機能と、
前記取得した単位信号列積分値を、同じ信号長の単位信号によるレーダ信号で得た受信信号毎に、受信信号間で積分する機能と、
前記積分で得た積分値について、閾値より大きい信号を目標信号として抽出する機能とを実行させることを特徴とする目標探知プログラム。
【請求項12】
前記コンピュータに、
前記抽出した目標信号について、単位信号の信号長の異なるレーダ信号で得た目標信号が共通して示す距離値を求め、当該目標信号の距離値として確定する機能を実行させる請求項11に記載の目標探知プログラム。
【請求項13】
前記コンピュータに、
前記レーダ信号を形成している個々の単位信号の信号長を、レーダ信号毎、或いはレーダ信号のグループ毎に変更する機能を実行させる請求項11に記載の目標探知プログラム。
【請求項14】
前記コンピュータに、
主に孤立したクラッタ成分の消え残り信号を抑圧する孤立信号抑圧処理を行い、異なる距離の探知目標で反射した各距離の単位信号列の平均振幅値に比して異常に大きな振幅値をもつ信号を求め、その振幅値が単位信号列の平均値となるように前記求めた信号の成分値を抑圧する機能と、
広域に拡がったクラッタ成分の消え残り信号を抑圧する消え残り信号群抑圧処理を行い、前記孤立信号抑圧処理で求めた信号の成分値を前記振幅値の移動平均値で除算処理し、全信号の平均振幅値を“1”とすることにより、消え残りの信号群が大きなノイズ成分となるのを抑制する機能とを実行させる請求項11に記載の目標探知プログラム。
【請求項15】
前記コンピュータに、
前記積分で得た積分値に基づいてドップラ周波数成分毎の平均値を求め、その平均値の数倍の値を超える信号を目標信号として抽出する機能を実行させる請求項11に記載の目標探知プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−80961(P2011−80961A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235588(P2009−235588)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
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