説明

レーダ装置

【課題】測定距離レンジを拡大し、全ての測定距離レンジの測定に必要な測定時間を従来よりも短縮するレーダ装置を提供する。
【解決手段】所定の送信周期で高周波送信信号を送信アンテナから送信し、ターゲットに反射された反射波の信号を受信アンテナで受信する。第1符号長の第1符号系列と、第1符号系列より長い第2符号長の第2符号系列と、第1符号系列の各符号を反転した第3符号系列とのうち、第1送信周期で第1符号系列を変調した第1送信信号を、第2送信周期で第2符号系列を変調した第2送信信号を、第3送信周期で第3符号系列を変調した第3送信信号を、第4送信周期で第2符号系列を変調した第4送信信号を、第1、第3送信周期は第2、第4送信周期よりも短い周期で生成する。この生成された各送信信号を高周波送信信号に変換して送信アンテナから送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲットにより反射された反射波の信号をアンテナで受信してターゲットを検出するレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置は、測定地点から電波を空間に放射し、ターゲットにより反射された反射波の信号を受信することにより、当該測定地点とターゲットとの距離、方向等を測定する装置である。特に近年、マイクロ波又はミリ波等の波長の短い電波を用いた高分解能な測定により、自動車だけではなく歩行者等をターゲットとして検出可能なレーダ装置の開発が進められている。
【0003】
レーダ装置は、近距離にいるターゲットと遠距離にいるターゲットとからの反射波が混合された受信信号を受信することがある。特に、近距離にいるターゲットからの反射波の信号の自己相関特性によりレンジサイドローブが生じる場合、レーダ装置の受信の際に、このレンジサイドローブと、遠距離にいるターゲットからの反射波の信号のメインローブとが混在する。従って、レーダ装置における遠距離にいるターゲットの検出精度が劣化することがある。
【0004】
また、レーダ装置は、測定地点から同じ距離に自動車と歩行者とがいる場合には、レーダ反射断面積(RCS: Radar cross section)の異なる自動車と歩行者とからの反射波の信号がそれぞれ混合された信号を受信することがある。一般に、歩行者(人)のレーダ反射断面積は自動車のレーダ反射断面積に比べると低いと言われている。このため、レーダ装置には、たとえ測定地点から同じ距離に自動車と歩行者とがいる場合でも、自動車だけではなく歩行者からの反射波も適正に受信することが要求される。
【0005】
従って、上述した様な複数のターゲットに対して、高分解能な測定が要求されるレーダ装置には、送信の際に低レンジサイドローブレベルとなる特性(以下、低レンジサイドローブ特性)を有するパルス波又はパルス変調波が送信されることが要求される。更に、当該レーダ装置における受信の際には、当該受信した信号に対して広い受信ダイナミックレンジを有することが要求される。
【0006】
上述した低レンジサイドローブ特性に関して、低レンジサイドローブ特性を有するパルス波又はパルス変調波として、相補符号を用いて送信するパルス圧縮レーダが、従来から知られている。ここで、パルス圧縮とは、パルス信号をパルス変調又は位相変調してパルス幅の広い信号を用いて送信し、受信後の信号処理において当該受信された信号を復調してパルス幅の狭い信号に変換する方法である。パルス圧縮によれば、ターゲットの探知距離を増大することができ、更に、当該探知距離に対する距離推定精度を向上することができる。
【0007】
また、相補符号は、複数、例えば2つの相補符号系列(a、b)からなり、一方の相補符号系列の自己相関演算結果と他方の相補符号系列の自己相関演算結果とにおいて、シフト時間τを一致させて各自己相関演算結果を加算した場合に、レンジサイドローブがゼロとなる性質を有する。なお、パラメータnはn=1、2、・・・、Lである。パラメータLは、符号系列長又は単に符号長を示す。
【0008】
相補符号の生成方法について図13を参照して説明する。図13は、一般的な相補符号系列の生成手順を示した説明図である。図13に示す様に、4行目、5行目の記載から要素(1)又は要素(−1)からなるパルス符号長L=2p−1のサブ符号系列(c,d)が生成され、更に、6行目、7行目の記載からパルス符号長L=2の符号長の相補符号系列(a,b)が生成される。ここで、一方の相補符号系列aは、サブ符号系列cとサブ符号系列dとが連結されたものである。他方の相補符号系列bは、サブ符号系列cとサブ符号系列−dとが連結されたものである。
【0009】
なお、(a、b)はそれぞれ相補符号系列を表し、(c、d)はそれぞれ相補符号系列を構成するサブ符号系列を表す。また、パラメータpは、生成される相補符号系列(a,b)の符号長Lを定める。
【0010】
この様な相補符号の性質に関して、図14を参照して説明する。図14は、従来の相補符号の性質を説明する説明図である。同図(a)は、一方の相補符号系列aの自己相関演算結果を示す説明図である。同図(b)は、他方の相補符号系列bの自己相関演算結果を示す説明図である。同図(c)は、2つの相補符号系列(a、b)の自己相関演算結果の加算値を示す説明図である。なお、図14で用いた相補符号の符号長Lは128である。
【0011】
2つの相補符号系列(a、b)のうち一方の相補符号系列aの自己相関演算結果は、数式(1)に従って導出される。他方の相補符号系列bの自己相関演算結果は、数式(2)に従って導出される。なお、パラメータRは自己相関演算結果を示す。但し、n>L又はn<1の場合には、相補符号系列a、bはゼロとする(すなわち、n>L又はn<1において、a=0、b=0)。なお、アスタリスク*は複素共役演算子を示す。
【数1】

【数2】

【0012】
数式(1)に従って導出された一方の相補符号系列aの自己相関演算結果Raa(τ)は、図14(a)に示す様に、シフト時間(あるいは遅延時間)τ[秒]がゼロのときにピークが発生し、シフト時間τがゼロでない場合にはレンジサイドローブが存在する。同様に、数式(2)に従って導出された他方の相補符号系列bの自己相関演算結果Rbb(τ)は、図14(b)に示す様に、シフト時間τがゼロのときにピークが発生し、遅延時間τがゼロでない場合にはレンジサイドローブが存在する。
【0013】
これらの自己相関演算結果(Raa(τ)、Rbb(τ))の加算値は、図14(c)に示す様に、シフト時間(あるいは遅延時間)τがゼロのときにピークが発生し(以下、シフト時間τがゼロのときのピークをメインローブと呼ぶ)、シフト時間τがゼロでない場合にはレンジサイドローブが存在せずにゼロになる。これを数式(3)にて示す。なお、図14(a)〜(c)の横軸は自己相関演算におけるシフト時間τを示し、縦軸は演算された自己相関演算結果を示す。
【数3】

【0014】
次に、上述したレーダ装置の一例としてパルス圧縮レーダで複数のターゲットを検出する際に、当該パルス圧縮レーダの受信時における受信ダイナミックレンジについて図15を参照して説明する。図15は、従来のパルス圧縮レーダ装置1zで複数のターゲット(TR1,TR2,TR3)を検出する際のレーダ受信部における受信ダイナミックレンジを説明する概念図である。図15に示す様に、パルス圧縮レーダ装置1zからパルス幅Tpのパルス圧縮符号長Lの送信信号が送信される際、パルス列送信区間Tにわたりパルス列の送信が継続される。ここで、パルス列送信区間Tと、パルス幅Tpと、パルス圧縮符号長Lとの間には、数式(4)が成立する。
【数4】

【0015】
図15に示す様に、パルス圧縮レーダ装置1zから距離R離れた位置にターゲットTR2が存在する場合に加えて、[R−(cT/2),R+(cT/2)]の距離範囲内にターゲットTR1及びTR3が存在すると仮定する。この場合、ターゲットTR2からの反射波である(反射)信号RS2は、[R−(cT/2),R+(cT/2)]の距離範囲内の他のターゲットTR1、TR3からの反射波である(反射)信号RS1,RS3と部分的に重なる。パラメータcは、光速[m/s]を表す。
【0016】
従って、パルス圧縮レーダ1zにおける距離測定の精度劣化を抑制するためには、複数のターゲットTR1〜TR3からお互いに重なり合う部分を含む反射波の信号RS1〜RS3をそれぞれ適正に受信可能な受信ダイナミックレンジが必要となる。仮に、パルス圧縮レーダ装置1zが適正な受信ダイナミックレンジを有していない場合には、パルス圧縮時のピークレベルの低下、レンジサイドローブレベルの上昇につながり、ターゲットTR1〜TR3の距離測定の精度が劣化する。
【0017】
従来のレーダ装置における測定において、距離伝搬損は距離の4乗に比例するため、パルス圧縮符号長Lが長いほどパルス圧縮による処理利得は向上して測定距離レンジは拡大する。しかしながら、パルス圧縮符号長Lが長いほど、受信時に必要な受信ダイナミックレンジが大きくなる。また、レーダ方程式から導かれる結果としては近距離(30m程度内)での複数ターゲットの受信に必要となるダイナミックレンジは、遠距離(30m程度以上)での複数ターゲットの受信に必要となるダイナミックレンジにくらべ、より大きくなる性質を有する。
【0018】
上述した受信ダイナミックレンジに関連して、当該受信ダイナミックレンジを抑制し且つ測定距離レンジを拡大するものとして、特許文献1に示す分散圧縮方式パルスエコーシステム送受信装置が知られている。
【0019】
この分散圧縮方式パルスエコーシステム送受信装置は、各モード(Bモード、ドプラモード)に応じて、パルス圧縮符号として符号長の異なる符号系列で変調した高周波信号を時分割で送信する。具体的には、当該送受信装置は、Bモードの際に、近距離レンジ用としてパルス符号長の短い符号系列のコードで変調した高周波信号を送信する。更に、当該送受信装置は、ドプラモードの際に、中〜遠距離レンジ用としてパルス符号長の長い符号系列のコードで変調した高周波送信信号を送信する。これにより、測定対象の距離レンジに応じて送信パルスを使い分けることができ、近距離で動きの速いターゲットによるパルスエコーを低減することができる。
【0020】
また、相補符号を用いて生成した送信信号により妨害エコーをゼロとする検査装置として、特許文献2又は特許文献3に示す検査装置が知られている。
【0021】
この検査装置は、相補符号系列又は複数補系列を用いて所定の符号長を有する複数の送信信号を生成し、当該送信信号により複数の探触子を定められた順番に従って駆動する。また、検査装置は、参照信号発生器によって当該符号系列に基づいて参照信号を生成する。更に、検査装置は、複数の探触子によって受信された複数のエコーを、相関器によって複数の参照信号を用いて定められた順番に従って相関処理し、当該結果を加算する。これにより、妨害エコーが検査結果に及ぼす影響を排除し、更に、信号対雑音比を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開平10−268040号公報
【特許文献2】特開平4−127054号公報
【特許文献3】特開平4−289453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、図16(a)に示す様に、特許文献1でパルス符号長の短い符号系列W、及びパルス符号長の長い符号系列V1,V2を共に同一送信周期で送信する場合、当該符号系列Wを送信すると、ターゲットが移動しているときに当該ターゲットの移動に追従した測定精度が劣化するという課題が生じる。図16は、従来の特許文献1に示す分散圧縮方式パルスエコーシステム送受信装置の送信周期の一例を示す説明図である。同図(a)は、短い符号系列Wを用いたときの送信周期と長い符号系列V1,V2を用いたときの送信周期とが同一である場合の説明図である。同図(b)は、短い符号系列Wを用いたときの送信周期が長い符号系列V1,V2を用いたときの送信周期より短い場合の説明図である。
【0024】
図16(a)に示す様に、近距離レンジ用のパルス符号長の短い符号系列Wを送信している場合、想定距離レンジ外である中〜遠距離レンジのパルス符号長の長い符号系列V1,V2も同様の送信周期Tmで送信されている。このため、近距離レンジ用のパルス符号長の短い符号系列Wが送信されている際には、中〜遠距離レンジ用の他の測定距離レンジを測定するために要する時間が余分にかかるため、上述課題が生じる。
【0025】
一方、図16(b)に示す様に、近距離レンジ用のパルス符号長の短い符号系列Wの送信周期Tnが、他の中〜遠距離レンジ用のパルス符号長の長い符号系列V1,V2の送信周期Tmより短い場合、当該符号系列Wの反射波の信号が次の送信周期Tmに回り込む可能性がある。この場合には、当該パルス符号長の短い符号系列Wの反射波の信号と、次の送信周期Tmでパルス符号長の長い符号系列V1の送信信号との間で、それらの符号系列WとV1との相互相関特性に応じた符号間干渉が生じる。これにより、レーダ装置における受信SINR(信号対干渉雑音比、signal to noise interference ratio、signal to noise plus interference power ratio)が劣化し、レーダ装置の測定精度が劣化する。
【0026】
また、特許文献2又は特許文献3で生成される複数の送信信号は、それぞれ同一の符号長のパルス圧縮符号が用いられ、且つ、各送信信号の送信周期は同一であることが想定されている。即ち、図16(a)に示した様な送信周期で送信信号が送信されるため、上述した課題が生じる。
【0027】
本発明は、上述従来の事情に鑑みてなされたもので、短い送信周期の送信符号の反射波が、時間的に後続する長い送信周期に含まれるために、符号間干渉が発生する場合にも、その干渉を抑制することで、測定距離レンジを拡大しながらも、複数の測定距離レンジの測定に必要な測定時間を従来よりも短縮するレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、上述したレーダ装置であって、第1符号長の第1符号系列と、第2符号長の第2符号系列と、当該第1符号系列の各符号の極性が反転された第3符号系列とのうち、第1送信周期で、第1符号系列を変調した第1送信信号を生成し、第2送信周期で、第2符号系列を変調した第2送信信号を生成し、第1送信周期と同一の長さである第3送信周期で、第3符号系列を変調した第3送信信号を生成し、第4送信周期で、第2符号系列を変調した第2送信信号を生成する送信信号生成部と、送信信号生成部により生成された第1、第2、第3及び第4の送信信号を高周波送信信号に変換し、送信アンテナから送信する送信RF部とを含む構成である。
【発明の効果】
【0029】
本発明のレーダ装置によれば、短い送信周期の送信符号の反射波が、時間的に後続する長い送信周期に含まれるために、符号間干渉が発生する場合にも、その干渉を抑制することで、測定距離レンジを拡大しながらも、複数の測定距離レンジの測定に必要な測定時間を従来よりも短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1の実施形態のレーダ装置の内部構成を示すブロック図
【図2】第1の実施形態のレーダ装置の動作に関するタイミングチャート、(a)送信周期Taと送信周期Tbと各送信周期に用いられる送信符号との説明図、(b)測定区間の説明図、(c)各送信周期Ta,Tbと離散時刻k,kとの関係を説明する説明図
【図3】送信信号生成部の別の内部構成を示すブロック図
【図4】短い符号長の送信符号Aと長い符号長の送信符号B1との相互相関演算結果を示す説明図、(a)送信符号Aと送信符号B1との相互相関演算結果、(b)送信符号−Aと送信符号B1との相互相関演算結果、(c)送信符号Aと送信符号B1との相互相関演算結果と、送信符号−Aと送信符号B1との相互相関演算結果との加算結果
【図5】第2の実施形態のレーダ装置の内部構成を示すブロック図
【図6】第2の実施形態のレーダ装置の動作に関するタイミングチャート、(a)送信周期Taと送信周期Tbと各送信周期に用いられる送信符号との説明図、(b)測定区間の説明図、(c)各送信周期Ta,Tbと離散時刻k,kとの関係を説明する説明図
【図7】パラメータZd=1且つパラメータZe=1の場合における第2の実施形態のレーダ装置の動作に関するタイミングチャート、(a)送信周期Taと送信周期Tbと各送信周期に用いられる送信符号との説明図、(b)測定区間の説明図、(c)各送信周期Ta,Tbと離散時刻k,kとの関係を説明する説明図
【図8】パラメータZd=2且つパラメータZe=2の場合における第2の実施形態のレーダ装置の動作に関するタイミングチャート、(a)送信周期Taと送信周期Tbと各送信周期に用いられる送信符号との説明図、(b)測定区間の説明図、(c)各送信周期Ta,Tbと離散時刻k,kとの関係を説明する説明図
【図9】長い符号長の符号系列に相補符号でない符号系列Cを用いる第1の例のレーダ装置の動作に関するタイミングチャート、(a)送信周期Taと送信周期Tbと各送信周期に用いられる送信符号との説明図、(b)測定区間の説明図、(c)各送信周期Ta,Tbと離散時刻k,kとの関係を説明する説明図
【図10】長い符号長の符号系列に相補符号でない符号系列Cを用いる第1の例のレーダ装置の内部構成を示すブロック図
【図11】長い符号長の符号系列に相補符号でない符号系列Cを用いる第2の例のレーダ装置の動作に関するタイミングチャート、(a)送信周期Taと送信周期Tbと各送信周期に用いられる送信符号との説明図、(b)測定区間の説明図、(c)各送信周期Ta,Tbと離散時刻k,kとの関係を説明する説明図
【図12】長い符号長の符号系列に相補符号でない符号系列Cを用いる第2の例のレーダ装置の内部構成を示すブロック図
【図13】一般的な相補符号系列の生成手順を示した説明図
【図14】従来の相補符号の性質を説明する説明図、(a)一方の相補符号系列の自己相関演算結果を示す説明図、(b)他方の相補符号系列の自己相関演算結果を示す説明図、(c)2つの相補符号系列の自己相関演算結果の加算値を示す説明図
【図15】従来のパルス圧縮レーダで複数のターゲットを検出する際のレーダ受信部における受信ダイナミックレンジを説明する概念図
【図16】従来の分散圧縮方式パルスエコーシステム送受信装置の送信周期の一例を示す説明図、(a)短い符号系列を用いたときの送信周期と長い符号系列を用いたときの送信周期とが同一である場合の説明図、(b)短い符号系列を用いたときの送信周期が長い符号系列を用いたときの送信周期より短い場合の説明図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。また、以下の実施形態におけるレーダ装置は、或る送信周期において、近距離に位置するターゲットを検出するための近距離レンジ用に符号長の短い符号系列を用いてパルス変調した高周波の信号を送信する。更に、同レーダ装置は、別の送信周期において、遠距離に位置するターゲットを検出するための遠距離レンジ用に符号長の長い符号系列を用いてパルス変調した高周波の信号を送信する。
【0032】
また、以下の説明において、同レーダ装置により受信される受信信号には、当該レーダ装置からの高周波の信号がターゲットに反射された反射波の信号と、当該レーダ装置の周囲のノイズ信号とが含まれる。
【0033】
〔第1の実施形態〕
第1の実施形態のレーダ装置1の構成及び動作について図1及び図2を参照して説明する。図1は、第1の実施形態のレーダ装置1の内部構成を示すブロック図である。図2は、第1の実施形態のレーダ装置1の動作に関するタイミングチャートである。同図(a)は、送信周期Taと送信周期Tbと各送信周期に用いられる送信符号との説明図である。同図(b)は、測定区間の説明図である。更に、同図(c)は、各送信周期Ta,Tbと離散時刻k,kとの関係を説明する説明図である。
【0034】
レーダ装置1は、図1に示す様に、基準発振器Loと、送信アンテナANT0が接続されたレーダ送信部2と、受信アンテナANT1が接続されたレーダ受信部3とを含む構成である。レーダ装置1は、レーダ送信部2により生成された所定の間欠的な高周波送信信号を送信アンテナANT0から送信し、ターゲットに反射された反射波の信号をレーダ受信部3で受信する。レーダ装置1は、レーダ受信部3で受信した受信信号からターゲットを検出する。なお、ターゲットはレーダ装置1が検出する対象の物体であり、例えば自動車又は人等であり、以下の各実施形態においても同様である。
【0035】
先ず、レーダ送信部2について説明する。レーダ送信部2は、送信信号生成部4と、送信RF(Radio Frequency)部13と含む構成である。送信信号生成部4は、第1符号生成部5と、第2符号生成部6と、第3符号生成部7と、符号反転部8と、送信符号切換部9と、送信符号制御部10と、変調部11と、LPF(Low Pass Filter)12とを含む構成である。図1では、送信信号生成部4は、LPF12を含む様に構成されているが、LPF12は送信信号生成部4と独立してレーダ送信部2の中に構成されても良い。送信RF部13は、周波数変換部14と、増幅器15とを含む構成である。
【0036】
送信信号生成部4は、基準発振器Loにおいて生成されたリファレンス信号に基づいて、当該リファレンス信号を所定倍に逓倍した信号を生成する。送信信号生成部4の各部は、当該生成された信号に基づいて動作する。送信信号生成部4は、パルス符号長の異なる複数の符号系列A,B1及びB2のいずれかを、2つの送信周期Ta,Tbの各整数倍(Za,Zb1,Zb2:自然数)を単位として切り換える。但し、送信周期Taでは符号系列Aが用いられ、送信周期Tbでは符号系列B1又はB2が用いられる。更に、符号系列B1及びB2の符号長は同じであるとする。
【0037】
更に、送信信号生成部4は、当該用いられた符号系列を変調してベースバンドの送信信号r(n)を周期的に生成する。パラメータnは離散時刻を表す。また、パラメータLaは、符号系列Aのパルス符号長を表す。パラメータLbは、符号系列B1,B2のパルス符号長を表す。更に、パラメータLaとパラメータLbとの間には、La<Lbが成立する。なお、符号系列B1,B2は、それぞれ相補性を有する相補符号系列(B1,B2)のペアである。
【0038】
また、送信信号生成部4により生成される送信信号は、連続的な信号ではないものとする。例えば、図2(a)に示す様に、第M番目(M:自然数)の送信周期Taの送信区間Tra[s]では、パルス符号長Laの符号系列Aに対して、1つのパルス符号あたりN[個]のサンプルが存在する。更に、第(M+3)番目の送信周期Taの送信区間Traでは、パルス符号長Laの符号系列−Aに対して、1つのパルス符号あたりNのサンプルが存在する。第M番目及び第(M+3)番目の送信周期Taの非送信区間(Ta−Tra)[s]では、ベースバンドの送信信号r(n)としてNa[個]のサンプルが存在するものとする。
【0039】
また、第(M+1)番目及び第(M+4)番目の各送信周期Tbの送信区間Trb[s]では、パルス符号長Lbの符号系列B1に対して、1つのパルス符号あたりN[個]のサンプルが存在する。同送信周期Tbの非送信区間(Tb−Trb)[s]では、ベースバンドの送信信号r(n)としてNb[個]のサンプルが存在する。
【0040】
また、第(M+2)番目及び第(M+5)番目の各送信周期Tbの送信区間Trb[s]では、パルス符号長Lbの符号系列B2に対して、1つのパルス符号あたりN[個]のサンプルが存在する。同送信周期Tbの非送信区間(Tb−Trb)[s]では、ベースバンドの送信信号r(n)としてNb[個]のサンプルが存在する。
【0041】
なお、符号系列B1,B2が相補符号系列であることに関連して、第(M+1)番目の送信周期Tbと、第(M+2)番目の送信周期Tbとを1つの単位として、当該単位の整数倍Zcに相当する送信周期(2Tb×Zc)による送信が繰り返されても良い。例えば、第(M+1)番目,第(M+2)番目,第(M+3)番目,第(M+4)番目の各送信周期には、符号系列B1,B2,B1,B2に基づいて生成された高周波送信信号がそれぞれ送信される。また、以下の各実施形態では、遠距離及び近距離の2つの測定距離レンジ用の符号系列を設けているが、測定距離レンジを更に細分化して、異なる符号長を有する符号系列を追加的に設けて送信しても良い。
【0042】
以下、レーダ送信部2の各部の構成について説明する。以下の説明では、符号系列A、及びB1,B2のいずれかを、それぞれの送信周期Ta及びTbごとに当該符号系列を切り換える例(パラメータZa=Zb1=Zb2=1)を示す。但し、上述した様に、パラメータZa,Zb1,Zb2は1に限定されない。
【0043】
第1符号生成部5は、パルス符号長Laの符号系列Aのパルス圧縮用の送信符号を生成する。このパルス圧縮用の送信符号としては、Barker符号系列又はM系列符号等が用いられる。第1符号生成部5は、当該生成された符号系列Aの送信符号を符号反転部8及び送信符号切換部9に出力する。以下、符号系列Aの送信符号を、便宜的に送信符号Aと記載する。
【0044】
第2符号生成部6,第3符号生成部7は、それぞれパルス符号長Lbの符号系列B1,B2のパルス圧縮用の送信符号を生成する。これらのパルス圧縮用の送信符号としては、相補性を有する相補符号のペアである符号系列B1,B2がそれぞれ用いられる。第2符号生成部6は、当該生成された符号系列B1の送信符号を送信符号切換部9に出力する。第3符号生成部7は、当該生成された符号系列B2の送信符号を送信符号切換部9に出力する。以下、符号系列B1の送信符号を、便宜的に送信符号B1と記載する。更に、符号系列B2の送信符号を、便宜的に送信符号B2と記載する。
【0045】
符号反転部8は、第1符号生成部5により出力された送信符号Aを入力し、更に、当該入力された送信符号Aの極性が反転された符号系列−Aの送信符号を生成する。例えば、送信符号Aに符号長La=7のBarker符号が用いられた場合、当該送信符号A=[1,1,1,−1,−1,1,−1]であり、当該生成された符号系列−A=[−1,−1,−1,1,1,−1,1]となる。符号反転部8は、当該生成された符号系列−Aの送信符号を送信符号切換部9に出力する。以下、符号系列−Aの送信符号を、便宜的に送信符号−Aと記載する。
【0046】
送信符号切換部9は、第1符号生成部5、第2符号生成部6、第3符号生成部7及び符号反転部8によりそれぞれ出力された送信符号A,−A,B1,B2を入力する。また、送信符号切換部9は、送信符号制御部10により出力された符号切換制御信号に基づいて、当該入力された各送信符号A,−A,B1,B2のうちいずれかの送信符号を選択的に切り換え、当該切り換えられた送信符号を変調部11に出力する。
【0047】
送信符号制御部10は、送信周期Ta,Tbを単位に、複数の送信符号を選択的に切り換える様に送信符号切換部9を制御する。具体的には、送信符号制御部10は、送信周期Ta,Tbを単位に、送信符号を選択的に切り換える旨の符号切換制御信号を送信符号切換部9に出力する。また、送信符号制御部10は、当該符号切換制御信号をレーダ受信部3の入力切換部23にも出力する。
【0048】
送信符号制御部10の動作について、図2(a)を参照して具体的に説明する。
【0049】
送信符号制御部10は、第M番目の送信周期Taでは、送信符号Aを変調部11に出力させる様に送信符号切換部9を制御する。即ち、送信符号制御部10は、第M番目の送信周期Taでは、送信符号Aに選択的に切り換える旨の符号切換制御信号を送信符号切換部9に出力する。
【0050】
また、送信符号制御部10は、第(M+1)番目の送信周期Tbでは、送信符号B1を変調部11に出力させる様に送信符号切換部9を制御する。即ち、送信符号制御部10は、第(M+1)番目の送信周期Tbでは、送信符号B1に選択的に切り換える旨の符号切換制御信号を送信符号切換部9に出力する。
【0051】
また、送信符号制御部10は、第(M+2)番目の送信周期Tbでは、送信符号B2を変調部11に出力させる様に送信符号切換部9を制御する。即ち、送信符号制御部10は、第(M+2)番目の送信周期Tbでは、送信符号B2に選択的に切り換える旨の符号切換制御信号を送信符号切換部9に出力する。
【0052】
また、送信符号制御部10は、第(M+3)番目の送信周期Taでは、送信符号−Aを変調部11に出力させる様に送信符号切換部9を制御する。即ち、送信符号制御部10は、第(M+3)番目の送信周期Taでは、送信符号−Aに選択的に切り換える旨の符号切換制御信号を送信符号切換部9に出力する。
【0053】
また、送信符号制御部10は、第(M+4)番目の送信周期Tbでは、送信符号B1を変調部11に出力させる様に送信符号切換部9を制御する。即ち、送信符号制御部10は、第(M+4)番目の送信周期Tbでは、送信符号B1に選択的に切り換える旨の符号切換制御信号を送信符号切換部9に出力する。
【0054】
また、送信符号制御部10は、第(M+5)番目の送信周期Tbでは、送信符号B2を変調部11に出力させる様に送信符号切換部9を制御する。即ち、送信符号制御部10は、第(M+5)番目の送信周期Tbでは、送信符号B2に選択的に切り換える旨の符号切換制御信号を送信符号切換部9に出力する。
【0055】
なお、第(M+6)番目以降の送信周期においては、図2(a)に示した第M番目の送信周期から第(M+5)番目の送信周期までの6つの送信周期を1つの単位として、当該単位における各送信周期に応じた送信符号が生成され、繰り返して送信符号切換部9に出力される。
【0056】
変調部11は、送信符号切換部9により出力された送信符号を入力する。変調部11は、当該入力された送信符号をパルス変調又は位相変調を行うことにより、ベースバンドの送信信号r(n)を生成する。また、変調部11は、LPF12を介して、当該生成された送信信号r(n)のうち予め設定された制限帯域以下の送信信号r(n)を送信RF部13に出力する。
【0057】
送信RF部13は、基準発振器Loにより生成されたリファレンス信号に基づいて、当該リファレンス信号を所定倍数に逓倍した信号を生成する。送信RF部13は、当該生成された信号に基づいて動作する。具体的には、周波数変換部14は、送信信号生成部4により生成された送信信号r(n)を入力し、当該入力されたベースバンドの送信信号r(n)をアップコンバートしてキャリア周波数帯域の高周波送信信号を生成する。周波数変換部14は、当該生成された高周波送信信号を増幅器15に出力する。
【0058】
増幅器15は、当該出力された高周波送信信号を入力し、当該入力された高周波送信信号のレベルを所定のレベルに増幅して送信アンテナANT0に出力する。この増幅された高周波送信信号は、送信アンテナANT0を介して空間に放射する様に送信される。
【0059】
送信アンテナANT0は、送信RF部13により出力された高周波送信信号を空間に放射する様に送信する。図2(a)に示す様に、高周波送信信号は、送信周期Ta,Tbのうち送信区間Tra,Trbの間において送信され、非送信区間(Ta−Tra),(Tb−Trb)の間においては送信されない。
【0060】
なお、上述した第1符号生成部5,第2符号生成部6,第3符号生成部7,符号反転部8及び送信符号切換部9を送信信号生成部4に設けず、図3に示す様に、送信信号生成部4により生成された送信符号A,−A,B1,B2を予め記憶する送信符号記憶部7aを設けても良い。なお、図3に示した送信符号記憶部7aは、第1の実施形態に限らず、後述の第2の実施形態にも同様に適用することができる。図3は、図1に示した送信信号生成部4とは異なる他の送信信号生成部4aの内部構成を示すブロック図である。この送信信号生成部4aは、送信符号記憶部7aと、送信符号制御部10aと、変調部11と、LPF12とを含む構成である。
【0061】
図3において、送信符号制御部10aは、送信周期Ta又は送信周期Tbに応じて用いられる送信符号を、送信符号記憶部7aから巡回的に読み出して変調部11に出力する。具体的には、送信符号制御部10aは、第M番目の送信周期Taでは、送信符号記憶部7aから送信符号Aを読み出して変調部11に出力する。送信符号制御部10aは、第(M+1)番目の送信周期Tbでは、送信符号記憶部7aから送信符号B1を読み出して変調部11に出力する。送信符号制御部10aは、第(M+2)番目の送信周期Tbでは、送信符号記憶部7aから送信符号B2を読み出して変調部11に出力する。
【0062】
送信符号制御部10aは、第(M+3)番目の送信周期Taでは、送信符号記憶部7aから送信符号−Aを読み出して変調部11に出力する。送信符号制御部10aは、第(M+4)番目の送信周期Tbでは、送信符号記憶部7aから送信符号B1を読み出して変調部11に出力する。送信符号制御部10aは、第(M+5)番目の送信周期Tbでは、送信符号記憶部7aから送信符号B2を読み出して変調部11に出力する。変調部11に出力された後の動作は上述した変調部11及びLPF12の動作と同様であるため、当該同様の内容に関する説明は省略する。
【0063】
次に、レーダ受信部3について説明する。
【0064】
レーダ受信部3は、受信アンテナANT1と、受信RF部16と、信号処理部20とを含む構成である。受信RF部16は、増幅器17と、周波数変換部18と、直交検波部19とを含む構成である。信号処理部20は、A/D変換部21と、A/D変換部22と、入力切換部23と、符号反転部24と、第1相関値演算部25と、第2相関値演算部26と、第3相関値演算部27と、第1平均化処理部28と、第2平均化処理部29と、到来距離推定部30とを含む構成である。
【0065】
受信アンテナANT1は、レーダ送信部2により送信された高周波送信信号がターゲットに反射された反射波の信号と、当該レーダ装置1の周囲のノイズ信号とを受信信号として受信する。なお、この反射波の信号は高周波帯域の信号である。受信アンテナANT1により受信された受信信号は、受信RF部16に入力される。なお、レーダ装置1においては、レーダ受信部は1つの受信アンテナを保持する。
【0066】
受信アンテナANT1は、図2(b)に示す様に、第M番目及び第(M+3)番目の各送信周期Taに相当する区間に、上述した受信信号を受信する。更に、受信アンテナANT1は、図2(b)に示す様に、第(M+1)番目、第(M+2)番目、第(M+4)番目及び第(M+5)番目の各送信周期Tbに相当する区間に、上述した受信信号を受信する。従って、この受信信号が受信される区間Ta及びTbがレーダ装置1における測定区間とされる。
【0067】
受信RF部16は、基準発振器Loにより生成されたリファレンス信号に基づいて、当該リファレンス信号を所定倍に逓倍した信号を生成する。受信RF部16は、当該生成された信号に基づいて動作する。具体的には、増幅器17は、受信アンテナANT1により受信された高周波帯域の受信信号を入力し、当該入力された高周波帯域の受信信号のレベルを所定のレベルに増幅して周波数変換部18に出力する。
【0068】
周波数変換部18は、当該増幅器17により出力された高周波帯域の受信信号を入力し、当該入力された高周波帯域の受信信号をベースバンドにダウンコンバートし、当該ダウンコンバートされた受信信号を直交検波部19に出力する。
【0069】
直交検波部19は、周波数変換部18により出力されたベースバンドの受信信号を直交検波することで、同相信号及び直交信号からなるベースバンドの受信信号を生成する。直交検波部19は、当該生成された受信信号のうち同相信号成分をA/D変換部21に出力し、当該生成された受信信号のうち直交信号成分をA/D変換部22に出力する。
【0070】
A/D変換部21は、直交検波部19により出力されたベースバンドの同相信号に対して離散時刻k又はkにおけるサンプリングを行うことにより、アナログデータの当該同相信号をデジタルデータに変換する。A/D変換部21は、当該変換されたデジタルデータの同相信号を入力切換部23に出力する。
【0071】
同様に、A/D変換部22は、直交検波部19により出力されたベースバンドの直交信号に対して離散時刻k又はkにおけるサンプリングを行うことにより、アナログデータの当該直交信号をデジタルデータに変換する。A/D変換部22は、当該変換されたデジタルデータの直交信号を入力切換部23に出力する。
【0072】
ここで、パラメータkは、図2(a)に示す第M番目及び第(M+3)番目の各送信周期Taにおいて送信される高周波送信信号の元になるベースバンドの送信信号r(n)のサンプル数に対応した離散時刻を表す。更に、パラメータkは、図2(a)に示す第(M+1)番目、第(M+2)番目、第(M+4)番目及び第(M+5)番目の各送信周期Tbにおいて送信される高周波送信信号の元になるベースバンドの送信信号r(n)のサンプル数に対応した離散時刻を表す。
【0073】
ここで、A/D変換部21,22により変換された離散時刻k,kにおける受信信号は、当該受信信号の同相信号I(k),I(k)、及び当該受信信号の直交信号Q(k),Q(k)を用いて、数式(5)の複素信号として表される。jは、j=−1を満たす虚数単位である。
【数5】

【0074】
なお、以下の説明において、離散時刻kは、k=1〜(NLa+Na−1)である。但し、離散時刻kは、k=1〜(NLa+Na)でも良い。更に、離散時刻kは、k=1〜(NLb+Nb−1)である。但し、離散時刻kは、k=1〜(NLb+Nb)でも良い。また、離散時刻k及び離散時刻kの範囲は、後述の各実施形態においても同様である。
【0075】
図2(c)に示す様に、離散時刻k=1は、送信符号A又は送信符号−Aに基づいて生成される高周波送信信号の送信周期Taにおける送信区間Traの開始タイミングを示す。また、離散時刻k=NLaは、送信符号A又は送信符号−Aに基づいて生成される高周波送信信号の送信周期Taにおける送信区間Traの終了タイミングを示す。更に、離散時刻k=NLa+Na−1は、送信符号A又は送信符号−Aに基づいて生成される高周波送信信号の送信周期Taの終了直前タイミングを示す。
【0076】
一方、図2(c)に示す様に、離散時刻k=1は、送信符号B1又は送信符号B2に基づいて生成される高周波送信信号の送信周期Tbにおける送信区間Trbの開始タイミングを示す。また、離散時刻k=NLbは、送信符号B1又は送信符号B2に基づいて生成される高周波送信信号の送信周期Tbにおける送信区間Trbの終了タイミングを示す。更に、離散時刻k=NLb+Nb−1は、送信符号B1又は送信符号B2に基づいて生成される高周波送信信号の送信周期Tbの終了直前タイミングを示す。なお、図2(c)には、離散時刻k,kの範囲を便宜的に図示するために、離散時刻kの範囲を第M番目の送信周期のみに示し、離散時刻kの範囲を第(M+2)番目の送信周期のみに示している。
【0077】
レーダ受信部3は、各送信符号A,B1,B2,−A,B1,B2に基づいて生成された高周波送信信号の各送信周期の和(2Ta+4Tb)である6周期に相当する送信周期を、信号処理部20における信号処理区間として周期的に演算する。
【0078】
入力切換部23は、送信符号制御部10により出力された符号切換制御信号、及び、A/D変換部21,22により出力されたデジタルデータの同相信号及び直交信号からなる複素信号x(k)又はx(k)を入力する。入力切換部23は、当該入力された符号切換制御信号に基づいて、A/D変換部21,22により出力されたデジタルデータの複素信号x(k)又はx(k)を、符号反転部24、第1相関値演算部25、第2相関値演算部26及び第3相関値演算部27のうちいずれかに出力する。
【0079】
具体的には、入力切換部23は、送信符号Aに切り換える旨の符号切換制御信号が送信符号制御部10により出力された場合、A/D変換部21,22により出力されたデジタルデータの複素信号x(k)を第1相関値演算部25に出力する。
また、入力切換部23は、送信符号−Aに切り換える旨の符号切換制御信号が送信符号制御部10により出力された場合、A/D変換部21,22により出力されたデジタルデータの複素信号x(k)を符号反転部24に出力する。
【0080】
また、入力切換部23は、送信符号B1に切り換える旨の符号切換制御信号が送信符号制御部10により出力された場合、A/D変換部21,22により出力されたデジタルデータの複素信号x(k)を第2相関値演算部26に出力する。
また、入力切換部23は、送信符号B2に切り換える旨の符号切換制御信号が送信符号制御部10により出力された場合、A/D変換部21,22により出力されたデジタルデータの複素信号x(k)を第3相関値演算部27に出力する。
【0081】
符号反転部24は、入力切換部23により出力されたベースバンドの複素信号x(k)の正負の極性を反転し、当該反転された複素信号−x(k)を第1相関値演算部25に出力する。
【0082】
第1相関値演算部25は、入力切換部23により出力されたデジタルデータの複素信号x(k)、又は符号反転部24により出力されたデジタルデータの複素信号−x(k)を入力する。以下、第1相関値演算部25に入力された複素信号x(k)又は複素信号−x(k)を、便宜的にy(k)と記載する。従って、複素信号y(k)は、複素信号x(k)又は複素信号−x(k)である。
【0083】
また、第1相関値演算部25は、送信信号生成部4の動作と同期して、当該送信信号生成部4と同様に基準発振器Loにおいて生成されたリファレンス信号に基づいて、当該リファレンス信号を所定倍に逓倍した信号を生成する。なお、図1では、第1相関値演算部25へのリファレンス信号の入力は、省略して記載している。第1相関値演算部25は、当該生成された信号に基づいて、離散時刻kに応じて送信信号生成部4により生成された送信信号と同一のベースバンドの基準送信信号r(n)を周期的に生成する。
【0084】
更に、第1相関値演算部25は、入力切換部23又は符号反転部24により出力された複素信号y(k)と、当該生成された基準送信信号r(n)との相関値を演算する。但し、この相関値の演算においては、基準送信信号r(n)の複素共役値が用いられる。
【0085】
具体的には、第1相関値演算部25は、図2に示す第M番目及び第(M+3)番目の送信周期Ta、即ち離散時刻k=1〜(NLa+Na−1)の場合には、数式(6)に従って、相関値AC(k)を演算する。第1相関値演算部25は、数式(6)に従って演算された相関値AC(k)を第1平均化処理部28に出力する。
【数6】

【0086】
第2相関値演算部26は、入力切換部23により出力されたデジタルデータの複素信号x(k)を入力する。以下、第2相関値演算部26により入力された複素信号を、便宜的にy(k)と記載する。
【0087】
また、第2相関値演算部26は、送信信号生成部4の動作と同期して、当該送信信号生成部4と同様に基準発振器Loにより生成されたリファレンス信号に基づいて、当該リファレンス信号を所定倍に逓倍した信号を生成する。なお、図1では、第2相関値演算部26へのリファレンス信号の入力は、省略して記載している。第2相関値演算部26は、当該生成された信号に基づいて、離散時刻kに応じて送信信号生成部4により生成された送信信号と同一のベースバンドの基準送信信号r(n)を周期的に生成する。
【0088】
更に、第2相関値演算部26は、入力切換部23により出力された複素信号y(k)と、当該生成された基準送信信号r(n)との相関値を演算する。但し、この相関値の演算においては、基準送信信号r(n)の複素共役値が用いられる。
【0089】
具体的には、第2相関値演算部26は、図2に示す第(M+1)番目及び第(M+4)番目の送信周期Tb、即ち離散時刻k=1〜(NLb+Nb−1)の場合には、数式(7)に従って、相関値AC(k)を演算する。第2相関値演算部26は、数式(7)に従って演算された相関値AC(k)を第2平均化処理部29に出力する。
【数7】

【0090】
第3相関値演算部27は、入力切換部23により出力されたデジタルデータの複素信号x(k)を入力する。以下、第3相関値演算部27により入力された複素信号を、便宜的にy(k)と記載する。
【0091】
また、第3相関値演算部27は、送信信号生成部4の動作と同期して、当該送信信号生成部4と同様に基準発振器Loにより生成されたリファレンス信号に基づいて、当該リファレンス信号を所定倍に逓倍した信号を生成する。なお、図1では、第3相関値演算部27へのリファレンス信号の入力は、省略して記載している。第3相関値演算部27は、当該生成された信号に基づいて、離散時刻kに応じて送信信号生成部4により生成された送信信号と同一のベースバンドの基準送信信号r(n)を周期的に生成する。
【0092】
更に、第3相関値演算部27は、入力切換部23により出力された複素信号y(k)と、当該生成された基準送信信号r(n)との相関値を演算する。但し、この相関値の演算においては、基準送信信号r(n)の複素共役値が用いられる。
【0093】
具体的には、第3相関値演算部27は、図2に示す第(M+2)番目及び第(M+5)番目の送信周期Tb、即ち離散時刻k=1〜(NLb+Nb−1)の場合には、数式(8)に従って、相関値AC(k)を演算する。第3相関値演算部27は、数式(8)に従って演算された相関値AC(k)を第2平均化処理部29に出力する。
【数8】

【0094】
上述した様に、第1相関値演算部25の演算は、離散時刻k=1〜(NLa+Na−1)に対して行われる。また、第2相関値演算部26及び第3相関値演算部27の演算は、離散時刻k=1〜(NLb+Nb−1)に対して行われる。但し、レーダ装置1の測定対象となるターゲットの存在範囲が当該レーダ装置1から近距離に位置するという前提の下で、離散時刻k,kの範囲を更に限定しても良い。これにより、レーダ装置1は、第1相関値演算部25、第2相関値演算部26、及び第3相関値演算部27による演算量をそれぞれ低減することができる。即ち、レーダ装置1は、信号処理部20による消費電力量を低減することができる。
【0095】
第1平均化処理部28は、周期的に繰り返される送信周期Taにおいて、送信符号A又は送信符号−Aに基づいて生成された各送信信号と同一の各基準送信信号と、当該各基準送信信号に対する反射波の信号を受信した受信信号との相関値を加算する。なお、この相関値は、上述した数式(6)で演算されたものである。
【0096】
具体的には、第1平均化処理部28は、図2(c)に示した各離散時刻k=1〜(NLa+Na−1)の期間において、数式(6)に従って演算された各相関値AC(k)の加算結果を平均化する。第1平均化処理部28による加算は、離散時刻kごとに行われる。
【0097】
更に、第1平均化処理部28は、図2に示した第M番目及び第(M+3)番目の各送信周期Taの和である2Ta分における各相関値の加算平均結果を1つの単位として、更に当該単位の複数個の加算平均結果である相関値で平均化しても良い。これにより、レーダ装置1は、当該レーダ装置1の周囲の雑音成分を抑圧し、ターゲットの到来角度及び距離の推定に関する測定性能を向上することができる。
【0098】
第2平均化処理部29は、周期的に繰り返される送信周期Tbにおいて、送信符号B1又は送信符号B2に基づいて生成された各送信信号と同一の各基準送信信号と、当該各基準送信信号に対する反射波の信号を受信した受信信号との相関値を加算する。なお、この相関値は、上述した数式(7)及び数式(8)で演算されたものである。
【0099】
具体的には、第2平均化処理部29は、図2(c)に示した各離散時刻k=1〜(NLb+Nb−1)の期間において、数式(7)及び数式(8)に従って演算された各相関値AC(k)とAC(k)との加算結果を平均化する。第2平均化処理部29による加算は、図2に示した第(M+1)番目、第(M+2)番目、第(M+4)番目及び第(M+5)番目の各送信周期Tbの離散時刻kごとに行われる。
【0100】
即ち、第2平均化処理部29は、第(M+1)番目、第(M+2)番目、第(M+4)番目及び第(M+5)番目の各送信周期Tbにおける各相関値を加算する。これにより、レーダ装置1は、当該レーダ装置1の周囲の雑音成分を抑圧し、ターゲットの到来角度及び距離の推定に関する測定性能を向上することができる。更に、送信符号B1と送信符号B2とは相補符号のペアとなる符号であるため、レーダ装置1は、第2平均化処理部28によれば、レンジサイドローブが低く抑制された信号を得ることができる。
【0101】
到来距離推定部30は、第1平均化処理部28により演算された加算結果、及び、第2平均化処理部29により演算された加算結果を入力する。到来距離推定部30は、当該入力された加算結果に基づいて、ターゲットまでの距離の推定演算を行う。到来距離推定部30によるターゲットまでの距離の推定演算は、既に公知の技術であり、例えば下述参考非特許文献1を参照することにより実現することが可能である。
【0102】
(参考非特許文献1)J.J.BUSSGANG、et al.、「A Unified Analysis of Range Performance of CW, Pulse, and Pulse Dopper Radar」,Proceedings of the IRE,Vol.47,Issue 10,pp.1753−1762(1959)
【0103】
例えば、到来距離推定部30は、第1平均化処理部28及び第2平均化処理部29の加算結果の各相関値に基づいて、当該相関値が最大値をとるときの離散時刻と高周波送信信号の送信時間との時間差を判定する。更に、到来距離推定部30は、当該判定された時間差に基づいて、ターゲットまでの距離を推定する。
【0104】
第1実施形態のレーダ装置1の効果について、図4を参照して説明する。図4は、短い符号長の送信符号Aと長い符号長の送信符号B1との相互相関演算結果を示す説明図である。同図(a)は、送信符号Aと送信符号B1との相互相関演算結果Xcorr(A,B1,s)である。同図(b)は、送信符号−Aと送信符号B1との相互相関演算結果Xcorr(A,−B1,s)である。同図(c)は、送信符号Aと送信符号B1との相互相関演算結果と、送信符号−Aと送信符号B1との相互相関演算結果との加算結果Xcorr(A,B1,s)+Xcorr(A,−B1,s)である。
【0105】
なお、相互相関演算Xcorr(x,y,s)は、数式(9)で示される。(ここで、n>La又はn<1において、x=0、n>Lb又はn<1において、y=0)。なお、アスタリスク*は複素共役演算子を示す。なお、パラメータsは遅延時間又はシフト時間を示す。
【数9】

【0106】
図4(a)に示す様に、第M番目の送信周期Taの間に受信された反射波の信号と、第(M+1)番目の送信周期Tbに送信される高周波送信信号との間で符号間干渉が生じているとする。即ち、同図(a)の横軸のシフト時間[秒]に対する送信符号Aと送信符号B1との相互相関値特性には、ノイズ成分が存在している。なお、第M番目の送信周期Taの間に受信された反射波の信号は、送信符号Aに基づいて生成された高周波送信信号に対する反射波の信号である。第(M+1)番目の送信周期Tbに送信される高周波送信信号は、送信符号B1に基づいて生成された高周波送信信号である。
【0107】
更に、図4(b)に示す様に、第(M+3)番目の送信周期Taの間に受信された反射波の信号と、第(M+4)番目の送信周期Tbに送信される高周波送信信号との間で符号間干渉が生じているとする。即ち、同図(b)の横軸のシフト時間[秒]に対する送信符号−Aと送信符号B1との相互相関値特性には、ノイズ成分が存在している。なお、第(M+3)番目の送信周期Taの間に受信された反射波の信号は、送信符号−Aに基づいて生成された高周波送信信号に対する反射波の信号である。第(M+4)番目の送信周期Tbに送信される高周波送信信号は、送信符号B1に基づいて生成された高周波送信信号である。
【0108】
上述した様に、第2平均化処理部29は、離散時刻k=1〜(NLb+Nb−1)の送信符号B1における相関値を、第(M+1)番目及び第(M+4)番目の各送信周期の和である2周期分加算する。この2周期分の加算により、第(M+1)番目の送信周期の相関値と第(M+4)番目の送信周期の相関値との加算に基づき、図4(a)に示した相互相関値特性と図4(b)に示した相互相関値特性とが加算される。
【0109】
このとき、図4(c)に示す様に、相互相関値特性のノイズ成分がゼロとなる。即ち、レーダ装置1は、離散時刻k=1〜(NLb+Nb−1)の送信符号B1における相関値を、第(M+1)番目及び第(M+4)番目の2周期分加算することにより、信号処理部20における信号処理区間に符号間干渉の発生を抑制することができる。更に、レーダ装置1は、符号長の短い送信符号A,−Aの送信周期を、符号長の長い送信系列B1,B2の送信周期より短くすることにより、全ての測定距離レンジの測定に必要な測定時間を短縮することができる。
【0110】
以上により、第1の実施形態のレーダ装置1によれば、短い送信周期Taの送信符号の反射波が、時間的に後続する長い送信周期に含まれることで符号間干渉が発生する場合にもその干渉を抑制することができる。これにより、短い送信周期Taにおいて、符号長の短い送信符号を、レーダ装置と比較的近い距離にあるターゲットの測定に用い、長い送信周期Tbにおいて、符号長の長い送信符号を、レーダ装置と比較的遠い距離にあるターゲットの測定に用いることで、測定距離レンジを拡大しながらも受信時における受信ダイナミックレンジを抑制することができる。更に、レーダ装置1によれば、全ての測定距離レンジの測定に必要な測定時間を短縮可能であるため、ターゲットが移動している場合でも当該移動に対する測定の追従性を向上することができる。
【0111】
〔第1の実施形態の変形例1〕
第1の実施形態では、送信周期Taに係る整数倍を示すパラメータZa、送信周期Tbに係る整数倍を示すパラメータZb1,Zb2がそれぞれ1である場合について説明した。即ち、図2に示す様に、第M番目の送信周期Taで送信符号Aを用い,第(M+1)番目の送信周期Tbで送信符号B1を用い、第(M+2)番目の送信周期Tbで送信符号B2を用いた場合について説明した。
第1の実施形態の変形例1では、上述したパラメータZa,Zb1,Zb2がそれぞれ1ではない場合、即ち2以上の自然数である場合について説明する。
【0112】
具体的には、第M番目の送信周期Taで送信符号Aに基づいて生成された高周波送信信号が送信される場合、引き続いて第(M+Za−1)番目まで第M番目の送信周期Taと同一の送信周期Taで送信符号Aに基づいて生成された高周波送信信号が送信される。
引き続いて、第(M+Za)番目から第(M+Za+Zb1−1)番目までの送信周期では、送信周期Tbで送信符号B1に基づいて生成された高周波送信信号が送信される。
引き続いて、第(M+Za+Zb1)番目から第(M+Za+Zb1+Zb2−1)番目までの送信周期では、送信周期Tbで送信符号B2に基づいて生成された高周波送信信号が送信される。
【0113】
更に、引き続いて、第(M+Za+Zb1+Zb2)番目の送信周期Taで送信符号−Aに基づいて生成された高周波送信信号が送信され、引き続いて第(M+2Za+Zb1+Zb2−1)番目まで第(M+Za+Zb1+Zb2)番目の送信周期Taと同一の送信周期Taで送信符号−Aに基づいて生成された高周波送信信号が送信される。
引き続いて、第(M+2Za+Zb1+Zb2)番目から第(M+2Za+2Zb1+Zb2−1)番目までの送信周期では、送信周期Tbで送信符号B1に基づいて生成された高周波送信信号が送信される。
引き続いて、第(M+2Za+2Zb1+Zb2)番目から第(M+2Za+2Zb1+2Zb2−1)番目までの送信周期では、送信周期Tbで送信符号B2に基づいて生成された高周波送信信号が送信される。
【0114】
この第(M+2Za+2Zb1+2Zb2)番目以降の送信周期では、第M番目から第(M+2Za+2Zb1+2Zb2−1)の送信周期を単位として、当該単位に相当する送信周期による送信が繰り返される。
【0115】
第1の実施形態では、図2に示した第(M+1)番目の送信周期Tbで送信符号B1に基づいて生成された高周波送信信号が送信され、次の第(M+2)番目の送信周期Tbで送信符号B2に基づいて生成された高周波送信信号が送信される。また、この相補符号を構成する送信符号B1,B2に基づいて生成された各高周波送信信号の送信が、第(M+1)番目及び第(M+2)番目の送信周期2Tbを単位として、当該単位の整数倍Zcによる送信が繰り返されても良い。この場合、パラメータZc,Zb1,Zb2,Tbとの間には、数式(10)が成立する。
【数10】

【0116】
上述した第1の実施形態の変形例1で説明した送信符号に基づいて生成された高周波送信信号が送信されても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0117】
〔第2の実施形態〕
次に、第2の実施形態のレーダ装置1bの構成及び動作について図5及び図6を参照して説明する。図5は、第2の実施形態のレーダ装置1bの内部構成を示すブロック図である。図6は、第2の実施形態のレーダ装置1bの動作に関するタイミングチャートである。同図(a)は、送信周期Taと送信周期Tbと各送信周期に用いられる送信符号との説明図である。同図(b)は、測定区間の説明図である。同図(c)は、各送信周期Ta,Tbと離散時刻k,kとの関係を説明する説明図である。
【0118】
以下の第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる構成及び動作について説明し、当該第1の実施形態と同一の構成及び動作に関する説明は省略する。第1の実施形態では、短い符号長の送信符号Aとして、Barker符号系列又はM系列符号等が用いられた。第2の実施形態では、短い符号長の送信符号に、相補符号A1,A2が用いられる。符号系列A1,A2は、相補符号系列のペアである。
【0119】
レーダ装置1bは、図5に示す様に、基準発振器Loと、送信アンテナANT0が接続されたレーダ送信部2bと、受信アンテナANT1が接続されたレーダ受信部3bとを含む構成である。レーダ装置1bは、レーダ送信部2bにより生成された所定の間欠的な高周波送信信号を送信アンテナANT0から送信し、ターゲットに反射された反射波の信号をレーダ受信部3bで受信する。レーダ装置1は、レーダ受信部3bで受信した受信信号からターゲットを検出する。
【0120】
レーダ送信部2bについて説明する。レーダ送信部2bは、送信信号生成部4bと、送信RF部13とを含む構成である。送信信号生成部4bは、第1符号生成部5と、第2符号生成部6と、第3符号生成部7と、第4符号生成部5bと、符号反転部8と、符号反転部8bと、送信符号切換部9bと、送信符号制御部10bと、変調部11と、LPF12とを含む構成である。図5では、送信信号生成部4bは、LPF12を含む様に構成されているが、LPF12は送信信号生成部4bと独立してレーダ送信部2bの中に構成されても良い。送信RF部13は、周波数変換部14と、増幅器15とを含む構成である。
【0121】
送信信号生成部4bは、基準発振器Loにより生成されたリファレンス信号に基づいて、当該リファレンス信号を所定倍に逓倍した信号を生成する。送信信号生成部4bの各部は、当該生成された信号に基づいて動作する。送信信号生成部4bは、パルス符号長の異なる複数の符号系列A1,A2,B1及びB2のいずれかを、2つの送信周期Ta,Tbの各整数倍(Za1,Za2,Zb1,Zb2:自然数)を単位として切り換える。但し、送信周期Taでは符号系列A1又はA2が用いられ、送信周期Tbでは符号系列B1又はB2が用いられる。更に、符号系列A1及びA2の符号長は同じであり、符号系列B1及びB2の符号長は同じであるとする。
【0122】
更に、パラメータLaは、符号系列A1,A2の各パルス符号長を表す。パラメータLbは、符号系列B1,B2の各パルス符号長を表す。更に、パラメータLaとパラメータLbとの間には、La<Lbが成立する。なお、符号系列A1,A2は、それぞれ相補性を有する相補符号系列(A1,A2)のペアである。符号系列B1,B2は、それぞれ相補性を有する相補符号系列(B1,B2)のペアである。
【0123】
また、送信信号生成部4bにより生成される送信信号は、連続的な信号ではないものとする。例えば、図6(a)に示す様に、第M番目及び第(M+2)番目の各送信周期Taの送信区間Tra[s]では、それぞれパルス符号長Laの符号系列A1及びA2に対して、1つのパルス符号あたりNのサンプルが存在する。更に、第(M+4)番目及び第(M+6)番目の各送信周期Taの送信区間Traでは、それぞれパルス符号長Laの符号系列−A1及び−A2に対して、1つのパルス符号あたりNのサンプルが存在する。
【0124】
第M番目、第(M+2)番目、第(M+4)番目及び第(M+6)番目の各送信周期Taの非送信区間(Ta−Tra)[s]では、ベースバンドの送信信号r(n)としてNa[個]のサンプルが存在するものとする。
【0125】
また、第(M+1)番目及び第(M+5)番目の各送信周期Tbの送信区間Trb[s]では、それぞれパルス符号長Lbの符号系列B1に対して、1つのパルス符号あたりNのサンプルが存在する。同送信周期Tbの非送信区間(Tb−Trb)[s]では、ベースバンドの送信信号r(n)としてNb[個]のサンプルが存在する。
【0126】
また、第(M+3)番目及び第(M+7)番目の各送信周期Tbの送信区間Trb[s]では、それぞれパルス符号長Lbの符号系列B2に対して、1つのパルス符号あたりNのサンプルが存在する。同送信周期Tbの非送信区間(Tb−Trb)[s]では、ベースバンドの送信信号r(n)としてNb[個]のサンプルが存在する。
【0127】
なお、図6に示す各送信周期の代わりに、符号系列A1,A2が相補符号系列であることに関連して、送信符号A1が用いられる送信周期Taの次に、送信符号A2が用いられる送信周期Taが連続する様な2つの送信周期(2Ta)による送信が行われても良い。更に、この2つの送信周期(2Ta)を1つの単位として、当該単位の整数倍Zdに相当する送信周期(2Ta×Zd)による送信が繰り返されても良い。加えて、符号系列B1,B2が相補符号系列であることに関連して、送信符号B1が用いられる送信周期Tbの次に、送信符号B2が用いられる送信周期Tbが連続する様な2つの送信周期(2Tb)による送信が行われても良い。更に、この2つの送信周期(2Tb)を1つの単位として、当該単位の整数倍Zeに相当する送信周期(2Tb×Ze)による送信が繰り返されても良い。
【0128】
例えば、図7は、パラメータZd=1及びパラメータZe=1である場合におけるレーダ装置1bの動作のタイミングチャートを示す。更に、図8は、パラメータZd=2及びパラメータZe=2である場合におけるレーダ装置1bの動作のタイミングチャートを示す。
【0129】
図7(a)及び図8(a)は、送信周期Taと送信周期Tbと各送信周期に用いられる送信符号との説明図である。図7(b)及び図8(b)は、測定区間の説明図である。図7(c)及び図8(c)は、各送信周期Ta,Tbと離散時刻k,kとの関係を説明する説明図である。
【0130】
図7において、第M番目の送信周期Taから第(M+3)番目の送信周期Tbまでを前半送信周期とし、第(M+4)番目の送信周期Taから第(M+7)番目の送信周期Tbまでを後半送信周期とする。
【0131】
パルス符号長の短い送信符号A1の送信周期と、パルス符号長の短い送信符号A2の送信周期とが連続する場合には、当該送信符号A1の反射波の信号と、当該送信符号A2の送信信号との間で、送信符号A1と送信符号A2との相互相関特性に応じた符号間干渉が生じる。また、上述した様に、パルス符号長の短い送信符号A2の送信周期とパルス符号長の長い送信符号B1の送信周期との間では、送信符号A2と送信符号B1との相互相関特性に応じた符号間干渉が生じる。
【0132】
従って、図7に示す様に、後半送信周期の中では、相補符号を構成する一方のペアである符号系列A1又はA2の極性が反転された符号に基づいて生成された高周波送信信号が送信される。具体的には、第(M+5)番目の送信周期Taには、送信符号A2の極性が反転された送信符号−A2に基づいて生成された高周波送信信号が送信される。
【0133】
更に、信号処理部により、次の処理が行われる。即ち、第M番目の送信周期Taに演算された相関値と第(M+4)番目の送信周期Taに演算された相関値とが加算される。第(M+1)番目の送信周期Taに演算された相関値と第(M+5)番目の送信周期Taに演算された相関値とが加算される。第(M+2)番目の送信周期Tbに演算された相関値と第(M+6)番目の送信周期Tbに演算された相関値とが加算される。第(M+3)番目の送信周期Tbに演算された相関値と第(M+7)番目の送信周期Tbに演算された相関値とが加算される。
【0134】
これにより、前半送信周期の各送信周期に演算された相関値と後半送信周期における各送信周期に演算された相関値との加算により、送信符号A1と送信符号A2との相互相関特性に応じた符号間干渉、及び、送信符号A2と送信符号B1との相互相関特性に応じた符号間干渉の発生を抑制することができる。
【0135】
同様に、図8において、第M番目の送信周期Taから第(M+5)番目の送信周期Tbまでを前半送信周期として、第(M+6)番目の送信周期Taから第(M+11)番目の送信周期Tbまでを後半送信周期とする。
【0136】
パルス符号長の短い送信符号A1の送信周期と、パルス符号長の短い送信符号A2の送信周期とが連続する場合には、当該送信符号A1の反射波の信号と、当該送信符号A2の送信信号との間で、送信符号A1と送信符号A2との相互相関特性に応じた符号間干渉が生じる。また、上述した様に、パルス符号長の短い送信符号−A2の送信周期とパルス符号長の長い送信符号B1の送信周期との間では、送信符号−A2と送信符号B1との相互相関特性に応じた符号間干渉が生じる。
【0137】
従って、図8に示す様に、後半送信周期の中では、相補符号を構成する一方のペアである符号系列A1又はA2の極性が反転された符号に基づいて生成された高周波送信信号が送信される。具体的には、第(M+7)番目の送信周期Taには、送信符号A2の極性が反転された送信符号−A2に基づいて生成された高周波送信信号が送信される。また、第(M+9)番目の送信周期Taには、送信符号−A2の極性が反転された送信符号A2に基づいて生成された高周波送信信号が送信される。
【0138】
更に、信号処理部により、次の処理が行われる。即ち、第M番目の送信周期Taに演算された相関値と第(M+6)番目の送信周期Taに演算された相関値とが加算される。第(M+1)番目の送信周期Taに演算された相関値と第(M+7)番目の送信周期Taに演算された相関値とが加算される。第(M+2)番目の送信周期Taに演算された相関値と第(M+8)番目の送信周期Taに演算された相関値とが加算される。第(M+3)番目の送信周期Taに演算された相関値と第(M+9)番目の送信周期Taに演算された相関値とが加算される。第(M+4)番目の送信周期Tbに演算された相関値と第(M+10)番目の送信周期Tbに演算された相関値とが加算される。第(M+5)番目の送信周期Tbに演算された相関値と第(M+11)番目の送信周期Tbに演算された相関値とが加算される。
【0139】
これにより、前半送信周期の各送信周期に演算された相関値と後半送信周期の各送信周期に演算された相関値との加算により、送信符号A1と送信符号A2との相互相関特性に応じた符号間干渉、及び、送信符号−A2と送信符号B1との相互相関特性に応じた符号間干渉の発生を抑制することができる。
【0140】
以下、レーダ送信部2bの各部の構成について説明する。以下の説明では、符号系列A1,A2、及びB1,B2のいずれかを、それぞれの送信周期Ta及びTbごとに当該符号系列を切り換える例(パラメータZa1=Za2=Zb1=Zb2=1)を示す。但し、上述した様に、パラメータZa1,Za2,Zb1,Zb2は1に限定されない。
【0141】
第2符号生成部6、第3符号生成部7及び符号反転部8の動作は第1実施形態と同様のため、当該動作の説明は省略する。
【0142】
第1符号生成部5、第4符号生成部5bは、パルス符号長Laの符号系列A1,A2のパルス圧縮用の送信符号を生成する。これらのパルス圧縮用の送信符号としては、相補性を有する相補符号のペアである符号系列A1,A2がそれぞれ用いられる。第1符号生成部5は、当該生成された符号系列A1の送信符号を符号反転部8及び送信符号切換部9bに出力する。第4符号生成部5bは、当該生成された符号系列A2の送信符号を符号反転部8b及び送信符号切換部9bに出力する。以下、符号系列A1の送信符号を、便宜的に送信符号A1と記載する。更に、符号系列A2の送信符号を、便宜的に送信符号A2と記載する。
【0143】
符号反転部8は、第1符号生成部5により出力された送信符号A1を入力し、更に、当該入力された送信符号A1の極性が反転された符号系列−A1の送信符号を生成する。符号反転部8は、当該生成された符号系列−A1の送信符号を送信符号切換部9bに出力する。以下、符号系列−A1の送信符号を、便宜的に送信符号−A1と記載する。
【0144】
符号反転部8bは、第4符号生成部5bにより出力された送信符号A2を入力し、更に、当該入力された送信符号A2の極性が反転された符号系列−A2の送信符号を生成する。符号反転部8bは、当該生成された符号系列−A2の送信符号を送信符号切換部9bに出力する。以下、符号系列−A2の送信符号を、便宜的に送信符号−A2と記載する。
【0145】
送信符号切換部9bは、第1符号生成部5、第2符号生成部6、第3符号生成部7、第4符号生成部5b、符号反転部8及び符号反転部8bによりそれぞれ出力された送信符号A1,−A1,A2,−A2,B1,B2を入力する。また、送信符号切換部9bは、送信符号制御部10bにより出力された符号切換制御信号に基づいて、当該入力された各送信符号A1,−A1,A2,−A2,B1,B2のうちいずれかの送信符号を選択的に切り換え、当該切り換えられた送信符号を変調部11に出力する。
【0146】
送信符号制御部10bは、送信周期Ta,Tbを単位に、複数の送信符号を選択的に切り換える様に送信符号切換部9bを制御する。具体的には、送信符号制御部10bは、送信周期Ta,Tbを単位に、送信符号を選択的に切り換える旨の符号切換制御信号を送信符号切換部9bに出力する。また、送信符号制御部10bは、当該符号切換制御信号をレーダ受信部3bの入力切換部23bにも出力する。
【0147】
送信符号制御部10bの動作について、図6(a)を参照して具体的に説明する。
【0148】
送信符号制御部10bは、第M番目の送信周期Taでは、送信符号A1を変調部11に出力させる様に送信符号切換部9bを制御する。即ち、送信符号制御部10bは、第M番目の送信周期Taでは、送信符号A1に選択的に切り換える旨の符号切換制御信号を送信符号切換部9bに出力する。
【0149】
また、送信符号制御部10bは、第(M+1)番目の送信周期Tbでは、送信符号B1を変調部11に出力させる様に送信符号切換部9bを制御する。即ち、送信符号制御部10bは、第(M+1)番目の送信周期Tbでは、送信符号B1に選択的に切り換える旨の符号切換制御信号を送信符号切換部9bに出力する。
【0150】
また、送信符号制御部10bは、第(M+2)番目の送信周期Taでは、送信符号A2を変調部11に出力させる様に送信符号切換部9bを制御する。即ち、送信符号制御部10bは、第(M+2)番目の送信周期Taでは、送信符号A2に選択的に切り換える旨の符号切換制御信号を送信符号切換部9bに出力する。
【0151】
また、送信符号制御部10bは、第(M+3)番目の送信周期Tbでは、送信符号B2を変調部11に出力させる様に送信符号切換部9bを制御する。即ち、送信符号制御部10bは、第(M+3)番目の送信周期Tbでは、送信符号B2に選択的に切り換える旨の符号切換制御信号を送信符号切換部9bに出力する。
【0152】
また、送信符号制御部10bは、第(M+4)番目の送信周期Taでは、送信符号−A1を変調部11に出力させる様に送信符号切換部9bを制御する。即ち、送信符号制御部10bは、第(M+4)番目の送信周期Taでは、送信符号−A1に選択的に切り換える旨の符号切換制御信号を送信符号切換部9bに出力する。
【0153】
また、送信符号制御部10bは、第(M+5)番目の送信周期Tbでは、送信符号B1を変調部11に出力させる様に送信符号切換部9bを制御する。即ち、送信符号制御部10bは、第(M+5)番目の送信周期Tbでは、送信符号B1に選択的に切り換える旨の符号切換制御信号を送信符号切換部9bに出力する。
【0154】
また、送信符号制御部10bは、第(M+6)番目の送信周期Taでは、送信符号−A2を変調部11に出力させる様に送信符号切換部9bを制御する。即ち、送信符号制御部10bは、第(M+6)番目の送信周期Taでは、送信符号−A2に選択的に切り換える旨の符号切換制御信号を送信符号切換部9bに出力する。
【0155】
また、送信符号制御部10bは、第(M+7)番目の送信周期Tbでは、送信符号B2を変調部11に出力させる様に送信符号切換部9bを制御する。即ち、送信符号制御部10bは、第(M+7)番目の送信周期Tbでは、送信符号B2に選択的に切り換える旨の符号切換制御信号を送信符号切換部9bに出力する。
【0156】
なお、第(M+8)番目以降の送信周期においては、図6(a)に示した第M番目の送信周期から第(M+7)番目の送信周期までの8つの送信周期を1つの単位として、当該単位における各送信周期に応じた送信符号が生成され、繰り返して送信符号切換部9bに出力される。
【0157】
変調部11、LPF12、送信RF部13、及び送信アンテナANT0の動作は第1の実施形態と同様のため、当該動作の説明は省略する。
【0158】
次に、レーダ受信部3bについて説明する。
【0159】
レーダ受信部3bは、受信アンテナANT1と、受信RF部16と、信号処理部20bとを含む構成である。受信RF部16は、増幅器17と、周波数変換部18と、直交検波部19とを含む構成である。信号処理部20bは、A/D変換部21と、A/D変換部22と、入力切換部23bと、符号反転部24と、符号反転部24bと、第1相関値演算部25と、第2相関値演算部26と、第3相関値演算部27と、第4相関値演算部25bと、第1平均化処理部28bと、第2平均化処理部29と、到来距離推定部30bとを含む構成である。
【0160】
受信アンテナANT1、受信RF部16、A/D変換部21及びA/D変換部22の動作は第1の実施形態と同様のため、当該動作の説明は省略する。ここで、パラメータkは、図6(a)に示す第M番目、第(M+2)番目、第(M+4)番目及び第(M+6)番目の各送信周期Taにおいて送信される高周波送信信号の元になるベースバンドの送信信号r(n)のサンプル数に対応した離散時刻を表す。更に、パラメータkは、図2(a)に示す第(M+1)番目、第(M+3)番目、第(M+5)番目及び第(M+7)番目の各送信周期Tbにおいて送信される高周波送信信号の元になるベースバンドの送信信号r(n)のサンプル数に対応した離散時刻を表す。
【0161】
第2の実施形態においては、図6(c)に示す様に、離散時刻k=1は、送信符号A1,A2,−A1及び−A2のうちいずれかに基づいて生成される高周波送信信号の送信周期Taにおける送信区間Traの開始タイミングを示す。また、離散時刻k=NLaは、送信符号A1,A2,−A1及び−A2のうちいずれかに基づいて生成される高周波送信信号の送信周期Taにおける送信区間Traの終了タイミングを示す。更に、離散時刻k=NLa+Na−1は、送信符号A1,A2,−A1及び−A2のうちいずれかに基づいて生成される高周波送信信号の送信周期Taの終了直前タイミングを示す。
【0162】
一方、図6(c)に示す様に、離散時刻k=1は、送信符号B1又は送信符号B2に基づいて生成される高周波送信信号の送信周期Tbにおける送信区間Trbの開始タイミングを示す。また、離散時刻k=NLbは、送信符号B1又は送信符号B2に基づいて生成される高周波送信信号の送信周期Tbにおける送信区間Trbの終了タイミングを示す。更に、離散時刻k=NLb+Nb−1は、送信符号B1又は送信符号B2に基づいて生成される高周波送信信号の送信周期Tbの終了直前タイミングを示す。なお、図6(c)には、離散時刻k,kの範囲を便宜的に図示するために、離散時刻kの範囲を第M番目の送信周期のみに示し、離散時刻kの範囲を第(M+3)番目の送信周期のみに示している。
【0163】
レーダ受信部3bは、各送信符号A1,B1,A2,B2,−A1,B1,−A2,B2に基づいて生成された高周波送信信号の各送信周期の和(4Ta+4Tb)である8周期に相当する送信周期を、信号処理部20bにおける信号処理区間として周期的に演算する。
【0164】
入力切換部23bは、送信符号制御部10bにより出力された符号切換制御信号、及び、A/D変換部21,22により出力されたデジタルデータの同相信号及び直交信号からなる複素信号x(k)又はx(k)を入力する。入力切換部23bは、当該入力された符号切換制御信号に基づいて、A/D変換部21,22により出力されたデジタルデータの複素信号x(k)又はx(k)を、符号反転部24、符号反転部24b、第1相関値演算部25、第2相関値演算部26、第3相関値演算部27及び第4相関値演算部25bのうちいずれかに出力する。
【0165】
具体的には、入力切換部23bは、送信符号A1に切り換える旨の符号切換制御信号が送信符号制御部10bにより出力された場合、A/D変換部21,22により出力されたデジタルデータの複素信号x(k)を第1相関値演算部25に出力する。
また、入力切換部23bは、送信符号−A1に切り換える旨の符号切換制御信号が送信符号制御部10により出力された場合、A/D変換部21,22により出力されたデジタルデータの複素信号x(k)を符号反転部24に出力する。
【0166】
また、入力切換部23bは、送信符号A2に切り換える旨の符号切換制御信号が送信符号制御部10bにより出力された場合、A/D変換部21,22により出力されたデジタルデータの複素信号x(k)を第4相関値演算部25bに出力する。
また、入力切換部23bは、送信符号−A2に切り換える旨の符号切換制御信号が送信符号制御部10bにより出力された場合、A/D変換部21,22により出力されたデジタルデータの複素信号x(k)を符号反転部24bに出力する。
【0167】
また、入力切換部23bは、送信符号B1に切り換える旨の符号切換制御信号が送信符号制御部10bにより出力された場合、A/D変換部21,22により出力されたデジタルデータの複素信号x(k)を第2相関値演算部26に出力する。
また、入力切換部23bは、送信符号B2に切り換える旨の符号切換制御信号が送信符号制御部10により出力された場合、A/D変換部21,22により出力されたデジタルデータの複素信号x(k)を第3相関値演算部27に出力する。
【0168】
符号反転部24、第1相関値演算部25、第2相関値演算部26及び第3相関値演算部27の動作は第1実施形態と同様のため、当該動作の説明は省略する。
【0169】
符号反転部24bは、入力切換部23bにより出力されたベースバンドの複素信号x(k)の正負の極性を反転し、当該反転された複素信号−x(k)を第4相関値演算部25bに出力する。
【0170】
第4相関値演算部25bは、入力切換部23bにより出力されたデジタルデータの複素信号x(k)、又は符号反転部24bにより出力されたデジタルデータの複素信号−x(k)を入力する。以下、第4相関値演算部25bに入力された複素信号x(k)又は複素信号−x(k)を、便宜的にy(k)と記載する。従って、複素信号y(k)は、複素信号x(k)又は複素信号−x(k)である。
【0171】
また、第4相関値演算部25bは、送信信号生成部4bの動作と同期して、当該送信信号生成部4bと同様に基準発振器Loにより生成されたリファレンス信号に基づいて、当該リファレンス信号を所定倍に逓倍した信号を生成する。なお、図5では、第4相関値演算部25bへのリファレンス信号の入力は、省略して記載している。第4相関値演算部25bは、当該生成された信号に基づいて、離散時刻kに応じて送信信号生成部4bにより生成された送信信号と同一のベースバンドの基準送信信号r(n)を周期的に生成する。
【0172】
更に、第4相関値演算部25bは、入力切換部23b又は符号反転部24bにより出力された複素信号y(k)と、当該生成された基準送信信号r(n)との相関値を演算する。但し、この相関値の演算においては、基準送信信号r(n)の複素共役値が用いられる。
【0173】
具体的には、第4相関値演算部25bは、図6に示す第(M+2)番目及び第(M+6)番目の送信周期Ta、即ち離散時刻k=1〜(NLa+Na−1)の場合には、数式(11)に従って、相関値AC(k)を演算する。第4相関値演算部25bは、数式(11)に従って演算された相関値AC(k)を第1平均化処理部28bに出力する。
【数11】

【0174】
上述した様に、第1相関値演算部25及び第4相関値演算部25bの演算は、離散時刻k=1〜(NLa+Na−1)に対して行われる。また、第2相関値演算部26及び第3相関値演算部27の演算は、離散時刻k=1〜(NLb+Nb−1)に対して行われる。但し、レーダ装置1bの測定対象となるターゲットの存在範囲が当該レーダ装置1bから近距離に位置するという前提の下で、離散時刻k,kの範囲を更に限定しても良い。これにより、レーダ装置1bは、第1相関値演算部25、第2相関値演算部26、第3相関値演算部27及び第4相関値演算部25bによる演算量をそれぞれ低減することができる。即ち、レーダ装置1bは、信号処理部20bによる消費電力量を低減することができる。
【0175】
第1平均化処理部28bは、周期的に繰り返される送信周期Taにおいて、送信符号A1,A2,−A1及び−A2のうちいずれかに基づいて生成された各送信信号と同一の各基準送信信号と、当該各基準送信信号に対する反射波の信号を受信した受信信号との相関値を加算する。なお、この相関値は、上述した数式(6)及び数式(11)で演算されたものである。
【0176】
具体的には、第1平均化処理部28bは、図6(c)に示した各離散時刻k=1〜(NLa+Na−1)の期間において、数式(6)及び数式(11)に従って演算された各相関値AC(k)及びAC(k)の加算結果を平均化する。第1平均化処理部28bによる加算は、図6に示した第M番目、第(M+2)番目、第(M+4)番目及び第(M+6)番目の各送信周期Taの離散時刻kごとに行われる。
【0177】
更に、第1平均化処理部28bは、図6に示した第M番目、第(M+2)番目、第(M+4)番目及び第(M+6)番目の各送信周期Taの和である4Ta分における各相関値の加算平均結果を1つの単位として、更に当該単位の複数個の加算平均結果である相関値で平均化しても良い。これにより、レーダ装置1bは、当該レーダ装置1bの周囲の雑音成分を抑圧し、ターゲットの到来角度及び距離の推定に関する測定性能を向上することができる。
【0178】
第2平均化処理部29は、周期的に繰り返される送信周期Tbにおいて、送信符号B1又は送信符号B2に基づいて生成された各送信信号と同一の各基準送信信号と、当該各基準送信信号に対する反射波の信号を受信した受信信号との相関値を加算する。なお、この相関値は、上述した数式(7)及び数式(8)で演算されたものである。
【0179】
具体的には、第2平均化処理部29は、図6(c)に示した各離散時刻k=1〜(NLb+Nb−1)の期間において、数式(7)及び数式(8)に従って演算された各相関値AC(k)とAC(k)との加算結果を平均化する。第2平均化処理部29による加算は、図2に示した第(M+1)番目、第(M+3)番目、第(M+5)番目及び第(M+7)番目の各送信周期Tbの離散時刻kごとに行われる。
【0180】
即ち、第2平均化処理部29は、第(M+1)番目、第(M+3)番目、第(M+5)番目及び第(M+7)番目の各送信周期Tbにおける各相関値を加算する。これにより、レーダ装置1bは、当該レーダ装置1bの周囲の雑音成分を抑圧し、ターゲットの到来角度及び距離の推定に関する測定性能を向上することができる。また、短い送信周期Taの送信符号A、−Aの反射波が、時間的に後続する長い送信周期Tbに含まれることで、符号間干渉が発生する場合にも、その干渉を抑制することができる。
【0181】
更に、送信符号B1と送信符号B2とは相補符号のペアとなる符号であるため、レーダ装置1bは、第2平均化処理部29によれば、レンジサイドローブが低く抑制された信号を得ることができる。
【0182】
更に、第2平均化処理部29は、図6に示した第(M+1)番目、第(M+3)番目、第(M+5)番目及び第(M+7)番目の各送信周期Tbの和である4Tb分における各相関値の加算平均結果を1つの単位として、更に当該単位の複数個の加算平均結果である相関値で平均化しても良い。これにより、レーダ装置1bは、当該レーダ装置1bの周囲の雑音成分を更に抑圧し、ターゲットの到来角度及び距離の推定に関する測定性能を向上することができる。
【0183】
到来距離推定部30bは、第1平均化処理部28bにより演算された加算結果、及び、第2平均化処理部29により演算された加算結果を入力する。到来距離推定部30bは、当該入力された加算結果に基づいて、ターゲットまでの距離の推定演算を行う。到来距離推定部30bによるターゲットまでの距離の推定演算は、既に公知の技術であり、例えば上述参考非特許文献1を参照することにより実現することが可能である。
【0184】
例えば、到来距離推定部30bは、第1平均化処理部28b及び第2平均化処理部29の加算結果の各相関値に基づいて、当該相関値が最大値をとるときの離散時刻と高周波送信信号の送信時間との時間差を判定する。更に、到来距離推定部30bは、当該判定された時間差に基づいて、ターゲットまでの距離を推定する。
【0185】
以上により、第2の実施形態のレーダ装置1bによれば、図4を参照して説明した第1の実施形態のレーダ装置1と同様に、短い送信周期Taの送信符号の反射波が、時間的に後続する長い送信周期に含まれることで符号間干渉が発生する場合にも、その干渉を抑制することができる。
【0186】
これにより、短い送信周期Taにおいて、符号長の短い送信符号を、レーダ装置と比較的近い距離にあるターゲットの測定に用い、長い送信周期Tbにおいて、符号長の長い送信符号を、レーダ装置と比較的遠い距離にあるターゲットの測定に用いることで、測定距離レンジを拡大しながらも受信時における受信ダイナミックレンジを抑制することができる。
【0187】
更に、レーダ装置1bによれば、全ての測定距離レンジの測定に必要な測定時間を短縮可能であるため、ターゲットが移動している場合でも当該移動に対する測定の追従性を向上することができる。
【0188】
具体的には、図6の第M番目の送信周期Taの間に受信された反射波の信号と、第(M+1)番目の送信周期Tbに送信される高周波送信信号との間で符号間干渉が生じているとする。なお、第M番目の送信周期Taの間に受信された反射波の信号は、送信符号A1に基づいて生成された高周波送信信号に対する反射波の信号である。第(M+1)番目の送信周期Tbに送信される高周波送信信号は、送信符号B1に基づいて生成された高周波送信信号である。
【0189】
更に、図6の第(M+4)番目の送信周期Taの間に受信された反射波の信号と、第(M+5)番目の送信周期Tbに送信される高周波送信信号との間で符号間干渉が生じているとする。なお、第(M+4)番目の送信周期Taの間に受信された反射波の信号は、送信符号−A1に基づいて生成された高周波送信信号に対する反射波の信号である。第(M+5)番目の送信周期Tbに送信される高周波送信信号は、送信符号B1に基づいて生成された高周波送信信号である。
【0190】
また、図6の第(M+2)番目の送信周期Taの間に受信された反射波の信号と、第(M+3)番目の送信周期Tbに送信される高周波送信信号との間で符号間干渉が生じているとする。なお、第(M+2)番目の送信周期Taの間に受信された反射波の信号は、送信符号A2に基づいて生成された高周波送信信号に対する反射波の信号である。第(M+3)番目の送信周期Tbに送信される高周波送信信号は、送信符号B2に基づいて生成された高周波送信信号である。
【0191】
更に、図6の第(M+6)番目の送信周期Taの間に受信された反射波の信号と、第(M+7)番目の送信周期Tbに送信される高周波送信信号との間で符号間干渉が生じているとする。なお、第(M+6)番目の送信周期Taの間に受信された反射波の信号は、送信符号−A2に基づいて生成された高周波送信信号に対する反射波の信号である。第(M+7)番目の送信周期Tbに送信される高周波送信信号は、送信符号B2に基づいて生成された高周波送信信号である。
【0192】
第2平均化処理部29は、離散時刻k=1〜(NLb+Nb−1)の送信符号B1における相関値を、第(M+1)番目及び第(M+5)番目の各送信周期の和である2周期分加算する。更に、第2平均化処理部29は、離散時刻k=1〜(NLb+Nb−1)の送信符号B2における相関値を、第(M+3)番目及び第(M+7)番目の各送信周期の和である2周期分加算する。
【0193】
この各2周期分の加算により、図4(c)に示す様な相互相関値特性のノイズ成分がゼロとなる。即ち、レーダ装置1bは、離散時刻k=1〜(NLb+Nb−1)の送信符号B1における相関値を、第(M+1)番目及び第(M+5)番目の2周期分加算することにより、信号処理部20bにおける信号処理区間に符号間干渉の発生を抑制することができる。また、レーダ装置1bは、離散時刻k=1〜(NLb+Nb−1)の送信符号B2における相関値を、第(M+3)番目及び第(M+7)番目の2周期分加算することにより、信号処理部20bにおける信号処理区間により、符号間干渉の発生を抑制することができる。
【0194】
更に、レーダ装置1bは、符号長の短い送信符号A1,−A1の送信周期を、符号長の長い送信系列B1,B2の送信周期より短くすることにより、全ての測定距離レンジの測定に必要な測定時間を短縮することができる。
【0195】
以上、添付図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本発明のレーダ装置はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0196】
上述した第1の実施形態で、レーダ受信部3の信号処理部20は符号反転部24を備える旨を説明した。しかし、当該信号処理部20は、符号反転部24を備えない構成も可能である。但し、この場合、第1相関値演算部25は、相関値を演算する際、入力切換部23により出力されたデジタルデータの複素信号x(k)の符号を反転する。これにより、信号処理部20が符号反転部24を備えなくても良くなり、信号処理部20の構成の簡易化を図ることができる。また、第2の実施形態においても同様に適用可能である。
【0197】
上述した第1の実施形態で、レーダ受信部3の信号処理部20は符号反転部24を備える旨を説明した。しかし、当該信号処理部20は、符号反転部24を備えない構成も可能である。但し、この場合、第1平均化処理部28は、平均化する際、第1相関値演算部25により出力された相関値AC(k)の符号を反転する。これにより、信号処理部20が符号反転部24を備えなくても良くなり、信号処理部20の構成の簡易化を図ることができる。また、第2の実施形態においても同様に適用可能である。
【0198】
また、上述した第1及び第2の実施形態では、遠距離レンジ用のパルス圧縮符号として、相補符号のペアを構成する符号系列B1,B2を用いた。しかし、遠距離レンジ用のパルス圧縮符号は、当該相補符号のペアを構成する符号系列B1,B2に限定されず、例えば、符号系列Aよりも符号長の長いBarker符号系列又はM符号系列等の符号系列Cを用いても良い。以下、符号系列Cの送信符号を用いた2つの例について図9〜図12を参照して説明する。また、符号系列Cの送信符号を、便宜的に送信符号Cと記載する。
【0199】
〔送信符号Cを用いた第1の例〕
図9は、長い符号長の符号系列に相補符号でない符号系列Cを用いた場合のレーダ装置1cの動作に関するタイミングチャートである。同図(a)は、送信周期Taと送信周期Tbと各送信周期に用いられる送信符号との説明図である。同図(b)は、測定区間の説明図である。同図(c)は、各送信周期Ta,Tbと離散時刻k,kとの関係を説明する説明図である。図10は、レーダ装置1cの内部構成を示すブロック図である。
【0200】
図9では、図2に示した送信符号B1,B2に基づいてそれぞれ生成された高周波送信信号の送信のための各送信周期Tbの代わりに、1つ以上の送信符号Cに基づいて生成された高周波送信信号の送信のための送信周期Tbが設けられたことが示されている。なお、図9に示した離散時刻kの範囲は、上述した第1実施形態において図2に示した離散時刻kと同様である。
【0201】
図10のレーダ送信部2cにおいては、第1符号生成部5により生成された送信符号Aと、符号反転部8により反転された送信符号−Aと、第5符号生成部5cにより生成された送信符号Cと、符号反転部8により反転された送信符号−Cとが送信符号切換部9cに入力される。
【0202】
更に、レーダ受信部3cの入力切換部23cは、送信符号Cに切り換える旨の符号切換制御信号が送信符号制御部10cにより出力された場合、A/D変換部21,22により出力されたデジタルデータの複素信号x(k)を第5相関値演算部25cに出力する。
【0203】
また、入力切換部23cは、送信符号−Cに切り換える旨の符号切換制御信号が送信符号制御部10cにより出力された場合、A/D変換部21,22により出力されたデジタルデータの複素信号x(k)を符号反転部24cに出力する。第5相関値演算部25c及び第2平均化処理部29cの動作は、第1の実施形態における第1相関値演算部25及び第1平均化処理部28の動作とそれぞれ同様であるため、当該動作の説明は省略する。
【0204】
これにより、レーダ装置1cは、上述した第1の実施形態のレーダ装置1と同様の効果を得ることができる。
〔送信符号Cを用いた第2の例〕
【0205】
図11は、長い符号長の符号系列に相補符号でない符号系列Cを用いた場合の他のレーダ装置1dの動作に関するタイミングチャートである。同図(a)は、送信周期Taと送信周期Tbの説明図である。同図(b)は、測定区間の説明図である。同図(c)は、各送信周期Ta,Tbと離散時刻k,kとの関係を説明する説明図である。図12は、レーダ装置1dの内部構成を示すブロック図である。
【0206】
図11では、図6に示した送信符号B1,B2に基づいてそれぞれ生成された高周波送信信号の送信のための各送信周期Tbの代わりに、1つ以上の送信符号Cに基づいて生成された高周波送信信号の送信のための送信周期Tbが設けられたことが示されている。なお、図11に示した離散時刻kの範囲は、上述した第2実施形態において図6に示した離散時刻kと同様である。
【0207】
図12のレーダ送信部2dにおいては、第1符号生成部5により生成された送信符号A1と、符号反転部8により反転された送信符号−A1と、第4符号生成部5bにより生成された送信符号A2と、符号反転部8bにより反転された送信符号−A2と、第5符号生成部5cにより生成された送信符号Cと、符号反転部8により反転された送信符号−Cとが送信符号切換部9dに入力される。
【0208】
更に、レーダ受信部3dの入力切換部23dは、送信符号Cに切り換える旨の符号切換制御信号が送信符号制御部10dにより出力された場合、A/D変換部21,22により出力されたデジタルデータの複素信号x(k)を第5相関値演算部25cに出力する。
【0209】
また、入力切換部23dは、送信符号−Cに切り換える旨の符号切換制御信号が送信符号制御部10dにより出力された場合、A/D変換部21,22により出力されたデジタルデータの複素信号x(k)を符号反転部24cに出力する。第5相関値演算部25c及び第2平均化処理部29cの動作は、第1の実施形態における第1相関値演算部25及び第1平均化処理部28の動作とそれぞれ同様であるため、当該動作の説明は省略する。
【0210】
これにより、レーダ装置1dは、上述した第1の実施形態のレーダ装置1と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0211】
本発明に係るレーダ装置は、短い送信周期の送信符号の反射波が、時間的に後続する長い送信周期に含まれることで、符号間干渉が発生する場合にも、その干渉を抑制することができる。これにより、短い送信周期において、符号長の短い送信符号を、レーダ装置と比較的近い距離にあるターゲットの測定に用い、長い送信周期において、符号長の長い送信符号を、レーダ装置と比較的遠い距離にあるターゲットの測定に用いることが可能となる。これにより、測定距離レンジを拡大しながらも、受信時における受信ダイナミックレンジを抑制することができ、更に、複数の測定距離レンジの測定に必要な測定時間を短縮可能とするレーダ装置として有用である。
【符号の説明】
【0212】
1、1b、1c、1d レーダ装置
2、2b、2c、2d レーダ送信部
3、3b、3c、2d レーダ受信部
4、4a、4b、4c、4d 送信信号生成部
5 第1符号生成部
5b 第4符号生成部
5c 第5符号生成部
6 第2符号生成部
7 第3符号生成部
7a 送信符号記憶部
8、8b、8c 符号反転部
9、9b、9c、9d 送信符号切換部
10、10a、10b、10c、10d 送信符号制御部
11 変調部
12 LPF
13 送信RF部
14、18 周波数変換部
15、17 増幅器
16 受信RF部
19 直交検波部
20、20b、20c、20d 信号処理部
21、22 A/D変換部
23、23b、23c、23d 入力切換部
24、24b、24c 符号反転部
25 第1相関値演算部
25b 第4相関値演算部
25c 第5相関値演算部
26 第2相関値演算部
27 第3相関値演算部
28、28b 第1平均化処理部
29、29c、29d 第2平均化処理部
30、30b 到来距離推定部
ANT0 送信アンテナ
ANT1 受信アンテナ
Lo 基準発振器
Ta、Tb 送信周期
Tra、Trb 送信区間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1符号長の第1符号系列と、第2符号長の第2符号系列と、当該第1符号系列の各符号の極性が反転された第3符号系列とのうち、第1送信周期で、前記第1符号系列を変調した第1送信信号を生成し、第2送信周期で、前記第2符号系列を変調した第2送信信号を生成し、前記第1送信周期と同一の長さの送信周期である第3送信周期で、前記第3符号系列を変調した第3送信信号を生成し、第4送信周期で、前記第2符号系列を変調した第4送信信号を生成する送信信号生成部と、
前記送信信号生成部により生成された前記第1、第2、第3及び第4の送信信号をそれぞれ高周波送信信号に変換し、送信アンテナから送信する送信RF部と、
を備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーダ装置であって、
前記第2符号系列は、それぞれ相補性を有する第4符号系列と第5符号系列とからなり、
前記送信信号生成部において、
前記第2送信信号は、前記第2符号系列のうち、前記第4符号系列を変調した信号であり、
前記第4送信信号は、前記第2符号系列のうち、前記第4符号系列を変調した信号であり、
前記送信信号生成部は、更に、
前記第2送信周期と前記第3送信周期との間に設けられた、前記第2送信周期と同一の長さの第5送信周期で、前記第2符号系列のうち、前記第5符号系列を変調した第5送信信号を生成し、前記第4送信周期の後に設けられた、前記第4送信周期と同一の長さの第6送信周期で、前記第2符号系列のうち、前記第5符号系列を変調した第6送信信号を生成し、
前記送信RF部は、更に、
前記送信信号生成部により生成された前記第5及び第6の送信信号を高周波送信信号に変換し、送信アンテナから送信することを特徴とするレーダ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のレーダ装置であって、
前記第1符号系列は、それぞれ相補性を有する第6符号系列と第7符号系列とからなり、
前記第3符号系列は、前記第6符号系列の各符号の極性が反転された第8符号系列と前記第7符号系列の各符号の極性が反転された第9符号系列とからなり、
前記送信信号生成部において、
前記第1送信周期は、前記第1符号系列のうち、前記第6符号系列を変調した信号であり、
前記第3送信周期は、前記第3符号系列のうち、前記第9符号系列を変調した信号であり、
前記送信信号生成部は、更に、
前記第1送信周期と前記第2送信周期との間に設けられた、前記第1送信周期と同一の長さの第7送信周期で、前記第1符号系列のうち、前記第7符号系列を変調した第7送信信号を生成し、
前記第5送信周期と前記第3送信周期との間に設けられた、前記第3送信周期と同一の長さの第8送信周期で、前記第1符号系列のうち、前記第6符号系列を変調した第8送信信号を生成し、
前記送信RF部は、更に、
前記送信信号生成部により生成された前記第7及び第8の送信信号を、それぞれ高周波送信信号に変換し、送信アンテナから送信することを特徴とするレーダ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のレーダ装置であって、
前記送信信号生成部は、更に、
前記第7送信周期の後に設けられた、前記第1送信周期と同一の長さの第9送信周期で、前記第1符号系列のうち、前記第6符号系列を変調した第9送信信号を生成し、
前記第9送信周期と前記第2送信周期との間に設けられた、前記第3送信周期と同一の長さの第10送信周期で、前記第3符号系列のうち、前記第9符号系列を変調した第10送信信号を生成し、
前記第3送信周期の後に設けられた、前記第1送信周期と同一の長さの第11送信周期で、前記第1符号系列のうち、前記第6符号系列を変調した第11送信信号を生成し、
前記第11送信周期と前記第4送信周期との間に設けられた、前記第1送信周期と同一の長さの第12送信周期で、前記第1符号系列のうち、前記第7符号系列を変調した第12送信信号を生成し、
前記送信RF部は、更に、
前記送信信号生成部により生成された前記第9,第10,第11及び第12の送信信号をそれぞれ高周波送信信号に変換し、送信アンテナから送信することを特徴とするレーダ装置。
【請求項5】
請求項1に記載のレーダ装置であって、
前記第1符号系列は、それぞれ相補性を有する第6符号系列と第7符号系列とからなり、
前記第3符号系列は、前記第6符号系列の各符号の極性が反転された第8符号系列と、前記第7符号系列の各符号の極性が反転された第9符号系列とからなり、
前記送信信号生成部において、
前記第1送信信号は、前記第1符号系列のうち、前記第6符号系列を変調した信号であり、
前記第3送信信号は、前記第3符号系列のうち、前記第8符号系列を変調した信号であり、
前記送信信号生成部は、更に、
前記第1送信周期の後に設けられた、前記第2送信周期と同一の長さの第13送信周期で、前記第2符号系列を変調した第13送信信号を生成し、
前記第13送信周期の後に設けられた、前記第1送信周期と同一の長さの第14送信周期で、前記第1符号系列のうち、前記第7符号系列を変調した第14送信信号を生成し、
前記第4送信周期の後に設けられた、前記第1送信周期と同一の長さの第15送信周期で、前記第3符号系列のうち、前記第9符号系列を変調した第15送信信号を生成し、
前記第15送信周期の後に設けられた、前記第2送信周期と同一の長さの第16送信周期で、前記第2符号系列を変調した第16送信信号を生成し、
前記送信RF部は、更に、
前記送信信号生成部により生成された前記第13、第14、第15及び第16の送信信号をそれぞれ高周波送信信号に変換し、送信アンテナから送信することを特徴とするレーダ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のレーダ装置であって、
前記第2符号系列は、それぞれ相補性を有する第4符号系列と第5符号系列とからなり、
前記送信信号生成部において、
前記第2送信信号は、前記第2符号系列のうち、前記第5符号系列を変調した信号であり、
前記第4送信信号は、前記第2符号系列のうち、前記第4符号系列を変調した信号であり、
前記第13送信信号は、前記第2符号系列のうち、前記第4符号系列を変調した信号であり、
前記第16送信信号は、前記第2符号系列のうち、前記第5符号系列を変調した信号であることを特徴とするレーダ装置。
【請求項7】
請求項1〜6のうちいずれか一項に記載のレーダ装置であって、
前記第1、第3送信周期は、前記第2、第4送信周期よりも短い周期であることを特徴とするレーダ装置。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のレーダ装置であって、
前記第1符号系列の第1符号長は、前記第2符号系列の第2符号長よりも短いことを特徴とするレーダ装置。
【請求項9】
請求項3に記載のレーダ装置であって、
前記第4、第5、第8、第9符号系列の符号長は、第6、第7符号系列の符号長より短いことを特徴とするレーダ装置。
【請求項10】
請求項4又は5に記載のレーダ装置であって、
前記第4、第5、第8符号系列の符号長は、第6、第7符号系列の符号長より短いことを特徴とするレーダ装置。
【請求項11】
請求項6に記載のレーダ装置であって、
前記第4、第5、第6、第7符号系列の符号長は、第2符号系列の符号長より短いことを特徴とするレーダ装置。
【請求項12】
請求項2又は8に記載のレーダ装置であって、
前記受信アンテナで受信した前記第1、第3、第5,第6,第7及び第8の送信信号に対する反射波の信号をベースバンドの受信信号に変換する受信RF部と、
前記送信信号生成部により生成された第1、第3、第5,第6,第7及び第8の送信信号のうちいずれかの送信信号に対する前記反射波の信号として、前記受信RF部により変換された受信信号を選択的に出力する入力切換部と、
前記入力切換部により出力された前記第1送信信号に対する受信信号と、前記送信信号生成部により生成された前記第1送信信号との第1相関値、及び、前記入力切換部により出力された前記第3送信信号に対する受信信号と、前記送信信号生成部により生成された前記第3送信信号との第2相関値を演算する第1相関値演算部と、
前記入力切換部により出力された前記第5送信信号及び前記第7送信信号に対する受信信号と、前記送信信号生成部により生成された前記第5あるいは第7送信信号との第3相関値を演算する第2相関値演算部と、
前記入力切換部により出力された前記第6送信信号及び前記第8送信信号に対する受信信号と、前記送信信号生成部により生成された前記第6あるいは第8送信信号との第4相関値を演算する第3相関値演算部と、
を更に備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項13】
請求項3又は9に記載のレーダ装置であって、
前記受信アンテナで受信した前記第5、第6,第7,第8、第9、第10,第11及び第12の送信信号に対する反射波の信号をベースバンドの受信信号に変換する受信RF部と、
前記送信信号生成部により生成された第5、第6,第7,第8、第9、第10,第11及び第12の送信信号のうちいずれかの送信信号に対する前記反射波の信号として、前記受信RF部により変換された受信信号を選択的に出力する入力切換部と、
前記入力切換部により出力された前記第5送信信号に対する受信信号と、前記送信信号生成部により生成された前記第5送信信号との第1相関値、及び、前記入力切換部により出力された前記第9送信信号に対する受信信号と、前記送信信号生成部により生成された前記第9送信信号との第2相関値を演算する第1相関値演算部と、
前記入力切換部により出力された前記第6、第10送信信号に対する受信信号と、前記送信信号生成部により生成された前記第6あるは第10送信信号との第3相関値を演算する第2相関値演算部と、
前記入力切換部により出力された前記第8、第12送信信号に対する受信信号と、前記送信信号生成部により生成された前記第8、第12送信信号との第4相関値を演算する第3相関値演算部と、
前記入力切換部により出力された前記第7送信信号に対する受信信号と、前記送信信号生成部により生成された前記第7送信信号との第5相関値、及び、前記入力切換部により出力された前記第11送信信号に対する受信信号と、前記送信信号生成部により生成された前記第11送信信号との第6相関値を演算する第4相関値演算部と、
を更に備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項14】
請求項12に記載のレーダ装置であって、
前記入力切換部により出力された前記第3送信信号に対する受信信号の符号を反転する符号反転部と、
を更に備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項15】
請求項13に記載のレーダ装置であって、
前記入力切換部により出力された前記第9送信信号に対する受信信号の符号を反転する第1符号反転部と、
前記入力切換部により出力された前記第11送信信号に対する受信信号の符号を反転する第2符号反転部と、
を更に備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項16】
請求項14に記載のレーダ装置であって、
前記第1相関値演算部により演算された前記第1相関値と前記第2相関値とを加算演算する第1平均化処理部と、
前記第2相関値演算部により演算された前記第3相関値と、前記第3相関値演算部により演算された前記第4相関値とを加算演算する第2平均化処理部と、
を更に備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項17】
請求項15に記載のレーダ装置であって、
前記第1相関値演算部により演算された前記第1相関値と前記第2相関値とを加算演算し、前記第4相関値演算部により演算された前記第5相関値と前記第6相関値とを加算演算する第1平均化処理部と、
前記第2相関値演算部により演算された前記第3相関値と、前記第3相関値演算部により演算された前記第4相関値とを加算演算する第2平均化処理部と、
を更に備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項18】
請求項16又は17に記載のレーダ装置であって、
前記第1平均化処理部による加算演算結果と前記第2平均化処理部による加算演算結果とに基づいて、前記ターゲットの到来距離を演算する到来距離推定部と、
を更に備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項19】
請求項18に記載のレーダ装置であって、
前記受信RF部により変換された受信信号をデジタルデータに変換するA/D変換部と、
を更に備えることを特徴とするレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−52920(P2012−52920A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195971(P2010−195971)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】