説明

ロック保持型直動案内装置

【課題】ブロックが停止時にはレールに対してロック保持し、移動時にはロック機能を解除して移動中に想定外の外力が加わった時にはロック状態に復帰する機能を持つ直動案内装置とする。
【解決手段】ブロック3の内部とレール2面の間に設けた楔隙間によりクラッチ機構を構成してレール2の長手方向への移動を不可能とするロック手段とし、ブロック3を移動する時にはその方向へのロック機能を持つローラ12をクラッチの傾斜カム面3nから離脱させてロック状態を解除する解除手段としての係合部材を設け、想定外の外力が加わった時にはその離脱状態にあるローラ12をカム面3nに戻してブロック3をロック状態に復帰させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は直動案内装置の機能向上に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動体としてのブロックと固定体としてのレールとの間に転動体を介在させて、ブロックが高精度で且つ小さな摩擦抵抗で移動できる装置として、「直動案内装置」と呼ばれる機械装置が知られている。
【0003】
直動案内装置は、例えば工作機械ではレールを機械のベッドに固定し、そのレール上を移動するブロックにステージを固定し、そこに加工物を取り付けてそれ全体を移動させて、移動しない部分に固定された刃物で切削や研削の仕事をするような使用例と、任意の位置まで移動した後にその位置を保ってそこで仕事をする機械や測定機器などの移動ステージ用に数多く使用される。
【0004】
直動案内装置のブロックを移動させる方法としては例えばブロック自身やステージにナットを取り付け、そのナットにハンドルやモータなどの駆動装置に連結したねじ軸を挿入してそれを回転することによって行なうが、転動体を利用した直動案内装置はブロックの移動時の摩擦抵抗が極めて小さいので駆動装置は基本的に小さなものでよい。
【0005】
ところが、ブロックやステージが移動中あるいは停止中に想定外の外力がブロックに加わるとその小さな摩擦抵抗が仇になって、外力のほとんどは駆動装置側に作用して駆動装置そのものを損傷させる危険がある。
【0006】
特にねじ軸がボールねじ装置の場合には想定外の外力の影響によってこのねじ軸に大きな推力が加わると同時に急加速の回転力も加わるので駆動装置を損傷させる危険が大きい。
【0007】
また、ラックピニオン機構や油圧シリンダなどによる駆動方式ではその構造上ロッドやピストン軸が片持ち式になるので、想定外の外力によってロッドやピストンに大きな推力が作用して座屈損傷する危険がある。
【0008】
これらの対策として、駆動装置側の損傷を予防するために予め駆動系の機械剛性を大きくするなどして直動案内装置の長所を消し去る設計が強いられており、結果的に機械重量やその体格および費用の増加を余儀なくされている。
【0009】
また他の対策方法として、ブロックにブレーキ装置を連結してブロックが停止した時にレールとの間にブレーキ力を作用させてその摩擦力によってブロックをロック保持して駆動装置側に外力が加わるのを防止する方策も採られるが、これも移動中にはブレーキ操作が出来ない欠点を持つと同時にブレーキ装置が新たに増えることによる重量やその大きさおよび費用の増加を招いている。
【0010】
直動案内装置に関連する従来の技術として、固定用部材と、弾性変形により固定用部材を挟み込むことで、ステージ手段と測定手段の高さ方向の位置関係を固定するクランプ手段とを備える測定装置が知られている(特許文献3)。
また、カム輪とロータを用いて二方向クラッチを形成した回転伝達装置が知られている(特許文献1)。さらに、逆入力防止クラッチとして、静止側部材と出力側部材との間に設けられ、出力側部材からの逆入力トルクに対して出力側部材と静止側部材とをロックするロック手段と、入力側部材に設けられ、入力側部材からの入力トルクに対してロック手段によるロック状態を解除するロック解除手段と、入力側部材と出力側部材との間に設けられ、ロック手段によるロック状態が解除された状態のときに、入力側部材からの入力トルクを出力側部材に伝達するトルク伝達手段とを備えた逆入力防止クラッチが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許公開2000−346103
【特許文献2】特許公開2002−266902
【特許文献3】特許公開2005−147808
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、ブロックが停止している時にはブロックはレールに対してロック状態を保ち、移動時にはその方向に対するロック状態を解除して移動可能とし、移動中に想定外の外力が加わったときには速やかにロック状態に復帰できる機能を持つロック保持型直動案内装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のロック保持型直動案内装置は、レールと、このレールに沿ってブロックが移動する直動案内装置であって、上記ブロックの内部に、上記レールに対する上記ブロックの移動を拘束するためのロック手段と上記ロック手段による拘束状態を解除するための解除手段とを有し、
上記ロック手段は、上記レールの面と対面する位置にある上記ブロックの面との間で形成される楔部と、この楔部内に配置されるローラとにより形成されるクラッチ機構であることを特徴とする。
【0014】
また、上記ロック手段における楔部は、上記レールの面と対面する位置にある上記ブロックの面内の一部に一対以上の傾斜カム面を設けてレール面との間で構成され、傾斜カム面の方向は上記ブロックが前進する方向および後退する方向に狭くなる形状で、上記レールの上面に対する角度は5〜15°に設定され、上記一対以上の楔部にはそれぞれにローラを置き、そのローラをそれぞれ楔部に押圧する弾性部材を備えていることを特徴とし、
上記解除手段は上記ローラのうちブロックの反移動側のローラと択一的に係合してこれを上記楔部の向きと反対方向に押圧する解除部材であり、上記解除部材と上記ローラとの間のレールの長手方向の隙間δ0が、上記解除部材の上記ブロック内における上記レールの長手方向への移動可能な隙間δ1に対して、0.2〜0.8倍の関係を有することを特徴とする。
【0015】
また、上記解除手段の解除部材を上記レールの長手方向に移動させる手段として、
(1)電磁石の吸引力を利用するとともに、通常の機械振動あるいは消費電力に対する異常値を感知して電磁石への通電を遮断する電気回路を有する;
(2)上記ブロック内にボールねじのナットをその回転方向だけを拘束し、軸方向には制限された範囲内で隙間を有して移動が可能な状態で組み込む;または、
(3)上記ブロック内に挿入したロッドを上記係合部材に対してねじまたはピンで連結し、ブロックに対して制限された範囲内で隙間を有して移動が可能な状態で組み込むことを特徴とする。
【0016】
本発明のロック保持型直動案内装置は、上記レールと、このレールに沿って移動するブロックとがそれぞれ転動体が転がる転動面を有し、この転動面相互で構成される転動空間に上記転動体が配置され、この転動空間から離脱した上記転動体を再度上記転動空間に戻すための反転部材とを備えることを特徴とする、レールに沿って移動するブロックがいわゆる転がり案内方式であるか、または、滑り案内方式であるかすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のロック保持型直動案内装置は、ブロックの内部においてレールの面との間に互いに向き合う楔隙間を設けて、その楔隙間を構成するカム面にローラを弾性部材によって押圧して前進および後退が不可能なクラッチ機構を設けてそれをロック手段とするので、ロック時には、ブロックがレールに対してレールの長手方向に移動できない構造となる。そのため、ブロックが停止しているときにはレールに対して常時ロック状態を保ち、移動中にも想定外の外力が加わったときには速やかにロック状態に戻るので、想定外の外力が駆動装置側に加わることがない。
【0018】
また、ブロックを移動する場合にはローラをカム面から離脱させるための係合部材をブロックの内部に設けて、外部からこの係合部材に力を付与してこの係合部材を移動し、ローラをカム面から離脱させてロック機能を解除させるので、ロックの解除が容易になる。
【0019】
本発明のロック保持型直動案内装置は、例えば駆動装置そのものを想定外の外力によって損傷しないように予め機械剛性を大きくしたり、新たにブレーキ装置を付加したりする必要はないので、機械装置全体の重量やその大きさおよび費用の増加を抑えることができる。また、ブロックのレールの長手方向における剛性も大きくなるので工作機械に適用すると加工能率と加工精度の向上に大いに寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】直動案内装置の代表的な使用例である。
【図2】従来の直動案内装置の平面図と断面図である。
【図3】本発明によるロック保持型直動案内装置の断面図である。
【図4】本発明品のブロックの凹み部の外観図である。
【図5】本発明品の保持器ところとばねの外観図である。
【図6】本発明品のロック機能解除の説明図である。
【図7】ボールねじのナットを組み込んだ本発明品の組立図である。
【図8】ロッドを組み込んだ本発明品の組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は直動案内装置の代表的な使用例を示すものであって、工作機械のベッド1にレール2を二本平行に固定して、そのレール2上を移動可能なブロック3の上部にステージ4を固定し、ステージ4の上部に加工物5を固定してそれを回転スピンドル6に取り付けた刃物7で切削加工をしている状態を表す図である。
【0022】
このステージ4の背面には図示していないボールねじ装置8のナット8aが固定され、そのナット8aにはボールねじの軸8bが貫通しており、図示していない外部の駆動装置によってボールねじの軸8bに回転力を与えて、ステージ4を図1のX−X方向に前進あるいは後退させる。なお、ボールねじの軸8bの反駆動側の軸端は軸受箱9で支持されている。
【0023】
実際の工作機械では図1の回転スピンドル6をZ―Z方向への移動に加えてY―Y方向にも移動できるようにしたり、図1のステージ4の移動システムを1セットとしてこれを2セット直交させて固定し、加工物5がX―X方向とY―Y方向の両方向に自在に移動できるようにしたりして加工物5の加工をする方法も採られる。
【0024】
ところで、直動案内装置に固定されたステージ4の機械剛性は図1に於いてY―Y方向やZ―Z方向は非常に大きいものであるが、X―X方向については直動案内装置のそれはほぼゼロであるので、実際にはX―X方向の機械剛性はステージ4を駆動するためのボールねじ装置8の機械剛性に支配されるので、その剛性は直動案内装置のY―Y方向やZ―Z方向に比較すると非常に小さくなる。
【0025】
工作機械の加工能力や加工精度はX―X、Y―Y、Z―Z3方向すべての剛性が高いほど向上するから、直動案内装置のブロック3の移動方向すなわちX―X方向の機械剛性を高くすればボールねじ装置8などは小型のもので良いことになる。
【0026】
図2は直動案内装置の基本的な構造を示すものである。図2(a)に示すようにレール2の幅面に鋼球3aが転動するための溝2aを設け、その溝2aに対面するブロック3の足3bの内側に溝3cを設けて溝2aとの間で鋼球3aの転動空間3dを構成し、その転動空間3d内に鋼球3aが保持器3eに保持されて挿入される。
【0027】
ブロック3がレール2に対して移動すると鋼球3aはブロック3に対して相対的に移動して転動空間3dから放出されるので、再び転動空間3dに戻すために反転部材3fを設け、その反転部材3fの内側とブロック3の足3bの外側に設けたそれぞれの溝3hと3gで構成される循環溝3iと、転動空間3dの間に鋼球3aを環状に配置して循環するようにし、ブロック3がレール2上を連続して移動することを可能としている。
【0028】
また、この循環溝3iや転動空間3dの内部および鋼球3aや保持器3eを清浄に保つためにシール部材3jが反転部材3fの外側に取り付けられている。
【0029】
この直動案内装置のブロック3はレール2に対して多数の鋼球3aを介して案内されるので、図1におけるY―YとZ―Z方向の剛性は非常に大きいがX―X方向については鋼球3aの転がり抵抗のみとなるのでほとんどゼロになる。
【0030】
本発明はこの直動案内装置のブロック3が従来品と同じようにレール2に対して移動可能の機能を維持しながらX―X方向の機械剛性を大きくすることを目的としたのである。
【0031】
図3は本発明品において直動案内装置としてのブロック3の足3bや鋼球3aおよび反転部材3fとシール部材3jを除いた主要部分の基本構造を示すものであって、レール2の上面2bに対面する位置にあるブロック3の内側とレール2の上面2bとの間にクラッチ機構10を組み込んでロック手段とし、そのクラッチ機構10の構成部品である保持器11をレール2の長手方向に移動することによって係合状態にあるローラ12を移動させることによるロックの解除手段としたことを特徴としている。
【0032】
図4はレール2の上面2bに対面する位置にあるブロック3の内側の形状を背面から見た外観を示すものであって、第一の凹み部3kと第二の凹み部3mとブロック3の移動方向に貫通する貫通穴3pを持ち、第一の凹み部3kの部分にはブロック3がレール2上を移動する方向に向かい合った一対の傾斜カム面3nを持ち、この傾斜カム面3nとレール2の上面2bとの間で一対の楔部を構成していることを特徴としている。
【0033】
この凹み部3kと3m部には図5に示す保持器11が挿入されるが、解除部材としてのこの保持器11は中央柱11aと二つのポケット11bを持ち、ポケット11b内には係合部材としてのローラ12と押圧部材としてのばね13が組み込まれる。
【0034】
ブロック3に保持器11とローラ12およびばね13を組み込んで、これをレール2と組み合わせたときの中立状態での位置関係は図3のようになり、ローラ12はばね13に押されて傾斜カム面3nの斜面の中央部に押し込まれる。そのときにローラ12は保持器11の外側の柱11cとの間にXL方向およびXR方向ともに若干の隙間δ0を確保している。
【0035】
ロック状態の解除部材としての保持器11のレール2の長手方向への移動は、保持器11の中央柱11aに吸着部材11dをねじ11eで固定し、これをブロック3の貫通穴3p内に固定された電磁石14で吸引することにより行なう。
【0036】
保持器11に固定された吸着部材11dと電磁石14の吸着面14aとの間の隙間はXL方向およびXR方向ともにδ1に設定されるが、この隙間の大きさは保持器11の外側の柱11cとローラ12との間の隙間δ0の125〜500%の間で設定される。
【0037】
電磁石14の吸着面14aが吸着部材11dを吸着したときに、保持器11の外側の柱11cがブロック3の壁3qに衝突するのを防止するためXL方向およびXR方向ともにここに隙間δ2を確保するが、この隙間は吸着部材11dと電磁石14の吸着面14aとの隙間δ1よりも大きく設定される。
【0038】
また、保持器11はローラ12の回転軸に対してその直角方向およびレール2の上面2bとブロック3の第一凹み部3kとの間には小さな隙間で嵌合されており、レール2に対してその長手方向のみに滑らかな移動できる。
【0039】
ブロック3の第一凹み部3kに設けられた傾斜カム面3nのレールの上面2bに対する勾配θはクラッチとして確実にロック機能を発揮させるために角度5°〜15°の範囲で製作され、中立状態ではローラ12を確実にこの傾斜カム面に押し込むために、押圧部材としてのばね13は適当な力でローラ12を傾斜カム面3n側に押し付ける。なお、この傾斜カム面3nのレール2の上面2bに対する勾配θはローラ12との接触点において5°〜15°の角度を必要としているので、傾斜カム面3nは平面であっても曲面であっても良い。
【0040】
図3においては、二本のローラ12はそれぞれがばね13によってカム面3nに押し付けられているので、ブロック3はXL方向およびXR方向いずれの方向にもクラッチとしてのロック状態になって移動不可能になり、ロック手段としての構成になる。
【0041】
以下、本発明によるロック保持型直動案内装置のロック解除の機能を述べる。
いま、図3において紙面左側の電磁石14に通電すると、その吸着面14aと保持器11に固定された吸着部材11dが密着して図6のようになり、当初のXL側の隙間δ1はゼロになってXR側の隙間δ1が当初のすきまの2倍になる。
【0042】
これに連動してXR側にあるローラ12は保持器11の外側の柱11cに押されてXL方向に移動するが、図3の中立時の隙間δ0はδ1よりも小さく設定してあるのでローラ12は傾斜カム面3nとの係合状態から離脱してクラッチとしてのロック機能を失うので、ブロック3は図6においてXL方向に移動が可能となる。なお、XR方向への移動に関してはXL側のローラ12はばね13に押圧されて係合状態を維持しているのでXR方向への移動に対してはロック機能を保持した状態を保っている。
【0043】
また、図6の状態でXL側の電磁石14の吸着面14aと保持器11に固定された吸着部材11dが密着しても中立時の隙間δ2はδ1よりも大きく設定されているので保持器11の外側の柱11cはブロック3の壁3qとの間で密着干渉することはない。
【0044】
ブロック3を図6においてXR方向に移動させるときは紙面左側の電磁石14への通電を遮断して紙面右側の電磁石14に通電すればよい。
【0045】
このように、ブロック3を移動させるときは移動させたい方向にある電磁石14に通電するだけで特別な機械的操作を必要とすることなくロック状態の解除ができる。
【0046】
実際に工作機械などに本発明品を適用したとき、ブロック3が移動中はその進行方向に対してはロック機能がないので機械剛性はゼロであるが、想定外の外力が加わった時には機械振動の突然の変化や加工中の負荷電力の急変信号などを検知して電磁石14への通電を遮断すれば、ロック解除手段としての保持器11はポケット11b内に組み込んだばね13の力で速やかに中立位置に戻ってロック状態に復帰できる。
【0047】
以上のように図1の直動案内装置によるシステムを本発明のロック保持型直動案内装置に変更するだけでX−X方向の機械剛性を高めることができる。
【0048】
図7は本発明の他の応用例を示すものであり、ブロック3の中にボールねじ装置8のナット8aを回転方向には拘束して軸方向にはXL方向およびXR方向ともに隙間δ1を確保して移動可能な状態で取り付けたものである。この構造では電磁石14を使うことなく図3の発明品と同等のロック保持と解放の機能が得られる。
【0049】
図8はラックピニオン機構や油圧シリンダ装置などによる片持ち式のロッド15を本発明品のブロック3に取り付けてロック保持と解放の機能を得る構造であり、ロッド15にフランジ15aを設けてロッド15を保持器11に対してピン16で固定し、ブロック3に固定したカバー17との間に隙間δ1をXL方向およびXR方向ともに確保してロッド15の移動を可能としたものであって、ロッド15をXL方向に押せばXR側のローラ12のロック機能が解放されてブロック3はXL方向に移動可能になるので図3の発明品と同等の機能が得られる。
【0050】
図7と図8の構造ではブロック3が想定外の外力によってその移動方向に急激に移動することによってブロック3に対して保持器11が相対的に中立位置に戻るので、傾斜カム面3nから離脱していたローラ12が再度係合してロック保持の状態に復帰する。
【0051】
以上の説明は転動体3aを使った直動案内装置にロック保持とその解放機構を付加する発明であるが、本発明の本質はロック保持とその解放機構に関するものであるから転動体3aを使用しない滑り案内方式の直動案内装置に本発明の機構を適用してもよい。
【0052】
また、本発明の説明は直動案内装置で説明しているが、レールが円弧状になった曲線案内装置に適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のロック保持型直動案内装置はロック保持とその解放の切り替え操作が電気的に行なわれるので、複数個の直動案内装置を使用する工作機械などへの適用が容易である。また、純機械的にロック保持とその解放の切り替え操作ができるので、測定機器の移動ステージなどへの適用が経済的である。
【符号の説明】
【0054】
1 工作機械などのベッド
2 直動案内装置のレール
2a 鋼球が転がる溝
2b レールの上面
3 直動案内装置のブロック
3a 鋼球
3b 足
3c 鋼球が転がる溝
3d 転動空間
3e 保持器
3f 反転部材
3g 鋼球の循環溝
3h 鋼球の循環溝
3i 循環溝
3j シール部材
3k 第一の凹み部
3m 第二の凹み部
3n 傾斜カム面
3p 貫通穴
3q 壁
4 ステージ
5 加工物
6 回転スピンドル
7 刃物
8 ボールねじ装置
8a ボールねじのナット
8b ボールねじの軸
9 軸受箱
10 クラッチ装置
11 保持器
11a 中央柱
11b ポケット
11c 保持器外側の柱
11d 吸着部材
11e ねじ
12 ローラ
13 ばね
14 電磁石
14a 電磁石の吸着面
15 ロッド
15a フランジ
16 ピン
17 カバー
δ0 保持器の外側の柱とローラ間の隙間
δ1 吸着部材と電磁石の吸着面との隙間
δ2 保持器外側柱とブロック壁の隙間
θ 傾斜カム面のレール面に対する勾配
L 紙面左方向への動き
R 紙面右方向への動き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールと、このレールに沿ってブロックが移動する直動案内装置であって、
前記ブロックの内部に、前記レールに対する前記ブロックの移動を拘束するためのロック手段と前記ロック手段による拘束状態を解除するための解除手段とを有し、
前記ロック手段は、前記レールの面と対面する位置にある前記ブロックの面との間で形成される楔部と、この楔部内に配置されるローラとにより形成されるクラッチ機構であることを特徴とするロック保持型直動案内装置。
【請求項2】
前記ロック手段における楔部は、前記レールの面と対面する位置にある前記ブロックの面内の一部に一対以上の傾斜カム面を設けてレール面との間で構成され、傾斜カム面の方向は前記ブロックが前進する方向および後退する方向に狭くなる形状で、前記レールの上面に対する角度は5〜15°に設定され、前記一対以上の楔部にはそれぞれにローラを置き、そのローラをそれぞれ楔部に押圧する弾性部材を備え、
前記解除手段は前記ローラのうちブロックの反移動側のローラと択一的に係合してこれを前記楔部の向きと反対方向に押圧する解除部材であり、前記解除部材と前記ローラとの間のレールの長手方向の隙間δ0が、前記解除部材の前記ブロック内における前記レールの長手方向への移動可能な隙間δ1に対して、0.2〜0.8倍の関係を有することを特徴とする請求項1記載のロック保持型直動案内装置。
【請求項3】
前記解除手段の解除部材を前記レールの長手方向に移動させる手段として、
(1)電磁石の吸引力を利用するとともに、通常の機械振動あるいは消費電力に対する異常値を感知して電磁石への通電を遮断する電気回路を有する;
(2)前記ブロック内にボールねじのナットをその回転方向だけを拘束し、軸方向には制限された範囲内で隙間を有して移動が可能な状態で組み込む;または、
(3)前記ブロック内に挿入したロッドを前記係合部材に対してねじまたはピンで連結し、ブロックに対して制限された範囲内で隙間を有して移動が可能な状態で組み込むことを特徴とする請求項2記載のロック保持型直動案内装置。
【請求項4】
前記レールと、このレールに沿って移動するブロックとがそれぞれ転動体が転がる転動面を有し、この転動面相互で構成される転動空間に前記転動体が配置され、この転動空間から離脱した前記転動体を再度前記転動空間に戻すための反転部材とを備えることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載のロック保持型直動案内装置。
【請求項5】
前記レールと、このレールに沿って移動するブロックとが滑り案内方式であることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載のロック保持型直動案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−112395(P2012−112395A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259144(P2010−259144)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(304004948)
【Fターム(参考)】