説明

ロック装置

【課題】ロック装置の部品点数を増大させることなく、フックをストライカとの係合ロック状態から更にロック回転方向へと追い込んで、ストライカをガタ詰めした状態にしてロックさせられるようにする。
【解決手段】フック20は、ストライカSがベースプレート10の凹部11内に入り込む動きに押されて回転し凹部11との間でストライカSを挟持し、ポール30は、上記フック20の回転により附勢によってその係合凸部32をフック20の被係合部23Aに係合させてフック20の戻り回転を規制すると共に、その追い込み面33をフック20の被追い込み面22Aに押し当ててフック20を更にロック回転させる方向側へと追い込む。ポール30の係合凸部32は、フック20が強い力で戻り回転方向に押し動かされることにより、フック20の上顎部22の変形を経てフック20の被係合部23Aと当接し、フック20の戻り回転方向への移動を阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロック装置に関する。詳しくは、互いに係止される二部材の一方に設けられ、他方に設けられたストライカを受け入れてロックするロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のロック装置としては、例えば下記特許文献1に開示された技術が知られている。この開示では、ロック装置は、ストライカを受け入れ可能な凹部を有したベースプレートと、ベースプレートに対して個々の支持軸によって回転可能に軸支持されたフック及びポールとを有して構成されている。上記したフックとポールとは、それぞれ、常時はバネの附勢力によって互いに相反する方向に回転附勢されており、フックは上記の附勢力によってその形状の一部がベースプレートの凹部内に張り出した回転姿勢状態に保持されている。
【0003】
そして、フックは、ストライカがベースプレートの凹部内に相対的に押し込まれてくる動きによって押し回されて、その形状の一部をストライカの背後側に回し込んで凹部を閉鎖すると共に、この閉鎖位置においてポールが附勢によって係合することによりポールによって回転止めされた状態(ロック状態)に保持されるようになっている。また、上記したロック装置には、上記ロック状態となったフックを更にロックの回転方向へと追い込んで、ストライカとの間の隙間を詰めてガタ付きをなくす追い込みプレートが設けられている。
【0004】
この追い込みプレートは、上記したポールの支持軸とは別の支持軸によって回転可能に軸支持されて設けられており、ポールが附勢によってフックと係合する動きに連動してフックと係合する方向へと回転し、この回転によってフックを更にロック回転方向へと押動して追い込む構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−57039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記開示の従来技術では、フックをロック回転方向に追い込むために、追い込みプレートと支持軸とが別途追加された構成となっており、ロック装置の部品点数が増大してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上記した問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、ロック装置の部品点数を増大させることなく、フックをストライカとの係合ロック状態から更にロック回転方向へと追い込んで、ストライカをガタ詰めした状態にしてロックさせられるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のロック装置は次の手段をとる。
先ず、第1の発明は、互いに係止される二部材の一方に設けられ、他方に設けられたストライカを受け入れてロックするロック装置であって、ベースプレートと、ポールと、フックと、を有する。ベースプレートは、ストライカを受け入れ可能な凹部を有して構成され、ポールは、ベースプレートに第1の支軸によって回転可能に軸支されて設けられ、フックは、ベースプレートに第2の支軸によって回転可能に軸支されて設けられている。フックは、ストライカがベースプレートの凹部内に入り込む動きに押されて回転し、凹部との間でストライカを挟持した状態となる構成とされている。ポールは、フックがストライカを挟持する位置まで回転することにより、附勢によってその係合部をフックに係合させる位置まで回転しフックの戻り回転を規制したロック状態となると共に、その附勢による回転に伴ってその追い込み面をフックに形成された被追い込み面に押し当ててフックを更にロック回転させる方向側へと追い込んで、ストライカを凹部の奥側面に押し付けた状態に保持する構成となっている。ポールの係合部は、ストライカとフックとの間にフックが戻り回転方向に強制変位を伴って押し動かされる強い力がかけられることにより、ポール又はフックの変形を経てフックと当接し、フックの戻り回転方向への移動を阻止してストライカが凹部の外に出される移動を阻止する。
【0009】
この第1の発明によれば、ストライカがベースプレートの凹部内に入り込むことにより、フックが押し回されて、フックが凹部との間でストライカを挟持した状態となる。そして、このフックの回転により、ポールが附勢によって回転し、係合部をフックに係合させてフックの戻り回転を規制した状態(ロック状態)となると共に、その追い込み面をフックの被追い込み面に押し当ててフックを更にロック回転させる方向側へと追い込んで、ストライカを凹部の奥側面に押し付けた状態にして保持した状態となる。このように、フックとポールの構成を利用して、ロック装置の部品点数を増大させることなく、フックをストライカとの係合ロック状態から更にロック回転方向へと追い込んで、ストライカをガタ詰めした状態にしてロックさせることのできる構成を得ることができる。そして、上記のようにフックがポールによって追い込まれた回転姿勢位置にロックされた状態において、フックがストライカによって戻り回転する方向に強制変位を伴う強い力で押圧されることにより、追い込み面と被追い込み面とが当接した状態となっているポール又はフックが変形して、フックがポールの係合部と当接する。これにより、フックの戻り回転方向への移動がポールの係合部の支持力によって阻止されるため、ストライカが凹部の外に外される移動を阻止することができる。
【0010】
次に、第2の発明は、上述した第1の発明において、フックは、そのロック回転前の初期状態時にベースプレートの凹部内に露呈して凹部内に入り込むストライカによって押し回される上顎部と、上顎部が押し回されることにより凹部内に回し込まれて凹部の奥側面との間でストライカを挟持する下顎部と、を有する。ポールの係合部は、その附勢による回転によってフックの下顎部の外周下面に形成された被係合部と係合しフックの戻り回転を規制する構成とされている。追い込み面は、その附勢による回転により、フックの上顎部に形成された被追い込み面に押し当てられ、その附勢回転の進行に伴って被追い込み面を押圧してフックを更にロック回転させる方向に追い込む構成とされている。ストライカとフックとの間にフックが戻り回転方向に強制変位を伴って押し動かされる強い力がかけられることにより、フックの上顎部又は上顎部と当接しているポールの一部が変形して、フックの被係合部がポールの係合部と当接してフックの戻り回転方向への移動が阻止される。
【0011】
この第2の発明によれば、フックがポールの追い込み面によって追い込まれて回転ロックされた状態において、フックにストライカから戻り回転方向への強制変位を伴う強い力がかけられることにより、フックの上顎部又は上顎部と当接しているポールの一部が変形して、フックの被係合部がポールの係合部と当接し、フックの戻り回転方向への移動が阻止された状態となる。このように、フックの下顎部を変形させずにフックを戻り回転方向に強制変位させてポールの係合部に当接させて戻り回転の阻止をさせられる構成としたことにより、フックの下顎部の強度を落とさずに構成することができ、ストライカをより確実に抜け止めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1のロック装置が適用された車両用シートの側面図である。
【図2】ロック装置の分解斜視図である。
【図3】ロック装置のロック状態図である。
【図4】ロック装置の解除状態図である。
【図5】ロック装置の大荷重作用時の変形態様を示した状態図である。
【図6】実施例2のロック装置のロック状態図である。
【図7】ロック装置の解除状態図である。
【図8】ロック装置の大荷重作用時の変形態様を示した状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0014】
始めに、実施例1のロック装置5の構成について、図1〜図5を用いて説明する。本実施例のロック装置5は、図1に示すように、車両用シート1に設けられており、フロアF上に設置されたストライカSに対して係合ロックしたり外れたりすることで、車両用シート1をフロアFに対して係合ロックさせたり外したりすることのできる構成を備えたものとなっている。ここで、車両用シート1は、背凭れとなるシートバック2と着座部となるシートクッション3とを備えて構成され、シートクッション3の前端側の左右両サイド部が、フロアF上に固定設置された支持台4に回転可能にヒンジ連結されて設けられている。
【0015】
そして、車両用シート1は、そのシートクッション3の後端側の左右両サイド部に前述したロック装置5がそれぞれ設けられており、常時は、これらロック装置5がフロアF上のストライカSに係合ロックした状態となっていることで、シートクッション3がフロアF上に倒伏した姿勢状態にロックされて保持されている。これらロック装置5は、車両用シート1に設けられた図示しない解除レバーの操作を行うことによって、ストライカSに対する係合ロック状態がそれぞれ解除されるようになっている。
【0016】
詳しくは、上記した図示しない解除レバーの操作を行うことにより、車両用シート1は、シートバック2が前倒しされてシートクッション3の上面部に畳み込まれた姿勢状態に切り換えられると共に、上記した各ロック装置5のストライカSに対する係合ロック状態が一斉に解除されるようになっている。これにより、車両用シート1は、上記した支持台4との連結点4Aを中心にフロアF上から車両前方側へと跳ね上げられる状態となる。
【0017】
そして、これにより、車両用シート1は、支持台4との連結部に設けられた図示しない附勢バネの附勢力によって、車両前方側へと跳ね上げられてフロアF上から起立した格納姿勢状態に切り換えられて保持される。そして、この格納姿勢状態とされた車両用シート1は、これを上記附勢バネの力に抗してフロアF上へと倒し込んで、前述した各ロック装置5をフロアF上の各ストライカSへと押し込んで係合ロックさせることにより、再びフロアF上に倒し込まれた姿勢状態となって保持されるようになっている。
【0018】
詳しくは、上記した各ロック装置5は、各ストライカSに向かって押し込まれることにより、各ストライカSによってその内部のロック構造が押動されて各ストライカSと係合ロックするように作動する構造となっている。以下、上記した各ロック装置5の構成について、図1〜図5を用いて詳しく説明していく。なお、図1及び図3〜図5では、それぞれ、ロック装置5の構成を分かり易く示すために、後述する二枚一組で構成されるベースプレート10の蓋側となる一方側の板片(図2参照)が省略されて示されている。
【0019】
ここで、ロック装置5は、図1〜図2に示すように、シートクッション3の骨格フレームに一体的に固定されて設けられる二枚一組の板状のベースプレート10と、ベースプレート10に対して第2の支軸21によって回転可能に軸支持されて設けられるフック20と、ベースプレート10に対して第1の支軸31によって回転可能に軸支持されて設けられるポール30と、ポール30とフック20との間に掛着されてこれらを互いに相反する回転方向に附勢するように作用する引張バネ40と、を有する。
【0020】
上記したフック20は、図4に示すように、常時はポール30との間に掛着された引張バネ40の附勢力によって、図示反時計回り方向に回転附勢されており、ベースプレート10に形成されたストッパ13と当接する初期の回転姿勢位置にて回転止めされた状態となって保持されている。この初期の回転姿勢状態では、フック20は、その上顎部22がベースプレート10の凹部11内に張り出した状態となって保持されている。これにより、フック20は、ストライカSがベースプレート10の凹部11内に入り込んでくる動きを受けて、上顎部22がストライカSによって図示上方側へと押圧されて回転するようになっている。そして、この回転により、フック20は、図3に示すように、その下顎部23がストライカSの背後側へと回し込まれる形でベースプレート10の凹部11内に入り込んだ状態となり、ストライカSを上顎部22と下顎部23との間の受入口24内に受け入れた状態となってポール30により回転止めされてストライカSを抜け止めした状態となってロックされた状態に保持される。
【0021】
一方、ポール30は、図4に示すように、常時はフック20との間に掛着された引張バネ40の附勢力によって、図示時計回り方向に回転附勢されており、フック20の上顎部22の先端面に押し当てられて係止する初期の回転姿勢位置にて回転止めされた状態となって保持されている。そして、ポール30は、図3に示すように、上記のようにフック20がストライカSによって押し回されて、その上顎部22がポール30と当接した状態から外されることにより、引張バネ40の附勢力作用によって図示時計回り方向へと回転し、その下端部に突出形成された係合凸部32がフック20の下顎部23の外周下面(被係合部23A)に当接して係合した状態となる。ここで、係合凸部32が本発明の係合部に相当する。
【0022】
したがって、この係合により、フック20が引張バネ40の附勢力作用によって図示反時計回り方向に戻されようとする回転移動が規制された状態となり、ストライカSがフック20との係合状態から外れないように保持された状態となってロックされる。また、上記したポール30は、図3に示すように、その係合凸部32がフック20の被係合部23Aに附勢によって押し当てられる動きに伴って、その上端側面に形成された傾斜面状の追い込み面33がフック20の上顎部22の先端側下面に形成された傾斜面状の被追い込み面22Aに押し当てられた状態となり、その附勢回転の進行に伴って、被追い込み面22Aを徐々に上方側へと押し上げていき、フック20を更にロック回転させる方向へと追い込んでいくようになっている。
【0023】
これにより、フック20は、上記した被係合部23Aにポール30の係合凸部32が押し当てられて上記した戻り回転が規制された状態(係合ロックした状態)から、更に、ポール30によってロック回転が深められる方向側へと回し込まれた(追い込まれた)状態となる。そして、この追い込み回転により、フック20は、その下顎部23によってストライカSを押し上げてベースプレート10の凹部11の奥側面11Aへと押し付けた状態となり、ストライカSを下顎部23と凹部11の奥側面11Aとの間でがた付かせないように押し付けて挟持した状態となって保持されるようになっている。
【0024】
この状態では、フック20は、引張バネ40の附勢力作用によって戻り回転方向に力を受けても、上記上顎部22とポール30の追い込み面33との当接構造によって戻り回転しないように係止されるようになっている。すなわち、フック20はポール30に対して、その上顎部22の被追い込み面22Aがポール30の追い込み面33と当接する両者の当接角度の関係(ポール30の時計回り方向への附勢回転によってその追い込み面33によりフック20の被追い込み面22Aを図示上方側へと追い込むことのできる両者の当接角度の関係)により、上顎部22の被追い込み面22Aが第2の支軸21まわりの回転によってポール30の追い込み面33を反時計回り方向に押圧してもポール30を反時計回り方向に押し動かすことができない関係として当接するようになっている。
【0025】
これにより、上記ポール30との係合ロック状態から更にロック回転方向に追い込まれた状態となったフック20の戻り回転を阻止するための阻止力が、上記上顎部22とポール30の追い込み面33との当接構造によって担保されるようになっている。このフック20の上顎部22とポール30の追い込み面33との当接によってフック20の戻り回転が阻止される両者の当接構造は、車両走行時等の通常使用環境下において発生する振動負荷等の作用によって、ストライカSがフック20の下顎部23を戻り回転方向に押圧するような力がかけられても、フック20の戻り回転を安定した力で阻止することができる支持強度を備えた構成とされている。
【0026】
しかし、このフック20の戻り回転を阻止した状態は、車両衝突の発生などにより、フック20の下顎部23がストライカSによって戻り回転する方向に強制変位を伴う強い力で押圧されることにより崩される。具体的には、図5に示すように、フック20は、その下顎部23がストライカSによって上記強制変位を伴う強い力で戻り回転方向に押圧されることにより、この下顎部23よりも肉厚が薄く形成されて先端部がポール30によって下側から支えられた状態となっている上顎部22が下方側に折れ曲がる態様で変形する。ここで、上記フック20の上顎部22は、そのアーム状に延びる上側面と下側面とが互いに平行に延びるストレートな形に形成されており、上記強制変位を伴う強い力を受けた際に、折れ曲がり変形しやすくなっている。
【0027】
そして、この変形により、フック20全体が戻り回転方向に変位して、前述したフック20の下顎部23の外周下面に形成された被係合部23Aがポール30の係合凸部32に当接した状態となる。これにより、下顎部23がベースプレート10の凹部11を閉鎖した状態に保たれたまま、フック20の戻り回転方向への移動が係止された状態となり、ストライカSが凹部11の外に出ることなくロック装置5に係合ロックされたままの状態に保たれる。
【0028】
ここで、上記したフック20の被係合部23Aがポール30の係合凸部32と当接する両者の当接構造は、両者の当接角度の関係により、被係合部23Aが第2の支軸21まわりの回転によって係合凸部32を反時計回り方向に押圧してもポール30を反時計回り方向に押し動かすことができない関係として当接する構造となっている。具体的には、係合凸部32は、そのフック20の被係合部23Aとの当接面となる外周面が、ポール30の回転中心である第1の支軸31を中心に描かれる円弧の形に湾曲した形に形成されている。これにより、上記係合凸部32にフック20の被係合部23Aが押し付けられても、かかる荷重は第1の支軸31に向かって作用し、ポール30は上記荷重の作用を受けても回転方向には押し動かされないようになっている。そして、上記したフック20の被係合部23Aが形成されている下顎部23とポール30の係合凸部32は、共に、上記した大荷重の作用によって当接した状態となっても互いが変形しないように十分な形状厚を有した形に形成されており、上記した大荷重を確実に受け止めることができるようになっている。
【0029】
以下、上記したロック装置5の各構成について、順に説明していく。先ず、ベースプレート10の構成について説明する。ベースプレート10は、図2に示すように、二枚一組で構成されており、それぞれ、前述したシートクッション3(図1参照)の骨格フレームに一体的に結合されて設けられている。そして、これら二枚のベースプレート10の間に挟まれて、フック20及びポール30が第2の支軸21と第1の支軸31とによってそれぞれ回転可能に軸連結されて設けられている。これら二枚のベースプレート10には、それぞれ、上記したストライカSを内部に受け入れ可能な凹部11が切り抜かれて形成されている。
【0030】
これら凹部11は、図4に示すように、そのストライカSを受け入れる下端側開口部の横幅が、ストライカSの断面径よりも大きく、かつ、上端側となる奥方側へと向かうにつれて、その横幅が次第にストライカSの断面径よりも狭くなる幅長まで狭められていく先細状の形に形成されている。次に、図2に戻って、フック20の構成について説明する。フック20は、ベースプレート10に板上に第2の支軸21によって回転可能に軸連結されて設けられている。
【0031】
上記したフック20は、図4に示すように、常時はポール30との間に掛着された引張バネ40の附勢力によって、図示反時計回り方向に回転附勢された状態とされており、ストライカSがベースプレート10の凹部11内に入り込んでくる前の初期時には、ベースプレート10の図示右縁部に切り起こし形成されたストッパ13と当接する位置にてその附勢による回転移動が係止された状態となって保持されている。
【0032】
このフック20がストッパ13によって回転止めされた初期状態では、フック20は、その外周部上から半径方向の外方側にアーム状に延出して形成された上顎部22を、ベースプレート10の凹部11内に張り出させた姿勢状態となって保持されている。これにより、フック20は、上記した初期の回転位置状態からストライカSがベースプレート10の凹部11内に入り込んでくることにより、このストライカSによって上顎部22が押圧されて、上記した引張バネ40の附勢力に抗した図示時計回り方向へと押し回されるようになっている。
【0033】
そして、フック20は、上記した図示時計回り方向への回転により、その上顎部22の先端部によって、上顎部22に附勢によって押し付けられているポール30を図示反時計回り方向に押し離しながら上顎部22がポール30を図示上方側へ乗り越える位置まで回転する。これにより、ポール30が上顎部22に押し当てられていた状態から外されて、附勢によって図示時計回り方向に回転することができる状態となる。
【0034】
一方、フック20は、上記したストライカSによって図示時計回り方向に押し回される回転により、上記上顎部22とは別にアーム状に延出して形成された下顎部23を、ストライカSの背後側へと回し込む形でベースプレート10の凹部11内へと入り込ませて、ストライカSを上顎部22との間の受入口24内に受け入れた状態となる。そして、フック20の回転が上顎部22がポール30を図示上方側へ乗り越える位置まで回転することにより、この上顎部22との当接から外されたポール30が附勢により図示時計回り方向に回転する動きによってポール30の係合凸部32がフック20の下顎部23の外周下面に形成された被係合部23Aに当接して係合した状態となる。これにより、フック20は、上記係合凸部32と被係合部23Aとの係合により、その戻り回転方向への移動が規制される状態(係合ロック状態)となる。
【0035】
そして、上記したポール30の係合凸部32が附勢によってフック20の被係合部23Aに押し当てられる回転に伴って、ポール30の上端側面に形成された傾斜面状の追い込み面33が、フック20の上顎部22の先端側下面に形成された傾斜面状の被追い込み面22Aに押し当てられて、その附勢回転の進行に伴って被追い込み面22Aを徐々に上方側へと押し上げていき、フック20を上記係合ロック位置から更にロック回転させる方向へと追い込む。
【0036】
これにより、図3に示すように、フック20の下顎部23が、ストライカSを凹部11の奥方側へと押し上げて凹部11の奥側面11Aに押し付けた状態となり、ストライカSを凹部11の奥側面11Aとの間でがた付かせないように押し付けて挟持した状態となる。そして、フック20は、この状態で、フック20を追い込み回転方向に押圧したポール30の追い込み面33により戻り回転しないように支えられた状態として、ストライカSを凹部11内でがた付かせないようにロックさせた状態となって保持される。
【0037】
ところで、図2に示すように、上記したポール30は、これと一体的となるようにアーム状の操作片34が装着されて、この操作片34に前述した引張バネ40の一端41が掛着され、更にポール30をフック20との係合状態から外す操作ケーブルCaの端部が掛着された構成となっている。詳しくは、上記した操作片34は、ポール30と共に第1の支軸31に通されて回転可能に軸支時されると共に、ポール30から軸方向に突出して形成された突起30Aがその孔34A内に嵌合されて、ポール30に板合わせ状に重ね合わされた状態となってポール30と一体的となって回転することができるように構成されている。
【0038】
また、上記した操作片34は、ポール30よりも長く延出した形状に形成されており、そのポール30の追い込み面33よりも半径方向外方側へと張り出した箇所に引張バネ40の一端41を掛着させるための孔(バネ掛部34B)が形成されていると共に、その先端部にケーブルCaの端部を掛着させるためのケーブル掛部34Cが形成された構成となっている。なお、引張バネ40の他端42は、フック20の図示上方側の外周部上に形成された鉤状のバネ掛部25に掛着されて固定されている。
【0039】
これにより、ポール30は、常時はフック20との間に掛着された引張バネ40の附勢力によって、図3〜図4に示す図示時計回り方向に回転附勢された状態とされている。そして、ポール30は、図3に示したように、フック20がストライカSによって図示時計回り方向に押し回されることにより、附勢によって係合凸部32をフック20の被係合部23Aに当接させて係合させると共に、追い込み面33を被追い込み面22Aに押し当ててフック20を係る附勢力の作用によって追い込み回転方向に押し上げていくことができるようになっている。
【0040】
上記したポール30とフック20との係合状態は、前述した操作片34に掛着されたケーブルCaを、前述した図示しない解除レバーの操作を行うことで牽引操作することにより、ポール30が上記引張バネ40の附勢力に抗して図示反時計回り方向へと回転操作されてフック20との係合状態から外されて(図4参照)、両者の係合状態が解除されるようになっている。ここで、ケーブルCaは、環状のアウターケーブルの内部にワイヤー状のインナーケーブルが挿通された二重構造となっており、案内管となるアウターケーブルの端部がベースプレート10の図示左側縁部から延出して形成されたケーブル掛部12に掛着されて固定され、上記解除レバーに繋がれた操作線となるインナーケーブルの端部が操作片34の先端側のケーブル掛部34Cに掛着されて固定された構成となっている。
【0041】
そして、上記したケーブルCaの操作によってポール30がフック20との係合状態から外されることにより、図4に示すように、フック20が引張バネ40の附勢力作用によって図示時計回り方向に回転し、フック20がその上顎部22によってストライカSを図示下方側へと押し出しながら下顎部23を凹部11の外側へと退避させてストライカSを凹部11内に押さえ込んでいた状態を解除させる。そして、上記解除操作後にケーブルCaの操作を解くことにより、再びポール30が引張バネ40の附勢力作用によって図示時計回り方向に回転が戻されて、フック20の上顎部22の先端部に押し当てられて回転止めされた初期の状態に戻されて保持される。
【0042】
このように、本実施例のロック装置5によれば、フック20とポール30の構成を利用して、ロック装置5の部品点数を増大させることなく、フック20をストライカSとの係合ロック状態から更にロック回転方向へと追い込んで、ストライカSをガタ詰めした状態にしてロックさせることのできる構成を得ることができる。そして、上記のようにフック20がポール30によって追い込まれた回転姿勢位置にロックされた状態において、フック20がストライカSによって戻り回転する方向に強制変位を伴う強い力で押圧されることにより、ポール30の追い込み面33と当接しているフック20の上顎部22が変形して、フック20の被係合部23Aがポール30の係合突部と当接する。
【0043】
これにより、フック20の戻り回転方向への移動がポール30の係合部の支持力によって阻止されるため、ストライカSが凹部11の外に外される移動を阻止することができる。そのため、本実施例の構成では、上顎部22を下顎部23よりも肉厚の薄い形にして大荷重入力時に下顎部23よりも先に変形を促進させるようにする一方で、下顎部23を肉厚の厚い形にして、上記大荷重入力時にフック20をポール30の係合凸部32との当接によりその戻り回転方向への移動を確実にストップさせられるようにしている。これにより、上記大荷重が入力された際にも、ストライカSをより確実に抜け止めすることができる。
【実施例2】
【0044】
続いて、実施例2のロック装置5の構成について、図6〜図8を用いて説明する。なお、本実施例では、実施例1で説明したロック装置5と実質的な構成及び作用が同じとなっている箇所については、これらと同一の符号を付して説明を省略し、異なる箇所について詳しく説明することとする。本実施例のロック装置5は、図6〜図7に示すように、ポール30の追い込み面35Aが、ポール30の上端部から附勢回転方向(図示時計回り方向)に形状を突出させて形成された変形促進部35の上側面に形成されており、図8に示すように、大荷重入力時には、フック20の上顎部22と当接している変形促進部35の突出した先の面(追い込み面35A)が、フック20の上顎部22によって下方側へと押圧されて、変形促進部35が下方側に押し曲げられて、フック20を被係合部23Aがポール30の係合凸部32(係合部)と当接する位置まで戻り回転方向に回転変位させるようになっている。
【0045】
そして、図7に示すように、上記のようにポール30の上端部に変形促進部35が突出形成されていることにより、フック20の上顎部22が初期状態時にこの変形促進部35と係合凸部32との間の溝35B内に入り込んでその図示時計回り方向のロック回転が阻害されることがないように、上顎部22の先端部には、上記変形促進部35に乗りかかるように形状を上方側へと反り上げる反り上げ部22Bが形成されている。そして、この反り上げ部22Bと上顎部22との間の外周側(下側)の角面に、この角面を丸めるように湾曲した形状の被追い込み面22Aが形成されている。
【0046】
以上、本発明の実施形態を二つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施できるものである。例えば、本発明のロック装置5は、上記実施例で示したような車両用シート1をフロアFに係合ロックさせるための用途以外にも適用することができる。すなわち、本発明のロック装置は、互いに係止される二部材の一方に設けられ、他方に設けられたストライカを受け入れてロックするロック装置として用いられるものであればよく、その使用用途は特に限定されるものではない。
【0047】
また、上記各実施例では、ロック装置5に大荷重が入力された際に、フック20又はポール30のどちらか一方が変形することで被係合部23Aが係合凸部32(係合部)に当接して受け止められるように構成されたものを例示したが、両者が共に変形するように構成されたものであってもよい。また、ポール30の追い込み面33(35A)がその附勢回転の進行に伴ってフック20の被追い込み面22Aに当接して、これを追い込み回転方向に押圧する両者の当接面形状は、少なくとも一方の当接面が湾曲面或いは真っ直ぐな傾斜面として形成されているものであれば良く、その具体的形状は特に限定されるものではない。
【0048】
また、ロック装置5に大荷重が入力された際にフック20の被係合部23Aがポール30の係合凸部32(係合部)と当接してその戻り回転方向の移動が食い止められる両者の当接面形状も、ポール30の係合凸部32にフック20の被係合部23Aからフック20の戻り回転方向への移動に伴う押圧力がかけられても、ポール30がこの押圧力によって押し回されない形状となっているものであれば良く、その具体的形状は特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0049】
1 車両用シート
2 シートバック
3 シートクッション
4 支持台
4A 連結点
5 ロック装置
10 ベースプレート
11 凹部
11A 奥側面
12 ケーブル掛部
13 ストッパ
20 フック
21 第2の支軸
22 上顎部
22A 被追い込み面
22B 反り上げ部
23 下顎部
23A 被係合部
24 受入口
25 バネ掛部
30 ポール
30A 突起
31 第1の支軸
32 係合凸部(係合部)
33 追い込み面
34 操作片
34A 孔
34B バネ掛部
34C ケーブル掛部
35 変形促進部
35A 追い込み面
35B 溝
40 引張バネ
41 一端
42 他端
Ca ケーブル
F フロア
S ストライカ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに係止される二部材の一方に設けられ、他方に設けられたストライカを受け入れてロックするロック装置であって、
前記ストライカを受け入れ可能な凹部を有するベースプレートと、
該ベースプレートに第1の支軸によって回転可能に軸支されたポールと、
前記ベースプレートに第2の支軸によって回転可能に軸支されたフックと、を有し、
前記フックは前記ストライカが前記ベースプレートの凹部内に入り込む動きに押されて回転し前記凹部との間で前記ストライカを挟持した状態となる構成とされ、
前記ポールは前記フックが前記ストライカを挟持する位置まで回転することにより附勢によってその係合部を前記フックに係合させる位置まで回転し前記フックの戻り回転を規制したロック状態となると共に、その附勢による回転に伴ってその追い込み面を前記フックに形成された被追い込み面に押し当てて前記フックを更にロック回転させる方向へと追い込んで前記ストライカを前記凹部の奥側面に押し付けた状態に保持する構成となっており、前記ポールの係合部は前記ストライカと前記フックとの間に前記フックが戻り回転方向に強制変位を伴って押し動かされる強い力がかけられることにより、前記ポール又は前記フックの変形を経て前記フックと当接し前記フックの戻り回転方向への移動を阻止して前記ストライカが前記凹部の外に出される移動を阻止することを特徴とするロック装置。
【請求項2】
請求項1に記載のロック装置であって、
前記フックは、そのロック回転前の初期状態時に前記ベースプレートの凹部内に露呈して該凹部内に入り込む前記ストライカによって押し回される上顎部と、該上顎部が押し回されることにより前記凹部内に回し込まれて該凹部の奥側面との間で前記ストライカを挟持する下顎部と、を有し、
前記ポールの係合部は、その附勢による回転により前記フックの下顎部の外周下面に形成された被係合部と係合し前記フックの戻り回転を規制する構成とされ、前記追い込み面は、その附勢による回転により前記フックの上顎部に形成された前記被追い込み面に押し当てられ、その附勢回転の進行に伴って前記被追い込み面を押圧して前記フックを更にロック回転させる方向に追い込む構成とされ、
前記ストライカと前記フックとの間に前記フックが戻り回転方向に強制変位を伴って押し動かされる強い力がかけられることにより、前記フックの上顎部又は該上顎部と当接している前記ポールの一部が変形して前記フックの被係合部が前記ポールの係合部と当接して前記フックの戻り回転方向への移動が阻止されることを特徴とするロック装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−168961(P2011−168961A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31053(P2010−31053)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】