説明

ロボットのキャリブレーション方法及びロボット用キャリブレーション装置

【課題】ロボットの作業効率、運用効率の低下等を招くことなくキャリブレーションの簡易な実行を可能にするロボットのキャリブレーション方法、及び該キャリブレーション方法の実施に用いられるロボット用キャリブレーション装置を提供する。
【解決手段】ロボットのキャリブレーション方法では、スカラーロボット11に対する相対位置の固定された治具12に対してその座標系の基準位置を示す位置確認孔43A,43Bを予め設けておき、スカラーロボット11の先端部に取り付けられた画像認識用のカメラ33により前記位置確認孔43A,43Bを認識するとともに、該認識された位置確認孔43A,43Bの位置に基づいてスカラーロボット11の先端部の座標系を調整するキャリブレーションを行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット、特にスカラーロボットの先端位置を調整(校正)するロボットのキャリブレーション方法、及び該ロボットのキャリブレーション方法を用いてロボットの先端位置のキャリブレーションを行なうロボット用キャリブレーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産業用ロボットの一つとして、複数の水平アームが水平旋回可能に連結されたスカラーロボットが知られている。このようなスカラーロボットは、その先端の下方に作業領域を有し、当該作業領域において当該ロボットの先端に設けられた上下軸を上下動させて各種の作業を行なうことが一般的である。
【0003】
ところで、上記作業領域には作業対象物などが直交座標系に沿って配置されるとともに、上記スカラーロボットはこのような座標系に対して位置決めされることが多い。ところがスカラーロボットは、水平アームの長さと当該水平アームの旋回角度とに基づいて上記直交座標系内の位置を再現するものであることから、この再現する位置が直交座標系内の位置に対して誤差を生じることも多い。そこで、こうした作業領域の座標系に対する位置決め精度を確保するため、スカラーロボットには、その設置時やその後のメンテナンス時等、当該スカラーロボットの座標系と上記作業領域の座標系とを一致させる調整(校正)作業、すなわちキャリブレーションが必要となることが多い。
【0004】
このようなロボットの座標系と作業領域の座標系とを調整する技術の一例が特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載のキャリブレーション方法では、四隅に円の描かれたマスク(合わせ板)をロボットに保持させるとともに、カメラの視野にロボットの保持したマスクを移動させる。そして、作業領域の座標系(カメラの座標系)においてマスクの各円の座標、すなわちロボットの座標系を得るとともに、こうして得たロボットの座標系と作業領域の座標系との間の誤差を求めてその調整(校正)を行なうようにしている。このようなキャリブレーションによりロボットの座標系と作業領域の座標系とが一致し、ひいてはロボットを作業領域の所定の位置に高い精度にて移動させることができるようになる。
【0005】
また、このような技術の他の例として、作業領域の座標系を基準として、この座標系にロボットの座標系を一致させるようにキャリブレーションを行なう方法も知られている。この方法の場合、作業領域の座標系に沿う複数のアライメントマークを有する位置調整用のガラスマスクを当該作業領域に設置するとともに、その設置されたガラスマスクの複数のアライメントマークをロボットに設けたカメラにより認識する。そして、この認識されたアライメントマークの作業領域の座標と当該アライメントマークを認識したロボットの座標との間の誤差に基づいてロボットの座標系を作業領域の座標に一致させるキャリブレーションを行なう。このようなキャリブレーションによっても、ロボットを作業領域の所定の位置に高い精度にて移動させることができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−71972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述のいずれの方法であれ、ロボットの座標系と作業領域の座標系との間の調整にはアライメントマーク等を備えたガラスマスクなどの治具が必要とされる。もっとも、ロボットの設置時であれば、その設置作業の一環としてガラスマスクなどを用いてロボットの座標系のキャリブレーションを行なうことはそれほど煩雑ではない。しかし、メンテナンスや作業精度の確保などのために、運用中のロボットに対してこのようなキャリブレーションを行なうとなると、運用中の作業のために設置されている作業用の治具等を作業領域から取り外すとともに、そこにガラスマスク等を正確に設置する必要がある。しかも、こうしたキャリブレーションの後はこれらを再び元に戻すための作業も必要となりその煩雑さは否めない。また、こうしたキャリブレーションのために要するロボットの運用が中止される時間によるロボットの作業効率、運用効率の低下も避けられない。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ロボットの作業効率、運用効率の低下等を招くことなくキャリブレーションの簡易な実行を可能にするロボットのキャリブレーション方法、及び該キャリブレーション方法の実施に用いられるロボット用キャリブレーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のロボットのキャリブレーション方法は、スカラーロボットに対する相対位置の固定された治具に対してその座標系の基準位置を示すマークを予め設けておき、前記スカラーロボットの先端部に取り付けられた画像認識用のカメラにより前記マークを認識するとともに、該認識されたマークの位置に基づいて当該ロボットの先端部の座標系を調整するキャリブレーションを行なうことを要旨とする。
【0010】
このような方法によれば、治具の有するマークに対してロボットの先端部の座標系のキャリブレーションが行なわれるので、キャリブレーションにおいて治具の一時除去とガラスマスクの設置、及びキャリブレーションの後にそれらを元に戻す煩雑な作業などが省かれるようになり、キャリブレーションの実施が簡易になる。実施の簡易なキャリブレーションであれば任意の頻度での実施も可能となり、例えばロボットの運用中であれ適宜実施するキャリブレーションに基づいて、発熱によりロボットに生じる熱膨張が座標系に生じさせる誤差を補償するようにしてロボットの位置決め精度を向上させることができるようになる。
【0011】
また、治具に代りガラスマスクを設置するとともにそれらを元に戻す作業を要しないことから、ロボットにカメラが取付けられているような場合、ロボットの作業中に簡易にキャリブレーションを実施することができるようにもなる。
【0012】
このロボットのキャリブレーション方法は、前記マークは、前記治具への部品載置用の領域の加工に併せて加工された円形の透孔であること要旨とする。
このような方法によれば、マークとしての円形の透孔は、例えばNC工作機械などにより部品載置用の領域の加工に併せて加工されることにより部品載置用の領域に対する相対位置関係の精度が高く維持されるので、この透孔に基づき実施されるキャリブレーションによればロボットの位置決め精度が高く維持されるようになる。
【0013】
このロボットのキャリブレーション方法は、前記マークである円形の透孔には光ファイバーを取付けておき、前記治具の下方から該光ファイバーを介して照射される光を前記カメラにて撮像させることによって前記マークの位置を認識することを要旨とする。
【0014】
このような方法によれば、透孔が透過照明されることでカメラにより撮像される画像の認識処理が容易になる。また、光ファイバーによる導光により、光源の位置の設置の自由度が高くなる。
【0015】
このロボットのキャリブレーション方法は、前記治具にはその座標系に直交する方向における前記ロボットの先端部の位置をモニターするセンサーを設けておき、該センサーによりモニターされた前記ロボットの先端部の位置を調整する工程をさらに含むことを要旨とする。
【0016】
このような方法によれば、治具に設けられたセンサーにより検出される上下軸の位置に基づいて、スカラーロボットの上下軸の下降位置を治具表面に対して調整することができるようになる。これにより、上下軸の上下方向の位置決め精度についても高く維持することができるようになる。
【0017】
本発明のロボット用キャリブレーション装置は、スカラーロボットと、前記スカラーロボットの先端部に取り付けられた画像認識用のカメラと、前記スカラーロボットの基台との間の相対位置が固定された治具と、前記治具に設けられたマークと、前記カメラにより撮像した前記マークの位置を認識して該認識した位置に対する前記スカラーロボットの先端部の位置の誤差を求めるとともに、該求めた誤差が解消される態様で当該スカラーロボットの先端部の位置を調整するキャリブレーションの実行を制御するキャリブレーション制御部とを備えることを要旨とする。
【0018】
このような構成によれば、ロボット用キャリブレーション装置は、治具に固定されたマークに対してスカラーロボットの先端部の位置のキャリブレーションを行なうので、キャリブレーションにおいて治具の一時除去とガラスマスクの設置、及びキャリブレーションの後にそれらを元に戻す煩雑な作業などが省かれるようになる。これにより、キャリブレーションの実施が簡易になる。また、実施の簡易なキャリブレーションであれば任意の頻度での実施も可能となり、例えばロボットの運用中であれ適宜実施するキャリブレーションに基づいて、発熱により熱膨張するとロボットに生じる位置決め誤差を適宜補償するようにしてロボットの位置決め精度を向上させることができるようになる。
【0019】
また、治具に代りガラスマスクを設置するとともにそれらを元に戻す作業を要しないことから、ロボットにカメラが取付けられているような場合、ロボットの作業中に簡易にキャリブレーションを実施することができるようにもなる。
【0020】
このロボット用キャリブレーション装置は、前記スカラーロボットの基台と前記治具とは、同一の土台に固定されてなることを要旨とする。
このような構成によれば、土台によりロボットの基台と治具との相対位置が固定されるのでキャリブレーションされたロボットの先端部の位置決め精度が好適に維持される。
【0021】
このロボット用キャリブレーション装置は、前記マークは、前記治具に形成された円形の透孔であることを要旨とする。
このような構成によれば、キャリブレーション用のマークの治具への配置が容易になる。
【0022】
このロボット用キャリブレーション装置は、前記円形の透孔は、前記治具への部品載置用の穴の加工に併せ加工された透孔であることを要旨とする。
このような構成によれば、マークとしての透孔は、例えばNC工作機械などにより部品載置用の領域の加工に併せて加工されることにより部品載置用の領域に対する相対位置関係の精度が高く維持されるようになる。このことにより、この透孔に基づき実施されるキャリブレーションによればロボットの位置決め精度が自ずと高く維持されるようになる。
【0023】
このロボット用キャリブレーション装置は、前記マークは、前記治具に加工された部品
載置用の透孔であることを要旨とする。
このような構成によれば、治具にキャリブレーション用のマークを別途設ける必要がないため当該治具にマーク設置場所を確保することが不要であるとともに、キャリブレーションに対応可能な治具の大きさを従来同様の大きさに維持することができるようにもなる。
【0024】
このロボット用キャリブレーション装置は、前記透孔は、前記治具の下方からの照明光が透過される孔であることを要旨とする。
このような構成によれば、ロボットのカメラは、孔を透過した治具の下方の照明の光りに基づいて当該孔を認識することとなるため、落射照明により照射された反射光を認識する場合などと比較して、外乱に対する当該孔の認識精度を高く維持することができるようになる。
【0025】
このロボット用キャリブレーション装置は、前記透孔には光ファイバーが設けられてなり、前記照明光は、該光ファイバーにより導光された光であることを要旨とする。
このような構成によれば、透孔の設置位置の自由度及び、照明の設置位置の自由度が高くなる。また、透孔が複数であれば、光ファイバーを複数用いてそれらの先端を各孔に配線する一方、それらの束ねた基端に照明を設けるようにすることで、照明の数を孔の数よりも少なくすることもできる。
【0026】
このロボット用キャリブレーション装置は、前記マークは、発光体からなることを要旨とする。
このような構成によれば、マーク自身が例えばLEDなどのように発光するので、カメラにより撮像される当該マークの認識精度が高く維持される。
【0027】
このロボット用キャリブレーション装置は、前記治具には、前記スカラーロボットの先端部に設けられた上下軸の当該治具の表面との相対距離をモニターするセンサーが設けられてなり、前記キャリブレーション制御部は、前記センサーによりモニターされる前記上下軸の前記治具の表面との相対距離の調整を制御する機能をさらに含むことを要旨とする。
【0028】
このような構成によれば、治具に設けられたセンサーにより検出される上下軸の位置に基づいて、スカラーロボットの上下軸の下降位置を治具表面に対して調整することができるようになる。これにより、上下軸の上下方向の位置決め精度についても高く維持することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明にかかるロボット用キャリブレーション装置を有するロボットシステムを具体化した一実施形態についてその概略構造を示す概略図。
【図2】同実施形態に用いられる治具の上面構造を示す上面図。
【図3】同実施形態のロボットの先端部に取り付けられるツールの一例についてその断面構造を示す断面図。
【図4】同実施形態において作業領域の座標系とロボット座標系との間に生じる位置ずれの態様を模式的に示す模式図。
【図5】同実施形態のロボットの設置当初に実施されるロボットの初期調整についてその手順を示すフローチャート。
【図6】同実施形態のロボットの初期調整の際に行なわれるキャリブレーションに要する構成についてそれを模式的に示す模式図。
【図7】同実施形態のロボットの初期調整の際に行なわれるキャリブレーションに用いられるガラスマスクの一例について示す平面図。
【図8】同実施形態のロボットのメンテナンス時などに実施されるキャリブレーションについてその手順を示すフローチャート。
【図9】本発明にかかるロボット用キャリブレーション装置を有するロボットシステムにおいてそのロボットの上下軸の上下位置をモニターするためのセンサーの一態様についてその正面構造を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明にかかるロボット用キャリブレーション装置を有するロボットシステムを具体化した一実施形態を図面に従って説明する。図1はロボット用キャリブレーション装置を有するロボットシステムについてその正面構造の概略を示したものである。
【0031】
図1に示すように、ロボットシステムは、ベース10と、該ベース10上に設置されたスカラーロボット11と、同じく該ベース10上に設置された治具12とを備えている。なお、本実施形態では、治具12とスカラーロボット11の基台20とは、その間の相対位置が変化しないようにそれぞれベース10に設置されている。
【0032】
ベース10は、剛性を有する金属材料などから構成されているとともに、その上面に上述のスカラーロボット11と治具12とが図示しないボルトなどにより設置される。また、治具12の設置される範囲に、ベース10を上下方向(Z軸方向)に貫通する貫通孔14が4つ設けられている。貫通孔14にはベース10の下方から光ファイバー15が挿通されるとともに、光ファイバー15の先端部が固定されている。光ファイバー15は、その先端部の反対側の端部である基端部が照明装置13に接続されている。照明装置13は、LEDなど公知の光源16の放射する照明光を出射孔17から外部に放射させる。出射孔17には光ファイバー15の基端部が接続されることにより、光ファイバー15は、その基端部に入射される照明装置13の照明光を導光するとともに、該導光された照明光をその先端部から出射させる。
【0033】
なお、ベース10の上面には、図1に示すX軸方向に沿うX軸と、Y軸方向に沿うY軸とにより規定される直交座標系(ベース座標系)が定義されている。このことにより、ベース10の上面の位置は、ベース座標系に基づく座標により示されるようになる。
【0034】
スカラーロボット11は、その基台20が設置用ベース20Bを介してベース10に設置されている。基台20は、その上端部に第1関節を備え、当該第1関節が第1のアーム21の基端部を軸心C1を回動中心にして回動可能に支持している。これにより、第1のアーム21は、軸心C1を回動中心として基台20に対して水平方向に回動可能になっている。第1のアーム21は、その先端部に第2関節を備え、当該第2関節が第2のアーム22の基端部を軸心C2を回動中心にして回動可能に支持している。これにより、第2のアーム22は、軸心C2を回動中心として第1のアーム21に対して水平方向に回動可能になっている。第2のアーム22の上部には、上部カバー24が設けられており、第2のアーム22の先端下部には、下部カバー23が設けられている。また、第2のアーム22の先端部には、第2のアーム22とともに上部カバー24及び下部カバー23とを貫通するように上下回転軸25が設けられている。上下回転軸25は、上下方向に移動可能に、かつ、回転体として回転可能に第2のアーム22に支持されている。第2のアーム22に設けられている上下回転軸25を上下動させる上下動機構及び回動させる回動機構は、上部カバー24内や下部カバー23内に収容されている。
【0035】
上下回転軸25は、その下端部26に対象物を把持したり、対象物に所定の処理を施したりするツールなどが取付けられるようになっていることから、その上下回転軸25の回動及び上下動によって移動されるツールを通じて対象物に対する各種の作業を行なう。下端部26には、ピン孔26hが形成されているとともに、このピン孔26hには、位置決
めピン27が嵌合固定されている。位置決めピン27は、その一部が下端部26の下側から下方に突出されるとともに、下端部26の下側に取り付けられるツールに形成されている位置決め孔が挿通されるようになっている。これにより、下端部26に取付けられるツールは、同ツールに形成されている位置決め孔を位置決めピン27に挿通させることによって下端部26に対して予め定められた向きに位置決め固定されるようになる。なお、本実施形態では、上下回転軸25の下方を画像認識する際には、下端部26に撮像装置30が取り付けられる一方、一般の作業の際には、ツールとしての作業具28(図3参照)が取り付けられる。
【0036】
撮像装置30は、取付け部31と、該取付け部31の下側に設置される複数の支持部32と、それら支持部32に支持される導光体35と、該導光体35の先端に取付けられて軸心C3上に配置されるプリズム34と、導光体35の先端とは反対側の端部である基端に取付けられるカメラ33とを備えている。
【0037】
取付け部31は、下端部26の下側に取付け可能な形状に剛性のある金属材料などから形成された板状の部材であるとともに、前記取り付けの際、下端部26に突出する位置決めピン27を挿通させる位置決め孔31hが形成されている。取付け部31の下側には、軸心C3に直交する線上に離間して並ぶ2つの支持部32が下方に突出するように設けられている。
【0038】
2つの支持部32はその下方に突出された部分によって、軸心C3に直交する直線に沿うように延びる1つの導光体35を共同して支持している。導光体35は、剛性を有する金属管やガラス、プラスチックなどから、その内部に光を通すことができるように形成されている。導光体35は、軸心C3に直交する直線に沿うように配置されることによって、その先端が軸心C3の近傍に配置されるとともに、その基端が軸心C3から離れた位置に配置される。導光体35の先端には、プリズム34が取付けられている。プリズム34は、軸心C3に交差する位置に導光体35により支持されるとともに、軸心C3に沿って入射されるベース10(治具12)上面の画像(光)を導光体35の先端に導くように屈折させる。これにより、導光体35の先端側から下端部26下方の画像が該導光体35に入力されるとともに、該導光体35に導光されてその基端側に伝達されるようになる。
【0039】
導光体35の基端には、当該基端側に伝達された画像を撮像可能なカメラ33が取付けられている。カメラ33は所定の撮像領域を所定の解像度で撮像する。すなわちカメラ33は、プリズム34を介して下端部26の軸心C3に沿う下方のベース10(治具12)上面を撮像領域とすることによって、該プリズムと34と導光体35とを介して伝達される当該撮像領域の画像を撮像可能になっている。そして、カメラ33により撮像された画像が画像認識されることにより、軸心C3の下方の撮像領域に対応するベース10(治具12)の上面の状態等が認識されるようになる。
【0040】
一方、部品の組み立て作業の際などに下端部26に、撮像装置30に代って取付けられる作業具28は、図3に示すように、その下端に作業端29を有する。そして、スカラーロボット11は、作業具28の作業端29を介して、治具12の部品載置部41において第1部品PA1と第2部品PA2とを組み立てることなどができるようになっている。
【0041】
治具12は、スカラーロボット11により実施される組み立て作業に用いられるとともに、剛性のある金属材料やプラスチック材料などにより略板状の平面形状に形成されている。また治具12は、図2に示すように、作業に用いられる領域がスカラーロボット11の動作領域RAに収まるようにベース10に配置される。治具12は、その上面に複数の部品載置部41がX軸方向に所定の間隔Lx1及びY軸方向に所定の間隔Ly1を有するように配置されている。部品載置部41は、組み立て対象の部品である第1部品PA1と
第2部品PA2とを組み立て作業のために載置させる場所である。各部品載置部41は、治具12を上下方向に貫通するようにNC工作機械などによりそれらが一時に加工された透孔であり、このような一時の加工により治具12におけるそれらの配置位置および加工形状の精度が高く維持されている。また本実施形態では、部品載置部41は、治具12における寸法の公差が±20〜30μmよりも高い精度、好ましくは±20μmよりも高い精度に加工されている。
【0042】
治具12の上面の四隅にはそれぞれ、治具12を上下方向に貫通形成された断面円形の透孔としての位置確認孔43A,43B,43C,43Dが、複数の部品載置部41の配置されている領域よりも外側、かつ、動作領域RA内の位置に設けられている。各位置確認孔43A〜43Dは、スカラーロボット11の位置決め位置を調整(校正)するキャリブレーションに用いられるものであるとともに、その断面円形の寸法の公差が±20〜30μmよりも高い精度、好ましくは±20μmよりも高い精度に加工されている。なお、本実施形態では、位置確認孔43A,43B,43C,43Dは、ベース10に設けられた4つの貫通孔14にそれぞれ対応する位置に設けられるようになっていて、貫通孔14の光ファイバー15の先端部から出射される光によりその下方から照明されるようになっている。
【0043】
また、各位置確認孔43A〜43Dのうち、X軸方向に対となる位置確認孔43A,43Dは、動作領域RA内の外周寄りに配置されるとともに、それらの間の所定の間隔Lxの間にX軸方向に並び配置される複数の部品載置部41が挟まれる。同様に、X軸方向に対となる位置確認孔43B,43Cは、動作領域RA内の内周寄りに配置されるとともに、それらの間の所定の間隔Lxの間にX軸方向に並び配置される複数の部品載置部41が挟まれる。また、各位置確認孔43A〜43Dはそれぞれ、X軸方向に隣接する部品載置部41との間にX軸方向に所定の間隔Lx2を有している。また、Y軸方向に対となる位置確認孔43A,43Bと、同じく対となる位置確認孔43D,43Cとは、それらそれぞれの間に所定の間隔Lyを有するとともに、各位置確認孔43A〜43Dはそれぞれ、X軸方向に隣接する部品載置部41との間においてY軸方向には距離の差を有さない。
【0044】
各位置確認孔43A〜43Dは、部品載置部41の場合と同様に、治具12に対してNC工作機械などによりそれらが一時に加工されており、同様の位置精度、および同様の加工精度が維持されている。すなわち、各位置確認孔43A〜43Dは、部品載置部41の場合と同様に、治具12における位置精度は±20〜30μmよりも高い精度、好ましくは±20μmよりも高い精度を有している。このように本実施形態では、治具12に対する位置確認孔43A〜43Dの加工を、部品載置部41の加工の際に併せ行なうようにすることで、各位置確認孔43A〜43Dと部品載置部41との間に加工ずれなどが生じることを抑制して各位置確認孔43A〜43Dと部品載置部41との間の位置精度が高く維持されるようにしている。
【0045】
また、スカラーロボット11には、ロボットコントローラー50が接続されている。ロボットコントローラー50は、スカラーロボット11を駆動制御する制御装置であり、スカラーロボット11をベース座標系により指示された座標に移動させる位置決め制御などを行なう。より具体的には、ロボットコントローラー50は、スカラーロボット11の各関節の角度制御により上下回転軸25をベース座標系の所定の座標、例えば各部品載置部41や各位置確認孔43A〜43Dの座標に移動させる。
【0046】
ロボットコントローラー50には、予めもしくは逐次、スカラーロボット11の駆動に必要とされる各種データが設定されたり、入力されたりするようになっている。そしてロボットコントローラー50は、上述のように設定や入力された各種データに基づいてスカラーロボット11を駆動制御するための各種データを設定したり演算したりする。前記各
種データは、例えばユーザーインターフェース装置から設定されたり、ロボットシステムに設置される各種センサーから入力されたりする。なお本実施形態では、ロボットコントローラー50には、スカラーロボット11の構造や動作特性などを示すロボットデータや、治具12とスカラーロボット11の相対位置や治具12における各部品載置部41や各位置確認孔43A〜43Dの相対位置を示す各種位置データ、及び部品の種類や形状を示す部品データなどが予め設定されている。
【0047】
またロボットコントローラー50には、ベース座標系の任意の座標にスカラーロボット11を位置決めさせるための演算式などが設定されている。すなわち、スカラーロボット11がベース座標系の所定の座標に位置決めされるとき、ロボットコントローラー50は、演算式などによりスカラーロボット11の各関節の角度を算出するとともに、各関節の角度を前記算出された角度に変化させる。このようにして、スカラーロボット11は、ベース座標系の所定の座標に位置決めされるとともに、その上下回転軸25の位置決めされた位置によりベース座標系の当該所定の座標を再現する。なお本実施形態では、ベース座標系の任意の座標に対して位置決めされたスカラーロボット11の再現する座標により構成される座標系をロボット座標系とする。このことから、ベース10(治具12)の所定の位置(座標)に対するスカラーロボット11の位置決め精度を高く維持するためには、ロボット座標系をベース座標系に高い精度にて一致させるようにすることが必要となる。
【0048】
すなわちロボット座標系は、ベース座標系に一致するような直交座標系となることが望ましい。しかしながらロボット座標系は、ベース座標系の座標をスカラーロボット11の各関節の角度制御を通じて再現させる座標系であるため、ベース座標系とロボット座標系との間に多少の誤差が生じることを避け難く、それを一要因としてそれら座標系が一致しないことも多い。例えば、図4に示すように、ベース座標系のX軸に平行な線APx上やY軸に平行な線APy上の座標にスカラーロボット11をそれぞれ位置決めさせた場合、その位置決めされる座標がそれぞれ、X軸に対して歪んでいる線RPx上やY軸に対して歪んでいる線RPy上になる。
【0049】
そこで、本実施形態では、ロボットコントローラー50には、ロボット座標系をベース座標系に一致させるためのキャリブレーションを実施する機能が設けられている。
ロボットコントローラー50は、中央演算処理装置(CPU)、記憶装置(不揮発性メモリ、揮発性メモリなど)を有するマイクロコンピュータを中心に構成されており、メモリに格納されている各種データ及びプログラムに基づいて各種制御を実行する。本実施形態では、ロボットコントローラー50は、カメラ33により撮像された画像を認識処理する画像処理部51と、ロボット座標系をベース座標系に一致させるキャリブレーションを制御するキャリブレーション制御部52と、位置確認孔座標記憶部53と、補正用データを記憶する補正データ記憶部54とを備えている。一方、ロボットコントローラー50には、必要に応じて図示しない配線等によりカメラ33が接続される。
【0050】
画像処理部51は、カメラ33により撮像された画像を認識処理することにより、当該画像に含まれる認識対象の該画像における相対座標を取得する。例えばカメラ33により撮像された画像に含まれる位置確認孔43Aを認識処理することにより、カメラ33の撮像範囲に含まれる軸心C3に対応する位置に対する当該位置確認孔43Aの相対座標を取得する。同様に、その他の各位置確認孔43B,43C,43Dや各部品載置部41についても相対座標を取得する。なお、カメラ33は、下端部26に位置決めピン27を介して高い精度にて取り付けられるので撮像領域中の軸心C3の位置はいつでも同じ位置となるようになっている。
【0051】
キャリブレーション制御部52は、ロボット座標系をベース座標系に対応させるように調整(校正)する、いわゆるキャリブレーションを実施する機能を有している。ここで実
施されるキャリブレーションには、ベース10にスカラーロボット11を設置した当初に実施される機能(初期のキャリブレーション)とともに、メンテナンスの際などに実施される機能(簡易キャリブレーション)とが設けられている。
【0052】
上述の初期のキャリブレーションでは、ベース座標系に校正用に設定された多数の座標と、それら座標にそれぞれ位置決めされるスカラーロボット11の実際に位置決めされた座標との間のそれぞれの誤差量を画像認識により取得するとともに、取得された誤差量に基づいて算出される補正値をマップデータとして補正データ記憶部54に記憶する。これにより、その後、運用中のスカラーロボット11を所定のベース座標系の座標に位置決めする際、当該座標の値を上記マップデータに設定されている補正値にて補正することによりスカラーロボット11をベース座標系の座標に高い精度で位置決めさせるようにする。
【0053】
また、上述の簡易キャリブレーションでは、初期のキャリブレーションが済んでいる前提の下で、ベース座標系にこの校正用に、初期のキャリブレーションよりも少ない数だけ設定された座標と、それら座標にそれぞれ位置決めされるスカラーロボット11の実際に位置決めされた座標との間のそれぞれの誤差量を画像認識により取得する。そしてこれら取得された誤差量に基づいて算出される少ない数の補正値により、上記マップデータに設定されている多数の補正値を調整する。これにより、マップデータに設定されている多数の補正値が、スカラーロボット11の現在の状態を反映した値に補正されるとともに、この補正された補正値の使用によりスカラーロボット11がベース座標系の座標に高い精度で位置決めされるようにする。
【0054】
次に、初期のキャリブレーションを含む、ロボットの初期調整について図に従って説明する。図5は、ロボットの初期調整の手順を示すフローチャートである。図6は、初期のキャリブレーションのための構成を模式的に示す図である。図7は、初期のキャリブレーションの際に用いられるガラスマスクの平面構造を示す図である。
【0055】
まず、ロボットの初期調整の際、スカラーロボット11の上下回転軸25には撮像装置30が取付けられる。また、ベース10のロボットの作業範囲には、ガラスマスク60がベース座標系に沿うとともに、所定の位置に所定の精度にて設置される。ガラスマスク60は、図7に示すように、一辺が例えば200ミリメートル(mm)の正方形に青板ガラスや石英ガラスなどから形成されるとともに、その上面には、複数の認識点61が所定の精度、例えば1マイクロメートル(μm)以下の精度で形成されている。なお、このようなガラスマスク60は、その精密さゆえに非常に高価なものとなっている。
【0056】
上述された準備の後、ロボットの初期調整が開始されると、図5に示すように、ロボットコントローラー50は、初期のキャリブレーションを行なう(図5のステップS10)。ロボットコントローラー50は、図7に示すように、ベース10に設置されたガラスマスク60の各認識点61に対してスカラーロボット11を位置決めさせるとともに、この位置決めされた位置62にてカメラ33によりガラスマスク60の当該認識点61の画像を取得する。これにより、カメラ33の撮像画像が認識されることで認識点61とスカラーロボット11の位置決め位置62(軸心C3に対応する位置)との間の誤差量が得られるようになる。例えば、図7の認識点61aと位置決め位置62aとをそれぞれ、説明の便宜上、図4の点AP1と点RP1とに置き換えて説明すると、ガラスマスク60上の認識点AP1(61a)と位置決め位置RP1(62a)との間には、X軸方向に距離Δx1、Y軸方向に距離Δy1の誤差量が算出されるようになる。
【0057】
そして、この算出された誤差量(距離Δx1と距離Δy1)をベース座標系の座標に対応するマップデータの値などとして補正データ記憶部54に保持する。これにより、その後のスカラーロボット11の位置決めの際、位置決め先となるベース座標系の座標をマッ
プデータに保持されている誤差量に基づいて補正するとともに、この補正された座標をスカラーロボット11の位置決め座標として指定する。このように、ベース座標系の座標がマップデータ化された誤差量に基づいて補正されることで、いわゆるロボット座標系の各座標がベース座標系の各座標に一致するように調整される。なお、誤差量の算出されていないベース座標系の座標であれ、当該座標の近傍にある座標の誤差量を利用して補正量を推定等することができる。このようなことにより、ベース座標系の任意の座標に対してスカラーロボット11が高い精度で位置決めされる、すなわちロボット座標系をベース座標系に一致させることができるようになる。
【0058】
なお、初期のキャリブレーションの場合、ガラスマスク60の多くの認識点61に対する誤差量の取得がマップデータの分解能を高めることとなるから、多くの認識点61の誤差量を取得することがロボット座標系のベース座標系への一致精度を向上させる。このことから、ガラスマスク60の各認識点61のうちの多数、好ましくは全てに対してスカラーロボット11の位置決めを順次行い、多くの認識点61に対する誤差値を取得するようにする。
【0059】
初期のキャリブレーションが終了すると、ガラスマスク60にかわりベース10上に治具12が設置される。治具12が設置されると、治具12の各部品載置部41の位置のティーチングが行なわれる(ステップS11)。本実施形態では、ロボットコントローラー50は、図2に示される、3つの測定ポイントP1,P2,P3に対応する部品載置部41の位置のみをティーチングして、他の部品載置部41の位置は演算により求めるパレタイジングを行なう。パレタイジングでは、例えば、2つの測定ポイントP1,P2の座標に基づいて、それら座標のX軸方向の位置を4等分することによりそれらの間の部品載置部41の座標を算出する。また、2つの測定ポイントP2,P3の座標に基づいて、それら座標のY軸方向の位置を4等分することによりそれらの間の部品載置部41の座標を算出する。なお、3つの測定ポイントP1,P2,P3に基づいて算出される部品載置部41の座標であれ、先に求められたマップデータを参照して当該算出された座標を補正するようにすることで、当該座標をベース座標系の座標に高い精度で一致する座標値に補正することができるようになる。このようにして、ロボットコントローラー50は、治具12に形成されている全ての部品載置部41の座標を算出するとともに、それら座標を部品載置部41のデータとして記憶装置に記憶するようになっている。
【0060】
各部品載置部41の位置が求められると、治具12の各位置確認孔43A,43B,43C,43Dの位置のティーチングが行なわれる(ステップS12)。本実施形態では、ロボットコントローラー50は、図2に示される、4つの位置確認孔43A,43B,43C,43Dの位置のティーチングを行なう。なお、ティーチングは、上述した測定ポイントP1,P2,P3のティーチングと同様の方法により行なわれる。これによりロボットコントローラー50は、ベース座標系に所定の精度で一致されるロボット座標系により求められた4つの位置確認孔43A,43B,43C,43Dの座標を算出するとともに、これらの座標を位置確認孔座標記憶部53に記憶する。
【0061】
なお、本実施形態では、4つの位置確認孔43A,43B,43C,43Dは、光ファイバー15により導かれた光によりベース10側である治具12の下方から透過照明されているので、その画像認識が好適に行なわれるようになっている。
【0062】
以上により、初期のキャリブレーションを含むロボットの初期調整が完了する。
次に、メンテナンス時などに行なう簡易キャリブレーションについて図に従って説明する。図8は、簡易キャリブレーションの手順を示すフローチャートである。
【0063】
スカラーロボット11が部品を移動させる位置決め動作などを行なっているとき、簡易
キャリブレーションを行なう必要が生じる場合がある。このような場合、スカラーロボット11による作業を終了してから、図8に示すように、上下回転軸25に撮像装置30が取付けられることなどとともに、スカラーロボット11による簡易キャリブレーションの準備が行なわれる(図8のステップS20)。簡易キャリブレーションの準備が済むと、ロボットコントローラー50は、補正データ記憶部54に記憶されている座標に基づいて4つの位置確認孔43A〜43Dへスカラーロボット11を順次位置決めしてカメラ33に画像を撮像させる。これにより、カメラ33にて撮像された画像に基づいて補正データ記憶部54に記憶されている座標と、各位置確認孔43A〜43Dの現在の座標との間の誤差を算出する(ステップS21)。
【0064】
位置確認孔43A〜43Dの記憶されている座標と現在の座標との間の誤差が算出されると、ロボットコントローラー50は、当該算出された誤差に基づいてマップデータに保存されている多数の、好ましくは全ての補正値を補正する(ステップS22)。すなわち、位置確認孔43A〜43Dの現在の座標と、位置確認孔座標記憶部53に記憶されている4つの位置確認孔43A〜43Dの座標とを比較して、各位置確認孔43A〜43D毎のずれ量を求める。そしてこの求められた各ずれ量に基づいてマップデータに保持されている補正値を、各ずれ量(誤差)を解消するように補正することによりスカラーロボット11の位置決め精度が高く維持されるようになる。
【0065】
このことにより、ロボット座標系がベース座標系に高い精度で一致されるようになる。また、簡易キャリブレーションにあっては、その実施に高価なガラスマスク60を必要としないとともに、ベース10から治具12を取り外してガラスマスク60を設置したり、それらを元に戻したりする手間も要しない。
【0066】
以上説明したように、本実施形態のロボットシステムによれば、以下に列記するような効果が得られるようになる。
(1)治具12に形成される各位置確認孔43A〜43Dを用いてロボット座標系のキャリブレーションが行なわれるので、キャリブレーションにおいて治具12の一時除去とガラスマスク60の設置、及びキャリブレーションの後にそれらを元に戻す煩雑な作業などが省かれるようになり、キャリブレーションの実施が簡易になる。実施の簡易なキャリブレーションであれば任意の頻度での実施も可能となり、例えばスカラーロボット11の運用中であれ適宜実施するキャリブレーションに基づいて、発熱によりスカラーロボット11に生じる熱膨張が座標系に生じさせる誤差を補償するようにしてスカラーロボット11の位置決め精度を向上させることができるようになる。
【0067】
(2)各位置確認孔43A〜43Dとしての円形の透孔は、例えばNC工作機械などにより部品載置部41の加工に併せて加工されることにより部品載置部41に対する相対位置関係の精度が高く維持されるので、この透孔に基づき実施されるキャリブレーションによればスカラーロボット11の位置決め精度が高く維持されるようになる。
【0068】
(3)各位置確認孔43A〜43Dが透過照明されることでカメラ33は、孔を透過した治具12の下方の照明の光りに基づいて当該孔を認識することとなるため、落射照明により照射された反射光を認識する場合などと比較して、外乱に対する当該孔の認識精度を高く維持することができるようになる。また、光ファイバー15による導光により、照明装置13(光源16)の位置の設置の自由度が高くなる。
【0069】
(4)ベース10によりスカラーロボット11の基台20と治具12との相対位置が固定されるのでキャリブレーションされたスカラーロボット11の先端部の位置決め精度が好適に維持される。
【0070】
(5)各位置確認孔43A〜43Dは、治具12に形成された貫通孔なので、キャリブレーション用のマークとしての治具12への配置が容易である。また、治具12にマークを設けるための位置を確保する必要も不要もしくは軽減され、キャリブレーションに対応可能な治具12の大きさを従来同様の大きさに維持することができるようにもなる。
【0071】
(6)4本の光ファイバー15を一つの照明装置13に接続させた。これにより照明装置の数を一つとすることができるようにもなる。また、光ファイバーを複数用いれば、それらの先端を各位置確認孔43A〜43Dの数よりも少なくすることもできる。
【0072】
なお、上記実施形態は、例えば以下のような態様にて実施することもできる。
・上記実施形態では、スカラーロボット11の平面方向への位置決め位置、すなわち上下回転軸25のX軸及びY軸方向に対する位置を補正する場合について例示した。しかしこれに限らず、スカラーロボットの上下方向の位置、すなわち上下回転軸のZ軸方向に対する位置を補正する機能を追加してもよい。例えば、図9に示すように、治具12に、その上面から所定の高さの位置を検出する検出装置70を取付けてもよい。検出装置70は、金属などの近接を非接触にて検出する近接センサー71と、それを治具12に支持する支持体72とを備えている。近接センサー71は、その上面71aに所定の距離以下まで接近した被検体を検出する。これにより、スカラーロボット11は、その上下回転軸25に取付けられた作業具28の作業端29の外周部29aを被検体として近接センサー71の上面71aに対して下降接近させることによって、近接センサー71により検出されたときの上下回転軸25のZ軸方向の高さを記憶する。このとき記憶された高さを治具12に対する現在のZ軸方向の高さとして、上下回転軸25の高さ方向の値を補正する。このような補正により、スカラーロボット11のZ軸方向の高さに対する位置決め誤差を小さく、例えば±0.05mm以下にするようなこともできる。また、検出対象を作業端29とすれば、部品組み立てなどの作業中であれ、定期的にZ軸方向の高さを調整することができるようになり、高さ方向の精度が高く維持されるようにもなる。
【0073】
・上記実施形態では、簡易キャリブレーションに各位置確認孔43A,43B,43C,43Dを用いる場合について例示したが、治具に高い精度で設けられている部品載置部の孔などをマークとして簡易キャリブレーションに用いてもよい。
【0074】
・上記実施形態では、各位置確認孔43A,43B,43C,43Dの数が4つの場合について例示した。しかしこれに限らず、位置確認孔は、3つ以下でも、5つ以上でもよい。
【0075】
・上記実施形態では、各位置確認孔43A〜43Dは、丸穴である場合について例示した。しかしこれに限らず、位置確認孔は、画像認識処理により中心位置を認識可能であれば、その形状に特に制限はなく、円・楕円形状、三角形状及び矩形形状でもよい。また、その構造についても、平面に描画されたマークや、平面に突出設置するように設置されたマークでもよい。
【0076】
・上記実施形態では、各位置確認孔43A〜43Dを光ファイバーにより照明する場合について例示したが、これに限らず、位置確認孔は光ファイバーを介さず光源により直接照明されてもよい。
【0077】
・上記実施形態では、各位置確認孔43A〜43Dを透過照明する場合について例示したが、これに限らず、画像認識できるように撮像可能ならば、位置確認孔は、その照明が投下照明などであってもよい。
【0078】
・上記実施形態では、各位置確認孔43A〜43Dがマークである場合について例示し
たが、これに限らず、LEDなどの光源(発光体)がマークそのものであってもよい。マーク自身が例えばLEDなどのように発光すれば、カメラにより撮像される当該マークの認識を精度よくできるようになる。
【0079】
・上記実施形態では、キャリブレーションの際、上下回転軸25に撮像装置30を取付ける場合について例示した。しかしこれに限らず、スカラーロボットの上下回転軸やその近傍に予めキャリブレーションに利用可能な撮像装置が取付けられていてもよい。
【0080】
・上記実施形態では、初期のキャリブレーションの際、部品載置部41の位置のティーチングの後に各位置確認孔43A〜43Dの位置のティーチングを行なう場合について例示した。しかしこれに限らず、位置確認孔のティーチングが精度良く行なわれるのであれば、位置確認孔の位置のティーチングは、部品載置部の位置のティーチングよりも前に行なわれても、部品載置部の位置のティーチングに併せ行なわれてもよい。
【0081】
・上記実施形態では、ベース10は剛性を有する金属材料から形成されている場合について例示したが、これに限らず、剛性が有ればベースは、コンクリートなどにより形成された面などでもよい。
【0082】
・上記実施形態では、キャリブレーションの際にカメラ33が取付けられる場合について例示した。しかしこれに限らず、カメラは常に取付けられていてもよい。この場合、ガラスマスクを使用せず、位置確認孔を使用する簡易キャリブレーションでは、スカラーロボットの作業中に簡易に簡易キャリブレーションを実施することができるようにもなる。
【0083】
・上記実施形態では、ロボットがスカラーロボット11である場合について例示した。しかし、これに限らず、ロボットとしてはどのようなロボットでもよく、特に旋回アームを有する、六軸ロボットなどのロボットでもよい。
【符号の説明】
【0084】
10…土台としてのベース、11…スカラーロボット、12…治具、13…照明装置、14…貫通孔、15…光ファイバー、16…光源、17…出射孔、20…基台、20B…設置用ベース、21…第1のアーム、22…第2のアーム、23…下部カバー、24…上部カバー、25…上下回転軸、26…下端部、26h…ピン孔、27…位置決めピン、28…作業具、29…作業端、29a…外周部、30…撮像装置、31…取付け部、31h…位置決め孔、32…支持部、33…カメラ、34…プリズム、35…導光体、41…部品載置部、43A〜43D…マーク及び透孔としての位置確認孔、50…ロボットコントローラー、51…画像処理部、52…キャリブレーション制御部、53…位置確認孔座標記憶部、54…補正データ記憶部、60…ガラスマスク、70…検出装置、71…近接センサー、71a…上面、72…支持体、C1,C2,C3…軸心、PA1…第1部品、PA2…第2部品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スカラーロボットに対する相対位置の固定された治具に対してその座標系の基準位置を示すマークを予め設けておき、前記スカラーロボットの先端部に取り付けられた画像認識用のカメラにより前記マークを認識するとともに、該認識されたマークの位置に基づいて当該ロボットの先端部の座標系を調整するキャリブレーションを行なう
ことを特徴とするロボットのキャリブレーション方法。
【請求項2】
前記マークは、前記治具への部品載置用の領域の加工に併せて加工された円形の透孔である
請求項1に記載のロボットのキャリブレーション方法。
【請求項3】
前記マークである円形の透孔には光ファイバーを取付けておき、前記治具の下方から該光ファイバーを介して照射される光を前記カメラにて撮像させることによって前記マークの位置を認識する
請求項2に記載のロボットのキャリブレーション方法。
【請求項4】
前記治具にはその座標系に直交する方向における前記ロボットの先端部の位置をモニターするセンサーを設けておき、該センサーによりモニターされた前記ロボットの先端部の位置を調整する工程をさらに含む
請求項1〜3のいずれか一項に記載のロボットのキャリブレーション方法。
【請求項5】
スカラーロボットと、
前記スカラーロボットの先端部に取り付けられた画像認識用のカメラと、
前記スカラーロボットの基台との間の相対位置が固定された治具と、
前記治具に設けられたマークと、
前記カメラにより撮像した前記マークの位置を認識して該認識した位置に対する前記スカラーロボットの先端部の位置の誤差を求めるとともに、該求めた誤差が解消される態様で当該スカラーロボットの先端部の位置を調整するキャリブレーションの実行を制御するキャリブレーション制御部とを備える
ことを特徴とするロボット用キャリブレーション装置。
【請求項6】
前記スカラーロボットの基台と前記治具とは、同一の土台に固定されてなる
請求項5に記載のロボット用キャリブレーション装置。
【請求項7】
前記マークは、前記治具に形成された円形の透孔である
請求項5または6に記載のロボット用キャリブレーション装置。
【請求項8】
前記円形の透孔は、前記治具への部品載置用の穴の加工に併せ加工された透孔である
請求項7に記載のロボット用キャリブレーション装置。
【請求項9】
前記マークは、前記治具に加工された部品載置用の透孔である
請求項5または6に記載のロボット用キャリブレーション装置。
【請求項10】
前記透孔は、前記治具の下方からの照明光が透過される孔である
請求項7〜9のいずれか一項に記載のロボット用キャリブレーション装置。
【請求項11】
前記透孔には光ファイバーが設けられてなり、
前記照明光は、該光ファイバーにより導光された光である
請求項10に記載のロボット用キャリブレーション装置。
【請求項12】
前記マークは、発光体からなる
請求項5または6に記載のロボット用キャリブレーション装置。
【請求項13】
前記治具には、前記スカラーロボットの先端部に設けられた上下軸の当該治具の表面との相対距離をモニターするセンサーが設けられてなり、前記キャリブレーション制御部は、前記センサーによりモニターされる前記上下軸の前記治具の表面との相対距離の調整を制御する機能をさらに含む
請求項5〜12のいずれか一項に記載のロボット用キャリブレーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−177845(P2011−177845A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44993(P2010−44993)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】